汎武 さん プロフィール

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汎武さん: はなし汎武ん
ハンドル名汎武 さん
ブログタイトルはなし汎武ん
ブログURLhttp://hanbu-y.blog.so-net.ne.jp/
サイト紹介文日常のあれこれ、本の事、誰彼の事、合気道の事等々、諸事への思いを整列させることもなく書いております。
自由文写真やイラストなど殆どない、文字だけの地味なブログです。全体のトーンはエッセイ風でありましょうか。ま、ちょっと創作ものも入っていますし、批評めいたものも煩わしくない範囲で書いております。よろしければ覘いてみてください。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供163回 / 365日(平均3.1回/週) - 参加 2009/02/10 14:27

汎武 さんのブログ記事

  • あなたのとりこ 44
  •  新宿に出ると寄席の末廣亭近くの雑居ビルの、日比課長と袁満さんが時々通っていると云う洋風居酒屋に四人は入り込むのでありました。先ずは若いウエイターの男に人数を聞かれて、四人掛けのボックス席に案内されるのでありました。その店には袁満さん名義でウイスキーボトルがキープされていて、後はレーズンバターやら野菜スティックやらミックスピザやらのつまみ物を適当に頼んで、四人での二次会が始まるのでありました。「山 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 43
  • 「ああそう? 何かちょっとくどくなってきたようだからさ」「くどくなんかなっていませんよ!」 山尾主任はあくまで抗議するのでありました。日比課長はちょっと持て余すような苦笑いを浮かべて山尾主任から視線を外すのでありました。 袁満さんと均目さんはこの遣り取りを傍観しているのでありました。しかし冷ややかに無視していると云うのではなく、自分如きが嘴を挟むのは遠慮しておこうと云う、謹慎を装って非当事者である [続きを読む]
  • あなたのとりこ 42
  • 「要するに、未だ子供って事だな」 日比課長が至極簡単にそう結論するのでありました。「或いはひょっとしたら、人が窺えないような高い志望を秘め持っているとか」 均目さんは日比課長のコップにビールを注ぎ足すのでありました。「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや、なんて中国の箴言がありましたね」「何だいそれは?」 日比課長は均目さんの顔を覗き込むのでありました。「陳渉の言葉かい」 寡黙に升酒を飲んでいた片久那制作 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 41
  •  日比課長が話題を少々横滑りさせるのでありました。「はあ。まあ。・・・」 頑治さんは先輩社員に対しての弁えから、大いに遠慮がちに苦笑うのでありました。「今迄、あんな妙な人は見た事が無かったねえ」「妙と云うのか、好い加減と云うのか、適当と云うのか、・・・」 この会話に山尾主任も加わるのでありました。 山尾主任は頑治さんのコップにビールを注ぎ足そうとするのでありました。頑治さんは両手でコップを捧げ持ってそれ [続きを読む]
  • あなたのとりこ 40
  •  土師尾営業部長は片久那制作部長とほぼ同じ頃大日本地名総覧社に、これも同じく編集者として入社したと云う事でありました。しかし贈答社になった後は色々と経緯があって営業部に籍を移して、その後はずっと営業の仕事をしてきた人のようであります。 日比課長も大日本地名総覧社時代に二人に遅れる事二年で入社した人で、その時代の生き残りは経理の甲斐計子女史を入れて四人という事でありました。この会社が贈答社となったの [続きを読む]
  • あなたのとりこ 39
  •  山尾主任が、あの時の土師尾営業部長のような至極真面目な面持ちで訊くのでありました。頑治さんは思わず山尾さんの顔を凝視するのでありました。「おいおい、山尾君までそんな間抜けな質問をして唐目君を困らせるのかい」 片久那制作部長がげんなりしたような顔をするのでありました。この質問がどうして片久那制作部長をげんなりさせるのか、それに頑治さんを困らせるのか、山尾さんは良く判らないと云った表情をしているので [続きを読む]
  • あなたのとりこ 38
  • 「本郷に住んでいてもあんまりそっちの方には遠征しないか」「そうですね。以前散歩で根津神社とか六義園に行った時に通ったくらいで、知人も居なければ今までこれといった縁もありませんでしたからねえ」「本郷二丁目に住んでいるのなら、後楽園球場に近いかな」 頑治さんの向い側正面に座る日比課長が言葉を挟むのでありました。「ええ。壱岐坂を下りきるとすぐですね」「俺は時々そこに巨人の試合を観に行くよ」「ああそうです [続きを読む]
  • あなたのとりこ 37
  • 「そんな事は疾うに判ってはいるけどさあ」 日比課長は忌々しそうに云うのでありました。 制作部の方から片久那制作部長がこちらに遣って来るのでありました。その後に山尾主任と均目さんが出て来て、均目さんが制作部スペースの電気を消すのでありました。制作部もどうやら本日の仕事はここで仕舞いのようであります。「そろそろ行こうよ」 片久那制作部長が日比課長にそう声を掛けると、日比課長は机の上に広げていた書類を引 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 36
  • 「配送所は近いのですか?」 頑治さんが訊くと自ら運転席に座った袁満さんは一つ頷くのでありました。「すぐそこだよ。歩いて持って行っても大丈夫なくらいだけど」 袁満さんはそう云い終らない内に右折にハンドルを切るのでありました。袁満さんは何時も車で彼方此方に出張しているようだから運転は極めてスムーズな感じであります。 成程車に乗ってほんの一二分走った辺りに目指す配送所はあるのでありました。すぐ近所、と云 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 35
  • 「そうか、それなら唐目君に頼もうか」 土師尾営業部長は語気に大いに丸みを添えるのでありました。「では、発送指示書をください」 差し出しされた頑治さんの掌に、土師尾営業部長は発送指示書を近づけながら険のある横目で刃葉さんを睨むのでありましたが、刃葉さんの方は何処吹く風といった風に全くの無表情で帰り支度に取り掛かるのでありました。「近くに運送会社の集荷を取り扱っている所がありますか?」 今から運送会社 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 34
  •  刃葉さんが持ち帰った荷を収め了えた後、頑治さんはその前から取り掛かっていた棚の整理整頓作業を続けるのでありました。その間刃葉さんは何の用事があるのか倉庫を出たり入ったりしているのでありましたが、これは午後五時の終業時間まで無意味に時間を潰している営為としか頑治さんには見えないのでありました。「今日はこれで上がろう。初日からそんなに張り切っていると後が持たないぜ」 これは傍に遣って来て、棚の上で在 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 33
  •  刃葉さんが池袋の宇留斉製本所から引き取って来たであろう荷物下ろしを手伝うために、頑治さんは倉庫出入り口に向かうのでありました。車は駐車スペースにバックで入って来て、やや斜めに停めてあるのでありました。矢張りがさつな駐車の仕方であります。後ろを倉庫扉にぶつけなかっただけ良かったと云えば良かったと云うものであります。 刃葉さんは降りて来て車の後部ハッチを開くのでありました。その途端満載された段ボール [続きを読む]
  • あなたのとりこ 32
  •  物堅いと云うのか諄いと云うのか。しかしこれも、一種の煩さではありますか。まあそれは兎も角として、袁満さんと云う人は屹度几帳面な性格の人なのでありましょう。 袁満さんは段ボールを下ろし終わると、売れ残って持ち帰ったのであろう中身の数を確認してから倉庫内の元々在った棚へそれを仕舞うために運ぶのでありました。「あれ、商品の置き場所を変えたの?」 奥から袁満さんの声が聞こえるのでありました。明らかに頑治 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 31
  •  袁満さんは車の後部ハッチを開けて積まれている段ボールの荷を下ろし始めるのでありました。何処からか荷物を引き取って来たのでありましょうか。取り敢えず頑治さんは荷下ろしを手伝うために車の中の段ボールに手を出すのでありました。「ああどうも」 袁満さんは頑治さんにまた顎を引くような仕草をしながら礼を云うのでありました。この袁満さんと云う人は何に付けても「ああどうも」と先ず云うのが口癖のようであります。当 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 30
  • 「ああどうも、・・・」 不審気な顔色はその儘ながらそれをあからさまに表すのは先ずは憚るべきと判断してか、男はほんの少し口元を綻ばせるような表情をして、不得要領に頑治さんに向かって顎を引くような仕草で会釈をして見せるのでありました。「贈答社の方ですね」 頑治さんは明朗に云って男よりははっきりとしたお辞儀を返すのでありました。「ええ、そうですが」「今日から社員になった唐目と云う者です」 頑治さんは名乗っ [続きを読む]
  • あなたのとりこ 29
  •  午後の仕事は刃葉さんが池袋の宇留斉製本所から帰って来る迄倉庫の留守番、と云う事になるのでありました。その間頑治さんは午前中に始めた倉庫整理やどの商品と材料がどの棚に有るかの再確認、それに発送指示書が出ていたのでそれに従って山尾さんから助言を貰いながら商品を梱包して発送伝票を書き、運送会社に集荷依頼の電話をするとか云ったものでありました。発送仕事はアルバイトでやった経験があるから梱包作業も伝票書き [続きを読む]
  • あなたのとりこ 28
  •  しかしその狼狽の色もすぐに顔から消えて刃葉さんは頑治さんに笑顔を向けるのでありました。どういう心算の笑顔なのか頑治さんは判然としないのでありました。嘗めていると思えば思えなくもないし、一種の羞笑と取れば取れなくはないのであります。「でもまあ、そんな固い事云うなよ」 ちっとも応えないと云うのか、あっけらかんとしたものであります。頑治さんはげんなりして仕舞うのでありました。まあ、幾らこちらの言に分が [続きを読む]
  • あなたのとりこ 27
  •  見ていると羽葉さんはその古座布団の前に立ち、膝を屈して腰を落とし、その落した腰の横に曲げた両腕を構えるのでありました。一体何が始まるやらと思っていると、羽葉さんはその姿勢から左右の拳を交互に古座布団に向かって打ち出すのでありました。始めはゆっくり次第に早く、固く握り締められた拳が古座布団に食い込むのであります。 打ち出す時に刃葉さんは口から息を短く強く吐き出すのでありますが、これはどうやら空手の [続きを読む]
  • あなたのとりこ 26
  • 「何か手伝いましょうか?」 見取り図を作業台の正面に貼り終えた頑治さんが刃葉さんに訊くのでありました。「そうねえ、じゃあ、上に行って新しい発送指示書があったら持ってきてくれるか」「はい判りました」 頑治さんは倉庫を離れるのでありました。外に出て、棚を上ったり奥をほじくったりしたために新品の作業服に付着した埃を忌々しそうに掌で掃うのでありました。 上の事務所に行くと経理の甲斐計子女史が一人机で帳簿付 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 25
  •  頑治さんが掃除している間、刃葉さんは外出のため途中で止めていた梱包仕事を、精を出す、と云うよりは如何にも精を出し惜しみするような風情で続けるのでありました。持って帰って来た紙包みから紙のガムテープを取り出すところを見ると、仕事を途中で放り出して喫茶店でコーヒーを飲むために外出していたのではなく、梱包途中で切れて仕舞ったガムテープを買いに外出していたのでありましょう。 粗方の掃除を終えた頑治さんは [続きを読む]
  • あなたのとりこ 24
  •  とまれ頑治さんは貰った作業服と厚紙を手に今度は一人で下の倉庫に戻るのでありました。見取り図を描き終えた後は商品や材料をもう一度念入りに確認したり、刃葉さんの梱包仕事を手伝ったりするようにと土師尾営業部長から指示もされるのでありました。 土師尾営業部長から頑治さん専用の倉庫の鍵を受け取って下に行くと、またもや刃葉さんの姿が見当たらないのでありました。扉は半開きで鍵も締めていないのは先程と同じであり [続きを読む]
  • あなたのとりこ 23
  • 「紙をどうするんだい?」「棚の見取り図を描いて、倉庫の邪魔にならない所に貼っておきたいと思いまして」「ああ成程ね」 片久那制作部長は頑治さんの意図を了解して横のマップケースの一番下から、大判の雑誌を見開きにしたくらいの大きさの厚紙を一枚取り出すのでありました。手渡された厚紙は何かの書籍の、表紙の校正刷りと思われるものでありました。その厚紙の、印刷されていない裏面を見取り図描きに使えと云う事でありま [続きを読む]
  • あなたのとりこ 22
  • 「今日の昼一番に刃葉さんが向かう事になっている、宇留斉製本所、でしたか、そこへは自分は付いて行かなくても良いのでしょうか?」 頑治さんはまた山尾さんの黒カーデガンの背中に言葉を投げるのでありました。「ああ、今日はいいよ。来週の月曜日に一緒に行ってくれれば。今週金曜日の本郷の大木目製本社の方には行って貰う事になるから、今からその心算でね」「判りました」 上の事務所に戻るとドアを入ってすぐの四つの机が [続きを読む]
  • あなたのとりこ 21
  • 「午前中に完了するんだろうね?」「まあ大丈夫でしょう」 刃葉さんのその受け応えに山尾さんは疑わしそうな目付きをするのでありました。「この梱包仕事のために、何時も定期で行って貰っている宇留斉製本所の仕事を午後一番に回したんだから、午前中に終わって貰わないと困るよ」 宇留斉製本所と云うのは月曜日午前中に制作部の定期便として行くべき、池袋にある製本所の名前でありましょう。そこへの出来上がった製品引きとり [続きを読む]
  • あなたのとりこ 20
  •  とこれは、姿の見えない刃葉さんに対して舌打ちしながらの山尾さんの言葉でありますが、独り言なのか頑治さんに聞かせる繰り言なのか良く判らないのでありました。 作業台の上には梱包途中の段ボールがあって傍にビニールバンドの切れ端やら結束用の金具、それに緩衝材代わりの新聞紙を丸めた塊が乱雑に転がっているのでありました。刃葉さんは作業途中でのっぴきならない用が出来て姿を消したと云った風情であります。 頑治さ [続きを読む]