花瀬実 さん プロフィール

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花瀬実さん: 2097
ハンドル名花瀬実 さん
ブログタイトル2097
ブログURLhttp://ameblo.jp/lanevoiv/
サイト紹介文今回の新作はSFです。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供66回 / 365日(平均1.3回/週) - 参加 2009/01/16 00:54

花瀬実 さんのブログ記事

  • コンクエスト赤の惑星 −139−
  • −139− 滝沢も疲れ切っていた。火星ミッションで最大最難関のプロジェクトの事実上の総合指揮を終えた身に、久しく遠ざかっていた重力が余計に疲労を増幅させているようで、身体が重く、動くのが億劫で仕方なかった。他の白人や黒人メンバーのタフさを目の当たりにし、体力的なコンプレックスを感じずにはいられないようだ。やはりアスリートでもない限り、東洋人は他の人種には敵わないのかもしれない。彼はやっとの思いで新 [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −138−
  • −138− ラインハルトが新居に戻ると、先に帰っていた夫のヨハンと、12歳の息子ミハエルが、住居としての体裁を整えることに奮闘していた。「ただいま」「・・アンネ、おかえり」二人はハグを交わした。「・・ママ、おかえりなさい」「ミハエル、ただいま」母が帰ってきたことに気が付いた息子は、作業を中断して母のもとに駆け寄り、抱きついた。「どお?自分の部屋は元通りになったの?」「うん、もう終わったから、パパを [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −137−
  • −137− 「・・ずいぶんと様子が変わったわね」ラインハルトは内部に足を踏み入れると、周囲を見回して呟いた。「セルも床も取り付け角度が変更されて、景色が相当変わったからね」エドワードも高揚した様子を隠せない。「・・それにしても身体が重く感じるなぁ」アイルズが気怠そうに漏らす。「もう、低重力下の環境が長くなって、元に戻るのに少々時間がかかるかもしれないな」ギブソンも疲れ気味の身体には堪えるようだ。「 [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −136−
  • −136− その小さめの窓から居住区の底面の一部が見えるが、それが一呼吸おいてじわりと動き出すのが見て取れた。一同は滝沢を除いて控えめな歓声を上げ、隣の人と握手とハグを交わして喜びを表した。「・・まだ喜ぶのは早いですよ。安定的に回るとは限りませんから・・」滝沢は背中を向けたまま、コンソールの計器類を忙しく見回している。設定した回転速度まで達するのに90秒ほどかかった。滝沢はその後もしばらくは緊張し [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −135−
  • −135− 新居住区に入居予定の全員が移動し終わったのは、その日の夕刻だった。もちろん、まだこれで終わりではない。この新たな居住スペースを恒久的なものにするには、更なる作業工程が必要である。それらの作業は翌日から始められた。最初に取り掛かったのは、最も手間のかかる作業の一つである着陸ギアの取り外しだった。一基は既に外されているが、残りの15基を撤去するのに、丸二日を要してしまった。ギアに荷重はかか [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −134−
  • −134− 「サム、ポール、おめでとう。ファースト・チルドレンの一員になるわね」ラインハルトが久しぶりに見せる笑顔で祝福した。「ありがとう」「あなたたちの子供なら、きっと優秀な子が生まれるわよ」「さあ、そう願いたいわ」「いや、きっとそうさ。僕らの子だろう」ロビンソンが自信ありげに宣言した。「そうよ、ポールの言う通りだわ」 これまでにレッドプラネット号内で生まれた子供は十数人いたから、その子供たちが“ [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −133−
  • −133− そして、10メートルも進まないうちにエンプティ(空)を示す連続音に変化した。ロビンソンは大きく息を吸って、呼吸を止めた。ヘッドギアの中にはまだ酸素が残っているが、最後の手段として温存するつもりだ。しかし、強風を受けながら歩くのと、焦り。これらの副作用として、肺の中の酸素は急ピッチで消費され、1分もしないうちに限界を迎えてしまった。彼は堪らず息を吐きだし、呼吸を再開させる。そして十数秒が [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −132−
  • −132− そのピットコントロールから、ガラス越しにピットの様子がうかがえる。滝沢がその窓に姿を見せると、ベルトランが彼に向けて親指を立てた。滝沢は頷いて、外へ出るためのエア・チェンバーの扉を開くボタンを押した。そして、6名全員が入って扉が閉まったことを見届けると、ピット解放の準備も整っていることを確認した。数秒後、チームがピット内に現れ、外へ通じるハッチの前へ進む。滝沢はすかさずハッチ解放のボタ [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −131−
  • −131− 滑走路とキャンプを繋ぐこの道は、地形に合わせて上下にうねっているのだが、その突風はちょうどうねりの頂上に達したタイミングだったのだ。ローバーは簡単にグリップを失い、斜めになって緩い坂を下り始めた。マークはもちろんブレーキを踏むが、車輪は簡単にロックしてしまい、コントロールを失ってしまった。強い追い風と下り坂という条件ももちろんだが、小さい重力と、それと不釣り合いに大きな慣性質量の組み合 [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −130−
  • −130− ローバーは少しだが速度を上げた。そのほんの僅かなスピードアップでも、車体の揺れが大きくなったことを、全員が肌で感じた。ギブソンは無線のスイッチを入れる。「・・ギブソンだ、あと5分ほどで到着するんだが、酸素がぎりぎりだから、対処を頼みます」「ええ、わかったわ。ゲートを通過したら教えて。すぐにハッチを開けるから、そのまま突っ込んでちょうだい。エアユニットを用意しておくわ」今度はラインハルト [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −129−
  • −129− 「サマンサ、我々は移動を再開するよ。受け入れ態勢を準備万端整えるよう、アンネに伝えてくれ」ギブソンは決断した。ラインハルトは救出作戦が一段落した時点で、他の仕事をこなす為にそこを離れていた。「任せて、もうじき議長も戻ってくるから伝えておくわ。そっちの状況も変化があったら逐一知らせてちょうだい」「もちろんそうするよ」「とにかく気を付けてちょうだい。ね、ポール・・」「・・なんだい?」ロビン [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −128−
  • −128− 「問題は酸素だな・・あと・・1時間少々で尽きてしまう計算になると思うが・・」ギブソンは迷った。「順調に行けば、あと30分くらいでキャンプに戻れると踏んでたんだけど、つまりここでの待機が30分を超えるとアウトだよ、どうするの?」エドワードの不安は大きくなる一方だ。「エアユニットをもっと余分に持ってこられれば良かったのですが、作業人員の大量動員が続いたことでストックが尽きたせいもあって、置 [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −127−
  • −127− 「苦労かけたな、ここまでスムーズに来れたかい?」ギブソンが狭い車内を苦労して前席へ移りながら訊いた。「時間がかかりましたが、なんとか・・。重りになる物を積み込んだもので、足元が狭く窮屈だと思いますが、我慢してください」「大丈夫だよ、これがなきゃ風にあおられてひっくり返るかもしれないんだから、気にするな」エドワードはこれを自分が指示したことを言わなかった。ギブソンはそのやり取りを聞い [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −126−
  • −126− マークはローバーをとめて、無線を使った。「こちらマーク・スペンサー。聞こえますか」「・・・マークか。着いたのか?」彼の直接の上官であるギブソンが答えた。「はい、すぐ下にいます。エアユニットを持ってきていますから、対処願います」「わかった、少し待ってろ。お前はそのまま下りずに車内にいろよ」「了解です」彼らは早速行動を開始した。事前に話し合って決めた通り、ハッチを開くと、4人が強風吹き [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −125−
  • −125− 30分で準備は整えられた。先日のロビンソン夫妻の救出に使った例のシェル付きローバーに、重しとなる重量物と、残される4人のためのエアユニット8セットが積み込まれている。ドライバーはその時と同じく、マーク・スペンサーが担う。「では、行ってきます」マークは完全装備でローバーに乗り込んだ。「お願いね。くれぐれも気を付けて・・」ラインハルトが無線を通じて言葉をかけた。ローバーが収められたプラ [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −124−
  • −124− 強風に煽られた7人は一様に足を取られ、ますます足運びが鈍った。それでも這うようにしてステップにたどり着くと、階段をよじ登る。そして、次々とハッチの内側に這い上がり、最後のロビンソンが引っ張り上げるように収容されると、大急ぎでハッチが閉じられた。7人はぐったりした様子でその場に座り込むものもいた。 「議長、ひとまず全員無事に避難できました」ギブソンは早速指令室に連絡を入れた [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −123−
  • −123− 「大佐、終わりそう?」ラインハルトがたまらず呼びかけた。「アンネ、大丈夫、あと2枚ですよ」ギブソンが答えた。「砂嵐の先端がすぐそこまでやってきてるわ。早く避難してちょうだい」「そう思って、ここにいる7人以外はもう避難しています。我々も作業完了次第避難します」「わかったわ。とにかく無理はしないでよ、お願いだから」「大佐、サマンサです。あと15分で嵐の本体がそこに到達しますから、それま [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −122−
  • −122− 設置作業は午後になっても休みなく続けられた。嵐はかなり近づいている筈だが、それに対応できる状態まではもっていかなければならない。空調システムの構築は、ある程度の目途がついた時点でいったん打ち切っていた。これは滝沢らの尽力によって当面の危機をのりきったことから、先送りする余裕ができたからだ。人員は接合部分の外板パネル取り付けに集中された。 居住区モジュールと分離され、静止軌道上に [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −121−
  • −121− 「そうそう、エアはどれくらい回収できたの?」ラインハルトは思い出したように尋ねた。「確認してませんが、多分60パーセント強は回収できたと思います。落ち着いたら計画通り、窒素は分離させますよ」滝沢は担当させたエンジニアの言葉をそのまま伝えた。「頼むわね。窒素は今後の食糧生産にも重要な物資ですから、無駄にはできないもの」「窒素だけはここでの生産が軌道に乗ってませんからね。土壌から分離す [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −120−
  • −120− 「どうです、問題はないかな」滝沢がエアの回収でコンプレッサーを任せている担当者に声をかけた。そこは施設内のインフラの管理を一手に引き受ける集中制御室前の通路で、原付バイクほどの大きさのコンプレッサー三台がうなりを上げている。「順調ですが、やはり気圧の低下とともに効率が落ちています。恐らく0.35気圧くらいで限界を迎えると思われます」空気の希薄化に備えてアストロスーツに身を包んだ担当 [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −119−
  • 滝沢はそこで新たな計画に関して、スケジュールと手順等の綿密な打ち合わせを行った。ここで決まったことは、住民の移動開始を本日の午後4時とし、それと前後してエアの浄化システムの能力を避難先である格納ピットに集中させると同時に、そこのエア経路だけを完全分離遮断させること。それに先立って3時50分からコンプレッサーを作動させ、接続した高圧タンク6基にキャンプと仮居住区のエア回収を開始する。エアの回収は状況 [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −118−
  • −118− 牽引速度は徐々に上げられた。そして、モジュールが設置ベースの真上に到達したのは、牽引開始からおよそ2時間後である。慎重に位置を決めると、直径が130メートルもある設置ベースが、油圧ジャッキでゆっくりと立ち上がり、モジュールの中央部を持ち上げてぎりぎりの線で宙に浮かせた。その状態から次の段階に移ると、ほとんどすべての人員を使って機体下面を覆うパネルを全て除去し、次に内側にスライドさせ [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −117−
  • −117− 7時15分きっかりに牽引作業は始まった。この場所からおよそ西へ400メートル南へ200メートルの位置まで、この巨大なモジュールを移動させることになる。ここには当初計画での滑走路終端部に近いということで、最短移動距離を想定して、モジュールを設置するベースが設置されている。牽引の動力であるウインチは設置ベース越しに、およそ600メートルのケブラー製ワイヤーロープで引っ張る。ワイヤーは最 [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −116−
  • −116− この日の夜になると、各チームは明日に備えての準備に大わらわだった。人員の選別と配置、機材の手配確保など、やることは山ほどあった。中でもブレーキの固着解消に向けての作業手順の徹底は、多人数かつ状況も不透明とあって、綿密な打ち合わせが図られた。全ての手配準備が終わったのは日付が変わった未明のことだった。 それから数時間後に迎えた朝、夜明けとともに総勢100名近いメンバーがそれぞれの [続きを読む]
  • コンクエスト赤の惑星 −115−
  • −115− 「・・そうだ・・アンネ、希ガスを使いましょう」滝沢は下に向けていた視線を勢いよく上げて思い付きを口にした。「・・希ガスを?」科学者でもあるラインハルトにも滝沢の言わんとすることが見えてきた。希ガスとは化学的に極めて安定な、無味無臭の単元素の気体だ。「そうです、各種の希ガスが冷凍保存されていますから、それを窒素の代わりに放出してやればいけますよ」「そうね、その手があったわね。それで、 [続きを読む]