みくら さんさんか さん プロフィール

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みくら さんさんかさん: Let's be Friends,
ハンドル名みくら さんさんか さん
ブログタイトルLet's be Friends,
ブログURLhttp://sketchbookrf044.blog.so-net.ne.jp/
サイト紹介文病で逝った婚約者へ。9.11で逝った友らへ。聖書を読むのは思い出と鎮魂のため。時々エッセイや小説も公開。
自由文 ほぼ毎日、更新中。さとう珠緒じゃないが、「お暇なら来てよね」というところか?
 海外の小説、大好き。音楽、大好き。映画、大好き。コーヒー、大好き。スタバ、大好き。『ONE PIECE』、大好き。『F.S.S』、大好き。海ある故郷、大好き。
 いい年こいて、隣の席の年下女子への片想いに悩む、そこそこ青年そこそこ中年男子。細々ながら兼業作家をやっています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供282回 / 365日(平均5.4回/週) - 参加 2010/08/09 02:54

みくら さんさんか さんのブログ記事

  • 第2551日目 〈『サ?・ライシ?ンク?』第5章 11/24〉
  •  だしぬけに心のずっと深いところから、幼い時分の記憶が甦ってきた。父の乗ったバスを追いかけている記憶だった。あれって何歳のときだったんだろう。希美は目を閉じながら考えた。小学校には入学していた。二年生にもなっていた。それ以後であるのは確かだった。彩織が転入してきて同じクラスになったのが、二年生になった年の五月。バスを追いかけながら、沼津署近くのマンションに入居する秋まで彩織一家が暮らしていた賃貸マ [続きを読む]
  • 第2550日目 〈『サ?・ライシ?ンク?』第5章 10/24〉
  •  少しずつであったが、父がゆっくりと希美の方へやって来た。波に自分の体が流されているせいなのか、それとも、本当に父がこちらへやって来ているのか。ぼんやりとした頭で考えてみても判然としなかったが、そうするうちにも父娘の間は徐々に縮まっていた。父が両腕を広げた。抱きしめようとする仕草だった。それがたまらなく胸に響き、希美は涙が目にじわりと浮かぶのを感じた。もう二度とそのあたたかさに出会えるはずのないと [続きを読む]
  • 第2549日目 〈『サ?・ライシ?ンク?』第5章 9/24〉
  •  希美はやっぱりテューバをやっていたいの? 夏の牧歌的な匂いのかよう風を浴びながら、連れだって歩いていた父が突然口を開いてそう訊いてきた。もうそこに自分の姿は見えない。今年の夏の夕暮れに父と散歩したときの光景が、希美の目の前で広がっている。そのときの風の香りや波の音、防波堤を自分達と同じように闊歩する人の声が自分を取り巻いている。 その父の質問に希美はこっくりと頷いた。別にプロになろうとは思わない [続きを読む]
  • 第2548日目 〈『サ?・ライシ?ンク?』第5章 8/24〉
  •  ――耳の奥で管楽器群が半音階の和声を厳粛に、それでいて慄然と奏でるのが聞こえた。それに耳を傾けているといつの間にか、底無しの淵に行き当たって足許を覗きこんだときに襲われる、あの足の裏がぞわぞわし全身が鳥肌だって総毛立つ、感情が千々に乱れる思いがした。だがそれもしばらくして一定のレベルを超えると、その響きが孕む官能美に恍惚とした気分を味わえた。希美はただ一度だけ、そんな気分にさせられてしまうとても [続きを読む]
  • 第2547日目 〈『サ?・ライシ?ンク?』第5章 7/24〉
  •  雷はもはや遠くへ去ったらしかった。眼球をあちらこちらへさまよわせてみても、空に稲妻の走る光景は映らなかった。海は落ち着きを取り戻していた。うねる波も荒々しい轟きも、ここにはない。自分の体に打ち寄せて砕ける波のさざめく小さな音と、大気に宿る深閑とした静寂の音だけが聞こえる。自分がいちばん愛している海が戻ってきた。母のように優しく父のように懐の深い海に、いま、私はそっと抱かれている。幸せだった。生き [続きを読む]
  • 第2546日目 〈『サ?・ライシ?ンク?』第5章 6/24〉
  •  希美、と自分を呼ぶ声がして、彼女は目を開けた。透明度の高い闇が四囲に垂れこめていた。ようやくいま、自分が海の中にいて、浮力を失って沈んでいるのだ、と察知するのと、急に息苦しくなって手足をばたつかせてもがき、唇から大きさの様々な水泡が無数にこぼれ出てゆき視界がふさがれたのは、ほぼ同時のことだった。浮かぼうと必死にもがいても、そう簡単に海面に出られそうもない。誰かが足首を摑んで死の淵へ引きずりこもう [続きを読む]
  • 第2545日目 〈『サ?・ライシ?ンク?』第5章 5/24〉
  •  海の大きく優しい掌に抱かれた深町希美は、まどろみながらうたかたの夢を見ていた。それはまだ自分が生まれるずっと以前の光景だった。若かりし日の両親の姿、まだ結婚する前の深町徹と松本恵美の、仲むつまじき黄昏刻の一景。時折話しに聞いていただけの昔を、なぜこうもまざまざと眼前にできるのだろう、と意識の遠くで訝しんだが、それはそれとしても、自分が知らない両親の独身時代をこうやって垣間見るのは後ろめたさよりも [続きを読む]
  • 第2544日目 〈『サ?・ライシ?ンク?』第5章 4/24〉
  •  「あいつら、って誰?」 上野は手の甲で涙を拭いながらも、大河内の疑問に答えようとした。それはいい質問だな。この問題の核心をついている。でも、直接名前を出すと正気を失ってしまうかもしれないから、遠回しにいうことにするよ。「理事長の血縁者さ。一人は職員。教員じゃあないよ。もう一人は生徒だ」 「いけ――」 「もう行かなくちゃ。ロープが俺を待っているんでね。それじゃあ、……さよなら」 そういって上野は子 [続きを読む]
  • 第2543日目 〈『サ?・ライシ?ンク?』第5章 3/24〉
  •  受話器のずっとあちら側で空虚な呼び出し音が響いている。上野にはそれがまるで死刑執行を宣告する前に裁判官が打ち鳴らす木槌の音のように感じられた。そうしたあとに俺は、死の天使どもに介添えられて断頭台へと足を運ぶんだ。BGM? そんなのベルリオーズに決まっているじゃないか。《幻想交響曲》、それ以外にいったいなにが? 向こうで受話器を取った重苦しい音が聞こえ、回線は相手とつながった。「もしもし?」という [続きを読む]
  • 第2542日目 〈『サ?・ライシ?ンク?』第5章 2/24〉
  •  ――いま、上野はロフトからぶらさがったロープを眺めている。ロープの先端はちょうど頭をくぐらせられるぐらいの大きさの輪っかになっており、それはとても非現実的な光景と映った。小説や映画ではお馴染みの絞首刑用のロープだが、まさかそれを自分が、自分のために作るとは思わなんだ。こんなのを使わずに済むのなら、それに越したことはない。考えてみれば、俺だって死ぬ必要はないのかもしれない。他にいくらでも罪を償う方 [続きを読む]
  • 第2541日目 〈『サ?・ライシ?ンク?』第5章 1/24〉
  •  準備は終わった。そう上野は独りごちた。生きている心地がしなかったぜ。なんたって俺は犯罪者だからな。いつ学園や警察から電話がかかってくるだろう。それを思うと顔色は、鏡を覗かずともわかるぐらいに青ざめ、足許から冷たいものが脳天まで貫いてゆき、いても立ってもいられなくなる。 今日は帰宅してから四回、部屋の電話が鳴った。携帯電話の電源は学園を出る前からずっと切ってある。電話が鳴るたび、それが地獄の底から [続きを読む]
  • 第2540日目 〈又吉直樹『火花』を読みました。〉
  •  又吉直樹『火花』はふしぎな小説である。初出誌『文藝春秋』で読み、単行本で読み、今回また文庫で読んだ。なのに感想を求められるとひとしきり小首を傾げて言葉を選ぶ振りをして、挙げ句に口から出る言葉は「うん、おもしろかったよ」だけで、後が続かない。 わたくしは作家・又吉直樹を、まるで異類のように見る。 これまで芸人が書いた小説は幾つもあって、概ねマスコミの話題になったものだが、果たしてどれだけの作品が風 [続きを読む]
  • 第2538日目 〈小説第5章、幕開けの予告。〉
  •  言い訳なんて無駄なことはしない。繁忙期にかまけて本ブログの管理を怠ってしまったのは事実だから。一つだけ伝えることがあるとすれば、──ただいま。 開いた日数分のエッセイの準備はできているので、追って順次公開してゆく。穴の開いたカレンダーも、4月下旬には本来あるべき姿へ戻っていることだろう。 本ブログの(無期限)停止はゆめ有り得ぬ事態。いまも昔もこれからも、生きる縁である本ブログはこれからもずっと、 [続きを読む]
  • 第2532日目 〈又吉直樹『火花』について。〉
  •  タレントの書いた小説がいま見るような形でもてはやされるようになったのは、いつ頃からだったろう。いまは様々なジャンルの小説史が調べられてその成果が出版されているけれど、タレントの書いた小説と真っ向から取り組んだ調査結果は上梓されたことがないようだ。それどころか、このジャンルの出版点数は確実に増えているにもかかわらず、積極的踏破そのものはまだされていないのが現状らしい。わたくしはこの、タレントが書い [続きを読む]
  • 第2531日目 〈こんな夢を見た;灰白の壁て?覆われた楕円形の建物にて。〉
  •  昨日は突発的な休みとなって申し訳なかった。仕事のあとに元同僚と久しぶりに会い、酒食に耽りつつ存分に語り明かしたのである。そうして日附けが変わるすこし前に帰宅、もうなにをする気にもなれぬまま床に就いた……。 実は一昨日、昨日、今日(昨日ですか)と3日続けて、かつての事業所の仲間たちが登場する夢を見た。偶然なのか、なんらかの力が働いてのことであったか、考えてみても答えは出ない。しかしそこで見た夢はか [続きを読む]
  • 第2530日目 〈秋吉理香子『暗黒女子』を読みました。〉
  •  『ダ・ヴィンチ』誌でチェックし忘れた小説を後日、新聞広告にて関心を誘われて買いに走る、ということは、実は殆どない。過去1年を顧みても、さて、いったいどれだけの実績があったか。関心を誘われても書店で実見した末にけっきょく買わずに済ましてしまう方が、圧倒的に多いからだ。書店に出向いて実際に購入に至るケースは、事実上ないに等しい、ということにもなる。が、極めて稀に新聞広告で見た小説をその日のうちに買い [続きを読む]
  • 第2529日目 〈マンカ?についての文章を書くこと。〉
  •  どうにかしてこの状況から逃れたかった。まわりを見ても、前を見ても、どこもかしこも闇、闇、闇。光なんてものが自分の未来に射しかかることはないのでないか。おまけに足許は不安定で、いつ地面が崩落してぽっかり空いた穴へ落ちこんでしまうかわからぬのが現実で。息苦しくて居心地の悪い、自分を取り巻くハリボテのような世界をぶっ壊したい。そんな思いを抱えていた矢先に、信州の地方都市が主催する懸賞エッセイのあること [続きを読む]
  • 第2528日目 〈夢野久作『人間腸詰』を手に入れました。〉
  •  年が改まって間もない1月4日、第2474日目として〈夢野久作短編集の相次く゛登場を喜ふ゛。〉と題する文章をお披露目している。 そこで取り挙げたのは創元推理文庫と新潮文庫に昨年相次いで収められた作品集と、かつて角川ホラー文庫で出た『あやかしの鼓』。その末尾で角川ホラー文庫の『人間腸詰』をこれから探しにいこう、と書いた。また、現代教養文庫版傑作集全5巻を探しに行くとするか、とも。第一稿を書きあげてからほぼ2 [続きを読む]
  • 第2527日目 〈村上春樹『騎士団長殺し』を買いました。〉
  •  根附くかどうかわからないプレミアム・フライデーが最初に導入された今日2月24日、村上春樹の新作長編『騎士団長殺し』(新潮社)を購入した。仕事を終わらせ地下鉄に乗っていつもの乗換駅を通過、学生時代を過ごした古本屋街の一画に鎮座坐す老舗新刊書店に駆けこんで、いちおう刊行初日であるけれど早売りから数えて20時間近くとあってはテレヴィのニュースで報道されたようなは姿を消して他の作家同様新刊平台に積まれている [続きを読む]
  • 第2526日目 〈『サ?・ライシ?ンク?』第4章 46/46〉
  •  宮木彩織はベッドから上半身を起こして、大きく伸びをした。頗る長い時間、ベッドに寝っ転がっていたせいか、背中の肉がずいぶんと張っている。そうして寝惚け眼のまま、足を床へ降ろして立ちあがり、よたよたと机に向かって歩き始めた。 (彩織!) 希美の声が耳の奥に響いた。 両足から途端に力が抜け、膝をついて彩織は崩れ落ちた。周囲の光景がまるで引き潮の如く急速に自分の後ろへ引いてゆく。彩織は口を半開きにし、視 [続きを読む]
  • 第2525日目 〈『サ?・ライシ?ンク?』第4章 45/46〉
  •  さあ、おいで。あの黒い衣の男の声が脳裏に響いた。ためらってはいけない。こちらにはお前が望む世界があるのだから。お前が会いたがっている人たちがいるのだから。さあ、おいで。有無をいわさぬ調子の声である。しかし、四囲を見渡してみても、黒い衣の男の姿は視界に入ってこない。こちらで暮らそう、とみんなが待ってくれているよ。 希美は知らず知らずのうちに頷き、よろよろと立ちあがった。そして、おぼつかない足取りで [続きを読む]
  • 第2524日目 〈『サ?・ライシ?ンク?』第4章 44/46〉
  •  目の前に、海が横たわっている。怒号に似た唸りを立てながら、海は飽くことなく波を浜辺へ押し寄せていた。白い波頭は夜目にもそれとはっきり映り、うねりゆく様も細かくわかった。 それをうつろな眼差しで眺める希美は砂浜にたたずんで、全身の揺れるのを風に任せ、海の向こう側から荒々しく吹き寄せる風に漆黒の髪をなびかせていた。これまで何度も夜の海は見てきたが、常に畏怖や恐怖が心の底にしっかりと根を張っていた。だ [続きを読む]