故郷の話をした それも愚にもつかぬものばかりで 仙台では真夏、さしわたし一寸ほどのひょうが降るとか 内職では山芋ほりが一番金になるとか 国分町のキャバクラはレベルが高いとか 実は地元民には牛タンを食す文化はあまり浸透していないとか そういう話ばかりだった ワカパイはもう我慢の限界だった 「ーとくろうさん、北海道では」 なにをするつもりだったか、と問いかけると とくろうさんは穏やかに 「北海道の話はよそう。私の一生には、もうなくなってしまった土地だ。」 と、言った おそらく北海道へ行ったところでどれほどの目論見もなかったのかもしれない 「進化、の謎は解いたのですか..
ワカパイは自宅へ駆け戻った 愛機ポセイドン号のエンジンに火を灯す 調子は良好のようだ 保険に入っていないのが心残りではあるが・・・ 国道を駆けた 寒い ここ連日の寒波による冷気は機内のエアコンさえ無効とさせてしまう程のものであったか (自分も粛清されていった上司たちと同じ運命を辿るのではないか?) そう思うと左手に過ぎてゆく森田商事が不気味な鮮やかさで眼に写った 粕壁のホテル街はずれまで到着したとき 一軒の特殊ビデオ店の中から 「ワカパイ君」 と呼ぶ声がした とくろうさんである 数本のDVDを内包したEGOバッグを大事そうに両手に抱えている ワカパ..
清掃課総長とくろうさんがわらわらあての書置きを残して課を脱走したのは平成21年12月30日の未明のことである わらわらは流石に真っ蒼になった とくろうさんは古参の部下であり旧体制を知る数少ない同志である しかも課の最高幹部の一人であった その脱走は課の行き方に対する無言の批判といっていい 「古い同志だが、許せん。」 と、わらわらは言った 脱走をとくろうさんにのみ限って許すならば課のしきたりは緩み 脱走が相次ぎ、遂には収拾がつかなくなることだろうよ 「理由は、何だ?」 「俺を憎んだ それだけでいい」 とけんやが呟く 「いいえ、違うと思いますよ」 と、まりんば..
2009年12月 とくろうさんは焦燥していた 1人だけで考え込む癖ができてからどのくらいの月日がたったことだろう 思えばこの3年間は様々なことがあったものだ まずは妻を娶ったことが大きいか 「独身大王」「ダメ人間選手権優勝者」といったありがたくない称号を捨て去れることができた 事実、プライベートの面ではパーフェクトなほど充実を得ていた しかし、問題は職場である 2007年にワカパイ、まりんば 2008年にトータス、ねんねん、Pマユ 2009年になべ といった新たな入職者を得たものの 2007年にコジコジ、ジェンコ 2008年にグッチーちゃん。、橋本DEATH ..
「おいしんごり、茶菓の用意をしろ」 と、橋本DEATHは慌てながら 「俺はこれからパチンコで忙しい お前はセレブ女の方だ。帰りのタクシーを忘れるんじゃねえぞ」 とっとと帰宅してしまった 「ふむ」 面白くねえ、と思ったがしんごりらは検査室を出て 「おちやい先生」 と呼び止めた 「別間に支度がしてございますから暫時ご休息願います」 すると 「いいえ、急ぐ 家に荷物が届きますので」 と、おちやいは振り向きもせず一蹴 「この課はダメね やっぱ一時間目は給食じゃないと!!」 m9(`Д´)ビシィッ!! そして 後ろ45度ほど後屈しながら のっしのっしと歩..
「今年の入職予定者はいるのだろうなぁ?」 局長のいかつい不機嫌な声にしんごりらと橋本DEATHは凍りついた 去年の入職者は結局ジェンコのみ!! 彼女の場合は3年間他の会社でのキャリアがあるため 実質上は彼等の上司扱いである 彼等と同年入社砂糖店長も同じことが言える もし今年度に 清掃課にたれも入職しなければ? 果たして永遠に2人は下っ端のままである つまり、飲み会の幹事を続けなければならなくなるのだ!! もっとも、その99.99999999999999999999999999999999999999999999% をしんごりがやらされる羽目となるであろうことは..
「すみません・・・少しお時間をいただけませんか?」 前年末の、とある飲み会でつっぴーが声をかける 「相談させていただきたいことがあるんです。」 はて? と野村は首をかしげた 果たして今までこの部下と自分の間のつながりは強いわけではない 学年としては2年下なれど年齢は向こうの方が上、 またこの課にはめずらしい妻帯者である 自然、業務後の酒に誘う数はナニワマンやりんきくの方が多くなってしまうものだ また、 この馬鹿に礼儀正しい彼の姿はかえって野村に社会人としてのあり方を示すぐらいのものである 残業も終わり、他の清掃課員たちが全て帰宅した頃を見計らって 2..
2006 Good-bye for our public hero
訃報と共に年が明けた・・・ 専務ハマちゃんが急死したのだ 死因はインフルエンザ脳症 確かに年末休みに入る直前風邪気味で治療に難渋していた様子であったと記憶する 社内で最後に彼の姿を確認したのはたれであったか? 自宅で朝方、 家人が起床させようと本人の床に向かったところ 既に息を引き取っていたようだ・・・ 死顔は安らかなものであったというのがせめてもの救いだった 苦痛が無かった分ある意味幸せな最期であったものと信じたい あまりにも突然すぎる報せに 清掃課内は騒然となった お世辞にも面倒見がいい、とは言いがたいものの 上司の中でも一番融通の利く人柄..
年もいよいよ暮れかけていた と、なるとまた連想してしまうのが忘年会<img src=
清掃課員たちも次第に新しい体制に慣れていく 平均年齢が随分と若くなってしまったため 局長わらわらと副長けんやは 課員たちが様々な意見を出しやすくするような政治を努めた 逆に不平・不満が出やすくなってしまうことにもなってしまうのだが・・・ 組織というものは馴れ合いだけで運用できるもの程単純なものではない 特別な存在を認めてしまえば簡単に瓦解する可能性をはらんでいる 仕事仲間というのはそこの匙加減が難しい所だ やはりひらGのような憎まれ役というのも必要なものであるということに気付いた人間はごく少数であったろう 清掃課員たちの間にも少しずつ考えや意見の相違が目立つように..
この頃には宿直室のコンピューターはゲーム機としての機能を既に終了していました 理由は単純!! みんな飽きちゃったから 熱しやすく冷めやすいのが清掃課員たちのグレートな所です しょうがないので砂糖店長はDVDのコピーの仕方を愚民どもに教示します そうなると、 一番これにハマってしまったのがグッチーちゃん。です 出勤してはどこからともなくDVDをレンタルしてきて業務中にコピーを始める コンピューターはまた絶え間なく稼動し続けることになりました はてさて、 困ったことは グッチーちゃん。は異常なほどサービス精神が旺盛な所です 元来、 清掃課の親切者といえ..
「おめでとう」といった言葉もなく ただ 「あきらめろ」 と大きく葉書に書かれたのみの上司からの年賀状で 新年早々愕然とするしんごりらを尻目に 時代は嫌が応にもうつろいでいく たぶん諸行無常というやつだろう 年が明けて間もないある寒い朝 一台の高級車(NISSIN)が赤山商事の前に停車した 「何だ、何だ?」 と、ヤラレちゃんが近づいて車内をうかがっていたところ ぎゅい〜ん!! と 突然、ドアが勢いよく開く! ドアに頬を殴られた形で吹っ飛んでいくヤラレちゃん!! 星闘士星矢の様に宙で弧を描き顔面から地面に落下!!! 「うう・・・バ、馬鹿な・・・・」 額..
中堅どころが揃って退職してしまったため わらわら、けんや、とくろうさんは実地部隊からは外れ グッチーちゃん。コジコジ、野村は揃って組頭へと昇進した そんな中、職場では・・・ しんごりら「お前、今度の納涼会、幹事やれよ」 橋本DEATH 「いいや、俺はこの前やった」 しんごりら「お前、俺はカレー数秒で食えるんだぞコラ」 橋本DEATH 「お前これ何?・・・何 が やりたいんだコラ、紙面飾ってコラ何がやりたいのか、はっきり言ってやれコラ、噛みつきたいのか噛みつきたくないのか、どっちなんだ どっちなんだコラ!」 しんごりら「何がコラじゃコラ馬鹿野郎!」 橋本DEAT..
この年の3月に社員旅行があった カナちゃんのお別れのためのイベントであったが 幹事はカナちゃん1人だ<img src=
この年の後半のことについては 正直、ここに書くべきか否か悩んだ モニュメント的な所となっているので やはり書き残しておこうと思う この年の秋、親父が倒れた 外勤先の会社で勤務中に連絡が届いた 脳出血? 手術が必要? 実家の切り盛りをして欲しい? 急なことなので動揺する 次の日の朝、赤山商事に出勤 事の顛末を副長けんやに打ち明ける 当分の間こちらでは御暇をいただけることとなった 最悪の状況となったらこのままここには戻れないかもしれない・・・ 当時の自分は一国一城の主と足るにあまりに若輩者だった まだ、一つの所に納まる覚悟も無ければ 人を遣うことにだって..
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