並木 わたる さん プロフィール

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並木 わたるさん: 失われたわけでなく
ハンドル名並木 わたる さん
ブログタイトル失われたわけでなく
ブログURLhttp://blog.livedoor.jp/obu69/
サイト紹介文旅好きにして、旅立てず、 綺麗好きにして、片付けられず、 決して天邪鬼とはいえない、 この性格。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供43回 / 177日(平均1.7回/週) - 参加 2012/03/29 18:47

並木 わたる さんのブログ記事

  • 沖行く船
  • ◇ 浜茄子は海と空をほしいままに砂をかぶって小刻みに震えている 置かれた位置の宏大さと自由 そのせいか実は堅くしまって意志は強固はるか水平線を巨大な油槽船が渡って行く自らの存在証明のように白く燃え輝きながらーーどこかの港にその積荷を降ろさないことには何事もはじまりはしないと身をもって示すように白く発光しながらうつつの海を幻のように滑って行く◇ [続きを読む]
  • ちょっとこい
  • ーちょっとこいーそんな小綬鶏の鳴き声に誘われ、山に入った。ーちょっとこいー鳴き声はしているが、姿が見えない。ー何だ、この鳥は人間をなめているなーそう思えたから、ーおまえこそ、ちょっとこいーと言葉を返してやる。小綬鶏はしばし鳴きやみ、山深く入って行った。逆になめられた人間の僕は、山からの帰り道を探っていた。ーちょっとこいーあらぬ方角から声がかかった。それはさっき向かってきた山の入口の方で、僕にとって [続きを読む]
  • 百千鳥
  • ◇百千鳥が草原のおちこちに分散して競い啼きをしている高い声低い声澄んだ綺麗な声濁声金切声に調子外れの声ひと所に纏まって歌えば鳥のコーラスにもなるのにこんなに草原に分散して思い思いに声を張り上げるのだそうか、百千鳥というのは、一種類の鳥のことではなく草原に棲むあらゆる鳥の総称であったのだダーン一発の銃声がして、百鳥鳴き声を絶った平和とは草原のざわめきだ◇ [続きを読む]
  • 有閑夫人とオーエル
  • ◇ うららかな春の一日、有閑夫人がペットのチワワを連れて散歩に出た。  公園通りを行くと、チワワがロープを引っ張って、路上に落ちている空のパックに寄って行った。 「ミツコちゃん、駄目だってば、そんな不潔なものに、口を出したら」  夫人はそう言って、犬のロープを引っ張り寄せた。  すぐ前を歩いていた黄色い花柄のワンピースの若いオーエルが、「光子ちゃん」と自分の名前を呼ばれて振り返った [続きを読む]
  • 火口湖
  • ◇火口湖に白鳥が一羽白く燃えているなぜ燃えているのに白いのか分らないでいた2012年十年振りに火口湖を訪れる赤い鳥が一羽湖心に浮かんでいるすると燃えていた白い鳥は今の鳥の予型だったのか湖の四囲に仄かに赤い色が芽生え徐々に岸を離れ湖心部へと漂い出る気配を匂わせている2017年4月初旬再び火口湖を訪れる周辺に弱々しく揺曳していた赤はくっきりと鳥の形を取って元からいた鳥の周辺を赤く燃えながら生前から定ま [続きを読む]
  • 無季ー短詩ー無定形
  • ◇路地の片隅に咲いた帰り花をじっと見ているといつかまた会おうねと花が言った次の日帰り花は消えていたいつかまた会おうねと言った白い桃の花は翌年まともに花の開く季節に咲いた帰り花ではなく普通の花として咲いた◇隙間風に対しては逃げるより塞ぐ考えだべたべたと厚いテープを貼り付けていけば隙間風だって覗かなくなる外が透けて見えない黒いテープがいい◇狐火を見たものは直ちに届け出よ辻の立て札に慥かにそうあったがこ [続きを読む]
  • 風花
  • ◇デパートの屋上で彼女からの携帯をまっていると、風花が目の前でキラリとひかり、首筋に飛び込んできてチクリと刺した。結局、携帯は鳴らなかった。風花は、彼女が来ない告知だったのだ。彼はデパートを出て、足早に街を歩いた。ときどき風花が降ってきて、きらりと光った。もうたくさんだ。駅について、風花の来ない電車に乗った。しかし今度は、端々にいる女が、みんな彼女のように思えてならなかった。風花はいたるところに、 [続きを読む]
  • 遠い火事
  • ◇夜中の遠い火事だ焼け出された人に同情し寒さを堪え道に出て見ているパジャマの女火の粉が上がると女は自分に降りかかって来たかのように頭を揺すって身をかわす火の爆ぜる音など聞こえないが女は身もだえして耳を塞ぐそれを見ていた近所の子供がしゃがみ込んで耳を塞いだ◇ [続きを読む]
  • 金色の鴎
  • ◇金色の鴎虹がかかると、鴎が啼きながら、海から湧いて来る。虹に入る鴎。入れない鴎。虹の中に消える鴎。虹を出て灰色が金色に輝く鴎。虹を介して、鴎はいくつにも分れる。僕は虹を潜って、向こう側へ渡る鴎が好きだった。そんな鴎は、灰色をしていたのが金色に変身して、輝きながら星の世界へと吸い取られていった。◇ [続きを読む]
  • けらつつき
  • ◇返り花返り花次はまともに春来るわ◇冬の浜冬の浜足もとの水は海の水だった◇帰り花帰り花霞んではいるが慥かに白い桃の花◇大雪の朝大雪が見舞って周囲の風景が一変した塀にはいつもの雀がいる雀もいつもの人間が窓から見ているのでほっとしている◇雁雁の列は消えたらまた別の雁の列が現れてきて空を借り切っているようだ現れてまた現れて雁の列◇信号寒鴉が無人の駅で黒い信号になったり駅長になったりしている◇落葉枯葉が緩 [続きを読む]
  • 飛ぶ季節
  • ◇小流れ柿が熟すと下の冷たい小流れに赤い灯がともる◇鐘柿の木に鳥が来てさかんに鐘を叩いてゐる柿の実をつついているのだ◇朝霧朝霧の中に立つ男女は憂ひに包まれてゐる霧が晴れる頃二人は別々のコースを歩いてゐる◇夏野あそこ遙かかなた白い雲を浮かせて夏野がある◇冬このあとは天に任すほかすべのない冬ごもり   ◇凧いかのぼりが糸を切って飛んでいるぞどこへ?◇峰いつからであったか登山を離れ峰を遠望するようになっ [続きを読む]
  • 冬の蛙
  • ◇冬の蛙冬に入った今頃ケロケロと蛙が鳴いたまさか 幻聴だろうそう思って裏の池に回ってみると水面に一匹の蛙が顔を出していた割箸の先で蛙の頭をつつくとぽちゃぽちゃと水音を弾かせ見事な蛙泳ぎをして池の反対側の岸近くに顔を出したそこにはテレビのアンテナに反射した光が届いて池の水面をひときわ明るくしていたまた蛙が鳴いた幻聴のはずはないケロケロと鳴いた [続きを読む]
  • 麒麟
  • ◇麒麟は自分の口の届かない梢の葉を食べたいと思って生きているうちにあんなに首が長くなった麒麟ほど願いをかなえた動物は珍しい首は長くなって願いがかなえられたが一度寝ると起き上がるのが大変らしい長い首が重くて邪魔になり振り子のように振れるので足がふらつくのだそれで麒麟は立ったまま眠るようになった私も電車の中で立ったまま眠る勤務中もよく眠っているおわり◇ [続きを読む]
  • 熱燗
  • ◇牡丹牡丹の花が落ちた深夜に堪えきれない寂しさを抱え込んで牡丹の花が落ちた◇生命線生命線がある一本の長い川の流れのように天と地を仕切る遥かな境界線のように生命線があるこの道をいったいどのくらいの人が渡って行くのだろう渡って行けるのだろう◇金魚金魚には夕日は見せないほうがいい夕日を見せると金魚は燃え尽きてしまうから金魚はそれだけの蓄えを生まれつき持っているのだ◇線路凍りつく夜の大地を二本の線路が走っ [続きを読む]
  • 熱燗
  • ◇牡丹牡丹の花が落ちた深夜に堪えきれない寂しさを抱え込んで牡丹の花が落ちた◇生命線生命線がある一本の長い川の流れのように天と地を仕切る遥かな境界線のように生命線があるこの道をいったいどのくらいの人が渡って行くのだろう渡って行けるのだろう◇金魚金魚には夕日は見せないほうがいい夕日を見せると金魚は燃え尽きてしまうから金魚はそれだけの蓄えを生まれつき持っているのだ◇線路凍りつく夜の大地を二本の線路が走っ [続きを読む]
  • 熱燗
  • ◇牡丹牡丹の花が落ちた深夜に堪えきれない寂しさを抱え込んで牡丹の花が落ちた◇生命線生命線がある一本の長い川の流れのように天と地を仕切る遥かな境界線のように生命線があるこの道をいったいどのくらいの人が渡って行くのだろう渡って行けるのだろう◇金魚金魚には夕日は見せないほうがいい夕日を見せると金魚は燃え尽きてしまうから金魚はそれだけの蓄えを生まれつき持っているのだ◇線路凍りつく夜の大地を二本の線路が走っ [続きを読む]
  • 虹に遇う
  • ◇虹虹に遇った虹がもっとも冴えているときに◇鯉鯉の口が水に映った名月をあさっているもごもご動いているのは鯉の口で名月ではない◇冬蜂冬蜂には今や傲りは影すらない家の中に骨董品のように置かれている置かれて微かに動いている◇冬の蝶日の当たるベンチには冬の蝶がぬくもりを求めて坐っている貴婦人のようにゆっくり羽根を開閉させて◇ [続きを読む]
  • 朝の挨拶
  •  腰の高さほどの石塀の上には、朝顔の鉢植えが三個並んで、三鉢とも見事な花をつけていた。 朝、その路地をハイヒールの底を打ち鳴らして、ほぼ同じ時間に、オーエルが通った。朝顔の鉢の前に差しかかると、「朝顔さん、オハヨ」 と声をかけて行くのだった。その路地に面した部屋に大学生の朝男が寝ていた。彼は朝顔に朝の挨拶をしていく女性の声に、毎朝起こされていた。 オーエルの声は、目覚まし時計よりずっと爽やかで明る [続きを読む]
  • 雪ウサギ
  • ◇雪ウサギ雪ウサギの素材になるユズリハとナンテンの実を手にして女の子は雪になるのを待っている雪が降ればすぐ雪ウサギをこしらえようと空を見上げて待っている◇夕立夕立にあった女は人魚めいているたった今海から揚がった魚のように◇秋アカネ秋アカネが高嶺の空で宙返りをした地上に新しいことでもないかと◇薄秋も深まり夜になると薄は淡い光を放つ最後の最後の力を振り絞って◇ [続きを読む]
  • 冬の蝶
  • ◇冬の蝶走る電車に飛び込んで前へ後ろへ翔けめぐる南国めざす蝶ならばこれは間違い北国行き次のホームで羽根休め下りの電車を待ちなさい終着駅をめざすならそのままそこが終着よ◇ [続きを読む]
  • 雪下ろし
  • ◇今年は雪が多い。屋根に積もった雪下ろしが大変だと、故郷の親から電話があって、行雄は三年ぶりに帰省した。母屋の屋根を見上げると、なるほど雪嵩がある。梯子を使わず棟続きの納屋を伝って屋根に登れるほどだ。 とにかく庇に近いところから、スコップを突きさして雪の山を崩し落としていく。 雪下ろしにかかって間もなく、彼は雪の反射に視覚が狂って、屋根から地上の雪の中に転落した。もともとある雪の上に下ろした雪がか [続きを読む]