fuyunoki さん プロフィール

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fuyunokiさん: おはなしの木
ハンドル名fuyunoki さん
ブログタイトルおはなしの木
ブログURLhttp://blogs.yahoo.co.jp/sign131848a1
サイト紹介文聖画を描く女の祈りが、絵と一つになる時、新たな秘蹟が刻まれる。
自由文ファンタジー小説を書いています。新掲載は聖画と天人の誕生にまつわる中編。乞う、ご期待。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供143回 / 365日(平均2.7回/週) - 参加 2009/10/25 22:21

fuyunoki さんのブログ記事

  • 伊藤 計劃「虐殺器官」の感想、虐殺の文法について
  •  この作品は第7回小松左京賞の最終選考作として、予選委員全員が最高点を付けたが、結果的にその年度は受賞作なしとなったそうである。時に受賞しなかったことが伝説を生むこともあるから、まあそういう運命だったとしか言いようがない。 気になるのは小松左京の選評で、虐殺の言語がどんなものか書かれていないことや、虐殺行為を起こしている男の動機や、主人公のラストの行動についての説得力やテーマ性に欠けていた、という [続きを読む]
  • 伊藤 計劃「虐殺器官」の感想、そして作者について その3
  •  初めに読んだとき、どうしてこんな表現になったのか、不思議な感じがした部分がある。 出版が決まってから書き足したというインド編。列車で移動中正体不明の敵に襲撃され、味方に甚大な被害が生じる。攻撃ポイントから離れた場所にいた主人公が、列車内で応戦していた仲間のところへ駆け付けると、同僚リーランドは左肩を吹き飛ばされ、下半身は無くなっていた。そして、今にも死を迎えようとするリーランドに、主人公は誰のも [続きを読む]
  • 伊藤 計劃「虐殺器官」の感想、そして作者について その2
  • 「死」と共に生きる 「虐殺器官」の冒頭、虐殺された子どもの死体の描写から始まる。ここに再現したくない、酸鼻を極める描写である。もちろんそれは創作であって現実の死ではないのだけれど、どこかで実際にあった出来事なのではないかと思わせるほど、死の影は濃く、人の命は軽い。全編、これでもかというほど様々な人の死が描かれる。 主人公をはじめ、登場人物の生は、死を飾るための前奏曲のようだ。そして作者自身「死」と [続きを読む]
  • 伊藤 計劃「虐殺器官」の感想、そして作者について
  • 「虐殺器官」、この本のタイトルは、全くの偶然、映画の公開予告をネットで見て知った。「虐殺」という言葉に、プラスの要素は一切ない。そして「器官」は人間の体の一部を指しているとすぐわかる。なぜなら他者を虐殺するのは人間だけだから。まったくもって物騒なタイトルだ。 予告編の後ろには長めのあらすじが書かれていて、主人公クラヴィス・シェパード、謎の人物ジョン・ポールという、わざとらしくWASPっぽい名前も妙に引 [続きを読む]
  • 「ローグ・ワン」の感想 その2
  •  どうして、主人公を殺してしまったの! それも父親が作ったデススターで、そんなのありですか。第1作に繋がるお話しであるのなら、どんなに絶望的で、どんなに多大な犠牲が払われたとしても、主人公のジンだけは生き延びさせて欲しかったと思います。彼女は、設計者の娘という以外、死をもって償わなければならないような罪を犯してはいないはず。それなのにこの最後は、賞罰のバランス感覚を裏切っていると思います。そういう [続きを読む]
  • 「ローグ・ワン」の感想 その1
  •  12月31日に見てきました。 まず、あらすじ。 あの惑星破壊装置デススターの設計者とその娘のお話です。辺境に逃亡し身を隠していた設計者一家、そこに帝国軍の司令官が捜索にやってきて、妻は殺され、幼い娘(主人公ジン・アーソ)は逃亡、本人は連れ戻されてデススターの製作を続けます。そして、設計者は、密かにデススターに大きな弱点を組み込んだという物語の伏線が張られます。 この伏線が本編第1作でのレイア姫が [続きを読む]
  • 明けましておめでとうございます
  •  新年あけましておめでとうございます。皆さま 穏やかな新年を迎えられていらっしゃることと存じます。 私も、この年末年始は、久しぶりに、子供たちとゆっくり過ごすことができてとても充実しています。  昨日は、上の子供(長男)と「ローグ・ワン」を見てきました。なんと、入場券を、私の分までさっと買ってくれました。社会人2年目になるとこういう素敵なことができるようになるんですね。2016年の最後に一番良いこ [続きを読む]
  • 逃げ恥「百合ちゃん がんばれ」
  •  初回から見ていますよー。って、取り上げるのが遅すぎかも知れませんけど。 津崎 平匡役の星野 源さん、NHKの「昨夜のカレー、明日のパン」で、主人公の亡くなった夫役を演じられたときから注目していました。 主人公みくりと平匡さんの「どきどき」「キュンキュン」は、たくさんの方が、お腹いっぱい書かれていると思うので、12月6日放送回で、思わず涙してしまったシーンについて一言。「百合ちゃん、可愛すぎる」件 [続きを読む]
  • 波動の行方 その70
  •  空が薄い茜に染まる頃、トックの後ろに大きな籠を背負ったレゼルと仔山羊の紐を手にしたホツが続いた。トックは二人に着替えを渡した。「すっかり埃まみれになって、その服は洗ってあげるよ」 レゼルがシャツに袖を通すと手首まで隠れる長さがあった。「もしかしたら、あんたはそのうち戻ってくるんじゃないかと思ってね。試しに一枚直してみたんだ。袖を途中で接いだから、みっとも良くはないが」「いや、とても具合がいい」「 [続きを読む]
  • 波動の行方 その69
  • 「乳を搾りに行くのだろう。私たちも手伝わしてくれ」「家で休んでていいのに」 籠を背負い歩き出すレゼルに、トックは思い出したように話し出した。「夕べ、夢を見てねえ。それが息子が巻角山羊になって話しかけてきたんだよ。おかしいだろう、人が山羊になるなんて。でもあの子は子供の頃、巻角の子を捕まえて飼っていたことがあったから。天人の山羊を捕まえた罰でも当たったのかねえ」 息子は帰ってこない、諦観が滲んでいた [続きを読む]
  • 波動の行方 その68
  •  レゼルは急いでホツの体を柔らかい草場に横たえ、口の中に涙の粒を一つ落とした。グアハの声も少し慌てているようだった。「仔山羊にも早く」 そしてレゼルは、朝日の中で体を揺すられ、目を覚ました。「おやまあ、どうしたんだい。こんなところで」「トック」「家までもう少しだって言うのに、何もこんなところで寝なくたって」「ずっと走り続けだったから」 傍らではホツがもぞもぞ動き出し、寝ぼけたようにあたりを見回した [続きを読む]
  • 波動の行方 その67
  • 「いやだ。お袋と一緒にいられないなら、一緒に死ぬ」 暗い目が引き絞られた。「怖いのだな。一人で逝くのが怖いのだな」「そうさ、怖いとも。冷たく暗い場所に押し込められて、いろんなやつの恨み辛みの渦の中で、ぐるぐる際限なく回り続けるんだ。あんな所はもう嫌だ」「天に昇れば安らかになれる」「いやだ」 悲鳴にもならない細い叫びを上げた男は丘を駆け下ろうとした。「その男を返してくれ」 レゼルの腕はホツの体を後ろ [続きを読む]
  • 波動の行方 その66
  • 「この先にはお袋がいるんだ。帰って助けてやりたい。こんな山奥で年寄り一人きりじゃあ、暮らしていけない」「お前の気持ちは分かる。だがお前には、もうどうすることもできないんだ。トックのことは私が何とかする。聞き分けてくれ」「いやだ。お袋が死んだら俺も一緒に天に昇る。それまで待ってくれ。それまでこの体を貸してくれ」「トックには、お前と分からない」「分かるさ。たとえ顔は違っても親子なんだから。いや、俺と分 [続きを読む]
  • 波動の行方 その65
  •  一瞬の躊躇の間に、男は山羊を小脇に抱え林の奥に姿を消した。駆け寄った草場には小さな巻角山羊の木彫りだけが落ちていた。 男の行く先は分かっていた。しかし、星が照らす山道を一心に走り続けてもレゼルの足はなかなか追いつくことができなかった。「ホツ。堪えてくれ。ホツ」 夜が過ぎ、日が天を巡り、また星が瞬く時が訪れた。あと一つ丘を下ればトックの丸木小屋と言うところで、月光が男の背を指した。「待て。ルタ」  [続きを読む]
  • 波動の行方 その64
  •  雪解けにぬかるむ道を、レゼルとホツは北西へと歩き続けた。やがて、ざりりとした砂音が懐かしい山の麓に戻って来たと教えてくれた。「ホツ、帰ってきたぞ。明後日には、トックの小屋に着くだろう」 半月程の道中で、仔山羊も一回り大きくなっていた。ホツは目ざとく柔らかい草場を見つけ山羊の紐を木の枝に繋ぐと、たきぎを探しに林に入っていった。レゼルはその後ろ姿に目を瞠った。「人はこんなに変われるんだな」 グアハも [続きを読む]
  • 波動の行方 その63
  •  二日後はそれぞれが旅立つ日だった。揃って船出を見送った後、若夫婦はレゼルとホツの前に仔山羊を一頭牽いて来た。「船のみんなが婚礼の祝いにくれた山羊なんですが、ホツさんに貰ってもらおうと思って」 とまどい顔のホツに、ヴィノが笑いながら言った。「うんと手伝って貰った御礼なのよ。今は子供だけど、雌だから子を産めばお乳もたくさん出るようになるわ。二人でおなか一杯お乳を飲んでね」「子をたくさん増やして、旦那 [続きを読む]
  • 波動の行方 その62
  •  レゼルは間を置かなかった。「親方、カブの抜けた後に見習水夫を二人雇ってもらえないだろうか」 親方は馬市の馬喰のように、二人の肩を二、三度撫で叩いた。「なりは立派だが、支える力じゃ水夫共には及ばないな。初めはつらいぜ」「よろしくお願いします」「よし」 宴は弾け、歓声は続いた。 やがて歌い疲れ、踊り疲れたホツが倒れるように床に座り込むと、レゼルは傍らに片膝を付いて囁いた。「ホツ。赤子ももう寝た。私た [続きを読む]
  • 波動の行方 その61
  •  船で見慣れた顔も次々潜り戸を入ってきて、祝いの輪に加わった。祝福と冷やかしとほんの少しのやっかみが行き交う杯に溢れ、鴎亭は明るい声に満ちあふれた。 レゼルは踊るホツから赤子を抱き取って隅の椅子に掛け、俄の宴を見守った。「ホツ」「仕方がない。二人はもともと想い合っていたんだから」 グアハの慰めも気休めにならず、うつむいたレゼルの目から涙は流れ続けた。 そこへ潜り戸が開き、二人の大男が入ってくると、 [続きを読む]
  • 波動の行方 その60
  • 「恨めないでしょう。赤ん坊の父親なんだもの、自分が馬鹿だったって思うしかないじゃない」「分かった。ヴィノ、もういいから。ヴィノは悪くない。ちっとも悪くないから」 固い拳を節くれ立った大きな手が包んだ。二人はしばらく無言で手を繋ぎ合い、涙でくしゃくしゃになった顔を見つめ合い、そして、互いに照れ笑いを浮かべた。「そうそう、ヴィノにも土産があるんだ」 籠の底から白く晒した葦穂細工の帽子が出てきた。「その [続きを読む]
  • 波動の行方 その59
  • 「ホツ。そろそろ客が来る時分だ。ヨキを手伝いに行こう」 一緒に帰ろうとするヴィノに、カブは呼びかけた。「ヴィノ。ちょっと話があるんだけど、いいかな」 振り向いたレゼルが頷くと、ヴィノもゆっくり頷いてカブの方へ向き直った。 歩みにあわせホツの子守歌が始まった。黒い天鵞絨の胸元には小さな銀の粒が止めどなく落ちかかり、音も立てずに砂の間へと散って行った。「ヴィノ。俺と所帯を持とう。もちろんお袋さんも赤子 [続きを読む]
  • 波動の行方 その58
  •  ホツが砂を踏む音が急に大きくなった。目を上げたカブは浜の境に真新しい春着に身を包んだヴィノを見つけた。駆け寄ったホツはヴィノの手を引いて戻ってきた。「みやげ、みやげ」 ホツの指さすまま、カブは格子縞の袋をヴィノに差し出した。「赤ん坊の靴だよ。歩く頃にはちょうど良くなる」「どうもありがとう」「いまやっとホツさんの御土産が仕立て上がって。でも、私には可愛らしすぎるわ、これは娘時分に着るものよ」「そん [続きを読む]
  • 波動の行方 その57
  • 「麦船の船乗りは行ったり来たりの暮らしです。俺は帰ってくる度、鴎亭に泊まってました。そのうち、ヴィノの親父も死んで、でもヴィノが奉公に出たのは知らなかったんです」「一昨年のことだな」「確かに町場の静かな暮らしのほうが、ヴィノには向いてると思いました。それがしばらくぶりに見かけたと思ったら腹が大きくなっていて、所帯を持ったのかと思ったら、どうもそうじゃないって噂で。ヴィノには兄弟もいないんです。お袋 [続きを読む]
  • 波動の行方 その56
  • 「やあ」 カブは大きな背嚢を背負い、見覚えのある籠を提げていた。「土産だよ」 荷を降ろしてレゼルの隣に座ったカブが、籠に手を差し込んで重そうに取り出したのは丸く硬いチーズの固まりだった。「山に帰る時、旦那と二人で食べてくれ」「ありがとう」「すまない」 籠の中にはまだいろいろ入っているようだった。覗き込むホツをカブは笑った。「こっちは赤ん坊の土産だ」 格子縞の布袋から取り出したのは柔らかく軽い鹿革で [続きを読む]
  • 波動の行方 その55
  •  人の気配に振り向くとヴィノが立っていた。「済みません。騎士様に子守までさせてしまって」 赤子を抱き取ったヴィノは、小窓の方を向いたまま呟いた。「不憫な子です。生まれついての父なし子で、おまけにいつも寝かされっぱなしで」「この子はお前に負けないほど賢く美しい娘になる。子のことは何も案じることはない」「ありがとうございます」 硬い横顔は確かに思いを抱えていた。 十日余りが過ぎて、陽光は確かな春の力を [続きを読む]