國乃礎 さん プロフィール

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國乃礎さん: いしずえ
ハンドル名國乃礎 さん
ブログタイトルいしずえ
ブログURLhttp://kuninoishizue.blog.fc2.com/
サイト紹介文天地万物一体仁の心◎かんながらは世界の心◎人類の母◎地球の故郷
自由文國家は◎国本が守られて◎国体が固められ◎国業が栄えて◎国運が開けて行く

「陽明学勉強会」 参加希望の方は kuninoishizuehonbu@yahoo.co.jp まで御連絡ください
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供347回 / 365日(平均6.7回/週) - 参加 2012/04/26 09:36

國乃礎 さんのブログ記事

  • 第二巻受難の巻
  •  政治家として学者として、すぐれた叡智と体験をもっている先生や尾崎翁からみるとき、軍人の直情的政治など、おそらく幼稚にうつっていることであろう。 「この前の選挙というと、去年の春の翼賛選挙のときですね」 「そうそう……、あの時には中野君などもずい分東条さんに抵抗しましたが、尾崎さんもねばったらしいですよ。尾崎さんの抵抗は憲政をまもるという五十年間の筋金のはいったものですからね。単なる壮気や強気でせ [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  安部先生と尾崎翁とは、暗黙の中に互いに人物をみとめあっている間がらであるのかもしれない……というのは、 昭和の初の国会で大乱闘事件がおきたとき、安部先生と尾崎翁そして大口喜六の三人だけが騒然と荒れ狂う議場で、泰然自若として端座していたという逸話がかたりつたえられているくらいであるから、互いにこの人物は本物であるわいという印象をうけていたものと思われる。 「この前の選挙の時、尾崎さんはやっぱり東条 [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  「ぼくが今度尾崎翁に会いたいと思うのは、護憲の神といわれた尾崎翁が、翼協(翼賛政治体制協議会)の存在をどう考えているか、東条の独裁的政治をどう見ているかを知りたいからなんですよ」 「今となっては、尾崎さんももうあきらめているんじゃないですか。 あの人は若いころから憲政擁護運動一すじに戦いつづけてきた人でしたが、高齢になっても節をまげずに最後までよく戦いつづけました。立派なことだとおもいます」 先 [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  「ああ、尾崎さんですか……それはいいですね。どうですか、尾崎さんはあなたの判断によるとどの部類にぞくする人ですか」 先生はいたずらそうな笑いをうかべながらきいた。 「そうですね……尾崎さんはどの部類にしますかね。まあ、かおりの人というべきでしょうか」 「なるほど……」 二人は声をあわせ軽くわらった。   (43 43' 23)にほんブログ村FC2 Blog Ranking [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  その心配をあきらかに口に出して忠告せず、今まで黙って青年の行動を見つづけてきたところがいかにも先生らしい。神を信ずる大教育者の態度である。 「先生はぼくが時代の見識をあつめるといわれましたが、そういう意味でなく、ぼくはほんとうに一風格を成した人間にあうのが好きなんです。 今までいろいろの人に会ってきましたが、この人は人格的薫の高い人であるか、又ふかく交って味わうべき人であるか、書物をとおして会う [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  思いがけないところでほめられて、戸松はやや照れ気味であった。彼は少年のようにはにかんだ笑をうかべながら、 「いやいや、ぼくはそんな器用な人間ではありませんが、只、自分の志を生かすにはそういう方向よりないと思ったものですから」 「いや、その志をいかす態度が立派だと思うのですよ。若いときにはとかく感情から行動をおこしがちなものです。それをあなたはなかなかの感情家でありながら、事志を行なう段になると感 [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  行きづまることを知らぬ青年の精力に感嘆するかのごとく、先生はゆっくりうなずいた。そして、じっと戸松の顔をみつめながら、誠実と感情をこめていった。 「純粋で剛気な一面は中野君に似ているが、あなたは中野君よりずっと柔軟性に富んだ人だ。 和平解決にあれほどいちずに真剣に立ちむかっていたのだから、さぞや東条さんの仕打ちに腹をたてて敵慨心をもやしているだろうと心配していましたが、いつの間にか東条さんをのり [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  「田舎でいろいろ考えてみましたが、東条のような勇ましい軍人が権力をにぎっている限りは、事変解決も和平締結もとても見込みがないだろうとおもいます。 意見書を出しただけで憲兵や特高にあれほどまでに追いつめられるようでは、もう東条に直接ぶつかってみたところで無意味ですから、ここらで方向転回して日本にいる三ヵ月ばかりの間に、アジア同盟の賛成者を一人でも多くつくっておこうとおもいます。 戦い勝つことはまず [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  朝食をすませたばかりの先生は、食卓をはなれ、瀬戸の円火鉢をはさんで戸松とむきあって坐った。 「今度はどういう方面にあたってみますか」 秋田で静かに考えている中に、なにか名案でもうかんで出て来たとでも思ったのであろうか、先生は何かを期待するような眼差できいた。 「いえ、今回は水戸で演説するために出てきました」といってから、やや間をおいて、先生の期待にたいして弁明するかのように、   (43 43' 23) [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  数日をへて、何人かの賛同者を得たころ、水戸の森川長孝氏から、演説会をひらきたいから出てきてほしいという便りがきた。 講演会予定日までには未だ少しゆとりがあったが、秋田の方は鈴木氏にまかせることにして、戸松はただちに旅立つことにした。水戸に入るまえに東京に立寄り、安部先生に新米と餅をとどけ、さらに逗子に足をのばして尾崎行雄翁をたずねてみたいと思ったからである。  尾崎行雄翁と翼賛政治 十二月中旬の [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  彼の大きな体軀は、余裕しゃくしゃくとして富者のごとく、肉づきのいい顔は人のよさそうな笑いをおび、どんな人間とでも抱きあっていけるような広さと温かさを感じさせる。 この人の体内に巣くっている結核菌は、よほどのんびりした菌にちがいないと思われるほど、この病気にありがちな暗さ神経質さはみじんも感じられない。 彼はさっそく人を集めて講演会をひらこうとした。しかし療養中の身は、自から走りまわることはできな [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  その健全なる芽を、今こそ大地の中に深々と育てておかねばならない…… 故郷の風土は彼の考えに、新しい方向をあたえたのであった。指導的人々を説いて、戦争の終結に奔走することを彼は断念してしまった。そのかわり、ひろく同志をもとめて、日本の健全な方向を社会の底辺につちかっておこうと決意した。いわゆる既成事実を残さねばならないと考えたのである。 戦いの勝敗にかかわらず、あたらしい日本の底力となるものを着々 [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  今に日本人という日本人が、自信をうしなって無気力になり、奴隷民族のようになってしまう日が来ないともかぎらないのだ。その可能性がつよいように戸松には思われる。 忠君愛国の国家主義教育によってたたきあげられ、柔軟性にとぼしく、幅広い世界的視野をもたない日本人が、敗戦によって唯一の柱である国家主義理念をたたきやぶられたとき、いったい、どこに心の支柱をもとめていくであろうか。 忠君愛国の思想は純粋であっ [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  川のせせらぎに耳をすませ、山の端をながれる雲を見送りつつも、活動的な彼の心は東京にとび、上海にとび、世界中にとんでいた。そして、最後には、自分はどう行動すべきかという一点にたちかえるのが常であった。 ここにおける彼の自由は、自然の中に放心し休息することよりも、自然の無言の秩序の中に、よりはっきりと自己をつかみ、よりたくましく自己を築くことの方に意義があった。 中央の指導者たちが、戦争にひたむきに [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  戦争は秋田の小都市の生活を、東京ほどにはおびやかしてはいなかった。 ことに戸松の生家は、裏庭つづきに小川をはさんで水田がひろびろとひろがっている町はずれである。今は能代市内にはいっているが、もとは能代市に隣接した農村であった。 食糧のとぼしい東京で、大半を代用食で間にあわせてきた彼は、新米と味噌汁と各種の漬物に久しぶりに舌つづみをうった。飯はつやつやと光って味ふかく、熱い味噌汁は素朴な香をただよ [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •    地方遊説  新たなる決意 日中事解決法案の運動は失敗に終った。東条政府は戸松を反戦主義者として追求し逮捕の危険さえ迫っていた。しかし表面活動はできなくとも、この構想は既成事実として残しておかなければならないと考え、地方遊説に出ることにした。 この案が戦後緒方竹虎をして多くの事変解決方策の中で、抜群であったといわしめ、これが縁となって、戦後国家再建方策に関し緒方邸(天現寺)で論議し、その結果緒 [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  • たしかに男の心は女にとっては永遠の未知数である。心の方向がまるで異っているのだ。女が急進的であるならば、男は遠心的であり、女が内角的であるならば、男は外角的であり、女が収穫的であるならば、男は播種的である。妻は夫が自分と家庭にのみ愛情をむけることを切望し、夫は家庭と妻に密着しながら、外部にむかって発展しようとする。それは仕事の面を開拓するとともに、妻以外の女との接触を広めることにもなる。しかし妻は [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  戸松は頭山夫人の態度を、あっぱれだといった。妻の完成した姿だといった。夫の長短一切を抱擁した確信にみちた不動の姿だともいった。わたくしは「それを虚偽だ」と叫んだ。そしてそれに感服している戸松にすら、反発を感じた。戸松がどんなに口を極めて頭山夫人の信の絶対性を説いても「妻の自分ですら手こずっているのに、六ヵ月の間、よく夫の面倒を見てくれた」とねぎらう夫人の心は理解出来なかった。それは不純であり、不 [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  頭山満という人は花を愛でるような自然さで女性を遍歴した人であるときいているが、この話は老年の近いころのものではないかと思われる。気に入りの芸者を囲って、半年の間料亭に入りびたりになっていた彼が、二万円(今の約二億円)の手切金をあたえてその女を自由にしてやったとき、女は料亭の女将ともなって頭山夫人に挨拶にやってきた。女は長い間頭山翁をひきとめていたことを詫び、今まで世話になった上にこんな過分な金ま [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  彼はくどいほど、同じ事を繰返しいっては口惜しがった。その異常なしつこさは、酒癖の一つにちがいなかったが、呉夫人をまねいた夜のあの粗野な乱れとは、ぜんぜん異質なものであった。酒というものが、その時の精神の状態によって、さまざまな酔態をつくり出すものであることを、わたくしは初めて知ったのであった。  心の対比 牧谷氏の口説きに耳をかたむけながら、わたくしは、スコット―路にいた頃戸松が語っていたことを [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  言葉が感情的になるにしたがって、逆さに突っ立てた日本刀が、ぶるぶる、ぶるぶると無気味にゆれた。 「十何年もつれそった女房がこんなざまだ。いい女房だよ。夫婦の問題を大袈裟に上海中にふれやがって……」 上海中とは、それこそ大袈裟に出たものだ。可笑しさがぐっとこみあげてきたが、彼の妄想にも多少の根拠があるということは察しがついた。おそらく、今晩彼に刺激をあたえた人間が、専ら噂の種子になっているとでもい [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  「女には男の気持はわからんさ」 「……」 肩すかしを食って、わたくしが黙っていると、彼はふたたび説得調になって話し出した。 「奥さん、あんたも人妻だ。男というものを知っといた方がいいよ。男という者はね、口には出さなくても、妻子の事を一番深く考えているものなんだよ。 もっと亭主を信じてもらいたいね。旅先の女からきた手紙一本で大騒ぎをする女房がいまいましくてならんよ。俺の帰りも持てないで、騒ぎ立てや [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  「牧谷さん、あなたは、手紙の事でわたくし達が騒いだことを怒っていらっしゃるようだけど、女の人からああいう手紙が来たのを、奥さんが怒ったり悲しんだりするのは、妻として愛情を持っている限り当然のことではないかしら……ああいう時、平然としているような女だったら、それこそおかしいと思うわ。奥さんに心配をかける牧谷さんの方こそ、非難されるべきですよ」 彼の言葉の中に、男の図々しさというようなものを、ぐっと [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  彼のいわんとすることが、大体察しがついてきた。彼は今夜酒の席で、例の手紙の事件について、さんざん忠告されるか、からかわれるかしてきたに相違なかった。 「亭主を疑って、亭主の悪口をひろげたてて、亭主が人から軽蔑されることを、平気でやる女房をもった亭主のこの気持があんたにはわかりますかい」 牧谷の攻撃はどうやら、わたくしの方にも向けられているようだ。同じ穴の貉として、騒ぎの片棒をかついだわたくしにも [続きを読む]
  • 第二巻受難の巻
  •  わたくしがかすかに首をふっているのをちらっと横眼でみとめると、 「それと同じように、亭主の欠点を人にあばきちらす女を、いい女房といえますか」と畳み込んできた。   (43 43' 23)にほんブログ村FC2 Blog Ranking [続きを読む]