山田昇市郎 さん プロフィール

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山田昇市郎さん: 山田小説(オリジナル超短編)公開の場
ハンドル名山田昇市郎 さん
ブログタイトル山田小説(オリジナル超短編)公開の場
ブログURLhttp://ameblo.jp/yamadanovel
サイト紹介文自作の超短編小説を公開しているブログです。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供75回 / 365日(平均1.4回/週) - 参加 2011/05/07 13:43

山田昇市郎 さんのブログ記事

  • 頭を膨らませる
  •  夜、枕元で会話をしている二人組の声が聞こえてきたので私は意識が覚醒した。かなりの早口だったが、発音が明瞭なので言葉の内容は聞き取れていた。 「まったく膨らまないね」 「膨らむわけがないよ。君は鼻と口を塞いでいないじゃないか。しっかりと塞いでおいてから耳から空気を吹き入れたら膨れるはずだよ」 「鼻と口を塞いだら息苦しくなって目が醒めるのじゃないか?」 「耳から空気を入れるから息苦しくなるわけないよ [続きを読む]
  • 長い肉体
  •  夜、枕元で会話をしている二人組の声が聞こえてきたので私は意識が覚醒した。かなりの早口だったが、発音が明瞭なので言葉の内容は聞き取れていた。 「この身体は随分と長いね。頭は布団の上にあるけど、足は道路にまで伸びている。それに、手は台所にあるじゃないか」 「道路や台所にある足や手は本当にこの頭と繋がっているのか?」 「間違いなく繋がっているよ。これは一つの巨大な生き物だ」 「本当かな?信じられないな [続きを読む]
  • 微笑の仮面
  •  夜、顔面に異物が乗っていると感じたので驚いて意識が覚醒した。私は咄嗟にそれを両手で除けそうと試みたのだが、そこには目や鼻や口などがあるばかりだった。 そういえば、夢の中で鮮やかな原色で彩られた微笑の仮面を被って歩いていたと私は思い出した。そこは繁華街でたくさんの人々が行き交っていた。私は誰かと笑い合いたいと望んでいたが、微笑の仮面を被っている仲間を見つけられずにいた。 そもそも周りの人々は誰も仮 [続きを読む]
  • 蛙の仮面
  •  夜、顔面に異物が乗っていると感じたので驚いて意識が覚醒した。私は咄嗟にそれを両手で除けそうと試みたのだが、そこには目や鼻や口などがあるばかりで実際には何も乗っていなかった。 そういえば、夢の中で蛙に扮装して道を歩いていたと私は思い出した。緑色の仮面を被っていたのだったが、周りを行き交う人々も私と同じような仮面を被っていた。私達は擦れ違う度に互いに蛙の声を掛け合っていた。路上のあちらこちらから絶え [続きを読む]
  • 吉兆の仮面
  •  夜、顔面に異物が乗っていると感じたので驚いて意識が覚醒した。私は咄嗟にそれを両手で除けそうと試みたのだが、そこには目や鼻や口などがあるばかりで実際には何も乗っていなかった。 そういえば、夢の中で鮮やかな原色で彩られた吉兆の仮面を被って歩いていたと私は思い出した。そして、道で他人と擦れ違う度に甲高い声を張り上げていたのだった。その声はまるで人間ではなくなったかのようで普段とはまったく違っていた。  [続きを読む]
  • 怪物の仮面
  •  夜、顔面に異物が乗っていると感じたので驚いて意識が覚醒した。私は咄嗟にそれを両手で除けそうと試みたのだが、そこには目や鼻や口などがあるばかりで実際には何も乗っていなかった。 そういえば、夢の中で怪物に扮装して夜道を行き交う人々を驚かせていたと私は思い出した。鮮やかな原色で彩られた仮面を被り、人々の悲鳴を聞く度に心の底から笑っていたのだった。それはとても痛快な夢だった。過去の数十年間で最も充実した [続きを読む]
  • 水が入ったコップ
  •  一匹の怪物がテーブルに置かれたコップを見つめたまま頬杖を着いていた。 たまたま通り掛かった一人の男が怪物の神妙な表情を見て首を傾げた。「どうかしましたか?喉が渇いたのですか?」 怪物はコップから視線を動かさないまま答えた。「よく見ろよ。まだ水が半分も残っているだろう?」 「では、喉が渇いていないのですか?」と男は訊いた。 「今は乾いていないさ」と怪物は答えた。 男は辺りを見回した。ふと、喉が渇い [続きを読む]
  • 穴を覗いている
  •  一匹の怪物が地面に空いた大きな穴の淵に立っていた。 たまたま通り掛かった一人の男が怪物に声を掛けた。「どうかしたのですか?なぜそのような場所に立っているのですか?誤って落ちたら大変ですよ。その穴は随分と深いのでしょう?」 「この穴は深くて底が見えない。しかし、きっと底があるはずだ。俺は産まれてからずっとこの穴を覗いている」と怪物は男の方に顔を向けないまま言った。 「穴以外の景色を見るつもりはない [続きを読む]
  • 犬達の穴
  •  「村人達の証言によると昔から何匹も犬達がこの穴に落ちていって地上に帰ってこなくなっているらしいですよ」と男が地面にぽっかりと開いたバケツ程の直径の穴を指差しながら言った。 そこは農園の一角だった。穴はかなり深いようで底が見えていなかった。犬が転落する危険があるのなら穴を塞ぐべきではないかと思ったが、おそらく村人達には村人達なりの道理があって穴を放置しているのであって部外者である私が余計な口出しを [続きを読む]
  • 子鹿の穴
  •  「村人の証言によると昨日の夕方、この穴に一匹の子鹿が落ちていったらしいですよ」と男が地面にぽっかりと開いたバケツ程の直径の穴を指差しながら言った。 そこは農園の一角だった。穴はかなり深いようで底が見えていなかった。しかし、子供だとしても長い脚や首が生えている鹿の身体が簡単にその穴に転落するとは思えなかった。どうせ村人が見間違えたのだろうと思われたので私は男の言葉を真面目に受け止めていなかったのだ [続きを読む]
  • 林檎の穴
  •  「これは林檎の穴です」と男が地面にぽっかりと開いたバケツ程の直径の穴を指差しながら言った。「毎年、この村では大量の林檎が収穫されますが、商品として不適格と判断された林檎はこの穴の中に捨てられるのですよ」 そこは林檎の木が何本も生えている農園の一角だった。穴はかなり深いようで底が見えていなかった。今は季節が違うので木々の枝に実は付いていなかったが、林檎の美味しそうな匂いが鼻孔を刺激していた。穴に廃 [続きを読む]
  • 穴眼鏡
  •  「先日、穴眼鏡を購入しましてね」と宴会場でたまたま隣の席に座っていた会社の同僚が言い出した。「今もそれを掛けているのですけどね」 その言葉を聞いて私は同僚の顔を見遣ったが、彼が装着している眼鏡は何の変哲もない代物のようだった。その名称が意味するところは何だろうかと考えながら私は「穴眼鏡」と鸚鵡返しに呟いた。  「ええ。これを掛けていると穴を覗いているような気持ちになってくるのです。いいでしょう? [続きを読む]
  • 坂眼鏡
  •  「先日、坂眼鏡を購入しましてね」と宴会場でたまたま隣の席に座っていた会社の同僚が言い出した。「今もそれを掛けているのですけどね」 その言葉を聞いて私は同僚の顔を見遣ったが、彼が装着している眼鏡は何の変哲もない代物のようだった。その名称が意味するところは何だろうかと考えながら私は「坂眼鏡」と鸚鵡返しに呟いた。  「ええ。これを掛けていると目の前の景色が向こう側に傾斜して下っていっているように見えて [続きを読む]
  • 箱眼鏡
  •  「先日、箱眼鏡を購入しましてね」と宴会場でたまたま隣の席に座っていた会社の同僚が言い出した。「今もそれを掛けているのですけどね」 その言葉を聞いて私は同僚の顔を見遣ったが、彼が装着している眼鏡は何の変哲もない代物のようだった。その名称が意味するところは何だろうかと考えながら私は「箱眼鏡」と鸚鵡返しに呟いた。  「ええ。これを掛けていると世界が大きな箱の中にあるような気持ちになってくるのです。いい [続きを読む]
  • 箱を被れ
  •  「こんにちは。久し振りですね」 「こんにちは」 「あなたは頭に箱を被っていませんね。王様からの命令を知らないのですか?」 「箱を被れという命令が出されたのですか?」 「ええ。そうですよ」 「しかし、周りを見回したところ、あなた以外の誰も箱を被っていないようですよ」 「まだ命令が行き届いていないようですね。あなたはまさか私が嘘を吐いていると思っているのですか?王様に関する情報をわざと誤って伝えるわ [続きを読む]
  • 新年になったらしい
  •  「こんにちは。いや。そういえば、先日、新しい年になったそうですが、あなたには最近会っていませんでしたから、あけましておめでとうございます、と言うべきでしたね」 「新しい年になったのですか。それは知りませんでした。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。それで、いつ年が明けたのですか?」 「いや。私も正確な日時は知らないのですけどね。しかし、王様が新年の到来を宣言されたという情 [続きを読む]
  • 船長が決めた元日
  •  船室内の電話機が甲高い音を鳴らしたのでソファから立ち上がって受話器を取ると船長の大きな声が聞こえてきた。「あけましておめでとう」と船長は言っていた。 「今日は元日でしたか?」と私は訊いた。 「元日だと私が決めたよ。君もずっと宇宙船の中に閉じ籠っていて退屈しているだろう?ここはどこの惑星でもないのだから古い年と新しい年の境界を船長である私が決めたところで問題はないはずだ。さあ。大広間に集まって船員 [続きを読む]
  • 目次64
  • 石ころ眼鏡石を置かれる犬のように鳴く石いつもベンチに軒下の問答雨が降る夢牛と対峙する夢水滴の虹虹が架かっている風景猫達が寝ている風景目次(超短編小説) [続きを読む]
  • 進化する蛙達
  •  宇宙船が目的地に到着するまで退屈なので私は船内の図書館に籠って仮想進化図鑑を見る日々を送っていた。そこにはたくさんの生物が動画と音声付きで紹介されていた。最も原始的な単細胞生物から掲載されているのだが、そこから進化していって今は両生類にまで辿り着いていた。 その図鑑で設定されている惑星は陸地面積がかなり狭くて大気の湿度が高いので現実とは違って今はまだ完全な陸生脊椎動物が誕生していなかった。蛙達は [続きを読む]
  • 宇宙船だと私は呟く
  •  「宇宙船だ」と私は宇宙船の中で呟く。 すると、視認する物体がすべて宇宙船に見える。椅子も寝台も天井も私自身の手も例外ではない。頭の片隅ではそれらが決して宇宙船ではないと承知しているのだが、それでいて今にも飛び立ちそうだという予感を覚えている。或いは、宙に舞わせた手をどこに着地させようかと迷いながら延々と漂流させ続けている。 惑星を飛び立ってから既にかなりの時間が経過している。時々、私は正気に戻っ [続きを読む]
  • 人間だと私は呟く
  •  「人間だ」と宇宙船の中で私は呟く。 すると、視認する物体がすべて人間に見える。椅子も寝台も天井も私自身の手も例外ではない。頭の片隅ではそれらが決して人間ではないと承知しているのだが、それでいて人間の集団に囲まれていると感じている。椅子や寝台などで背丈に大きな差がある。 惑星を飛び立ってから既にかなりの時間が経過している。時々、私は正気に戻って船室の窓を覗くが、いつも同じような星空しか見えない。宇 [続きを読む]
  • 猫だと私は呟く
  •  「猫だ」と宇宙船の中で私は呟く。 すると、視認する物体がすべて猫に見える。椅子も寝台も天井も私自身の手も例外ではない。頭の片隅ではそれらが決して猫ではないと承知しているのだが、それでいて猫の群れに囲まれていると感じている。 惑星を飛び立ってから既にかなりの時間が経過している。時々、私は正気に戻って船室の窓を覗くが、いつも同じような星空しか見えない。宇宙船はまだ当分は目的地に到着しそうにない。 「 [続きを読む]