福元早夫 さん プロフィール

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福元早夫さん: 作家 福元早夫のブログ
ハンドル名福元早夫 さん
ブログタイトル作家 福元早夫のブログ
ブログURLhttps://blogs.yahoo.co.jp/hayaofukumoto
サイト紹介文文学、小説、生きる事を追求しながら毎日書いています。
自由文         著書
1981年 「労働者文学作品集」 日本社会党刊
1985年 小説集 「工場」
1991年 小説集 「家」
1994年 小説集 「蒸気機関車を降りてから」
    (いずれも編集工房ノア刊)
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供317回 / 365日(平均6.1回/週) - 参加 2012/04/28 23:12

福元早夫 さんのブログ記事

  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第二部・第十二作 文章教室物語  名古屋の運送会社で働いている兄ちゃんから、現金書留がとどいた。親への仕送りだった。返事の手紙を書かなければならない。祖母はタケルに便箋と鉛筆をもたせてから、ならんで机がわりの食卓に座りこんだ。 「……ひと筆、申しあげます」 祖母が目をとじていう。つぎのことばが出てこない。また、一筆申しあげますと同じことをいう。咳をしてことばを絞りだそうとする [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第二部・第十一作 ヤマイモ物語 「……山にウナギを捕りにいこうや」  祖父がこういって、山クワをかついだ。タケルは麻袋のアンペラを手にした。竹の子を掘りにいくときの格好だった。  山道を登って行く。さらに道のない雑木林をかきわけていく。静寂のなかで、タケルは自分の吐く息が聞こえる。枯れ葉を踏む足音と合唱する。祖父と二部合唱である。 「……おお、おったぞ、これじゃ、これじゃ。太か [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第二部・第十作 収穫祭物語  祖父と祖母のまとまった現金収入は、秋の米の収穫だった。馬のアオが春に耕した田んぼに、家族で植えた稲が、黄金色にみのった。掛け干しの天日乾燥をすませて脱穀する。 米俵を農協へ供出して、一等米や二等米などと評価される。それに基づいて、現金が渡されてくるのだった。そのお金を手に、祖母は1年に1度の、まとまった買い物をするのだった。 「……昼めしは手持った [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第二部・第九作 乗馬物語 「……アオ、運動に行くぞ。食べてばかりしておってら、病気になるからな」  タケルは祖父が育てたニンジンを馬のアオに与えて、口にくつわをはめてから、うま屋から引きだした。 「ヒヒーン、ヒヒーン……」 メス馬のアオがいなないた。機嫌がいい。大好物のニンジンと、久しぶりの外出である。 アオの仕事は、田植え前の田起こしと代かきが主だった。それから秋になって、稲 [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第二部・第八作 運動会物語 戦争がおわって10年がすぎていた。秋になって田んぼの稲刈りがすむと、運動会だった。タケルは楽しみであったり、苦手だったりした。足がはやくなかったから、短距離走がおそい。かわりに障害物競走や長距離走が得意だった。  祖父につれられて幼いころから山道を歩いたり、狭い田んぼのあぜ道を走ったりしたせいだった。足が早いのは、遺伝だと思っていた。たしかに、親が [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第二部・第七作 新聞少年物語 「……5時じゃっど、タケル、もう起きんか。一番列車がいまにくるぞ」  囲炉裏に火を燃やして、茶をのみながら祖父が声をかけてくる。土間に降り立った祖母は、カマドでみそ汁をつくっていた。眠い目をこすりながらタケルは、井戸水をくみあげて顔を洗う。愛犬のベルが寄ってきた。  中学生になったタケルは、新聞配達をはじめた。欲しい物がった。バリカンとゴム長靴だ [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第二部・第六作 名古屋物語  タケルがこの地をはじめて遠く離れたのは、小学校の6年生だった。冬休みである。祖父と二人で、鹿児島駅から急行列車に乗った。名古屋へむかった。そこには兄ちゃんが待っている。再婚していった母の弟である。 「……汽車に乗りこんだら、もう名古屋についたようなもんじゃ」 祖父がほっとしてこういってから、列車が走り出して、祖母が手づくりした弁当を広げた。高菜の [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第二部・第五作 無病息災  六年生になってから、タケルは選ばれてソロバン部にはいっていた。郡部の大会が近づいていた。暗くなるまで練習がつづいた。 読み上げ算、見取り算、暗算と、商業高校の教師がやってきて特訓した。得意だったから、タケルは苦痛ではなかった。幼いころから、祖父がはじく五つ玉のソロバンを見てきたからだった。 「……腹がへったなあ」 学校の帰り道だった。ひとりごとをい [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第二部・第四作 俳優志願 「……大根役者とよく人が言うが、芸の下手な俳優を、あざわらっていう言葉なんじゃ」 ハクサイとミズナを、鶏肉で煮込んだナベにハシをのばしながら祖父がいった。ダイコンも入っている。「役者に年なしとことわざにありますが、役者は年をとった役でも、若い役でも、それらしくうまくやりますなあ。ほんとうの年がわからん、いつまでも若い」 祖母がハクサイをハシでつまんで、 [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第二部・第三作 桜島紀行 「……島デコンと、ワラと換えてこんか。ミカンもよかね」  祖父がこういう。  タケルは自転車の荷台に広い板を敷いて、そこに稲のワラを高く積み上げて、町中を港へむかってペタルをこいでいった。桜島大根が桟橋に並べられている。ミカンの甘酸っぱい匂いが、潮風に吹かれている。うまそうである。喉がゴックンと鳴った。  タケルは中学二年生だった。この地の加治木と桜 [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第二部・第二作 貧乏物語 中学生になってはじての遠足は、錦江湾だった。潮干狩りである。学校から須崎浜海岸まで、長い列になって歩いていった。中学校は町の三つの小学校が合流していたから、新学期の交流会のようなものだった。 目のまえに桜島がどかんと腰をすえている。入江は潮がひいて、遠浅になっている。貝をさがした。 「……どっさり掘ってこい」 こういって祖母が持たせた大きな布袋が、いっ [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第二部・第一作 初恋物語  冬の寒いときだった。子牛をうま屋から連れだして、祖父と稲田を耕した。畑にするためだった。そこからは、うそぬきの滝がみえる。水神様をはじめに、滝にやどる天の神や山の神たちが、野良仕事をはじめたタケルを見守っていた。 寒くなって、滝つぼやそこからの流れで遊ぶことはできなかった。アユをはじめに淡水魚たちも、川の流れをくだって錦江湾へともどっていった。海 [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道 第十一作 タニシ捕り 「……よか日和でよかった。走ったか、何番じゃったか。怪我をせんように走れよ」  学校の秋の運動会の、昼食のときだった。祖父は焼酎の小さい瓶をそばにおいて、タニシにハシをのばしていた。 「……あわて走らんでもよか。あぶないと思うたら、人にゆずってやれ」 タケルの競技など祖父はどうでもよかった。焼酎で顔を赤くして、タニシに箸をのばしつづけていた。タニシを食べ [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道 第十作 カニ捕り 「……あわてふためくことを、カニの穴はいりというが、カニは人の足音を聞くと、一目散で巣穴にもぐりこんでいく。忙しい。見ていておかしいのじゃ」 カニの白身を酢醤油につけて、ハシで口にしながら祖父がいった。夕食のときである。カニの甲羅をわって、ハシでつつきながら祖母が応じた。 「口の中でぶつぶつ言う人がおりますが、カニの念仏ですなあ……」 「そうよ、捕らえてカゴ [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道 第九作 ナマズ捕り 「……田植えがすんで、これでやっとひと息つけるな。どこの田んぼも、早苗が並んだ。この後は、天の神様たちの仕事じゃ。夜が明けたら、水神様に手を合わせにいく」 焼酎を手にした祖父がこういってから、ナマズの白身をうまそうに口にしている。好物のエビに、祖母がハシを伸ばしていく。 囲炉裏の火が赤く燃えて、祖父と祖母の顔を照らしている。神棚にまつられた大黒様も嬉しそう [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 連作連載小説」神への道 第八作 ドジョウ捕り  モッコを手に持って、ドジョウを捕りにタケルはでかけた。もう片方の手には、水バケツである。広大な水田は、春に植えた稲が、膝の高さに生い茂っている。夕日をあびて青々とかがやいている。 用水路は、うそぬきの滝からの水の流れである。水の神様の贈り物だった。そこにはドジョウやメダカがどっさりいるのだった。 モッコの語源は、持ち籠からきていると祖父からきいた。竹で網 [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道 第七作 ウナギ捕り 「うそぬきの滝には、ウナギの大きいのがいるそうだな。家族が好きでねえ、女房が欲しがるんだよ……」 タケルが中学生になったあるときのことだった。体育の教師が、運動場でこういってきた。夏休み前のあつい盛りだった。 それからしばらくして、タケルは水バケツに見てくれのいいウナギを3匹ほど泳がせて、持って行った。奥さんと子どもが顔をだしてきた。 「あら、でっかいわ、 [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 神への道第六作 コイのつかみ捕り  水中メガネを額にはめて、パンツひとつでタケルはうそぬきの滝へ行った。滝つぼは水面が濃い緑色をしている。足をつけると、冷めたい。潜っていくと、さらに冷えている。はじめは水面で泳いで遊んでいた。  天の神をはじめに、水の神や山の神などの、自然界の神々がやどるこの滝は、錦江湾から流れをさかのぼってきた淡水魚たちの、天然の水族館である。はじめに寄ってきたのは、メダカの [続きを読む]
  • ;連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第五作 フナのつかみ捕り  うそぬきの滝からの流れは、鈴玉川とよばれている。川の流れには、急流があちこちにある。水の流れる音は、さらさらではない。チリン、チリン、と鈴がころがっていく音である。金属に似た音がする。それで鈴玉川の名がつけられた。錦江湾へとむかって、チリン、チリンと流れていく。  フナの仲間たちは、音楽を楽しんで暮らしていた。鈴の音は、心を癒してくれる。泣き叫ぶ幼 [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第四作 アブラハヤ捕り 田んぼの用水路には、ハヤのほかにもいろんな魚がすんでいた。タケルは路傍の小川を追いかけていった。うそぬきの滝の流れをくだってきた淡水魚たちが、楽しそうに泳いでいた。狙うのはハヤである。 タケルは手でつかまえてやろうとする。すばしこい。逃げる、早い。網を仕掛けても、ひょいとからだをくねらせる。 「あばよ、子どもにつかまってたまるものか」 こういって、ひょ [続きを読む]
  • ;連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第三作 モッゴ捕り  うそぬきの滝からの川の流れには、モッゴがたくさん泳いでいた。ゆるやかな流れで、すいすいとからだをくねらせて、仲間たちと遊んでいた。 タケルは小学校の高学年になっていた。モッゴを捕るのは楽しかった。こんな面白い遊びはどこにもなかった。夏になってモッゴたちは、アユのように大きくなっていた。 「……あのモッゴたちを捕ってやろう」  タケルはフライパに油をひいた [続きを読む]
  • 連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」神への道第二作 アユ捕り  春になると、アユが海から川をさかのぼっていく。桜島山がどっかりと腰をおろした錦江湾から、大群をつくって上流へ泳いでいく。川面にアユの背びれが、銀色に光っている。太陽に反射してキラキラ輝いている。うそぬきの滝の清流へむかって、すいすいと泳いでいく。そこは淡水魚たちにとって、神への道だった。滝には自然界の神々がすんでいる。 「……アイのイオを、捕りに行かんと [続きを読む]
  • 連作連載小説 「神への道」
  • 「連作連載小説」 神への道 第一作 うそぬきの滝のカワウソ「滝へ行くなよ、行くと、カワウソにだまされるぞ。足を引っぱられて、滝つぼに沈められてしまうぞ」 この地域の農家の親たちは、こういって子どもたちが、滝つぼへ行って遊ぶことを禁じていた。滝の近くに住んでいる少年は、遊び仲間の子どもたちからそのことを聞いて、自分の目で確かめてみたくなった。 遊び仲間の子どもが少年にいった。親からきいたという。昔の [続きを読む]
  • 連載小説 「豊平先生」
  • 連載小説 豊平先生 連載第五回・最終回      (五)  豊平先生、最終の学歴が加治木中学校だったせいです。中学時代のことはすべて記憶しています。とりわけ二年生の時の担任で、農業を教えていただいた先生の授業は楽しく、それでいてすこしも気がぬけませんでした。  先生は右手にチョークを、左手にラーフルをつかんで教えられ、「肥料の三要素は、チッソ,リンサン、カリである」と黒板に書かれると、一分もたたないう [続きを読む]
  • ;連載小説 「豊平先生」
  • 連載小説 豊平先生 連載第四回      (四)  公美代と亜里子のふたりの娘が分担して描いてくれたミカンの絵をながめながら、豊平先生に私は手紙を書きはじめた。  先日は電話で失礼いたしました。豊平先生のお元気な声を耳にしてから、よし、よし、とかけ声をかけて、こぶしをつかんで毎日をがんばっています。  先生のように逞しく生きるために、自分で自分をふるいたたせています。ミカンはとても美味でした。表皮がど [続きを読む]