福元早夫 さん プロフィール

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福元早夫さん: パワースポットうそきの滝自然公園
ハンドル名福元早夫 さん
ブログタイトルパワースポットうそきの滝自然公園
ブログURLhttp://ameblo.jp/hayaofukumoto/
サイト紹介文うそぬきの滝自然公園にある植物を通して、自然とは何か、生きる事は何かを追求しています。
自由文 鹿児島県加治木町にある、パワースポットうそぬきの滝自然公園には近年日本各地より、様々な方が訪れるようになりました。公園にある植物を通して、自然とは何か、生きる事は何かを追求しています。ご覧になって頂き、生きる力にかえて頂ければ幸いです。


著書
1985年 小説集 「工場」
1991年 小説集 「家」
1994年 小説集 「蒸気機関車を降りてから」
    (いずれも編集工房ノア刊)
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供382回 / 365日(平均7.3回/週) - 参加 2012/04/28 22:37

福元早夫 さんのブログ記事

  • 連載小説 「雷鳴」
  • 連載小説雷 鳴(連載第八回)     (八)  つい二週間まえのことだった。これとよく似た事件があった。あれ以来、その夫婦も子どもたちの姿も、見かけなくなった。 夫は妻や子どもたちに隠れて、目の玉が飛びだしてしまいそうな、とほうもない借金をつくっていたというのである。 「いまのその話、村田さんのことでしょう。その二週間前の事件というのは」 澄子がそれで思い出したといった言いかたをしてからつづけた。「村田 [続きを読む]
  • 連載小説 「雷鳴」
  • 連載小説雷 鳴(連載第七回)     (七) 「映画かテレビドラマを観ているようだったよ。悪の典型のような身なりをしたあの男は、きっとサラ金の取り立て屋だろうな。五十がらみのしゃれた格好をした、にやけきった男だよ。悪役が板についた恐い感じを人にあたえる男だったよ」「その男が、どうしたっていうのよ」 澄子はじりじりしたような言いかたをしてから、空になったコップに焼酎の湯割りをつくって達次のまえにおいた。 [続きを読む]
  • 連載小説 「雷鳴」
  • 連載小説雷 鳴(連載第六回)     (六)  達次はしゃにむに自転車のペダルをふんだ。濃い霧のなかで、目の前の車輪を照らすライトだけが頼りだった。 ペダルを踏みつづけながら達次は、今日っていう日は、なんてイヤな日なんだろうと呟き、顔をしかめて舌うちをした。めざす高層のマンモス団地は、霧のなかにすっぽりとつつみこまれてしまい、窓明かりだけがぼんやり点々とともっていた。  防潮堤から団地への坂道を、下り坂 [続きを読む]
  • 連載小説 「雷鳴」
  • 連載小説雷 鳴(連載第五回)     (五)  子どもが泣き声をあげはじめた。午前一時をすこしまわったところである。ふたつならんだ六畳間の、こちら側のフスマのむこうで、一歳になって間のない亜里が、むずがるようなめそめそした声で泣きだしはじめた。 澄子はテーブルに両肘をついて、両手で顔をかくすようにして頬杖をついたまま、うつむいて肩で息をしている。 「おい、泣いているぞ。おしめが濡れているんじゃないのか」 [続きを読む]
  • 連載小説 「雷鳴」
  • 連載小説雷 鳴(連載第四回)     (四) 「風呂に入って通勤服に着替えて、さっぱりした気分になって工場の門を出て行ったら、交通事故をやっているんだ」 達次はイヤな一日の、イヤなできごとのそのつづきを話しはじめた。「交通事故って、だれか、会社の人なの」 お茶をひと口のんでから澄子がいった。「そうじゃないらしいんだ」 達次はサラダを食べながらつづけた。 「製鉄所のすぐ近くの、海岸のコンクリートの岸壁に、 [続きを読む]
  • 連載小説 「雷鳴」
  • 連載小説雷 鳴(連載第三回)     (三)  酢の物のなかに小さくきざんだアナゴが、すこしだけはいっている。夕食に子どもたちにアナゴどんぶりか何か料理して食べさせたその残りらしい。 達次はそれを箸でひとつかみすると口にいれ、うまい、といって口をもぐもぐさせ、ふたたび箸をのばした。「……かわいそうに」 澄子がいってつづけた。「奥さんも子どもたちも、たいへんよ。そのひとの奥さん、いまごろ生きた心地はしな [続きを読む]
  • 連載小説 「雷鳴」
  • 連載小説雷 鳴(連載第二回)     (二)  工場で事故がおこったのは午前九時ごろだった。現場は、圧延された鋼板を、熱処理をぼどこしてやわらかくするための、連続式焼鈍ラインの、ルーパーのなかである。鋼板と鋼板をシーム溶接したその継ぎ目が、切れてしまったのである。 材料は厚みが0・三ミリでうすく、幅が八〇〇ミリのケイ素鋼帯だった。鉄板の長い帯である。  被災者の班長は、切れてしまったその鋼板を、移動式の [続きを読む]
  • 連載小説 「雷鳴」
  • 連載小説雷 鳴(連載第一回)     (一) 「今日っていう日は、まったくイヤな日だった」 工場から帰ってきた達次は、パジャマに着替えると台所へいき、食器棚からコップをつかみ取り、冷蔵庫からビールをとりだして、テーブルにむかって腰をおろすなりそういって深いため息をついた。「何かあったの、なんだか顔色がすこしわるいみたいよ」 台所にたっていた妻の澄子は、栓抜きを達次のまえに置いてから、いぶかしそうにいっ [続きを読む]
  • 連載小説 「蔦を飼う」
  • 連載小説蔦を飼う連載第十一回・最終回     (十一) 「おい、もういっぺん言ってみろ」 両手にこぶしをつかんでかれは妻を怒鳴りつけた。その叫び声で二歳の息子が激しいいきおいで泣きはじめた。「なによ、朝から大きな声をだして」 泣きわめく息子を妻は腕にひきよせながら、怒鳴りかえしてきた。三歳の息子は目に不安をうかべて事態をみまもっている。 「なにいっ」 かれは立ちあがった。妻は逃げた。「工場で三交替で働 [続きを読む]
  • 連載小説 「蔦を飼う」
  • 連載小説蔦を飼う連載第十回     (十) 「どうなってんのよ、あなたの会社は。それではまるで、脅迫じゃない。犯罪じゃない」 妻はことばに力をこめていい、鼻息をあらくして激しい呼吸をつづけた。かれは黙っていた。「……それにしても、そんな仕打ちをうけて、よくも黙っていられるわね。二年前は、会社は不況だからといって、自動車会社に派遣させられ、その前は、九州の工場へ一年間も応援に行かされたのよ。馬鹿みたい [続きを読む]
  • 連載小説 「蔦を飼う」
  • 連載小説蔦を飼う連載第九回     (九)  個人面接を妻にわかってもらうのに、かれは気の遠くなるような苦痛をおぼえた。だけど話さないことにはわかってもらえない。 妻は不機嫌な顔つきでかれの前におかれたサバの煮つけに、箸を刃物にしてつついてくる。かれはひと口ふた口み口と焼酎をすするようにのんでから、重い口でことのいきさつを語りはじめた。二人の子どもはおとなしく食事をしている。 『転勤に関する自己報告書 [続きを読む]
  • 連載小説 「蔦を飼う」
  • 連載小説蔦を飼う連載第八回     (八) 「いまあなたが、会社をやめてしまったら、あたしたち家族は、どうなるの」 妻はとんでもないといったふうに目をむいてから、それでいてかれにすがりつくようないいかたになってきた。「……どうにかなるさ、会社なんて」 投げやりないいかたでかれはことばを吐きすてた。 「どうして、突然、そんなことをいうのよ。冗談なんでしょう」「ほんきだよ。こんなこと、冗談でいえるものか」 [続きを読む]
  • 連載小説 「蔦を飼う」
  • 連載小説蔦を飼う連載第七回     (七)  工場でのたびかさなる個人面接のせいで、ツタを飼うという楽しみをかれはすっかり忘れはてていた。はじめてツタと出会ったとき、目のまえがぱっと明るくなったことも、成長していくツタにすさまじい生命の力を感じ、自分も全身の気力がみなぎってきたことも、かれはなにも覚えていなかった。  ツタだって何だって、生きているものはすべて、運命というものがあるのか [続きを読む]
  • 連載小説 「蔦を飼う」
  • 連載小説蔦を飼う連載第六回     (六) 「……なにいっ」 いきなりとてつもない大声で叫ぶと、かれは目の前のテーブルを両手でつかんで、激しい勢いでひっくり返していた。 堪えにこらえてきた今日までの怒りが、ついにいま爆発してしまったのだった。かれのこころは、火がついて燃えていた。  かれの妻は、あわててその場をとびのき、いきなりひょう変してしまったかれの態度を、部屋の隅でなじるような目 [続きを読む]
  • 連載小説 「蔦を飼う」
  • 連載小説蔦を飼う連載第五回     (五)  鉄をつくる工場の中は、ただじっとしていてさえ、ものすごくあつい。裸でいても暑いのに、ヘルメットを深々とかぶっている。ズボンの足首と両腕には、保護具をはめて閉めつけいる。両手には、ゴムライニングされたぶあつい軍手をはめて手仕事をしている。がんじがらめである。  そこへきてギャップシャーを相手どって、百キロちかい単重のステンレス鋼板を、あっちへ [続きを読む]
  • 連載小説 「蔦を飼う」
  • 連載小説蔦を飼う連載第四回     (四)  気が遠くなってしまいそうな、ものすごく暑い日たった。熱湯につかっているようだった。うだるような暑さというのは、こんな蒸し暑さをいうのかもしれない。この夏いちばんの暑さだった。 工場でかれは、仕事中に作業長に呼ばれた。夜である。八時ごろだった。「個人面接をやるから現場詰所にきてくれ」と、職場の責任者に呼び出されたのである。工場内の電話で呼ばれたと [続きを読む]
  • 連載小説 「蔦を飼う」
  • 連載小説蔦を飼う連載第三回     (三)  人間以外の生き物は、かれのアパートでは飼ってはならないことになっている。だけど、犬や猫ではなく、ツタなのだから、家主だって苦情はいうまい。 天井板を縦横に這いあるいたツタは、やがて黄緑色の小花をいっぱい咲かせてくれるにちがいない。わが家は花園になるのだ。  めずらしく上機嫌で朝食をすませると、かれは命令するような言い方で妻にいった。「わかっ [続きを読む]
  • 連載小説 「蔦を飼う」
  • 連載小説蔦を飼う連載第二回     (二)  ツタをよく見ると、ツルには人の赤子のそれのような、うぶ毛がいっぱい生えていた。若枝の葉は、たがいちがいに互生して、人の心臓のかたちをしていた。葉とむきあって、巻きひげのかわった吸盤ができていて、どうやらツルは、気根やこの吸盤で壁にはりついて、窓の外をはいあがってきたようだった。 窓の外をふかくのぞきこんでみると、気根がモルタルの壁に縦横には [続きを読む]
  • 連載小説 「蔦を飼う」
  • 連載小説蔦を飼う連載第一回     (一)  ある朝、かれが目覚まし時計で起こされて、まだすっかり醒めきらない重い頭を、早く目ざめよとばかりに拳固で強くたたいたり、いそがしく首をふってみたりしながら、ふらふらと洗面所へいったとはき、蔦(ツタ)が、だれか人が手をのばしこんできたような格好で、窓の外側から目の前に這いあがってきていた。  この二、三日、とても気になることが頭の中にすみついてし [続きを読む]
  • 連載小説 「ぼくたちの息子」
  • 連載小説ぼくたちの息子連載第十回・最終回     (十) 「ほら、あれが鉄やでえ。まっ赤やろう、鉄が溶けて、燃えているところやでえ」 足もとの石ころをひろって、思い思いに投げ合っている息子たちにぼくは語りかけていった。「……なにいっ、どこよ」 石投げ遊びの手をやすめてダイが訊いてきた。リュウは何のことかわからずに、兄を真似てきょろきょろしている。 「ほら、まっ赤に燃えているやろう。あっ [続きを読む]
  • 連載小説 「息子の友だち」
  • 連載小説ぼくたちの息子連載第九回     (九) 「……あなたって、嘘つきね」 やにわに女はそういって、ぼくの脇腹を人さし指で突いてきた。「何のこと……」 公園の砂場であそんでいる息子たちから、目をはなさずにぼくはいった。女がいった。「あの晩、別れるとき、電話をくれるといったじゃない。嘘をいったのね」「なんだ、そのことだったのか」 あの夜、女はぼくを家にさそった。「夫は出張でいないし、子ど [続きを読む]
  • 連載小説 「ぼくたちの息子」
  • 連載小説ぼくたちの息子連載第八回     (八) 「はじめて見せてもらったわ、あなたのいいお父さんぶりを……」 女がひやかすような言いかたをしてきた。「そうか、子守りをしているくらいのことで、いいお父さんだったら、男は誰でもそうだろう。ほかに、工場へいって、仕事もしてるんだ。つらいよ男は」 冗談半分にいってから、ぼくは胸ポケットからたばこをとりだして口にくわえた。 「久美さん、お元気な [続きを読む]
  • 連載小説 「ぼくたちの息子」
  • 連載小説ぼくたちの息子連載第七回     (七)  海辺の小高い公園は、かつて海だったところに、人工的につくられた山だった。芝生が植えられ、松の木が並んでいる。山すそに砂場があって、そのむこう側が多目的広場だった。  広場ではソフトボールのママさんチームが、野球帽をかぶった人のよさそうな初老の男性に、特訓をうけていた。ゴロ、フライと、ママさんたちは必死の思いで追いかけ、グローブにとりおさえ [続きを読む]
  • 連載小説 「ぼくたちの息子」
  • 連載小説ぼくたちの息子連載第六回     (六) 「イチから、いや、ゼロから勉強のやりなおしや。小学校の一年生に逆もどりや」 頭をふりながら原口がいった。「そうやなあ、大変なことになったなあ」と、ぼくはうなずいてからつづけた。「そやけど、あわてんでもええやないか。ぼちぼちケイコをしていったらええやんか。それよりも、その人差し指は、まだ治りきっていないのとちがうの」  三分の一だけになっ [続きを読む]
  • 連載小説 「ぼくたちの息子」
  • 連載小説ぼくたちの息子連載第五回     (五)  二年前のことだった。原口は工場で、圧延機に右手を噛みつかれ、四本の指を喰いちぎられてしまったのだった。 半年ちかく入院した原口は、退院のあとも通院をつづけながら、整形手術を何回かくりかえしていた。職場へ復帰してからも、常昼の勤務になって現場の雑用を左手一本でこなしながら、通院していた。  ちょうどそのころだった。原口を見舞ってぼくは、 [続きを読む]