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2014/06/10

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  • 照子と瑠衣

    著者 井上 荒野出版社 祥伝社  後先考えず行動する友だちに手を貸して、どんどん窮地に陥るという女ふたりの逃避行を描いた映画『テルマ&ルイーズ』は、絶望的な結末に迷わず突き進む女の友情がすがすがしさを感じさせる名作だった。その題名をもじったような本

  • 本売る日々

    著者 青山 文平出版社 文藝春秋   十返舎一九の『東海道中膝栗毛』や曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』などの人気本には目もくれず、漢籍や仏書、歌学書、国学書といった学術的な書物を扱う松月堂の平助には誇りと夢があった。単なる本売りではなく、いずれは版元

  • カモナマイハウス

    著者 重松 清出版社 中央公論新社   少子高齢化時代のいま、日本が直面しているのが空き家問題である。空き家率13.6%(2018年)、すなわち7軒に1軒が空き家で、それは空き家一軒にスイス人が一人ずつ住んだとしてスイスの全人口がまるごと収まってしまう数であ

  • 墨のゆらめき

    著者 三浦 しをん出版社 新潮社   三日月ホテルに勤務して15年、生来人あたりのいい続力は、ホテルマンという職業はまさに自分の天職だと日々感じている。そんな彼が、真夏の日差しのもと、仕事の依頼で初対面の人の家に向かう。しかし、「線路沿いの道を五分

  • ヒロイン

    著者 桜木 紫乃出版社 毎日新聞出版   宗教団体が起こした無差別テロ事件の実行犯として指名手配された啓美だが、実際はたまたまその日、実行犯と行動をともにしただけで、事件については何も知らなかった。だが、無実であると証明するものはなにもない。その

  • それは誠

    著者 乗代 雄介出版社 文藝春秋 クラスのなかでも普段はそれぞれ別の友だちといる高校生が、修学旅行という特別な行事で同じ班になる。行き先は東京、まる一日が充てられる班行動は、あらかじめ計画表を担任に提出して計画通りに行動しなければならない。その計

  • 777 トリプルセブン

    著者 伊坂 幸太郎出版社 角川書店  東京発の東北新幹線「はやて」に乗り、トランクを盗んで上野で降りる。その「簡単な仕事」も世界一ツキのない男、七尾がやると次々にトラブルが発生して上野で降りることができない。それどころか七尾の同業者同士のいざこざ

  • 悪口と幸せ

    著者 姫野 カオルコ出版社 光文社  昭和の時代、たいていの親は子どもがマンガを読みふけるのにいい顔をしなかった。そんな親の目を盗んで読んだマンガのストーリーは、秘め事のスリルとともに長く少女の心に残る。同時に、主人公はいつも美しい少女で、どんな

  • ハヤブサ消防団

    著者 池井戸 潤出版社 集英社   亡き父が愛したハヤブサ地区に居を構えた作家の太郎は、誘われるまま地域の消防団に加入する。のどかな土地での和気あいあいとした閑職と考えていた太郎だったが、すぐにそれが思い違いだったことに気づく。ボランティアとは思

  • 八月の御所グラウンド

    著者 万城目 学出版社 文藝春秋  さらさら流れる鴨川に架かる橋から望む大文字山。京都のそんな爽やかなイメージは夏の酷暑と冬の底冷えを一度でも経験すると雲散霧消する。京都の大学で学んで4年、夏休みには京都脱出を至上としていた「俺」だったが、休み前に

  • 荒地の家族

    著者 佐藤 厚志出版社 新潮社  大地震と津波がすべてを奪ったあの日を祐治はいまだに心のなかで清算できずにいる。あれから時が経ち、街や道路は整備され、かつての惨状の痕跡はほとんど消し去られた。震災後の苦境時に亡くした妻や、再婚したがうまくいかなか

  • 夏日狂想

    著者 窪 美澄出版社 新潮社  白皙の詩人、中原中也は、その才を惜しまれつつ若死にした。まだ学生だった中也の才能を見抜き、彼のミューズとして中也を支えた年上の女、長谷川泰子の生涯を描いたのが本書である。女優を夢見たが芽が出ず、男たちに愛され求めら

  • 奇跡

    著者 林 真理子出版社 講談社  「事実は小説よりも奇なり」というが、逃亡犯たちについてのノンフィクション『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』のなかで著者の高橋ユキと対談した道尾秀介は、事実をそのまま書いたら小説はかえって嘘くさくなるといったコメン

  • 彼女のことを知っている

    著者 黒川 創出版社 新潮社  人の記憶は不思議なもので、曖昧なところと妙に鮮明なところがある。誰かと出かけたときの些細な会話は覚えているのに、なぜいっしょに出かけたのかが思い出せなかったりする。著者の分身とおぼしきミツオが20代のときに取り組ん

  • 汝、星の如く

    著者 凪良 ゆう出版社 講談社  瀬戸内海に面した小さな島にはプライバシーが存在しない。暁海の父親が愛人宅から戻ってこないことや、櫂が京都から転校してきたのは母親が男を追いかけて島にやって来たからだと誰もが知っている。いわば島の異分子である暁海と

  • うたかたモザイク

    著者 一穂 ミチ出版社 講談社   表題の通り、作風の異なる物語がモザイクのように散りばめられた短編集である。 読者モデルの杏が目立たない同級生に惹かれ、彼女の地下アイドル活動を推す「droppin’ drop」や、9.11で恋人を喪った従兄を慕い続ける「s

  • 待ち遠しい

    著者 柴崎 友香出版社 毎日新聞出版   一軒家の離れを間借りしている春子は、大家が高齢で亡くなったあと、代わりに母屋に移り住んできた大家の長女、ゆかりに誘われて時々会食するようになる。母屋の向かいにはゆかりの甥夫婦が住んでいて、甥の妻の沙希とも

  • 開墾地

    著者 グレゴリー・ケズナジャット出版社 講談社  「言葉の壁がある」というと、外国語を話せないから外国人と意思の疎通ができないという意味になる。隣国と国境を接していない日本では、国内で「言葉の壁」を感じることはなく、学校や近所で、ましてや家庭内に

  • あなたに安全な人

    著者 木村 紅美出版社 河出書房新社   都会の生活に疲れて9年ぶりに生まれ故郷に戻ってきた妙は、空き家となっていた両親の家に転がり込み、極力外出せずひっそりと暮らしている。新型コロナ感染症が広がりはじめた当初、人の行き来の少ない田舎では感染者の多

  • 水平線

    著者 滝口 悠生出版社 新潮社  亡き祖父が昔住んでいた硫黄島の旧島民墓参事業に参加して以来、来未のもとに知らない男性から電話がかかるようになる。祖父一家が硫黄島から強制疎開する際、軍属として島に残り、十五歳で亡くなったはずの祖父の弟の忍を名乗る

  • 沈黙の終わり

    著者 堂場 瞬一出版社 角川春樹事務所  千葉と埼玉の県境で数年にわたり起きている小学校低学年の少女の行方不明、殺害事件は、同一犯によるものではないかと若手記者の古山は察しをつける。県をまたぐ犯罪には目が届きにくい縦割りの警察と異なり、新聞記者は

  • 逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白

    著者 高橋 ユキ出版社 小学館新書   漫画「ゴールデンカムイ」や吉村昭著「破獄」のモデルとなった白鳥由栄は、青森、秋田、網走、札幌各刑務所から計4度脱獄した経歴とその特異な手口から「昭和の脱獄王」の異名を持つ。狭い独房の壁をヤモリのようによじ

  • 燕は戻ってこない

    著者 桐野 夏生出版社 集英社  元バレエダンサーの基とイラストレーターの悠子は、不妊治療の末に代理出産という手段を選ぶ。悠子の卵子は老化による不育症のため、基の精子を代理母に受精させる。つまり生まれてくる子は、実質的には基と代理母の子になるのだ

  • パンとサーカス

    著者 島田 雅彦出版社 講談社  選挙応援演説中の安部元首相が凶弾に斃れた事件を予見していたと話題になった作品である。政権与党の実質的な一党独裁が続く日本の現状やアメリカに追従しながら保身と蓄財にいそしむ議員たちを風刺的に描き、そんな政権を支持し

  • クラウドの城

    著者 大谷 睦出版社 光文社  ミステリー作家の登竜門のひとつ、日本ミステリー文学大賞の第25回新人賞受賞作である。バグダッドで起きた自爆テロで恋人を失った鹿島丈は帰国後、北海道に作られた世界規模のデータセンターの警備員として働き始める。国家機密や

  • 彼女の名前は

    著者 チョ・ナムジュ (小山内 園子/すんみ訳)出版社 筑摩書房  大ベストセラー『82年生まれ、キム・ジヨン』で韓国社会における女性の姿を世間に知らしめたチョ・ナムジュが、新聞や雑誌などに発表した短編を集めた本書では、さまざまな年齢、社会的地位にある

  • 大鞠家殺人事件

    著者 芦辺 拓出版社 東京創元社 大阪、船場の解体現場で防空壕が発見される。なかには大量の本があった。古今東西を問わぬ当時最新のミステリー本を包んでいた古びた布には「大鞠百薬館」の文字とロゴが染め抜かれている。同じころ、そこからほど近い病室では間もな

  • すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集

    著者 ルシア・ベルリン (岸本 佐知子訳)出版社 講談社  ルシア・ベルリンの名は、たまたま目にした雑誌かなにかで知った。それから読むのを後回しにしていたが、今ではもっと早く読んでおけばよかったという気持ちでいっぱいだ。幼少期から南米チリで過ごした

  • スワン

    著者 呉 勝浩出版社 角川書店  地元民なら誰でも足を運んだことのある大型ショッピングモール、スワン。のどかなモールに突然二人の男が現れ、手製の銃と日本刀で無差別に客に襲いかかる。犯行後、犯人たちはその場で自殺する。数十人の死傷者を出した未曽有の

  • 八月の母

    著者 早見 和真出版社 角川書店  2014年8月、伊予市で起きた17歳の女子への集団リンチ殺害事件をもとにしたフィクションである。 男にだらしない母に育てられた娘は、母の生き方を嫌いながらも同じような生き方しかできない。生まれつきの淫靡な空気をまとい

  • 任務 松本清張未刊行短編集

    著者 松本 清張出版社 中央公論新社  副題が示す通り、松本清張の未刊行作品を収録した短編集である。ほとんどが1950年代中頃から70年代にかけて雑誌掲載されたもので、推理小説の巨匠として名の知られた著者も若かりし頃は、さまざまな傾向の小説を手がけ、模

  • 俺ではない炎上

    著者 浅倉 秋成出版社 双葉社  気になったツイートをリツイートする。それは大学で社会派サークルを主催する初羽馬にとって、ごく日常的な行為である。まして、リツイート数がたったの二十六なら自分がリツイートすることにより、さらに拡散することができる。

  • 掌に眠る舞台

    著者 小川 洋子出版社 集英社  小川洋子の代表作とされる『博士の愛した数式』には正直、評判ほどの感銘は受けなかったのだが、以降発表された『ことり』『琥珀のまたたき』での世界の片隅にひっそり生きる人々への慈しみと優しさに満ちた作品には魅了されてき

  • しろがねの葉

    著者 千早 茜出版社 新潮社  食い扶持を探して石見銀山を目指す道中で両親とはぐれたウメは、伝説の山師、喜兵衛に拾われ、女人禁制の銀山に出入りするようになる。夜目が利くウメは重宝されるが、成長するにつれ女らしくなる体をもてあましはじめる。一方で、

  • 黄色い家

    著者 川上 未映子出版社 中央公論新社  最後のページを閉じてすぐさま最初から読み直したくなる。バブル崩壊の予兆に満ちた1990年代にいっしょに暮らしていた黄美子が逮捕されたというニュースをきっかけに花が当時を回想する本書は、顛末を知っているからこそ

  • 女人入眼

    著者 永井 紗耶子出版社 中央公論新社  武士が台頭した鎌倉時代に、源頼朝の妻でのちに尼将軍と呼ばれた北条政子は女ながらになぜ世を牛耳ることができたのか。政子の長女の花嫁教育の一環として都から呼び寄せられたひとりの女房の視点を通し、日本史上最強と

  • 底惚れ

    著者 青山 文平出版社 徳間書店  奉公先に暇を出され、故郷にも居場所のない女が江戸で生きていくには女郎として体を売るしかない。かつて同じ屋敷に奉公していた芳も今、「俺」との間に起きた事件の罪に怯え、岡場処のどこかにいるに違いない。「俺」しか知ら

  • はぐれんぼう

    著者 青山 七恵出版社 講談社  クリーニングが仕上がっても引き取り手が現れない衣類は店に保管される。優子が働くクリーニング店ではそうした衣類を「はぐれんぼう」と呼んでいる。店が加盟する本部の方針で、溜まった「はぐれんぼう」を処分することになり、

  • スタッフロール

    著者 深緑 野分出版社 文藝春秋  映画本編が終わると、作品制作に携わったスタッフの名前がスクリーンに流される。このスタッフロールに、いつか自分も名を連ねたい。映画界が今よりもずっと男性中心だった80年代にマチルダはそんな望みを抱く。大好きだったロ

  • 黒牢城

    著者 米澤 穂信出版社 角川書店  織田家から摂津支配を任されたにもかかわらず、荒木摂津守村重は織田信長に反旗を翻し、有岡城に籠城する。城の守りは堅固で配下の者の士気は高い。あとは毛利の援軍を待つのみという村重のもとへ織田方から使者がやって来る。

  • 隠し女小春

    著者 辻原 登出版社 文藝春秋  出版社で校正を手がける独身貴族の聡には人に言えない秘密がある。等身大のラブドール「小春」を飼っているのだ。卒論で近松門左衛門をテーマにした彼は、東洋的な風貌のラブドールに「心中天網島」の「小春」という名をつける。

  • 現代生活独習ノート

    著者 津村 記久子出版社 講談社  最近の文学賞の候補作に共通するのは、作家の低年齢化だろう。10代の少年少女たちが生み出す作品世界にひきこまれ、彼らの創造力に感服することも多い。そもそも小説は、夢や想像が原動力となって作られるのだから、作家の年齢

  • 愚かな薔薇

    著者 恩田 陸出版社 徳間書店  亡き母の故郷のキャンプに参加した奈智は、キャンプの目的が「虚ろ舟」と呼ばれる宇宙船の搭乗者選びにあることを知る。かつて「虚ろ舟」が着陸した集落に、資質のありそうな子どもたちが集められ、キャンプ期間中に変貌できた者

  • 爆弾

    著者 呉 勝浩出版社 講談社  自動販売機を蹴り、止めに入った店員を殴って逮捕された酔っ払いの事情聴取が、都内のいたるところに仕掛けられた爆弾テロの始まりだと誰が予測できただろうか。一見無害な浮浪者風の男は、明らかに偽名とわかる名を名乗り、地域警

  • 信仰

    著者 村田 沙耶香出版社 文藝春秋  幻想に惑わされず、高級品やブランド品を見ても冷静に原価を考えてしまう永岡にとって、「現実」を見極めることはこの世で一番正しいものだった。だが、家族や友人がブランド高級品に手を伸ばそうとするたびに原価を教えて「

  • ミカエルの鼓動

    著者 柚月 裕子出版社 文藝春秋  医療用ロボットを使い手術に要する時間をより短く、かつ精確に患部を取り除く。そうすることで患者の体への負担が減り術後の回復も早くなる。最先端技術を駆使するロボット支援下手術の第一人者である西條は、自他ともに認める

  • かくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖

    著者 宮内 悠介出版社 幻冬舎  19世紀後半のヨーロッパ発祥の芸術運動の会に因んで名づけられた「牧神(パン)の会」は、日本初の耽美派運動である。政治や社会問題を排除して「美とはなにか」を追究するという芸術思潮に賛同した木下杢太郎や北原白秋たちが発起人

  • パパイヤ・ママイヤ

    著者 乗代 雄介出版社 小学館  父親が嫌いだからパパイヤ、母親が嫌だからママイヤ。そんなハンドルネームの女子高生2人がSNSで意気投合し、千葉の海辺で時を過ごす。 『旅する練習』や『皆のあらばしり』でストーリーに彩りと深みを与えていた風景描写は健

  • 水たまりで息をする

    著者 高瀬 隼子出版社 集英社  衣津実はある日、夫が風呂に入らなくなったことに気づく。理由を尋ねれば水道の水が嫌だという。夫の体臭は段々強くなり、髪や肌も浮浪者めいてくる。一緒に歩くと道行く人がさりげなく避けるのがわかる。こんな状態で電車通勤し

  • ケルト人の夢

    著者 マリオ・バルガス・リョサ (野谷 文昭 訳)出版社 岩波書店  20世紀初頭のコンゴとペルーにおける先住民への虐待を糾弾したアイルランド人、ロジャー・ケイスメントの生涯を追った物語である。大英帝国の外交官として人々に尊敬されていたロジャーは徐々

  • 剛心

    著者 木内 昇出版社 集英社  小説は作家が作り上げる世界である。架空であれ実在であれ、作家が登場人物たちの骨格を作り人格を帯びさせる。読書とは、いわば作家の創造した世界に身を置いた読者が、主人公の生を追体験をすることなのだ。明治を代表する建築家

  • リバー

    著者 奥田 英朗出版社 集英社   群馬県と栃木県の境を流れる渡良瀬川の河川敷で若い女性の全裸遺体が発見される。10年前の未解決の連続殺人事件と同じ手口に、群馬、栃木両県警は騒然となる。当時、証拠不十分で容疑者を挙げられなかったことは、捜査にあた

  • デクリネゾン

    著者 金原 ひとみ出版社 集英社  シングルマザーの作家、志絵は、コロナ禍による変化を余儀なくされた日常のなかで、最愛の娘との生活を手放し、年下の恋人と同棲を始める。これまで当たり前だったものが禁止事項となり、作家仲間との会食や編集者たちとの会合

  • マイクロスパイ・アンサンブル

    著者 伊坂 幸太郎出版社 幻冬舎  猪苗代湖で催される音楽フェスティバルのパンフレットにショート・ストーリーを書いてほしい。そんな依頼から毎年のフェスティバルごとに楽しめる軽い読みものとして書かれた作品である。敵と競い合って秘密兵器を製造する組織

  • そこにはいない男たちについて

    著者 井上 荒野出版社 角川書店  夫が急死したショックから立ち直れない実日子と、すっかり関係の冷えた夫と家庭内別居状態のまり。実日子の営む料理教室にまりが行くのは、マッチングアプリで知り合った男と会うための外出の言い訳だった。一方、料理教室の助

  • はじめての

    著者 島本 理生/辻村 深月/宮部 みゆき/森 絵都出版社 水鈴社  「はじめての〇〇」というテーマで直木賞作家4人が手がけた作品集は、それぞれの作品世界に沿った歌をボーカルユニットYoasobiが歌うという斬新な企画で話題を呼んだ。小説のとらえ方や感想が人

  • ミス・サンシャイン

    著者 吉田 修一出版社 文藝春秋  昭和を代表する大女優、和楽京子の資料整理のアルバイトを始めた一心は、瀟洒なマンションで京子本人と対面する。80代とは思えぬ魅力をたたえた彼女は、本名の石田鈴として素のままに一心に接する。長崎が同郷という縁もあり、

  • リボルバー

    著者 原田 マハ出版社 幻冬舎  作品展が催されれば常に長蛇の列ができるゴッホとゴーギャン。その二大巨匠が、南仏のアルルで共同制作を試みていたことはつとに知られている。やがてふたりは訣別するが、この時期がふたりの才能を開花させたというのは世界の定

  • 孤蝶の城

    著者 桜木 紫乃出版社 新潮社  前作『緋の河』は、タレントのカルーセル麻紀をモデルに、生まれついた性とは異なる自分の居場所を求めて闘うトランスジェンダーの姿を描いた作品だった。「シスターボーイ」として東京で名を上げ、お茶の間の人気者となったカー

  • おれたちの歌をうたえ

    著者 呉 勝浩出版社 文藝春秋  日航機墜落や地下鉄サリン事件などの世間を騒がした大事件も、時の流れとともに風化する。阪神淡路大震災や東北地震などの天災ですら、直後の衝撃や被災者らの心の傷は時間が癒していく。だが、当事者たちがそれらを忘れることは

  • あくてえ

    著者 山下 紘加出版社 河出書房新社  タイトルは、甲州弁で「悪態」のこと。母とふたりで90歳の祖母を介護する「あたし」は、なにかといえば悪態をつく祖母を「ばばあ」と呼び、別れた夫の母である「ばばあ」と血のつながりもないのに献身的につくす母親を「き

  • 犬のかたちをしているもの

    著者 高瀬 隼子出版社 集英社  子宮筋腫の摘出手術を受けて以来、性行為にうしろむきな薫は、体の関係がなくてもいいと言う恋人、郁也とつきあって三年になる。このまま穏やかな関係が続くのかと思っていた薫のまえに、郁也の子を妊娠したというミナシロさんが

  • 皆のあらばしり

    著者 乗代 雄介出版社 新潮社  高校で歴史研究部に入っている少年が、研究対象の皆川城で妙な男と出会う。歴史のみならず植物や建築、多岐にわたる知識を披露する男は、少年の研究ノートにある古文書目録を見て目の色を変える。そして、少年にある調査の手伝い

  • 春のこわいもの

    著者 川上 未映子出版社 新潮社  各々味わいの異なる6作品が並ぶ。いずれも、世界中を混乱に陥れたコロナ禍が作品世界にも陰を落とすが、そこにあぶりだされるのは人が表に出さない仄暗い感情である。歯に衣着せぬ物言いが人気の美人ユーチューバーに憧れる

  • ペッパーズ・ゴースト

    著者 伊坂 幸太郎出版社 朝日新聞出版  小説のなかの人物と現実世界で出会う。それは誰もが体験してみたいことではないだろうか。ひょんなことからテロ事件の首謀者たちと関わりを持ち拉致された壇先生は、救出に来た男ふたり組が、生徒が手慰みで書いていた小

  • 李王家の縁談

    著者 林 真理子出版社 文芸春秋  戦後77年が経ち、当時を知る人たちの高齢化にともない、なまの戦時体験に触れる機会は減少の一途をたどっている。一方で、当時は極秘だったデータや生存者の証言などを頼りに、後世の私たちはかなり正確に戦争に至る社会の動き

  • 嫌いなら呼ぶなよ

    著者 綿矢 りさ出版社 文藝春秋  コロナウィルスが蔓延しはじめ、世の中は一気にリモートワークへと舵を切った。それまで当たり前だった対面での人間関係が、画面越しに行われる時間制限つきのコミュニケーションへと一転し、最初こそ感じられた違和感はすぐに

  • ミトンとふびん

    著者 吉本 ばなな出版社 新潮社  母が逝き、母娘ふたり暮らしの生活空間のあちこちに母の面影をみる日々。あるいは、イタリアで幸せな結婚生活を送るはずだった親友の急死を受け入れられず、イタリアを旅する日々。どれだけ心の準備をしていたつもりでも、失っ

  • 滅私

    著者 羽田 圭介出版社 新潮社  物があふれているのに、さらに新しい物を手に入れようとする消費社会にNOを突きつけ、不要なものはきっぱりと捨てる断捨離がブームとなって久しい。物をもたない生き方を提唱するサイトを運営し、同時にシンプルさを売りにしたブ

  • 怪物

    著者 東山 彰良出版社 新潮社  ロシアのウクライナ侵攻を機に、再び注目を浴びた名作映画『ひまわり』は、戦争によって引き裂かれた夫婦の悲しい愛の物語だ。マストロヤンニ演ずる夫は、戦傷という意図せぬアクシデントによって母国に愛する妻を残したまま、外

  • N

    著者 道尾 秀介出版社 集英社  冒頭に掲げられた「本書の読み方」が奇想天外な物語を予感させる。6つの章を読む順は読者の自由にゆだねられ、各章ごとに頁の上下が変わるので本書は右開きでも左開きでも読むことができる。かつてアルゼンチンの作家フリオ・コル

  • 夜に星を放つ

    著者 窪 美澄出版社 文藝春秋  夜空に煌めく星々を見えない線で結び、そこに動物や神の姿を見出して物語を作り上げる。古今東西、星座は人々のロマンをかきたててきた。本書に収められた5作品も、夜空の星によって哀しみや寂しさを癒す人々の物語だ。 早世し

  • 薔薇のなかの蛇

    著者 恩田 陸出版社 講談社  イギリスの環状列石の遺跡の祭壇に、手足を切り取られた胴体だけの遺体が放置されている。まるで供物を捧げたかのような事件は「祭壇殺人事件」として、イギリスのマスコミを騒がせる。遺跡からほど近いところにあるレミントン家の

  • 白光

    著者 朝井 まかて出版社 文藝春秋  東京神田駿河台に建つロシア正教会ニコライ堂。その名の由来となったロシア人修道司祭、聖ニコライに見込まれ、日本初の聖像画師となるために明治13年にロシア留学をした女性がいた。 明治維新に伴う廃藩置県により茨城県

  • ヒカリ文集

    著者 松浦 理英子出版社 講談社  ある小規模な劇団に、ヒカリという劇団員がいた。人を包み込むような笑顔で皆を魅了した彼女は、同時に、男女を問わず心を奪い、傷つけるトラブル・メーカーでもあった。劇団の解散後数年が経ち、元劇団員の裕は劇団の主宰者、

  • くるまの娘

    著者 宇佐見 りん出版社 河出書房新社  ヤング・ケアラーの問題が注目を浴びはじめたのはごく最近のことである。学校の勉強や部活などを犠牲にして家族の面倒や家事をこなす少年少女たち。彼らがひとりで問題を抱えこまないようにする取り組みも少しずつ進んで

  • 夜が明ける

    著者 西 加奈子出版社 新潮社  巨人で異形という見た目が目立つにもかかわらず、吃音で、自己主張できないアキは極端に憶病だった。そんなアキの人生は、高校生だったある日を境に一変する。映画通の「俺」に、フィンランドのマイナーな映画俳優アキ・マケライ

  • つまらない住宅地のすべての家

    著者 津村 記久子出版社 双葉社  逃亡した脱獄囚がこちらに向かっているという一報に、普段は活気のない住宅地の面々は色めき立つ。どこまでも同じような家が続く住宅地には、何代か前からの住人と新しく住み着いた人が混ざっている。古くからの人のなかには、

  • 星落ちて、なお

    著者 澤田 瞳子出版社 文藝春秋  歌川国芳を師とし、狩野家で修行を積んだ河鍋暁斎は、画鬼と呼ばれるにふさわしい貪欲さで、やまと絵から漢画、墨画までさまざまな画風を自在に操った天才絵師だった。暁斎の死後、娘のとよは、河鍋派を率いることもなく、東京

  • 長い一日

    著者 滝口 悠生出版社 講談社  著者、滝口悠生氏が7年間住んだ家から引っ越す。1階に大家である老夫婦が住むその家に滝口夫妻は結婚前から住んでいた。91歳の大家が朝から庭で作業する物音や、会社に行く妻の代わりに在宅で仕事をする滝口氏が買い物に行く近く

  • 代筆屋

    著者 辻 仁成出版社 海竜社  小説を書くだけでは生計を立てられなかった駆け出しのころ、「私」は代筆屋をしていた。手紙を書きたくてもうまく書けない、そんな人たちがうわさを聞きつけて「私」に代筆を依頼する。ラブレターや別れの手紙など、相手に面と向か

  • 悪の芽

    著者 貫井 徳郎出版社 角川書店  例年10万人以上が集まるアニメの大規模イベントで無差別殺傷事件が起きる。8人の死者と数十人の重軽傷者を出し、犯人はその場で焼身自殺する。ニュースで犯人の名を知った安達は衝撃を受ける。その人物は小5のとき、安達たちの

  • 塞王の楯

    著者 今村 翔吾出版社 集英社  戦国時代、特に本能寺の変や秀吉没後の覇権争いを扱う時代小説は枚挙にいとまがない。家の存続のために戦国武将たちは世の情勢を見極めようとする。打算や駆け引き、恩義や忠心のなかに真の人間性が浮き彫りにされる。だから興味

  • なぜ秀吉は

    著者 門井 慶喜出版社 毎日新聞出版  全国を手中に収め、晴れて天下人となった豊臣秀吉は、その地位に安住する間もなく朝鮮出兵を決意する。朝鮮を皮切りに、明に攻め入ろうという野望は、さらなる領土拡大のためか、海を隔てた広域貿易を実現するためか。なぜ

  • 新しい星

    著者 彩瀬 まる出版社 文藝春秋 大学卒業後10数年が経ち、かつて合気道部で同期だった4人はそれぞれが抱える問題に直面していた。早産の子を失くした青子と、癌に侵されて娘を思う茅乃のつながりを軸に、生きるとは何かという問題に本書はまっすぐに向き合う。

  • おいしいごはんが食べられますように

    著者 高瀬 隼子出版社 講談社  机に置いていた飲みかけのペットボトルに、中年の上司が勝手に口をつけていたと知ったら、女性社員はどんな反応をするだろうか。気持ち悪くて怒る、ペットボトルを捨てる、あるいは気を遣って、顔には出さないようにする。上司と

  • ミーツ・ザ・ワールド

    著者 金原 ひとみ出版社 集英社  数合わせで参加した合コンで悪酔いした由嘉里は、通りがかりに介助してくれたライの家にそのまま居つく。キャバ嬢のライは美人だがそっけなく、死ぬことばかり考えている。ライと暮らし、彼女の周囲の歌舞伎町の人々と接するに

  • ジュリアン・バトラーの真実の生涯

    著者 川本 直出版社 河出書房新社  2019年、日本のある大学教授が架空の学者の論文を自身の著作に「引用」したとして、懲戒解雇された。宗教思想史を専攻するその教授は、実在しない神学者を捏造し、その神学者が書いたとする論文をとりあげていた。出典を明ら

  • 小説8050

    著者 林 真理子出版社 新潮社  父の代から続く歯科医院を営む大澤正樹と妻の節子の悩みは、中二で不登校になり、以来7年間引きこもりの息子、翔太だ。折しも、近隣に住む中年男が親の死をきっかけに家から強制退去させられる。親の年金で食いつないでいたという

  • クララとお日さま

    著者 カズオ・イシグロ (土屋 政雄 訳)出版社 早川書房  人工知能を備えた人工親友(AF)のクララは、ジョジーの家に迎えられる。ジョジーと隣家に住むボーイフレンドのリックの関係に溝を作る「向上処置」問題や、ジョジーの亡くなった姉の影を、クララは敏感

  • Phantom

    著者 羽田 圭介出版社 文藝春秋  外資系食品メーカーの工場で事務の仕事をする華美の年収は200万円台。将来に備えて彼女は株取引の資金運用に励んでいる。日本時間の夜10時に開く米国株証券取引に毎晩アクセスして、こまめに売り買いする彼女の目標金額は資産50

  • ひとりでカラカサさしてゆく

    著者 江國 香織出版社 新潮社  コロナ禍や2001年9.11のアメリカ同時多発テロ、あるいは3.11東日本大震災など、世の中を揺るがす大事件が起こったとき、すでにこの世にいない親しかった人をふと思い浮かべ、あの人ならこんなときどう反応しただろう、どんなこと

  • リリアン

    著者 岸 政彦出版社 新潮社  音楽教室の講師をして糊口をしのぎながら、ジャズのベーシストを続ける男と、彼の行きつけのスナックで働く年上の女との恋が、夜の大阪を舞台に描かれる。男はもう音楽に見切りをつけようかと考えている。女とはつかず離れずの関係

  • 著者 松家 仁之出版社 集英社  不登校の高校生、薫は、現状打開策として、海辺の町に住む大叔父の兼定のもとへ行く。生真面目な人間の多い親類のなかで、唯一明るくおしゃべりな兼定に、薫は以前から好感を抱いていた。兼定が営むジャズ喫茶には、もうひとり、

  • 生皮 あるセクシャルハラスメントの光景

    著者 井上 荒野出版社 朝日新聞出版  受講生から何人もの作家を輩出している小説講座のカリスマ講師、月島がセクハラで告発される。告発したのは、7年前に月島の講座を受講していた柴田咲歩。彼女に小説の才能を見出すだけでなく咲歩自身にも魅力を感じていた月

  • ばにらさま

    著者 山本 文緒出版社 文藝春秋  昨秋の山本文緒逝去の報には驚かされた。享年58。代表作の『恋愛中毒』や『プラナリア』、近著『自転しながら公転する』、彼女の作品はどれも慈しみにあふれている。比較的初期の作品である『眠れるラプンツェル』は特に好きで

  • 血も涙もある

    著者 山田 詠美出版社 新潮社  憧れの人気料理研究家、沢口喜久江の助手になった和泉桃子は、喜久江の夫の太郎と不倫関係に陥る。喜久江より10歳下の、あまり売れないイラストレーターの太郎は、もともと浮気が絶えず、喜久江もそれを知りつつ太郎の好きにさせ

  • 姉の島

    著者 村田 喜代子出版社 朝日新聞出版  『飛族』に続く海女の物語である本書は、天才的ダイバーのジャック・マイヨールの生涯を描いたリュック・ベッソン監督映画『グラン・ブルー』を思い起こさせる。潜る深さを競うダイバーと、アワビなどを獲るために潜る海

  • どの口が愛を語るんだ

    著者 東山 彰良出版社 講談社  異なった形の愛を描いた4つの物語は、まさに「どの口が」語っているのか、その視点や焦点が興味深い。 東京から熊本に転校してきた少年が、クラスで浮いている少女に淡い恋心を抱く。少女のまわりにはよからぬ人間の影がつきま

  • やさしい猫

    著者 中島 京子出版社 中央公論新社 東日本大震災のボランティア活動を通じ、ミユキはスリランカ人のクマさんことクマラさんと出会う。その後再会したふたりは、徐々に惹かれあい、結婚する。日本人との婚姻による在留資格をもらうため、クマさんは東京入国管理

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