福元早夫 さん プロフィール

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福元早夫さん: 作家 福元早夫のブログ
ハンドル名福元早夫 さん
ブログタイトル作家 福元早夫のブログ
ブログURLhttp://blogs.yahoo.co.jp/hayaofukumoto
サイト紹介文文学、小説、生きる事を追求しながら毎日書いています。
自由文         著書
1981年 「労働者文学作品集」 日本社会党刊
1985年 小説集 「工場」
1991年 小説集 「家」
1994年 小説集 「蒸気機関車を降りてから」
    (いずれも編集工房ノア刊)
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供304回 / 365日(平均5.8回/週) - 参加 2012/04/28 23:12

福元早夫 さんのブログ記事

  • 連載小説 「工場のトタン屋根の下で」
  • 連載小説・小説集「工場」から 工場のトタン屋根の下で (連載第七回)  第二章 仕事のうち       (一)  真夜中、午前一時ごろだった。ぼくは便所へいった。仕事のうちなのだから、急がず慌てず、ぼちぼちと工場のトタン屋根の下をあるき、ゆっくりと外へでた。  星がとてもきれいだった。こんなことはめずらしいことだ。星のまばたきを見せてもらえることができるなんて、めったにない。  一年のうち [続きを読む]
  • 連載小説 「工場のトタン屋根の下で」
  • 連載小説・小説集「工場」から 工場のトタン屋根の下で (連載第六回)  第二章 仕事       (三) 「おーい、サルー。おーい、さるよ」  班長がこちらに手招きしながら叫んでいた。いま仕上がった製品を、ぼくがクレーンで吊り上げて、つぎの工程である調質圧延機の現場へはこんでいってきてからのことだった。 「おーい、サルー」  班長は大声でぼくを呼んでいるのだった。だけどぼくは、返事をしなかっ [続きを読む]
  • 連載小説 「工場のトタン屋根の下で」
  • 連載小説・小説集「工場」から 工場のトタン屋根の下で (連載第五回)  第二章 仕事       (二)  ぼくは小便をしおえ、チャックを上へひっぱりあげながら、春の小川を口笛でうたった。股間がすっかり楽になって、腰がとてもかるい。なんだか自分が、ずっとむかしの、小学生だったころのような気持ちになっている。  ションベンは泡とともに水に流されていった。現行犯でつかまらないかぎり、絶対 [続きを読む]
  • 連載小説 「工場のトタン屋根の下で」
  • 連載小説・小説集「工場」から 工場のトタン屋根の下で (連載第四回)  第二章 仕事       (一)  工場でのぼくたちの仕事は、ステンレス鋼帯の熱処理と酸洗が主なしごとである。  二十段ロールの噛み合った冷間圧延機で、さまざまな厚みに圧延されたステンレス鋼帯は、そのままでは加工硬化しており、製品にすることはできない。だから、熱処理をほどこしてやわらかくして、表面に附着した酸化被膜を酸 [続きを読む]
  • 連載小説 「工場のトタン屋根の下で」
  • 連載小説・小説集「工場」から 工場のトタン屋根の下で (連載第三回)  第一章 ミーティング       (三) 「……始末書をとられたふとどきなやつは、巡回中の工場長に、現行犯でつかまったらしい」  交替時間がせまってきていることなどすこしも気にせずに、作業長はつづけた。 「つかまった相手が工場長だったから、大変なことになった。みんながおこられた。部長が工場長に怒られ、所属長である課長が [続きを読む]
  • 連載小説 「工場のトタン屋根の下で」
  • 連載小説・小説集「工場」から 工場のトタン屋根の下で (連載第二回)  第一章 ミーティング       (二) 「……みんなもおぼえがあるだろう、工場の機械に小便を垂れたことがあるやろう」   作業長がいった。親が子を叱るいいかたになってきた。 「わしも何度か目撃したことがあるが、いままでは、たかが小便くらいなことで、という気があったから、何もいわず、だまってきたのだが」  こういってから [続きを読む]
  • 連載小説 「工場のトタン屋根の下で」
  • 連載小説・小説集「工場」から 工場のトタン屋根の下で (連載第一回)  第一章 ミーティング       (一)  工場でのぼくたち仕事は、ミーティングからはじまる。夜中、十一時十分前だった。工場のトタン屋根の下を、両手ににぎりこぶしをつかんで、ぼくは一所懸命に走っていった。これから夜勤なのである。更衣室であわてて作業服に着がえ、ヘルメットをかぶると、すぐさま工場の中を走りはじめたのであ [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • むこう側の世界 (連載第十一回・最終回)       (十一) 「あほやで、あいつら」下浦がいった。「ひと晩じゅう気になって、こっちは仕事も手につかなんだがな」 「そうか……」ぼくがいった。「ついさっきまで、わしはすっかり忘れていたよ」  夜がすっかり明けきってしまい、工場の屋外の、酸類の貯蔵タンクへふたたび仕事にやってくるまで、ほんとうにぼくは忘れてしまっていた。忘れていたというよりも、ひと [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • むこう側の世界 (連載第十回)       (十) 工場のむこう側の河口は、栓をぬいた風呂水のように潮がひいていって、ヘドロをかぶった土肌が、ただれきった膿みたいに浮かびあがってきていた。さむい。夏がちかいというのに、空気がひんやりとしていた。 夜明けとともに、霧がでてきていた。湿りきったつめたい霧が、重く低く垂れさがってきており、工場のむこう側の世界が、霧のベールにおおわれて、焦点の合 [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • むこう側の世界 (連載第九回)       (九)  三人は呼吸をあわせて、焼けた赤い鉄パイプをひっぱりつづけた。パイプとパイプの継ぎ目が出てきたら、そこをぼくが切断する。熱い。ものすごくあつい。周囲は50度ちかい温度である。ただじっとしているだけでもあついのに、全身で力仕事をしているのだからなおさらだった。  炉の内部から、炎のような熱風がぼくらにむかってくる。逃げ出したいくらいにあつ [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • むこう側の世界 (連載第八回)       (八)  午前四時ごろだった。夜明けまえである。ぼくが現場詰所兼食堂で、三十分の休憩を終え、ふたたび現場へもどってきたとき、ラインが停止していた。何か事故がおこったのである。  ぼくたちのラインは連続操業だから、食事も休憩も、一日の八時間のうちに、一人ひとり交替でとらなくてはならない。つぎの休憩の番の弓場と交替しようとして、ラインの入側へやってきとき [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • むこう側の世界(連載第七回)       (七) メモ用紙をつかんでぼくは、酸洗槽のタラップをラインの出側の方へとくだっていった。ラインの中央部のぼくの仕事は、一人作業だから、ふいに得体の知れない不安をおぼえることがある。明け方、四時、五時ごろ、わけもなくさびしくなってきて、あわてて出側の、人のいるところへ突っ走っていくことがある。 幻聴や幻覚にそわれたときがそうだ。心臓を鋭い鉤のようなもので [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • むこう側の世界(連載第六回)       (六) 桜島のみえる太陽の豊かな、南の国の中学校を卒業し、集団就職列車にのりこんで、蒸気機関車にひっぱりこまれて、この関西へぼくがやってきたのは15歳のときで、16年前ことである。その日からぼくは、製鉄所の技能訓練生で、養成工とよばれた。全寮制の軍隊式のきびしい規律を強いられ、鉄をつくるための知識と技術を3年間たたきこまれた。18歳になったぼくが、工場 [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • むこう側の世界 (連載第五回)       (五) 製鉄工場の作業を大きく分類すると、南アメリカやアフリカから運んできた鉄鉱石を原料に、溶鉱炉で銑鉄をつくる製銑作業。平炉や転炉や電気炉などで、鋼塊をつくる製鋼作業。その鋼塊を、加熱して圧延などの加工をほどこして、製品をつくる熱間圧延作業の三大部門に分けることができる。 ステンレス鋼板の製造工程である。まず50トンの巨大な電気炉の中に、原料 [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • 連載小説・小説集「工場」から むこう側の世界 (連載第四回)       (四) 「……どうや、調子は」と背後から声がかかってきた。班長だった。ワイヤブラシでもはえているような濃いひげ面を、班長はぼくにこすりつけるような格好でアンペア計をのぞきこんできた。 「まあまあですわ……」と、ぼくは大声で叫んだ。どらどらといたふうに、班長はさらにふかくのぞきこんできて、粉塵に汚れた計器を手でぬぐってやり [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • 連載小説・小説集「工場」から むこう側の世界 (連載第三回)       (三) 工場の内部は、天井で水銀灯が煌々とかがやき、コバルト色のトタン屋根の下は、昼間のように明るい。あちらこちらで、騒音が渦をまいている。モーターは飛行機のエンジン音のように、ただひたすら唸りつづけている。プシュッ、プシュッ、ダッダッダー、とエアーシリンダーが破裂しつづけて、銃声のようにとどろく。すごくうるさい。   [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • 連載小説・小説集「工場」から むこう側の世界 (連載第二回)       (二)  むこう側の、海へとつづく一本道は、河口で直角にちかい急カーブになっている。ガードレールがついていない。闇の中を、海の方からこちら側へとのぼってやってきた場合、危険である。その急カーブを、ぼくたちは、罠と呼んでいる。  以前、小型トラックが海に落ちた。さいわい干潮時だったので、死人はでなかった。あそこが罠になって [続きを読む]
  • 連載小説 「むこう側の世界」
  • 連載小説・小説集「工場」から むこう側の世界 (連載第一回)       (一)  午前一時ごろだった。硫酸、硝酸、弗化水素酸、と、酸類の貯蔵されている工場の屋外の、鉛製のでっかいタンクのデッキのうえでぼくは仕事をしていた。闇のなかでの一人作業である。水銀灯の明かりが背後から照らしてくれている。  だけど、闇が、ぼくの両方の肩を強く押さえつけている。それは、ゴム製の長い手袋をはめて仕事をしてい [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  • 連載小説・小説集「工場」から 足並みをそろえて (連載第十四回・最終回) 波うちぎわを歯をくいしばって走りつづけた。寄せてくる波が足をはげましてくれている。海はことばをもっていて、波と、波の音がそれだ。一定のリズムを保ちつづけながら、すごく冷静に語りかけてくる。  この海のずっとむこうには、マーシャル列島ルオットがある。親父よ、あなたも、さあいけ、それ行け、と誰かにかけ声をかけられたのか。死の世界 [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  • 連載小説・小説集「工場」から 足並みをそろえて (連載第十三回)  全力疾走のグループは、あと残り少なくなっていた。ずっとむこうに、あらたなグループがつくられようとしている。こちらがわに、日の丸の旗が用意されている。騎馬戦は、どうやら、あの旗を、ふたてに分かれて奪い合うことになるのらしい。 そのむこう側で、文化体育部長が、部員たちに指図して、砂をもりあげさせている。相撲の土俵づくりをしているのだ。 [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  • 連載小説・小説集「工場」から 足並みをそろえて (連載第十二回)  ずっとむこうで、全力疾走の第一グループがスタートした。賃金対策部長がホイッスルを吹いたみたいだ。仲間たちは砂をはげしくけって、われさきにと突っ走っていく。あわてすぎるあまり、前のめりにつんのめったものもいた。それを見て、こちらも足がよろけた。  仲間たちは鉄鋼労連の旗をめがけてしゃにむに突っ走って行き、その旗の下までたどりつくと、 [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  •  連載小説・小説集「工場」から 足並みをそろえて (連載第十一回)  ぼくが中央委員の立候補届けにいったとき、選管は、作業長の許可は得ているんだろうな、といった。なんのことですか、とこちらはとぼけてやった。あくる日、作業長に呼ばれ、勝手に立候補されたら困る、と怒られた。そして、他に適任者を考えているから、とりさげろ、とつめ寄られた。だけど、ぼくは受けつけなかった。そのすぐあとに、こんどは係長に呼 [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  •  連載小説・小説集「工場」から 足並みをそろえて (連載第十回) 「お元気そうですね……」とぼく。 「そう、たいへんお元気です」と、他人ごとのように野中。そのいいかたがおかしく、ぼくは笑った。相手もわらいながら、なにをしにきた、と訊く。ぼくは用件をいい、手伝ってくれませんか、と頼みこんだ。しゃあない、と野中。知らん人じゃなし、かつてはいろいろお世話になった人や、と冗談口調でいいながら、資材置場へと [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  • 連載小説・小説集「工場」から 足並みをそろえて (連載第九回)  ふっと、野中の顔が頭にうかんだ。四年前まで、野中はぼくらの書記長だった。まじめで、一般組合員からの信頼はもっともあつく、戦闘的な役員だった。勤続二十二年で平工員の野中の口ぐせは、一家四人、死なん程度のゼニコがあったらそれでいい、ということだった。他の役員連中とはまったく逆だった。ぼくにとって野中は、大変な魅力だった。  四年前 [続きを読む]
  • 連載小説 「足並みをそろえて」
  • 連載小説・小説集「工場」から 足並みをそろえて (連載第八回) 「こらーっ、そこの赤いの」  と、後方でハンドスピーカーが叫んだ。こちらは振りむく気力などない。 「なんじゃい、その不細工な格好は。昨夜の元気はどこへいった、ええっ」  組合長はもう走っていないみたいだ。ぼくはなかば目をとじ、歯をくいしばった。 「がんばらんかい、もっと顎をひけ。顎を」  ハンドスピーカーが怒鳴った。  組織部長はこ [続きを読む]