elly さん プロフィール

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ellyさん: Harmonia
ハンドル名elly さん
ブログタイトルHarmonia
ブログURLhttp://ellylove.blog133.fc2.com/
サイト紹介文オリジナル小説。新連載「春風」始まりました。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供72回 / 365日(平均1.4回/週) - 参加 2013/03/29 15:06

elly さんのブログ記事

  • 春風 54
  •  いつもは多季の方が積極的だけれど、その夜は菫の方が多季を食らい尽してしまうほどに、激しくかき抱いた。「こういう菫も新鮮で可愛いけど」 駄々っ子のようにしがみつく菫に苦笑しながら、それでも多季は菫の与えるすべてを余すところなく受け止めてくれる。おたがいの興奮が収まってからも、多季を腕のなかにきつく抱きしめながら、眠りに落ちていった。 早朝、そっとベッドから抜け出し、レッスンに向かおうとする腕を強引 [続きを読む]
  • 春風 53
  •  ベッドの端に腰掛けた菫のすぐ横に、風呂から上がった多季が座る。肩や腕が触れ合い、まだ湿り気を帯びた身体のぬくもりが直に伝わってくる。「……どうした?」 さきほどの菫の様子を気にしているのだろうか。肩に載せた頭をやわらかく撫でながら、多季が囁いた。「いや、……俺、多季さんのこと本当に大好きなんだなって思って」「知ってるよ」 当たり前だろ、と言うように、多季は朗らかに笑った。「多季さんは、俺のどこが [続きを読む]
  • 春風 52
  •  踊り終わった直後の、熱を放つ身体が菫を抱きしめてくる。汗ばんだ身体と、熱い吐息。熱風の渦に巻かれたように、菫の体温も駆け上がる。「風呂、行こ?」 甘えるような声で囁いた多季に腕を引っ張られ、浴室まで向かった。忙しなく身ぐるみ剥がされ、シャワーを浴びながらキスをする。 踊りの興奮が冷めやらないのか、多季のキスは強引で獰猛だ。まるでむさぼり食うように菫のくちびるを食み、逃げる舌を追いかけてくる。「… [続きを読む]
  • 春風 51
  •  十一月に入り、冬の気配がすぐそこまで近づいていた。朝の冷たくひりりと乾いた空気が心地良い、菫が大好きな季節だ。 その夜は多季のヨガクラスを受講した後、一緒に多季の家へと向かった。菫は翌日も休みだったから、多季とふたり、ゆっくりと過ごすことができる、とても貴重な時間だった。 多季の家に着くと、ちょうど由季が夜のレッスンを終え、リビングに戻ってきたところだった。母親だけでなく、多季と菫も部屋に入って [続きを読む]
  • 拍手コメントへのお返事
  • いつも拍手コメントをありがとうございます。上から新しい順です。(2017年3月〜)5/22「MAGIC25」にコメントいただいたまーさまこんにちは。いつもありがとうございます!「MAGIC」を読み返していただいたとのこと。あの当時の菫くんは28歳くらいでしょうか。「休日」が32、33歳あたりの設定です。飄々としてもはや仙人のような雰囲気を醸し出している菫くんの、そこに至るまでの話を書いたのが「春風」です。菫くんも風のようなイ [続きを読む]
  • もうすぐ20000拍手記念☆アンケートのお願い
  • こんにちは。澤木です。タイトルの通り、Harmoniaではいただいた拍手数がもうすぐ20000拍手となります。いつも応援ありがとうございます!そこで、20000拍手に到達した際には、記念の短編を書こうと思います。ブログ右上に投票所を設置しましたので、「この作品のSSが読みたい!」というものがありましたら、ご投票頂ければ嬉しいです。SSの内容は、とにかく甘くてhappyなもの、と思っています。20000拍手に到達しましたら、一番多 [続きを読む]
  • 春風 50
  •  翌朝、慌ただしく身なりを整え出勤する母を見送ってから、部屋の片付けやシーツの洗濯を済ませて、家を出た。 この三日間、天気には恵まれたが、今日もとびきり青い空が広がっている。 多季のリクエストでもう一度石畳の道を散歩した後、お土産のカステラを買ってから、空港行きのバスに乗り込んだ。 窓の外の明るい陽差しに包まれた街を眺めながら、この三日間を振り返る。中華街ではしゃぐ多季の無邪気な笑顔。おくんちの熱 [続きを読む]
  • 春風 49
  •  夕方、中華街で待ち合わせした母と落ち合った。普段化粧気がなく家では大抵ジーンズ姿の母が、今日は薄化粧をしてワンピース姿だ。そんなおめかしした母の姿を目にするのは高校の卒業式以来だから、菫はすこし照れくさい気持ちで母を見つめた。 中華街の端にある、一軒の店に入った。老舗の中華料理店で、入学式や卒業式、受験に合格した日など、特別な日には母がいつも連れて来てくれた思い出のある店だ。 遠慮せずになんでも [続きを読む]
  • 春風 48
  • 「父さんに突き飛ばされたって正直に言えなかったのは、別に父さんを守りたかったからじゃない。あの時のことを、俺自身がどうしても認めたくなかったんだ。……だって、実の父親に怪我させられた挙げ句に放置されたなんて、……自分が惨めすぎるだろ」「……」「でもそのせいで、母さんは父さんの親兄弟からものすごく責められたんだ。施設に入れたことを、父さんを捨てた最低の嫁だとか、散々なこと言われてさ。母さんはただ黙っ [続きを読む]
  • 春風 47
  •  夏休みの終わりが間近に迫った、ある日のことだった。扇風機が回るリビングで、寝転んだままテレビをぼんやりと観ている父の横で、菫は夏休みの宿題をしていた。 父が突然立ち上がり、玄関に向かって歩き出した。「どこ行くと?」 菫の問いには答えず、早足で突進していく父を、慌てて立ち上がって追いかけた。 ゴム草履を履いた父が、いまにも家から飛び出そうとしている。止めなければと思い、父の腕を掴んだ瞬間、ものすご [続きを読む]
  • 春風 46
  •  ふたたびバスに乗り込み、海岸までやって来た。夏には多くの海水浴客で賑わうこの浜辺も、いまは人気がなく菫と多季だけだった。 駐車場の自動販売機でジュースを買って、浜辺の東屋のベンチにふたり並んで腰掛けた。喉を鳴らしながら炭酸がよく効いたレモンスカッシュを飲み、しばらくの間黙ったまま、目に滲みるような深く青くきらめく海を見つめていた。「高次脳機能障害って、知ってる?」 唐突に切り出した菫に、多季が顔 [続きを読む]
  • 春風 45
  • 「父さんに会いに行くから、一緒に来て欲しい」と多季に告げると、「いいよ」と軽やかな返事が返ってきた。「お父さん、どこにいるの?」「あのさ、……いろいろ訳があって、ずっと離れて暮らしてるんだ。……もしかしたら、多季さんに嫌な思いをさせてしまうかもしれないけど、」 菫のただならぬ様子に、多季がすこし首を傾げ、菫の次の言葉をじっと待っている。「……いまはうまく言えないけど、後でちゃんと説明するから」 絞 [続きを読む]
  • 春風 44
  •  情熱的に求められるまま、何度も多季と抱き合って、結局眠りについたのは明け方近くのことだった。深い眠りが途切れた頃、一階から聞こえてきた物音で目を覚ます。薄目を開くと、すでに日は高く上がり、窓辺からは明るい陽差しが降りそそいでいる。時計を見ると、十時をとうに過ぎていた。 隣の布団で眠る多季は、布団のなかで胎児のように身体を丸めて、すうすうとすこやかな寝息を立てている。その無邪気な寝顔をしばらく見つ [続きを読む]
  • 春風 43(R18)
  •  バス停から家までの坂道をゆっくりと歩く。散々歩き回ったからか、膝やふくらはぎが石のように重かった。祭の夜と言えども夜の住宅街は静まり返っていて、さらさらとそよぐ風の音だけが聞こえてくる。 菫の後ろを歩く多季の気配がふっと消えた気がして、振り返ると、立ち止まって眼下に広がる夜景を眺めていた。多季の佇んでいるところまで引き返して、ふたり並んで夜景を眺めた。 無数に輝く地上の星々を、子どもみたいに瞳を [続きを読む]
  • 春風 42
  •  すこし休憩した後、早速観光に出かけた。ガイドブックを眺めながら多季が訪れたいと言っていた大浦天主堂やグラバー園を見て回った後、石畳の道をゆっくりと散歩する。多季は洋館の前で立ち止まっては写真を撮ったり、解説の看板に熱心に目を通していた。 坂を上り、高台から長崎港を望む。青く澄んだ空よりさらに青い海と、それをぐるりと囲むように急な斜面に立ち並ぶ家々。観光客で混雑しているから、という理由で行きたいと [続きを読む]
  • 春風 41
  •  ケチャップで味付けた甘いハヤシライスに、野菜たっぷりのツナサラダ。めかし込んだ料理ではないところがいかにも母らしくて、その変わらなさにほっとする。三人で小さなテーブルを囲んで、お喋りしながら食べた。「菫が友達を連れて来たのはこれが初めてだから嬉しいわ」「……え、そうやったっけ?」「そうよ。実は友達いないんじゃないかって、昔は結構心配してたのよ」「……友達くらい普通におったって」「思春期になっても [続きを読む]
  • 春風 40
  •  車がやっとすれ違えるほどの狭くくねった坂道を、バスは上っていく。山の中腹を過ぎた、小さな商店前のバス停で降車する。そこから車も入れない、細く急な階段交じりの坂道を上ること十分。ようやく菫の実家の前に辿り着いた。「……さすが坂の町って言われることだけはある」「けっこうきついだろ」「でも、眺めは最高だね」 体力が自慢の多季でも、慣れない坂道には疲れたようで、手すりに凭れて息を切らしていた。段々に連な [続きを読む]
  • 春風 39
  •  それから一ヶ月があっという間に過ぎ去り、いよいよ多季と長崎に帰省する日がやって来た。「実家の法事」というもっともらしい理由をつけて、仕事は無事三連休をもぎ取ったものの、そう簡単には騙せない相手がいることを忘れていた。「吉志くん、おくんちば見に行くと?」 長崎行きの前日、休憩室で勤務表を見つめていた中道さんが、菫が背後を通りかかったその瞬間に、ぼそりと囁いた。ぎくっと身体を強張らせ、菫はその場に立 [続きを読む]
  • 春風 38(R18)
  •  風呂から上がってきた多季が、強引にソファに押し倒そうとするのを必死でなだめながら、多季の部屋へと向かった。「……菫、我慢できない」 切羽詰まった声でそう呻くと、力任せにベッドに転がされた。上に覆い被さった多季が、菫の下半身に頭を埋め、ペニスの先端にくちづけてくる。散々舐め回され、奥まで咥えられ、固く昂ぶったそれに馬乗りになり、吐息を漏らしながらゆっくりと腰を沈めてくる。ローションのぬめりを帯びた [続きを読む]
  • 春風 37
  •  会う度にセックスしているのに、菫の緊張が解れることはない。それはきっと、多季のうつくしすぎる身体のせいだ、と菫は思う。 バレエとヨガで鍛え抜かれた、一分の隙もないその身体は、完成されたひとつの芸術品だ。神聖な彫像のような肉体に、果たして自分が触れていいのかと、菫はいまでも躊躇してしまうことがある。 そんな菫の心の裡を知ってか知らずか、多季は黙々と菫の衣服を剥ぎ取り、菫を丸裸にすると自分も素早く衣 [続きを読む]
  • 春風 36
  •  女の子という生き物は、どんなに小さくても女の子なんだなあ、と真季ちゃんと紗季ちゃんを眺めながら菫はあらためて感心してしまった。食事の間もふたりは絶えずお喋りを続けていて、それでも菫たちにおいしいおかずを勧めてくれたり、麦茶を注いでくれたりと、男三人への気配りを欠かさない。 そんな女の子たちにメロメロなのは、父親の忠孝さんも多季も同じようで、二人とも緩みきった顔で彼女たちの甲斐甲斐しいお世話を受け [続きを読む]
  • 春風 35
  •  午後四時から幼児クラスのレッスンが始まった。ピンクのレオタードと白いタイツ姿に着替えた真季ちゃんと紗季ちゃんもレッスンに加わっている。子どもたちの母親に混じって、菫も壁際に座ってレッスンの様子を見学する。 始まりの挨拶の後にストレッチ、そして音楽に合わせてフロアを飛んだり跳ねたり、動物の真似をしたりと、まるでお遊戯会のような光景だ。それでもバレエレッスンだけあって、手脚のしなやかな動きに重点が置 [続きを読む]
  • 春風 34
  •  多季のすぐ側に立ち、細かな指示を入れながら、由季のレッスンは続いていく。そうして午後三時を過ぎるまで多季はほとんど休むことなく踊り続けた。早朝からハードな引っ越し作業をしているのだから、あらためて多季の並々ならぬ体力に感心する。 由季が子どもたちを保育園に迎えに行く時間となり、ひとまずレッスンが終わった。「今日はとことん付き合ってもらおうかしら。夕方からのレッスンも手伝ってくれない?」「僕はいい [続きを読む]
  • 春風 33
  •  車をぴかぴかに磨き上げてから二階のリビングに上ると、ダイニングテーブルの上にはすでに食事が用意されていて、由季がグラスに水を注いでいるところだった。ライトグレーの薄手のパーカーの上にエプロンを羽織った立ち姿は、やはり多季と瓜二つだ。 昨夜の残り物でごめんなさいね、と言いながらも、プレートの上にはご飯と照り焼きハンバーグに目玉焼き、そして冷製のラタトゥイユが彩りよく盛られている。豆腐入りのハンバー [続きを読む]
  • 春風 32
  •  ちょうどふたりの休日が重なった八月末の平日に、多季の引っ越しを手伝うことになった。 細々としたものは多季が毎日少しずつ車で運んでいたらしく、部屋に残っていたのはすこしの衣服と日用品、それに書棚とベッドだけだった。書棚とベッドを分解して、義兄から借りたというミニバンに積み込んだ。 絵に描いたような夏空の朝だ。なるべく朝早く、涼しいうちにという多季の提案は正解で、すべての荷物を搬出し終わる頃には強烈 [続きを読む]