千住 さん プロフィール

  •  
千住さん: Interplay
ハンドル名千住 さん
ブログタイトルInterplay
ブログURLhttp://interplay2.jugem.jp/
サイト紹介文創作BL小説Believe in Springを連載中。地味な近親相姦ホームドラマです。弟×兄。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供64回 / 258日(平均1.7回/週) - 参加 2013/01/19 02:31

千住 さんのブログ記事

  • You Must Believe in Spring 15
  •  星一が和之と会話してのち、兄弟三人でもう一度話し合う機会はなかった。 十一月の最期の日曜日、睦美が岸田教授の家で今後のことを話し合いたいと和之に伝えた。和之はすぐに承知した。 和之がそのことを星一に伝えたのは、その週の金曜日のことだった。星一は弟たちに連絡を取って、もう一度話し合いをしようとふたりに告げたが、三人の予定を合わせることができなかった。星一は両親が離婚するかもしれないという不安を抱え [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 14
  •  日曜日の夕方、星一は声楽のレッスンのために家へ帰ってきた理月とともに、リビングで晴也を待っていた。「親父は最近どうなんだ?」「あまり家にいないよ。夕食も外で食べてくるし、俺ともあまり顔を合わせない」 リビングの三人掛けのソファーの端と端に座って、ふたりはコーヒーを飲んでいた。TV のニュースの音が、ふたりのあいだを流れていく。「親父は立波と会っているのか」「理誠さんは会っていないと言ってたよ」 玄 [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 13
  •  仕事を定時に終えた内山は、南大森の改札口の出口に立っていた。時刻は六時半を回り、あたりは真っ暗になっていた。飲み屋街のネオンが駅前を明るく彩っている。昼間は小春日和だったが、日が翳ってからは気温が低くなってきた。内山はコートの襟に首を縮めて、電車から降りて来た人波を見下ろした。 ――相談したいことがあるので、酒でも飲みに行きませんか。 星一の父親の和之からショートメールが来たのは三日前のことだっ [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 12 −R-18−
  •  七時ごろに仕事を終えた和之が理誠に電話をかけると、理誠は十五分ほどで和之の会社へ車で迎えに来た。「疲れているみたいだな」 理誠は車に乗り込んだ和之の顔を見るなりそう言った。「君のせいで一家離散だ。眠れなくもなるよ」 星一から友人の家に泊まるとメールが来ていた。自宅にだれもいないという状態はいままでありえないことだった。理誠と会うのも億劫だったが、空っぽの家に帰るのはもっと憂鬱だった。和之は鼻の頭 [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 11
  •  星一は大学の午前中の講義に出ると、学食で昼食を食べて駅へ向かった。 理月の住んでいる県外の街は、在来線で三時間の距離にあった。星一はできれば日帰りで家へ帰りたかったが、電車の終電の時間が早かったので日帰りを諦めた。父親へ、今日は友人の家に泊まるとメールを送った。星一は理月の家に泊まることを正直に父親へ言えなかった。 星一は一昨日の落ち込みをいまだに引きずっていた。電車の規則的な揺れに身をゆだねて [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 10
  •  次の日、睦美は学校から帰った晴也を連れて岸田の家へ向かった。 晴也には、昨日塾から帰ったあとで睦美が事情を説明した。その後星一とも話をしていたようで、晴也は睦美の体調を気にかけながらも黙って睦美についてきた。 電車に揺られながら、睦美はふと、晴也の名前を変えた日のことを思い出していた。 子供たちの名前は、和之が命名した。親戚とは誰とも付き合いがなく、子供の名前をいっしょに考えてくれるような親しい [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 9
  •  睦美が夕食の準備をしているとき、家の電話が鳴った。 時間は七時を回っていたが、家には睦美以外のだれも帰ってきていなかった。睦美は慌てて手を洗ってタオルで拭くと、居間のローボードの上にある電話の子機を取った。「はい」「皆川さんのお宅ですか」 落ち着いた男性の声だった。「立波理誠の弟の智実と申します」「ああ……お世話になっております」 睦美は多少戸惑いながら電話口で礼をした。理誠に弟がい [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 8
  •  立波医院で処方された薬を飲むと、苛立ちが治まった。寝るまえに頭を巡る考えごとがなくなり、ベッドで目を閉じるとすぐに朝まで眠れるようになった。不眠症が薬で解決するなら、もっと早く病院に行けばよかったと星一は思った。 自分が同性愛者だと告白しても、医師たちは何の反応も示さなかった。心療内科へ行ったら自分が規格外品だと確定するのではないかと星一は思っていたが、自分の周囲はなにも変わらなかった。 星一が [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 7
  •  美和と映画に行った次の日、星一の身体に異変が訪れた。 朝、二階から一階へ降りようとして階段を踏み外した。ダイニングで朝食を食べようとして箸を取り落とす。湯呑みを取ったつもりが空を摑み、ふたたび湯呑みを取ろうとしてお茶をテーブルに零してしまった。「顔色が悪いけど、大丈夫?」 洗い物をしていた母親に心配される。そのときようやく、星一は自分の感覚が狂っていることに気づいた。身体に膜が貼り付いているよう [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 6
  •  十一月のはじめの日曜日の午前中、和之は駅前のコーヒーショップで理誠を待っていた。 混み合ったコーヒーショップのレジでブレンドを頼みながら店内を見回す。カウンター席に座っていた理誠が和之に気づいてにこやかに手を挙げた。 レジで会計を済ませて理誠のもとへ歩いていく。和之はこのまま店の外へ行ってしまいたいという衝動を抑えた。「星一くんは何か言ってた?」「何も言ってなかったよ」 理誠のとなりの席に腰を下 [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 5
  •  日曜日の夕方、和之は小料理屋で理誠と待ち合わせをした。 理誠はすでに店内の奥の座敷で和之を待っていた。理誠が手を挙げる。 和之は数人の客がいるテーブル席を通り過ぎると、靴を脱いで座敷に上がった。 理誠は白いシャツに紺のスーツ姿で、ネクタイは締めていなかった。座敷のいちばん奥の座卓に陣取った理誠は、壁際によりかかって座っている。「勝手にお任せで頼んだから」 和之がすこし緊張した面持ちで理誠の向かい [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 4
  •  次の週の日曜日、星一は内山に誘われてドライブへ行くことになった。 内山は実家で借りたという赤いメタリックの軽自動車で星一を迎えに来た。座席を一杯に下げて運転席に納まる内山は窮屈そうだった。「蒼悟さんって車運転できたんですね」「たまに運転しないと忘れるんだよ」 車はけやき並木を下ると、海際の幹線道路を右へ曲がっていった。住宅団地を抜けて、狭い砂浜の海岸と並走していく。 穏やかに晴れた空は高く、砂浜 [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 3
  •  星一がふたたび大学へ行くことができるようになったのは、十月の始めだった。 父親が会社へ出社しはじめたのも同じ時期だった。父親は、近所の洋菓子店の菓子折りを持って、緊張した面持ちで会社へ行った。が、すぐにいつもの調子を取り戻したのか、明るい表情で会社へ向かうようになった。 星一は学部の教官室へ挨拶をすませると、一限目の憲法学が行われる大教室へ行った。窓際の手前の席に腰を下ろす。授業が始まるまで本を [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 2
  •  睦美は星一を伴って岸田教授の家を訪れた。 岸田教授の妻の遺影に線香をあげると、ふたりはすこし緊張した表情の岸田と向かい合った。「お借りしていた二百万円です。ありがとうございます」 睦美は分厚い封筒をテーブルに置いて、岸田のほうへ滑らせた。岸田の目鼻立ちのはっきりした、上品な顔立ちに、失望の色が浮かぶ。「お金を返して、お家は大丈夫ですか」「主人も来週から職場に復帰できるようになりましたので、大丈夫 [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 1
  •  主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」 主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。                             創世記4・15-16  母親から次男が週末家に帰ってくると聞いて、皆川星一は顔をしかめた。「理月が進路を [続きを読む]
  • 炎獄について あとがき
  •  『炎獄』という話はこれで終わりです。ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。 今回は最初から最後までホームドラマでした。R-18が一度もつかず、ものすごく地味に終わりました。R-18が途中まではあるかな〜と思っていたのですが、最後でないよ! ということになりました。風任せに小説を書いていると、自分でもわからない現象が多々あります。  こんな地味な話ですが、感想や反応をいただいてありがとうござい [続きを読む]
  • 炎獄10(最終)
  •  星一が部屋で文庫本を読んでいると、スマートフォンの着信音が鳴った。 電話は岸田教授からだった。星一が電話に出て岸田に挨拶をする。「元気でやっている? お父さんの調子はどうですか」「父は落ち着いているのですが、俺が旅行先で事故に遭いました」 星一がアラスカでの遭難の顛末を話すと、岸田は驚いたように声を震わせた。「そんなことがあったんですか。今はもう大丈夫?」「怪我は治りかけているのですが…&h [続きを読む]
  • 炎獄9
  •  星一が目を醒ますと、狭いベッドの上で点滴をされていることに気づいた。ベッドの傍らに腰を下ろしていた添乗員が、星一に声をかける。「皆川さん、大丈夫ですか」 頬と耳がジンジンと痛む。自分はオーロラの観測中に捻挫をして頭を打ったのではなかっただろうか。星一はベッドから起き上がろうとした。添乗員が星一を助け起こす。「頭の傷も足の捻挫も軽症だそうです。雪に埋もれていたので、軽い低体温症を起こして病院に搬送 [続きを読む]
  • 炎獄8
  • 「今回のバイト代で、かなりお金が貯まりそうなんです」 星一は飲みかけのビールの缶をローテーブルに置きながら、ソファの下に座っている内山を見下ろした。「いくら?」「五十万は越えると思います」「いい金額だな」 内山が缶ビールを飲みながら、俺になにか買ってくれ、と軽口を叩く。「母が自分のために遣えって言うんですが、なにを買えばいいのかわからなくて」「欲しいものはないのか?」「ありません。だから貯まるんで [続きを読む]
  • 炎獄7
  •  数日後の日曜日の午後、星一は最寄りの駅まで内山を迎えに行った。「スーツは来てこなかったぞ」「いいんじゃないですか」 内山は薄い青のシャツとグレーのパンツを履いてきていた。駅からけやき並木へと抜ける道を並んで歩く。「付き合ってる人の家族に会うのは初めてだよ。星一のお父さんは仲間みたいだから、まだいいけど」 普通なら殴られに行くようなものだな、と額の汗をハンカチで拭きながら内山がぼやく。「嫌な緊張を [続きを読む]
  • 炎獄6
  •  アルバイトが休みの日の午後、星一がエアコンをかけた自分の部屋で文庫本を読んでいると、ドアをノックする音がした。「星一? 入っていいか?」「どうぞ」 父親が理月の部屋を通って星一の部屋へ入ってくる。和之はお茶の入った湯呑み茶碗を盆に載せていた。自分でお茶を淹れたらしい。星一がローテーブルに腰を下ろすと、和之は星一の湯呑みを前に置いた。「家にお金を入れてくれてありがとう。お母さんが、近いうちに星一へ [続きを読む]
  • 炎獄5
  •  星一が家庭教師のアルバイトを終えて内山の家に帰ってくると、内山は風呂上りの格好でソファーの下に座ってビールを飲んでいた。「スマホを家に忘れていっただろう。着信が来てたぞ」「あ、すみません……」 ローテーブルに置かれていたスマートフォンを、内山が星一へ渡した。メールが二通届いている。母親と晴也からだった。 メールの文面を読んで、星一は考え込むように首を右へ傾けた。「何かあったか?」「弟 [続きを読む]
  • 炎獄4
  •  水曜日の午後、和之が一階の和室で横になっていると、家の電話が鳴りひびいた。 和之以外の人間は、みな外出して家にいなかった。和之は布団から起き上がると、ぼんやりした頭で玄関に設置された電話のもとへ向かった。 和之が電話に出る。自分の名前を呼ぶ声を聞いた瞬間、和之の身体は竦み上がった。「なんの用だ」「声は元気そうだな」 立波理誠は電話口で軽い笑い声をあげた。「君が体調を崩したって、知り合いから聞いて [続きを読む]
  • 炎獄3
  •  星一は、睦美がレジ打ちのパートをしているスーパーマーケットを訪れた。 星一がレジ打ちをする睦美の前にスーパーの惣菜を置くと、睦美は事務的な顔を崩さずに星一へ告げた。「もうすぐ仕事を上がるから、スーパーの裏で待っていて」「わかりました」 星一は清算を済ませた惣菜の袋を受け取ると、自動ドアを出てスーパーの裏手へ回った。 従業員出口の横で星一は母親を待った。駐車場には夕食の買い物をする人々の車が、ひっ [続きを読む]
  • 炎獄2
  •  星一が内山のアパートに泊まるようになって、一週間が過ぎた。 星一は、一週間前に母親へ友人のところに泊まるとメールをして以来、一度も家に連絡をしなかった。その間、メールが来たのは晴也だけだった。 ――お父さんたちも心配しているから、家に帰ろうよ。 自分のせいで自殺しかけた父親は、自宅療養中で家にいる。父親は、家のなかで星一と顔を合わせても、星一を空気のように無視していた。星一も、父親とどう接すれば [続きを読む]