八朔みかん さん プロフィール

  •  
八朔みかんさん: Nikki Drop
ハンドル名八朔みかん さん
ブログタイトルNikki Drop
ブログURLhttp://nikkidrops.blog.fc2.com/
サイト紹介文オリジナルBL小説ブログ。医師×看護師 / 調理師×専門学校生 / 薬剤師×薬剤師 ※別サイトあり〼
自由文『非常階段の恋人』を連載中
健気な専門学校生とぶっきらぼうな調理師の恋模様を描いています
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供49回 / 365日(平均0.9回/週) - 参加 2014/04/14 08:47

八朔みかん さんのブログ記事

  • 非常階段の恋人 42
  •  そんな礼音の憶測を露ほども知らない施設長は、礼音をソファーに案内しリモコンを渡してこう言った。「テレビでもつけて くつろいでね」 施設長がケトルを火にかけ電動ミルにコーヒー豆を入れている間、礼音は言われた通りに電源を押したが、土産のことを思い出して立ち上がる。「これ、良かったらどうぞ」「気を使わせて悪いね。でも、嬉しいな。何が入っているんだろう?」「ラスクです。店の前がすごい行列で『どんなもんか [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 41
  •  人の気配を感じて振り返ると、施設長がフロアの陰から現れ片手を上げていた。休日の彼は白のバンドカラーシャツに8分丈のパンツというラフないでたちで、スーツ姿しか知らない礼音はそのギャップに見入ってしまう。「迷わずに来れた?」「地下鉄の傍だったんで、すぐ分かりました」「今日は来てくれて嬉しいな。明日は休み?」「はい」「ならゆっくり出来るね。あれだったら泊まっていけばいい」『泊まりだって?!』と心の中で [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 40
  •  それってどういう意味? と、言葉の続きを知りたかった礼音は慌てて振り返るが、肝心の花井は大きな背中を揺らしながら遅番のスタッフの方へ歩いているところ。「チーフったら、まだ居たんですか?」「中原君と話してた」「えっ、中原君?」と、厨房を覗き込む瞳と目が合った礼音は皿洗いの手を動かしながら会釈した。「すみません。もう帰ります」「二人で居残りなんて珍しい」「何を話をしていたの?」とニヤニヤされて言葉に [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 39
  •  礼音は花井が封印していた過去を話してくれたことに嬉しさを覚える反面、胸を締め付けられるような痛みも感じていた。 彼の人生は紆余曲折であった。高校時代はバスケットボールの選手として将来を有望視されていたのに事故でその夢が潰え、その後恩人ともいえる伴侶と巡り合ったけれど不妊という壁を越えられずに離婚。『フランス料理の修行を断念する』という代償を払ったにもかかわらずである。 それを思うと涙が滲んできた [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 38
  •  そう思った時には口に出していた。「本当は、奥さんが来るから行きたくなかったりして……」 この言葉に花井の片方の眉がピクリと動くのを見た礼音は、『余計なことを言った』と臍を噛んだのだが―――「彼女は来ない」「え?」「同窓会のハガキが届いたあと連絡があって。『出席する』と答えたら『自分は遠慮しておく』と言っていた」「そうなんだ……」「同窓会で元旦那と顔を合わせられるほど図太かないさ」「あのう、奥さん [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 37
  • 「す、すいません……」「なんで謝るの?」「それは……」「気を使わなくていいよ」「そんなつもりじゃ……」「あいつんち、マンションの最上階でモデルルームみたいに綺麗だよ」「そうなんですか……」「花火大会の日に行った時、リビングの窓ガラス一面に大輪の花火が映って見事だったな」「施設長さんの家には よく行くんですか?」「全然。その一度きり」「意外ですね」「会うのはもっぱら例の居酒屋さ。まあ、大学進学で上京 [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 36
  •  その日の夜、ベッドに横になった礼音はクリーム色の天井を眺めながら呟いた。「抱きしめるってことは…… 俺に気があるのかな?」 いやいや、あり得ない…… と首を振ると、理由をあげつらっていった。 まず、あれは自分を励ます行為で愛情表現とは違うだろう。以前花井にされたのと同じで、あの世代は こういった場合ハグするものなのかもしれない。 そして、自分に好意を持つ理由が皆目見当がつかない。あれほどの男が何 [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 35
  • 「彼は、ええっと…… 同性愛者だったの?」「いいえ」「じゃあ、昔からの知り合い?」「ぜんぜん」「それなのに よく思い切ったことをしたな、成り行きとはいえ」「俺、無謀なんです。こう見えて」「ある意味、男らしいというか……」「施設長さんだったらしませんよね、こんなバカなこと」 苦笑いする施設長を尻目に、礼音は質問を投げかけてみた。彼がゲイであるという確信はなかったけれど、これまで抱えていた疑問や悩みに [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 34
  •  花井に振られ、倫太郎と恋人関係を解消してから、礼音は今まで味わったことのない空虚感を覚えるようになった。学校にいる時やバイト中、友人たちと遊ぶときは気分が紛れたが、誰もいない部屋に帰って来ると それに孤独感が加わり、寝る時も明かりを灯し、テレビもつけっぱなしになった。――― 花井に告白したのも、倫太郎との関係を見直したのも自分の意思でやったことなのに 【後悔】と言う二文字が脳裏によぎる度に頭を振 [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 33
  •  父親の葬儀後、倫太郎はしばらく実家にいた。その間、礼音の携帯に葬儀参列のお礼の電話があり、気遣いの言葉と喪主をやり遂げたことへの感嘆の弁を述べると『長男として当たり前のことをしただけ。でも、法要や相続、役所や保険の手続きとか分からないことばかりで頭を抱えている。しばらくは実家と学校を行き来しそうだ』 と言い、受話口の向こうで苦笑いをしていた。 また連絡する――― そう言い残して電話が切れた後、ぷ [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 32
  •  倫太郎からの電話に礼音の鼓動は早鐘のように打ち始め、もたつく指先でタップした。「倫ちゃん、大丈夫なの?」 唇から出たのは、幼馴染をいたわる言葉。バスの車内にもかかわらず声が大きくなったが、興奮を抑えることが出来ない。「丁度、倫ちゃんにメールしてたところだったんだ。おじさん、大変なことになったね」『知っていたのか?』「母さんから電話があって。俺、なんて言ったらいいのか……」 諦めていた倫太郎からの [続きを読む]
  • 近況報告
  • おひさしぶりです、八朔みかんです。変な広告が出始めたのでここいらで近況報告を……ツイッターでも書いたんですが、一ケ月前に転職してから怒涛の日々を送っています。体も頭も四苦八苦していて小説を書く余裕がないので、話の続きはもう少しあとになりそうです。今しばらくお待ちくださいませ。 [続きを読む]
  • 今夜はスウィート&ビター 最終話
  •  風呂から上がると原が入れ違いに部屋を出て行き、残された岸田は置きっぱなしの段ボールの前に跪いた。箱の大きさの割に軽かったのが意外で、貼り付けられた伝票を見ると品名が【食料品】になっている。 同棲して約半年。その間 原の母親から荷物が送られてきたのは これで2度目。中身は肌着や靴下などの衣類、お歳暮でもらったようなカニ缶やハムや菓子類で、息子を想う母親の気持ちを目の当たりにした岸田は虚しい気分に陥っ [続きを読む]
  • 今夜はスウィート&ビター 4
  • 「これ、なに?」と怒ったように問われて固まる岸田。頭の中では最悪な状況を覆す妙案を考えたが、ここは素直に謝るしかないと観念すると声を震わせながら言った。「今日貰ったチョコレートの残りです。原さんに見せづらくて隠しました」「どうしてそんなことをしたの?」「それは……」「俺より数が多いと思って遠慮した?」「……」「そういうことをされた方が傷つくんだけど」「すみません」「君の方がモテるのは重々承知してい [続きを読む]
  • 今夜はスウィート&ビター 3
  •  在宅訪問を終えた岸田は帰宅を急いだ。予定ではもっと早く帰れたのに……と、イラつきながらバスから下車すると、両手に抱えたチョコレートを揺らしながら小走りにアパートへ向かう。 もしかしたら先に帰っているかも…… そう危惧しながら部屋に入れば中は真っ暗で、胸を撫で下ろした岸田は着替えるために納戸へ行き 重いコードを脱いだ。が、その時だ。ドア越しに玄関が開く音がして「ただいま〜」と声がしたのである。 岸 [続きを読む]
  • 今夜はスウィート&ビター 2
  •  巷はバレンタインデームード一色だが、患者はいつも通り病院を受診し、院外処方箋をもって薬局を訪れる。しかも、今日は朝から患者が途切れないため、岸田は昼休憩をずらして仕事に没頭した。 今日は投薬業務だったので、調剤から回って来た薬を監査したあと患者に服薬指導をして手渡す。患者の中には慢性疾患を抱えた人もいて顔なじみなのだが、そのうちの一人が大きな紙袋をカウンターに置いてこう言った。「今日はバレンタイ [続きを読む]
  • 今夜はスウィート&ビター 1
  •  デパートの特設会場の前に立った岸田怜は、ごくりと唾を飲み込んだ。バレンタインデーを数日後に控えてチョコレートを買い求めに来たのだが、女性たちの波に我が身を投じることに躊躇したのである。 今時、男性が自分の為、もしくは家族や知人にチョコレートを買い求めるのは珍しいことではなくなったが、やはり女性の聖域に足を踏み入れるのは至難の業。スーパーで板チョコを買ってブラウニーやフォンダンショコラを作ることも [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 31
  •  本当なら飛び上がるほど嬉しい話なのに――― と、礼音が やるせない気持ちになっていたら、花井の表情がだんだん険しくなってきた。「行きたくないなら別にいいけど」「そんなこと言ってません!」「ほんとかいな?」「ほんとですって。えっと…… 何か準備しておくものとかありますか? 例えば釣り竿とか餌とか」 「何もない。身一つで構わない」 返って来た返事がぶっきらぼうだったので、心を見透かされて焦った礼音は [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 30
  •  その後、花井は猛烈なスピードで翌日の仕込みを始めた。普段から手際よく仕事をこなしているが、今は早回しの様な動きで食材を揃え、カットし、昼食のメイン料理も調理する。 彼が失敗を取り戻している間、礼音たちも手助けをした。久賀は切込みの手伝いを、礼音は昼食の準備を一手に引き受けて厨房内を飛び回る。そして、レストランオープンの10分前に全てが完了すると、花井の顔に安堵の色が広がった。「なんとか終わった… [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 29
  • 「本当に申し訳ありません」と頭を下げたその脳裏に ある人物の面影が浮かんできた。この人には絶対知られたくない――― そう思った礼音は必死に訴えた。「このこと、施設長には黙っていてくれますか?」 これまでの言動や態度から施設長が花井に心を寄せているのを知っていた礼音は、彼の耳に入って気まずくなるのを恐れたのだが、何も知らない花井は それを快諾したあと礼音の肩を叩いて「明日またね」と言い残し車へ戻ってい [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 28
  •  礼音の告白を受けた花井は呆然と立ち尽くし、瞬きすらしなかった。何度か口を開け閉めさせたものの言葉を発するには至らず、しまいには溜息をついて唇を閉じた。 勢いで思いの丈をぶつけたものの、事の重大さに気づいた礼音は深く後悔した。――― 俺ってバカだ、受け入れられるはずなんてないのに 告白を撤回したくても後の祭りで、ならば冗談にすり替えてしまおうと無理やり笑顔を作ろうとした矢先、花井が真剣な面持ちで [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 27
  •  部屋に行くことを断った花井は礼音を とある場所へ連れて行った。そこは施設の非常階段。「あんまり大きな声では しゃべれないけど」そう言いながら煙草を取り出し、そのうちの一本を礼音に差し出す。「吸う?」 一瞬きょとんとなる礼音だったが、苦笑いしながら丁重に断った。「遠慮しなくていいのに」「そういうわけじゃないんです」 相変わらず、花井は自分が喫煙すると勘違いしたままだが、訂正するつもりは今はない。そう [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 26
  •  一歩、二歩と近づく花井の顔は無表情だが全身から放たれる威圧感が半端なく、礼音と倫太郎は硬直した。しかし、礼音は身を挺して倫太郎の前に立ちはだかると こう叫んだ。「すみません!こいつ、頭に血がのぼると見境がなくなるんです。本人も反省してるんで勘弁してやってください!」 だが、花井の視線は後ろの倫太郎を捉えたままで、礼音はさらに言い募った。「こんな行動に出たのは俺のせいなんです。どうか俺に免じて許し [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 25
  •  返って来た言葉に苦渋の色が滲んでいるのを感じた礼音は、すぐさま頭を下げた。「すみません、立ち入ったことを聞いて」「まあ、色々あったってことさ」 至極プライベートな部分に干渉して反省した礼音は 以後口数が少なくなったが、頭の中では離婚の憶測がぐるぐる回っていた。性格の不一致、浮気、DV、金銭問題――― 人生経験の浅い自分には このくらいしか思いつかないが、浮気できるほど器用じゃないし、ぶっきらぼうだけ [続きを読む]
  • 非常階段の恋人 24
  • 「幼馴染と付き合うなら、それなりの覚悟が必要っていうのは施設長さんと同意見なんだ。俺、何にも考えず心の赴くままに行動していました」「まあ、人それぞれだからね。とにかく、自分の気持ちに正直になるよりほかないよ。恋愛って なるようにしかならないから。そうだろう、施設長?」 すると、二人の話を黙って聞いていた施設長が「そうだな」と頷いた。「中原君が一番幸せになる方法を選べばいい。その時は良心の呵責に苛ま [続きを読む]