大吉 さん プロフィール

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大吉さん: 大吉堂 読書録
ハンドル名大吉 さん
ブログタイトル大吉堂 読書録
ブログURLhttp://daikichidou.blog56.fc2.com/
サイト紹介文読んだ本の感想雑記。ミステリ中心に乱読雑読。
自由文好きな作家は、有栖川有栖、森博嗣、宮部みゆき、田中芳樹、泡坂妻夫、江戸川乱歩、梨木香歩、いしいしんじ、殊能将之、東川篤哉、北村薫、藤野千夜、恩田陸、西澤保彦、などなど。気になりゃ何でも読みます。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供77回 / 365日(平均1.5回/週) - 参加 2009/02/25 21:52

大吉 さんのブログ記事

  • 『チャリング・クロス街84番地』(ヘレーン・ハンフ・編著、江藤淳・訳)
  • ニューヨークに住む本好きの女性がロンドンの古書店に送った一通の手紙、そこから始まった20年に及ぶ手紙の行き来。ユーモアに溢れ素敵な本に出会えたことを心の底から喜び、残念な本と出会ってしまったことへの落胆も隠さずぶつけるヘレーンの筆に笑みがこぼれます。そして対する古書店のドエル氏のある種の真面目さと、へレーンのユーモアを受け取るユーモア性のある返信に心温まります。そこには本を通じて感じ得る信頼と友情 [続きを読む]
  • 『こゝろ』(夏目漱石)
  • そういえばきちんと通読していなかったと、今更ながらに読みました。あれ? 漱石ってこんなにも読みやすかったっけ? と思いながらスルスルと読み進めたつもりだったのですが、実際は普段よりも時間が掛かっていました。これは面白い感覚ですね。読みやすさと読み応えの共存というのでしょうか。エゴイズムと罪の意識の葛藤。それだけならば、下の「先生と遺書」のみでも書けるのではないか。でもそのできごとを経た上でどのよう [続きを読む]
  • 『灰色の畑と緑の畑』(ウルズラ・ヴェルフェル、野村泫・訳)
  • 今から40年以上前の作品ですが、ここに書かれていることは今に通じるものも多いでしょう。子どもたちを中心として人々の生活をスパッと切り取って描写されています。その結果として貧困や差別などが表出しているように感じました。つまり世の中のことを描こうとすると、そういう問題となるできごとを書かざるを得ないかのように。1編1編は短くスッキリと書かれています。そのため問題となるものが色濃く見えます。問題は提示さ [続きを読む]
  • 『ドクターぶたぶた』(矢崎存美)
  • ピンクのぶたのぬいぐるみのぶたぶたさん、今回は消化器系内視鏡手術のエキスパートです。ぶたぶたさんのお医者さんだというと小児科だとか過疎地でお年寄り相手にというイメージがありましたが、まさか胃がんの手術に携わるような話になるとは。(過疎地云々はそういう面も物語上出てきますが)シリーズを追って読んでいる身としては、ぶたぶたさんはぬいぐるみだけどぶたぶたさんというひとりの人物(?)なんですけれど、物語の [続きを読む]
  • 『片隅 』02(伽鹿舎)
  • とある企画で不意に手にした本は九州限定に配本された文芸誌でした。谷川俊太郎と茨木のり子の詩に挟まれて、様々な小説が並びます。ここでもまた、ここでしか出会えなかったろう作家との出会い。ジャンルが定められている訳でないので、読み始めてもしばらくは曖昧模糊とした中を手探りで進むような感覚。人物は? 世界は? そんなことを思いながら読み進めることの面白さ。思いも寄らない世界へと連れて行かれる快感。そんなも [続きを読む]
  • 『尼僧とキューピッドの弓』(多和田葉子)
  • ドイツの田舎町の歴史ある尼僧修道院を訪れた日本人のわたし。そこには様々な人生を送ってきた女性たちが共同生活をしていた。そんな尼僧たちの生活を観察するわたし。しかしわたしに滞在許可を与えた尼僧院長が不在だった。透明美、陰休、老桃、火瀬、貴岸。わたしが尼僧たちにつけた呼び名は、その読みを示されておらず非現実感を高めます。しかし彼女たちはしっかりと現実に足を下ろしてそこにいます。修道院の尼僧というと人生 [続きを読む]
  • 『ダーウィンと出会った夏』(ジャクリーン・ケリー、斎藤倫子・訳)
  • 間もなく20世紀を迎えようという年の夏、キャルパーニアは庭にいるバッタに見たことのない色と大きさのものがいることを見付け、変わり者の祖父にそのことを相談する。それが彼女と科学との出会いだった。百年以上前のアメリカ南部の田舎町に住む少女が、ダーウィンの著書と自然科学を観察研究する祖父に出会い科学の面白さに目ざめる物語。時代が時代のため女の子が科学に興味を持つこと自体周りに認めてもらえず、苦手意識に溢 [続きを読む]
  • 『岸辺のヤービ』(梨木香歩)
  • いかにもな物語、いかにもな文体、いかにもな挿絵、そんないかにもな要素が集まり素敵な作品となっています。こんな作品がいま生まれた喜び、いま出会えた喜び。マッドガイド・ウォーターの岸辺に棲む小さないきもののヤービ。ウタドリ先生が偶然出会ったヤービから聞いた彼らの物語。ものを食べることに疑問を抱いたいとこのこと。ママを探しに冒険したこと。新しくできた友達とお茶会を開いたこと。冬ごもりの準備を始めたこと。 [続きを読む]
  • 『月と六ペンス』(サマセット・モーム、金原瑞人・訳)
  • タイトルだけは知っているが内容を全く知らず、でも何かが気になって手に取ったのです。タイトルの響きかも知れません、表紙のデザインかも知れません、金原瑞人さんが訳をしていたからかも知れません。そして読み始める時にはじめてゴーギャンをモデルとした人物の物語であることも知りました。そんな状態で読んだ物語はとても強い力を持っていました。職も家族も自分さえも捨てて絵を描くことを選んだストリックランド。いや絵を [続きを読む]
  • 『あたらしい図鑑』(長薗安浩)
  • 扁平足がきっかけで出逢った老紳士は詩人だった。過去様々な作家が「少年と老人と夏」で物語を紡いでいます。この組み合わせはある意味定石なのでしょう。しかしだからこそ難しいテーマでもあると思います。そして見事にここにしかない「少年と老人と夏」が描かれていました。言葉にならないものを言葉にするのが詩人。そんな詩人からもやもやとした言葉にならないものをスケッチブックにスクラップしていけと言われる少年。はじめ [続きを読む]
  • 『西巷説百物語』(京極夏彦)
  • 今回の巷説は上方が舞台で以前も出てきた靄船の林蔵がメインとなると聞き、はてメインとなるような人物だったかなと思いましたが、するりと人の懐に入ってくる存在感があるのだかないのだかというのが魅力に思えました。これはミステリでいうところの「倒叙もの」の手法ですね。犯人側の視点で物語が紡がれる。犯人というとしっくりと来ないものもありますが、犯人やら加害者が事件や世間や社会や人々をどう見ているのかが描かれて [続きを読む]
  • 『The Wreckers 呪われた航海』(イアン・ローレンス、三辺律子・訳)
  • 乗っていた船が難破し、とある村に辿りついたジョン。その村は難破船からの積荷を略奪することで生計を立てていたのだった。かつて実際にいたレッカーと呼ばれる難破船から漂流してきた積荷で生計を立てていた人々。それを題材に書かれた冒険物語。漂流物を神からの賜り物のように扱っていたものが、法律でその権利が認められると偽の信号等で船を故意に難破させようとする動きが出たことも史実らしく、それが物語の発端となってい [続きを読む]
  • 『矢澤潤二の微妙な陰謀』(秋梨惟喬)
  • ある時は出版社の編集者、ある時はNPO職員、ある時はフリーの記者と様々な肩書きで現れる矢澤潤二。近付いた相手にオカルト的話を持ちかける裏に潜まれたものとは?超能力やUFOや風水や埋蔵金など怪しいネタを、陰謀論を絡めながらもしかして本当にあるのかもと思わせてしまう連作短編集。オカルト的ネタの説明の際に取り上げられるフィクションが半村良やら山田風太郎やらウルトラマンにバビル二世、帝都物語と微妙に(いや、かな [続きを読む]
  • 『アンブラと4人の王子』(アン・ローレンス、金原瑞人・訳)
  • おとぎ話のお姫様と王子様の世界のようでありながら、シンデレラともかぐや姫とも違うお姫様の物語。小さな公国の若き女公アンブラは隣国の4人の王子から様々な影響を受ける。四男オットーからは音楽の素晴らしさを知り楽団を作りフェスティバルを開く。三男ベイジルからは学問の素晴らしさを知り大学を設ける。二男ベイからは政治の駆け引きを知り外交に精力的になる。そして長男クロービスはそんな姫と弟たちを見守っている。そ [続きを読む]
  • 『いしいしんじの本』(いしいしんじ)
  • 作家いしいしんじの本にまつわるアレコレ。書評や解説文から本の思い出話などなど。本の余白に鉛筆を走らせながら読む。そこに書かれるのは無意識から出て来る形。書いた本人も思いも寄らない形が浮かんで来る。本を読み終えたあとページを繰り直すと現れる形は、読んだ作品と読み手の本質が混じり合ったものなのか。そんな感じで述べられるので、対象となる本を読んでいなくとも心に響いてくるものがあります。読んだ本を材料とし [続きを読む]
  • 『ぼくは落ち着きがない』(長嶋有)
  • 実は初めての長嶋有です。買取でやって来た本が気になり手に取りました。こういう出逢いも面白いものです。とある高校の図書部の日常。図書委員でなく図書部。図書室にまつわるあれこれを図書委員とともに行ない、図書室を区切ったスペースを部室としてたむろする。皆それぞれ「ふつう」の高校生でありながら、クラスからはどこか「浮いた」存在。部室の中では部室の中での「ふつう」を得られるが、そこでも「役割」を演じるともな [続きを読む]
  • 『小さなソフィーとのっぽのパタパタ』(エルス・ペルフロム、野坂悦子・訳)
  • 病気のためずっとベッドで寝ているソフィーの部屋で夜中に人形たちがお芝居を始め出した。猫のテロールが「人生でなにが手に入るか」を扱った劇の役者を呼びかけた時、ソフィーは「わたしもそのお芝居に出るわ!」と叫び、お気に入りの人形のっぽのパタパタとともに奇妙な世界へと旅立つのだった。風刺に溢れたようにも見える不思議な世界で少女が冒険するとなると、やはりアリスを思い浮かべるのですが思いも寄らない結果が待って [続きを読む]
  • 『福家警部補の報告』(大倉崇裕)
  • 福家警部補は好きな探偵役の5本の指に入る人物です。しかしこのシリーズは倒叙型のスタイルなので、福家警部補自身の描写は少ないのですね。犯人側もしくは事件の関係者から見た福家警部補の姿が描かれるだけです。おっとりしているようなとぼけているような様子からズバズバと犯人を切り崩していく姿は痛快にしてかっこいいのですが、今作では福家警部補の怖さが際立ちました。もしや天然ボケやら容姿への無頓着さもわざとなので [続きを読む]
  • 『芸人と俳人』(又吉直樹、堀本裕樹)
  • 俳句は点だと思っていました。五七五の少ない音の中に季語を含めるなど規制も多いので、一点のみを切り取って表わすものだと思っていました。しかし一点は一点でも水に落とす一点の墨滴のように、放たれた瞬間に広がり世界となるものだと知らされました。芸人又吉直樹が俳人堀本裕樹に俳句について教わる形で進められます。そもそも俳句とは何なのか? 五七五の定型とは? 季語や切字の扱い方など基本から入り、先人の句集を読み [続きを読む]