福元早夫 さん プロフィール

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福元早夫さん: パワースポットうそきの滝自然公園
ハンドル名福元早夫 さん
ブログタイトルパワースポットうそきの滝自然公園
ブログURLhttp://ameblo.jp/hayaofukumoto/
サイト紹介文うそぬきの滝自然公園にある植物を通して、自然とは何か、生きる事は何かを追求しています。
自由文 鹿児島県加治木町にある、パワースポットうそぬきの滝自然公園には近年日本各地より、様々な方が訪れるようになりました。公園にある植物を通して、自然とは何か、生きる事は何かを追求しています。ご覧になって頂き、生きる力にかえて頂ければ幸いです。


著書
1985年 小説集 「工場」
1991年 小説集 「家」
1994年 小説集 「蒸気機関車を降りてから」
    (いずれも編集工房ノア刊)
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供380回 / 365日(平均7.3回/週) - 参加 2012/04/28 22:37

福元早夫 さんのブログ記事

  • 連載小説 「工場のトタン屋根の下で」
  • 連載小説・小説集「工場」から工場のトタン屋根の下で(連載第二回)  第一章 ミーティング       (二) 「……みんなもおぼえがあるだろう、工場の機械に小便を垂れたことがあるやろう」 作業長がいった。親が子を叱るいいかたになってきた。「わしも何度か目撃したことがあるが、いままでは、たかが小便くらいなことで、という気があったから、何もいわず、だまってきたのだが」 こういってから、作業長 [続きを読む]
  • 連載小説 「工場のトタン屋根の下で」
  • 連載小説・小説集「工場」から工場のトタン屋根の下で(連載第一回)  第一章 ミーティング       (一)  工場でのぼくたち仕事は、ミーティングからはじまる。夜中、十一時十分前だった。工場のトタン屋根の下を、両手ににぎりこぶしをつかんで、ぼくは一所懸命に走っていった。これから夜勤なのである。更衣室であわてて作業服に着がえ、ヘルメットをかぶると、すぐさま工場の中を走りはじめたのである。& [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • むこう側の世界(連載第十一回・最終回)       (十一) 「あほやで、あいつら」下浦がいった。「ひと晩じゅう気になって、こっちは仕事も手につかなんだがな」「そうか……」ぼくがいった。「ついさっきまで、わしはすっかり忘れていたよ」 夜がすっかり明けきってしまい、工場の屋外の、酸類の貯蔵タンクへふたたび仕事にやってくるまで、ほんとうにぼくは忘れてしまっていた。忘れていたというよりも、ひとたび [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • むこう側の世界(連載第十回)       (十)  工場のむこう側の河口は、栓をぬいた風呂水のように潮がひいていって、ヘドロをかぶった土肌が、ただれきった膿みたいに浮かびあがってきていた。さむい。夏がちかいというのに、空気がひんやりとしていた。  夜明けとともに、霧がでてきていた。湿りきったつめたい霧が、重く低く垂れさがってきており、工場のむこう側の世界が、霧のベールにおおわれて、焦点の [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • むこう側の世界(連載第九回)       (九)  三人は呼吸をあわせて、焼けた赤い鉄パイプをひっぱりつづけた。パイプとパイプの継ぎ目が出てきたら、そこをぼくが切断する。熱い。ものすごくあつい。周囲は50度ちかい温度である。ただじっとしているだけでもあついのに、全身で力仕事をしているのだからなおさらだった。  炉の内部から、炎のような熱風がぼくらにむかってくる。逃げ出したいくらいにあつい [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • むこう側の世界(連載第八回)       (八)  午前四時ごろだった。夜明けまえである。ぼくが現場詰所兼食堂で、三十分の休憩を終え、ふたたび現場へもどってきたとき、ラインが停止していた。何か事故がおこったのである。 ぼくたちのラインは連続操業だから、食事も休憩も、一日の八時間のうちに、一人ひとり交替でとらなくてはならない。つぎの休憩の番の弓場と交替しようとして、ラインの入側へやってきときだ [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • むこう側の世界(連載第七回)       (七)  メモ用紙をつかんでぼくは、酸洗槽のタラップをラインの出側の方へとくだっていった。ラインの中央部のぼくの仕事は、一人作業だから、ふいに得体の知れない不安をおぼえることがある。明け方、四時、五時ごろ、わけもなくさびしくなってきて、あわてて出側の、人のいるところへ突っ走っていくことがある。  幻聴や幻覚にそわれたときがそうだ。心臓を鋭い鉤のよ [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • むこう側の世界(連載第六回)       (六)  桜島のみえる太陽の豊かな、南の国の中学校を卒業し、集団就職列車にのりこんで、蒸気機関車にひっぱりこまれて、この関西へぼくがやってきたのは15歳のときで、16年前ことである。その日からぼくは、製鉄所の技能訓練生で、養成工とよばれた。  全寮制の軍隊式のきびしい規律を強いられ、鉄をつくるための知識と技術を3年間たたきこまれた。18歳になった [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • むこう側の世界(連載第五回)       (五)  製鉄工場の作業を大きく分類すると、南アメリカやアフリカから運んできた鉄鉱石を原料に、溶鉱炉で銑鉄をつくる製銑作業。平炉や転炉や電気炉などで、鋼塊をつくる製鋼作業。その鋼塊を、加熱して圧延などの加工をほどこして、製品をつくる熱間圧延作業の三大部門に分けることができる。  ステンレス鋼板の製造工程である。まず50トンの巨大な電気炉の中に、原 [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • 連載小説・小説集「工場」からむこう側の世界(連載第四回)       (四) 「……どうや、調子は」と背後から声がかかってきた。班長だった。ワイヤブラシでもはえているような濃いひげ面を、班長はぼくにこすりつけるような格好でアンペア計をのぞきこんできた。「まあまあですわ……」と、ぼくは大声で叫んだ。どらどらといたふうに、班長はさらにふかくのぞきこんできて、粉塵に汚れた計器を手でぬぐってやりなが [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • 連載小説・小説集「工場」からむこう側の世界(連載第三回)       (三)  工場の内部は、天井で水銀灯が煌々とかがやき、コバルト色のトタン屋根の下は、昼間のように明るい。あちらこちらで、騒音が渦をまいている。モーターは飛行機のエンジン音のように、ただひたすら唸りつづけている。プシュッ、プシュッ、ダッダッダー、とエアーシリンダーが破裂しつづけて、銃声のようにとどろく。すごくうるさい。 [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • 連載小説・小説集「工場」からむこう側の世界(連載第二回)       (二)  むこう側の、海へとつづく一本道は、河口で直角にちかい急カーブになっている。ガードレールがついていない。闇の中を、海の方からこちら側へとのぼってやってきた場合、危険である。その急カーブを、ぼくたちは、罠と呼んでいる。 以前、小型トラックが海に落ちた。さいわい干潮時だったので、死人はでなかった。あそこが罠になっている [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • 連載小説・小説集「工場」からむこう側の世界(連載第一回)       (一)  午前一時ごろだった。硫酸、硝酸、弗化水素酸、と、酸類の貯蔵されている工場の屋外の、鉛製のでっかいタンクのデッキのうえでぼくは仕事をしていた。闇のなかでの一人作業である。水銀灯の明かりが背後から照らしてくれている。 だけど、闇が、ぼくの両方の肩を強く押さえつけている。それは、ゴム製の長い手袋をはめて仕事をしているふ [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  • 連載小説・小説集「工場」から足並みをそろえて(連載第十四回・最終回)  波うちぎわを歯をくいしばって走りつづけた。寄せてくる波が足をはげましてくれている。海はことばをもっていて、波と、波の音がそれだ。一定のリズムを保ちつづけながら、すごく冷静に語りかけてくる。 この海のずっとむこうには、マーシャル列島ルオットがある。親父よ、あなたも、さあいけ、それ行け、と誰かにかけ声をかけられたのか。死の世界 [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  • 連載小説・小説集「工場」から足並みをそろえて(連載第十三回)  全力疾走のグループは、あと残り少なくなっていた。ずっとむこうに、あらたなグループがつくられようとしている。こちらがわに、日の丸の旗が用意されている。騎馬戦は、どうやら、あの旗を、ふたてに分かれて奪い合うことになるのらしい。  そのむこう側で、文化体育部長が、部員たちに指図して、砂をもりあげさせている。相撲の土俵づくりをしている [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  • 連載小説・小説集「工場」から足並みをそろえて(連載第十二回)  ずっとむこうで、全力疾走の第一グループがスタートした。賃金対策部長がホイッスルを吹いたみたいだ。仲間たちは砂をはげしくけって、われさきにと突っ走っていく。あわてすぎるあまり、前のめりにつんのめったものもいた。それを見て、こちらも足がよろけた。 仲間たちは鉄鋼労連の旗をめがけてしゃにむに突っ走って行き、その旗の下までたどりつくと、思 [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  •  連載小説・小説集「工場」から足並みをそろえて(連載第十一回)  ぼくが中央委員の立候補届けにいったとき、選管は、作業長の許可は得ているんだろうな、といった。なんのことですか、とこちらはとぼけてやった。あくる日、作業長に呼ばれ、勝手に立候補されたら困る、と怒られた。そして、他に適任者を考えているから、とりさげろ、とつめ寄られた。だけど、ぼくは受けつけなかった。そのすぐあとに、こんどは係長に呼び [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  •  連載小説・小説集「工場」から足並みをそろえて(連載第十回) 「お元気そうですね……」とぼく。「そう、たいへんお元気です」と、他人ごとのように野中。そのいいかたがおかしく、ぼくは笑った。相手もわらいながら、なにをしにきた、と訊く。ぼくは用件をいい、手伝ってくれませんか、と頼みこんだ。しゃあない、と野中。知らん人じゃなし、かつてはいろいろお世話になった人や、と冗談口調でいいながら、資材置場へとぼ [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  • 連載小説・小説集「工場」から足並みをそろえて(連載第九回)  ふっと、野中の顔が頭にうかんだ。四年前まで、野中はぼくらの書記長だった。まじめで、一般組合員からの信頼はもっともあつく、戦闘的な役員だった。勤続二十二年で平工員の野中の口ぐせは、一家四人、死なん程度のゼニコがあったらそれでいい、ということだった。他の役員連中とはまったく逆だった。ぼくにとって野中は、大変な魅力だった。  四年前の [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  • 連載小説・小説集「工場」から足並みをそろえて(連載第八回) 「こらーっ、そこの赤いの」 と、後方でハンドスピーカーが叫んだ。こちらは振りむく気力などない。「なんじゃい、その不細工な格好は。昨夜の元気はどこへいった、ええっ」 組合長はもう走っていないみたいだ。ぼくはなかば目をとじ、歯をくいしばった。「がんばらんかい、もっと顎をひけ。顎を」 ハンドスピーカーが怒鳴った。  組織部長はこちらにぴ [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  • 連載小説・小説集「工場」から足並みをそろえて(連載第七回) 「生涯生活ビジョンとは何か、ということになりますが、ひとことでいって、これからの鉄鋼労働者の生活のなかみは、どうあるべきか、ということを、明らかにしたものといえると思います」 講師はよくひびく太い声でしゃべりつづけた。ぼくはその声をきいているうちに、はじめの緊張がどこかへいって、ボリウムをいっぱいにしたラジオで、浪花節を聞いている気に [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  • 連載小説・小説集「工場」から足並みをそろえて(連載第六回) 「さあ、いよいよ、組織部の担当や」 組織部長は同じことをまたいった。ぼくは脇腹をおさえて走りながら、砂に負けてしまいそうである。足がすごく重いのだ。水のどっさりはいった長靴をはいているみたいだ。ふくらはぎが突っぱって、けいれんをおこしてしまいそうである。「この早朝トレーニングは」と組織部長がいった。「きのう、きょうと、二日間の、中央委 [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  • 連載小説・小説集「工場」から足並みをそろえて(連載第五回)  苦しい。心臓がドッキン、ドッキンと鳴っている。こわれかかったピストンみたいに、とてつもなくどえらい音をたてている。苦しい。心臓がやぶれてしまいそうだ。 自動車道を二キロメートルばかり走ってから、海への細い道へとはいった。すぐ真うしろで、自転車にのった組合長が追いかけてくる。走る足をすこしでもゆるめると、前の車輪にぼくは小突かれる。組 [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  • 連載小説・小説集「工場」から足並みをそろえて(連載第四回)  わっしょい、わっしょい。早朝のしじまにかけ声がこだました。仲間たちの長い列はすこしも乱れていない。ぼくは必死の思いで最後列にしがみついている。歯と歯を噛みわせたり、眉間に力をこめたりしながら、とにかくがんばらなくてはならない。だけど、肛門にちからがはいらなくて、下半身が、病に寝こんだ人の借りものみたいだ。ほんのすこしでいい、迎え酒を [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  • 連載小説・小説集「工場」から足並みをそろえて(連載第三回)  たしかに、昨夜は調子がよかった。はじめはビールだけをおとなしく飲んでいたけれど、そのうち、チャンポンにしはじめていた。チャンポンというよりも、酒を飲みながら、ビールをおかずにしていた。おまけに、誰かの、手持ちのウイスキーまであさり歩いた。ウイスキーのビール割りをぼくにあてがったのは、経理部長だったのだろうか、そんなもの、ひと息だった [続きを読む]