甲姫 さん プロフィール

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甲姫さん: 聖女ミスリア巡礼紀行
ハンドル名甲姫 さん
ブログタイトル聖女ミスリア巡礼紀行
ブログURLhttp://seijo.ky-3.net
サイト紹介文架空の大陸を舞台にしたシリアス・ハイファンタジー。
自由文「だからこそ、生きているっていうのは、それだけで手放しがたいんだろう」

死ぬ間際の青年の前に少女が現れた。彼女は命を助ける見返りに旅の供になって欲しい、と青年に取引を持ちかける。

R-15を意識して書いてますのでご了承ください。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供188回 / 365日(平均3.6回/週) - 参加 2011/12/20 03:43

甲姫 さんのブログ記事

  • 三 - g.
  •  まだ何も始まってもいないのに、終わってしまったのだろうか。特別な絆は無理でも、せめて良好な関係でありたかったのに――気まずいままでこれから数十年を過ごすことになるのかもしれない。最悪、破談になって国に追い返される可能性だってある。(どうしてあんなこと言っちゃったの) 隠されたものを暴きたい欲求か。あれは熟考しない内にうっかり出てきた言葉だったのだろう。 落ち着いて省みれば、目に見えぬ秘密にそこま [続きを読む]
  • 三 - f.
  •  行き方は憶えていなかったが、数歩後ろを無音で歩くタバンヌスが時折「ここは右です」「階段を上がってください」とヒントをくれるので、難なく自室に到着できた。しかも運良く誰ともすれ違わずに。 部屋の入り口で、送り届けてくれた男性と会釈を交わす。「主に代わってご挨拶いたします。『良い夜を』」「……ありがとう。『あなたも』って、伝えてくださるかしら」「謹んでお断りいたします。では」 瞬間、射る [続きを読む]
  • 三 - e.
  • 「さあ」 返答はそっけない。青灰色の瞳が警戒するように細められた。 ――そんな、他人事のように言わなくても。(他人事じゃないわ。あたしにとっても、あんたにとっても。そうでしょ、『婚約者』さま) 鼻息荒く、拳を握り締めた。(踏み込んでやる) 自分にはその権利があるはずだ。(秘密に怯えて暮らすのはまっぴらごめんよ。気まずいし、周りにもきっと陰で笑われる) あの様子だと、少なくとも他の公子たちは布の下に [続きを読む]
  • 三 - d.
  • 「あれを天へと続く道だとすると、人は光の上を歩けるのか?」「魂に重さは無いんでしょう。歩けそうなものだけど」「だとしてもだ。神々は本当に人間に会いたいのか。人間を見捨てたんじゃないか」 突拍子もない話に、セリカはしばし呆気に取られた。 神々の意図について深く考えたことはない。この大陸を創りたもうた偉大なる存在はとうの昔にどこか遠くへ去っているというのが、一般的な認識なのである。「捨ててはいないわ。 [続きを読む]
  • 三 - c.
  • 「ほら」「ん、ありがと」 手渡された笛は意外と重くなかった。(でもやっぱり鉄らしく、冷たい) セリカは指穴を求めて筒状の楽器を手の中で翻した。それから、穴の位置に合わせて指の広げ方をざっくり決める。 ついさっき見たばかりの姿勢を思い浮かべ、真似た。 いざ笛を持ち上げてみると―― ――最初に思っていたほど、表面が冷たくなかった。正確には、指穴付近にほんのりと温もりが残っているのである。数秒前まで人肌 [続きを読む]
  • 三 - b.
  • (ルシャンフ領って、どんなとこだろ) 街道も通らないような未開の地と父が説明した気がする。聞いた時は鵜呑みにしたが、今になって考えてみれば、どうにも想像が付かない。未開の地に領主が任じられるだろうか。 ぐるりと展望台を回って塔の逆側からの景色を眺めに行くと、そこには強固そうな防壁があった。 背後では山が続く。月明かりに照らされる稜線は壮大で、異なる世界のように美しい。美しくて、どこか恐ろしい。 肌 [続きを読む]
  • 黒赤人物紹介
  • ミスリアは登場順でしたが今回は関係性がややこしいので、違う整理の仕方をします。アルシュント大陸では母違いの兄弟がいる場合は母の苗字をも名乗る風習があります。ゲズゥ・スディル・クレインカティ、リーデン・ユラス・クレインカティ、のように。王族公族はほぼ全員がこれに該当しますね(ゼ大公は妃をひとりしか取っていない、つまりママさんひとりで五人産んでますw 兄・姉・セリカ・弟・妹)。ヌン国の皆さんは全員正式 [続きを読む]
  • 三 - a.
  •  狭くて古そうな螺旋階段だった。 息が苦しいのは、埃とカビの臭いの所為だけではない。不揃いの段差を上がる度に、疲労が足に蓄積されていった。上を見上げると、頂上まではまだいくばくかの段数があるのがわかる。 こんなことをして何になるのか。数段先を行く青年の背中を一瞥しながら、自問した。 長旅を経た一日も終わりが近いという刻限に、何故敢えて心拍数が上がるようなことをしなければならないのだろう。いくら体力 [続きを読む]
  • サイトが不調〜
  • お な か す い た (断食時間七ツ海のホストが昨日? から迷子です。どうしたのかしら。二話を更新したかったのに。だからと言って私のサイトです、火急の何かがあるわけでもないので、あと一日だけ待ってお問い合わせしようかと思います。ちなみに最近、この曲 http://rocklyric.jp/lyric.php?sid=165804/The+Puzzle/MY+FIRST+STORYで黒赤のOPとか妄想するのがマイブームです。このギターリフのところでラピスマトリクス [続きを読む]
  • 二 あとがき
  • んんん、よい天気である。今週末はリアルライフの予定がぎっしり詰まっているので、たぶん来週まで更新しません。すみません。では続きは黒赤二話を読み終わった方どうぞーcontinue... [続きを読む]
  • 二 - h.
  • 「随分と他人行儀だな」 ――だって他人でしょ? これから他人じゃなくなるのだと頭ではわかっていても、心はそう易く追いつかない。 やっと喋ったかと思えば、何の文句だ。セリカは唇の間から漏れそうになった嘲笑を呑み込んだ。「仰る意味がわかりません。エランディーク公子」「エランでいい、公子も殿下も要らない」あの気力に乏しい話し方で、彼は呼び名を改めるように求めて来た。「今更取り繕わなくていい。森で会った時 [続きを読む]
  • 二 - g.
  • (あ、そっか。森で鉢合わせした時の「わからないのか」は、噂を耳にしていれば一目でわかるような外見的特徴があるから) ふとそのことに気付く。 意識し出せば次々と疑問が沸き起こってやまない。何故顔を隠す? いつからそうしている? 布の下には一体何がある――?「生涯を共にする相手がこんな風貌でガッカリしたかい」 例によってアストファンから、どう反応すればいいのかわからないような質問が来た。「めっそうもあ [続きを読む]
  • 二 - f.
  • 「さすがだよエラン。主役が遅れて参上するとはイイご身分だね」 アストファン公子の冷やかしをものともせず、青年はパヴィリオンの階段を上がるなり唇を開いた。「ヌンディーク公国第五公子、エランディーク・ユオンです。公位継承権は、三位となります」 練習でもしていたのか、完成された口上だった。一句ずつ丁寧に発音されていて聞き取りやすく、間の取り方もほど良い。 けれどもそれ以上に気になる点がある。(…&h [続きを読む]
  • 二 - e.
  • 「おいアストファン! おまえはまた適当なことを! ナジュ州に残してきた三人の妻が泣くぞ」 ――三人!? 二度目の不覚、セリカは表情筋を驚愕に歪めた。すぐに我に返って微笑を戻したが、既に誰かに見られたかもしれない。「でもベネ兄上、私まだ子供産まれてないですし、保険の為にあと三人は娶ってもいいと思うわけですよ」 彼がそう抗議すると、叱った側の男性は目に見えて怯んだ。「それはまあ……子が産ま [続きを読む]
  • 二 - d.
  • 「アスト兄上、おやめください。見苦しいですよ。他国の姫君の前でこれ以上僕たちに恥をかかせるおつもりですか」 まだ声変わりも済んでいないような、耳に優しい声音は、それでいて毒を孕んでいた。「ハティルの言う通りだ。確かに揃ってないが、公女殿下の時間をいたずらに浪費するのもいけない」――ベネと呼ばれた男は楕円の最奥へと首を巡らせた――「アダレム、任せたぞ」 つられて全員の視線が、幼児の元へと集まった。  [続きを読む]
  • 二 - c
  •  すると人影が一斉に立ち上がった。席はわかりやすく男女に分かれている――入り口から向かって右側に女性が三人、左側に男性が四人。 更に奥に一人。セリカの立ち位置から最も離れている、楕円の対極に居る人影は、妙に小さかった。(幼児……?) 身長の低さといい肩の細さといい、子供で間違いないだろう。不思議に思ったものの、すぐに思考は遮られてしまう。「ようこそ、殿下」 一番手前に居た長身の男が代表 [続きを読む]
  • 二 - b
  •  現在は病床に臥せっているらしいヌンディーク大公からいただいた、豪華なネックレスだ。ガーネットとカーネリアンのビーズを何列にも連ね、時には大きく平らな石で花弁や葉を模している。離れて眺めれば満開の花と成るそれは、セリカの首の根元から胸を覆うまでに広がった。 公女として生きてきて日が浅くないが、これほどの代物は初めて見る。一目で虜になるような素晴らしい一品だった。「そういえば姫さま、わたし他の女官か [続きを読む]
  • 二 - a
  •  己が思い描く「理想の姫君」像が実は陳腐な虚像だとセリカは感じていた。そう感じていながらも、今夜はその虚像に少しでも近付こうと思って、柄にもない工夫に勤しむ。 たとえば、うなじや手首の内側に香油を塗ってみる。 たとえば、窓際に立って優雅な仕草で頬杖を付き、夜空に向かってため息をついてみる。「これ何の香りだったかしら、バルバ」「プリムローズですよ。姫さま」「ふうん、いい匂い」 名残惜しいような気持ち [続きを読む]
  • 零&一 あとがき
  • いけませんね。ストックをつくってから投稿しているからか、どうもあとがきを失念してしまいます。ツイッターでも呟きましたけど、黒赤のコンセプトは大分前に考えました。詳しく言うと、ミスリア26話を書いて間もない頃ですね。大賞に出せそうな恋愛モノ書きたいなー、ベタな材料ないかなー、と考えたのが始まりだったと思います。いえーい、政略結婚だぜ☆彡気が付けば通算2万字超えていますが、まだまだ話は序盤ってところです [続きを読む]
  • 一 - f
  •  ヌンディーク公国首都ムゥダ=ヴァハナは、公宮に近付くほどに上品そうな空気感を湛えるようになった。 道中に見てきた下町とはまるで違う。ちなみにこれまでに通り過ぎた地区の建物の密集ぶりや路の賑やかさはどこか祖国ゼテミアンの首都を彷彿させたが、斜面に建てられている分、妙な開放感があった。 宮殿周りの建築物は、本当にこの大陸の人間が建てたのかと疑問に思うほどに異様な外観をしている。現代の主流であるはずの [続きを読む]
  • 一 - e
  • 「できないって言うの? 結局口先だけなのね」「片目だと遠近感がずれるから、私に飛び道具は扱えない」 ――至極ごもっともな理由があった。 それでも納得し切れずに、食い下がる。「だって、あんたのブラインドじゃないの」「別に私のではない。この建物は多分、季節が移ろう前からここにあった」「あ、そう……」 それじゃあ自分では狩りができないくせに、得意げに知識だけひけらかしたの――と突っ込みたいと [続きを読む]
  • YY 2/21 12/2 人人
  • 冷蔵庫に入れた食べ物に「YY 2/21」と書いたら逆さにして「12/2 人人」って読めた。(甲はイニシャルがYYなのです)どうでもいい。黒赤も連載開始から一週間。いかがでしょうか。もうお気付きのことかと思いますが、これは色々な意味でミスリアの妹作品です。メインの女子と男子がそれぞれミスリアとゲズゥとどう似ていてどう違うのか、ぜひ比べて楽しんでみてください。物語の進展のし方とかも。まず、セリカはミスリアよりずっ [続きを読む]
  • 一 - d
  •  黒染めの革の長靴を、眼差しでなぞる。膝当てまで付いているとは珍しいデザインだ、ちょっとかっこいいな、なんてぼんやり思った。 視線は更に上った。裾を長靴に仕舞い込んだ黒いズボン。それを覆うのは、白く縁取られた紺色――膝丈の薄い羽織り物のようだが、左右のどちらかを上に重ねるのではなく身体の中央に緩く引き合わせる、見慣れないタイプだ。 羽織り物を留める細いベルトは靴と同じ黒い革。そのベルトから細長いも [続きを読む]
  • 一 - c
  • 「でも日が暮れる前には確実にムゥダ=ヴァハナに着かないと! 夜道は危ないです!」「最後に、好きなことをして過ごしたいのよ」 低い声でそう返すと、窓から身を乗り出したバルバが怯んだのが見えた。その隙に一直線に走り出す。 あっという間に馬車を後にした。(せめて楽しい思い出を胸に抱えていれば……当分は頑張れる、わよね……) 優しく澄んだ森の空気に包まれながら、セリカは滲み出す涙に [続きを読む]
  • 一 - b
  • (前より窮屈な生活になるでしょうけどね) 他国の妃の席に収まる以上、城の中ですら好き勝手に過ごせなくなるだろう。聞いたところ、ヌンディーク公国はゼテミアン以上に古くからの慣習を重んじるらしい。 それがなんとも、皮肉な話である。 アルシュント大陸で最大の人口と領土を誇る帝国、ディーナジャーヤ。 過去数度に渡る略奪戦争を経てその属国となったヤシュレ、ヌンディーク、並びにゼテミアン公国は、当然ながら多方 [続きを読む]