たとえばそれは瞳の中の嵐のように 7

 右ポケットの中で何度も震えるスマホ。着信相手がチャンミンだと分かってから、ずっと気づかないフリをした。 俺は・・・ポケットの中でスマホが震えるたびにそれを上…

たとえばそれは瞳の中の嵐のように 6

   僕は電話をかけた。 繋がらない呼び出し音が耳の奥に響く。  何度も留守電に変わっては、無機質な女性の声がメッセージを残せと僕に言う。だけどメッセージは残…

たとえばそれは瞳の中の嵐のように 5

 ユノの家の近くには大きなクスノキがある。そこから響く蝉の声が今年の夏はやけに耳につく。夏の終わりはどうしてこんなに蝉が鳴くのだろう。  短すぎる命に後悔を抱…

たとえばそれは瞳の中の嵐のように 4

  チャンミンだけはやめとこう。そう決めていた。 なのに、チャンミンを抱いてしまった。    俺は事務所の屋上に来ていた。ひと気がないこの場所は事務所の中で一…

たとえばそれは瞳の中の嵐のように 3

  ユノと初めて身体を交えた翌朝。あの日は、とても寒かった。 暖房が壊れていたのか捲られた布団に入り込む風の冷たさに驚いて飛び起きた僕に少し怪訝そうな、そのく…

たとえばそれは瞳の中の嵐のように 2

    なぜ、僕とユノがこんな関係になったのか。それは。 去年の冬、少し前ぐらいだったか。ユノが仕事場に遅刻してくることが増えた。仕事熱心なユノが、どこか上の…

たとえばそれは瞳の中の嵐のように 1

    「お前ってさ、何で黙って抱かれるの？」  汗ばむ身体をあなたは床に落ちたタオルで乱暴に拭った。髪の毛から背中へ伝う汗が痩せてシャープになった身体に一粒…

ここではない何処かへ 22 (終）

久しぶりの更新です。よければ前回の内容を読み返してもらえると嬉しいです。    ---------------------------------------…

ここではない何処かへ 21

 真冬のプールみたいな色の空だった。今夜は雪が降るかもしれない、白い息をひとつ吐いて俺はチャンミンの家へ急いだ。  今日は、特別に無理を言って休暇を貰った。 …

ここではない何処かへ 20

  太陽と地面がくっついてるんじゃないかってほどの暑い夏が過ぎて空が徐々に高くなり秋がやってきた。 僕らの夏は、あれっきり・・・だった。 以前より連絡を取り合…

ここではない何処かへ 19

  それから、俺たちは日が暮れるまで抱き合った。玄関で、風呂場で、寝室で。場所を変えて、そのたびにまた最初から。 そして、回数を重ねていくごとにまるでそれが初…