あじろ圭 さん プロフィール

  •  
あじろ圭さん: あじろのあじと
ハンドル名あじろ圭 さん
ブログタイトルあじろのあじと
ブログURLhttp://ajiroajito.blog.fc2.com/
サイト紹介文オリジナル小説ブログ。恋愛小説「なのなのな」更新中。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供100回 / 365日(平均1.9回/週) - 参加 2013/11/23 15:13

あじろ圭 さんのブログ記事

  • 第6章 怪談の呪い(9)
  • 後を追ってたどり着いたのは北東側の旧校舎の裏手だった。正面からみると旧校舎の屋根の上の左隅にはえているように見える煙突が、裏に回ると真っ直ぐ地面から伸びているとはっきりとわかる。「ここが入り口さ」 陸はいまにも雨粒の落ちてきそうな空を仰いだ。「入り口?」 つられて空も天を仰いだ。 地下倉庫への入り口が天空にあるはずがない。あるのは天を衝く煙突ばかりだ。煙突の先端には角帽のような雨避けが被せられてあ [続きを読む]
  • 第6章 怪談の呪い(8)
  • 「開かずの部屋、どこだかわかったぜ」 自信満々に陸がそう言うものだから、空はいそいそと後をついていった。「文も読めって海の奴が言うからさ、俺、例の学園の歴史についての本をこっそり読んだんだ」「まさか、開かずの部屋について書かれてあったなんて言わないよね?」「だったら苦労しねえっての。海にだってすぐにわかっただろうし」「海が気がつかなかったってこと?」「まあな」 得意げに陸は鼻を鳴らした。「学園は当 [続きを読む]
  • 第6章 怪談の呪い(7)
  • 「なんだよ、海のやつ。トイレか?」 ぶつくさ言いながら、陸は海が置いていった本を取り上げ、ページをパラパラとめくった。「へえ、おもしれえ!」 ちょうど本の中央部分、紙質が別のものに変わって写真が掲載されているページを見開き、陸は空の目の前に差し出した。「みろよ、この写真。学園はもともとは十字架の形をした建物だったんだ」 創立当時をとらえたモノクロ写真のいくつかは八角の間の飾り棚におさめられているも [続きを読む]
  • 第6章 怪談の呪い(6)
  •  殺された篤史が知ったという七つ目の怪談の元ネタは二十年前の出来事にヒントがありそうだと、空はマスメディア部の資料を調べ尽くした。はたして、二十年前の秋から冬にかけてに発行された学園新聞には一連の事件について、おもしろおかしく取り上げられてあった。空はそれらの記事を時系列にまとめてみた。一九九x年十月十四日前後 宮内先生失踪       十六日   中等部一年笹木弘明くんの靴が八角の間で発見される [続きを読む]
  • 第6章 怪談の呪い(5)
  • 「寺内くんが最近借りた本を知りたいの?」「はい。面白い本を見つけたから、次読んでみろって言われてたんですけど、ああいうことになってしまって。彼、何の本を読んでいたかは言わなかったから……」 篤史とさも仲がよかったかのようにふるまう海の演技力に、司書の中年女性はすっかりだまされ、気前よく本のタイトルを調べてくれた。「これがリストよ。でも、まだ返却されていないわ。……まあ、返却できなかったってことなん [続きを読む]
  • 第6章 怪談の呪い(4)
  •  真に受けた空と海に対し、陸は懐疑的な眼差しを真澄に向け「オヤジ、作り話じゃねえだろうな」「そんなわけあるか。お前たちの話を聞いていて思い出したんだ。俺たち――俺と空ちゃんとこのパパとママだが――が高校三年の時だから、二十年ぐらい前の話だな。一晩のうちに美術室の石膏像が並べ変えられていたって美術部の連中が騒いでいたっけ。泥棒にでも入られたんじゃないかって話だったけど。その話が動く石膏像の怪談のもと [続きを読む]
  • 第6章 怪談の呪い(3)
  •  生物室で発見された死体が篤史だと知って動揺を隠しきれず、空は顔を両手で覆った。「そんな……まさか、七つ目の怪談を知ったからっていうんじゃ……」「どういうことだ、それ?」 眠気の吹き飛んだ陸が食いつき、海も膝の間から顔をあげて、空を見上げた。 七つ目の怪談が何かがわかった、七つ目の怪談を知ると死ぬという呪いの謎も解いたと篤史が言っていたこと、八角の間で幽霊を見たと言っていた生徒が行方不明になってい [続きを読む]
  • 第6章 怪談の呪い(2)
  • 部活の朝練はおろか、その日の授業も中止になり、生徒たちはただちに下校するようにとの指示が出された。休校になったと電車に乗ったところで知った空は次の駅で降り、御藏家へむかった。 陸は遅刻する気だったらしく、パジャマ姿に寝グセのついた髪で空を迎えた。海はその日は朝早くに登校したらしく、真澄が慌てて迎えに行ったところだった。 休校になった連絡では詳しい理由は知らされなかったが、またしても事件が発生したら [続きを読む]
  • 第6章 怪談の呪い(1)
  • 梅雨時はどうしたってにおいが内にこもる。鉄筋コンクリートの新校舎よりは木造の旧校舎の方が屋内の空気が澱む。湿気を帯びた床や階段や階段の手すりから、黴臭いにおいが立ちのぼるからだ。 古い本をめくっているかのようなそのにおいが幸子は嫌いではなかった。実際、築百四十年を超える旧校舎は生徒たちの青春を見守ってきただけでなく、戦争を体験してきて、語る物語を数多に持つ本のようなものだった。 だが、そのにおいは [続きを読む]
  • 第5章 消える人々(10)
  •  希美は首を折ってうなずいた。その姿はまるでしなだれた白バラのようだった。「私たち……私と松戸先生とは確かに自習室にいました。あの日、相馬さんが襲われたその時です。彼の奥さんが浮気を疑っていて、残業という言い訳が使えなくなって私たちは学園の外では会えなくなっていました。学園で毎日のように顔を会わせているといってもそれは本当に顔をあわせているだけで、私は不満だった。だから、教育実習生がいる間、授業を [続きを読む]
  • 第5章 消える人々(9)
  •  カーテンの仕切りの隙間からそっと様子をうかがうと、希美は佳苗に支えられて、ベッドの上に上半身を起こしていた。「起きて大丈夫ですか?」 空はベッドから起きて、希美のベッドの足元に立った。「何があったのかしら。私、確か、授業をしていたと思うんだけど」 まだ頭がぼにゃりしているらしい希美にむかって、佳苗が事情を説明した。「空ちゃんがとっさに支えてくれなかったら、頭をぶつけるかして怪我していたかもしれな [続きを読む]
  • 第5章 消える人々(8)
  •  さながら倒壊するビルのごとく、希美の体が空の目の前で崩れ落ちていった。 とっさに椅子から立ち上がり、空は教壇に倒れ落ちていく希美の体を支えようとした。希美は小柄で華奢な体格をしていたが、力を失った体は容赦なく空にのしかかって来、空は重力の力をいやとなく知らされた。 教室中にあがった叫び声を聞きつけ、他の教室から駆け付けた教師たちによって、希美は保健室へと連れていかれた。 席を立った時にでもどこか [続きを読む]
  • 第5章 消える人々(7)
  •  八角の間で幽霊を見たと言っている生徒が誰かは思いがけない形で判明した。噂話を誰から聞いたのかをたどっていった結果、中等部一年の男子生徒が噂の発信源だと判明した。 しかし、空はほんの少し、彼にたどりつくのが遅かった。 幽霊、もしかしたら七美を襲った犯人を見たかもしれないその生徒こそが、八角の間で行方不明になった中山淳だった。 七美を襲った犯人を目撃したかもしれない人物が行方不明になっている事実を知 [続きを読む]
  • 第5章 消える人々(6)
  • 「そういえば、行方不明になった生徒ってまだ見つからないの?」 珍しく家族そろって夕食の食卓を囲んでいた時だった。華がふと思い出したように空に尋ねた。中等部一年生・中山淳が行方不明になってから数日が経っていた。 行方不明というが、行方不明になった状況が普通ではなかった。どうやら学園内で姿を消したらしいのである。 学園から帰ってこない息子を心配した両親が警察に連絡、翌朝、登校してきた生徒が八角の間に落 [続きを読む]
  • 第5章 消える人々(5)
  • 「でも、海、私はやっぱり松戸先生が怪しいと思うの」 空は八角の間に出現した幽霊の話をした。それから、目撃された幽霊というのは実は七美を襲った犯人ではないかという篤史の推理を披露した。 海は幽霊すなわち犯人説に特に異論を唱えなかった。「この間、松戸先生が休みだって伝えに来てくれた長谷部先生を、私、八角の間の幽霊だと思ってしまったの。八角の間には幽霊が出るっていう怪談があるから、そのせいだと思ったんだ [続きを読む]
  • 第5章 消える人々(4)
  • 「どう思う?」 空は海の横顔を覗き込んだ。 登校するなり、空は陸を連れて海のクラスへとかけこんだ。そのまま、海を引きずるように連れて屋上へとあがっていった。朝の礼拝はとっくに始まっているだろう。しかし、それどころではなかった。 津田沼校長が美術室で亡くなった事件を警察が秘かに捜査していたこと、そして津田沼校長殺害の容疑で松戸が指名手配を受けたこと、殺害動機はどうやら学園への裏口入学をめぐってである [続きを読む]
  • 第5章 消える人々(3)
  •  陸たちが走り去ってみると、たちまち喧騒が引き潮のように新校舎の奥へと遠ざかっていった。 空は教室には戻らず、新校舎二階にある自習室を目指した。教室に戻っても、授業をボイコットした生徒たちのおしゃべりに付き合わされるだけだろうと踏んだからだった。 生物室から自習室までは中央階段をあがって旧校舎二階の渡り廊下から新校舎に移ればいい。しかし、そのルートでは記念礼拝堂の前を歩いていかなければならない。忘 [続きを読む]
  • 第5章 消える人々(2)
  •  朝の礼拝後、講堂から戻ってくると、ほとんどの生徒が教室に居残っていた。一限目は生物で、その日は生物室で授業を受ける予定になっているというのに、誰も移動する気配がない。「今日の生物の授業、生物室だよ。はやくいかないと遅刻扱いになるって」 空はたまりかねて、おしゃべりに興じる生徒たちの輪に割って入った。「知ってるって」「知ってるなら、もう行かないと。松戸先生、遅れるとうるさいよ」「わかってる。でも、 [続きを読む]
  • 第5章 消える人々(1)
  •  八角の間には霊が出る。創立者の霊だったり、日本軍の兵士だったり、出没するものに一貫性はないが、とにかく何かが出る、それが八角の間にまつわる怪談だ。八角形という形の珍しさ、昼間でも薄暗い場所であることなどから、“何か”が潜んでいそうだと思われるのも不思議ではない。 その八角の間で幽霊を見たと言い出す人間が現れた。七美が襲われたその日、八角の間に吸い込まれるようにして消えていく幽霊を目撃したというの [続きを読む]
  • 第4章 嘆きのマリア(7)
  • 「職員室にいたなんて嘘だな」 松戸の去っていく背中にむかって、陸は呟いた。 市川と別れ、三人はマリアの祠へと向かっていった。「白石先生がひどく怖がっていたというのは本当だろう。ただ、“職員室で”でないだけで」「海は、松戸と白石が一緒にいたのは本当だと思っているのか?」「たぶんね。職員室ではないにしろ、叫び声の聞こえた範囲、トイレにごく近い場所にいたんだと思う。校内放送がかかるのと同時ぐらいに教室に [続きを読む]
  • 第4章 嘆きのマリア(6)
  • 「マリアの祠に行ってはいけませんか」 陸が噛みつくと、松戸はまるで獲物を狙うフクロウのように大きな目をぎょろつかせ、「どういう場所か知らないとは言わせないぞ」「どういう場所なんです?」 海が不思議そうな顔で尋ねた。 驚いたのは松戸だけではなかった。陸と空は同時に海をみやったが、海は怪訝な顔で二人を見つめ返した。マリアの祠がどういう場所であるか、どうやら海は知らないとみえる。「松戸先生こそ、テニス部 [続きを読む]
  • 第4章 嘆きのマリア(5)
  •  テニスコートの隅に、学園を取り囲む生垣に埋もれるようにしてコンクリートの小さな建物がある。高さ一メートルほど、かまくらのような形をしていて、生垣にむかって入り口が設けられている。中には記念礼拝堂のマリア像を模倣した小さなマリア像が祭られていることから“マリアの祠”と呼ばれている。 校舎に背を向けている格好の“マリアの祠”は、学園内にいる人間の目も届きにくい。外からは生垣に守られた祠は、人の目を気 [続きを読む]
  • 第4章 嘆きのマリア(4)
  • 「空ちゃんにもらって欲しいものがあるの」 山下夫人はテーブルの上に桐の小箱を差し出した。「聖歌が好きだった珊瑚の帯留めなの。あの子が二十歳になったらあげようと思っていたのだけれど……」 促されて箱を開けると、花模様の帯留めが綿布団の上に鎮座していた。椿と薔薇をあしらった模様で、艶やかな桃色が華やかさを一層引き立てている。聖歌が母親に内緒で持ち出した帯留めとはこれだろうと、空は思った。手に取って身に [続きを読む]
  • 第4章 嘆きのマリア(3)
  •  デジャブだった。 制服姿ですすり泣く生徒たち、遺族にむかって深々と頭を下げる学園関係者たち……。何もかもが七美の葬式を思い起こさせた。聖歌の遺影でさえ、七美を思い出させた。長い黒髪、花開かんとする蕾のような可憐な笑顔――仲のよかった聖歌と七美は姉妹のようによく似ていた。「自殺なんかじゃないわ」 聖歌の遺影を遠くに見つめながら、空は呟いた。 親友の死にショックを受け、その後を追った覚悟の自殺だった [続きを読む]
  • 第4章 嘆きのマリア(2)
  •  ケータイが鳴った。翌日の授業の用意をして後は寝るだけという時間に、知らない番号だった。ためらいながら出てみると、聖歌の母親、山下夫人からだった。遅い時間に申し訳ないと言い、山下夫人は本題を切り出した。「聖歌、そちらにお邪魔していないかしら」「いいえ」「そう……」「あの、何かあったんですか?」「ええ……」 寝る前に聖歌の部屋をのぞいたところ、ベッドで寝ているはずの聖歌の姿がなかったのだと今にも泣き [続きを読む]