日高千湖 さん プロフィール

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日高千湖さん: 夢見月夜曲
ハンドル名日高千湖 さん
ブログタイトル夢見月夜曲
ブログURLhttp://yumemizukiyakyoku.blog.fc2.com/
サイト紹介文ようこそ日高千湖のオリジナルBL小説ブログです♪現在、『薄き袂に宿る月影』から作品を移転中です。
自由文旧ブログ『薄き袂に宿る月影』から引越して参りました!
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供270回 / 365日(平均5.2回/週) - 参加 2014/02/17 00:03

日高千湖 さんのブログ記事

  • T・30
  •  その頃敬治と武村は、すでに葉山の別荘から、松涛の一等地に建つ加々見家の別邸に移り住んでいた。松涛の別邸には、加々見富治の妻・加々見智満子(かがみちまこ)が一人で住んでいる。「一人」とはいえ使用人だけでも10人が住まう屋敷は、和洋折衷の東館と西館と呼ばれる西洋館の2つの顔を持った瀟洒な館である。 こんもりと茂った木立に囲まれた屋敷は、富治と智満子の結婚祝いとして敏治が贈ったものだった。富治と智満子 [続きを読む]
  • T・29
  •  階段を駆け上ってくるような音がするが、依然としてここが何階なのかわからない。エレベーターが動いていないのか、階段を移動する音は一旦止み、しばらくするとまた階段を使う。足音が近くなるにつれて声も聞こえる。敵か、味方か。わからないままだが、その足音は確実に近付いている。足音は少なくとも3人、と目星を付けて河野は立ち上がった。丹田の部下3人はすでにノックダウンだ。河野も全くの無傷とはいかないが、ダメー [続きを読む]
  • T・28
  • 「お待たせしました」飯坂が勢い良くドアを開けて部屋に入ってきた。待ちかねた津田は飛び掛りそうな勢いで、「飯坂、遅い!」と大声を出した。「すみません」「飯坂、ご苦労だったな」政重は微笑みながら飯坂を労い、「何かわかったか?」と聞いた。「はい。丹田久繁と親交のある所轄勤務の刑事を1名。それと、本庁の生活安全課の刑事1名を、副総監に確保して頂きました。彼らが丹田の手助けをしていたと見て、間違いありません [続きを読む]
  • T・27
  •  加々見敏治と唯冶は同腹の兄弟ではあるが、互いに牽制しあう仲だった。それは敏治が、敬冶の父母である富冶と妙子の結婚を進めなかった事が原因であると思われる。敏治の息子・富冶は早くに亡くなり、加々見敏治には直系男子はいない。当然、唯冶の2人の息子がその跡を継ぐものとみられており、以前から敏治よりは唯冶におもねる者も多かったという。河野の中で生まれた疑念はゆっくりと膨らんでいた。 逃げ続けていた白瀬高江 [続きを読む]
  • T・26
  •  丹田のポケットから着信音が聞こえる。着信相手の名前を確認すると、「チッ」と舌打ちしながら丹田は部屋を出て行った。ガシャンと音を立てて閉まったドアの向こうから、丹田の靴音が聞こえてくる。 未だにここがどこなのかわからないが、どこであろうと状況は変わらない。組の状況が気になる。そして、槌屋と大川の容態を気にしながら河野は目を瞑った。耳を澄まして、丹田の声を拾う。聞き取り難いが、少しでも場所のヒントに [続きを読む]
  • T・25
  •  辰川副総監が席を立ってから30分経ったが、辰川は戻って来ない。津田は河野政重の後ろでイライラを募らせていたが、飯坂は殺気を漲らせる津田のおかげで、かえって冷静でいられた。河野とその周辺を調べ上げ、粘り強く時を待ち行われた犯行。それを実行した人物が、いつまでもここに河野を置いておくはずがない。どこかへ移動しているに違いない。飯坂はその移動先を特定する為にここへ来たのだ。「いつまで待たせるんだ、あの [続きを読む]
  • T・24
  • ★多少痛いシーンがございますので、苦手な方は回れ右でお願いします!! 河野の手足の拘束が解かれる事はなかったが、「丹田」と名乗った男は10分程して再び河野の元へと戻って来た。その手にはコーヒーカップとファイルが握られていた。ふわりと、コーヒーの香りが河野の鼻にも届く。「警視庁」だというのが本当か嘘かわからないが、近くに人の気配はある。ドアが閉まる音や靴音が微かに聞こえてくるからだ。「さて、話しても [続きを読む]
  • T・23
  • 「警視庁だと!?」津田の怒号に近い声が庭に響く。その声に驚いた花子が政重の膝から飛び降りて、部屋の隅に置いてある衝立の後ろに隠れてしまった。「源、声が大きい。花子が怖がるじゃないか」「申し訳ありません、親父さん」津田がシュンとなって頭を下げたのは一瞬の事だった。すぐに気を持ち直して飯坂に食って掛かる。「飯坂!適当な事、言ってんじゃねえぞ!」「本当です。拉致されてすぐに、若の2台のスマホの電源は切ら [続きを読む]
  • T・22
  •  その勢力は関東一、いや日本一と言っても過言ではない河野組の若頭・河野大成が白昼堂々、何者かに拉致された。拉致された場所は、河野組総本部の目の前。門前から歩いて30秒は掛からないその鼻先から、次期組長と目されている人物を拉致され、河野組総本部は殺気立っていた。その傘下にある主だった組の長がすぐさま集められ、総本部には高級車が次々に乗り入れている。河野組総本部は、通常ならば暴力団対策課の数人が監視し [続きを読む]
  • T・21
  • ここはどこだ・・・。腕が動かない・・・誰が俺を縛ってるんだ?槌屋と大川はどうなったんだ。無事ならいいんだがな・・・。 朦朧とした意識の中で、河野はもがいていた。「もがいていた」、というのは適切な表現ではない。もがこうにも、もがけない状況にあったからだ。槌屋が倒れ、大川が倒れた瞬間に、助手席のドアが開き車内に男が侵入して来た。不意を打たれて顔面にスプレーを噴射され、目が開けられなくなったと同時に後部 [続きを読む]
  • T・20
  •  河野と加々見敬冶が最後に会ったのは2ヶ月前だ。何かを決意したかのように、雰囲気をガラリと変えて去って行った敬冶にハッとさせられ、はからずも彼の背中に欲情してしまった自分が不甲斐無かった。 飯坂が準備したスマートフォンを宅配便で送ったが、敬冶から連絡はない。お礼の言葉は武村を通して伝えられたが、自分のスマホにもそのうち電話があるだろう、と思っていた河野は拍子抜けした。いや、明らかに期待していた自分 [続きを読む]
  • T・19
  •  別荘に戻った敬冶は、早速、武村にスマートフォンを借りた。敬冶にとって「スマホ」という存在はテレビのCMで時々観るものであり、客が持っている物だった。それは新鮮で、あっという間に敬冶を虜にした。四角いスマホは武村の指先一つでテレビを映し出し、敬冶が嫌いなブラームスも聞ける。インターネットに接続すれば、知りたかった情報が一瞬にして手に入れる事が出来るのだ。《SAWN》ではスマートフォンは勿論、パソコ [続きを読む]
  • T・18
  •  敬冶は一瞬にして2、3歳、歳を経たかのような変化を見せたかと思うと、夕映えの中へと消えて行った。彼の変化に驚いたのは河野だけではなかった。その場にいた者たちはそれまでは敬冶に感じることのなかった凛とした空気と、神々しいほどの美貌に圧されたかのように、誰も口を開けなかったのだ。あの塚原でさえドアを開けた瞬間に、その衝撃に打たれたように口元を引き締めて頭を下げた。まるで敬冶が、生れ落ちたその瞬間から [続きを読む]
  • T・17
  • 「5分だ」いきなり「5分だ」と言われて、敬冶は河野の胸に添わせていた顔をガバッと上げた。「・・・はあ?」「5分経ったぞ」本当に5分計っていたとは・・・。敬冶は呆れて河野の顔を穴が開くほど見返す。しっかりと時間を計っていた河野は、腕時計を指差して敬冶を引き剥がした。「今度はいつ会えるの?会いに来てくれる?それともまたここ?」「そうだな、考えておく」河野はすでに気持ちはここにはないと言わんばかりに、ソ [続きを読む]
  • T・16
  •  話しが終わり塚原が立ち上がった。武村は槌屋が仕込んだというだけあって、塚原が腰を浮かせた瞬間に立ち上がった。河野も立ち上がり、当然のように飯坂も立ち上がった。「では、武村の事をよろしくお願い致します」加々見敏治が武村の戸籍を準備してくれる事になった。「地獄の沙汰も金次第」とはよく言ったもので、加々見家に出来ない事はないんじゃないかと思うくらい、塚原は軽く請け負った。「お任せください。では、敬冶さ [続きを読む]
  • T・15
  •  テーブルの上にはすでに3段のケーキスタンドが運ばれていた。一番上の皿にはサンドウィッチとスコーン、二段目には数種類の小さめのケーキとシュークリーム、三段目にはマカロンやフィナンシェ、クッキーといった焼き菓子が並んでいた。 河野の前に敬冶が座ると、塚原が給仕をはじめる。温かい紅茶が目の前に置かれ、敬冶は緊張しながら河野を見た。だが河野は、敬冶が楽しみにしていた程には楽しそうではない。河野と何を話そ [続きを読む]
  • T・14
  • 「ねえ、あと何分で着くの?」敬冶は運転席のヘッドレストにしがみ付くようにして聞いた。「申し訳ございません。首都高が事故で渋滞しております」運転手は「申し訳ございません」と言ってはいるが、内心では「わかっているなら聞くな」と言いたいに違いない。それがわかっていても、敬冶は聞かずにはいられなかった。3度同じ事を聞き、運転手の返事も3度とも同じだ。車が停まってから5分程経ったが、車は全く動いていない。ノ [続きを読む]
  • T・13
  •  豪華なダイニングルームには、優雅にクラッシック音楽が流れている。開け放った窓から海の香りが吹き込んでくる。朝4時にはスーツを着て家の中の差配をする塚原が、「ブラームスの交響曲第一番でございます」と曲名を紹介してくれたが、毎回食事の時間に流されているクラッシック音楽は、加々見敬冶の耳にはどれも同じように聴こえてしまう。たまに《SWAN》の舞台で使われていた曲が流れると嬉しくなって、自慢げに「おじさ [続きを読む]
  • T・12
  •  飯坂が、2杯のコーヒーをトレーに載せた大川を引き連れて河野の部屋のドアをノックする。「飯坂です」「入れ」「失礼します」飯坂と大川が部屋に入ると、河野は目を瞑りリクライニングチェアーに背を預けていた。「コーヒーのおかわりをお持ちしました!」大川は先程の経緯があったからか、素早くコーヒーを置いた。「ありがとう、そこに置いといてくれ」クロワッサンサンドは半分に減っていた。河野の様子もいつもと変わらない [続きを読む]
  • T・11
  •  何度も寝返りを打ち、何度も目を覚ました。こんなに寝付きが悪かった事など、一度もなかった。客に解放されればベッドでグッタリと転がっているだけ。それを世話係が身体を清めて、部屋へと運んでくれるのだ。そんな毎日だったから、眠れない夜などなかったのだ。 ふと思い出したのは、置いていかれた喫茶店に迎えに来た男に手を引かれて、ドキドキしながら車に乗った時の事だった。あの時もどこに連れて行かれるのかわからず、 [続きを読む]
  • T・10
  •  案内されたゲストルームは海に面しているようだ。微かに聞こえてくる波音が、遠くに来てしまったことを教えてくれた。 朝になればこの別荘にも4人の使用人が出勤してくると聞いたが、今はひっそりとしていた。深夜の別荘の廊下は灯りも少なく、ますます寂しい感じがして敬冶は馴染めないでいた。別荘全体の広さはわからないが、2階には他にも5、6部屋あるようだ。その中の一室に案内されて、敬冶は大きく深呼吸した。 「別 [続きを読む]
  • T・9
  •  加々見敏治は、長年捜し続けてた「孫」を目の前にして過去を悔いていた。敏治の弟の娘・妙子が生んだ男の子は、看護師に扮した白瀬高江によって産院から連れ去られた。妙子の妊娠がわかった時に、進んでいた縁談を断って富冶と妙子を結婚させていれば、敬冶は悲惨な8年間を送らずとも済んだのだと思うと、敏治は自責の念を拭いきれない。アルバムを捲りながら、今は亡き「父」を他人のような目で見ている青年が部屋に入って来た [続きを読む]
  • T・8
  •  加々見富冶(かがみとみはる)と河野大成は星望学園の先輩、後輩の間柄だ。加々見家は旧財閥系の名家。政治家を多く輩出し、過去には皇族とも婚姻関係のある日本屈指の名家であり、資産家一族でもある。加々見一族は代々美貌で知られている。それというのも、財産の散逸を防ぐ為に血族結婚を繰り返したからだと噂されていた。加々見富冶の美貌は高等部・中等部の注目の的だった。『富冶』の名を口にした河野は、甘酸っぱい気分に [続きを読む]
  • T・7
  •  敬冶が車から降りると、さりげなく4人が敬冶を取り囲んだ。少し前を槌屋と大川が歩き、河野が敬冶から一歩下がって歩く。背後からはノートパソコンを持った飯坂が付いてくる。端から見れば、あからさまに4人が敬冶をガードしているようには見えないだろう。「ねえ、どこに行くの?」「余計な事は言うな。黙って歩け」河野はサングラスを掛け、飯坂もフードを被っている。大川はキャップを深く被って、槌屋はロイドメガネを掛け [続きを読む]
  • T・6
  •  駐車場に待機していた車は黒いセダンだった。運転席には他の男が座ってエンジンを掛けて待っていた。河野たちが乗った車が到着すると、男は無言で車に向って深々と頭を下げた。そして大川に運転席を譲ると敬冶たちが乗っていたワンボックスカーに乗って、猛スピードで去って行く。助手席に槌屋が座り、敬冶は後部座席の真ん中に河野と飯坂に挟まれた形で座らせられた。「狭いよ」「我慢しろ」「だって」「すぐに着くから、我慢し [続きを読む]