千住 さん プロフィール

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千住さん: Interplay
ハンドル名千住 さん
ブログタイトルInterplay
ブログURLhttp://interplay2.jugem.jp/
サイト紹介文創作BL小説Believe in Springを連載中。地味な近親相姦ホームドラマです。弟×兄。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供53回 / 190日(平均2.0回/週) - 参加 2013/01/19 02:31

千住 さんのブログ記事

  • You Must Believe in Spring 4
  •  次の週の日曜日、星一は内山に誘われてドライブへ行くことになった。 内山は実家で借りたという赤いメタリックの軽自動車で星一を迎えに来た。座席を一杯に下げて運転席に納まる内山は窮屈そうだった。「蒼悟さんって車運転できたんですね」「たまに運転しないと忘れるんだよ」 車はけやき並木を下ると、海際の幹線道路を右へ曲がっていった。住宅団地を抜けて、狭い砂浜の海岸と並走していく。 穏やかに晴れた空は高く、砂浜 [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 3
  •  星一がふたたび大学へ行くことができるようになったのは、十月の始めだった。 父親が会社へ出社しはじめたのも同じ時期だった。父親は、近所の洋菓子店の菓子折りを持って、緊張した面持ちで会社へ行った。が、すぐにいつもの調子を取り戻したのか、明るい表情で会社へ向かうようになった。 星一は学部の教官室へ挨拶をすませると、一限目の憲法学が行われる大教室へ行った。窓際の手前の席に腰を下ろす。授業が始まるまで本を [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 2
  •  睦美は星一を伴って岸田教授の家を訪れた。 岸田教授の妻の遺影に線香をあげると、ふたりはすこし緊張した表情の岸田と向かい合った。「お借りしていた二百万円です。ありがとうございます」 睦美は分厚い封筒をテーブルに置いて、岸田のほうへ滑らせた。岸田の目鼻立ちのはっきりした、上品な顔立ちに、失望の色が浮かぶ。「お金を返して、お家は大丈夫ですか」「主人も来週から職場に復帰できるようになりましたので、大丈夫 [続きを読む]
  • You Must Believe in Spring 1
  •  主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」 主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。                             創世記4・15-16  母親から次男が週末家に帰ってくると聞いて、皆川星一は顔をしかめた。「理月が進路を [続きを読む]
  • 炎獄について あとがき
  •  『炎獄』という話はこれで終わりです。ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。 今回は最初から最後までホームドラマでした。R-18が一度もつかず、ものすごく地味に終わりました。R-18が途中まではあるかな〜と思っていたのですが、最後でないよ! ということになりました。風任せに小説を書いていると、自分でもわからない現象が多々あります。  こんな地味な話ですが、感想や反応をいただいてありがとうござい [続きを読む]
  • 炎獄10(最終)
  •  星一が部屋で文庫本を読んでいると、スマートフォンの着信音が鳴った。 電話は岸田教授からだった。星一が電話に出て岸田に挨拶をする。「元気でやっている? お父さんの調子はどうですか」「父は落ち着いているのですが、俺が旅行先で事故に遭いました」 星一がアラスカでの遭難の顛末を話すと、岸田は驚いたように声を震わせた。「そんなことがあったんですか。今はもう大丈夫?」「怪我は治りかけているのですが…&h [続きを読む]
  • 炎獄9
  •  星一が目を醒ますと、狭いベッドの上で点滴をされていることに気づいた。ベッドの傍らに腰を下ろしていた添乗員が、星一に声をかける。「皆川さん、大丈夫ですか」 頬と耳がジンジンと痛む。自分はオーロラの観測中に捻挫をして頭を打ったのではなかっただろうか。星一はベッドから起き上がろうとした。添乗員が星一を助け起こす。「頭の傷も足の捻挫も軽症だそうです。雪に埋もれていたので、軽い低体温症を起こして病院に搬送 [続きを読む]
  • 炎獄8
  • 「今回のバイト代で、かなりお金が貯まりそうなんです」 星一は飲みかけのビールの缶をローテーブルに置きながら、ソファの下に座っている内山を見下ろした。「いくら?」「五十万は越えると思います」「いい金額だな」 内山が缶ビールを飲みながら、俺になにか買ってくれ、と軽口を叩く。「母が自分のために遣えって言うんですが、なにを買えばいいのかわからなくて」「欲しいものはないのか?」「ありません。だから貯まるんで [続きを読む]
  • 炎獄7
  •  数日後の日曜日の午後、星一は最寄りの駅まで内山を迎えに行った。「スーツは来てこなかったぞ」「いいんじゃないですか」 内山は薄い青のシャツとグレーのパンツを履いてきていた。駅からけやき並木へと抜ける道を並んで歩く。「付き合ってる人の家族に会うのは初めてだよ。星一のお父さんは仲間みたいだから、まだいいけど」 普通なら殴られに行くようなものだな、と額の汗をハンカチで拭きながら内山がぼやく。「嫌な緊張を [続きを読む]
  • 炎獄6
  •  アルバイトが休みの日の午後、星一がエアコンをかけた自分の部屋で文庫本を読んでいると、ドアをノックする音がした。「星一? 入っていいか?」「どうぞ」 父親が理月の部屋を通って星一の部屋へ入ってくる。和之はお茶の入った湯呑み茶碗を盆に載せていた。自分でお茶を淹れたらしい。星一がローテーブルに腰を下ろすと、和之は星一の湯呑みを前に置いた。「家にお金を入れてくれてありがとう。お母さんが、近いうちに星一へ [続きを読む]
  • 炎獄5
  •  星一が家庭教師のアルバイトを終えて内山の家に帰ってくると、内山は風呂上りの格好でソファーの下に座ってビールを飲んでいた。「スマホを家に忘れていっただろう。着信が来てたぞ」「あ、すみません……」 ローテーブルに置かれていたスマートフォンを、内山が星一へ渡した。メールが二通届いている。母親と晴也からだった。 メールの文面を読んで、星一は考え込むように首を右へ傾けた。「何かあったか?」「弟 [続きを読む]
  • 炎獄4
  •  水曜日の午後、和之が一階の和室で横になっていると、家の電話が鳴りひびいた。 和之以外の人間は、みな外出して家にいなかった。和之は布団から起き上がると、ぼんやりした頭で玄関に設置された電話のもとへ向かった。 和之が電話に出る。自分の名前を呼ぶ声を聞いた瞬間、和之の身体は竦み上がった。「なんの用だ」「声は元気そうだな」 立波理誠は電話口で軽い笑い声をあげた。「君が体調を崩したって、知り合いから聞いて [続きを読む]
  • 炎獄3
  •  星一は、睦美がレジ打ちのパートをしているスーパーマーケットを訪れた。 星一がレジ打ちをする睦美の前にスーパーの惣菜を置くと、睦美は事務的な顔を崩さずに星一へ告げた。「もうすぐ仕事を上がるから、スーパーの裏で待っていて」「わかりました」 星一は清算を済ませた惣菜の袋を受け取ると、自動ドアを出てスーパーの裏手へ回った。 従業員出口の横で星一は母親を待った。駐車場には夕食の買い物をする人々の車が、ひっ [続きを読む]
  • 炎獄2
  •  星一が内山のアパートに泊まるようになって、一週間が過ぎた。 星一は、一週間前に母親へ友人のところに泊まるとメールをして以来、一度も家に連絡をしなかった。その間、メールが来たのは晴也だけだった。 ――お父さんたちも心配しているから、家に帰ろうよ。 自分のせいで自殺しかけた父親は、自宅療養中で家にいる。父親は、家のなかで星一と顔を合わせても、星一を空気のように無視していた。星一も、父親とどう接すれば [続きを読む]
  • Drowning(番外編) ―R-18―
  •  目が醒めた瞬間、見ていた夢が意識から飛び去った。「大丈夫か?」 皆川星一は強ばっていた身体が緩むのを感じた。ソファーで眠っていた自分を、スーツ姿の内山蒼悟が心配そうに見下ろしている。「ここにいるなら、エアコンを点けろって言っただろう」 ティッシュのケースを渡される。星一は、ティッシュペーパーで額の汗を拭った。汗で前髪が額に張り付いて気持ち悪い。「水をいただきます」 星一はキッチンの冷蔵庫を開ける [続きを読む]
  • 炎獄1
  •  カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、私が御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、私を殺すでしょう。」                            創世記4・13-14  その年の桜は、寒い日がつづいたせいか咲くのが遅かった。大学の入学式を過ぎても桜は旺盛に咲き誇り、キャンパ [続きを読む]
  • 水を砕くについて あとがき
  •  これで『水を砕く』という話は終わりです。ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。  今回気になることが二点あります。 ひとつめは、「弟×兄」はどうなった……ということです。だんだん「弟×兄」と書くのが自分でも辛くなってきましたが、今後の展開を気長に待っていただければと思います。 ふたつめは、理月と理誠の名前が紛らわしいということです。自分で小説を書いていてもガンガン [続きを読む]
  • 水を砕く10(最終)
  •  内山のアパートを出ると、外は暗くなっていた。 ふわふわとした心地で、アパートの階段を下りる。建物を出ると、星一は新富町の駅までつづく歩道を歩いていった。 皮のショルダーバッグから、スマートフォンを取り出す。スマートフォンには、非通知の着信が残っていた。星一は顔を照らす液晶画面を覗き込んで、理月の着信だろうかと思った。 星一は理月に空のメールを送った。文面を送ると、理月に嫌がられるような気がした。 [続きを読む]
  • 水を砕く9 ―R-18―
  •  雨木に付けられた頬の痣は、次の日には自分が見ても痛々しい青痣になっていた。 星一は、母親と晴也にその痣がどうしてできたか問い詰められた。星一は、大学の飲み会で酔っ払って喧嘩に巻き込まれたと言い通した。 母親も晴也もそれを聞いて要領を得ない顔をしていたが、自分には酒乱の気があると嘘とついたらますます不審げな顔をされた。「俺はお酒は飲まないほうがいいみたいです」 星一がそう言うと、私の父親に似たのか [続きを読む]
  • 水を砕く8
  •  目を醒ますと、見知らぬ天井が星一の頭上に広がっていた。 身体を起こす。まだ時間が早いのか、部屋は薄暗かった。壁際に置かれた本棚の前に、雑然とPCの雑誌が積み重なっている。ソファーの向かいの巨大なTVを見て、星一はここが内山の部屋であることに気づいた。 星一はぼんやりと昨日のことを思い出していた。内山とワインを飲んで、理月の話をした。途中から記憶が途切れている。いままでビールをいくら飲んでも酔わな [続きを読む]
  • 水を砕く7
  • 「……家のパチンコ屋に、中学生がいるんだって」 晴也が母親とふたりで朝食を摂っていると、母親がためらいがちに話を切り出した。「パチンコ屋に休憩所があるのよ。そこに最近、中学生くらいの男の子がいるっていうんだけど、私は閉店してからしか店に入らないから、その子を見たことがないのよ」 もしかしたらそれ、茅場くんじゃないかな、と睦美はトーストを齧りながら言った。「茅場くんは最近、どうしてるの? [続きを読む]
  • 水を砕く6
  •  頬の痣は青痣になって、よけいに目立つようになってきていた。 母親と晴也に追及されたが、星一は、青痣は大学の階段から落ちたときにできたと誤魔化した。 星一は痣が治るまで頬に大きな絆創膏を貼った。絆創膏も目立つが、痣よりはましだった。  星一は理月に写真を送りつづけた。 六月に入ってからは、あじさいと水の写真が多くなった。星一は、丈の高いガクアジサイの歩道や、滴をまとった蜘蛛の巣の写真を撮って、理月 [続きを読む]
  • 水を砕く5
  •  六月の最初の土曜日、星一はいつものようにビールを買って雨木のアパートを訪れた。 雨木は憔悴した面持ちで星一を迎えた。「お母さんの具合はどうですか?」「ああ、手術はうまくいった」 先週まではきれいに片付いていた部屋が、今週はコンビニの袋や空のペットボトルなどで散らかっている。遮光カーテンで薄暗い寝室も、ベッドが乱れたままになっていて、衣服が床に散乱していた。「片づけましょうか」「……調 [続きを読む]
  • 水を砕く4
  • 「皆川、ちょっといい?」 部活が終わって体育館を出た晴也は、チームメイトの羽島敬吾に呼び止められた。「おれ、これから塾なんだけど」「俺も塾だよ。ちょっと話すだけだ」 春の霞がかったような夕空が、体育館をうっすらと赤く染め上げていた。一年生が挨拶をしながら晴也たちを追い抜かしていく。「駐輪場まで行こう」 羽島が硬い表情で黙っている晴也をうながして歩きだす。「どうせ茅場のことだろ?」「そうだよ」 羽島 [続きを読む]
  • 水を砕く3
  •  理月に送ったメールには何の反応もなかった。 メールを受信拒否されたり、アドレス変更をされたりした形跡もなかったので、星一は試しにもう一通、大学のとなりにある城址公園で撮った夕暮れの写真を送ってみた。 写真を送ることはできたが、反応はやはり返ってこなかった。 理月に写真を見てもらえただけでも、星一は満足していた。 ついでに、アルゼンチンに行っている理誠にも同じ写真を送ってみた。返事はすぐに返ってき [続きを読む]