霧野あみ さん プロフィール

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霧野あみさん: 脳内図書館
ハンドル名霧野あみ さん
ブログタイトル脳内図書館
ブログURLhttp://notosyo.blog.fc2.com/
サイト紹介文オリジナル小説を垂れ流してます。 R指定要素皆無。安心してご覧下さい。面白いかどうかは別として。
自由文ほんのりファンタジー風味、ちょっぴりオカルト成分、ほっこり妄想等、色々です。現在連載中の「アドラメク」の他、完結したお話もあります。「1話目から読む」よりお入りください。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供121回 / 290日(平均2.9回/週) - 参加 2012/02/02 17:14

霧野あみ さんのブログ記事

  • 私はペンをとった
  •  返事が無いとわかっているのに、家に帰るとつい、「ただいま」と言ってしまうのは、何故なのだろう。とにかく自分のテリトリーに戻ってきた、という安心感のせいだろうか。特に今日は、多分それを欲している。 理由はともかく、今日も私はドアの鍵を閉めながら無人の部屋に向かい、「ただいま」と呼びかけた。靴を脱ぎながら、いつもよりほんの少し深めのため息をつく。無意識に強張っていた肩から、フッと力が抜けた。 いつも [続きを読む]
  • 4/4 おまけの物語
  • 「アドラメレクのこと」笑顔から一瞬にして、陽の表情が硬くなった。「正確に言うと、『陽が名付けた、アドラメレク』のこと、ね」聞きたいことがたくさんあるが何から質問していいのかわからないのだろう、徒らに口をパクパクしている陽を押しとどめ、恵流は説明を続ける。「結論から言うとね、あいつは確かに存在した。被害にあったっていう人がこっちの世界にも居て、陽のあの放送、こっちでも一部で騒ぎになったの。ほら、昔は [続きを読む]
  • 3/4 おまけの物語
  • 恵流は蹲った陽の手を頭から引き剥がし、引っ張り上げた。「ほら、立って。もうそんなに重くないよ? 歩き易くなってきたでしょ?」「いや、そうだけど……動揺がすごくて…………なんか、色んな驚きが、今まとめていっぺんに……」そう言いつつ、陽はよろよろと立ち上がり、また歩き出す。「んー、まあ戸惑うよねぇ。じゃあ、驚きついでに良いこと教えちゃう。あのね、天本さん達はすっかり回復して、今は本格復帰に向けて、額縁 [続きを読む]
  • 2/4 おまけの物語
  • 「陽、こっちだよ」恵流に手を引かれ振り返ると、遠くに光の点が見えた。導かれるまま重い足を引き摺り、歩き出す。ただし、さっきまでとは逆の方向へ。「随分と進み辛かったでしょう? こっちは、来ちゃいけない方向だからだよ。陽は、こっちじゃないの。こっちへ来るべき人は、勝手にずるずる引っ張られちゃうんだから」言いながら、恵流も闇を掻き分けるように、辛そうに歩を進める。「こんなとこまで来て。陽ってば、無茶する [続きを読む]
  • 1/4 おまけの物語
  • 深い暗闇の中を、独り歩き続ける。右も左も後も先も分からない、何も見えない、自分の掌さえ見えないような、漆黒の闇。今はもう遠くなった光に背を向け、光から逃げるように進んでいくにつれ闇は密度を増して重くのしかかりり、剥き出しの腕や胸を、体の芯を、冷やしていく。身体の痛みは既に消えていたが、鼻を刺すような煙の匂いは鼻腔の奥にまだ残っていた。罪の、臭い。その臭いが、冷えきった身体を駆り立てる。もっと。もっ [続きを読む]
  • 191 ここから
  • 「もう充分見ましたから、か………」礼を言うカップルに軽く会釈し、宮内はふらりと歩き出した。「ねえ、駅と反対方向だよ」追ってくる渡辺に構わず無言で進み、例の自動販売機の前で止まると、ウーロン茶を2本購入した。黙ったまま、片方を渡辺に差し出す。察した渡辺もまた、それを黙って受け取った。プルタブが音を立て、ほのかな湯気が白く昇る。熱い液体をゆっくりと一口啜り、宮内が天へ昇る湯気を目で追った。「あいつ、猫 [続きを読む]
  • 190 あの場所で
  • 渡辺はいつもの特等席で、道路にしゃがみ込んで絵を見上げていた。隣では宮内が、腹が苦しくてしゃがめないと言って道路に足を投げ出し地べたに座り込んでいる。「うー、ケツが冷える」「もう帰る?」「まだ。まだ見てたい」絵から視線を外さぬまま後ろに手を付き、宮内は懐かしむように目を細めた。「アイツさ、俺にそこの自販機のウーロン茶奢らせてさあ」「うん?」少し先に設置してある自販機の方へ顎を降り、話を続ける。「謝 [続きを読む]
  • 189 ホムセンのアヤ
  • 年の瀬も近づく慌ただしい雰囲気の中、その男性がおずおずと尋ねたのは、懐かしい名前だった。「あの、すみません。こちらに、清水恵流さんて方、いらっしゃいますか?」ホムセンというホームセンターの出入り口に近い、ペットショップコーナー。爬虫類のガラスケースを拭いていたアヤに声をかけたのは、必然だったろう。生前、こちらへ帰ってきたばかりの恵流が公園に通い始めた頃。アイスクリーム屋でアルバイトをしていた彼は、 [続きを読む]
  • 188 友達
  • 鶏肉と魚介の寄せ鍋、締めの味噌煮込みうどんからの卵入り雑炊まで平らげ、宮内は苦しそうに横たわっている。「腹が……千切れる……」「だから言っただろ、食べ過ぎだって」「美味かったから……」ゲフ、と下品な音をたてた宮内は、苦しげなのに幸せそうに見えるという不思議な表情を浮かべている。膨大な量の夕飯をあらかた食べられてしまったので、渡辺は仕方なく、冷凍してあったアップルパイをレンジにかけた。「俺、それいら [続きを読む]
  • 187 時は過ぎて
  • 「だからなんでうちに泊まる前提なんだよ、実家帰れよ。ってか宮内、君キャラ変わってない?」戸惑った表情の部屋主の横をすり抜け、宮内はズカズカと部屋に入り込んできた。渡仏以前にも何度か訪れた、勝手知ったる部屋の隅に手早く荷物を置くと、勝手にクッションの上に陣取って足を伸ばし、早くも寛いでいる。「実家には元旦だけ顔出すからさ。いいじゃん、泊めてよー」足を伸ばすだけでは飽き足らず、宮内はそのままごろりと寝 [続きを読む]
  • 186 想い
  • 数秒前までの慈悲深い微笑みは何処へやら、夏蓮はじれったそうに手を振り声を張り上げる。「そうよ赦さないわよ! 怒ってるわよ! でも私にも責任があると思ってる! 同じことを何度言わせるのよ! 悪かったと思ってるならね、四の五の言わずに手伝いなさい!」夏蓮の激変に驚愕し凍りついたように固まっている外村に構わず、夏蓮は尚も言い募った。「私だってわかってるの! アドラメレクの存在を広めることが贖罪になるなんて、 [続きを読む]
  • 185 運命の恋人
  • 「ねえごーちゃん、手伝って」「だが……」動画の中であの絵を見たとき、すぐに思い出した。留学中に町の路地裏で出会った、変質者。十数年も前から、陽と私は結びついていたのだ。出会う運命にあったのだ。口から出まかせじゃない、本当に、運命の恋人同士だったのだ。だから。「私、陽の残してくれたインスピレーション、不死鳥を踊る。絶対に素晴らしい舞台にしてみせる。でも、もちろんリハビリもトレーニングも死ぬ気でやるけ [続きを読む]
  • 184 夏蓮の回想と、決意
  • 当時、他のレッスン生に溶け込めずバレエの練習でも行き詰まっていた。自分のやりたい道は、バレエの外にあるのではないかと、悩んでイライラしながらの帰り道。夏蓮は石畳の狭い路地を歩いていた。「やあ、お嬢ちゃん」突然声をかけられ顔を上げると、薄気味悪い老人がインチキ臭い笑みを貼り付けて立っていた。「強い目をしたお嬢ちゃん、君の望みは何かな?」(……なにこの変質者)いつの間にか、辺りには人気が途絶え、午後か [続きを読む]
  • 183 夏蓮の確信
  • 典型的な都市伝説。自らの周辺に巻き起こる不幸を受け止めきれなくなった大月陽が、その都市伝説にある悪魔という存在に依存し、それに沿う様に事実を当てはめシナリオを創り上げ、自分なりの契約の儀式を執り行った。五島は読み終えた報告書を眺めながら、そう評した。口には出さなかったが、彼の気持ちはよくわかった。夏蓮の事故を、苦しみを受け止めきれず、大月陽に全て転嫁しようとした自分自身と、同じだったからだ。「じゃ [続きを読む]
  • 182 限られた時間
  • 昨夜外村と名乗った付き添い君は、朝から落ち着かぬ様子だ。病み上がりのこちらの方が心配になってしまう。「あの、大丈夫ですか?」彼が7回目に病室のドアの外を確認したところで、五島はとうとう声をかけた。外村は足早に戻ってきて、ベッドとドアの間に置いた折り畳み椅子に浅く腰掛けた。夏蓮が来たらすぐに動けるようにだろう。「大丈夫です、大丈夫です。もう殴らせたりしません。今度はちゃんとガードしますから」昨日のビ [続きを読む]
  • 181 懺悔
  • 「ちょっと煌月さん、困りますよ」「……ごめんなさい。気が急いてしまって、つい」「わかりますけど」「体調のチェックが終わったら、話させてくれるんでしょう? 約束よね?」「違います。我々の質問が終わってからという約束だったでしょう」夏蓮と車椅子を押す男の声が、遠ざかっていく。あの男は、誰だ?ここは……病院だ。二週間眠っていた?そして、大月陽と木暮優馬が、死んだ……?……ああ…………ああ、そうか。俺は… [続きを読む]
  • 180 苛立ち
  • 夏蓮はイライラして、前髪の端を噛んだ。例の放送から連日、巷では孤高の天才画家の変死というショッキングな話題で賑わっていた。ネット上では様々な憶測が飛び交い、有る事無い事書き立てられ……絵画に全く興味の無い人々にまで様々に噂され、昨日はついに夏蓮のところまで雑誌の記者とかいう者が訪ねてくる始末だった。もちろん会わずに追い返したが。世間では、大月陽の気が狂れたという意見が多勢を占めているように見受けら [続きを読む]
  • 179 後ろ姿
  • あの放送から数日、夏蓮はせわしなく動き回っている。陽とそのスタジオに関する全ての手続きは、天本社長と木暮栞に託されていたため、夏蓮には何も出来なかった。ただ、カズに付いている警官を通じて、陽の最後の様子を少しだけ聞くことが出来ただけだ。夏蓮は、知りたかった。最後に陽を拒絶した事実は変わらないことは、自分でもわかっている。今更何をしたところで、罪滅ぼしなんかにはならないことも。ただ、不思議なことに、 [続きを読む]
  • 178 放送終了
  • (嫌よ、何する気なの? やめて、陽! 駄目! 駄目! お願い戻ってきて! お願い!)見えない糸で縛りつけられたみたいに、声は喉元に張り付いて出てこない。弱々しい息が小さな塊になって、不規則に往復する。膝に乗せたノートPCにしがみつき、夏蓮はその画面を食い入る様に凝視していた。目を逸らしたいのに逸らせない。必死で祈りながら、陽の姿を、白い煙の中に探す。ゴトッと重たい音がして、祭壇の影から酒瓶らしきものが転 [続きを読む]
  • 177 生贄
  • 全ての絵をゆっくりと、順番に映し終え、PCを台の上に戻した。祭壇が映るようにカメラの位置を調節して、再びPCの前に座る。「今お見せした絵は、生贄です。アドラメレクへ、生贄を捧げます。この力を、消し去る為に」言った。言葉にして、言ったよ。これでいいんだろ?「自分の手で生み出したこれらの絵と、俺自身の命を」胸がざわめき、唇が震える。言うんだ。最後まで、言うんだ。契約を結ぶために……「生贄に捧げます。だから [続きを読む]
  • 176 儀式
  • 「これから、儀式を始めます……そしてこれが、俺の最後の作品になります」PCを持ったまま、祭壇の方へ向かう。そこに立てかけられている数枚の絵を、一枚ずつ映していく。青と水色の濃淡で描き出された女性の絵。湖のほとりに斜めに座り湖面を覗き込みながら、片手を差し入れて水と戯れている。手から零れ落ちた水は細い肘を伝い、小さな白い膝を濡らして、また湖面に滴り落ちる。清水恵流。その名の通り、彼女には愛が満ち溢れ、 [続きを読む]
  • 175 放送開始
  • そろそろ時間だ。小さな教会の中ほど、ノートPCを置いた台に向かう。並んでいたベンチは隅の方に寄せてある。PCの前の簡素な丸椅子に座り、最後の調整をする。画面には板張りの小部屋に座る自分が映っている。我ながら、酷い顔だ。薄暗い部屋の中、ひびの入った素朴なステンドグラスと古ぼけた祭壇が辛うじて見える。あの部屋に居られなくなって最初に思い出したのが、ここだった。もう何年も前、配達の帰りに景色を求めて道を外れ [続きを読む]
  • 174 悪魔と呼ぶのなら。陽の回想
  • もう、立ち上がる気力さえ消えていた。「頼む……頼むよ。お願いします。優馬さんを、助けて。夏蓮を、親父さんと静江さんを、助けて下さい」倒れた姿勢から四つ這いになり、頭を道路に擦り付ける。「俺はどうなってもいいから。お金なら全部あげる。魂でも寿命でも、何でも持ってっていいから。絵なんてもう描けなくていい。今ここで死んだっていい。だから、お願い……この力を消してよ。もう誰も、巻き込まないで」道路に落ちる [続きを読む]
  • 173 邂逅。陽の回想
  • 「今日は随分と忙しい日だ……やあ、久しぶり」驚愕のあまり、体が動かなかった。体だけじゃない。思考も感情も全て、一旦停止した。呼吸すら止まった。ただ、雨が変わらずに降り続けているのを、頭の片隅で不思議に感じた。「私自身を呼び出したのは、これで2人目だ。最初に呼ばれたのははつい先刻、君の友人だよ」その言葉で、全てが一気に動き出した。痛みを感じるほどに心臓が脈打ち、血液が高速で逆流したみたいに血管がドク [続きを読む]
  • 172 あの日。陽の回想
  • 胸の真ん中が、熱かった。全て悪い夢かもしれない。目が覚めたらいつも通りの朝で、俺はベッドから跳ね起きて絵の続きを……ほんの一瞬でもそう思いたかったが、無理だった。痣が。この痣の熱さが、これは現実なのだと絶え間なく突きつける。じわじわとした熱さが鬱陶しくて恐ろしくて、陽は生乾きのTシャツの上から乱暴に痣を擦った。(優馬さんの言葉、どういう意味だ?! 「俺」は悪くない、自分が悪かったってい言いつつ、栞さ [続きを読む]