水本爽涼 さん プロフィール

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水本爽涼さん: 水本爽涼 歳時記
ハンドル名水本爽涼 さん
ブログタイトル水本爽涼 歳時記
ブログURLhttp://s-mizumoto.cocolog-nifty.com/blog/
サイト紹介文日本の四季をベースに中・短編小説、脚本、エッセイなどを綴った小部屋
自由文一応は、作家ですか? ^o^ (そこは、「か」は、いらない)
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供369回 / 365日(平均7.1回/週) - 参加 2009/08/19 10:31

水本爽涼 さんのブログ記事

  • よくある・ユーモア短編集−62− 偶然の一致
  •  朝からバタバタしているのは、犬のペグを飼っいる柔木(やわらぎ)である。というのは、預(あず)かってもらった動物病院から早朝、電話が入り、出産が近いというのだ。目の中に入れても痛くない…これはまあ、少し大げさな物言いだが、それほど柔木が可愛がっているペグである。当然、バタバタする訳だ。いつもはのんびりとトイレの便座に座る柔木だったが、この朝は便座に座りながら歯ブラシを縦横に小忙(こぜわ)しく動かし [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−61− 風呂屋
  •  国会で賑(にぎ)やかな代表質問が行われている。実況中継のテレビ画面を観ながら邦枝(くにえだ)は欠伸(あくび)をした。「…ちっとも変らんなあ」 那枝は欠伸のあと、そう呟(つぶや)きながら、さらに溜息(ためいき)を一つ吐(は)いた。何が変わらないのか・・といえば、与野党の国会議員の質問と、その答弁内容である。那枝に言わせれば、いつやら聞いた同じような質問と答弁を、同じ内容でまた蒸し返している…という [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−60− ズレ
  •  五月の半(なか)ば、外で夕食を済ませた丸太木(まるたぎ)は、職場から帰宅した。丸太木は残業続きですっかり疲れていた。今日はぐっすり眠るか…と、丸太木はシャワーのあとビールを喉(のど)へグピッ! と流し込み、そのまま寝入ってしまった。次の日は休日である。仕事も一応、切りがつき、丸太木としては気分的にぐっすりと眠れる訳だ。当然、次の日の天気など、雨が降ろうと槍が降ろうとどうでもよかった。ところが、で [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−59− 黒白(こくびゃく)
  •  湯鰤(ゆぶり)は久しぶりの快晴に、妻の香織(かおり)に命じられた座布団を干そう…と、庭に置かれた床几(しょうぎ)の上へ並べ始めた。こういう日は気分も高揚(こうよう)するというものである。何げなく床几の足下(あしもと)を見ると、床几の四本の足の一本が少し短いことに湯鰤は気づいた。なぜこの一本だけが…と解(げ)せなかったが、まあ短く歪(いびつ)になっているのだから仕方がない。「どれ…修理してやるか」 [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−58− 退化
  •  木場(きば)工業では日夜、新製品の受注が舞い込み、社内の開発部は活気に包まれていた。というのも、親会社の深川産業が新製品の考案を木場工業へ依頼したところ、見事、木場工業の技術スタッフが新製品開発に成功したのである。この新製品は世界にも類(るい)のない新技術製品として、世界での特許[パテント]料も含め、多額の当期純利益を計上しようとしていた。木場工業は申すに及ばず、親会社の深川産業の株価もウナギ上 [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−57− 変わる
  •  春の陽気に誘われ、最近、この地へ引っ越してきた押花(おしばな)は野原を散歩していた。押花の散歩ルートは、ほぼ決まっていて、いつも同じ道を辿(たど)り、途中の湧き水のせせらぎで美味(うま)い水を味わったあと、自宅へ戻(もど)る・・というものだった。そして、この日も押花は道を歩いていた。ところどころに黄色のタンポポが咲き、小鳥の囀(さえず)りさえ聞こえてくる。加えて春の心地よい微風(そよかぜ)が頬( [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−56− 苦楽(くらく)
  •  電気の流れ、電流は抵抗を受ける。大げさに分かりやすく言えば、ピケを張り、入ろうとする人の流れを阻止しようとバリケード封鎖する古き時代の組合員や学生運動の闘士の抵抗にも似ている。…これは穿(うが)った見方だが、まあ、例(たと)えるならそんなものだ。記号式ではI(電流)=V(電圧)/R(抵抗)となる。世の中も同じで、働く人々は必ず苦しむ抵抗を受けている。それを撥(は)ね退(の)け、僅(わず)かな電圧 [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−55− 無意識
  •  夕方、どういう訳か無性にカッブ麺が食べたくなった凸木(でこぎ)は、テレビの男子サッカーのビデオ録画を観戦しながら麺を啜(すす)っていた。「おおぉぉっ!」 しばらくし、思わず雄叫(おたけ)びをあげ、凸木は麺を喉(のど)に詰めそうになった。カップの汁が無意識に少し零(こぼ)れた。延長前半15分、貴重なアシストからのヘディング・シュートが相手ゴールの左上ネットに突き刺さったのである。相手チームは強豪だ [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−54− 人を探す
  •  毎日、会社までの20分ばかりを徒歩で通勤する祭川(さいかわ)は、最近、車以外、人を見ないな…と歩きながら思った。それはなにも今日に始まったことではなく、数十年前から続いている現象なのだが、今朝、歩いていて、初めてそう思ったのである。こいつは馬鹿か? と思われる方も多いだろうが、それはなにも祭川に始まったことではない。地球上で暮らす高度文明を築き上げた大部分の人々が、恐らくは何の疑いもなく日々、そ [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−53− チャンス
  •  若い市職員の永田は、疲れていた。働けど、働けどだな…と、啄木の詩を脳裏(のうり)で口ずさみながら、じぃ〜〜っと、格好をつけ、凍(こご)えた手を見た。やはり、ささくれだった詩に出てくるようなそんな手ではなかった。ただのありふれた、どこにでもありそうな手だった。今朝の雪がいけないんだっ! と、雪を悪者(わるもの)にした。子供の頃、雪が降るとあれだけ喜んでいた自分が信じられなかった。「なぜ雪なんか降る [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−52− 生きている
  •  今日も汗を流し、角牛(つのうし)は働いていた。ペンキに塗(まみ)れ、家へ帰ると、身体から染(し)みついたペンキの臭(にお)いがした。嫌いな臭いではなかったが、浴室でのシャワーが癖(くせ)になっていた。ほっこりした気分でやっと畳(たたみ)の上へ身体を委(ゆだ)ねると、やっと生きている気がした。 いつものように夕食を食べ、僅(わず)かに寛(くつろ)いだあと、また明日を思った。寝ようと思い、ふと見上げ [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−51− 笑顔
  •  世の中で生きていく瞬間は、すべてが真剣勝負だが、そこに臨む本人の姿勢で大きな差異を見せることが、よくある。 太馬(ふとうま)は、よしっ! と気合いを一つ入れると家を出た。今日はリストラ後、職探しをして受けた会社の面接があるのだ。これまで数社、受けたが、すべてボツで採用されなかった。帰宅して腕組みで考えても、思いつくような原因が太馬には掴(つか)めなかった。ただ、今朝、起きたとき、洗面所で閃(ひら [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−50− 意固地(いこじ)
  •  どうも上手くいかないぞ…と、田井岡は意固地(いこじ)になっていた。というのも、冷蔵庫へ収納しようとしたサランラップが半(なか)ばで破れ、ついに出せなくなったのである。最初は、ははは…この程度なら前のように…と田井岡は高(たか)を括(くく)っていた。ところが、ドッコイである。そうは問屋が卸(おろ)さず、スンナリと商品が小売りで売られないから手に入らなくなり・・ということではなく、田井岡は手間どる破 [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−49− 靡(なび)く
  •  世の中で生きる人々には勢いが個々にあって、それらが他の人の勢いと鬩(せめ)ぎ合って渦巻(うずま)いている。だが、その勢いは誰の目にも見ることができない。いわば、その人を取り囲んで守り、あるいは攻めようとするオーラというようなものに他ならない。その勢いが強く、大きければ大きいほど他の勢い、すなわち、他の人々を靡(なび)かせることができるのである。逆に考えれば、その強い勢いに自然と人々は靡くことにな [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−48− 想定外
  •  久しぶりの晴れ間に、宝木は自転車で買い物に出ようと家を出た。早朝の初雪に厚着をして風邪(かぜ)を寄せつけないよう万全の態勢で臨(のぞ)んでいた。少しオーパーにも思えたが、まあ、これだけ着込めば大丈夫だろう…という目論見(もくろみ)があった。 スーパーへ入ると、思いのほか混んでいて、多くの人が蠢(うごめ)いていた。[ただ今、食品レジが混雑し、お客様には大変ご迷惑をおかけしております…] どこからか [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−47− 格差
  •  うらぶれた佇(たたず)まいの家? と見紛(みまご)うダンボールと板戸で囲われた住処(すみか)の中で、途草(とくさ)は新年を迎えていた。都会からは少し離れた人家の少ない田舎町の外れだけに、誰も苦情を言う者はなく、途草はのんびりと日々を過ごしていた。「ああ…年も明けたか」 寝転びながら途草は、ふと、溜息(ためいき)をついた。昨日(きのう)店の裏の芥箱(ごみばこ)から頂戴した分厚い肉の切れ端(はし)や [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−46− 負ける人
  •  世の中には勝とうとしない人が勝つことがよくある。「なんだ…当たっていたのか」 鹿島は、そう呟(つぶや)きながら、競馬の当たり馬券をシゲシゲと眺(なが)めた。年末に会社の友人、猪田(いのだ)に誘われ、嫌々(いやいや)買ったただ1枚の重賞レースが、ピタリ! と当たっていたのだ。当たった鹿島には喜びも何もない。ただ当たったか…くらいの軽い気持だった。右隣りのデスクに座る猪田の方が浮かれていて、さも自分 [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−45− 思いこみ
  •  遅い朝食を食べ始めた蕪家(かぶらや)は、塩が余り効(き)いていない味のない漬物(つけもの)を齧(かじ)りながら、妻の干江(ほしえ)をチラ見した。「おいっ! こいつは、いくらなんでも薄過ぎるんじゃないかっ!?」 そうは言いながらも、蕪家は早くも二膳目の茶碗を手にしていた。干江は朝がいつも遅い蕪家を、見て見ぬ振りのお構いなしで洗濯機を回していた。むろん、新婚当初からそんな無愛想だった訳ではない。あれ [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−44− お人よし
  •  世間では、やらなくてもいいのに両者の言い争いの仲介(ちゅうかい)を勝手に買って出るお人よしがいる。俺がっ! と自分を格好よく見せようとする人によく見られるパターンだ。この場合、双方から反撃を食らい、気づいたときには自分が、とばっちりを受けているというケースがよくある。言い争いを始めた当の本人達は、すでに自分達がなぜ言い争っていたか・・を忘れて普段どおりとなり、逆に2対1で仲介したお人よしを攻めて [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−43− 早とちり
  •  会社社長の道橋は庭戸のサッシを開け、朝風を肌に感じながら空を眺(なが)めた。そしてどういう訳か、思わず溜息(ためいき)を吐(は)いた。空は曇(どん)よりと全天が薄墨(うすずみ)色に曇(くも)っていた。今日は楽しみにしていた地区大会のサッカー・決勝が抜歯(ぬけば)競技場で行われる。道橋はその試合を観戦するつもりでいたのだ。抜歯競技場は生憎(あいにく)、観戦席が防雨構造にはなっていなかった。道橋には [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−42− 見解の相違
  •  国営テレビに映し出された国会中継を観ながら、本岡は神仏前に供えたあとの、お汁粉を美味(うま)そうに食べていた。本来は小豆(あずき)粥(がゆ)を供えるらしいが、本岡家では古くからお汁粉で供える家風となっていた。 本岡が、さてと! と食べ始め味わっていると、画面は論議が伯仲し始めていた。『国会は甘過ぎるが、今年は、まあまあの甘さだな…』などと偉そうに本岡は思いながら、フゥ〜フゥ〜…ズズゥ〜…ムチャム [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−41− やってしまっていた
  •  人の行動とは妙なもので、自分では意識していなくても、知らず知らず、やってしまっていた・・ということがよくある。 今年で白寿を迎えた棚上(たなかみ)は、アングリした顔で何をするでもなく居間で茶を啜(すす)っていた。『ああ、また春か…』 寒い冬が過ぎ、暖かい春がもうすぐそこまで・・と考えれば、普通の場合、心がウキウキと高揚(こうよう)するものだが、棚上の場合は真逆で心が萎(な)えるのだった。というの [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−40− 風の噂(うわさ)
  •  誰からともなく流れ、しかも確実ではない話がある。それとなく世の中に流れ、耳に入った話・・それを人は風の噂(うわさ)と言う。「そういや、昨日(きのう)だったか一昨日(おととい)だったか、妙な話を聞いたぞ」 餅川(もちかわ)は仕事帰りに立ち寄ったおでん屋の屋台椅子に腰かけ、冷や酒をチビリチビリとやりながら、左横に座る杵田(きねだ)にそう言った。「妙な話? どこで?」 杵田はおでんのダイコンをフゥフゥ [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−39− チャレンジ
  •  晴耕雨読(せいこううどく)とは、よく言われる。その四字熟語の意味は、━ 田園で世間の煩(わずら)わしさを離れ、心穏やかに暮らすこと━ となる。晴れた日には外へ出て田畑を耕(たがや)し、雨の日は雨滴(うてき)の音を聞きながら静かに書物などを読んだり学んだりし、あるいは家内の諸雑事をのんびりとする・・ところから派生した意味らしい。誇張(こちょう)して意味を捉(とら)えれば、その日に出来ることをする・ [続きを読む]
  • よくある・ユーモア短編集−38− 好(この)み
  •  好(この)みは、人それぞれである。淵川(ふちかわ)は久しぶりに銭湯に入ろうと、今ではもう残り一軒となった銭湯・蛸(たこ)の湯へ向かった。ここは行きつけで店の従業員とは気心が知れていたから安らいだ気分で暖簾(のれん)を潜(くぐ)り、入口のガラス戸を開けることができた。いつも500円硬貨一枚を鯔背(いなせ)にポン! と番台へ置くと、これもいつものようにポン! と準備していたかのように間合いを置かず、 [続きを読む]