熊野まゆ さん プロフィール

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熊野まゆさん: くまの恋愛官能小説
ハンドル名熊野まゆ さん
ブログタイトルくまの恋愛官能小説
ブログURLhttp://kumano-novel.sblo.jp/
サイト紹介文糖度高めの恋愛官能小説ブログ
自由文つたない作品ばかりですがよろしくお願いします。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供198回 / 365日(平均3.8回/週) - 参加 2014/04/10 11:18

熊野まゆ さんのブログ記事

  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 終章02
  •  光陰矢の如し、披露目の夜会はすぐにやってきた。 いままでレッスンをしてきたのは閑散としたダンスホール。それを見慣れていたせいか、人であふれかえっているいまはとてつもなく息が詰まる。「……あまり気負うな。べつに上手く振る舞えなくてもいい。俺は外聞は気にしない。そもそも俺自身、愛想がよくないからな」 ダンスホールに入るなり固まってしまったエリスをジェラルドがフォローした。「確かに先生は無愛想ですけど [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 終章01
  • 「もう一度お願いします」 伯爵邸内のダンスホールで、エリスは講師に向かって言った。彼女の鼻息は荒い。「で、ですが……。そろそろご休憩なさっては?」 ダンスレッスンの講師が苦笑する。本来なら彼がエリスにダンスを手ほどきするのは来週からのはずだっただが、エリスのたっての希望で前倒しになったのである。(上手になって、ぎゃふんと言わせてやるんだから!) ぎゃふんと言わせたい相手はジェラルドではなく彼の年老 [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第六章05
  •  声を真似ているとも思えない。あまりに自然な声音だ。「あなた、は……?」 いったい誰なの。なぜ、こんなにもそっくりなの。 向かい合うとまるで鏡を見ているようだった。背の高さまで同じなのだ。 自分ではない自分の目から涙がこぼれる。なぜ泣いているのだろう。 瞬きをして、改めて彼女を見ると――そこに自分の姿はなかった。 だが、よく知っている人だった。「リリアナ……?」 涙を流していてもその美しさは損なわ [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第六章04
  •  ガシャンッと小気味よい音がした。いや、ふだんならばガラスが割れる音は歓迎すべきものではない。こんな状況だからこそだ。「割れた……!」 ガラスにはこぶし大ほどの穴ができた。 初めからこうしていれば痛い思いをせずに済んだのに。(まあ、とにかく……これで部屋の中に入れる) 割り破いた穴から中へ手を差し入れてドアノブの鍵をひねり開ける。 泥棒にでもなった気分だ。ここが二階でなければガラス扉を割り破ること [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第六章03
  • 「あ、れ……っ?」 ガラス扉を開けようとノブをまわすものの、動かない。 内側から鍵が掛かっている。それもそうだ。いくら空き部屋だからといってバルコニーへ続く扉の鍵まで開けっ放しのはずかない。なにかの拍子に扉が開いてしまったら雨風が侵入して大変なことになる。 エリスはがくりとうなだれた。強風が肌と髪を撫でる。少し寒い。 自分とそっくりなあの女性は――やはりコレットなのだろうか。 もともと髪の色が似て [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第六章02
  • 「気持ちは嬉しいが、きみがエリスでない以上、極めて迷惑な好意だ」 ジェラルドは片手にメスを持ったまま女を壁際に追い詰める。「きみは、俺が先日解雇した使用人だろう。脅迫文と毒では飽き足らなかったのか。まだエリスに手を出すつもりならこの場で解剖するぞ」 ジェラルドが嗤う。「内臓はさぞ高く売れるだろうな」 それは医者とは似つかわしくない――さながら悪魔の笑みだった。「いったいどうなってるの!?」 声に出し [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第六章01
  •  ――中天にかかる満月が美しく空に映える夜。 伯爵邸に隣接する図書館に人影があった。女は何気なくそこを訪れただけだった。図書館の入り口は施錠されていたが、彼女がそこに立つとカチャリと音を立ててひとりでに鍵が開いた。 いぶかしみながらも女は中へ足を踏み入れる。入ってすぐのカウンターに羽の生えた熊の銅像があった。その瞳は萌黄色に妖しく光っている。『きみは僕の愛しいひとに名も姿もよく似てる。だから願いを [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第五章06
  •  シワが寄った眉間にキスを落として、目もとにも同じように口づける。エリスは目を細めてくすぐったそうにしている。可愛い。 彼女の唇には寄らず首すじに舌を這わせ、柔らかな肌を舐め下ろしていく。「ふ……」 エリスの、声にならない吐息が耳をかすめるとよけいに性欲が増す。このままいっきに押し倒していいようにしたいのを何とか抑えて、そっと彼女の体をベッドへ撫で付けて仰向けにした。 エリスはうっとりとした様子で [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第五章05
  •  エリスを脅迫し毒を盛った使用人は解雇状を突きつけられるなりすぐに荷物をまとめて屋敷を去ったとニーナに聞いた。突然の解雇にもかかわらず何の反発もなかったのはやはり思い至ること――後ろめたさがあったからだろう。「……なにをしている」 診察のためにエリスが寝泊まりしているゲストルームを訪ねると、当の彼女はベッドではなく窓際にいた。その手には雑巾らしきものが握られていて、窓ガラスを拭いているようだった。 [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第五章04
  • 『私を信用してください。過労で倒れちゃいますよ』 二年前、エリスに言われたこの一言は絶大だった。 彼女は何気なく言ったに違いない。何の意図も裏もなく、ただ純粋にそう思ったから出てきた言葉なのだろう。しかしそれゆえに心を揺さぶられた。他人など別個体のもので、信用ならないしどうでもいい存在なのだと決めつけて凍っていた心をエリスが溶かしてくれた。 それ以来、急速に彼女に惹かれた。エリスの面立ちは美しく実 [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第五章03
  • (早急に外鍵を増やさねば) いまの状態ではエリスがそうしようと思えば中から鍵を開けることができる。それではいけない。 いままでめまぐるしく働いていた彼女だ。部屋から出ることもできないとなればさぞ退屈するだろう。 しかしいまは、エリスを自由に出歩かせるわけにはいかない。体調のこともあるが、なによりも危険だからだ。 「きみだけが毒を盛られたのだ」とハッキリ告げてしまうほうがよかっただろうか。いや、それ [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第五章02
  •  吐き気とめまい。脈拍と体温の低下。唇のチアノーゼ。そして意識の混濁。 なぜもっと早く気がつかなかったのだろう。 エリスは子を宿しているのではない。いや、その可能性は捨てきれないが、とにかくいまエリスの身に起こり彼女を苛んでいるのは別の事象だ。 エリスは毒に侵されている。植物性の――主にきのこに多く由来するもので、すぐに死に至るような猛毒ではないが、処置が遅れれば神経系に後遺症を残すこともある。  [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第五章01
  •  ジェラルドがエリスとの婚約を公にしたあとのこと。エリスへの風当たりはさまざまだった。 メイド頭のニーナは喜んでくれたが、ほかの同僚は戸惑っているようすだった。 身分違いの結婚な上に、いままで否定してきたことを覆す事態だ。自業自得だと反省しつつ、いまは割り切って業務に励むしかない。(そういえば、まだ来ないわね) 今月は赤い手紙がまだ届いていない。いや、待っているわけではないのだが……何だか返って怖 [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第四章07
  • 「な、何ですか? あ、そういえば……新しい看護助手が男性だとは思っていませんでした」「きみが嫌がるかと思って、男を募集した。彼はいずれ医者として独立するだろうから、それまでの腰掛けだ」 一瞬、首を絞められるのかと思った。机を拭いていたところに後ろからジェラルドの腕がまわり込んできて、片方は首に、もう片方は胸の下にきつく巻きつく。「……先生?」 身をかがめてジェラルドはエリスに頬ずりをする。甘えるよ [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第四章06
  •  ジェラルドの気持ちを知った翌日は何だか妙に仕事がやりづらかった。加えて、「きみの代わりの看護助手を募集することにした」と朝一番に言われて反応に困ってしまう。(そりゃ……結婚して仕事を辞めたいとは常々思っていたけど) しかしいざそうなるとかなり複雑だ。贅沢な悩みだとは思うが、複雑なのだ。 まず第一に、仕事を辞めるということ自体に抵抗があった。いまさらだ。あんなに辞めたがっていた自分は何だったのだろ [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第四章05
  •  言葉もなくいっそうぼろぼろと涙をこぼすエリスにジェラルドはぎょっとして戸惑った。「っ、なぜよけいに泣くんだ。泣き止ませたくて告白したというのに」 いたわるように目尻に指を添えられ、そんな優しい仕草にも歓びが込み上げて感極まってしまう。「ぅ、くっ……。だって……先生がいきなり素直になるから……! ……嬉しくて」 すう、はあっと短く呼吸しながらエリスは続ける。「私……もっと早く、素直になればよかった [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第四章04
  •  こんなことはいままでになかった。淫猥な行いは数知れない。しかし、子ができる可能性のある行為だけは律儀に避けてきたジェラルドだ。(子どもができたら私は働けなくなってしまうのに) あるいは、子を成しても堕ろさせるつもりなのだろうか――。 エリスは眉根を寄せて大きく目を見開いた。それだけはどうしても許せないし彼がそれを行うとも思いたくない。どれだけ性格が悪かろうとも医者だ。芽生て間もなくであろうと尊い [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第四章03
  •  淡いオレンジ色のランプの光が彼の顔を半分だけ照らす。ジェラルドの顔は目に見えて怒気にあふれている。ランプの光は温かみのあるオレンジ色だというのに、彼の顔を冷たく照らし出す。光くらいではどうにもならないほど眉間にはシワが寄り、口は固く引き結ばれていた。(何でこんなに怒ってるの?) 不機嫌なのかとも思ったがそれとは明らかに違う。八つ当たりではなく、何らかの怒りが自分に向けられているのがひしひしと伝わ [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第四章02
  • 「……そう。好きな人がいるの。ごめんなさい、すぐに言わなくて。もっと早くその話をしていれば、わざわざ足を運んでもらわなくてもよかったのに」 もともと晴れやかとは言い難かったアゼルの表情がいっきに曇る。アゼルは少しうつむき、唇を噛んだ。「いや……いいんだ。その想い人とはうまくいきそうなのか?」「え、ええ……」 上手くいくもなにも、想い人なんていない。ああ、また嘘を重ねてしまった。エリスは自己嫌悪から [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第四章01
  •  セント・ノースヴィア病院で日夜仕事に励み伯爵邸の使用人宿舎を留守にしているあいだに何通かの手紙が届いていた。 いつもの赤い手紙も含まれていて、こうも定期的に届くと逆に手紙が来ないことのほうに違和感を覚えてしまいそうだ。赤い手紙の主になにかあったのだろうか、と。まあ、それは皮肉だ。 エリスは宿舎の私室の書き物机の前で赤い手紙の中身を薄目で確かめたあとビリビリと破いてゴミ箱に放った。それから他の手紙 [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第三章07
  •  尽くし、尽くされる行為。彼の顔の前に秘所をさらし、いっぽうで彼の猛ったそれを舌でなぐさめる、何とも淫猥な行為――。 いったいなにをしてるんだろうと思ういっぽうで気持ちがいいのはまぎれもない事実だ。そのことに我ながら辟易する。「んっ!」 ジェラルドの顔にまたがるエリスの両脚がビクンと震える。彼の指が蜜口の浅いところをヌチャリと水音を伴ってえぐったからだ。これは指示《サイン》。舌だけでなく手指も使っ [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第三章06
  • (……どう答えよう) 病院勤務への誘いは受けていない、と嘘をついても、ミルズとジェラルドが話をする機会があればすぐに嘘が知れてしまうだろう。エリスはひとまず素直に事実を話すことにした。「お誘いは受けましたけど、お断りしました」「なぜ。俺よりもミルズ先生のほうが優しいんだろう?」 エリスの視線が薄暗闇の室内をさまよう。「ノースヴィア病院は……患者さんとお話しする暇もないんです。それは、嫌ですから」「 [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第三章05
  • 「そういう問題じゃなくて……、やっ」 連日の病院勤務で心身ともに疲れている。慣れない職場というのはそれなりに気も遣った。 もう眠りたい。まぶたが重い。それなのに寝間着はどんどん脱がされて体が無防備になっていく。しかし抵抗する両手にはさして力が入らない。 もうほとんどなにも身につけていない状態だ。寝間着の袖が腕に引っかかっているだけだ。するとなぜかジェラルドにじいっと見つめられた。どうしてか不意にミ [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第三章04
  •  セント・ノースヴィア病院の近くの宿で過ごす最後の夜だった。 二週間分の疲労がいっきにやってきたようで、ベッドへ入るなりすぐに眠りに落ちた。そう、眠りが深かった。だから、もしかしたらしばらく気がつかなかったのかもしれない。 誰かに髪や頬を撫でられている、そんな夢を見た。体に感じる重みは生々しく、とても夢だとは思えずしだいに覚醒していく。「ん――っ!?」 夢ではない、と自覚したとたん口を手のひらで塞が [続きを読む]
  • 伯爵は肉欲旺盛なお医者さま 第三章03
  •  ジェラルドの命《めい》を受けてセント・ノースヴィア病院に応援要員として勤めて二週間が過ぎようとしていた。 伯爵邸からは馬車で小一時間ほどかかるため、エリスは病院の近くの宿に寝泊まりしていた。夜勤もあるので、伯爵邸の宿舎から通勤するのは辛いだろうということでミルズが計らってくれた。 セント・ノースヴィア病院はじつに効率的な医療を患者に提供していた。すべてが事細かにシステム化されている。じつに効率的 [続きを読む]