油屋種吉 さん プロフィール

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油屋種吉さん: 油屋種吉の独り言
ハンドル名油屋種吉 さん
ブログタイトル油屋種吉の独り言
ブログURLhttp://blog.goo.ne.jp/knvwxco
サイト紹介文種吉が今と昔のお話をいろいろに語ります。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供73回 / 365日(平均1.4回/週) - 参加 2013/08/16 08:26

油屋種吉 さんのブログ記事

  • ゆがむ その3
  •  「ええっ、ばあちゃ・・・・・・。うそで しょ、そ、そんな・・・・・・」  落ちついていたはずのあゆみだったが、さ すがにそわそわしだした。  彼女の下半身ががくがくしはじめる。 あゆみが生まれたとき、祖母のみよ子はま だ健在だった。  「この子はとても頭が大きいから将来きっ と立派な人になるよ」  産院のベッドで横たわる母さんを見て、ば あちゃんがそう言ったんだよ、と後年父のつ よしがあゆみに教えた。   [続きを読む]
  • ゆがむ その2
  •  その夜あゆみは昼間興奮したせいかなかなか寝つけなかった。 柵を乗りこえる羊を思い浮かべ一匹二匹とかぞえはじめたが、そのうちなんと羊がたけしに変身する始末。 考えもしなかったたけしの告白。 あゆみの驚きは大きかった。 彼の言葉やしぐさがいやでもありありと思いだしてしまう。 これだけ興奮しちゃとても眠れやしないわと彼女は足音をしのばせ階下におりた。 目がさえ、喉はからからだ。 つめたい水でも飲もうと [続きを読む]
  • ゆがむ その1
  •  「ああ、あぶなかった。あのままあそこにいたら、おれ完全にアウトだったよな」 たけしは顔をまっさおにし、ぶつかった衝撃でねじまげられた自転車を青ざめた顔で見つめた。 軽トラックはガードレールにぶつかった状態で停まっている。 運転席の年輩の男はどうしたのかなかなか下りて来ない。 「ちょっとお何やってんのよ。おりたらいいでしょ」 いつもはおとなしいあゆみが大胆にも軽トラックのそばまで歩き寄り抗議しはじ [続きを読む]
  • ゆがむ プロローグ
  •  台所で朝食の用意をしているとも子のそばにあゆみが来て、 「ちょっとねえ、お母さん。洗面所の鏡のことなんだけど」 と、声をひそめた。 「かがみ?鏡がどうかしたの。深刻そうな顔してなによ。びっくりするじゃないの」 「ごめん。でもね」 「何をどう思ってるか知らないけどあの鏡はね。お母さんが嫁に来るとき、わたしのおばあさんがくだすったものなの。なんでも娘時代に骨董品屋で買ったんですって。とっても素敵でし [続きを読む]
  • いやな予感 エピローグ
  •  久しぶりにタケルはぐっすり眠った。 枕もとの目ざまし時計をみると、午前十時。 母親をもとめて、あわてて台所に行ったが、彼女はいない。 タケル用の椅子の上で、彼になついている飼い猫が一匹みゃああと鳴いた。 朝食が用意されているらしく、彼が小学一年生のときに街のデパートで母に買ってもらったドラえもんの絵つきのふきんが大好物のオムレツの上にかぶせられていた。 「タケルおはよう。よく眠れましたか。おかあ [続きを読む]
  • いやな予感 その5
  •  久しぶりにタケルは自室のベッドに横たわっている。 天井の板がどれもすすで黒い。 子どものために、もう少し、部屋をきれいにしてほしいと思うが、小さな土建屋さんに勤めているだけの父にむりはいえない。 猿にひっかかれたところが、時折痛む。 右手を曲げ、手首に巻かれた包帯をじっと見つめていると、くやしさで胸がいっぱいになった。 「一週間だぞ、いいか。一日でも欠けたらだめだ。お前が誰にも見つからないでいら [続きを読む]
  • いやな予感 その4
  •  突然、屋根の上が騒がしくなった。 ドタドタと何かがかけまわっている。 「ちょっとイサム。怖いわ。いったい何がいるんだろね」 ミホが天井を見つめ、不安を口にする。 「体が重そうだから、からずじゃなさそうだしね。まるで人間の子がふざけてるみたいだな。とにかくちょっと様子をみよう。山の中だし・・・・・・。今外に出るとあぶないめにあうかも」 「玄関の扉があけっぱなしだったわ。何かわかんないけど、入って来 [続きを読む]
  • いやな予感 その3
  •  「タケルが家に帰って来ないんだよ」 納屋の軒先にあらわれた紋付はかま姿の老人の寂しげなもの言いが、いつまでもイサムの心をとらえて放さない。 その老人はどことなくおぼろげで、ひょっとしたらこの世の人ではなかったかもしれないと、彼は思う。 たとえ彼が幽霊だったとしてもかまわない。 孫かわいさのあまり、ご先祖があの世からこの世へ、何らかのやり方でわたってくることだってありうる。 イサムはそう思いたかっ [続きを読む]
  • いやな予感 その2
  •  イサムが住む町営住宅の近くを、大川が流れている。 タケルは、その川の土手にある道を、歩いて家まで帰るつもりらしい。 「お前、どうしてこんな道を、わざわざ通って行くんだ?」 「べつに、いいじゃんか」 タケルは、イサムの眼を見ないで言う。 大通りを自転車で来れば良かったのに、と、イサムは言おうとして喉まで出かかった。 だが、タケルの気持ちを考え、言いそびれてしまった。 タケルは上着のポケットに両手を [続きを読む]
  • いやな予感 その1
  •  イサムの住居は、一戸建ての町営住宅。 活性化を図ろうと、町が低い山を切り開き苦労して造り上げた工業団地に、採算ありと都会からいくつかの企業がのりこんで来た。 彼の父はそのうちの一企業の管理職についていることもあり、優先的に住めた。 それは彼が小学五年の時のことで、もう三年が経っている。 タケルはイサムの勉強部屋に入るなり、 「いい家に住んでるね。おれの部屋なんて、昼間でもうす暗いんだ、裏手に竹藪 [続きを読む]
  • いやな予感 プロローグ
  •  ここは、とある田舎町。 中学に入ったばかりの男の子がふたり、農機具やわらなどを入れておく小屋のひさしの下で何やら話しこんでいる。 使い残してしまったのだろう。 青いビニル袋につめこんだ化学肥料がいくつか積み上げてあり、かっこうのベンチになっている。 「おい、タケル。きょうはなんか態度、変だったぞ。部活のときだって調子わるげだったしな。ちっともグラブにボールが収まんなかったし。バッターボックスじゃ [続きを読む]
  • 書き終えたとたん、わっと押し寄せてくるもの。
  •  「K温泉の怪」のエピローグを書き終えた。 どれくらいの人が、この物語の世界にひたってくれたろう。 そのことが先ずは気になった。 偉そうなことを言ってしまったが、今は修行中の身、習作であるから、本来は人様にお見せするようなものではない。 大昔なら、たんすのこやしにでもなっているべきものだ。 パソコンを使い、インターネットに接続できるから、人様にお見せしたら、どんなふうに評価されるだろうか、などと、 [続きを読む]
  • K温泉の怪 エピローグ
  •  玄関を入ったところに、マキストーブが燃えている。 今さっき来たばかりに思える若いカップルがそれで暖をとりながら、ほほ笑みを浮かべて、互いの手を握り合っていた。 啓介は、男の方に、よくこんなところに来ましたね、と声をかけてみたい衝動にかられた。 ふいにわきに入る沙希が、啓介の上着の袖を引っぱったからたまらない。 彼はあっと小さく叫んで、土間に転びそうになってしまった。 「なにもひっぱらなくてもいい [続きを読む]
  • K温泉の怪 その5
  •  沙希は逃げだそうにも、まわりをけものに囲まれている。 首まで湯につかり、赤い顔をしている。 怖くて、声も出せないらしい。 そのうちの一匹が、両手をきように動かし、彼女の黒髪をいじりはじめた。 どうやら彼女を家族の一員と認めたようだ。  啓介は、なんとしても沙希を助けなくちゃ。怖れてなんぞいられるものかと思う。 だが、多勢に無勢。 ともすればひるみそうになる気持ちを励まし、わっ、と大声をあげた。  [続きを読む]
  • K温泉の怪 その4
  •  深い谷間に旅館らしき建物が、忽然と姿をあらわした。 まさに大昔の湯治場と呼ぶにふさわしい。 その黒々として古めかしい風貌が、現代っ子である啓介の訪問を、厳しくはねつけているように思われた。 時折かすかに硫黄の匂いがする。 「啓介、どうして、ぼんやり突っ立ってるのよ。こんな坂くらいわたし平気よ。このまま一気に玄関まで行っちゃいましょうよ」 「ああ、もちろんそうだけど」 沙希の言葉に励まされ、啓介は [続きを読む]
  • K温泉の怪 その3
  •  黒い人の頭がひとつ、またひとつと駐車場のはじにあらわれた。 いずれも年輩の女性で、背中に大きなリュックを背負っている。 駐車場に上がりこむのが大変なのか、時間がかかっている。 最後はふたりして、「よいしょ」と声を合わせた。  「わあ、女の人たちだわ」 沙希は喜び勇んで、啓介のもとからとびだして行った。 「K温泉って、この下あたりにあるんでしょうか。なんですか。とっても古い湯治場だったって聞いてま [続きを読む]
  • K温泉の怪 その2
  •  なかなか霧が晴れない。 啓介は早く黒馬が立っている所まで行きたいと思う。 だが、このまま進んでは事故を起こしかねない。 視界が利かない上に、道が予想以上にけわしいのである。 五分くらい経っただろうか。 風が一段と強くなり、右から左に、霧が流れていく。 「よし、これでオッケイだ」 啓介は運転席の窓をあけ、あたりを見まわしたとたん、あっと声をあげた。 いつの間にか、ランクルが、崖すれすれまでやって来 [続きを読む]
  • K温泉の怪 その1
  •  霧が次から次へとわいてきて、山の斜面をのぼっていく。 おそらくこの崖下に谷川が流れているのだろう。 啓介はそう思ったが、それにしてもよほどその水が温かくなけりゃ、こんなに霧がわくわけがないのだが、と思いなおした。 「なんだか怖いわ、啓介。霧でほとんど見えないし、馬のひずめなんてさ。この辺りに牧場でもあるのかしら」 霧の中からぬっと現われた彼女の両手を彼はしっかりつかんだ。 「俺はここだよ。心配し [続きを読む]
  • K温泉の怪 プロローグ
  •  この年初めてのA岳の山おろしがふもとに住む人々を震えあがらせた。 火山特有のドーナツ型の頂上付近は、灰色の雪雲でおおわれ、赤茶けた山肌を白くしている。 一台のランドクルーザーが、起伏に富んだ山道をゆっくりのぼっていく。 曲がりくねっていて、とても運転しづらい。 中山啓介はまるで教習所のコースみたいだとため息をついた。 車内は暖房が利いている。 下車するときの用心に、彼は厳しい寒さに少しでもなじま [続きを読む]
  • どん欲 エピローグ
  •  それから一ヶ月経っても、さくらと洋介の仲はあまりしっくりしない。 職場で、たまに出くわすことがあっても目をそむけてしまう。 互いに胸の底に不満を募らせてしまっているからだ。 「ようすけ、夕方、あたしと付き合ってみる気がある?」 少しでもよりを戻そうと、さくらが洋介に提案すると、 「いや、ちょっと。高校時代の友だちとゲームをやる約束があるんだ」 彼は軽くいなしてしまう。 だからといって、彼がどこか [続きを読む]
  • どん欲 その5
  •  さくらは懐中電灯の光りで、公園のあちこちを照らしだした。 「ようすけ、あいつ行ってしまったみたい。ほんとに気味のわるい女だったね。ともかくあんたが助かって良かった。それにしても・・・・・・」 さくらはそこまで言い、彼のひたいを右手の人さし指でぴんとはじき、にやりと笑う。 「ああまったくだ。恥ずかしいようだよ。さくらが来てくれなけりゃ、今ごろどうなってたか」 「わたしだって、ほんとは来るつもりなか [続きを読む]
  • どん欲 その4
  •  彼女の唇が洋介の唇にそっと触れ、離れるときにプチュッと音がした。 「どう、いい気持ち?」 洋介は、はあっと息をはき、 「そんなこと聞いて、どうする。俺はあんたのこと何も知らないんだ。蚊に刺されたくらいにしか感じないね」 「まあ失礼。このあたしがキスしてあげてるのに。それじゃこれならどう?」 言葉とはうらはらに、彼女は二番目のキスをすぐにしない。 怒りをおさえているのだろうか。 女の体がわなわなと [続きを読む]
  • どん欲 その3
  •  目の前を歩いて行く美貌の持ち主は、ついさっき洋介の前に現われたばかり。 このままついて行けば、自分がストーカーと間違われてしまう。 ちょっとばかり知り合いになっておく必要があると思い、彼は、彼女の背中に、 「あのう、すみません。ちょっとお話したいことがあるんでごいっしょしてもいいでしょうか」 まともな耳なら、やっと聞けるくらいの声で訊いた。 だが、彼女は返事をしない。 長い髪を揺らし、歩道をどん [続きを読む]
  •  夜の散歩
  •  久しぶりに、短編を三作ものすることがで きた。 ほっとしたというのが、今の実感である。 もうそれほど瑞々しくはない脳みそを、む りに働かせるものだから、なんとなく体に違 和感を覚える。 苦しいと思うときがある。 ひどいときは、あまりに長くパソコンに向 かったせいだろう。 息苦しささえ感じてしまう。 でも書きあげたときの高揚感がここちよい。 それが欲しくて、書きつづける。 原稿用紙に向かっていた時 [続きを読む]
  • どん欲 その2
  •  やれやれとんだ邪魔ものが入ったなと、洋介は、まるで大亀のように歩道まではい出てきた。 今か今かと待ち受けていた歩道の野次馬連中が、オオとかヤアという声をあげる。 彼らの好奇の視線が、いっせいに、彼に注がれた。 蜘蛛の巣が、狭い空間の縦横にはっていたのだろう。 淡い灯りのもとで、彼の髪の毛がキラキラ光った。 「なんだ、おまえ。いったい、あんなところで何やってた」 完全に容疑者扱いである。 俺とおな [続きを読む]