kururik さん プロフィール

  •  
kururikさん: softparanoia
ハンドル名kururik さん
ブログタイトルsoftparanoia
ブログURLhttp://softparanoia.blog53.fc2.com/
サイト紹介文ボーイズラブと一般小説を公開しています。18禁もあります。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供357回 / 365日(平均6.8回/週) - 参加 2010/09/02 17:13

kururik さんのブログ記事

  • 「幸せのレベル」後記とお知らせ。
  • 遅くなりましたが、後記です。「幸せのレベル」、お読みくださりありがとうございました。今回の話は、サスペンスとして書いてて、書ている本人はすっごく楽しんでました。やっぱりこういう系統、書くの好きみたいです。でもですね、読み手の方的には「え、そっち?」ってなる展開だったなと思います。展開が急で、序盤の雰囲気と中盤でがらっと変わるんですね。序盤を気に入ってくださってたかたは、裏切られた感じになるかもしれ [続きを読む]
  • 幸せのレベル38最終回
  •   新年を迎えたばかりの神社で、有と亘は甘酒を買って、がらんとした屋台の椅子に腰を下ろした。  有のマンションから歩いてこられる距離の神社は、あまり知名度がなかった。この時間でも参拝するのに時間はかからなかった。 甘酒の飲み口に一度口をつけたが、猫舌の有は湯気の熱さに怖気づいて、飲むのを諦めた。もっと冷めてからでないと無理だ。 隣に座っている亘に顔を向ける。「石動はなにお願いした?」 有が尋ねると [続きを読む]
  • 幸せのレベル37
  •  ゆう、ゆう、と控えめな声で呼びかけられる。 有は寝返りを打とうとしたところで急に覚醒した。返事をしようとして口を開けたが声が出ない。咳ばらいをすると、少し喉が痛んだ。天井にある蛍光灯の明かりが眩しい。目を擦った。「起きた?」 亘の顔が至近距離まで近づいてきて、鼻と鼻がぶつかった。「覚えてるか?」 亘が心配そうな声で聞いてくる。有は一瞬、覚えていない振りをしようかと思ったが、やめた。ふざける場面じ [続きを読む]
  • 幸せのレベル36 R18
  •  パジャマを脱がせ合ったあと、有は自然な流れで、亘に覆いかぶさられた。亘の体の重みに安心する自分がいる。意識して鼻呼吸をしないと苦しいぐらい、口づけを繰り返す。唾液が混じってお互いの口元が濡れ、ふたりは同時に微笑んだ。「八カ月ぶりだね」 有が言うと、亘が頷いた。「かなり俺、我慢してたよ。今日はまずいかも」 亘の口端がイヤらしく歪んだ。 胸の尖りを舌でねっとりと舐られ、それと同時に性器を五指でゆっく [続きを読む]
  • 幸せのレベル35
  •  午後三時過ぎ、ふたりは救急病院からタクシーを使ってマンションに帰り着いた。玄関に入ったとたん、有は苦笑しながら亘の腕を軽く叩いた。「だから大丈夫だって言ったのに」「いや、大丈夫じゃないだろ。伯母さんに一服盛られたんだから」 亘がまだ怒りを溜め込んでいるようにぶっきらぼうに言った。「まあそうだよね――ありがとう、亘」 ストレッチャーの上で覚醒したとき、亘が心配そうに有の顔を覗き込んでいた。目があっ [続きを読む]
  • 幸せのレベル34
  •  己の手の甲をつねって、眠気を遠ざけようとしたが、焼け石に水だった。「通帳と印鑑を手に入れても、伯母さんじゃ引き出せない」 呂律は回っている。だが、自分の声に膜が張っているみたいだ。「保険として預かっておく。教えてくれなかったら――どうしようかな。ここで自殺しちゃうと資産価値が下がっちゃうのよね。だけど私が住み続ければ関係ないしね」 ひどく明るい声で言われ、自分が危うい立場にいることが実感できない [続きを読む]
  • 幸せのレベル33
  •  有は思わず顔を覆った。歯がカタカタと鳴り、四肢は震えた。事故の再現映像を見せられたみたいにリアルだった。   母が丸太に押されて頽れたところで、有の記憶は途絶えている。本当にあのとき気絶して、有のなかで続きはないのだ。目覚めたときには、ストレッチャーで車から移動させられ、救急車によって病院に運ばれた。 有の頭の中の霧は晴れていた。どうして自分が記憶喪失になったのかも、想像がつく。 ――言葉通りだ [続きを読む]
  • 幸せのレベル32
  •  藤崎の言葉を最後まで聞いたとたん、有の脳裏に閃光が走った。そして聞き覚えのある耳鳴りが両耳に流れて止まる。 ――車のなかには伯母がいたんだ。 記憶のなかにある運転席は、常に靄がかかっていた。父と母の背中が交互に乗り替わっていた。その儚いイメージは、明確な伯母の背中によって蹴散らされる。そして、他三人がどこに座っていたかも鮮明に浮かび上がった。頻繁にこちらを振り返り喋りかけてくる助手席の母の顔と、 [続きを読む]
  • 幸せのレベル31
  • ※17話、加筆しています。 ドアを開けたとたん、伯母がずかずかと部屋に入ってくる。立ち話をさせるつもりはなかったが、あまりの遠慮のなさに有は鼻白んだ。 コーヒーを淹れている時間もなかったので、麦茶を二つのグラスに入れてダイニングテーブルに置いた。着席したあと、向かい側に座る伯母に、単刀直入に言った。「玄関の鍵は替えたんです。もう勝手に入ることはできないですよ。古い鍵、すべて返してください」 厳しい [続きを読む]
  • 幸せのレベル30
  •  翌朝の七時に有は起きた。くっつけた隣のベッドには亘の姿がない。寝室の外からは生活音も聞こえてこない。 有はベッドのヘッドボードに置いてあったスマホを手に取った。『やっと作業が終わったよ。まだ始発がないから、会社でちょっと寝てから帰る。今日は休むことにした』 亘からのLINEは四時に着信していた。 ――亘、大変だったんだな。 亘の会社には仮眠室があると以前聞いたことがある。『お疲れ様。俺も午前中休 [続きを読む]
  • 幸せのレベル29
  •  マンションに帰宅した時刻は二十三時ちょうどだった。食事をする気力もなく、有は手洗いうがいをしたあと、寝室に向かった。 ベッドサイドのテーブルには、亘に借りた心理学の本が置いてある。時間ができたら読もうと思っていた『認知心理学・入門編』だ。 有はその本を開き、目次を確認した。あると思っていた単語が、第七章のタイトルになっていた。『記憶』 第七章の始まりのページを開いた。ページの上には折ったような跡 [続きを読む]
  • 幸せのレベル28
  •  ベッドに上がったとたん、有は仰向けにされた。亘の体がのしかかってくる。重い。 ふたりには体格差があった。亘は有より十センチちかく身長が高く、横幅も広い。有は細身で筋肉もあまりない。 左腕は亘の手によって固定され、動かせない。両脚も同様だった。亘が体重をかけて押さえつけてくる。身動きが取れなかった。 キスは性急だった。軽いキスは省略され、口内にすんなり入ってきた舌は、縦横無尽に暴れまわった。舌が絡 [続きを読む]
  • 幸せのレベル27
  •  有は相槌さえ打てなかった。亘によってもたらされる情報の洪水に、頭がパンクしそうになる。「有? 俺が言っている意味、分かってるか?」「ちょっと――ちょっと待ってよ」 有はこめかみを押さえ、目を閉じた。突発的な頭痛に襲われる。「いきなりそんなこと言われても、信じられないよ。それに――俺とのセックスが良かったんなら、なんでこの七カ月の間、何もしなかったんだ?」「それは」「俺に今までのことをちゃんと話し [続きを読む]
  • 幸せのレベル26
  •  電話を切って十分も経たないうちに、亘が二〇二号室にノックをして入って来た。「どうしたんだよ、こんなところに一人で」 亘が、脱いだコートを空っぽのベッドの上に放り投げる。そのぶっきらぼうな動作に、有は内心驚いた。いつもの亘じゃない、と直感した。 有の座っているソファに、亘も腰を掛けた。ひと一人分が座れるぐらいの距離をあけて。 今すぐには理路整然とした説明ができない――そう思った有は、財布からレシー [続きを読む]
  • 幸せのレベル25
  • 「やっぱり駄目かなあ」 有は独り言を言いながら、ニ〇二と書かれたピンクベージュのドアを開けた。ぱっと視界に入って来たのは、埋め込み型の照明に照らされたサーモンピンクの壁と白い天井だった。ベッドは白一色だが、手前にある三人掛けのカウチソファはショッキングピンクだった。「いちごみるく」というだけあって、色使いは徹底している。胸やけしそうになった。目がチカチカする。 三月十五日に亘と一緒に入ったはずの客 [続きを読む]
  • 幸せのレベル24
  •  有は会社の最寄り駅――地下鉄有楽町駅まで歩き、帰る方向とは逆の電車に乗って渋谷駅に向かった。 ハチ公前を通り、人を避けながらスクランブル交差点を渡り切ったところで、有は時刻を確認した。ちょうど二十一時になったところだった。 有の目的はひとつ。三月に飲み会が行われた居酒屋「たんとたべ」から、ラブホテル「いちごみるく」までのルートを辿ってみることだった。そうすれば何か思い出せるかもしれない――一縷の [続きを読む]
  • 幸せのレベル23
  •  打ち合わせ用に使う小会議室で、有は気になることを一通り藤崎に話した。購入したばかりのミネラルウォーターを呷って、腕時計を見る。もう二十時を過ぎていた。「所々忘れてるって感じだな。一月のときは――神社に行ったこと自体は覚えてるけど、一緒に行った相手と何を話したか忘れてるんだよな? 大したこと話さなかったからじゃないの?」 藤崎が自分のとったメモを見ながら話し出す。「世間話程度じゃ、昨日のことでも忘 [続きを読む]
  • 幸せのレベル22
  • 「穂村もスマホ依存症だなあ。必死にスクロールしちゃって」 隣の席から茶化すような藤崎の声が聞こえてきて、有は慌てて顔を上げた。ここが職場のデスクだということをすっかり忘れ、LINEのトークのログを必死で読んでいた。「すみません、もう昼休終って――」「ないよ。あと十分な」 有はほっとしてスマホの画面に視線を落とした。 三月十五日、二十三時五分。真紀との、飲み会の会費受け渡しについての会話が残っている [続きを読む]
  • 幸せのレベル21
  •  有がロコモコ丼の蓋を開けたとたん、ハトが数羽、灰色の羽を微細に震わせながら、こちらにジリジリと歩み寄って来た。なにか食べ物を落としてくれると期待してのことだろう。 隣に座っている真紀が嫌そうな顔をして、ベンチに置いておいたサンドイッチを手に持った。 今日は天気が良かったので、職場近くの公園で真紀とランチをすることにした。お互い食べたいものを買って持ち寄っている。 遊具はブランコだけで、オフィス街 [続きを読む]
  • 幸せのレベル20
  •  翌朝、有が目を覚ましたときには、隣に亘の姿はなかった。枕元のスマホで時刻を確認する。六時半。いつもアラーム設定をしている時間は七時だ。有は慌ててベッドから下り、リビングルームへと走った。廊下と部屋の仕切りドアを開けたとたん、コーヒーの香ばしい匂いが漂ってくる。「あ、有。おはよう」 亘はテーブルに二人分の朝食を配膳していた。まだパジャヤマ姿だ。有は少しだけほっとした。「おはよう。今日は早いね」「今 [続きを読む]
  • 幸せのレベル19
  •  有がマンションに帰り着いたのは、午後九時を回ったころだった。玄関のドアを開けて三和土を見る。亘の靴がないことにほっとして、そのことに後ろめたさを覚えた。だが考え事をしている暇はなかった。手洗いうがいもせずに自室に直行した。かつてベッドが置いてあった場所に、ポツンと黒いキャビネットが佇んでいる。その前に立ち、鞄から財布を取り出し、小銭入れを探った。硬貨に紛れて入っている一センチ強の鍵を摘んだ。それ [続きを読む]
  • 幸せのレベル18
  • 「それはないよ」 考えるよりも先に声が出ていた。自分らしくない強く厳しい声が。「本当にそう言い切れる? 人が良さそうな人に限って――ってこともあるから」 ねっとりした口調で伯母が言う。口から覗く金歯が濁っていた。「石動さんって言ったわよね? たしかに感じの良い人だったけど」「――えっ」 有は思わず声をあげていた。まるで亘本人に会ったことがあるような言い方だった。「会ったことがあるんですか? 石動と [続きを読む]
  • 幸せのレベル17
  •  倉庫部屋の遺品紛失が発覚した二日後――月曜日の夜。 有は仕事を定時で終わらせて、会社から電車で一時間の距離にある伯母の家を訪れた。彼女の住処は十年前から変わらない。築二十年を過ぎた家族向けのアパートの一階だ。 インターホンを押そうとしたが、そこには小さい貼り紙が張ってあった。『故障中。ノックしてください』 有はその通りにした。ややあって、室内から「はーい」と声が飛んできた。「どなた様?」 伯母の [続きを読む]
  • 幸せのレベル16
  •  ベンチでのひと時があってから、有は大学で亘の姿ばかりを探すようになっていた。まだこのときは、彼に対して恋愛感情を抱いているという自覚はなかった。初めて気を許せる友人ができた――そう思うと嬉しくて常にテンションは高くなり、いい意味で亘に対し遠慮がなくなった。彼と話したいと思えば自ら話しかけるし、学食に誘いたかったら誘う。友達なのだからそれは「していいこと」だと思えるようになった。すると、相手の態度 [続きを読む]
  • 幸せのレベル15
  • 「じゃあ俺もちょっと休憩」 亘がベンチに回り込んで、有の隣にどかっと座った。「なんか疲れたなあ」 独り言にしては大きい声を出して、亘がゆっくりと伸びをした。「何かあったの?」 彼の口から「疲れた」とかマイナスの科白を聞いたのはこのときが初めてだった。「あったよ。ディスカッションで立て板に水の如く喋ってたやついただろ? 調整するのが大変だった」 亘が苦笑しながら有の顔を見た。「ああ、たしかに今日はバ [続きを読む]