國乃礎 さん プロフィール

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國乃礎さん: いしずえ
ハンドル名國乃礎 さん
ブログタイトルいしずえ
ブログURLhttp://kuninoishizue.blog.fc2.com/
サイト紹介文天地万物一体仁の心◎かんながらは世界の心◎人類の母◎地球の故郷
自由文國家は◎国本が守られて◎国体が固められ◎国業が栄えて◎国運が開けて行く

「陽明学勉強会」 参加希望の方は kuninoishizuehonbu@yahoo.co.jp まで御連絡ください
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供348回 / 365日(平均6.7回/週) - 参加 2012/04/26 09:36

國乃礎 さんのブログ記事

  • 第二巻受難の巻
  •  彼はふと何かこっけいなことを思出したのか、顔一面にぱっといたずらそうな笑いをうかべた。こういう時の彼の顔は、少年のように無邪気で愛嬌がある。彼は云った。 「ぼくの子供の頃、郷里に面白い気狂いがいましてね。 ぼろの着物に縄の帯をしめているんだが、その帯にいろんなものをぶら下げているんですよ。道におちていたものや、捨ててあったものをことごとく拾って、腰にぶら下げてしまうんですね。   (43 43' 23) [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  とにかく、日本は基本的に矛盾の上に立っていますよ。政治にしろ、教育にしろ、文化にしろ、何かしらちぐはぐであいまいで間に合わせ主義だ。わたしはこの数年来、日本を堅実な姿に建て直したいとおもって奔走してきたが、もう駄目だ。 国家も大衆も往きつくところまで往かなければ眼がさめないだろう」 森川氏はずんぐりした幅広い肩の間に首をうめ、口をへの字にして太い眉をぴりっと動かした。角ばった浅黒い顔は、詰衿の軍 [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  「日本の大衆には、どうも世界的視野とか政治的感覚とかいうものが欠乏しているように思われますね。どんなにまずい政治をされても、それを至上のものだとおもっている。 彼らは客観的に日本を見ることができない。いかなる場合にも主観的にかんがえている。万世一系の天皇とか、神風とか、日清日露の戦勝とか、世界無比の皇軍とか、景気のいいことだけを看板のようにまわりに飾りたてて自己満足している。大変うぬぼれ民族だ」 [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  彼らの間には戦争推進の軍国精神がおどろくほど強固に結晶し、第二、第三の道をかんがえる余裕はほとんど無いかのように思われた。 熱情をこめてうったえたにもかかわらず、冷たい岩壁のようにこわばった表情のまま、感応をしめさない聴衆に、失望を感じながら戸松は演壇をはなれた。   世界の文化思想デパート その夜は森川氏の家に迫った。二人の熱血漢は夜の深まるのもわすれて語りあった。 戸松は会場の空気を思出して [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  政治や外交によって解決をのぞむよりも、まず戦争に勝つことだ、勝つこと以外に日本民族の生存の道はない。必勝をめざして御奉公することが忠君愛国の道である〜と、かんがえている。 彼らの頭の中には、天皇と政府と戦争が、美事に一つにむすびつけられ、その理想と誇りと生存を意義あらしめているのであった。   (43 43' 23)にほんブログ村FC2 Blog Ranking [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  彼の男らしいせまらざる態度に勇気づけられたかのように、戸松は一層声をつめよって、無期限の戦争が国家を危機にみちびくものであることを説いていった。 しかし、聴衆の顔色は、それを実感としてうけとめていないように見える。 彼らにとっては東条政権は、国連をひらく挙国一致内閣であり、その傘下にある大政翼賛会の活動をとおして自分らも又その聖業に参加しているのだと信じている。   (43 43' 23)にほんブログ村F [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  「この演説会はわたしが司会者であり、わたしに全責任がある。 責任者を無視して、直接弁士に中止を命じたり、暴力を加えるのは行きすぎではないか。 それに今夜はわたしの同志の集まりで、一般を対象とした演説会ではない。こういう席にまで入りこんでこられること自体、降壇させられることになっていた)。 とにかく、この弁士にたいする責任一切はわたしが負う。貴官は引き下ってもらいたい」 森川氏は戸松をふりむくと、 [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  戸松はそれをふりはらって、 「天皇とは、天皇陛下御自身のことをいっているのではない。天皇という制度をいっているのだッ」と、にらみ返した。 「詭弁を弄するなッ」 警官はいよいよ怒気をふくんで、暴力で中止させようとしてかかってきた。 そのとき、森川氏が二人の間に割って入り、警官にむかってきびしい態度でいった。   (43 43' 23)にほんブログ村FC2 Blog Ranking [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  戸松が、天皇というものをーーーといった時、ぱっと立上った警官が、 「中止ッ」と叫んで演壇につめよってきた。 彼はさきほどから何度も腰をうかせては、妨害しようとしてむずむずしていたのであった。 「天皇というものとはなんだッ。不敬だぞッ。演壇をおりろッ」 胸をとらえて荒々しくひっぱろうとする。   (43 43' 23)にほんブログ村FC2 Blog Ranking [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  日本は明治いらい、民衆の功利主義、軍官の立身出世主義、あわせて政治家の無責任主義、さらに、その上にそだった富国強兵主義の流れにひきずられてきた。民族的高い理想もなしに、世界状勢にうごかされながら、行きあたりばったりのその日暮しのあげく、辿りついたのが大東亜戦争である。 しかも、この作戦は素人眼にもずさんであり、無鉄砲である。日本人は自制して自国の内容をととのえることをわすれている。こんな粗雑な国 [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  膨大な物量と機械力を楯にして、危険なスポーツにでも参加しているかのように、生命を大切にしながら戦っている敵兵を日本人はさげすみ軽んじていた。 すなわち、苦闘に耐えうる精神と肉体に頼りすぎ、豊かな物量と、それを無限大に能力化していく高度の技術の魔力を見落していたのである。敵軍の最新の技術と機械力にたちむかっては、大和魂の神秘力も色あせ、純忠にもえる人間も虫けら同然になってしまうことを考えにいれてい [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  彼が日本の現状を警告するや、がぜん、会場は眼ざめたようにガヤガヤとざわめきだし、のびあがって奇声を発する者もあった。 弱音を吐くなッー アメリカがなんだ。大和魂をわすれたかッー 勝つことのみを確信している民衆にとっては、敗戦は奇蹟のようなものであるらしい。満州事変いらいの徹底した軍国主義教育は、青壮年の心を戦いに集結し、皇軍の威力は絶対で世界無比のものであると信じこませているのであった。 彼らは [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  日本のように資源の乏しい国が世界中の富を独占しているような英米を相手として一年以上の戦いをつづけるということは、貧乏人と大金持が博打をするようなものだ。腕と力にもの云わせて一儲するつもりでも、相手が本腰になって大きくはってきたら一回の負けで元も子もなくなってしまう。日本はいま、本腰になって大がかりでせまってくる相手に本気で立ちむかっていこうとしている。腕にものいわせて、一応日本人の気概をしめした [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  民衆はもう大陸の戦争にはあきあきしているのである。彼らには中国内部にただよう複雑な妖雲は理解できない。中国問題をむずかしく考えることすら不思議に思っている。中国人は弱いのだ。蔣介石にはいつかは降参するにちがいないとたかをくくり、いたって単純な中国観にたっているのであった。 戸松はさらに論をすすめて、日米戦の長びくことの不利を説いた。   (43 43' 23)にほんブログ村FC2 Blog Ranking [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  彼はまず中国大陸の現状から説いていった。日本軍は目下、ひろげるだけひろげた広大な戦域を点々と守備しているだけにとどまり、進むもならず退くもならず泥沼にはまりこんでしまい、動きがとれない状態であること。戦争が長びけば長びくほど、国力を消耗するばかりであること。そしてそれは反対に大陸の共産軍の勢力をつよめる結果となり、中国民衆の排日思想を一層根ぶかくし、共産軍の活動をたすけることになること。はまりこ [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  彼らは時代の矛盾の中から沸騰する人間の熱情をおさえつけようとして懸命である。なぜ沸騰するかを考えることは彼らの役割ではない。とにかく、現実の政治に不満をもち、批判を加える者はすべてなぎ倒していかねばならないのであった。彼らは東条の分身であった。 だが、戸松は警官を黙殺した。一人の警官のために自分の意見をあいまいなものにすることはできない。警官といえども日本人だ。国を思う魂のほとばしりは、その心を [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  戸松もまた森川氏の人物とその行動力に、少なからず期待をかけていた。日本の次第をともに手をとって支えていく人であると信じていた。その森川氏の思想に共鳴する人々のあつまりであるから、彼は思いきって自分の意見を吐露してみるつもりであった。 ところが、こういうグループ的会合にもかかわらず、正服を着用した警官と私服警官がちゃんと入りこんでいて、会場の支配権をにぎっているかのような顔でひかえていた。 いやな [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  森川氏も国家革新を志している一人で、彼は二年ほど前広く大陸に人物をもとめて旅行したことがあった。そのとき、上海領事館の西尾参事官によって二人はひきあわされたのである。 戸松は十七年に帰国した時、一年ぶりに森川氏を石岡に訪ねた。ところが森川氏は折悪く囚監されていて会うことができなかった。夫人に生活費はどうしているかと尋ねるとどうにかこうにかやっているという曖昧な返事だったので、子供も居ることである [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •   国民大衆の思想的動向 その夜、戸松は茨城県石岡市で演壇にたっていた。 会場は個人の大きな家で、唐紙をとりはらって二間か三間をぬきひろげたものである。 聴衆は五十人たらずの少人数であった。その大半は主催者である森川氏の同志ともいうべき人たちで大政翼賛会の青壮団にぞくしていた。 水戸を中心とするこのあたり一帯は、水戸藩の気質がそのまま残っていて、格式ばった封建性につつまれているにもかかわらず、革新 [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  いったい、民族とは何であろう、そして又人類とは何であろう……それはとりもなおさず自分の別名ではないのか。自分一個の生を肯定することができなくて、どうして人類の未来を肯定することができるだろう。どのような苦境の中でも、生きるということの尊さをわすれない人間のみが、人類の未来を信ずることが出来るのである。 安部先生は、真に人間の自由をかちとった勇者である。尾崎翁は、自由をとなえ自由をさけびながら、つ [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  「わたしは違う、いかなる場合にも生の否定はいけない。 政治を清め、正そうとした点は尾崎さんと同じだが、わたしはどんな悪い境遇の中にあっても悲観はしない。強く正しく生きることが大切です。自殺を考えることは、卑怯者の態度だとおもう。 老人になろうと無力になろうと、社会や国家に最大の責任は果せないとしても、最小の義務だけは忘れないつもりです。敵が上陸したら、国民兵となって戦う決意ぐらいはもっています」 [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  やがてのこと、孤独な老人に別れをつげて、戸松は尾崎邸を出た。 彼は伊東には立寄らず、そのまま東京にかえり、その夜は米倉宅に泊って、翌日水戸に立つ前に安部先生のアパートをたずねた。 尾崎翁に会った模様を話すと、先生はにこにこと興味ふかそうにきいていた。尾崎翁はイギリス育ちの妻とともにイギリスに長く滞在し、一方先生はアメリカに長く学び多くのアメリカ人の友人をもっているためか、人間的に親しく通じあうも [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  そうだ、俺達の時代は、その調和と綜合をめざしてすすまねばならない……と、戸松は心の中でつぶやいた。 老人は椅子によりかかり、小さな顔を重たそうに着物の衿にうずめ、それでも物音をききもらすまいとするかのように補聴器を耳にあてたままじっとしてある。さびしい姿だ。 「これからの戦場が本土にちかづきますと、ますます不自由な苦しいことがつづくでしょうが、どうかお身体を大切にして下さい」 戸松は祖父にわかれ [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  一方、尾崎翁のばあいは、西洋的世界観とみるべきである。 人間の自由と権利に中心をおいて、教育と社会の改善と英国的議会主義によって、思想的にも地域的にも国境をとりのぞき、世界国家をつくろうというのである。ここでは、人間は宇宙にいだかれしたがっていく立場ではなく、自ら計画し創造していく立場にたたされている。 この二つの思想はともに宇宙と人間を正確につかんでいる。だが一面的である。 自然も人間も、宇宙 [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  あるいは、翁は自分の理想を若い後継者にたくした気でいるのかもしれない。それならそれでよい、黙って受けとっておこう。 志を托した頭山翁と、夢をあたえた尾崎翁と、二人の老人の印象がとっさに戸松の胸の中で交叉した。 頭山翁は東洋的宇宙観にたって世界をみつめている。そして大きな宇宙という母にいだかれた子として人類をながめている。 日本人、アメリカ人、イギリス人、中国人、それぞれ眼の色毛の色はかわっていて [続きを読む]