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- 2009/11/06 18:00中納言良房 6/181
- しかし、皮肉にも冬嗣と最も対立したのが同じ藤原の者である。藤原仲成は死刑にすることで最終解決を成したが、藤原葛野麻呂との関係は葛野麻呂が死ぬまで緊張が走り続け、藤原緒嗣とはことあるごとに対立し、藤原吉野は冬嗣と真っ向から逆らっていた。 冬嗣の死後、頂点に立つことになったのは右大臣の緒嗣であり、蔵人頭の吉野である。彼らは大学を出たこともあり、大学出の学者たちを従えることに成功していた。 しかし、 [続きを読む]
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- 2009/11/05 18:00中納言良房 5/181
- その大学出の貴族が朝廷内で一定の権力を握っている。それは律令で定められているからでもあるのだが、冬嗣にとってそうした大学出の貴族は障壁にしか感じられなかった。 彼らの主張するところは自分の考えと大きな隔たりがある。 要するに理想主義的で現実とかけ離れているのが彼らの主張するところ。 冬嗣とて当初はそうした理想主義的な貴族の一人であったのだが、奈良の勢力を滅ぼして実権を握ったあとの冬嗣にそうした [続きを読む]
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- 2009/11/04 18:00中納言良房 4/181
- この時代の大学は以下のようになっていた。 一般に「大学」と称され当時の記録にも「大學」と記されているが、正式な名称は「大学寮」。人事を司る式部省の配下に置かれ、大学生は法律の上では式部省管轄の役人と同じ扱いとなっていた。そのため、仮に犯罪をしでかして逮捕された場合、一般庶民ではなく役人としての判決が下った。 この時代の「寮」というのは現在の「庁」に該当し、省の下にある官庁という意味であり、「大 [続きを読む]
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- 2009/11/03 18:00中納言良房 3/181
- 冬嗣亡きあとの朝廷で勢力を持つようになったのは、緒嗣や吉野といった冬嗣と対立していた貴族や、良房が敵と睨んだ学者たちであったが、彼らの素養と兄弟との素養に大した違いはない。 受けた教育のレベルについてもそうだし、文章を書かせても、文章を読ませても、長良や良房は学者たちと同レベルのものを記すことができる。 この時代にも大学はあり、大学を出ることは貴族になる第一歩でもあった。法に従えば、家柄に関係 [続きを読む]
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- 2009/11/02 18:00中納言良房 2/181
- 天長三(八二六)年七月二六日、亡き冬嗣に正一位が与えられ、遺体は山城国愛宕郡深草山に葬られた。 父の死の喪に服すため、長良と良房の兄弟は宮中より姿を消す。 冬嗣が父内麻呂の死に伴い喪に服したときは国政に影響を与えたが、兄弟が喪に服した今回は、末端の貴族一人(=長良)と、蔵人の一人(=良房)が喪中なだけという扱いとなっている。つまり、理論上、国政への影響はとりたてて存在しないこととなっていた。 [続きを読む]
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- 2009/11/01 18:00中納言良房 1/181
- 藤原氏の確立した摂関政治と、徳川氏の確立した江戸幕府。この二つはともに最高権力を継続するシステムとして二〇〇年以上の寿命を持ったが、この二つの政体を比べた場合決定的な違いが存在する。 それは後者が完全な世襲で、後継者が前歴や年齢に関係なく自動的に前任者の地位を継承するのに対し、摂関政治の場合、後継者に指名されても前任者が就いていた地位を自動的に継承できるわけではなかったということ。 藤原氏の場 [続きを読む]
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- 2009/10/31 18:00「ほむらみさき、そして…」のあとがきと「中納言良房」の前書き
- 夏目漱石は「三四郎」の連載が始まる直前、担当編集者に次のような手紙を書きました。田舎の高等学校を卒業して東京の大学に入った三四郎が新しい空気に触れる。そうして同輩だの先輩だの若い女だのに接触して、色々に動いてくる。手間はこの空気のうちにこれらの人間を放すだけである。夏目漱石ほどの大人物ならば作ったキャラクターが動き回るという光景は日常でしたでしょうけど、私がこれまで何度か書いてきたフィクションの [続きを読む]
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- 2009/10/30 18:00ほむらみさき、そして… (30/30)
- 「どうだい、いずみちゃん。ここはね、こういう町なんだよ。何があっても立ち直ることができる、ね。みんな、何か持っているんだ。でも、立ち直れる。あたしだって、結婚に失敗して戻ってきちゃったけど、やり直せてる。」 「……」 「遊んでるんじゃだめだけど、それなりに働けば人生ってやり直せるんだよ。一生懸命じゃダメ。人生壊れちゃうから。アタシの元旦那がそうだったからね。そうじゃなくて、適度に働いて、適度に [続きを読む]
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- 2009/10/29 18:00ほむらみさき、そして… (29/30)
- 理事長はその間、浴びるように日本酒やらビールやらを飲んでいた。 「飲み過ぎではないですか。」 「な〜に言ってんの。これが私なりの応援。和波会長みたいに未成年のくせに酒・酒言っているわけじゃないから安心しなさい。」 「僕だって学校の中でそんなことは言っていませんが。」 「私はね、人にタダでお金を恵むなんてことしない人なの。寄付なんか一度もしたことない。だって、何もしないで誰かに恵んでもらったお金 [続きを読む]
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- 2009/10/28 18:00ほむらみさき、そして… (28/30)
- 「私は四〇年ほど前、服部さんと同じ理由でほむら岬に来ました。私には和波君にあたるような人は現れずそのままほむら岬に行ってしまったのですが、そこで思いとどまったのですね。それからこちらのおそば屋さんでお世話になりまして、高校に通わせていただいて、大学に入って、この町に戻って教師になって、気づけば校長にまでなりました。女房がいて、子供が二人いて、今では普通の父親です。」 和泉は校長の身の上を他人事 [続きを読む]
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- 2009/10/27 18:00ほむらみさき、そして… (27/30)
- 校長はさっきから一滴も酒を飲んでいない。 飲めないのではなく、この店まで理事長を車に乗せてきて、帰りも理事長を車に乗せて帰るので今日は飲まないことにするという。 「校長先生もこういうところが頼れるんだよね。」 「教育者が飲酒運転など許されることではありません。」 「教育者じゃなくたって絶対ダメだっての。」 おかみさんは校長先生と親しげだった。 「いくらあなたでも特別扱いはできません。」 「お知 [続きを読む]
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- 2009/10/26 18:00ほむらみさき、そして… (26/30)
- 学校から桂の家までの帰り道の途中に、和泉がアルバイトをしている蕎麦屋がある。 蕎麦屋に昨日のような行列はなく、店の外ではかすみがホウキを持って掃除をしていた。 二人が歩いてくるのを見つけたかすみは、掃除を途中で打ち切って二人に駆け寄ってきた。 「どうだった。」 「無事合格です!」 さっきまで涙をためていたのは何だったのかと言いたくなるような声で、桂が明朗に答えた。 「良かったじゃないか!」 か [続きを読む]
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- 2009/10/25 18:00ほむらみさき、そして… (25/30)
- 「とりあえず終わったことになってます。本人はこの町から出ていって今はどこで何をしているのかわかりません。この高校に入学させてくれたのも妹の不始末を取るって言ったからですし、大学の推薦だってお詫びなんです、本当は。でも、表向きは僕が生徒会長だからってことになってます。前の生徒会長も、その前の生徒会長も推薦で大学に行けました。それまではそんな制度無かったのに、僕が入学したとたん、生徒会長は大学に推 [続きを読む]
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- 2009/10/24 18:00ほむらみさき、そして… (24/30)
- 「きれいな人だねえ、理事長さん。」 学校の敷地を出たとほぼ同時に和泉は口を開いた。 「?」 「桂は何とも思わないの?」 「まあ、美人は美人ですね。僕はいずみさんの方がいいですけど。」 「お世辞言ってどうする。だいたい、桂は何とも思わんのか。」 「言ったではないですか。僕は理事長の弱みを握っている、と。それを知っている以上、僕は理事長に興味は抱けないのです。」 「弱み握ってるって言うけど、理事長 [続きを読む]
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- 2009/10/23 18:00ほむらみさき、そして… (23/30)
- 「服部和泉さん。」 「はい。」 「まずは結果から申し上げますが、合格です。」 「あ、ありがとうございます。」 和泉は合格がこんなあっさり決まるものと思っていなかった。 人生ではじめて経験した、そして今後も経験することがないであろう、自分一人だけが受験者という試験。 そういう試験での合否判定はこういうものなのだろうと和泉は理解した。 「実際の通学は二学期の初日からとなります。」 これも和泉は理解 [続きを読む]
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- 2009/10/22 18:00ほむらみさき、そして… (22/30)
- 試験終了後、和泉は教室から会議室に案内された。 自分がいままで通っていた高校と比べると、校内の設備も見劣りがするし、一言で言うと貧相に感じる。 「(だけど、掃除が行き届いてるな。前のトコなんかゴミが散らかってたし)」 建物の古さと貧相さを感じたが、同時に、今まで通っていた学校にはなかった清潔感も感じた。 建物の新しさと設備の豪華さでは負けるだろう。桂の言葉が正しければ、偏差値も前の学校のほうが [続きを読む]
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- 2009/10/21 18:00ほむらみさき、そして… (21/30)
- 数学の試験終了まであと一五分というところで、廊下を歩く足音がした。 足音は教室の前で止まり、ノックの後、扉が横に開いた。 封筒を持った桂が教室に入ってきた。 「渡邉先生、校長先生がお呼びです。」 「ん? 困ったな。今は試験中だぞ。」 「試験の監督なら僕に任せてください。」 「う〜ん、それじゃ和波くん、すぐに戻ってくるから頼む。」 「わかりました。」 試験官の教師は教室を出ていき、教室の中は和泉 [続きを読む]
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- 2009/10/20 18:00ほむらみさき、そして… (20/30)
- 翌日。 雲一つない快晴で、朝の天気予報では気象予報士が今年いちばんの暑さになると言っていた。 「そろそろ試験が始まった頃かね。」 開店準備をしながら、かすみは母親に語りかけた。 「いずみちゃんにはあんたみたくなってほしくないもんね。」 「だいじょうぶだよ。桂ちゃんがついてんだから。桂ちゃんはあいつみたいに女の子を見捨てるなんてしないよ。」 「だね。」 書類を出すといってもそれは儀式のようなもの [続きを読む]
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- 2009/10/19 18:00ほむらみさき、そして… (19/30)
- 「明日試験ってどういうことよ。」 「校長が明日でないと都合がつかないそうです。もう夏休みですし、研修やら何らやで忙しい方ですから。」 「明日日曜だよ。」 「もう夏休みですから何曜日だろうと関係ありません。」 「アルバイトだってあるし。」 「かすみさんの了解も得ましたし、何より、近所のかた、みなさんの応援も明日なら得られるのです。」 「ちょっと待った。なんで近所の人が出てくるのさ。」 「うら若き [続きを読む]
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- 2009/10/18 18:00ほむらみさき、そして… (18/30)
- 「じゃあ、どうやって試験受けるんですか。中間とか期末の時期じゃ当たり前ですよ。」 「当たり前なわけないでしょ。」 「それじゃまさか、高校生にもなって、試験問題も答えも覚えないで試験に挑むとでも言うのですか。」 「高校生だろうがなんだろうが、それが当たり前なの。だいたい、桂はカンニングが犯罪だって意識あるの?」 「ありません。」 「あのね……」 「犯罪というからには誰か被害者が居なければおかしい [続きを読む]
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- 2009/10/17 18:00ほむらみさき、そして… (17/30)
- 「うちの高校の編入試験は、国語、数学、英語の三科目です。国語は古典も含まれますが、漢文は含まれません。」 「ほう。」 「で、これが今年の試験問題と解答です。」 桂はそう言いながら、封筒から紙の束を取り出した。 「入試問題か。」 和泉はそれを、今の高校一年生が今年の二月に受けた入試の試験問題と考えた。 「はい、いずみさんが受ける試験の問題と答えです。」 「はい?」 和泉は一瞬桂が何を言っているの [続きを読む]
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- 2009/10/16 18:00ほむらみさき、そして… (16/30)
- この日のアルバイトを終えて桂の家に帰ってきた和泉が見たのは、編入手続きの書類一式。 「あとはサインと印鑑だけです。」 「ねえ、本気なの。」 「妻の人生を思うのは夫の役目です。いずみさんの通ってた学校にも連絡がつきましたし、理事長の承諾も校長の承諾も得ました。あとは書類を出して試験を受ければいずみさんは晴れて僕の後輩になるのですよ。」 「なりたいとは言ってないでしょ。」 「多数決により決まったこ [続きを読む]
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- 2009/10/15 18:00ほむらみさき、そして… (15/30)
- 「桂ちゃん、転校の手続きってどうすりゃいいんだ。」 「まずはウチの教務課に申請を出しまして、受理されれば編入試験、で、合格すればOKです。」 「よし、決めた。いずみちゃん。桂ちゃんの高校に入んな。」 「かすみさん! 冗談はやめてください!」 「冗談じゃないさ。うちだって変な評判立てられると困るんだよ。年若き乙女が二人、学校にも通わせてもらえず朝から晩まで働かされているなんて評判が立ったらどうする [続きを読む]
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- 2009/10/14 18:00ほむらみさき、そして… (14/30)
- 「ですから、うちの高校に転校してくればよろしいではないですか。」 「だからね、そんなお金がどこにあるってのよ。」 「ウチで出しますよ。」 「ただでさえ住まわせてもらってるのに、これ以上迷惑かけられないでしょ。」 「誰も迷惑に思っていませんよ。」 「そりゃ、桂がそう思うのは自由だけどさ、あたしゃ無神経な人間じゃないんだから。今はお金無いけど、自分の生活費ぐらい稼ぐようにならなきゃ。」 「高校生の [続きを読む]
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- 2009/10/13 18:00ほむらみさき、そして… (13/30)
- 「一緒に暮らしてるってどういうこと!」 「言葉通りです。いずみさんは私と同居しております。結構ある話じゃないですか。ドラマとかアニメだと良くあるシチュエーションですよ。」 「現実世界の話をしなさいよ。同棲なんていいと思ってるの? 生徒会長ともあろう人が。」 「じゃあ、会長やめます。」 「そういう問題じゃないでしょ! 高校生のしていいことじゃないって。」 「じゃあ、高校も退学します。」 「そうじ [続きを読む]
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