山田昇市郎 さん プロフィール

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山田昇市郎さん: 山田小説(オリジナル超短編)公開の場
ハンドル名山田昇市郎 さん
ブログタイトル山田小説(オリジナル超短編)公開の場
ブログURLhttp://ameblo.jp/yamadanovel
サイト紹介文自作の超短編小説を公開しているブログです。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供73回 / 365日(平均1.4回/週) - 参加 2011/05/07 13:43

山田昇市郎 さんのブログ記事

  • 睡眠という習慣
  •  「今日、学校で古文の授業があったよ。昔の人間には睡眠という習慣があったようだね」と食事中に息子が言い出した。 「ああ。そうだったらしいね」と私は返事をした。そういえば、自分も古文の授業で睡眠という習慣を初めて聞いた時には驚いたものだと思い出した。まるで動物のようだと感じたのだった。 「先生が夢というものについて説明してくれたけれど、僕はよく理解できなかったよ。昔の人間は頭がおかしかったのかもし [続きを読む]
  • きっと下半分
  •  「今日、古文の授業で『眩しい』という単語を習ったよ。昔の人間は太陽を見れなかったのでしょう?」と食事中に息子が訊いてきた。 「ああ。そうだったらしいね」と私は返事をした。『眩しい』という単語をかなり久々に耳にしたような気がした。学校を卒業してから一度も使用していなかったかもしれなかった。もっと実用性が高い知識を授けるべきではないだろうかという考えが浮かび、私は学校教育に対して不満を抱いた。 「太 [続きを読む]
  • 太陽眼鏡
  •  休日にふらりと立ち寄った古道具屋で太陽眼鏡という品物を見つけた。暇潰しとして使えると店主から勧められたので購入してみた。 店を出てから河川敷の公園に行き、ベンチに腰を下ろして眼鏡を装着した。よく晴れていて風がないので冬にしては暖かくて快適な日和だった。そして、私は陽光が眩しくなくなったようだと感じた。 太陽の方に目を向けてみると虹のような色彩の複雑な模様が太陽から噴き出てくるように見えた。その模 [続きを読む]
  • 高速眼鏡
  •  砂漠に敷いたビニールシートの上に仰向けに寝転がり、恋人と手を繋いで星空を眺めていた。私達は高速眼鏡を着けているのだが、その効果で空全体がかなりの速度で回転しているように見えていた。流れ星などは速過ぎるので視認できていなかった。 かなりの速度で回転しているように見える星々が一向に地平線に落ちていかないという矛盾のせいで私の脳は常に混乱を抱える羽目になっていた。そのせいで目眩に襲われたので私は眼鏡を [続きを読む]
  • 白い月の白い光
  •  夜、私は砂漠に敷いたビニールシートの上に仰向けに寝転がり、恋人と手を繋いで星空を眺めていた。巨大な白い月がゆっくりと地平線から出てこようとしていて空がそちら側から明るくなっていた。 「月が出てきて星が見えなくなってきたね。そろそろ街に帰ろうか?」と私は提案した。すぐ近くの道路に自動車が停めてあるのだった。 「そうね」と恋人は答えた。 それで、私達は立ち上がってビニールシートを畳んだ。その間も巨大 [続きを読む]
  • 月の底
  •  柔らかな砂の中を落ちていっていた。身体が大量の砂に埋もれているようだったが、どういうわけか私はその重量を感じていなかった。それに、息苦しくもなかった。なぜ自分は死なないでいるのだろうかという疑問が脳裏を過り、どうやら夢を見ているらしいと推察した。 しかし、意識は覚醒しなかった。相変わらず肉体が砂の中をするすると落下していっていると感じていた。かなりの速度で足の方から落ちていっているようだった。全 [続きを読む]
  • 月の空
  •  身体が空中に浮いていた。私は目を開けているつもりだったが、何も見えていなかった。それに、何も聞こえていなかった。なぜ自分は落ちないでいられるのだろうかという疑問が脳裏を過り、どうやら夢を見ているらしいと推察した。 しかし、意識は覚醒しなかった。相変わらず肉体が空中に浮かんでいるようだと感じていた。今にも落下し始めるのではないかと心配して全身の筋肉を強張らせていた。ひどく緊張しているせいで私は夢を [続きを読む]
  • 月の海
  •  身体が液体の中を漂っていた。息苦しさはなかった。私は目を開けているつもりだったが、何も見えてはいなかった。ここはどこなのだろうかという疑問が脳裏を過り、どうやら夢を見ているらしいと推察した。 しかし、意識は覚醒しなかった。私は液体の中を漂流し続けていた。或いは、身体はずっと同じ地点に留まっていて周りの液体だけが動いているのかもしれなかった。全身を撫でていく液体の感覚が心地良いので私は夢を見ている [続きを読む]
  • 漂着した大男
  •  夜、枕元で会話をしている二人組の声が聞こえてきたので私は意識が覚醒した。かなりの早口だったが、発音が明瞭なので言葉の内容は聞き取れていた。 「ほら。大男が倒れているよ。海から流れてきたのかな?」 「ああ。そのようだね。この浜辺は本当に色々な物が打ち上がるね」 「この大男は死んでいるのかな?」 「死んでいるだろう。顔色が悪いよ。それにしても大きいな。できれば骨を標本にして博物館に飾っておきたいとこ [続きを読む]
  • 数百年が経っている
  •  夜、枕元で会話をしている二人組の声が聞こえてきたので私は意識が覚醒した。かなりの早口だったが、発音が明瞭なので言葉の内容は聞き取れていた。 「この身体は生きているのかな?」 「僅かだけど、呼吸はしているよ。脈拍もある。これは生きているよ」 「しかし、随分と顔色が悪いな。腐っているのじゃないか?まるで死体みたいだよ」 「まだ当分は死なないだろうと思うよ。なにしろ数百年もこの状態を維持しているのだか [続きを読む]
  • 新鮮な食材
  •  夜、枕元で会話をしている二人組の声が聞こえてきたので私は意識が覚醒した。かなりの早口だったが、発音が明瞭なので言葉の内容は聞き取れていた。 「鹿や牛は食べた草を自分の血肉に変えるけど、彼等に比べると我々の身体はとても単純だよね。なにしろ食べた肉を自分の血肉に変えるのだからね。芸がないと思わないか?」 「そうかな?そこは単純でも構わないだろう?食事中は色々な味が感じられて楽しめるけど、僕の舌は内蔵 [続きを読む]
  • どんどんと入っていく
  •  夜、枕元で会話をしている二人組の声が聞こえてきたので私は意識が覚醒した。かなりの早口だったが、発音が明瞭なので言葉の内容は聞き取れていた。 「ほら。この腹を人差し指で押してみなよ。どんどんと入っていくよ」 「本当だ。どんどんと入っていくね。腕まで入っていくよ。まるで際限がないみたいだ。どれだけ突っ込めるのかな?気になるね。どこかに長い棒がないかな?」 「ここに箒があるよ。これを突っ込んでみようじ [続きを読む]
  • 頭を膨らませる
  •  夜、枕元で会話をしている二人組の声が聞こえてきたので私は意識が覚醒した。かなりの早口だったが、発音が明瞭なので言葉の内容は聞き取れていた。 「まったく膨らまないね」 「膨らむわけがないよ。君は鼻と口を塞いでいないじゃないか。しっかりと塞いでおいてから耳から空気を吹き入れたら膨れるはずだよ」 「鼻と口を塞いだら息苦しくなって目が醒めるのじゃないか?」 「耳から空気を入れるから息苦しくなるわけないよ [続きを読む]
  • 長い肉体
  •  夜、枕元で会話をしている二人組の声が聞こえてきたので私は意識が覚醒した。かなりの早口だったが、発音が明瞭なので言葉の内容は聞き取れていた。 「この身体は随分と長いね。頭は布団の上にあるけど、足は道路にまで伸びている。それに、手は台所にあるじゃないか」 「道路や台所にある足や手は本当にこの頭と繋がっているのか?」 「間違いなく繋がっているよ。これは一つの巨大な生き物だ」 「本当かな?信じられないな [続きを読む]
  • 微笑の仮面
  •  夜、顔面に異物が乗っていると感じたので驚いて意識が覚醒した。私は咄嗟にそれを両手で除けそうと試みたのだが、そこには目や鼻や口などがあるばかりだった。 そういえば、夢の中で鮮やかな原色で彩られた微笑の仮面を被って歩いていたと私は思い出した。そこは繁華街でたくさんの人々が行き交っていた。私は誰かと笑い合いたいと望んでいたが、微笑の仮面を被っている仲間を見つけられずにいた。 そもそも周りの人々は誰も仮 [続きを読む]
  • 蛙の仮面
  •  夜、顔面に異物が乗っていると感じたので驚いて意識が覚醒した。私は咄嗟にそれを両手で除けそうと試みたのだが、そこには目や鼻や口などがあるばかりで実際には何も乗っていなかった。 そういえば、夢の中で蛙に扮装して道を歩いていたと私は思い出した。緑色の仮面を被っていたのだったが、周りを行き交う人々も私と同じような仮面を被っていた。私達は擦れ違う度に互いに蛙の声を掛け合っていた。路上のあちらこちらから絶え [続きを読む]
  • 吉兆の仮面
  •  夜、顔面に異物が乗っていると感じたので驚いて意識が覚醒した。私は咄嗟にそれを両手で除けそうと試みたのだが、そこには目や鼻や口などがあるばかりで実際には何も乗っていなかった。 そういえば、夢の中で鮮やかな原色で彩られた吉兆の仮面を被って歩いていたと私は思い出した。そして、道で他人と擦れ違う度に甲高い声を張り上げていたのだった。その声はまるで人間ではなくなったかのようで普段とはまったく違っていた。  [続きを読む]
  • 怪物の仮面
  •  夜、顔面に異物が乗っていると感じたので驚いて意識が覚醒した。私は咄嗟にそれを両手で除けそうと試みたのだが、そこには目や鼻や口などがあるばかりで実際には何も乗っていなかった。 そういえば、夢の中で怪物に扮装して夜道を行き交う人々を驚かせていたと私は思い出した。鮮やかな原色で彩られた仮面を被り、人々の悲鳴を聞く度に心の底から笑っていたのだった。それはとても痛快な夢だった。過去の数十年間で最も充実した [続きを読む]
  • 水が入ったコップ
  •  一匹の怪物がテーブルに置かれたコップを見つめたまま頬杖を着いていた。 たまたま通り掛かった一人の男が怪物の神妙な表情を見て首を傾げた。「どうかしましたか?喉が渇いたのですか?」 怪物はコップから視線を動かさないまま答えた。「よく見ろよ。まだ水が半分も残っているだろう?」 「では、喉が渇いていないのですか?」と男は訊いた。 「今は乾いていないさ」と怪物は答えた。 男は辺りを見回した。ふと、喉が渇い [続きを読む]
  • 穴を覗いている
  •  一匹の怪物が地面に空いた大きな穴の淵に立っていた。 たまたま通り掛かった一人の男が怪物に声を掛けた。「どうかしたのですか?なぜそのような場所に立っているのですか?誤って落ちたら大変ですよ。その穴は随分と深いのでしょう?」 「この穴は深くて底が見えない。しかし、きっと底があるはずだ。俺は産まれてからずっとこの穴を覗いている」と怪物は男の方に顔を向けないまま言った。 「穴以外の景色を見るつもりはない [続きを読む]
  • 犬達の穴
  •  「村人達の証言によると昔から何匹も犬達がこの穴に落ちていって地上に帰ってこなくなっているらしいですよ」と男が地面にぽっかりと開いたバケツ程の直径の穴を指差しながら言った。 そこは農園の一角だった。穴はかなり深いようで底が見えていなかった。犬が転落する危険があるのなら穴を塞ぐべきではないかと思ったが、おそらく村人達には村人達なりの道理があって穴を放置しているのであって部外者である私が余計な口出しを [続きを読む]
  • 子鹿の穴
  •  「村人の証言によると昨日の夕方、この穴に一匹の子鹿が落ちていったらしいですよ」と男が地面にぽっかりと開いたバケツ程の直径の穴を指差しながら言った。 そこは農園の一角だった。穴はかなり深いようで底が見えていなかった。しかし、子供だとしても長い脚や首が生えている鹿の身体が簡単にその穴に転落するとは思えなかった。どうせ村人が見間違えたのだろうと思われたので私は男の言葉を真面目に受け止めていなかったのだ [続きを読む]
  • 林檎の穴
  •  「これは林檎の穴です」と男が地面にぽっかりと開いたバケツ程の直径の穴を指差しながら言った。「毎年、この村では大量の林檎が収穫されますが、商品として不適格と判断された林檎はこの穴の中に捨てられるのですよ」 そこは林檎の木が何本も生えている農園の一角だった。穴はかなり深いようで底が見えていなかった。今は季節が違うので木々の枝に実は付いていなかったが、林檎の美味しそうな匂いが鼻孔を刺激していた。穴に廃 [続きを読む]