冬木水奈 さん プロフィール

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冬木水奈さん: 君が見つける物語
ハンドル名冬木水奈 さん
ブログタイトル君が見つける物語
ブログURLhttp://fuyumizu56677.blog13.fc2.com/
サイト紹介文BL・GLオリジナル小説サイト。 BL長編4本、GL長編5本あります。一部18禁。
自由文無理矢理・悲恋傾向にあります。心理描写重視。
<CP傾向>同級生x同級生 先輩x後輩 父x子 妹x姉など。
現代学園モノ5 監獄モノ1 ファンタジー2 高校野球モノ(女子)1 本置いてます。(長編)
「栄徳高校女子野球部!」本編完結しました。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供28回 / 37日(平均5.3回/週) - 参加 2010/02/09 01:48

冬木水奈 さんのブログ記事

  • 終章 特別
  • 大切な人の大切な人がいなくなってから三年余りがたった、ある暖かな日の昼下がりのことだった。吹き付ける風の冷たさが一気に和らぎ、春を目前にした気配があちこちに漂って、新芽が今にも土を突き破って姿を現しそうなその日――女子プロ野球の球団、宮城シーライトの投手である丹波ミサキは、かつて野球人生の多くを共にした相手である澤一樹が一人住む家を訪ねていた。整頓の行き届いた室内には、丹波の私物が多くあり、彼女が [続きを読む]
  • 第56章 解放
  • 澤一樹は、目を細めて芝生の上を走りまわる子供たちを見た。晴れ渡った春の日の昼下がりのことだった。開け放した窓から吹き込む穏やかな風に吹かれながら、目の前に座る友人――榛名玲に視線を戻すと、目が合った。その深い瞳に吸い込まれそうになりながら、澤は乾いた唇をなめた。切り出すなら今しかない。彼女は意を決して、口を開いた。「玲さん、おれ、実はずっと聞きたかったことがあるんだけど……」「なに?」「あの……? [続きを読む]
  • 第55章 取り引き2
  • その日も、いつもと同じように筆が進まなかった。?正しい?フレーズを導き出せなくて、机のわきに置いたプロットや人物像表とのにらめっこが続いていた。そろそろ一休みしようか、と席を立ちかけたとき、不意に彼女の携帯電話が鳴った。知らない番号からだったため、出るかどうか迷ったが、彼女は結局電話に出た。「はい?」 間違い電話だろうがなんだろうが、煮詰まった状況からいっときでも抜けださせてくれるものなら歓迎だっ [続きを読む]
  • 第51章 小笠原龍7 背負わされたもの
  • 小笠原龍は、同居人兼、庇護者である宮崎伊織が作ってくれた味噌汁を啜りながら、隣室の物音に身体をこわばらせた。途端に足が燃えるように痛んで、思わず息をつめる。話している相手はさいわい、彼女の顔色の変化に気付いていなかった。小笠原は焼けつくような痛みに耐えつつ、音への過敏性について考えを巡らせた。 はじめに?音が痛い?と感じたのは高校三年生の冬頃だった。?音が痛い?なんて、自分で経験するまではあり得な [続きを読む]
  • 第50章 小笠原龍6 再会2
  • 買い出しを終えた宮崎伊織は、帰宅して簡単な食事を作って、友人――小笠原龍――に食べさせた。やがて、それまで紙のようだった彼女の頬に赤みが差してくる。トイレに行くのを手伝ってから、ある程度ゴミを片付け終えると、宮崎は布団に横たわる小笠原に聞いた。「可燃ごみの日って、何曜日?」 とにかく、悪臭を放つ生ゴミ類を早く撤去したかったのだ。小笠原は、少し考えたのちに答えた。「……えーと、普通ごみは多分、月・木 [続きを読む]
  • 第49章 小笠原龍5 再会1
  • 宮崎伊織は家路を急いでいた。既に日はとっぷり暮れ、差すような冷気が剥き出しの頬に当たる。一月中旬だった。この頃では業務を終えて定刻で会社を出ても、家に帰りつく頃、辺りは真っ暗だった。大通りからそれ、街灯でぽつぽつと照らされる住宅街の路地を通って、その一角に佇む中層マンションにたどり着く。そして、一階の外廊下を通り、最奥から二番目の部屋の鍵穴に鍵を差し込んだ。彼女は、サムターン回しがやすやす出来そう [続きを読む]
  • 第48章 飛翔
  • 腹の底から響いてくるような振動音を感じながら、澤六佳は窓の外に目を向けた。入り組んだ滑走路は、地平のかなたまで続いている。 晴天だった。 身を切るような張りつめた冬の空気が空を割っているのが、分厚い窓越しにもわかる。 六佳は浮遊する雲を見ながら、やはりその空の下にいるであろう相手――横川和也――に思いを馳せた。空港まで見送りに来てくれた、今をときめくエリア東京の投手が見せた、申し訳なさそうな、しか [続きを読む]
  • 第42章 決心
  • 澤一樹は、フェンスに指をかけて微動だにせずに、眼下に広がるマウンドを見つめていた。よく晴れた日だった。まだ肌寒さが残る三月、大学野球の春季リーグ戦が開幕して間もないその日――昨シーズン、リーグ二位と好成績を収めた将元大学は、福島県との県境付近に位置する白川大学を相手に初戦を迎えていた。ここ二年好調で、?万年最下位の白川?という汚名を返上した白川大の先発は、かつて澤が栄徳高校時代にバッテリーを組んで [続きを読む]
  • 第41章 亀裂
  • 既に日が暮れ、帰途につく人々が道を急ぐ街路には明かりがともっていた。横川和也は、試合で酷使した肩の筋肉を揉みこみつつ、車から降りた。エリア東京の本拠地から電車で三十分のベッドタウン、神奈川県川崎市に、横川が暮らす築二十五年のアパートがあった。駅前の通りから少しわき道にそれた路地に沿って並んだ家々の中に建つ、四世帯のファミリー向けの小ぢんまりしたアパートの外階段を上がり、手前の部屋の扉の前に立つ。す [続きを読む]
  • 第40章 善なる魂※
  • ※注※暴力表現有。R15。右近飛鳥はこぶしを握り締め、チームを見渡せる位置でミットを構える新入りをねめつけた。先発した変化球投手・吉川泉の?落ちる?球がそこに吸いこまれる。どんなに捕逸しろと願っても、ホームに座るその人物――澤一樹――は、球をとり落とさなかった。どころか、ワイルドピッチも軽々捕る始末。いったいどういう体のつくりをしているのか皆目見当もつかなかった。 この、販促じみた身体能力を持つ彼 [続きを読む]
  • 第39章 獲物 ※R15
  • ※注※暴力表現有。R15.バシャリ、とマンガの擬音語みたいな音がして、足元に倒れ伏す人物が頭から水をかぶる。隣で倉田清加――同期で、そもそものキッカケを作った人物――がとがめるような声をあげたが、右近飛鳥はかまわずもう一度水をかけた。しかし、相手は地面につっぷしたまま、わずかに身じろぎをしただけだった。季節は夏だった。自主練と称して居残った二人は、しかしその実、普段からイヤがらせをしている後輩―― [続きを読む]
  • 第38章 因果2
  • 倉田清加はその日の練習を終えて帰ろうとしたところで、ふと忘れものを思い出した。携帯電話をロッカーに置きっぱなしだったのだ。彼女は舌打ちをしてきた道を引き返した。関係者出入り口から球場内部に入り、人のまばらな通路を歩く。道半ばで帰る途中のチームメイト、引地と挨拶を交わし、足を速めた。磨き上げられた廊下をうつむきがちに歩きながら、彼女は昼間の出来事を思い出していた。丹波ミサキという、今年はいったばかり [続きを読む]
  • 第37章 因果1
  • 今日の試合は散々だった、と広末茉莉はいらだち紛れに汗を吸ったユニフォームを脱いだ。先発が炎上して後続も打たれまくった。失点を重ねるチームの援護射撃をしてやりたかったのに、全く塁に出られなかった。ほとんど失投のない相手投手にいいようにやり込められて、クリーンナップとしての責務を果たせなかった自分がふがいなかった。 彼女は、試合後の反省会が終わっても帰らずに、一人室内練習場の照明をつけてバットを振って [続きを読む]
  • 第36章 好きな先輩!2
  • 丹波ミサキは、わずかにいらだちを感じながら球を投げ込んだ。彼女がサンライズ神奈川に入団してから半年あまり。宮城よりも早く梅雨入りした相模原は、今日も朝から雨が続いていた。丹波の心も暗い空に比例して浮かなかった。彼女は、入団当初から同郷の先輩キャッチャー――澤一樹――に球を受けてほしい、と懇願し続けていた。それが最近、念願かなって付き合ってもらえるようになったのは良かったのだが、今度は予想だにしなか [続きを読む]
  • 第35章 小笠原龍3 孤独
  • 季節は春だった。あらゆる植物が陽光の祝福を浴びて芽吹き、花開くとき――。冬を耐え忍んだあらゆる動物たちが温かな風に体の力を抜くそのとき――。小笠原龍はひとり苦痛に顔をゆがめ、地獄の中を一歩一歩、のろのろと進んでいた。街を彩るモクレンも、新芽麗しき木々も、野畑につつましやかに咲いた雑草の花々も、彼女には関係がなかった。まるで切片のように舞う桜吹雪でさえも、一ミリたりとも彼女の心を動かすことはできなか [続きを読む]
  • 第30章 三回戦
  • 栄徳高校は、夏大の宮城大会三回戦を迎えていた。将元大付属高校――長年、栄徳とライバル関係にある甲子園常連校――はおととしに続いて昨年の大会で実績を残せず、シードを外れて、再び栄徳と三回戦でぶつかることになった。甲子園行きを競うような上位校同士のつぶしあいは、ほかのチームにとっては願ってもない幸運だったが、当人たちにとっては不運だった。栄徳は先発に丹波を起用し、将元大付属は、ここ一年成長著しかった三 [続きを読む]
  • 第29章 その先へ
  • 香坂秀実(こうさか・ひでみ)はいつも傍観者だった。面倒事には首を突っ込まず、一歩身を引いておく、というのが彼女の基本的なポリシーだった。そしてそれは、大体の場合において成功してきた。クラスでいじめがあった時も、部活である子が?人と違う?という理由で排外されたときも、会社で同僚が上司から暴言を吐かれ続けてうつ病になったときも、彼女は何もしなかった。加害者たちに加わることこそなかったが、?標的?となっ [続きを読む]
  • 変化2
  • 連日雨が続いていた。陰鬱な空を窓の外に見ながら、香坂迅はぼんやり白髪の教授の話を聞いていた。周りの学生はまじめとは言い難く、大教室内はささやき声や、時折聞こえる笑い声で満たされていた。 こんなんじゃグラウンドはめちゃくちゃだな、と思ってから、我に返って自嘲する。グラウンドの状態なんて今の自分には関係ない。マウンドの状態が最悪であろうと、自分がそこに立つことはないのだから。香坂は、それ以上深く考えな [続きを読む]
  • 第27章 封印
  • 榛名玲は、目の前の人物――目をキラキラさせて本を差し出す幼なじみ――に危うく舌打ちをしそうになった。前にも一度貸したことのある本を受け取り、くどくどと礼を言ってくる相手に適当に相槌を打ちつつ、彼女は、別のことを考えていた。それは、なぜよりによって今年も、この幼馴染と同じクラスになってしまったのだろう、ということだった。 高校は澤一樹フリーでのびのび過ごす、というのが、ここ、栄徳高校に進むことを決め [続きを読む]
  • 第21章 秋季大会3
  • 荒川遊人は大学の食堂で友人と共に、女子高校野球秋季宮城県大会の決勝戦を、箸片手に見ていた。まだ昼休みに入っていなかったので学食内は閑散としていた。後輩達が守備につく様子を眺めてから、ホームベースの前にしゃがみこんで球を受ける後輩キャッチャーに目をやった。彼女は今年の三月、卒業前に見たときよりもさらに背が伸びたようだった。彼女がサインを出すのを見ながら、荒川は彼女が入ってきた頃のことを思い出した。  [続きを読む]
  • 第20章 秋季大会2
  • 香坂迅は、ぼんやり選手が散らばるグラウンドを眺めながら、自分はどうしてここにいるのだろう、と思った。秋大会の宮城大会決勝。コボスタ宮城は観客でにぎわっていた。ホームベース側の後ろの方の席にコッソリ座って、豆粒ほどの白いユニフォーム姿の後輩たちを見る。先攻の栄徳チームの一番打者がちょうどバッターボックスに入ったところだった。 一番は、今年の夏の大会からベンチ入りしていた藤巻涼だった。彼女は夏の大会で [続きを読む]
  • 第19章 秋季大会1
  • 結局、栄徳高校は正捕手、澤一樹の状態に不安が残るまま秋季大会を迎えた。三年生が抜けた後のスターティングメンバーは、1番ファーストが、この夏まで将元大付属高校のエースだった藤巻風雅の妹の藤巻涼(ふじまき・りょう)、二番セカンドが黒田直(くろだ・なお)、3番ショートが副主将の月島絵梨奈、4番サードが今秋主将となった羽生葵、5番キャッチャーが澤一樹、6番センター築地真琴、7番ライト内村亮(うちむら・りょう [続きを読む]
  • 第18章 寂しい子供
  • 澤六佳(さわ・ろっか)は、喉奥に錠剤を水で流しこんで、息をついた。前腕と手が焼けつくように痛んだ。やらなければならないことは山ほどあるのに、手は動いてくれなかった。痛み止めが効くまでの間テレビでも見ようと居間に行くと、妹の幼馴染がソファから立ち上がった。「お、玲じゃん」「久しぶり。お邪魔してます」「座って座って」六佳は榛名が再びソファに座るのを確認すると、自分も近くにあった食卓の椅子に腰かけた。「 [続きを読む]
  • 第10章 紛いモノ
  • その四日後の朝のことだった。カーテンの向こう側が徐々に明るくなり始めたころ、 栄徳高校女子野球部二年生の石神京香は目を覚ました。まだ寝入っている友人たちを横目にそっと窓を開けると、さわやかな涼風が吹いてくる。大樹が品よく植わった前庭の中央で、噴水が涼しげな音を立てて噴き出していた。そこから表の門に至るタイル敷きの道にまだ人影はない。小高い丘の頂上付近にある栄徳高校付属の女子寮の石神の部屋からは、遠 [続きを読む]
  • 第9章 三回戦3
  • 金沢悠木は足場をならしながらスコアボードを見た。回は八回裏、栄徳高校が四対三でリードしていた。五回までは一失点と好投していた、将元大付属高校のエース、藤巻風雅は、沖一沙ら三年生が睨んだとおり、スタミナ不足で中盤から失速し、失点を重ねていた。そのため、六回裏からは、宮崎伊織という三年生がリリーフしていた。ストライクゾーンぎりぎりに入る球が多く、球種は多くないものの、コントロールの良さでは知られた二番 [続きを読む]