山田昇市郎 さん プロフィール

  •  
山田昇市郎さん: 山田小説(オリジナル超短編)公開の場
ハンドル名山田昇市郎 さん
ブログタイトル山田小説(オリジナル超短編)公開の場
ブログURLhttps://ameblo.jp/yamadanovel
サイト紹介文自作の超短編小説を公開しているブログです。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供75回 / 365日(平均1.4回/週) - 参加 2011/05/07 13:43

山田昇市郎 さんのブログ記事

  • 増えるの小人
  •  夜、枕元で誰かが「増える。増える」と呟いているようだと気が付いて意識が覚醒した。瞼を開けたが、天井の照明が眩しいので私は思わず顔をしかめた。その間もずっと「増える。増える」と聞こえてきていた。 同居している家族の誰とも違う声だった。どうやら赤の他人が寝室に侵入してきているようだと思い、私はその正体を確かめなければならないと考えて上半身を起こした。 すると、布団の脇に小人が立っていて「増える。増え [続きを読む]
  • 小人の箱
  •  「時々、この箱の中から小人が出てくるのですよ」と館の主人が言った。 館の庭先に一個の木箱が置いてあった。そこそこ大きいが、装飾などは一切なかった。蓋が開いているので中を覗き込んでみたが、空っぽで底に薄らと埃が溜まっていた。「元々、何が入っていた箱なのですか?」と私は主人の方に振り向いてから訊いた。 「友人から押し付けられたのです。彼女は小人を生み出す箱だと言っていました。実際、私はこの箱から小人 [続きを読む]
  • 猫の箱
  •  夜、寝床で横になって目を閉じていると木箱の映像が頭の中に浮かんできた。蓋が開いていて一匹の猫が入れられていた。猫の身体はその箱の中にきっちりと隙間なく収まっていた。瞼はしっかりと閉じられていた。 ふさふさとして柔らかそうな体毛を撫でてみたくなったので私は自分の手を想像した。しかし、そうして猫の身体を撫でても感覚が伝わってこないので他人の動作を見ているかのようだと思われて物足りなかった。 箱の中の [続きを読む]
  • 魚の箱
  •  夜、寝床で横になって目を閉じていると魚が入れられている箱の映像が頭の中に浮かんできた。箱は幾つもの木の板が合わさって出来ているのだが、側面に隙間が開いているようで水が漏れ出ていた。 このままだと箱の中の水がすぐに尽きて魚が死ぬだろうと思われたので私は胸騒ぎを覚え、咄嗟にその想像を頭の中から打ち消した。しかし、魚の安否が気になるので私はまたその箱を思い浮かべた。 箱の中の水量はずっと一定で変化がな [続きを読む]
  • 大魚を押さえ付けろ
  •  「その魚を押さえ付けろ」と船長が大声で命令していた。 私は他の船員達と共に甲板上で暴れ回っている大魚の長い身体にしがみ着いていた。冷たい雨が降っていて海は荒れていた。魚は狂ったような叫びを発していた。獣にも鳥にも似ていない濁声だった。 雨で濡れているせいか、大魚はいつまで経っても体力が落ちないようだった。私達の方がその大きな身体の下敷きになるなどして疲弊してきていた。魚の叫び声も私達の気持ちを苛 [続きを読む]
  • 魚の仮面
  •  夜、顔面に異物が乗っていると感じたので驚いて意識が覚醒した。私は咄嗟にそれを両手で除けそうと試みたのだが、そこには目や鼻や口などがあるばかりだった。 そういえば、夢の中で魚の仮面を被って住宅街を歩いていたと思い出した。私は頻繁に通行人と擦れ違っていたのだったが、彼等も悉く魚の仮面を被っていた。それらは本物の魚そっくりに造られた仮面で口がぱくぱくと開閉していた。しかし、その口の隙間の中は空洞がある [続きを読む]
  • ヒーローの仮面
  •  夜、顔面に異物が乗っていると感じたので驚いて意識が覚醒した。私は咄嗟にそれを両手で除けそうと試みたのだが、そこには目や鼻や口などがあるばかりで実際には何も乗っていなかった。 そういえば、夢の中で特撮ヒーローに扮装して道を歩いていたと私は思い出した。鮮やかな原色で彩られた仮面を被り、子供達と擦れ違う度に歓声や称賛を受けていたのだった。そして、徐々に私を追ってくる子供達の数が増えてきていた。 しかし [続きを読む]
  • 直線頭
  •  仮面屋で線頭を購入した。帰宅してから被ってみると無性に直線を書きたくなってきた。 それで、私は勉強机に向かい、鉛筆で紙に線を書いてみた。すると、予想していたよりも真っ直ぐな線を書けたので私は得意な気持ちになった。おそらく世界中のどこを探してもこれ程までに真っ直ぐな線を書く能力を持っている人間はいないだろうという考えが浮かんできた。  それで、私は高揚感を覚えながら何本も線を書いた。どれも驚くくら [続きを読む]
  • 線頭
  •  仮面屋で線頭を購入した。帰宅してから居間でそれを被ってみたのだが、試しに本棚から書物を取り出して開いてみると文字を構成している線の形状が悉く美しいと感じられると気が付いたので私は興奮した。見つめれば見つめるだけ感動が深まっていくようだった。それで、一文字ずつをじっくりと時間を掛けながら鑑賞していった。 空腹が気になったので書物から視線を上げて時計を見遣ると既に真夜中になっていた。最初に開いた頁を [続きを読む]
  • 文字のような石像
  •  暇な時間が出来たので美術館に行ってみた。抽象的な形状の石像ばかりが幾つも展示されていたので私は一つずつの作品の前で歩みを止め、じっくりと時間を掛けながら鑑賞していった。 幾つかの石像を見ていて私はそれらが表意文字のようだと思った。どの作品にも題名は掲げられていないのだが、私はそれらの石像が表している意味を感じ取れそうだという気がしているのだった。 美術館は入口付近は明るかったが、奥に入っていくの [続きを読む]
  • 怪獣のような石像
  •  暇な時間が出来たので美術館に行ってみた。抽象的な形状の石像ばかりが幾つも展示されていたので私は一つずつの作品の前で歩みを止め、じっくりと時間を掛けながら鑑賞していった。 攻撃的な印象を受ける作品ばかりで私は館内を歩きながら徐々に心が荒んでいくようだと感じていた。しかし、まるで怪獣のようだという感想が脳裏に浮かぶと突如としてすべての石像が怪獣を表していると見えるようになり、私は謎解きに成功したとい [続きを読む]
  • 武器のような石像
  •  暇な時間が出来たので美術館に行ってみた。抽象的な形状の石像ばかりが幾つも展示されていたので私は一つずつの作品の前で歩みを止め、じっくりと時間を掛けながら鑑賞していった。 表面に鋭い突起が幾つも付いていて攻撃的な印象を受ける形の石像ばかりだった。武器になるかもしれないと思ったが、柄になりそうな箇所がないので使い勝手は悪そうだった。ただ、突起がない部分を両手で抱えて投げ付ければ相手に大きな傷を負わせ [続きを読む]
  • 抽象的な石像
  •  暇な時間が出来たので美術館に行ってみた。抽象的な形状の石像ばかりが幾つも展示されていたので私は一つずつの作品の前で歩みを止め、じっくりと時間を掛けながら鑑賞していった。 石像には照明が当てられていたが、館内は全体的に薄暗かった。天井から吊るされている幕で空間が複雑に分岐と湾曲をしながら仕切られているのだが、そうして作られた通路を歩きながら私は自分が同じ場所を堂々巡りしているようだと感じていた。幾 [続きを読む]
  • 建物の限り
  •  「部屋には必ず外があるよね」と弟が言った。「それなら建物にも必ず外があるはずだよ。そうでしょう?僕はいつかこの建物の外側に行ってみたいよ」 兄弟は長い折れ曲がった通路を並んで歩いていた。そこは天井が低い区域だが、彼等は背丈が低いので周りを行き交っている大人達とは違って腰を屈めないまま歩いていられた。 「お前は探検家になるつもりなのか?」と兄が問い掛けた。 「そうだよ。この建物にはまだ人間が立ち入 [続きを読む]
  • 口を閉じたまま
  •  「口を閉じたまま話そう。その方が疲れない」と兄が言った。 「わかったよ」と私は口を閉じたまま同意した。 どうやら夢を見ているらしいと私は考えた。私達は河川敷の公園でベンチに並んで座っていた。兄は先日一緒に鑑賞した映画の感想を話し始めた。その口はしっかりと閉じられていて唇は少しも動いていなかったが、それでいて兄の声は私の耳に届いてきていた。 「面白かったね」と私は相槌のつもりで言った。口は開けなか [続きを読む]
  • 足を浮かせたまま
  •  「足を浮かせたまま歩こう。その方が疲れない」と兄が言った。 また同じ夢だと私は思った。私達は河川敷の公園で向かい合って立っていた。兄の足は地面から少しだけ浮かんでいた。私も足の裏に地面を感じていなかった。身体が浮遊しているようだった。しかし、私は足が地面と接触していない状態で推進力を生じさせる方法が皆目わからなかった。 「どうやって進めばいいの?」と私は訊いた。 「こうだ」と兄は言った。そして、 [続きを読む]
  • 腹の中の美しい石
  •  夜、頬に風が当たったので目が醒めた。瞼を開けたが、辺りは真っ暗で何も見えなかった。水が流れる音が聞こえていた。近くに川があるようだった。どうやら屋外のようだと私は思った。 微睡んでいた意識が徐々にしっかりとしてきた。手を動かすと指に砂が触れた。私は腹部に重みを感じていた。そして、ようやく就寝前の記憶が蘇り、河原で石を食べたのだと思い出した。その石がまだ消化されていないのだった。 それはとても美し [続きを読む]
  • 歩いていく息子
  •  夜、部屋の外から足音が聞こえてきたので目が醒めた。どうやら息子が廊下を歩いているようだと私は思った。しかし、足音がどんどんと遠くへ離れていくので違和感を覚えた。その廊下はそこまで長くないはずなのだった。 奇怪な現象が起きていると考えて胸騒ぎを覚えたので私は目を開けて立ち上がった。室内は真っ暗だったが、そのまま照明も点けずに扉を開けて部屋から出た。しかし、廊下はがらんとしていて人気がなかった。屋内 [続きを読む]
  • 猫は話せなかった
  •  「今日、学校で古文の授業を受けたのだけど、昔の猫は人間の言葉を話せなかったらしいね」と食事中に息子が言い出した。 「ああ。そうだったらしいね」と私は返事をした。古文の授業で習った幾つかの物語における猫の描写を思い出そうと試みていた。 「しかも、昔の猫が人間の言葉を話せなかっただけではなくて昔の人間も猫の言葉を話せなかったらしいね。その当時から人間は猫を飼っていたみたいだけど、言葉が通じない動物と [続きを読む]
  • 一つしか身体がなかった
  •  「今日、古文の授業で『通学』という単語を習ったよ。昔の人間は一つしかない身体で自宅と学校の間を行き来していたのでしょう?」と食事中に息子が訊いてきた。 私は会社で待機している身体の現状が気になったので意識の視野部分だけを転送して確認していたところだった。職場を歩いている部下の姿が見えていた。終業時刻はとっくに過ぎているので何をしているのだろうかと気になったが、息子の発言が聞こえてきたので私は意識 [続きを読む]
  • 睡眠という習慣
  •  「今日、学校で古文の授業があったよ。昔の人間には睡眠という習慣があったようだね」と食事中に息子が言い出した。 「ああ。そうだったらしいね」と私は返事をした。そういえば、自分も古文の授業で睡眠という習慣を初めて聞いた時には驚いたものだと思い出した。まるで動物のようだと感じたのだった。 「先生が夢というものについて説明してくれたけれど、僕はよく理解できなかったよ。昔の人間は頭がおかしかったのかもしれ [続きを読む]
  • きっと下半分
  •  「今日、古文の授業で『眩しい』という単語を習ったよ。昔の人間は太陽を見れなかったのでしょう?」と食事中に息子が訊いてきた。 「ああ。そうだったらしいね」と私は返事をした。『眩しい』という単語をかなり久々に耳にしたような気がした。学校を卒業してから一度も使用していなかったかもしれなかった。もっと実用性が高い知識を授けるべきではないだろうかという考えが浮かび、私は学校教育に対して不満を抱いた。 「太 [続きを読む]
  • 太陽眼鏡
  •  休日にふらりと立ち寄った古道具屋で太陽眼鏡という品物を見つけた。暇潰しとして使えると店主から勧められたので購入してみた。 店を出てから河川敷の公園に行き、ベンチに腰を下ろして眼鏡を装着した。よく晴れていて風がないので冬にしては暖かくて快適な日和だった。そして、私は陽光が眩しくなくなったようだと感じた。 太陽の方に目を向けてみると虹のような色彩の複雑な模様が太陽から噴き出てくるように見えた。その模 [続きを読む]