一吹きごとに寂しさを増す風が優しく吹きつける秋叫びのように聞こえたその声を見送るばかりの夕の空通り過ぎる言葉によってどれだけの喜びを分かち合っただろうどれだけの悲しみを乗り越えただろうどれだけの感情を失ってきただろう手の届かないものを手のひらの夢に代えて
君と夜を共にした日四畳半の世界を世界に一つだけの世界を君と二人で専有した僕たちは貝になって世界のかけらを拾い集めた零れ落ちないよう熱心に傷一つつけぬよう繊細に二人だけの世界を作り上げる蝶は花と戯れ兎は草原を駆け回りイルカたちはラインダンスを踊りに
母性を求め大声をあげる雛鳥たちの叫びひたすらに、ただひたすらに言葉を持たぬ案山子たちは乳房を求め登っていくひたすらに、ただひたすらに始まりと、過程と、終わりと――目覚めと、衝動と、眠りと――それは総てであった総てであるが故に、何ですらなかった貪欲な甘えん
絶対でわたしを愛してよわたしはどこでもないここにいるから宙返りする三羽烏浪漫飛行する幽霊船見るもの総てを追いかけているうちに君は命を擦り減らすからわたしはかけるべき言葉もためらってしまう元も子もないこんな世界では殻を破るのも困難だけどどうか怯
地球はきっと生まれたての頃からずっと僕らでなく、彼らのものだった澄んだ川に沿って延びる道があるそれはどこまでも続くかのように見えていてもきっと海原までは届きはしないのだろうそっと背伸びをして覗き込むと水面には見下ろす顔が一つ浮かび上がって見知らぬ人と視線
指先でそっと触れてみる明日の記憶を揺り起こした程なく目を覚ますその時に失くしてしまわないよう祈る満ち足りた幸福の間隙にそっと忍び込む不安な未来が試すような目で私を釘付けるから躓きそうになる自分を必死に抑えている夕べに嗅いだ匂いがもう今朝には腐ってしまって
回る回るよ栗鼠よりも速く回る回るよ地球よりも早く回る回るよ繰り返す歴史のように回る回るよそれは自然の摂理回る回るよいつまでも回れ 君の扇風機
雪融け水で顔を洗って黒ずんだ昨日を海に流す剥がれ落ちない今日は明日のニキビへと続いていくあなたを抱き寄せて頬擦りをした時に触れるざらざらした感触がなんだかんだ好きでぼくは目の前の未来が見つけられたみたいだごめんなさい突然の申し出で申し訳ないです
迷子になった君の白さを街吹く口笛が見つけ出した季節の涼感に乗って広がる赤・青・黄色の三色ワルツこっちへおいでよ一緒に踊ろう小犬の声色で君を招待ギリシャ譲りのペシミズムに穴を空けこの輪の中が君の居場所いつでもいいから飛び込んで来て僕らはずっと待
「もうしないから許しておくれ」と頭を垂れて願うあなたの全財産をここで没収
気付けば床に君の目が落ちている僕はそれをそっと拾い上げて抱擁する潰してしまわぬように優しく乾いてしまわぬように温かく鉛臭さが鼻をついた指先で震える君の目にはどうやら未だ足が生えていないようだから歩いているわけでなくだから行く先の発見もなく目は床
夕食に辛くないカレーと冷えて固いナンを食ってる時に俺は文化ってものを理解出来た気になったんだそれは俺が《ちぎったナンをベチャベチャカレーに浸けてから口に運んで手を糞みてえに汚しながら「これがインド式なのね」なんつってうっとりしてる大バカ野郎》になっ
昨日思ったんだラーメンを食べる時の音ってさとても愛嬌たっぷりだずぞぞって 啜り上げる音ときたらね人類が求めていた救いがあるんだね皆そういって口を尖らすのさほらスープが器から溢れる皆ふぅふぅ言ってるよ獲物を逃さないように命かけてるどの味が好きかって
大好物のチョコパフェを目の前にすると虫が私の頭の中の虫が夥しい数の虫が騒ぎ出した虫は目を閉じたヒトが暗闇に見る形容し得ぬ光の姿で器用に形を変えながら甘い汁を求め左脳へ右脳へ小脳へ大脳へ間脳へ寄生する生命体であるそして活発に活動を始めた虫たちは母
私がエイヤと抉り取つた紅の瑞々しい心の臓未だ変わらぬ拍子で律動してゐる狼が、大蛇が、高鷲が泥光りした瞳で凝視を絶えず半刻手前から慟哭してゐるロマネスクを思わせるやうな旧時代の様式美の蒸散武骨さと滑稽さが空気を作る嗚呼 私の生命よ、気息よ全て掌
疲弊しきった体から取り出した生命力のないパスポート長時間飛行で固まった手足は眠らない彼にはハナから無用の長物切り取って誰かに預けようかあいにくと需要はない途方もない生産過多 世界鉄の入国審査を潜り抜けるのは万に一つ以下の可能性けれども皆で必死に
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