井上智公 さん プロフィール

  •  
井上智公さん: 泣きながら一気に書きました
ハンドル名井上智公 さん
ブログタイトル泣きながら一気に書きました
ブログURLhttp://tmykinoue.hatenablog.com/
サイト紹介文妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟
自由文文筆業。
基本的に嘘泣きです。
よろしくお願いします。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供114回 / 365日(平均2.2回/週) - 参加 2008/12/16 15:32

井上智公 さんのブログ記事

  • 短篇小説「天天天職」
  • どんな仕事にもその職務内で発揮される「才能」というものがあり、逆にいえば人にはその「才能」を生かす「天職」というものがあるらしい。「才能」というのはけっして、スポーツ選手や芸術家にのみ求められるものではない。映画チケットのもぎりにすら「才能」というものはあるのだ。ちなみに私はいま、学生を「天職」へと導くべく就活塾を開いている。そこで生徒に教えているのは、何も複雑なことではない。単に自らの「天職を知 [続きを読む]
  • 短篇小説「もはやがばわないばあちゃん」
  • がばいばあちゃんが思ったほどがばわなくなったのはいつの日からだろうか。がばいばあちゃんは、とにかくいつでも誰にでもがばうばあちゃんだった。イケメンにも不細工にも分けへだてなくがばうし、いったんがばうと決めたら老若男女も国籍も問わない。西に倒れている人あれば駆けつけてこれをがばうし、東に食い逃げ犯あれば持っている杖をためらいなく抛ってがばう。たとえば若手刑事とがばいばあちゃんがバディを組んだとして、 [続きを読む]
  • 短篇小説「河童の一日 其ノ十二」
  • 河童にだってお洒落は必要だ。でもお洒落にはリスクがつきもので。学校から帰ると、茨城から流れて来た爺ちゃんが居間で甲羅を磨いていた。人間だと乾布摩擦というのかもしれないが、フォームは同じでもやっていることの意味は全然違う。ボーリングとスカートめくりくらい違う。いやそこまでは違わないかもしれないが違うことは違う。激しく磨かれることにより艶めいた甲羅は、同族から見てもちょっと気色悪い。背後に回された爺ち [続きを読む]
  • 短篇小説「号泣家」
  • 私は奇妙なことに、泣きながら産まれてきたのだとのちに母親から聞かされた。私がそんな奇抜なスタイルで産まれてきたのは、きっと両親が泣きながら出逢ったからだ。産まれてこのかた、私はずっと泣いている。何をするときも確実に泣いている。飯を食うときも風呂に入るときも屁をこくときも泣いている。水分はわりとこまめに摂るほうだ。朝起きたらもう泣いている。きっと寝ている間もずっと泣いているのだろう。しかしよく訊かれ [続きを読む]
  • 短篇小説「最後の勇者」
  • 王様に呼び出されるというのは、つまり職員室に呼び出されるようなもので、だいたい叱られるものと相場が決まっている。しかしこの日は違った。城の大広間にでんと鎮座している王様の前に跪くと、王様は僕の手を取り神妙な顔を作り込んで言った。「よくぞ参った。もうお前しかおらんねん」そんなことだろうと思った。ずっと引きこもってゲームばかりしていたので気づくのがすっかり遅れたが、引きこもりニートの僕に声がかかるとい [続きを読む]
  • 連載小説「二言武士」/第四言:市中引き回されマシン
  • なんといっても武士は体が資本である。さしあたっての得物である「バールのようなもの」の圧倒的魅力により六人の岡っ引きをまんまと丸め込み、自らの器物損壊罪をもみ消すことに成功した覆之介は、家に帰る前に会員制スポーツジムで汗を流すことにした。近々関ヶ原レベルの大いくさが勃発するという噂が流れている。その手の風説の流布は武士の世の常であり、いちいち真に受けていたらおちおち寝ることも、『こち亀』全200巻を読 [続きを読む]
  • 短篇小説「私が全自動になっても」
  • 何もかもが全自動化されたこの世界で、自動でないのはもはや人間の心だけだ。もちろんこの文章も全自動で書いている。いや書かせている。むしろ書かれている。その証拠はいずれ表れることになるだろう。水道の蛇口が自動水栓になった際にも驚いたものだが、今や自動水栓を洗うのも自動水栓を洗ったブラシを洗うのも、そのブラシを乾かすのも頃あいを見計らって新品と交換するのも古くなったのを燃えるごみの日に出すのも、すべてが [続きを読む]
  • ゆとり鬼逃走中
  • ここ数日、節分から逃げてきた鬼たちがわが家に続々と駆け込んでいる。もちろん、うちに豆シェルターを完備しているからである。毎年のことではあるのだが、今年はちょっと数が多いような気もする。やはりゆとり教育のせいで、豆に弱い鬼が増えているのだろうか。鬼の世界にも、昔は容赦なく豆を投げつける先生がいたものだが、近ごろは鬼親の苦情やネットでの悪評を怖れて、すっかりそういう鬼教師はいなくなったらしい。昔は鬼教 [続きを読む]
  • ルパンに奪われしものたち シーズン3
  • ルパンはこれまで、世界中の人々からさまざまな物を奪ってきた。いや、奪われたのは物だけではない。心や概念までも。これはルパンの最新版盗難記録である。銭形「いや、奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたのモスキート音です」(ジャパネット高田姫に)銭形「いや、奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの息子の運転免許証です」(志茂田景樹姫に)銭形「いや、奴はとんでもないものを盗んでいきました。 [続きを読む]
  • 短篇小説「忘却無人」
  • ポストにちらしが入っていたのがすべてのはじまりだった。ちらしといっても広告ではなくちらし寿司である。ポストかと思ったものはホストで、要はホストが家の前でちらし寿司を食っていたのである。いや食っていたのではなく、繰っていたのかもしれない。ということはやはりちらし寿司ではなく、広告のほうのちらしだったのか。だとしたらホストではなくポストだと考えたほうが自然だということになる。いつも帰宅時にするように、 [続きを読む]
  • 短篇小説「かもしれない刑事」
  • 「こいつが犯人かもしれないし、あいつが犯人かもしれない。犯人かもしれなくない奴なんて、この地球上には誰ひとりいないのかもしれない」かもしれない刑事は、あらゆる可能性を信じる男だ。彼にとって確率の高低は意味をなさない。1%も99%も、「可能性がある」という意味において、まったく同じと見なされる。どちらも「かもしれない」ということだ。お陰で常に容疑者は増えるばかりである。かもしれない刑事はいつでもどこで [続きを読む]
  • 気まぐれ無免許シェフの人名調理法
  • この世に変わらないものなどない。それは言語に関しても同様で、昨今の若者言葉に代表されるように、言葉もまた様々に姿を変えることで今日まで生き延びてきた。そうでなくとも、そもそも動詞には活用形というものがあって、使われる状況によって語尾が頻繁に変化する。しかし一方で変わらない言葉というのもある。その筆頭が固有名詞である。なるほどそれは、さすが「固」という字を頭に戴いているだけあってなんとも意固地で、周 [続きを読む]
  • 終わりなき里山戦争
  • このたび日本人力士の稀勢の里が、第72代横綱に昇進した。この事実をもって、長年に渡り日本を二分している「里山戦争」は、一気に「里」派が勢いを盛り返すことになるかもしれない。「里山戦争」とは、言うまでもなく「たけのこの里」派対「きのこの山」派による血で血を洗う戦いである。ちなみに「血で血を洗う」のでは全然洗っていることにならないから、それは単なる「血まみれ」と言ってよい。戦いの開始当初、そもそも優勢だ [続きを読む]
  • 短篇小説「冬将軍と鍋奉行」
  • 東京に初雪の降った夜、鍋奉行は家で冬将軍を待っていた。冬将軍と鍋奉行はSNSで出会った。なのでこの日が初対面となるはずだった。鍋奉行はまずは得意の鍋によるおもてなしで、冬将軍の心を溶かそうと考えていた。しかし冬将軍は各地の雪軍曹に雪を降らす指示を出してまわるのに忙しかった。冬将軍は「仕事でだいぶ遅れそう」と鍋奉行にメッセージを送った。鍋奉行はせっせと鍋の準備を進めていたが、やはりいきなり二人で、しか [続きを読む]
  • 明智、天下布武やめるってよ
  • 特に耳を傾けていなくとも、おのずと耳に入ってきてしまう会話というのがあって。寒波、寒波と日本中が騒いでいたきのう日曜日の夕方、近所にあるスーパーとコンビニエンスの中間くらいのマーケット。レジを済ませて自動ドアを出るところで、ちょうど入ってくる小学校低学年くらいの男の子二人組とすれ違った。二人とも下は短パンにハイソックス、上にはウインドブレーカーを着込んでいる。一人はネットに入れたボールをぶら下げて [続きを読む]
  • 連載小説「二言武士」/第三言:一心同体岡っ引きシックス
  • 似たような物品を所持している者同士というのは、何かと親近感の湧くものである。「御用だ! 御用だ御用だ!」器物損壊の容疑をかけられた覆之介を取り囲んだ六人の岡っ引きたちはそれぞれ、胸の高さに十手を構えていた。それに対し覆之介も、現時点における自らの得物である「バールのようなもの」を、無手勝流に構えたというかなんとなく前へと突き出した。騒然となった団子屋の店内に、張り詰めた空気が走り一瞬の静寂が訪れた [続きを読む]
  • 日本十大あけましておめでとうございます2017
  • あけましておめでとうございます(年末貼り替えたばかりの障子に穴を)。あけましておめでとうございます(上司が入っているトイレットのドアを)。あけましておめでとうございます(ぼったくりバーの扉を)。あけましておめでとうございます(サンタクロースが来た際に薄目を)。あけましておめでとうございます(ヤンキー先生に心の扉を)。あけましておめでとうございます(たどたどしい日本語のウイルスメールを)。あけまして [続きを読む]
  • 連載小説「二言武士」/第二言:シェフの気まぐれ団子
  • 刀剣ショップにて注文購入した刀を即座に「バールのようなもの」へと交換してもらい、その「バールのようなもの」でそこらじゅうの水道を破壊し尽くした挙げ句、やっぱり飽きたのでまた刀と替えてもらった覆之介は、結局その刀が気に入らずまたもや刀剣ショップへと赴き、再び取り戻した「バールのようなもの」を手に町を練り歩いていた。この侍、「二言」どころではない。「武士に二言はない」という定説が、単なるファンタジーで [続きを読む]
  • 連載小説「二言武士」/第一言:バールのようなもの
  • 「武士に二言はない」とよく言われるが覆之介は二言あるタイプの武士だった。覆之介は今日、刀剣ショップへ注文しておいた刀を受け取りにいった。しかし実物を見てみたらその刀はカタログの写真と全然違って、なんかフォルムが思ったほどじゃなかったので、店頭にあったいまストリートで流行りの「バールのようなもの」と交換してもらうことにした。こちらはすこぶるいい感じだけど正しい振りまわしかたがわからない。刀剣ショップ [続きを読む]