satoichi さん プロフィール

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satoichiさん: 麹町ラプソディー
ハンドル名satoichi さん
ブログタイトル麹町ラプソディー
ブログURLhttp://koujimachirhapsody.blog.fc2.com/
サイト紹介文丸の内サラリーマン(ブラック)が日常を五行で切り取るブログ。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供46回 / 365日(平均0.9回/週) - 参加 2013/04/14 04:06

satoichi さんのブログ記事

  • 3.「あなたってタフね」
  • 「ここは『世界の終わり』だ。いくつかある世界の終わりの一つだ。共通する点もあれば、異なる点もある。共通することは、街の中に入るには影を預けなければならず、そして冬が厳しいということだ。何か質問は?」 門番は僕に尋ねた。5メートルほどの高さの門の前で、我々は立ったまま会話をしていた。昼を過ぎたあたりで陽は射していたものの、物悲しい風が吹いているせいで体温が徐々に奪われていくのを感じた。風が泣いている [続きを読む]
  • 2.「君はパスタとサンドウィッチを作って欲しい」
  • 朝起きると、僕は柔らかいベッドに包まれていた。 そうだ、悪い夢だったんだ。そう思って寝直そうとしたが、布団の感触がいつもと違っていた。 ホテルのパリッとしたシーツのように、どこかしっくりこないのだ。 仕方なく上体を起こし目を開けると、まるで見覚えのない部屋だった。 ベッドの右側は大きな窓に面し、淡いグリーンのカーテン越しに柔らかな陽光が揺れている。 上体を起こしたまま正面を見ると、北欧風の木製のタ [続きを読む]
  • 1.「やれやれ、と僕は思った」
  • 大学二年生の七月から、翌年の一月にかけて、僕はほとんどパスタのことだけを考えて生きていた。 その間に二十歳の誕生日を迎えたが、その刻み目はとくに何の意味も持たなかった。 もし仮に今の僕がその時の僕に会ったなら、それを止めるだろうか。いや、おそらく止めないだろう。なぜなら、鍋の中でグツグツと煮立つトマト・ソースだけが、熱湯の中で踊るパスタだけが、その時の唯一の僕の希望であったからだ。若者にとっては、 [続きを読む]
  • 【小説】赤い屋根の家 12.赤い屋根の家
  • 「結局ね、呪いなんてなかったんだよ」 そう思わないかい、と芳樹は助手席の女性に微笑みかけた。女性はただ静かに薄い笑みを浮かべていた。「そうだろう、僕もそう思うんだ」 夜中に行こうと思っていたけれど、ちょうどいいのでこのまま寄って行こうと芳樹は思った。この時間帯なら、それほど車通りがあるわけではない。芳樹は国道の途中で車のライトを消し、赤い家の前に車を止めた。彼女を大事そうに抱えると、地下室に運んだ [続きを読む]
  • 【小説】 赤い屋根の家 11.北条のケース
  • 「先輩、俺がいくら暇だからって、この歳でこんな夜更けに、こんな張り込みみたいな真似しなくてもいいんじゃないですかね?」 西が非難の声を上げてきた。「張り込みみたいな真似、じゃなくて、純然たる張り込みだ。天然パーマの西君は張り込みは嫌いかな?」 北条は運転席で腕を組んだまま言った。筋肉質の巨漢から出る低音の効いた声は、まるで真実を述べているように車内に響く。「天パは余計です。それにしても、本当に昔か [続きを読む]
  • 【小説】 赤い屋根の家 10.佐脇のケース
  •  佐脇勇次(さわきゆうじ)は、鏡の前に座していた。「これが、その鏡か」 四十を過ぎるまで仕事一筋で趣味らしい趣味もなかった佐脇は、上司の失敗の責任を転嫁されて閑職に左遷された結果、暇を持て余していた。真面目一辺倒で生きてきたため、政治的な駆け引きなどできようもなく、妻に罵られようともそれも運命と受け入れるより他なかった。小学生の息子は、友達と遊ぶのに忙しくて自分のことなど見向きもしてくれない。 仕 [続きを読む]
  • 【小説】赤い屋根の家 9.秋豆のケース
  •  秋豆景子(あきずけいこ)は、夏の戸口に立っていた。「うーん、申し訳ないんだけど、心当たりはないですねぇ」 連日の猛暑の中、海山という若い警察官が聞き込みに来ていた。先日の銀行強盗に関連する件である。当初は銀行強盗との報道で、ニュースの地方枠として小さく取り上げられていたが、その潜伏先であった建物近くの池から大量の人形が出てきたことから、昼のワイドショーの格好のネタとなっていた。専業主婦である秋豆 [続きを読む]
  • 【小説】赤い屋根の家 8.海山のケース
  •  海山康平は、警察署の冷たい夕暮れのデスクの上で頭を抱えていた。「もうダメだ。頭がどうにかなりそうだ」 先月の銀行強盗事件については、犯人グループの主犯格の逮捕(一名は仲間割れにより射殺されていた)により、一応の決着を見た。そのため、残務処理が課長とまだ若手である海山に託されたのだが、課長が多忙であるため必然的に海山が一人でほぼすべてを抱えることになっていた。「半田は子どもを殺せと指示したと言うし [続きを読む]
  • 【小説】赤い屋根の家 5.三笠のケース
  • 「響子、君とはもう、今日でお別れだ。寂しいけど、わかって欲しい」 僕は、精一杯の誠意を込めて、噛みしめるように伝えた。胃が無数の小さな針で突かれたように悲鳴を上げる。響子は無表情に僕を見つめている。その二十代の若い眼差しは、何も語ってはくれない。彼女の白いコートと明るい髪の色が闇に映え、すらりと伸びた指先が僕の琴線に触れる。 闇に静まった池には奇妙なほど風がなく、水面は冬の星々をそのままの姿で池に [続きを読む]
  • 意識と物体の間。
  • あるところに、天才的に病的な外科医がいた夜、麻酔で深く寝入った私の頭を彼は滑らかに切断し頭骨を開け、大脳を切り離し、前頭葉を丁重に持ち上げ、労わるように視神経をクーパーで切断した脊髄をも切り離し、物体として解き放たれた大脳を彼はひとしきり眺めたあと、それを丁寧に中にしまい、神経をつなぎ、頭骨をはめた全ては元通りとなり、目を覚ました私は、果たして何者なのだろうか [続きを読む]
  • 【小説】 赤い屋根の家 4.西のケース
  •  「え?先輩、俺が取りに行くんすか!?」 「当たり前だろ、他に誰がいるんだ」 季節は夏、時刻は夜。 人々は床につき、星々がその瞬きを強める頃、我々二人は不気味な池のほとりにやってきていた。 「言いだしっぺは先輩じゃないですか。この前の指名手配犯の懸賞金のときだって、結局俺が行きましたよね?」 「あれは不幸な行き違いだったな。それにほら、俺は体が弱いし」 「高校のとき空手で全国大会に行った人が、何言 [続きを読む]
  • 未明。
  • 大きくなるにつれて世界は小さくなり手負いの象が首を垂れる繰り返す日々は靴の底を磨り潰し加速する輪の中に閉じ込めようとする鳥が鳴き、人は笑い、電車は音を立てて風を運んでゆく [続きを読む]
  • 【小説】赤い屋根の家 3.星野のケース
  •  「それで、結局のところ、呪いって何だったんですか?」 助手席から、ハンドルを握る先輩に問いかけた。先輩は仕事帰りで、チャコールグレーのスーツに白いシャツが映えている。 「うん、それがさっぱりわからなくてね」 先輩は困ったように答え、「星野は、どう思う?」と私に聞き返した。 あまりドライブに適切な話題ではないようにも思ったが、ミステリー研究会に所属する私としては、非常に気になる話題であった。 先輩 [続きを読む]
  • 幸福の結末。
  • 幸福な中流家庭で不自由なく育った娘の一つの典型として彼女は自分の価値観に沿わないものを敵とみなした社会的な地位も得て、ますますそれは増長し相手が折れるまで論理の鈍器で叩き続け柔らかい卵の殻に包まれながら身の丈に合わぬ武器を振るい続けた [続きを読む]
  • そして羊はめぐる。
  • 村のはずれに、小さな丘があった上に登ると、開放的な午後の日差しが村一面に広がっているのが見えた春の陽気に、羊達も満足そうな顔で草を食んでいた樹々は身を揺らし、葉を自慢したやれやれ、と僕は言った [続きを読む]
  • 渇いた叫び。
  • ガード下の騒がしい居酒屋で一時の安らぎを得るどこにも行き着かない、吐いて捨てるだけの言葉が飛び交うそこに集う者にはそれが安らぎでありどこにも行き着かないことが癒しでもある酩酊は痛みを紛らわせ、ある種の高揚が浮遊して行く [続きを読む]
  • 蜜の味。
  • その花は、他人の秘密が大好きだった止まる蜜蜂から情報を集め次の蜜蜂に尾ひれとともに渡し花弁に蜜を蓄えた蜜蜂の秘密までも渡すようになると、次第にその花に止まる者はいなくなった [続きを読む]