youjikjp さん プロフィール

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youjikjpさん: 弁護士Kの極私的文学館
ハンドル名youjikjp さん
ブログタイトル弁護士Kの極私的文学館
ブログURLhttp://blog.livedoor.jp/youjikjp/
サイト紹介文これまでの読書歴を振り返り、感動した小説、作家についてのよしなしごとを書きつくるなり。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供13回 / 365日(平均0.2回/週) - 参加 2011/12/14 08:37

youjikjp さんのブログ記事

  • 過去の記事 …
  • 銀の匙
  •  年末年始の休みに読もうと思って、図書館から、池澤夏樹選の河出書房新社世界文学全集を2冊借りていたのだけれど、ほとんど読めないままだった。昨年秋以降の漱石マイブームがなかなか終わらず、翻訳小説や現代小説になかなか入り込めない状況が続いている。 そんな中、そうだ、こういう機会にこそ読み返すべき作家がいるではないかと思いついたのが、中勘助である。 田舎の自宅を離れて県庁所在地の高校に進学した2歳上の兄 [続きを読む]
  • 續明暗
  •  今年の12月9日は漱石没後100年ということらしく、各地でいろいろな企画が催されたり、漱石をテーマとしたドラマが放映されたりしている。まことに迂闊なことに、前回の記事をアップした時には、まったく意識していなかった。 先日は、やはり没後100年企画の一つなのか、夏目漱石のアンドロイド、というものが公開された。このアンドロイドを受け手がどう感じるかを分析し、漱石像が社会にどう受け止められているのかを [続きを読む]
  • 明暗
  •  ひさしぶりに、漱石を集中的に読んでいる。 きっかけのひとつは、大学2年生の息子から、友人の書いた小説を読ませてもらったことだ。東京の大学に合格した若者が北陸新幹線で上京する場面から始まるその小説は、『三四郎』で広田先生が語る夢の少女の話や、『行人』の「道徳に加勢するものは一時の勝利者には違いないが、永久の敗北者だ。自然に従うものは、一時の敗北者だけれども永久の勝利者だ…」という言葉が引用されるだ [続きを読む]
  • 一粒の麦
  •  ノーベル文学賞をめぐる話題は、ボブ・ディラン受賞の驚きから、それに対するディランの反応に移った観がある。ディランは、受賞についていまだに何のコメントも発表していないし、一時期公式サイトにあった「ノーベル文学賞受賞者」の表記も削除されたらしい。サルトル以来の受賞辞退どころか、何らの意思表示もせず完全に黙殺する可能性もありそうだ。こういったディランの態度について選考委員が傲慢だと非難したとのニュース [続きを読む]
  • アシェンデン
  •  このブログで何度か言及したモームの『世界の十大小説』は、原題を『Ten Novels and Their Authors』といい、1954年に出版されたものである。もともと、アメリカの雑誌から世界の十大小説のリストアップを依頼され、また別の出版社からその十大小説の要約と解説を依頼され、その文章に手を入れて一冊にまとめたものが、1948年に『Great Novelists and Their Novels』として上梓され、それにまた改訂を加えて、この形にな [続きを読む]
  • ノーサンガー・アビー
  •  ぼくは、このブログとは別に、読書ログというコミュニティーサイトにときどき簡単な読書レビューを書き、また他の会員のレビューにコメントしたりしている。自分がレビューするより他の人のレビューにコメントする方がずっと多いのだが、このやりとりが、とても愉しい。 個性的なレビュアーがたくさんいて、ずいぶん教えられることが多い。このサイトのレビューを機に再読して、新しい魅力を発見した作品もある。 昨年、このサ [続きを読む]
  • 嵐が丘
  •  このところしばらく、高橋源一郎と水村美苗を中心として読書生活が廻っている。 12歳で移住したアメリカに馴染めず、日本近代文学に描かれた日本に憧れ、そこへの帰還を夢み続けた水村美苗と、大学紛争に関わって凶器準備集合罪で逮捕されたのをきっかけに失語症となり、それを克服して作家になった高橋源一郎とでは、同じ1951年生まれの日本人でも、その経験してきた歴史はまったく異なるものであり、作家としての作風も [続きを読む]
  • 愛のゆくえ
  •  これは完全に調和した、みずみずしくも、アメリカそのものの、美しい図書館である。今は真夜中で、図書館は夢みる子供のようにこのページの暗黒のなかにたっぷりと引きこまれている。図書館は「閉館」してはいるが、ここがわたしの住処で、それも何年か前からのことだった。ここに住めれば家に帰るまでもなかったし、それにここは二十四時間つめていなければならなかった。それがわたしの勤めの一部なのである。小役人のようない [続きを読む]
  • 神への長い道
  •  熊本、大分の被災地の皆さまには、こころよりお見舞もうしあげます。 今回の地震は、気象庁が1949年に震度7を最大とする階級を設定して以降、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災に続いて4回目の震度7。だんだん間隔が短くなっているのが気になる。 こういった大きな地震があるたびに、日本列島がどれほど不安定な地殻の上に存在しているのかを思い知らされる。 それをはじめて教えてくれたのは、小松左京 [続きを読む]
  • 死の島
  •  若い頃に読んだ本を再読して、あの頃は全然わかっていなかった! とため息をつくことは珍しくない。 最近でいえばクンデラの「冗談」がそうだったのだけれど、「死の島」には、それ以上に驚かされた。これほどまでに小説の方法に意識的で、しかも小説らしいロマネスクさを失っていない作品を、ぼくは他に思いだせない。 はじめて読んだのは、おそらく弁護士になって間もない頃だ。広島の原水禁大会に参加したのがきっかけだっ [続きを読む]
  • マシアス・ギリの失脚
  •  池澤夏樹のコラム集「終わりと始まり」に、こんな村上春樹評がある。  ………村上春樹という作家の成功の理由は物語がなくなった先の物語を構築したことだ。「やれやれ」の退屈な日々に外からのゲーム的な異化のエージェントを放り込む。課題の提示とその先に広がる冒険。そこそこに収まるクエストのストーリー。「羊をめぐる冒険」はまだ革命の物語を秘めていたから読めたが、その先でぼくは彼のよき読者ではなくなった。古典 [続きを読む]
  • スティル・ライフ
  •  先月24日は歴史的寒波の襲来で、日本中に雪が降った。奄美で雪が降るのはなんと115年ぶりとやら。ぼくの街にも一日中雪が降りしきり、終日、布団の中で河出書房新社日本文学全集第17巻(堀辰雄・福永武彦・中村真一郎)を読んで過ごした。 雪の日に思い出す、いくつかの文章がある。 街灯のまわりだけ目に見える雪は、羽根のようにロマンティックに二人の肩に降りかかった。「なかなかよく降りますね」と言った。「そう [続きを読む]
  • Self−Reference ENGINE
  •  全ての可能な文字列。全ての本はその中に含まれている。 しかしとても残念なことながら、あなたの望む本がその中にみつかるという保証は全くのところ存在しない。これがあなたの望んだ本です、という活字の並びは存在しうる。今こうして存在しているように。そして勿論、それはあなたの望んだ本ではない。 フィリップ・K・ディック賞は、アメリカでペーパーバックとして発表されたSF小説の中から選ばれる。円城塔のデビュー [続きを読む]
  • 存在の耐えられない軽さ
  •  とはいえ、やはり気になったので、なんとか入手して読んでみた……………と、前回のエントリーから続く。「生は彼方に」の新訳である。結局1995年版は手に入らなかったのだが、それをさらに改訂した2001年版がハヤカワepi文庫にあった。 すぐに気がつくのは、旧訳でザヴィエルと呼ばれていた人物がクサヴェルという名前になっていることだ。これは、Xaverをどう表記するかというだけの問題だと思われる。われわれにはフ [続きを読む]
  • 生は彼方に
  •  ラドブロークスの予想はどのような根拠に基づいているのか、ノーベル文学賞については、かなり的中率が高いように思われる。受賞者の直前予想の順位を振り返ると、今年のスヴェトラーナ・アレクシェーヴィッチが1位、昨年のパトリック・モディアノが4位、2013年のアリス・マンローが6位、2012年の莫言が3位、2011年のトマス・トランストロンメルが2位。たかだか20頭程度の出走馬の中から勝ち馬を予測するので [続きを読む]
  • わたしの名は赤
  •  今年のノーベル賞文学賞は、ブックメーカーのラドブロークスの予想がズバリと的中し、ベラルーシのスベトラーナ・アレクシエーヴィッチが受賞した。それに次ぐオッズだった村上春樹は、今年も受賞を逃した。村上が2006年にフランツ・カフカ賞を受賞して以来、毎年10月になるとこの話題で盛り上がっていて、いまや一種の年中行事となった感がある。 大江健三郎も若い頃からノーベル文学賞候補といわれていたが、これほど話 [続きを読む]
  • ジョニーは戦場へ行った
  •  ここのところ、何をやっていても安保法制のことが頭から離れない。ことあるごとに、なんともいえない苦々しさが胸にこみあげてくる。 最終的には数の力で押し切られることを覚悟していた。法案成立という結果はともかく、その過程で若者を中心とした多くの国民が反対の意思を表明したことが大きな成果であったことは間違いないし、問題がこれで終わったわけではなく正念場はこれからだということもわかっているつもりだ。 しか [続きを読む]
  • 侍女の物語
  •  ディストピア小説を、もうひとつ。 わたしに似た人影、顔を白い翼で囲った人影、買い物かごを下げて赤い服を着たこれと言って特徴のない女性が、煉瓦の歩道をこちらに向かってやって来る。彼女がそばに来ると、わたしたちは顔を囲む白い布のトンネルの両端から、お互いの顔をじっと覗き合う。まちがいなく、待っていた相手だ。「子孫は幸いなるかな」と、彼女は言う。これは、わたしたちのあいだの決められた挨拶だ。「主の恵み [続きを読む]
  • 一九八四年
  •  ジョージ・オーウェルの「一九八四年」は、オセアニア、ユーラシア、イースタシアという三つの超大国に分割支配された地球を描いたディストピア小説である。 そのひとつであるオセアニアでは、〈イングソック〉思想を信奉する「党」の一党独裁体制が敷かれている。街や建物の各所には指導者ビッグ・ブラザーの巨大な肖像画が掲げられ、「ビッグ・ブラザーがあなたを見ている」というキャプションどおり、人々の生活は、常にテレス [続きを読む]
  • チャタレイ夫人の恋人
  •  伊藤整訳「チャタレイ夫人の恋人」は、1950年4月に小山書店より出版された。同年9月、東京地方検察庁は、伊藤整と小山書店社長小山久二郎を猥褻文書販売の罪で起訴、東京地裁一審判決は、小山のみ罰金刑に処し、伊藤を無罪とするものだったが、二審東京高裁は伊藤も... [続きを読む]
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