ひかる11歳、妹が3歳の昭和29年夏。 父は漁へ出かけ、母は野良仕事。 やっと走りまわれるようになった、妹の遊び相手をしていると、元気がなくなり、そのうちグッタリ倒れてしまいました。 急いで母を呼び戻した頃には、泣き声一つ出す力さえなく、痙攣の合間に断続的にひきつけを起こす程の異常な高熱。 40度以上の高熱が続いているのだろうか。 火照った体は風呂上がり状で、体内はそれ以上の高温でしょう。 解熱剤なるもの、薬と呼べるものは何一つなく、助けを求めるにも近所には誰一人いません。 母は知恵熱やカゼ、普通の発熱でない事を咄嗟に感じ取っていたのでしょう。 取り乱し、「助けて欲しい!」と叫ぶその只事でない形相に、命に危険が迫っている事が感じられます。 次々と他界した、子供達の事が脳裏をよぎっているのだろうか。 脈をとったまま、水!、水をくれ、との催促に冷たい井戸水を汲み続けました。 母は無我夢中で冷..