福元早夫 さん プロフィール

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福元早夫さん: 作家 福元早夫のブログ
ハンドル名福元早夫 さん
ブログタイトル作家 福元早夫のブログ
ブログURLhttps://blogs.yahoo.co.jp/hayaofukumoto
サイト紹介文文学、小説、生きる事を追求しながら毎日書いています。
自由文         著書
1981年 「労働者文学作品集」 日本社会党刊
1985年 小説集 「工場」
1991年 小説集 「家」
1994年 小説集 「蒸気機関車を降りてから」
    (いずれも編集工房ノア刊)
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供315回 / 365日(平均6.0回/週) - 参加 2012/04/28 23:12

福元早夫 さんのブログ記事

  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第三十三回)         (三十三) このショットブラスト、正確には「遠心投射式ショットブラスト」と呼ぶのだけど、こいつは熱間圧延されたステンレス鋼帯の表面に附着したスケールを、つまりサビを、機械的にかつ連続的に除去するための設備である。 どんな代物かというと、まあひと口にいってしまえば、ステンレス鋼板の表面に、 [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第三十二回)         (三十二) なぜだかわからないけれど、兵隊さんのことを思い出ししていると、ステンレス鋼の定義のほうは忘れてしまいそうなのに、そうではなく、そのふたつの想念が。まるで天秤棒にぶらさがった荷物のように、互いにバランスをとりながらよみがえってくる。  と同時に、ペダルを踏んでいるぼくの脚足は、 [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第三十一回)         (三十一)  頭の内と外がてんでばらばらで、いぜんちぐはぐな感覚だった。だからといって、路傍にぼやっと突っ立っているわけではなく、ペダルをこぐ脚足の力は、以前より増してぐんぐん突っ走っているのだった。  だけど、どうなっちゃっているのか、確かにどこかがおかしい。どこがおかしいのかさっぱり [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第三十回)         (三十)  夙川沿いにずっと南下していって、国道2号線にでた。信号を待っているあいだ、ふと久美子の顔がうかんだ。四畳半ひと間のアパートに、テレビや冷蔵庫と一緒にちょこんと座った久美子の心配顔が。  久美子はひと晩じゅう眠れずに待っていたのかもしれない。なにしろあいつは、まるっきり田舎者だか [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第二十九回)         (二十九)  東へむかって、甲子園をめざして、久美子の待っているアパートへ早く帰りたくて、ぼくはしゃにむに自転車をこいだ。  だから自然、ぼくは甲山につづく六甲山系からは、遠く離れていなければならないはずだった。  だのにどうしたわけか、いくら走っても、甲子園らしい町並みには出くわさないのだった [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第二十八回)         (二十八)  東へむかって、甲子園をめざして自転車をしゃにむにこいだ。きょうは日曜なのだけれど、午後三時から出勤しなくてはならない。 ぼくたちは日曜も祭日もないのだ。三百六十五日、フルに設備を操業させるために、四直三交替というアメリカ式の勤務態様で、一般のカレンダーとは無関係な、会社がつくった [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第二十七回)         (二十七) 「こんなところで、なにをしているんや」  警察官がいった。口をゆがめてにやにや笑い、ふたつの目も、仕様のない酔っ払いやなあ、と笑っていた。 「……家に帰るところや」  とこたえながら、ぼくは起きあがった。ロープで縛られていると感じたのはそうではなく、ちょうどぼくの身体が、ぴったりとは [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第二十六回)         (二十六)  ぼくたちは自転車を押して歩きはじめた。仕事帰りの飲みつかれで、みんなぐったりしている。渡辺などは頭をなげすて、めくらめっぽうに歩き、まるで自転車を相手に四つ相撲をとっているみたいだ。  野々村はいがいと元気で、唇をなめなめ、まだ飲みたらなさそうな顔をして、屋台店をのぞきこんでいる [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第二十五回)         (二十五) 「クラッチが切れた、クラッチワイヤーがぶっちぎれやがった」  と、他人ごとのように呟きながら、ぼくは左脚足を大きく引きずって歩いた。右脚足に必要以上の力をこめて歩くせいか、腰が痛く、なんだかグリスの切れかかったギアのような気がする。  ふと「ショック」ということとばが頭に浮かん [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第二十四回)         (二十四)  いま来た道を、冗談や冗談やとつぶやきながら、ぼくは歩きはじめた。酔っているのか醒めているのか、自分で自分がつかめなかった。なぜか脚足が重い。ことに左の脚足が、鉛の塊りをぶらさげているように引きずっている。クラッチが切れた。膝の蝶番がはずれたのにちがいない。  三年間の養成工 [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第二十三回)         (二十三)  女はぼくの胸にしがみついてきた。ぼくの舌は大蛇の舌のように、女の口腔をまさぐりつづけた。歯ぐきにふれた。女が歯と歯でかるく噛んだ。   するとそのとき、ぼくの脳天に一滴の冷水がしたたり落ちた。その冷えきった雫のしたたりは、誰か人のこころ、人間の魂を想わせた。  女をまさぐるぼ [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第二十三回)         (二十三)  女はぼくの胸にしがみついてきた。ぼくの舌は大蛇の舌のように、女の口腔をまさぐりつづけた。歯ぐきにふれた。女が歯と歯でかるく噛んだ。   するとそのとき、ぼくの脳天に一滴の冷水がしたたり落ちた。その冷えきった雫のしたたりは、誰か人のこころ、人間の魂を想わせた。  女をまさぐるぼ [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第二十二回)         (二十二)  商店街の入口まできたとき、女はふいにぼくの腕をすりぬけ、路地の暗がりへ逃げこんだ。商店街のシャッターはすべて降ろされていたけど、アーケードの内側は昼間のように明るかった。 「どないしたんや」  といいながらぼくは追いかけていき、女の背中に腕をまわした。女はなにもいわず、うつむ [続きを読む]
  • ;連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第二十一回)         (二十一) 「さあ、同類項、行ってこい。むこうは待っているやないか」  と、渡辺が興味津々といったいいかたをし、野々村をせきたてた。野々村は頭をつよく振ってイヤイヤをした。 「そうか、いやか。そうやったら、おれが行くぞ、かまへんのか」  堀川が子どもだましめいたいいかをした。 「ぼく、いやや。数学 [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第二十回)         (二十)  足がふらついて真っすぐ歩けなかった。まっすぐ歩いているつもりなのに、右に左に、自分でもおかしいくらいに、大きく揺れた。ゆれながら宙に浮いた感じの自分を、くそっと、ののしって歩いていると、 「だらしがなかね、先輩。倒れるぞ」といって、堀川がぼくの肩を抱きかかえた。 「だらしがなかた [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第十九回)         (十九)  駅へ行くと仲間たちが待っていた。ぼくたちは引率の先生に連れられ、家族に見送られて、日豊線の下りで鹿児島駅へいった。  駅前広場は県内のあちこちから集められた中学卒業生でいっぱいだった。そのうちぼくたちは、行き先別に選別されていきはじめた。  関東、中部、関西といったふうに区別され、車輛 [続きを読む]
  • ;連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第十八回)         (十八)  学校生活最後の年、最後の学校生活を存分に楽しむべきはずのあの年、ぼくたちは決してたのしくなかった。  五十名ばかりのぼくら男子の就職組は、いつも放ったらかしだった。三百名ばかりの高校進学組の邪魔になるというので、ぼくたちは校庭へ出ての自習だった。  運動場の雑草むしりをしたり、花壇の手 [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第十七回)         (十七) 「ああ、それにしても、人間の欲望なんて果てしないものよ」  渡辺は自分で自分のことばに酔っているらしく、また年齢に似あわぬ厭らしい舌つづみを打ち鳴らし、頭をふりながらつづけた。  ヨビコと別れたおれは、それからずうっと憂うつな日々がつづいた。ヨビコにかわるべき愛の対象、すっかり萎え [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第十五回)         (十五) 「ああ気持ちええ、出すもんだしたらスカッとした」といいながら渡辺がトイレからかえってくると、ぼくは犬の話をした。  つい三日前、ぼくのアパートの床下に忍びこんできた可愛いらしいむく犬のことを喋ったのである。  それはそれは、何とも言えない可愛いらしい子犬だった。家主との約束事を無視して、 [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第十四回)         (十四  遠いむかしのことだが、ぼくが三年生で、正月休みのときだった。三百人の養成工が同居する青雲寮のなかは、そのほとんどが帰省していて、周囲に鉄条網の張りめぐらされた木造二階建ての寮の中にくすぶっているのは、一棟から六棟まで、ほんの数えるほどしかいなかった。  そんな中に、ぼくも堀川もいたわけ [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第十三回)       (十三)  そんな仲間たちだというのに、工場を離れて酒店の店先で、二級酒のコップ酒をつかめば、愚痴というもっとも消極的な自己の表現の方法をアルコールにまかせ、ぐだぐだ本音を吐きはじめるのである。  ところが同じアルコールでも、忘年会やなにやら名目をあてつけた宴会のときはまた違うらしく、作業長、 [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第十二回)       (十二)  インザムードにはじまってハイソサエティへと流れ、マッザナイフなどの浮き立つスウィングジャズがやんで、こんどはなめらかなクラリネットソロが、夏の夜の海面をはしるさざ波のような、ムーンライトセレナーデを奏ではじめた。  ひとつふたつ照明が消され、エリートの内部はピンクムードにかわった。 [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第十一回)       (十一)  ま、そんなわけで、おれは働きながら夜中にこっそり勉強し、三度目の正直に挑戦していったわけだ。さすが三度目ともなれば落ち着いたもので、試験場へいっても心臓に毛が生えた気分でおられたよ。冷静そのものといった感じだった。  いま考えると、その冷静さが過ぎたんやろうなあ。こんどは慌てること [続きを読む]
  • 連載小説 「蒸気機関車を降りてから」
  • 連載小説 小説集「蒸気機関車を降りてから」 蒸気機関車を降りてから (連載第十回)       (十)  さっきもいうたように、魚屋のおっちゃんおばちゃんは神様みたいなひとやったから、 「大学は九州のどこか近くの学校を選んだらどうや」  こういうたけど、おれは関西の大学へいきたい、いうた。もう子供やないんやから、自力で学問をしていきたい、こういうたんや。すると二人は、「それもよかろう」と賛成して [続きを読む]