瑞原唯子 さん プロフィール

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瑞原唯子さん: 虚空碧海 - オリジナルファンタジー小説
ハンドル名瑞原唯子 さん
ブログタイトル虚空碧海 - オリジナルファンタジー小説
ブログURLhttp://yuikomizuhara.blog91.fc2.com/
サイト紹介文オリジナル恋愛ファンタジー小説を掲載しています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供32回 / 365日(平均0.6回/週) - 参加 2011/03/05 15:54

瑞原唯子 さんのブログ記事

  • 第26話 因縁の地
  • 「五月の一日二日、大学休めない?」 穏やかに晴れた土曜の昼下がり。 遥は話したいことがあるからと七海の部屋を訪れると、窓際のティーテーブルで向かい合って紅茶を飲みながらそう切り出した。彼女は不思議そうに目をぱちくりと瞬かせたものの、すぐに記憶を探り始める。「ゴールデンウィーク中は半分くらい休講になりそうだし、実験もないし、二日くらいなら別に休んでも大丈夫だと思うけど……なんで?」 望みどおりの答え [続きを読む]
  • 第25話 タイムリミット
  • 「遥、もう見合いをして結婚しなさい」 祖父の剛三がそう命じるのを、遥は直立したまま表情も変えずに受け止めた。先日、大伯母からも見合い相手を見繕っていると聞かされたし、呼び出された時点でこの話だろうとほぼ確信していたのだ。 執務机にはお見合い写真らしきものが山積みにされている。剛三は若干うんざりした面持ちでそれを見やると、一番上からひとつぞんざいに取り、中の写真に冷ややかな目を向けながら言う。「大地 [続きを読む]
  • 第24話 一生の枷
  • 「僕の学費とか生活費とか遥が出してるって本当?!」 七海が切羽詰まったように扉を叩いて遥を呼ぶので、どうしたのかと扉を開けると、何の前置きもなくいきなりそう詰め寄ってきた。体が触れそうなほど近い。そのうえ答えを催促するようにじっと目を見つめてくる。「とりあえず入って」「うん……」 動揺を見せることなく無表情のまま部屋に招き入れると、うつむき加減になった彼女の白いうなじを目で追いながら、ひそかに溜息 [続きを読む]
  • 第23話 断ち切れない想い
  • 「もう脈はないんじゃないか?」 そう言われて、遥は思わず隣の冨田を睨みつけた。 暖色の間接照明が灯る中、彼はきまり悪そうにスパークリングワインを口に運ぶ。この二年のあいだに九回告白してすべて断られたと聞けば、そう思うのも仕方がないかもしれない。けれど。「誘えば一緒に遊びに行ってくれるし普通に仲はいいよ。いまは高三で受験生だから部屋で勉強を見ることが多いけど。付き合ってたときとあんまり変わらない感じ [続きを読む]
  • 第22話 名前のない関係
  • 「おまえもただの男というわけか」 剛三は正月ということで身に着けていた羽織袴のまま、革張りの椅子にゆったりと身を預けて溜息をついた。その表情は渋い。正面で背筋を伸ばして立つ遥にあきれたような視線を送る。「激情にまかせて殴りつけるなど愚の骨頂だ。今回は罪に問われないが、おまえのしたことは十分傷害罪になりえるのだぞ。目撃者が二人もいるのだから言い逃れはできない。復讐したいのなら頭を使って上手くやるのだ [続きを読む]
  • 第21話 激情
  •  僕の願いは――。 願ってはならないことを願いそうになる自分を戒めながら、遥は賽銭箱の前で手を合わせる。そうなるともう他に願いたいことなんて思い浮かばない。それがいまの自分ということだ。 そっと隣に目を向けると、着物姿の七海がおしとやかに両手を合わせて拝んでいた。その横顔はいつになく大人びて見える。武蔵に関することを何か願っているのかもしれない。「行こうか」「うん」 七海がそっと目を開けたのを見計 [続きを読む]
  • 第20話 今夜だけは
  • 「ごめん、僕から誘ったのに遅れて」 遥が店員に案内されて間接照明のともる個室に入ると、冨田は振り向いて気にするなと笑った。暇つぶしなのかその手には携帯電話が握られている。スーツの上着は脱ぎ、ビジネスバッグとともに隣の椅子に置かれていた。 遥は空いていた奥側の長椅子に腰掛けて、彼と向かい合った。駅から小走りで来たせいですこし汗ばんでいる。スーツの上着を脱いで軽くネクタイを緩めながら、ふうと息をついた [続きを読む]
  • 第19話 因果応報
  • 「くっ……そ……!」 うつぶせに倒して瞬時に背中側で腕を拘束し、動きを封じると、七海はくやしそうに上気した顔をしかめて呻く。多少、痛みもあるのかもしれない。すぐに掴んでいた腕を放して彼女の体の上からどいた。「教えたことが全然できてなかったよ」「うん、いまのは完全に失敗だった」 七海は体を起こしつつ、反省しきりといった面持ちでそう応じた。遥が手を差し伸べると、ためらいなくその手を取って立ち上がり、両 [続きを読む]
  • 第18話 終幕にはまだ早い
  •  コンコン――。 部屋の扉が叩かれた。 遥は手を止めてノートパソコンの時刻表示に目を向ける。まもなく二十二時だ。扉の叩き方や足音からすると七海に違いない。腰を上げかけたものの立たずに座り直し、一呼吸おいてから返事をする。「開いてるよ、入って」「うん……」 戸惑いがちな声が聞こえて、静かに扉が開く。 おそらくあれからずっと武蔵と過ごしていたのだろう。七海はまだ制服を着ていた。いつもなら何の遠慮もなく [続きを読む]
  • 第17話 プレゼント
  • 「行ってきます」 七海はローファーを履いてくるりと向きなおり、笑顔でそう言った。短めのポニーテールが揺れている。もう夏服なので半袖シャツにベストという格好だ。オレンジ色のネクタイもきちんと締められている。 一方、見送る遥のほうは部屋着のままである。普段は七海より早く家を出ることが多いのだが、今日は休みをとっていた。会社だけでなく祖父の仕事のほうもすべて。「学校が終わるころ迎えに行くよ」 今日は七海 [続きを読む]
  • 第16話 温度差
  • 「どうぞ、こちらです」 一通りのボディチェックを受けたあと、遥はスーツの乱れを直し、公安の男性に案内されてスイートルームに入った。 落ち着いた色調でまとめられたゆとりのある空間が、目の前に広がる。華美な装飾はなく思ったよりもずっとシンプルだが、それでも床や調度品など至るところに上質さは感じられた。 正面のリビングルームに足を進めると、金髪碧眼の男がソファで脚を組んでいるのが見えた。彼は新聞を広げて [続きを読む]
  • 第15話 二度とないはずの
  •  プルルルル、プルルルル――。 眠っていた遥の意識にうっすらと内線の着信音が届く。 煩わしさに眉をひそめながら寝返りを打ち、どうにか薄目を開いて気怠い体を起こすと、鳴り続けている電話の受話器を取った。「はい」『なんだ、もう寝ておったのか?』「寝ていてもおかしくない時間です」 祖父の剛三に開口一番あきれたように言われ、ムッとして言い返す。まもなく日付が変わろうかという時間だ。寝ていたところで非難され [続きを読む]
  • 第14話 卒業
  • 「七海のセーラー服も今日で見納めだね」 遥はベッドに腰掛け、隣の七海を無遠慮に眺めながら言う。 彼女は中学の制服であるセーラー服を身に着けて、ベッドで紺の靴下をはこうとしているところだったが、戸惑ったような顔をして口をとがらせた。「そういう感傷的なこと言うのやめろよな」「今日くらいはいいだろう?」 遥が笑顔を見せると、彼女はムッとしてはきかけていた靴下を引き上げる。感情を露わにしたような乱雑な手つ [続きを読む]
  • 第13話 高校受験
  •  七海と付き合い始めてから二年が過ぎた。 別れの危機はこれまで一度もない。七海が口をとがらせることはあるが、せいぜいその程度で、喧嘩といえるまでには発展しないのだ。彼女のさっぱりした性格のおかげといえるだろう。 遥と七海の関係を知っているのは、祖父とその秘書、友人の冨田、妹夫婦、それに使用人くらいである。メルローズにはまだ言っていない。嫉妬をされて面倒なことになりかねないし、口止めも難しいと判断し [続きを読む]
  • 第12話 墓参り
  • 「お墓参り?」 冬休みが終わってまもない金曜日の夜。 遥は自分の部屋に七海を呼び、紅茶を飲みながら学校の話を一通り聞いたあと、明日お父さんのお墓参りに行こうと切り出した。彼女はティーカップを持ったまま不思議そうな顔になる。「別にいいけど……命日でもお彼岸でもお盆でもないのに、なんで?」「お父さんに報告することがあるからね。七海もあるんじゃないの?」「ああ……うん……」 遥の言わんとすることを理解し [続きを読む]
  • 第11話 本物と偽物
  •  冬休み最後の日、遥は友人の冨田を自宅に呼んだ。 子供のころにも何度か呼んだことがあるが、彼はいつもそわそわと落ち着きのない様子を見せていた。それは大人になったいまでもあまり変わらないようだ。背筋を伸ばして応接ソファにおさまりながらも目は泳いでいる。「そんなに緊張しないでよ」「そう言われてもな」 冨田は困ったように苦笑した。 アンティークな調度品が並んだ重厚感あふれる応接室は、確かに普通の大学生に [続きを読む]
  • 第10話 対峙
  • 「なぜ呼ばれたかはわかっているな?」「はい」 七海と体を重ねた翌日、遥は橘財閥会長である祖父の剛三に呼び出された。 ベッドに残る痕跡に使用人が気付かないはずもなく、剛三に報告する旨を執事の櫻井からあらかじめ伝えられていたため、心の準備はできていた。もとより隠すつもりはなかったので手間が省けたともいえる。 たじろぐことなくまっすぐ背筋を伸ばして立ったまま、冷静に見つめ返す。剛三は執務机で両手を組み合 [続きを読む]
  • 第9話 恋人らしいこと
  •  七海が僕のことを好きになりますように――。 遥は五円玉を賽銭箱に入れ、二礼二拍手し、手を合わせたまま祈念する。 その右隣では七海が、左隣ではメルローズが、同じように手を合わせて祈っていた。七海はどういうわけか眉を寄せて必死な顔をしている。よくばってあれもこれもとお願いしているのかもしれない。遥は横目で見ながらひそかにくすりと笑った。 元日の朝、三人は初詣のためにこの神社に来た。 近所のさほど大き [続きを読む]
  • 第8話 僕で試せばいい
  • 「ぜんぶ七海ちゃんのせいなんだから!」 クリスマス間近の雪がちらついていたある日、遥が帰宅して自分の部屋に向かっていると、ふとそんな叫び声が聞こえた。おそらくすぐ先にある七海の部屋からだろう。そして叫んだのは――。 バン、と勢いよく扉が開いてメルローズが飛び出してきた。鳶色の瞳からぽろぽろと涙の粒をこぼしている。遥に気付くとハッと息を飲んでうろたえたが、すぐに身を翻して走り去った。「あれ、遥……」 [続きを読む]
  • 第7話 自覚
  • 「ただいま」 ノックが聞こえて扉を開けると、そこにはニコニコと笑みを浮かべた七海が立っていた。クラスメイトの二階堂と残念会をするために昼前に出かけて、いまは午後二時である。言いつけどおり昼食だけで帰ってきたのだろう。「おかえり、楽しかった?」「うん、もうおなかパンパン」 七海はおなかをさすりながら満足そうにエヘヘと笑う。しかしすぐに思い出したようにショートパンツのポケットを探り、そこから折りたたま [続きを読む]
  • 第6話 クラスメイト
  •  七海へのいじめはピタリとやんだ。 瑠璃子は前にもまして憎々しげに睨んでくるものの、あからさまな暴言を吐いたり物を壊したりということはなくなったらしい。二度としないよう父親に強く言いつけられているのだろう。 一部のクラスメイトは巻き込まれるのを怖れてか七海を避けていたが、いじめがやんでからは普通に接してくれるようになったと聞いた。ただ、校外で会うほどの友達はまだいないようだ。 それもあってか休日は [続きを読む]
  • 第5話 井の中の蛙
  • 「いじめ?」 それは、梅雨入りしてまもないある日のことだった。 遥が大学から帰ると、玄関で待ち構えていた執事の櫻井から、内密で話したいことがあると切り出された。彼はこの家に長年仕えている信頼のおける人物だ。すぐ空き部屋に連れて行き、ガラスの応接テーブルを挟んで向かい合った。 そこで聞いたのが、七海がいじめを受けているらしいという話だ。毎日元気でそんな様子はまったくなかったので、にわかに信じられず聞 [続きを読む]
  • 第4話 彼女と暮らした男
  • 「自分が死んだあとのことなんかどうでもよかった」 警察庁長官の執務室にある応接ソファで、七海と約二年ぶりの再会を果たした真壁拓海は、彼女の質問に対して眉ひとつ動かさずにそう答えた。すこしの希望も抱かせない冷めた口調で。 七海はいまにも泣きそうになりながら深くうつむいた。 真実を知ってもずっと心のどこかで信じていたようだが、こうなってはもう認めざるを得ないだろう。彼にとって自分は復讐の道具でしかなか [続きを読む]
  • 第3話 偽装恋人
  • 「遥、おまえ眠そうだけど大丈夫か?」 経済学の講義が終わり、遥が教科書やノートを片付けていると、隣に座っている富田拓也(とみだたくや)が心配そうに尋ねてきた。 確かに、土日はあちこち駆けずりまわったうえ、片付けることも多くてあまり寝ていない。眠いといえば眠いが、講義は最前列で居眠りもせず真面目に受けていたし、そういう素振りは見せないよう気をつけていたつもりなのに。「そんなに眠そうにしてた?」「いや [続きを読む]
  • 第2話 二人きりの朝
  • 「七海、もう起きる時間だよ」 遥はベッドの端に腰掛けてそっと声をかけた。スヤスヤと心地よさそうに眠っていた彼女は、かすかに眉を寄せながらこちらに寝返りを打ち、ぼんやりと半目を開く。「ん……武蔵……?」 武蔵というのは、昨日まで一年半ほど七海を預かっていた男である。しかしながらいまはもう遠い故郷に帰ってしまい、ここにはいない。遥は微妙なこころもちになり苦笑を浮かべた。「寝ぼけてる?」「……そっか」  [続きを読む]