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  • 練馬区立牧野記念庭園を初訪問

    今年度の有給休暇が余っていたので、3月最後の木金を休みにすることにした。今日は大横川のお花見クルーズでも楽しむか!と考えていたのだが、まだ桜が全く咲いていないので予定変更。気になっていた練馬区立牧野記念庭園を訪ねてきた。牧野富太郎博士の名前は、もちろん昔から知っていたが、強い関心を持ったきっかけは、昨年の朝ドラ『らんまん』である。牧野記念庭園は、牧野博士の邸宅跡地につくられたもの。想像していたより狭い印象だったが、少しずつ、たくさんの種類の植物が植えられている。草花だけではなくて、メタセコイヤやホオノキの大木もあって目を見張った。ウメやサクラも風情のある古木だった。ウメはもう花が終わっていて、サクラ「仙台屋」(高知市内にあった仙台屋という店から名づけられた)はまだ咲いていなかった。入口のオオカンヒザクラは...練馬区立牧野記念庭園を初訪問

  • 私にも作れます/あたらしい家中華(酒徒)

    〇酒徒『手軽あっさり毎日食べたいあたらしい家中華』マガジンハウス2023.10中華料理愛好家の酒徒(しゅと)さんの名前は、ときどきネットで拝見していた。特に印象深いのは、本書にも掲載されている「肉末粉絲」(豚ひき肉と春雨の炒め煮)の紹介を見つけたとき。醤油味でひき肉と春雨を炒めるだけの料理だが、これは食べたい!今すぐ食べたい!と思って、すぐにひき肉と春雨を買ってきた。できあがった味が「正解」なのかどうかはよく分からないが、美味しかったので満足した。本書には「塩の中華」「醤油の中華」「野菜の中華」「煮る中華」「茹でる中華」の5章に分けて、78種類の料理が紹介されている。どれも本当にシンプルで、食材は1~2種類。特別な調味料は要らない。一時期は毎年出かけていた中国旅行で食べた記憶がよみがえる料理もある。「西紅...私にも作れます/あたらしい家中華(酒徒)

  • 赤と緑の磁州窯(東博・常設展)

    東京国立博物館・東洋館(アジアギャラリー)の常設展から。5室(中国陶磁)を通りかかったら、なんだか可愛い皿や碗が並んでいた。赤や緑の華やかな色彩にゆるい絵。驚いたのは、これらに「中国・磁州窯」という注釈がついていたことだ。え?磁州窯といえば「黒釉刻花」「白地鉄絵」「白地黒掻落」など「黒と白のうつわ」ではなかったの?磁州窯には、北欧食器みたいなモダンなスタイリッシュなデザインがあることは知っていたが、これはまた意外なバリエーションだった。・五彩水禽文碗金~元時代・13世紀・三彩刻花双魚文盤金時代・12~13世紀・三彩刻花小禽文皿金~元時代・13世紀王侯貴族の食卓にあがったとは想像しにくい。ある程度富裕な庶民が使ったのだろうか?こういううつわを見ると、金~元時代って意外と楽しそうだなあと思ってしまう。赤と緑の磁州窯(東博・常設展)

  • 旅の仲間とその終わり/両京十五日(馬伯庸)

    〇馬伯庸;齊藤正高、泊功訳『両京十五日』(HAYAKAWAPOCKETMYSTERYBOOKS)早川書房2023.2-3馬伯庸の名前は、中国ドラマ好きにはすっかりおなじみであるが、彼の長編歴史小説が日本語に翻訳されるのは初めてのことらしい。遅いよ!全く!しかし待たされただけのことはあった。これまでドラマ化されたどの作品と比べても遜色なく、実に面白かった。物語は、大明洪煕元年(1425)5月18日に始まる。ほぼ1年前、洪煕帝(仁宗)が即位し、息子の朱瞻基(のちの宣徳帝)が太子に定められた。洪煕帝は国都を南京に戻そうと考えており、その露払いを命じられた朱瞻基の宝船は、まもなく南京に到着しようとしていた。太子歓迎の警備を指揮する呉不平は、息子の呉定縁を埠頭の向かいの扇骨台に派遣した。ところが埠頭に現れた巨大な宝...旅の仲間とその終わり/両京十五日(馬伯庸)

  • 2024桜はまだ咲かない

    門前仲町で暮らし始めて、もうすぐ丸7年になる。窓から大横川の桜並木を眺めることができるので、この時期は、朝起きて、カーテンを開けるたびにドキドキする。しかし今年の桜は遅い。いや、近年が早すぎたのかな。昨年は3月17日に開花を見つけたが、今年はまだ気配がない。ただ、門前仲町の交差点近くに、毎年、抜群に早く花をつける桜の木があって、今週のはじめには、こんな感じだった。今日の大横川の夜景。コロナ明けの気合いなのか、早くから照明が用意され、観光船の運航スケジュールもびっしり入っていたのだが、肝心の花が咲かないので、なんだか拍子抜け状態になっている。考えてみれば、もともと桜は四月の入学式につきものだった。今年は昭和の気分に戻って、ゆっくり楽しもう。2024桜はまだ咲かない

  • 生けるものの愛おしさ/ほとけの国の美術(府中市美術館)

    〇府中市美術館企画展・春の江戸絵画まつり『ほとけの国の美術』(2024年3月9日~5月6日)恒例・春の江戸絵画まつり。まだ桜は咲いていないが、さっそく見てきた。怖い絵、変な絵、かわいい絵(=図録のオビの宣伝文句)、来迎図から若冲まで「ほとけの国」で生まれた、美しくアイディアに溢れた作品を展示する。入口にはクリーム色の壁にキラキラ輝く金色の「ほとけの国の美術」の文字。そして、無地の壁に挟まれた細長い通路を進んでいくと、金身の菩薩たちが舞い踊る『二十五菩薩来迎図』17幅を掛け並べた空間が出現する。京都・二尊院に伝わる、土佐行広(室町時代)の作だという。二尊院には何度か行っているが、こんな作品を所蔵しているとは聞いたことがない。それもそのはず、あとで会場ロビーで関連ビデオを見たら、経変劣化のため、長らく展示がで...生けるものの愛おしさ/ほとけの国の美術(府中市美術館)

  • 8K映像で訪ねる/中尊寺金色堂(東京国立博物館)

    〇東京国立博物館・本館特別5室建立900年・特別展『中尊寺金色堂』(2024年1月23日~4月14日)上棟の天治元年(1124)を建立年ととらえ、中尊寺金色堂の建立900年を記念して開催する特別展。先月から参観の機会をうかがっていたのだが、来場者の波は減る様子がなく、先週末、建物の外に30分くらい並んで入場することができた。会場に入ると、展示物に進む前に大きなスクリーンで区切られた空間があって、金色堂の映像が映し出される。私は展覧会のイメージ映像や説明動画はスキップしてしまうことが多いのだが、これはちょっと様子が違うと思って立ち止まった。ゆっくり金色堂の扉が開くと、カメラは3つの須弥壇の全景を映し、さらにそれぞれの須弥壇に寄っていく。恐れ多くも須弥壇の上に乗って、中尊の阿弥陀仏と間近に正対するような視点で...8K映像で訪ねる/中尊寺金色堂(東京国立博物館)

  • 持つべきものは仲間/中華ドラマ『大理寺少卿游』

    〇『大理寺少卿游』全36集(愛奇藝、2024年)原作はマンガ「大理寺日誌」でアニメ版もあり、日本にもファンが多いことは伝え聞いていたが、私はこのドラマで初めて作品世界に触れた。舞台は唐・武則天の時代の神都・洛陽。刑罰と司法を所管する大理寺の面々が活躍する。大理寺の若きリーダー李餅(丁禹兮)は、マンガとアニメでは人間の衣服を着た白猫の姿で描かれる。ドラマ版の李餅は、基本的には人間の姿だが、猫のように動きは俊敏、猫並みの視力と嗅覚の持ち主。時々、猫の顔になったり、まれに完全に猫の姿に変身することもある。田舎育ちの陳拾は、生き別れの兄を探して上京し、洛陽城で不思議な猫に出会う。この猫こそ実は李餅。李餅は前の大理寺卿・李稷の息子だが、かつて何者かに父親を殺害され、葬儀のために故郷へ戻る途中、何者かに襲われ、気づい...持つべきものは仲間/中華ドラマ『大理寺少卿游』

  • アイスショー”notte stellata 2024”

    〇羽生結弦nottestellata2024(2024年3月10日、16:00~)先週日曜、羽生結弦さんが座長をつとめるアイスショーnottestellataを見て来た。2011年3月11日の東日本大震災から12年目になる2023年に彼が立ち上げたアイスショーで、宮城・セキスイハイムスーパーアリーナで3公演が行われる。昨年はチケットの抽選に敗れて行くことができなかったが、今年は千秋楽の日曜のチケットを取ることができ、日帰りで仙台に行ってきた。素晴らしい公演で大満足したのだが、やっぱり(分かっていたけど)ふつうのアイスショーとは少し違って、考えることが多くて、なかなか記事を書くことができなかった。日曜の仙台は、青空なのに時々細かい雪が舞っていて、東京よりかなり寒かった。2011年のあの日も、こんなふうに寒か...アイスショー”nottestellata2024”

  • 青磁、白磁、高麗茶碗/魅惑の朝鮮陶磁(根津美術館)

    〇根津美術館企画展『魅惑の朝鮮陶磁』+特別企画『謎解き奥高麗茶碗』(2024年2月10日~3月26日)今季の展覧会は珍しい二部構成で、展示室1は、主に館蔵品で朝鮮陶磁の歴史を概観し、その魅力を見つめ直す企画展。展示室2は、奥高麗茶碗(九州肥前地方、現在の佐賀県唐津市周辺で焼かれた、朝鮮陶磁の高麗茶碗を写した茶碗)の成立と展開を検証する特別企画である。展示室1、展示の90件余りは確かにほとんどが館蔵品(西田宏子氏寄贈・秋山順一氏寄贈が多い)だが、冒頭の陶質土器4件は「個人蔵」だった。特別古い、三国時代(5世紀)の土器が2件。伽耶のものだという『車輪双口壺』は、おもちゃみたいなかたちで面白かった。続いて、高麗時代(12~14世紀)の青磁。一目見て美しいと思った『青磁輪花承盤』には、王室向けの製品を生産した全羅...青磁、白磁、高麗茶碗/魅惑の朝鮮陶磁(根津美術館)

  • コレクション大航海(神戸市博)+竹中大工道具館

    ■竹中大工道具館企画展『鉋台をつくる-東京における台屋の成立と発展』(2024年3月2日~5月19日)+常設展先々週、仕事で広島に行った帰りに自費で神戸に1泊して、半日だけ遊んできた。目的の1つめは、以前から行きたいと思っていたこの施設を訪ねること。新幹線の新神戸駅を出て徒歩3分くらいの位置にある(ただし新神戸駅前の導線は慣れないと分かりにくい)。どこかのお屋敷みたいな門を入ると、ガラスの壁面に黒い瓦屋根を載せた、大きな平屋の建物が目に入る。地上は1階だが地下は2階まであって、天井の高い展示スペースが設けられている。床や天井には良質の木材が豊富に使われていて、木の匂いが心地よい。もとは神戸市内の別の場所にあったが、2014年に現在地(竹中工務店本社跡地)に新築・移転してきたとのこと。1階ホールでは「鉋台(...コレクション大航海(神戸市博)+竹中大工道具館

  • 2024木場の河津桜と日本橋のおかめ桜

    寒い日が続いていたが(金曜の朝はうっすら雪)今日は久しぶりによく晴れたので、木場の河津桜と日本橋のおかめ桜を見てきた。木場の大横川沿いの河津桜は、去年初めて見に行ったもの。永代通りの沢海橋から北側を眺めて、もはや見頃であることを確認。老婦人の二人連れが「花の下は歩けないのかしら」「もっと近づけると思っていたのに」と話しているのが聞こえたので、近づいて「もう少し先に行くと遊歩道になっていますよ」とお声がけする(去年は私もとまどったので)。やっぱり、この河津桜は真下に立って見上げたい。ピンクの雲のような、みっしりした花付きが圧巻。もう少し花色が薄い品種もあるが、とにかくみっしり咲いている。だいたい名所と言われるところのサクラは老木が多いので、樹は大きいが、こんな花の付き方はしない。だが、花のまばらな老木にも味...2024木場の河津桜と日本橋のおかめ桜

  • 信用調査に見る近世大坂の社会/三井大坂両替店(萬代悠)

    〇萬代悠『三井大坂両替店(みついおおさかりょうがえだな):銀行業の先駆け、その技術と挑戦』(中公新書)中央公論新社2024.2三井高利が元禄4年(1691)に営業を開始した三井大坂両替店は、両替店を名乗りながら両替業務にはほとんど従事せず、基本的に民間相手の金貸し業を主軸とした、大型民間銀行の源流である。本書は、三井に残る膨大な史料群を読み解くことで、江戸時代の銀行業の基本業務がどのように行われていたかを解明する。本書は、はじめに三井大坂両替店の店舗の立地や組織・人事の概要を示す。おもしろかったのは、奉公人の年齢構成・昇進・報酬などの分析である。少し前に読んだ、戸森麻衣子氏の『仕事と江戸時代』にも書かれていたが、奉公人は住み込みで独身の共同生活を強いられた。そこを辛抱すれば、退職金(元手銀)を得て、家庭を...信用調査に見る近世大坂の社会/三井大坂両替店(萬代悠)

  • コロナ・パンデミックを振り返る/感染症の歴史学(飯島渉)

    〇飯島渉『感染症の歴史学』(岩波新書)岩波書店2024.1コロナ下で読んだ『感染症の中国史』(刊行はもっと前)の著者の新刊が出たので読んでみた。はじめに新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な流行)の「起承転結」を振り返り、この経験を感染症の歴史学に位置づける。2019年に中国武漢で発生した新興感染症COVID-19は、2020年初頭から世界に拡大し、3月、WHOが「パンデミック」を宣言した。「これほど長く、大きなパンデミックになるとは、ほとんどの人が予想できませんでした」と著者は書いているが、もっと短く終わると考えていたかといえば、私はそうでもなかった。この先どうなるかは全く予想できなかったけれど、マスクをして、人との接触を減らせば、命の危険は少ないというのは、そんなに受け入れがたい状況ではなか...コロナ・パンデミックを振り返る/感染症の歴史学(飯島渉)

  • 三浦半島の運慶仏巡り:浄楽寺、満願寺

    数週間前に3月のカレンダーを見て、3月3日が日曜に当たっていることに気づいた。関東在住の仏像ファンにとって、3月3日といえば、三浦半島・芦名にある浄楽寺のご開帳日である。私は20年くらい前に逗子に住んでいたこともあり、浄楽寺の収蔵庫改修のクラウドファンディングに寄付したご縁もあるので、久しぶりに行ってみたくなった。逗子駅から浄楽寺までは京急バスに乗る。時刻表では20~30分だったが、混雑の影響で倍くらいの時間がかかった。■金剛山勝長寿院大御堂浄楽寺(横須賀市芦名)揃いの法被(抱き茗荷紋?)のおじさんたちが参拝客の車を誘導していたが「こっちは満杯です」「この先の駐車場なら、1、2台入れるかも」と大変そうだった。門前には露店やキッチンカーも。まずは本堂に参拝。江戸時代の小ぶりな阿弥陀三尊像が安置されており、背...三浦半島の運慶仏巡り:浄楽寺、満願寺

  • 2024年3月食べたもの@広島

    今週は2泊3日で広島へ出張。ランチタイムに、昨年寄ったお好み焼・鉄板焼のお店を覗いたら、残念ながら満席で入れなかった。しかし、近くにあった、もう1軒のお店「ひなた」に入れたので、肉玉そばを注文。満足!21周年を迎えた歴史のあるお店とのこと。夜は、1泊目はひとりだったので簡単にカキフライ定食。翌日は同行の同僚と「和久バル」で牡蠣ざんまい。最初の土手鍋のあとは、グラタン、リゾット、(また)カキフライなど、写真を撮るのを忘れてしまったが、どれも美味しかった。牡蠣の土手鍋は広島の郷土料理。東京では、ほとんど食べた記憶がなかったが、気に入ってしまった。今度、家でつくってみよう!2024年3月食べたもの@広島

  • ヴェルディ歌劇の愉悦/METライブ・ナブッコ

    〇METライブビューイング2023-24『ナブッコ』(新宿ピカデリー)先日、東劇にシネマ歌舞伎を見に行ったら、MET(ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場)ライブビューイングのチラシが置かれていて、そういえば、オペラは(実演も映像も)久しく見ていないなあ、と思った。私の好きなヴェルディ作品、今シーズンは『ナブッコ』がエントリーされていた。写真を見ると演出もよさそうなので、思い切って、見て来た。作品のあらすじは大体知っていたけれど、全編通しで視聴するのは、たぶん初めてだったと思う。しかし全く問題はなくて、第1幕から(いや、序曲から)雄弁で美しい旋律をシャワーのような浴びせられ、幸福感に浸った。舞台は紀元前6世紀のエルサレム。神殿に集まったヘブライ人たちは、バビロニア国王ナブッコの来襲に怯えている。ヘブライ人た...ヴェルディ歌劇の愉悦/METライブ・ナブッコ

  • 古くて若い大国/インド(近藤正規)

    〇近藤正規『インド:グローバル・サウスの超大国』(中公新書)中央公論新社2023.9最近、政治や経済でも、エンタメでも名前を聞くことの多いインド。しかし私がこの国について思い浮かぶことといえば、堀田善衞の名著『インドで考えたこと』(1957年刊、高校の国語の教科書に載っていた)くらいである。さすがに少し認識をアップデートしようと思い、本書を読んでみた。本書は政治、経済、外交、社会などの切り口で、現在のインドの姿を分かりやすく解説している。知らないことが多すぎて、ファンタジー小説に登場する架空の国家の設定書を読むような面白さがあった。はじめに社会の多様性。インド人は「出身地、言語、宗教、カースト」という4つのアイデンティティで規定される。インドは世界最大の民主主義国家で、IT大国らしく、総選挙では9億人の有...古くて若い大国/インド(近藤正規)

  • 水道橋でワインと和食ディナー再び

    めずらしく友人との会食が続いた。半年ぶりに水道橋駅前の「ワイン処Oasi(オアジ)」で和食ディナー。旬の食材を使った上品なお料理を少しずつ。この日は赤出汁に筍の炊き込みご飯。前回はとうもろこしご飯だったことを思い出した。日本酒と自家製サングリアも美味で大満足~。水道橋でワインと和食ディナー再び

  • 秋葉原で雲南料理

    中華料理好きの友人と会食することになって、雲南伝統料理の「過橋米線秋葉原店」に出かけた。私も友人も、一度だけ雲南省に旅行したことはあるのだが、東京で雲南料理を食べるのは初めてである。9品の「元気促進コース」に飲み放題をつけてもらった。三七入り気鍋鶏。三七は三七人参かな?気鍋というのは、たっぷり時間をかけて水蒸気で作るらしい。アツアツでなかなか冷めないので、寒い日にはありがたかった。一気に身体が暖まった。スズキ魚の雲南風付け。実は中国ツアーの食事では、コースの終わり頃にこういう淡泊な魚料理がよく出た記憶がある。いつもお腹がいっぱいで食べ切れなかったのだが、この日は裏表とも、しっかりいただく。美味。千張肉。豚肉スライスの下には、角切りの豚肉と高菜みたいな漬物が詰まっている。これも蒸し料理。薬膳健美菜。このほか...秋葉原で雲南料理

  • 2024金沢散歩:兼六園、泉鏡花記念館、近江市場

    金沢半日観光の続き。■兼六園~成巽閣~白鳥路石川県立博物館から兼六園へ。随身坂口から入ると梅園が見ごろで楽しかった。幕末に13代藩主前田斉泰が母君・真龍院のために建てた隠居所・成巽閣も見ていく。1階では前田家ゆかりの雛人形・雛道具を展示中。2階の「群青の間」は、ウルトラマリンブルーの青とベンガラの赤、さらに襖の白(灰色)が、計算された空間美を作り出している。名物の雪吊りは、全然役に立っていなかったが、青空にそびえ立つ縄の三角錐は、どこか南方ふうな感じもして楽しかった。ほぼ初夏の日差しだったので、池・渓流・滝・噴水など、変化に富んだ水辺の風景が気持ちよかった。さすが大名庭園、贅沢でよいなあ。兼六園を出て、金沢城公園の脇の細道(白鳥路)を抜けていく。深い緑を背景に、さまざまな彫像が並んでいた。その中のひとつ「...2024金沢散歩:兼六園、泉鏡花記念館、近江市場

  • 2024金沢散歩:石川県立美術館、石川県立歴史博物館

    出張で金沢に行ってきた。昨年も同時期に出張があったのだが、全く自由時間がなく、今年も月火が仕事でいっぱいだったので、自腹で前泊をつけて半日だけ観光してきた。日曜のお昼頃、金沢駅に到着。昨年は駅前にも雪が残っていたが、今年は雪国の面影なし。特にこの日は初夏のような陽気。コートを丸めてバッグに突っ込んで、観光に出かける。金沢市内を観光するのは、30年ぶりくらいではないかと思う。■石川県立美術館コレクション展のみの期間だったが初訪問。第1展示室は「雉香炉の部屋」で、仁清の国宝『色絵雉香炉』が常設されている。写真撮影もOK。展示はオス・メス並んでいるのだが『色絵雉香炉』は華麗な色彩のオスを指し、茶色系の地味なメスは『色絵雌雉香炉』と呼び分けていた。第2展示室は「前田育徳会尊経閣文庫分館」で『天神画像と文房具』(2...2024金沢散歩:石川県立美術館、石川県立歴史博物館

  • ブロマンス古装劇?/シネマ歌舞伎・アテルイ

    〇シネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT阿弖流為〈アテルイ〉』(東劇)2015年7月に新橋演舞場で上演された作品で、シネマ歌舞伎(映像作品)としての公開は2016年6月だという。ただし、いま調べて思い出したのだが、もとは2002年に劇団☆新感線が上演した舞台劇である。私は題材に興味があって、舞台劇のときも歌舞伎になったときも、見たいと思いながら果たせなかった。シネマ歌舞伎になってからも、上映予定ないかな~と、時々チェックしていたのだが、先日サイトを見たら、久々の上映が2/15(木)で終わっていた。え!?と慌てたが、幸い、東劇では上映延長になっていたので、さっそく見てきた。面白かった!!!10年越し、いや20年越しの大願成就だが、実は、具体的にどんなストーリーなのかは全く調べていなかったので、新鮮な気持ちで見ることが...ブロマンス古装劇?/シネマ歌舞伎・アテルイ

  • 北斎サムライ画伝(すみだ北斎美)+鳥文斎栄之展(千葉市美)

    ■すみだ北斎美術館特別展『北斎サムライ画伝』(2023年12月14日〜2024年2月25日)北斎(1760-1849)や門人たちがサムライを描いた作品を集めた展覧会。私は浮世絵に対して、そんなに関心が高いわけではないのだが、描かれたサムライという着眼点に、歴史・伝奇好きの性癖をくすぐられて見に行った。はじめは、北斎が実際に見ていた「江戸のサムライ」の姿。同時代の世態風俗を描いた浮世絵には、刀を差していることでそれと分かるサムライたちが描き込まれている。ぶらぶら物見遊山をしたり、酔っ払ったり、旅をしたり、登城するサムライたち。まあ今のビジネスマンか公務員程度には、ふつうに身の回りにいたわけである。一方、理想化された「名うてのサムライ」も描かれた。時代順に、坂上田村麻呂、俵藤太秀郷に始まり、頼光、義家、為朝、...北斎サムライ画伝(すみだ北斎美)+鳥文斎栄之展(千葉市美)

  • 2024向島百花園の梅

    そろそろ梅の季節なので、「梅まつり」(2024年2月10日~3月3日)を開催中の向島百花園を見てきた。私は両親ともに東京の下町生まれなので、向島(むこうじま)という地名にはなじみがある。子供の頃、百花園に連れてきてもらって、萩のトンネルを喜んだ記憶もある。大人になってから、一度だけ来てみたのだが、なんだか手狭な庭園で、子供のときの感動が得られなくて、それきり何十年もご無沙汰していた。確かに広くはない庭園だが、梅の木はかなり多い。マスクを外して香を楽しむ。萼や花芯まで純白の印象が強い「白加賀」という品種が目立っていた。白梅は一輪を楽しむのもよし、遠目に見る樹の姿も、なつかしい人に出会うような気持ち。人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける(紀貫之)である。紅梅はまた、華やかでよいけど。向島百花園は...2024向島百花園の梅

  • 茶碗と書跡と謡本/本阿弥光悦の大宇宙(東京国立博物館)

    〇東京国立博物館特別展『本阿弥光悦の大宇宙』(2024年1月16日~3月10日)「始めようか、天才観測。」という(東博にしては)しゃれたキャッチコピーが一部で話題になった特別展。本阿弥光悦(1558-1637)が確固とした美意識によって作り上げた諸芸の優品の数々を紹介し、大宇宙(マクロコスモス)のごとき光悦の世界の全体像に迫る。会場に入ると、いきなり本展のメインビジュアルになっている『舟橋蒔絵硯箱』が単立ケースで展示されていた。玉子寿司とか磯辺焼きとか言われているもの。インパクトのある造型であることは確かだ。舟橋の表現に鉛板を用いたのは、光悦が家職として刀剣の鑑定にかかわり、金属の特質・見せ方を知悉していたからだという研究があること(Wikiに記載あり)をぼんやり思い出した。その関連か、はじめに文書資料等...茶碗と書跡と謡本/本阿弥光悦の大宇宙(東京国立博物館)

  • ついに完結/中華ドラマ『大江大河之歳月如歌』

    〇『大江大河之歳月如歌』全34集(東陽正午陽光影視、2024年)2018年公開の第1部、2021年公開の第2部に続く第3部。おそらくこれが完結編になるのだろう。1993年、宋運輝は東海化工を追われ、彭陽という田舎の農薬工場勤務を命じられる。新しい同僚たちからは暖かく迎えられるが、工場の経営は振るわず、やがて停業命令が下る(国営なので政府から)。東海化工に呼び戻されかけた宋運輝は、別れ際に中年女性の技術者・曹工から託された資料に目を通すうち、彭陽工場を救う希望を見出して戻ってくる。それは、竹胺という物質を用いた新しい安全な農薬を製造することだった。最終的に、屋外の農地で使用する農薬としては成功できなかったものの、家庭用の殺虫剤として製造ラインに乗せる見通しが立ち、彭陽工場は存続を認められる。この竹胺プロジェ...ついに完結/中華ドラマ『大江大河之歳月如歌』

  • 織田長好の魅力/織田有楽斎(サントリー美術館)

    〇サントリー美術館四百年遠忌特別展『大名茶人織田有楽斎』(2024年1月31日~3月24日)有楽斎(織田長益/おだながます、如庵、1547-1622)は織田信秀の子、織田信長の弟として生まれ、武将として活躍し、秀吉、家康にも仕えた。2021年に400年遠忌を迎えた織田有楽斎という人物を、いま一度総合的に捉えることを試みる。私は有楽斎のことは、名前くらいしか知らなかったので、軽い気持ちで見に行ったら、意外とお客さんの姿が多く、みんな地味な古文書を熱心に眺めていたので感心した。有楽斎の風貌を伝えるのは、僧形の坐像(江戸時代)。温和だが意志の強そうな四角い顔である。有楽斎が再興したことで知られる正伝院の流れを汲む建仁寺塔頭・正伝永源院に伝わった。同寺院からは、ほかにもたくさん書状や文書、ゆかりの品が出陳されてい...織田長好の魅力/織田有楽斎(サントリー美術館)

  • 民藝の王道/鈴木繁男展(日本民藝館)

    〇日本民藝館特別展『柳宗悦唯一の内弟子鈴木繁男展-手と眼の創作』(2024年1月14日~3月20日)鈴木繁男(1914-2003)は、柳宗悦の唯一の内弟子として1935年に入門、陶磁器、装幀、漆絵など多岐な分野にわたる作品を残した。没後20年に合わせ、工芸家・鈴木繁男の手と眼による仕事を顕彰する。というのは、本展を見たあとに、あらためて確認したもの。実は、鈴木繁男の名前もよく知らずに、ふらりと見に行った。玄関を入ると、階段の壁には大きな藍染の布が2枚。暴れ熨斗と熨斗に菊散らしの文様でどちらもめでたい。踊り場の箪笥の上と、階段下の左右の展示ケースには螺鈿、漆絵、卵殻貼などの漆工芸品。なんだかとても懐かしい感じがした。同館は、中世ヨーロッパの木製椅子とか、アフリカや中南米の工芸品など、幅広い収蔵品を誇るけれど...民藝の王道/鈴木繁男展(日本民藝館)

  • 説話と史料から/地方豪族の世界(森公章)

    〇森公章『地方豪族の世界:古代日本をつくった30人』(筑摩選書)筑摩書房2023.10先日、久しぶりに神保町に行って、三省堂の仮店舗をのぞいた。ふだんと違う書店に入ると、ふだんと違う本が目につくもので、本書が気になって手に取ってみた。そうしたら、読みかけの『謎の平安前期』に出て来た春澄善縄の名前に出会ってしまったので、運命を感じて買って帰った。本書は、著者の専門である地方支配・地方豪族の様相の探究をふまえて「これまでの名言・名場面や人の動向ではほとんど取り上げられていない人物」30人を紹介したものである。神話・伝承の時代から奈良時代末までが15人、平安時代末までが15人、地方豪族が主題なので、坂東武士のような中央からの土着者は除く。著者は、女性の事例が少ないことを遺憾としているが、思ったよりも女性が混じっ...説話と史料から/地方豪族の世界(森公章)

  • 桓武王朝の試行錯誤/謎の平安前期(榎村寛之)

    〇榎村寛之『謎の平安前期:桓武天皇から『源氏物語』誕生までの200年』(中公新書)中央公論新社2023.12今年の大河ドラマ『光る君へ』が紫式部を取り上げていることもあって、平安時代に関する書籍がけっこう注目を集めているように思う。平安時代は平安京遷都の794年から12世紀末期まで約400年間、我々がイメージする、なよやかで上品な貴族たちの時代は、だいたい後半の200年間であるが、本書はそこに至るまで、奈良時代に導入された律令制がこの国の実体に合わなくなり、いろいろ試行錯誤を繰り返して、ひとまずの安定したシステムを作りあげるまでの200年間を論じている。制度的な要点は、序章に挙げられた「徴兵制による軍団の廃止」「私有地開発の公認」「地方官の自由裁量権の拡大」になるだろう。大きな政府(律令国家)から小さな政...桓武王朝の試行錯誤/謎の平安前期(榎村寛之)

  • 歴史の証拠と修正と/異国襲来(鎌倉歴史文化交流館)他

    ■鎌倉歴史文化交流館企画展・文永の役750年『異国襲来-東アジアと鎌倉の中世-』(2023年12月16日~2024年3月9日)久しぶりに鎌倉に行ってきた。お目当ては、この展覧会。1206年に建国されたモンゴル帝国は、文永11年(1274)と弘安4年(1281)に日本へ侵攻する。本展では、絵巻研究の進展や元寇沈没船の発見により明らかになりつつある、モンゴル襲来の実像に迫るとともに、当該期を経て花開いた鎌倉の文化的側面を紹介する。鎌倉市教育委員会と鎌倉の諸寺が所蔵する資料と、長崎県松浦市教育委員会の元寇沈没船資料の組合せで構成されているが、なぜか後者は1月19日から展示だったので、揃ったところを見計らって参観してきた。たいへん満足である。元寇沈没船が見つかったのは、長崎県の伊万里湾に浮かぶ鷹島の南岸地域で、2...歴史の証拠と修正と/異国襲来(鎌倉歴史文化交流館)他

  • 漆器と伊万里大皿/うるしとともに(泉屋博古館東京)

    〇泉屋博古館東京企画展『うるしとともに-くらしのなかの漆芸美』(2024年1月20日~2月25日)住友コレクションの漆芸品の数々を、用いられてきたシーンごとにひもとき、漆芸品を見るたのしみ、使うよろこびについて考える。私は漆工芸を見るのが好きなので、いそいそと出かけた。メインはやっぱり茶道具かなあ、あるいは蒔絵の手箱や硯箱。という私の予想は、最初の展示室「シーン1.宴のなかの漆芸美」で大きく裏切られる。並んでいたのは、明治~大正時代の住友家で用いられていた膳椀具。『扇面謡曲画会席膳椀具』の丸盆は、漆黒の地に閉じた扇と開いた扇が描かれ、開いた扇は「留守模様」で、それとなく謡曲の演目を暗示する。刀と烏帽子と千鳥で「敦盛」とか、紅葉と鱗文で「紅葉狩」という具合。ただ、本当に控えめな絵柄で、少し離れて見ると、扇が...漆器と伊万里大皿/うるしとともに(泉屋博古館東京)

  • 扇面図流屏風の源氏絵など/大倉集古館の春(大倉集古館)

    〇大倉集古館企画展『大倉集古館の春~新春を寿ぎ、春を待つ~』(2024年1月23日~3月24日)令和6年の春を祝し、干支や吉祥、花鳥風月をテーマとした絵画を中心に展観する。かなり見応えのある作品が揃っていた。宗達派の『扇面流図屏風』はいつ以来だろう?左右が別々のケースに展示されていた。波間を不安定に漂う扇面には、金・紺・碧・白など少ない色数で、メリハリのある草花などが描かれ、よく見ると細い筆で古今和歌集の歌が添えられている。さらに扇の間に小さな源氏絵の色紙が貼られているのだが、もとは波と扇面だけが描かれており、後の時代に源氏絵が貼り付けられたと見られているそうだ。源氏絵の主題は《右隻》(1)葵(2)須磨(3)薄雲(4)常夏(5)空蝉(6)玉蔓(7)柏木《左隻》(8)花宴(9)夕顔(10)若紫。すぐに分かっ...扇面図流屏風の源氏絵など/大倉集古館の春(大倉集古館)

  • もうすぐ休館・山の上ホテル

    お茶の水の山の上ホテルが老朽化対応を検討するため、2024年2月13日から長期休館になるというので、見てきた。私は通学・通勤で、長いことお茶の水を使っていたけれど、山の上ホテルを使ったことは、数えるほどしかない。こんなことなら地方にいて東京に出張するとき、1回くらい泊まっておけばよかった。バー「ノンノン」に友人と来たのは、もう20年くらい前かもしれない。頑丈そうでおしゃれな鉄製の装飾。あまり広くないロビーの窓際には、スウェーデンの陶芸デザイナー、リサ・ラーソンのライオンが置かれていた。いつか休館が明けたときも、この子たちに会えるといいな。併設の「山の上教会」も開放されていたので見学することができた。ガラス越しに青空が見える素敵な教会!こういう教会の結婚式に立ち会ってみたかった。もうすぐ休館・山の上ホテル

  • 歴史を掘り、人に会う/京博深掘りさんぽ(グレゴリ横山)

    〇グレゴリ横山『京博深掘り散歩』(小学館文庫)小学館2023.11お正月に京博に行ったら、ミュージアムショップに本書が積まれていた。京博のウェブサイトに2021年4月から2023年3月まで「グレゴリ青山の深掘り!京博さんぽ」のタイトルで連載されていた漫画エッセイに加筆・改稿したものだという。京博のサイトにはさんざんお世話になっているのに、この連載の存在を全く知らなかったので驚いた。刊行は2023年11月12日とあるが、私が昨年最後に京博に行ったのは、ちょうどその頃で、タッチの差で陳列を見逃したのではないかと思う。ちなみに東京の書店では、全く見かけた記憶がない。地域差?ウェブサイト公開時の順番はよく分からないが、本書の内容は「敷地と建物」「京博で働く人々」「文化財を守る人々」の三部構成に整理されている。京博...歴史を掘り、人に会う/京博深掘りさんぽ(グレゴリ横山)

  • 2024年1月展覧会拾遺(東京の展覧会から)

    正月以降、見てきた展覧会をまとめて。■静嘉堂文庫美術館『ハッピー龍(リュウ)イヤー!〜絵画・工芸の龍を楽しむ〜』(2024年1月2日~2月3日)初春にふさわしく、今年の干支・龍をモチーフとする絵画・工芸を集める。刀装具、印籠、茶釜など、さまざまなジャンルの作品が並ぶが、やはり見どころは、龍の本場である中国の工芸品だろう。景徳鎮官窯の青花や五彩の大皿や大瓶、螺鈿や堆朱も、旧蔵者の財と権力を想像させる、堂々とした姿のものが多かった。面白かったのは『紺地龍"寿山福海"模様刺繍帳』で、清朝皇帝の龍袍を、茶室の入口に掛ける帳(とばり)に仕立てたものだという。同様のリフォーム品には『紫地龍文錦卓掛』(色合いが好き、ビロードふうの蝦夷錦)や『紅地龍獅子楼閣模様金入錦帳』(短足で豚鼻の獅子がかわいい)もあった。また「文庫...2024年1月展覧会拾遺(東京の展覧会から)

  • 雇用労働の多様な発展/仕事と江戸時代(戸森麻衣子)

    〇戸森麻衣子『仕事と江戸時代:武士・町人・百姓はどう働いたか』(ちくま新書)筑摩書房2023.12歴史的に見れば、絶えず変化してきた人々の働き方。本書は、現代日本人の働き方の源流を江戸時代に求める。その前提として、中世においては、人々が自ら選んだ仕事に従事し、その労働に対して報酬を受け取るという働き方は一般的ではなかった。ある程度の裁量権を持つ自立的な商人・職人・農民は生まれていたが、給金や現物による報酬を介することなく、力による支配を受けて種々の労働に従事する人々が多かった。江戸時代には、人身売買や隷属関係が縮小し、貨幣制度の発展によって、本格的な雇用労働の時代が始まる。以下、本書は諸身分における「働き方」を順番に紹介していく。はじめに武士階級の旗本・御家人の場合。旗本の上層部は知行取で領地を与えられた...雇用労働の多様な発展/仕事と江戸時代(戸森麻衣子)

  • 中年刑事の再生/中華ドラマ『三大隊』

    〇『三大隊』全24集(愛奇藝、2023年)1998年、寧州市警察の「三大隊」は、凶悪犯の王大勇と二勇の兄弟を追っていた(三大隊は隊長の程兵のほか6人の刑事チームとして描かれている)。住民を巻き込んだ路上の大乱戦の末、ついに二勇を捕まえたが、王大勇は逃してしまう。程兵による尋問の最中、二勇は容態が急変して死亡。程兵は責任を問われ、傷害罪で11年の懲役刑に服することになる。2007年秋(刑期を9年6か月に短縮されて)程兵は出獄。しかし妻の劉文芳は娘の桐桐を連れて離婚し、別の男性と再婚していた。三大隊はすでに解散。刑事を続けていたのは最年長の老馬と最年少(女子)の林頴だけで、老馬は停年を迎えていた。ほかの4人は刑事を辞めて転職していた。程兵ら三大隊の面々が師父と慕う七叔は、脳梗塞で倒れて老妻の介護を受けていた。...中年刑事の再生/中華ドラマ『三大隊』

  • 古装SF・ホラー・アクション/中華ドラマ『天啓異聞録』

    〇『天啓異聞録』全12集(愛奇藝、2023年)年末年始に楽しませてもらったドラマ。明の天啓年間、錦衣衛の一員である褚思鏡は、山海関を超えて、雪の積もる遼東地方に赴いた。この地方で奇妙な疫病が流行っており、感染した者は妖魔の餌食になるという噂を確かめるためである。褚思鏡は寧遠城で楊公公に拝謁したあと、韃官(モンゴル系)の伯顔とともに沿岸の寧海堡に向かう。寧海堡の周辺には、烏暮島の島民が出没していた。彼らの動きを怪しんだ褚思鏡と伯顔は、夜の海を泳いで烏暮島に渡る。島で二人が見たものは、皮膚が鱗化する奇病に苦しむ島民、長老とその弟子、黒衣の集団、謎の少女、そしてクモ形の怪物…。長老と島民たちは、島の秘密が外に伝わることを恐れ、伯顔を捉えて幽閉する。褚思鏡は、謎の少女・沈淙の助けを得て、舟で海上へ逃れる。その褚思...古装SF・ホラー・アクション/中華ドラマ『天啓異聞録』

  • 2024洗濯機買い替え

    年末から挙動が不安定だった洗濯機が、とうとう年明けに壊れてしまった。いつまで待っても脱水が完了せず、蓋のロックが外れなかったので、最後は蓋を壊して中の洗濯物を取り出した。日立のNW-500MXという機種で、ネットで調べたら、2012年1月発売だという。そうだとすると、2013年4月に札幌に転任したのを機に購入したのではないかと思う。札幌の宿舎では、風呂場の蛇口から給水するしか設置場所がなくて、風呂場のドアが閉められない状態で2年間暮らした。つくばの宿舎は、洗濯機専用の給水口があったが、設置場所が室内だったので、振動音に悩まされた。今の住まいは、設置場所がベランダで、雨風に晒されっぱなしだったので、寿命を縮めてしまったかもしれない。壊れた洗濯機がリサイクル回収で搬出されていくのを、なんだか寂しい気持ちで見送...2024洗濯機買い替え

  • 原作改変の二作品/文楽・平家女護島、伊達娘恋緋鹿子

    〇国立文楽劇場令和6年初春文楽公演第3部(2024年1月6日、17:30~)2年ぶりに初春文楽公演を見た。大阪で見る文楽、特に初春公演は格別。いつものお供え餅とにらみ鯛。大凧の「辰」の揮毫は、京都・壬生寺の松浦俊昭貫主による。そういえば、12月に同劇場で壬生狂言の公演があったのだ。壬生狂言、見たことがないので一度見たいと思っている。・『平家女護島(へいけにょごのしま)・鬼界が島の段』名作なので何度か見ている。前回は2018年の初春公演で、俊寛僧都は今回と同じ玉男さんだった。前回の記憶は曖昧だが、舞台に登場した俊寛のたたずまいにすぐに引き込まれた。11月の文楽公演のプログラムに玉男さんのインタビューが掲載されていて、聞き手が「近年ますます、初代玉男師匠に似てこられたように感じます」と話を向けていたのを思い出...原作改変の二作品/文楽・平家女護島、伊達娘恋緋鹿子

  • 2024年1月関西旅行:京都・佐々木酒造あたり

    先週の三連休は関西で遊んでいたので、今年の大河ドラマ『光る君へ』の第1回放送は京都・二条城近くのビジネスホテルのテレビで見た。最終日は早めに東京に帰ろうと思って、ふと考えたら、紫式部の夫・藤原宣孝役の佐々木蔵之介さんの実家「佐々木酒造」が近くにあることを思い出した。朝イチで、ぶらぶら歩いて寄ってみることにした。場所は丸太町通の北側。このへんは観光寺院がないのでほとんど来たことがない。ふつうの住宅街の路地に入ると、瓦屋根の木造家屋の前に黄色いケースを積み上げた搬入スペースがあって、その先に店舗の入口が見えた。杉玉の隣りには、京都風の簡素な正月飾り。とてもよい。角を曲がると、絵に描いたような造り酒屋の蔵が続く。煙突。調べたら、昔は酒米を蒸したり火入れをしたりするための燃料として石炭や木炭を使っていたため、燃焼...2024年1月関西旅行:京都・佐々木酒造あたり

  • 2024年1月関西旅行:辰づくし(京都国立博物館)他

    今週は軽井沢出張が入ってブログが書けていなかった。関西旅行の記録続き。2日目は京都周遊。■京都国立博物館新春特集展示『辰づくし-干支を愛でる-』(2024年1月2日~2月12日);特別企画・特集展示『弥生時代青銅の祀り』(2024年1月2日~2月4日);修理完成記念・特集展示『泉穴師神社の神像(2024年1月2日~2月25日)私は常設展モードの京博が大好きなので、お正月はとてもいい。3階の「陶磁」は京焼の色絵の名品がお正月らしく華やか。中国磁器の磁州窯や青花蓮華文盤も彩りを添える。三彩馬俑、男子立俑、鎮墓獣なども(明器だけど)晴れやかな雰囲気。2階「絵巻」は京都の寺院に伝わる江戸時代の縁起絵巻が3件。続く『辰づくし』には、濃いオレンジ色の『龍袍(金黄地綴織)』が出ていた。金黄(金杏)色は貴妃や皇子が着る色...2024年1月関西旅行:辰づくし(京都国立博物館)他

  • 2024年1月関西旅行:女流画家たちの大阪(大阪中之島美術館)他

    新年の三連休は関西方面で遊んできた。このところ、春夏秋は京都のホテルがほとんど取れなかったので、とりあえず宿泊を確保したところで安心して、ギリギリまで計画を立てるのをサボっていた。年明けに、慌てて新春文楽公演のチケットを取って、初日は大阪観光からスタートすることにした。■大阪中之島美術館『決定版!女性画家たちの大阪』(2023年12月23日~2024年2月25日)約百年前の大阪では、島成園、木谷千種、生田花朝など多くの女性日本画家が活躍していた。当時の美術界は、東京と京都がその中枢を担い、制作者は男性が大多数を占めていたが、女性日本画家の活躍において大阪は他都市と肩を並べており、その存在は近代大阪の文化における大きな特色のひとつとなった。本展は、50名を超える近代大阪の女性日本画家の活動を約150点の作品...2024年1月関西旅行:女流画家たちの大阪(大阪中之島美術館)他

  • 和紙舗と生活の美/HAIBARA Art & Design(三鷹市美術ギャラリー)他

    年末年始休み(今日まで)に見てきたもの。あとで書こうと思うと溜まってしまうので、今年はまとめて書いていくようにする。■三鷹市美術ギャラリー『HAIBARAArt&Design和紙がおりなす日本の美』(2023年12月16日~2024年2月25日)日本橋に店舗を構える和紙舗「榛原(はいばら)」の仕事を紹介する。榛原は1806(文化3)年、初代須原屋佐助(中村佐助)が小間紙屋を開業したのが始まりと言われている。須原屋?と思ったら、書物問屋の須原屋茂兵衛の店で支配人をしていた人らしい。18世紀の終わり頃から生産が開始された熱海製の雁皮紙の販売で評判を得る。本展の展示品は、おもに明治から昭和初期にかけて製作された和紙や紙製品。河鍋暁斎、梶田半古、川端玉章、竹久夢二などの有名どころが千代紙のデザインをしていることに...和紙舗と生活の美/HAIBARAArt&Design(三鷹市美術ギャラリー)他

  • 新しい古典の誕生/映画・ゴジラ-1.0

    〇山崎貴監督・脚本『ゴジラ-1.0(マイナスワン)』(TOHOシネマズ日本橋)年末年始休暇のうちに映画館で映画が見たくなって、大晦日の朝に見てきた。事前に私が仕入れていた情報は「敗戦後すぐが舞台」「朝ドラ『らんまん』の主役コンビ、神木隆之介くんと浜辺美波さんが主演」「神木隆之介くんは元特攻隊員」「ゴジラが怖い」くらいだったが、とてもおもしろかった。大戦末期、特攻隊として出撃した敷島浩一(神木隆之介)は、搭乗機の故障のため、大戸島の守備隊基地に不時着する。しかし整備兵の橘(青木崇高)は故障個所を見つけられず、敷島が特攻逃れのために故障を偽ったのではないかと疑う。その晩、基地は巨大な怪獣「呉爾羅(ゴジラ)」に襲わる。橘は敷島に、零戦に装着されている20ミリ砲でゴジラを撃つよう懇願するが、敷島は恐怖で撃つことが...新しい古典の誕生/映画・ゴジラ-1.0

  • 2024初詣・深川七福神巡り

    明けましておめでとうございます。去年の正月は喪中だったので、2年ぶりに新年の賀詞を唱えてみる。今年は、毎日なるべく歩こうと決めたので、元旦から深川七福神巡りに出かけた。門前仲町の住人になって2回目のお正月、2019年にも一度巡っている。当時は生活圏が極端に狭かったので、清澄白河も森下もよく分からなかったが、今はすっかり地元感覚である。2019年と同じ、深川不動堂~恵比須神(富岡八幡宮)~弁財天(冬木弁天堂)~福禄寿(心行寺)~大黒天(円珠院)~毘沙門天(龍光院)~布袋尊(深川稲荷神社)~寿老人(深川神明宮)というコースで回った。2019年の記事を読んでみたら、冬木弁天堂では「小さなお厨子の中に、木目込み人形のようにきれいな錦の着物を着た、かわいい弁天様」と書いているが、今年はそのほかに、大きくて美麗な弁財...2024初詣・深川七福神巡り

  • 後に残る者たちへ/中華ドラマ『一念関山』

    〇『一念関山』全40集(檸檬影業、愛奇藝、2023年)架空の王朝を舞台にした武侠劇。中原では、安国・梧国という2つの強国が覇権を争っていた。戦いに敗れた梧国皇帝は安国の捕虜となり、安国は梧国に対して、十万両の身代金を携えて迎帝使として皇子を寄こすよう要求する。迎帝使の人選に苦慮した梧国宮廷は、皇帝の異母妹で、母親の身分が低かったため、冷宮で育った公主の楊盈を皇子礼王と偽って送り出すことにした。梧国の秘密警察組織である六道堂の堂主・寧遠舟は、礼王の護衛として旅に同行することになった。一行には、六道堂の仲間たちのほか、寧遠舟の表妹を名乗る謎の美女・任如意が加わっていた。如意はもとの名を任辛と言い、安国の秘密警察・朱衣衛の左使をつとめた伝説の刺客だった。しかし7年前、敬愛していた安国皇后が何者かに殺害される事件...後に残る者たちへ/中華ドラマ『一念関山』

  • 日本人と日本文化の起源/縄文人と弥生人(坂野徹)

    〇坂野徹『縄文人と弥生人:「日本人の起源」論争』(中公新書)中央公論新社2022.7本書のオビの表面には、縄文人と弥生人の復元模型の顔写真を並べて、大きな赤字で「日本人とは何者か?」と書かれていた。裏面には「縄文人と弥生人はいかなる人びとであったのか?」とも。私は、この種の疑問には関心がなかったので、本書をスルーしていた。しかし著者の関心は、より正確には「日本人(縄文人と弥生人)はいかなる人びとと考えられてきたのか?」という論争史にあると分かって、俄然、興味が湧いて読んでみた。日本における近代的な人類学・考古学はモースの大森貝塚発掘(1877年)に始まるというから、150年足らずの歴史しかないが、研究は大きな進展を遂げてきた。そもそも当初は、縄文式土器と弥生式土器の先後関係も明らかではなく、異なる集団の文...日本人と日本文化の起源/縄文人と弥生人(坂野徹)

  • 晴れの日の装い/繍と織(根津美術館)

    〇根津美術館企画展『繍(ぬい)と織(おり):華麗なる日本染織の世界』(2023年12月16日~2024年1月28日)初代・根津嘉一郎の蒐集品を中心に、法隆寺や正倉院伝来の上代裂、袈裟や打敷などの仏教染織、唐織や縫箔といった能装束、そして江戸時代の小袖まで、幅広い時代の染織品の中から、織と刺繡の技が光る作品を紹介する。私は染織工芸には、あまり積極的な関心を持っていないのだが、同館では、何度か興味深い展示に出会ったことがある。たとえば、2022年の企画展『文様のちから技法に託す』や、2021年の『国宝燕子花図屏風』展にあわせて、3階の展示室5で開催されていた「上代の錦繍綾羅(きんしゅうりょうら)」などである。本展は、はじめに上代裂を特集。経錦(たてにしき)と緯錦(ぬきにしき)とか、夾纈(きょうけつ)・臈纈(ろ...晴れの日の装い/繍と織(根津美術館)

  • 2023東京ジャーミーから笹塚へ歳末散歩

    今夜はクリスマスイブ。机の上には去年、ロフトで買った安物のツリー。アラブ・トルコのお菓子をデザートにいただく。昨日、代々木上原のモスク(東京ジャーミー)の「パレスチナ・デー」と題したイベントに行って買ってきたもの。訪ねたのが午後の遅い時間だったので、すでに品薄だった。機会があったら、次はもっと早い時間に行こう。スイカのブローチ(木製)も買った。スイカがパレスチナへの連帯のシンボルとして使われていることは知らなかったけど、その色彩(赤、緑、黒、白)を見たら、すぐに分かった。この日は、代々木上原から笹塚までぶらぶら歩いてみた。私はこの近辺に10年くらい住んでいたことがあるのだが、職場と自宅を往復するだけの日々で、通勤経路を外れた街歩きを楽しむこともなかったなあ、と振り返る。笹塚では、以前にも一度来たことのある...2023東京ジャーミーから笹塚へ歳末散歩

  • 2023年8-12月展覧会拾遺(東博の展示から)

    東京国立博物館の展示から。■東洋館8室特集『中国書画精華-日本におけるコレクションの歴史』(前期:2023年10月31日~11月26日)(2023年11月28日~12月24日)毎年恒例の特集展示。今年は前期・後期とも、伝来の時期による「古渡り」「中渡り」「新渡り」の分類に従って展示されていた。前後期とも見に行ったが、特に後期は、根津美術館の『北宋書画精華』とつなげて見ることで味わいが増したように思う。後期は、金大受筆『十六羅漢図』3幅など、仏教道教に関するあやしい人物画がたくさん出ていた。『天帝図軸』(元~明時代)は、玉座に玄天上帝(足元に亀と蛇の玄武)、その周りに四人の武神、関元帥(関羽)、趙元帥、馬元帥、温元帥を描く。所蔵先は文京区の霊雲寺で、徳川将軍家の祈願寺だという。地理的に、私は近くを通ったこと...2023年8-12月展覧会拾遺(東博の展示から)

  • 2023年8-12月展覧会拾遺

    書き洩らし展覧会レポートの振り返り。■泉屋博古館東京特別企画展『日本画の棲み家-「床の間芸術」を考える』(2023年11月2日~12月17日)明治時代以降、西洋に倣った展覧会制度の導入は、床の間や座敷を「棲み家」とした日本絵画を展覧会場へと住み替えさせた。一方、同館の日本画コレクションは、むしろ邸宅を飾るために描かれたもので、来客を迎えるための屏風や床映えする掛軸など、展覧会を舞台とする「展覧会芸術」とは逆行する「柔和な」性質と「吉祥的」内容を備えている。本展は、かつて住友の邸宅を飾った日本画を紹介しながら「床の間芸術」を再考する。この言葉、時代によって、あるいは画家によって、否定的にも肯定的にも使われているのが興味深かった。木島桜谷の金屏風着色『雪中梅花』の美しさ!これは毎年でも見たい。■町田市立国際版...2023年8-12月展覧会拾遺

  • 陶磁器あれこれ/青磁(出光美術館)、古伊賀(五島美術館)他

    レポートを書きそびれた展覧会が溜まっているので、思い出せるものから書いてみる。■出光美術館『青磁-世界を魅了したやきもの』(2023年11月3日~2024年1月28日)青磁の誕生前夜の灰釉陶器から、漢時代に成熟し始める越州窯、日本人が愛してやまない龍泉窯青磁など、中国における青磁の展開を中心に取り上げながら、高麗や日本、さらには東南アジアなどの青磁も紹介し、世界の人々を魅了した青磁の魅力に迫る。展示件数116件、ほとんどが同館のコレクションだが、徳川美術館や根津美術館からの出陳もあり。東博の青磁輪花茶碗『馬蝗絆』も来ていた。青磁は、もと南方で誕生したが、南北朝の時代に南北の文化交流が進むと、華北でも生産が始まった可能性がある、という解説を読んで、こんなところにも南北の多元性が!と興味深かった。あらためて認...陶磁器あれこれ/青磁(出光美術館)、古伊賀(五島美術館)他

  • 中国の多元性/物語 江南の歴史(岡本隆司)

    〇岡本隆司『物語江南の歴史:もうひとつの中国史』(中公新書)中央公論新社2023.11「江南」は、一般的には長江下流部の南方を指す用語だが、本書ではもう少し広く、中国語の「南方」の意味で使っている。北方=中原がまさに「中国」であるのに対して、南方=長江流域と沿海部は、中国を成り立たせると同時に「一つの中国」を否定し、中国の多元性を体現してきた地域なのである。春秋時代、中原の諸侯が連合して「中国」を名乗ると同時に、長江流域には楚・呉・越の諸国が起こり、北方と不可分にかかわる「江南」の歩みが始まる。以下、本書は「江南」を「長江上流(四川・重慶)」「長江下流(江蘇・浙江・安徽・江西)」「沿岸・海域(福建・広東)」「長江中流(湖南・湖北)」に分けて紹介していく。これらの地域が歴史に立ち現れるのが、この順序なのであ...中国の多元性/物語江南の歴史(岡本隆司)

  • 鳥取土産「白バラのシュトーレン」

    鳥取土産、大山乳業の「白バラのシュトーレン」を開封。表面にはシュガーパウダーがたっぷり!生地は、たぶんドイツ伝統の焼き方に比べると、軽め、やわらかめ。スパイスやラム酒の風味もあまり強くない。日本人の好みに寄せた「和風」のシュトーレンという印象。最初の1切れは紅茶でいただいたが、緑茶でもいけそうである。鳥取、名古屋の連続出張を終えて、あとは年末までのんびりの予定。鳥取土産「白バラのシュトーレン」

  • 日中近代史の記憶/偉人たちの邂逅(大倉集古館)

    〇大倉集古館企画展・大倉組商会設立150周年『偉人たちの邂逅-近現代の書と言葉』(2023年11月15日~2024年1月14日)明治6(1873)年の大倉組商会設立から150年を数えた本年、創設者・大倉喜八郎と、嗣子・喜七郎による書の作品とともに、事業や文雅の場で交流した日中の偉人たちによる作品を展示する。この秋、根津美術館の『北宋書画精華』には、色とりどりの料紙を貼り継いだ『古今和歌集序』が出ていたし、東博の『やまと絵』第4期(記事は書いていない)では、久しぶりの『随身庭騎絵巻』を見た。所蔵の名品を惜し気もなく他館に貸し出しているわりには、自館の展示がずいぶん地味で苦笑したが、歴史好きには興味深かった。1階は中国関係でまとめている。冒頭には黄色い縦長の料紙に七言の書。署名はなく、右肩に朱角印。温和でバラ...日中近代史の記憶/偉人たちの邂逅(大倉集古館)

  • 国宝と天体望遠鏡/皇室のみやび、他(皇居三の丸尚蔵館)

    〇皇居三の丸尚蔵館開館記念展『皇室のみやび-受け継ぐ美-』(第1期:三の丸尚蔵館の国宝)(2023年11月3日~12月24日)三の丸尚蔵館は、皇室ゆかりの文化財等を展示・公開する施設である。私は、ずっと昔から(戦後すぐくらいから)存在した施設のように思っていたが、調べたら、昭和天皇の崩御をきっかけに皇室の財産の整理が行われ、国有財産となった美術品類を適切な環境で保存研究し、一般に公開する目的で1993年に設置された。コロナ禍で全く気づいていなかったが、2019年12月から新施設への移行準備のため、しばらく休館していた。今年1月、新棟の第1期工事が完了し、開館記念展が開催される運びとなったのである。さらに大きな変化は、2023年10月1日付で、管理・運営が宮内庁から独立行政法人国立文化財機構へ移管されたこと...国宝と天体望遠鏡/皇室のみやび、他(皇居三の丸尚蔵館)

  • 画家と刑事のバディ/中華ドラマ『猟罪図鑑』

    〇『猟罪図鑑』全20集(愛奇藝、檸檬影視、2022年)中国では2022年公開。日本でも同時期から『猟罪図鑑~見えない肖像画~』のタイトルで知られているのは、そうか、国際版プラットフォームで日本語字幕版が配信されているためか、と気づき、いい時代になったなあと思う。主演の檀健次くんの出演作、最近見ていなかったのだが、『蓮花楼』で10年ぶりくらいに肖順堯さんを見て、檀健次くんの最近作を見たくなり、本作を見てみた。舞台は中国南方の北江市(ロケ地は厦門)。美術学校の教師を勤める青年画家・沈翊は、市警察分局の模擬画像師(似顔絵師)の職を引き受けるが、刑事隊長の杜城は反発する。7年前、杜城の恩師の雷刑事が殺害される事件が起きた。当時、画学生だった沈翊は、事件の鍵を握る女性の顔を見たはずなのに、絵に描くことができなかった...画家と刑事のバディ/中華ドラマ『猟罪図鑑』

  • 2023年12月鳥取砂丘と駅前歩き

    先週は・木金と鳥取出張だった。私費で後泊をつけて、土曜は現地の知人に鳥取砂丘を案内してもらった。鳥取砂丘は、たぶん20年以上前に、やはり仕事で鳥取に来たついでに観光したことがある。この日は山陰の12月とは思えない青空だった。馬の背と呼ばれる砂の尾根(標高47メートルとも)の下は黒っぽい湿地で、小さな池がある(同行者の話では、季節によって池の大きさが変わる、とのこと)。この風景、むかし訪ねた敦煌の月牙泉を思い出した。へろへろになりながら砂丘を登ると、紺碧の日本海が広がる。これは鳥取ならではの風景。馬の背の上は、かなり風が強かった。砂丘の周囲は、むかしながらのお土産屋さんが廃業するのと入れ替わりに、おしゃれな施設ができつつあった。2022年にオープンしたタカハマカフェは隈研吾氏の設計。展望テラスでコーヒーをい...2023年12月鳥取砂丘と駅前歩き

  • クリスマスリース2023

    今年も幡ヶ谷のラベイユ四季という花屋さんで、手作りのクリスマスリースを買ってきた。いまブログを検索したら、途中(北海道で暮らした期間)中断はあるものの、2008年から写真を掲載している。年に1回のお付き合いだが、顔なじみのおばさんに会えて嬉しかった。比較的小さめのサイズで、値段は税込み3,850円。ベリーやひまわりなど「実り」を感じさせるデザイン。左右に垂れているのは稲穂で「お正月まで飾ってもいいように」というのが気に入った。実は、スタンダードなクリスマスリースでも、毎年、正月七日までそのまま飾っているのだが。去年の今頃は喪中だったので、心もち控えめに過ごしていたが、今年は年末年始のお祝い気分をしっかり味わいたいと思っている。クリスマスリース2023

  • 徽宗の猫と桃鳩/北宋書画精華(根津美術館)

    〇根津美術館特別展『北宋書画精華』(2023年11月3日~12月3日)日本に伝存する北宋時代(960~1127)の書画の優品を一堂に集めた展覧会。「きっと伝説になる」をキャッチコピーに、力の入った展覧会で、北宋の絵画作品21件(墨摺、関連作品を含む)、経巻・書跡10件、舶載唐紙を使った古筆切9件が集結していた。ただ、私の場合、大阪市博とか藤井斉成会有鄰館とか黒川古文化研究所とか、最近ご無沙汰しているけれど、たぶん一度は見ている作品が多かった。その中で最も「レア」なのは、12/1~3の3日間だけ展示される徽宗皇帝筆『桃鳩図』だと思ったので、展示リストが公表されるとすぐ、最終日12/3の朝イチの日時指定券を取って、あとはじっと待っていた。そうしたら、このブログに大和文華館の『いぬねこ彩彩』を見て来た感想のコメ...徽宗の猫と桃鳩/北宋書画精華(根津美術館)

  • 覇者の交代/都会の鳥の生態学(唐沢孝一)

    〇唐沢孝一『都会の鳥の生態学:カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰』(中公新書)中央公論新社2023.6千葉県市川市に住み、都立高校に勤める著者が、半世紀以上にわたって「都市鳥」を観察してきた経験をまとめたもの。都市鳥とは、都会に生息する鳥をいう。都市環境に最初に適応したのは、すでに農村で人に適応していたスズメやツバメ、カラスで、その後、さまざまな野鳥が進出してきた。日本では、1960~70年代に、キジバト、ヒヨドリ、ハクセキレイ、イワツバメ、ユリカモメが進出し、80年代には、チョウゲンボウ、コゲラ、カルガモが見られ、いったん姿を消したカワセミが東京23区に戻ってきた。2000年代には猛禽類のオオタカやハヤブサが都市で繁殖するようになった。一方、中国大陸や東南アジアから持ち込まれた外来鳥類の野生化...覇者の交代/都会の鳥の生態学(唐沢孝一)

  • 絶望、たまにハッピーエンド/円(劉慈欣)

    〇劉慈欣;大森望、泊功、齊藤正高訳『円:劉慈欣短編集』(ハヤカワ文庫)早川書房2023.3『三体』の劉慈欣の短編集。1997年に発表されたデビュー作『鯨歌』から2014年の『円』まで13編を発表順に収録する。豪華なクルーズ船に乗った謎の西洋人たちが登場する『鯨歌』は、普通の短編SFという感じ。1999年の『地火(じか)』、2000年の『郷村教師』は、舞台が近現代中国の辺境に設定されていて、劉慈欣らしさが濃厚である。典型的(≒通俗的)なSFらしさ(科学的・進歩的・未来的)から最も遠い、永遠に続く貧困と停滞の世界にSFが接続するところが、このひとの小説の魅力の一つではないかと思う。『栄光と夢』は、アメリカ合衆国とシーア共和国の戦争の代替手段として、両国のみが参加するオリンピックが開催されるという皮肉な物語。こ...絶望、たまにハッピーエンド/円(劉慈欣)

  • 柏原・八幡神社の薬師如来とギャラリートーク(東京長浜観音堂)

    〇東京長浜観音堂『薬師如来立像(高月町柏原・八幡神社蔵)』(2023年11月1日~11月30日)令和5年度第3回展示の薬師如来立像を見てきた。たまたま18日に訪問したら「18日は観音様のご縁日ですので」ということで、あま茶のティーバッグをいただいた。今期は観音さまではなくお薬師さんなんだけど、ありがとうございます。11月25日は、高月観音の里歴史民俗資料館の学芸員・秀平文忠さんのギャラリートークがあったので、聴きに行った。長浜観音倶楽部会員でない、一般向けのギャラリートークは14時からなので、30分くらい前に行ったら、展示室が人でいっぱいだったので、びっくりした。座れる席は20名程度しかないので、時間ぎりぎりにいらした方は立ち見(立ち聴き)になったのではないかと思う。薬師如来像のお話は、高月町柏原がどのあ...柏原・八幡神社の薬師如来とギャラリートーク(東京長浜観音堂)

  • 浅はかさといじらしさ/文楽・冥途の飛脚

    〇国立文楽劇場令和5年11月文楽公演第3部(2023年11月8日、17:45~)・近松門左衛門三〇〇回忌『冥途の飛脚(めいどのひきゃく)・淡路町の段/封印切の段/道行相合かご』今秋の大阪公演は行かれないかな、と思っていたのだが、直前に調整をつけて、見に行くことにした。直前でも席が余っていたので心配したが、まあまあ後ろのほうまで埋まっていたように思う。近松門左衛門(1653-1725)三〇〇回忌の今年、春に『曽根崎心中』、秋に『冥途の飛脚』を見ることができて嬉しい。私は、学生時代に『曽根崎心中』で文楽の面白さを知ったが、年齢を重ねるにつれ、一番好きなのは『冥途の飛脚』になってきた。忠兵衛は、救いようもなく浅はかなのに、なぜあんなにいじらしいのだろう。忠兵衛を囲む人々は、みな道理をわきまえた大人である。息子の...浅はかさといじらしさ/文楽・冥途の飛脚

  • 人生の黄昏に/中華ドラマ『漫長的季節』

    〇『漫長的季節』全12集(企鵝影視、2023年)今年前半、中国で大ヒットを記録したサスペンスドラマ。見たいドラマが途切れた隙をねらって、一気に見てみた。確かに上質なドラマだと思うが、豆瓣(視聴者投票)9.5は、ちょっと高すぎではないかと思う。いまWOWOWで『ロング・シーズン長く遠い殺人』のタイトルで放映中なので、視聴中の方は、以下の【ネタバレ】を避けていただくのが無難である。ドラマは、2016年と1997-98年の2つの時間軸を行ったり来たりしながら進む。2016年、東北地方の樺林市に住む初老のタクシー運転手の王響は、まもなく大学受験を迎える息子の王北と二人暮らし。王響の義理の弟・龔彪も、同じタクシー運転手の仕事を始めようとしていた。しかし、龔彪が購入した車と同じナンバーの車が人身事故を起こしたというこ...人生の黄昏に/中華ドラマ『漫長的季節』

  • 2023深川・富岡八幡宮の酉の市

    今年は勤労感謝の日の11月23日が二の酉だった。昼間出かけていたので、夕食後にもう一度、外に出るのは億劫だったが、あまり寒くないのを幸い、近所の富岡八幡宮まで歩いて出た。例によって、人出は少ない。熊手を売る店は4~5軒ほど、参道の入口にベビーカステラの屋台が1軒だけで、書きながら、2022年の風景と全く同じであることに気づいた。「富岡八幡宮の酉の市」と書いているが、正確には、境内社の大鳥神社のお祭りである。離れたところから見ていたら、テントの中で待機する宮司さんは「かきこめ守り」という小さな熊手形のお守りを授与して、お祓いしてくださるらしい。ここの酉の市は、冬の近さを感じさせる、このわびしさが味なのだ。また来年もふらりと立ち寄ることができるといいな。2023深川・富岡八幡宮の酉の市

  • 看板に偽りなし/秘蔵!重要文化財「長谷雄草紙」全巻公開(永青文庫)

    〇永青文庫秋季展『秘蔵!重要文化財「長谷雄草紙」全巻公開-永青文庫の絵巻コレクションー』(2023年10月7日~12月3日)私の大好きな『長谷雄草紙』が「全巻公開」って本当?と疑いながら、会期が始まってすぐに見にいったら本当だった。そろそろ終了なので、もう1回見てきたところで感想を書く。冒頭のパネルには「当館では14年ぶり」「初めて全画面を開けて展示します」と書いてあった。14年前の2009年『源氏千年と物語絵』展の記録は、このブログ内に残っているが、なんと『長谷雄草紙』を全画面見るには8回通わなければいけないという、血も涙もない展覧会だった。まあ4階展示室が造られる前だから、施設の制約上、やむを得なかったことは理解する。今回、ドキドキしながら4階展示室に入ったら、部屋の一辺を使った展示ケースに『長谷雄草...看板に偽りなし/秘蔵!重要文化財「長谷雄草紙」全巻公開(永青文庫)

  • 看板に偽りなし/秘蔵!重要文化財「長谷雄草紙」全巻公開(永青文庫)

    〇永青文庫秋季展『秘蔵!重要文化財「長谷雄草紙」全巻公開-永青文庫の絵巻コレクションー』(2023年10月7日~12月3日)私の大好きな『長谷雄草紙』が「全巻公開」って本当?と疑いながら、会期が始まってすぐに見にいったら本当だった。そろそろ終了なので、もう1回見てきたところで感想を書く。冒頭のパネルには「当館では14年ぶり」「初めて全画面を開けて展示します」と書いてあった。14年前の2009年『源氏千年と物語絵』展の記録は、このブログ内に残っているが、なんと『長谷雄草紙』を全画面見るには8回通わなければいけないという、血も涙もない展覧会だった。まあ4階展示室が造られる前だから、施設の制約上、やむを得なかったことは理解する。今回、ドキドキしながら4階展示室に入ったら、部屋の一辺を使った展示ケースに『長谷雄草...看板に偽りなし/秘蔵!重要文化財「長谷雄草紙」全巻公開(永青文庫)

  • 門前仲町でごはん屋呑み再訪

    友人二人と、久しぶりに門前仲町の「ごはん屋おゝ貫」(大貫)に行った。前回(2023年2月)より、コースの値段設定がお高めに変更されていたのは、時節柄、やむをえないところ。味とボリュームは文句なし。「売り」は羽釜炊きのごはんなんだけど、私は、素人には出せない出汁の味が好き~。ご飯は、前回の写真を見たら、鯛茶漬けにしていたけど、今回は普通に白いごはんとお味噌汁でいただいた。ごはんのおともには、ほぐし鮭と牛肉のしぐれ煮をチョイス。あ、今回は、おにぎりは持たせてくれなかったな…言えばよかったのかしら。デザートは、ラフランスの天ぷら。揚げたての天ぷらも美味だった。「利き酒し放題90分1,980円」は、冷酒・古酒・どぶろくが少しずつ楽しめてお得。厳選された銘柄が楽しめる。ご馳走様でした!門前仲町でごはん屋呑み再訪

  • 銀座でドラマ『大奥』衣装展を見る

    このブログでは、日本のドラマのことを書かなくなって久しいが、全く見ていないわけはない。いまはNHKドラマ10『大奥』を、けっこう熱心に見ている。原作は読んだことがなかったが、森下佳子さん脚本のドラマは、だいたい私の好みに合う。先週末、銀座蔦屋書店イベントスペースGINZAATRIUMで『大奥衣装展』(2023年11月17日~11月19日)をやっているというので見てきた。第8代将軍・吉宗の衣裳。先日、和歌山に行ったときも思ったけど、もう吉宗と聞くと、真っ先に冨永愛さんの凛とした姿が思い浮かぶようになってしまった。瀧山の流水紋の裃。ドラマの序盤、吉宗に仕えた水野祐之進の裃と同じかと思ったら、違うデザインなのだな。幕末史に疎い私は、大奥最後の御年寄・瀧山というのが実在の人物であると、最近知ったところ。これは第1...銀座でドラマ『大奥』衣装展を見る

  • 強がりと気苦労/王朝貴族と外交(渡邊誠)

    〇渡邊誠『王朝貴族と外交:国際社会のなかの平安日本』(歴史文化ライブラリー)吉川弘文館2023.3中国史に関する本を読んでいると、当時、日本の状況はどうだったんだけ?というのが気になる。たまたまSNSに情報が流れてきた本書が面白そうだったので読んでみた。冒頭には「北宋期の日本と東アジア」の地図が掲げられていて、朝鮮半島には高麗、その北方には女真、さらに契丹(遼)、西夏、吐蕃、大理、大越が、ぐるりと宋を取り巻いている。本書は、いくつかのトピックを取り上げながら進むが、最初は「刀伊の入寇」(1019年)である。博多に上陸した賊船は、武士の活躍によって撃退された後、朝鮮半島東岸方面に逃れ、高麗の船兵に拿捕された。高麗は日本人の拉致被害者を保護して、対馬へ送還した。この知らせを受けた中央政府(道長・頼道・実資・公...強がりと気苦労/王朝貴族と外交(渡邊誠)

  • 2023年11月関西旅行:明恵上人伝(和歌山県博)、宗達(久保惣美術館)他

    ■和歌山県立博物館生誕850年記念特別展『紀州・明恵上人伝』(2023年10月14日~11月26日)関西旅行3日目は、行けたら行きたいと思っていた展覧会を行きあたりばったりで回る。朝から南海電鉄で和歌山へ。きれいになった和歌山市駅に下りるのは2回目だが、お店が増えて賑わっていてよかった。いつものバス路線で和歌山県立博物館へ。見慣れた吉宗騎馬像に近寄ってみたら、享保年間に吉宗公が西洋より馬を輸入したという史実を踏まえて制作された旨の注記が付いていた。へえ!特別展の主人公は明恵さん。明恵は、承安3年(1173)、平重国と紀伊の湯浅党の祖・湯浅宗重四女の子として紀伊国有田(ありだ)で生まれた。9歳で両親を失うが、湯浅の一族は生涯にわたって明恵の活動を経済的に支援し、明恵も湯浅の一族のために何度も祈りを捧げた。ト...2023年11月関西旅行:明恵上人伝(和歌山県博)、宗達(久保惣美術館)他

  • 2023年11月関西旅行:いぬねこ彩彩(大和文華館)、正倉院展(奈良博)

    ■大和文華館特別展『いぬねこ彩彩(さいさい)-東アジアの犬と猫の絵画-』(2023年10月7日~11月12日)関西旅行初日、京都から移動して奈良方面へ。本展観では、中国、朝鮮半島、日本における、12~20世紀に制作された犬図・猫図を通して、東アジアにおける多彩な動物画の一様相を紹介する。2018年の特別企画展『生命の彩-花と生きものの美術-』を見逃したことを激しく悔やんでいたので、本展は絶対見に来ようと思っていた。冒頭、白っぽい画帖が出ていると思ったら、八大山人の『安晩帖』でびっくりした。第9図「猫図」である。これは見覚えがある、と思って記録を探ったら、2011年に泉屋博古館の『住友コレクションの中国絵画』で見ているらしい。以前、『安晩帖』の実見した図を数えたときは落としていた。全20図のうち、まだ「2....2023年11月関西旅行:いぬねこ彩彩(大和文華館)、正倉院展(奈良博)

  • 2023年11月関西旅行:東福寺(京博)、東寺宝物館

    ■京都国立博物館特別展『東福寺』(2023年10月7日~12月3日)春に東博で見た展覧会だが、もう一回見て来た。はじめは開山の聖一国師・円爾と、その師匠である無準師範を中心に東福寺創建の歴史を振り返る。東博の展示構成も同じだったと思うのだが、京博のほうが雰囲気が落ち着いていて頭に入る。国宝の『無準師範像』(東福寺像、南宋時代)を見ることができたが、ちょっと俳優の王勁松さんに似てる、と思った(ちなみに無準師範像にはいろいろあるので、この肖像画限定である)。見た感じこわもての円爾さんは、非常に弟子たちから慕われた。円爾が収集した書籍には「普門院」の印が見られるという。古典籍ではよく見る印だが、円爾と結びつけたことがなかったので驚いた。無準師範と円爾、二人の遺偈を見ることができたが、どちらも禅僧らしい文字と内容...2023年11月関西旅行:東福寺(京博)、東寺宝物館

  • 2023年11月関西旅行:奈良・陰陽町

    週末に有休を1日足して、関西大旅行(京都~奈良~大阪~和歌山)をしてきた。2日目は朝から奈良博の正倉院展を見るつもりだったが、1日目にうまく見ることができてしまったので予定変更。先月、歴博の展示『陰陽師とは何者か』を見て以来、ずっと気になっていた奈良町の陰陽町(いんようちょう・いんぎょまち)を訪ねてみることにした。場所はGoogleマップですぐに見つかる。元興寺の南西あたりなので、猿沢の池の西側、柿の葉寿司の平宗の前の道(伊勢街道)を南下する。久しぶりに歩く懐かしい道だが、ずいぶん新しい住宅やお店が増えていた。バスも通る「ならまち大通り」で一区画西に進んで、さらに南下。このあたりは脇戸町・高御門町で、しばらく行くと再び西に入る道があるはずなのだが、一度は見逃して通り過ぎてしまった。慌てて戻って、陰陽町の入...2023年11月関西旅行:奈良・陰陽町

  • 二人の天才皇帝/隋-「流星王朝」の光芒(平田陽一郎)

    〇平田陽一郎『隋-「流星王朝」の光芒』(中公新書)中央公論新社2023.9581年の建国から618年の滅亡まで、約40年、実質的にはわずか二代という短命王朝の隋を中国歴史学界では「流星王朝」と評することがあるそうだ。なかなか洒落た命名である。私は隋の皇帝家の人々も、この時代の文化(彫刻・工芸)も好きなので、本書の刊行を楽しみにしていたが、そもそも新書1冊分も書くことがあるのか?というのを心配していた。しかしその心配は無用で、本書は、隋の建国に先立つ南北朝後期の動乱から説き起こす。しかも、東魏・西魏・梁から北斉・北周・陳へという「中国」内部の政権交代とともに、「中国」の外=草原地帯では柔然が衰退し、突厥が勃興してきたことに注意を喚起する。その後、北周の重臣だった楊堅が帝位の簒奪に成功して隋の文帝となる際にも...二人の天才皇帝/隋-「流星王朝」の光芒(平田陽一郎)

  • 安田雷洲に注目/激動の時代 幕末明治の絵師たち(サントリー美術館)

    〇サントリー美術館『激動の時代幕末明治の絵師たち』(2023年10月11日~12月3日)幕末明治期の江戸・東京を中心に活動した異色の絵師たちを紹介し、その作品の魅力に迫る。たまたま私が目にした宣伝ビジュアルが、国芳と芳年らしかったので、またこの二人か、変わり映えしないなあ、と思って、あまり期待していなかった。それが、会場に来てみたら、冒頭に狩野一信の『五百羅漢図』から、とびきりいいセレクションの6幅(第21、22、45、46、49、50)が並んでいて感心した。第45幅は室内で羅漢たちが米のおにぎり(!)をこしらえており、別の羅漢が窓の外の餓鬼たちに施している。よく懐いた森の動物に食べものを与えるような自然な雰囲気である。東博の『やまと絵』展で『餓鬼草紙』を見てきた直後だったので、なんだか可笑しくなってしま...安田雷洲に注目/激動の時代幕末明治の絵師たち(サントリー美術館)

  • 王朝の美学の光と影/やまと絵(東京国立博物館)

    〇東京国立博物館特別展『やまと絵-受け継がれる王朝の美-』(2023年10月11日~12月3日)千年を超す歳月のなか、王朝美の精華を受け継ぎながらも、常に革新的であり続けてきたやまと絵を、特に平安時代から室町時代の優品を精選して紹介する特別展。出品245件。「すごい展覧会」であることは間違いないのだが、出品リストを眺めると、だいたい見たことのある作品で、どうしてもこれを見たい!というものはなかった。なので、どの時期に行くか決めかねていたのだが、神護寺三像が見どころの第2期に行ってきた。土日祝日は予約制なので朝イチのコマを取ったが、会場に着いたときは、開館時間を少しまわっていた。なので混雑を避けて、鎌倉時代から見ることにした。鎌倉時代(第2章)の冒頭、細長い展示室の短辺の展示ケースに神護寺三像が掛けてあり、...王朝の美学の光と影/やまと絵(東京国立博物館)

  • 鎌倉・宝物風入れ2023(円覚寺、建長寺)

    ■臨済宗・円覚寺派本山円覚寺(鎌倉市山ノ内)先週の洪鐘祭りと二週連続の鎌倉詣でになるが、久しぶりに宝物風入れ(曝涼)を見に行った。天気にもめぐまれ、西洋人の観光客の姿が多かった。仏殿の軒下には、先日のパレードで使われた洪鐘のレプリカが置いてあったり、特別拝観の国宝・舎利殿に向かう人もいたが、私は宝物風入れの会場である方丈を目指す。靴を脱いで中に建物の中に入ってから、宝物風入れの拝観料を払っていなかったことに気づく。あれ?脇から入ってしまったのがいけなかったのかな?と思って、慌てて、いったん外へ。しかし正面にも特に受付はない。あれれ?とキツネにつままれた気持ちで中へ。すると玄関を入ってすぐ左手の部屋に絵画等が飾ってあるのが見えた。目立っていたのは彩色の羅漢図。比較的小さな画面に羅漢1人とさまざまなタイプの従...鎌倉・宝物風入れ2023(円覚寺、建長寺)

  • 2023東京国際映画祭で『ゴールド・ボーイ』『満江紅』を見る

    ■金子修介監督『ゴールド・ボーイ』(10月29日、ヒューリックホール東京)東京国際映画祭で気になる映画が上映されるのを知って見てきた。『ゴールド・ボーイ』の原作は、中国・紫金陳のベストセラー小説『壊小孩』。2020年に『隠秘的角落』(バッド・キッズ)のタイトルでドラマ化され、日本にもたくさんファンのいる作品である。これを日本人監督が、どのように換骨奪胎して映像化するのか、とても興味があった。「ガラ・セレクション」で1回限りの上映だったが、運よく抽選に当たって見に行けた。舞台は沖縄に設定されており、ドラマ(中国南方)の雰囲気によく似ていた。登場人物の名前も原作を参考にしているのが面白かった。ドラマで秦昊が演じた陰険な殺人犯・張東昇役は岡田将生。いつカツラを外すのかと思って見ていたが(笑)こちらは最後まで美意...2023東京国際映画祭で『ゴールド・ボーイ』『満江紅』を見る

  • 少年たちの運命/中華ドラマ『繫城之下』

    〇『繁城之下』全12集(騰訊視頻、2023年)おそらく2022年の制作で、長く放映が待たれていた作品。明の万暦37年、江南に位置する蠹県(とけん)で連続殺人事件が発生する。最初の犠牲者は、捕快(警官)の長である冷捕頭。案山子に擬せられた冷捕頭の遺体に差し込まれた木の板には「吾道一以貫之」(吾が道は一を以て之を貫く)という「論語」の語句が鮮血で記されていた。次いで、書堂(寺子屋)の教師である王夫子が殺され、その遺体には「童子六七人」という、やはり「論語」の語句が残されていた。冷捕頭を師父と慕う捕快の曲三更、その同僚の高士聡、王夫子の甥である鳳可追らの若者たちは、犯人を求めて奔走するが、事件は続く。蠹県の裏社会の顔役たちと悶着が起きたり、冷捕頭の後任の易捕頭、そのまた後任の夏捕頭と衙門(県政府)の中の権力争い...少年たちの運命/中華ドラマ『繫城之下』

  • シーラカンスモナカ@仙台銘菓

    月曜は日帰り仕事で仙台に行ってきた。用務先には12時に行けばいいことになっていたので、これは「シーラカンスモナカ」を購入するチャンスだと思った。羽生結弦さんが織田信成さんに贈ったことが発端で話題になったスイーツである。今年6月、アイスショーFaOI(ファンタジー・オン・アイス)宮城公演で仙台に来たときは、仙台駅の特設売り場も長蛇の列で購入をあきらめざるを得ず、オンラインショップも「SoldOut」状態が長く続いていた。「メゾンシーラカンス」本店は11時開店だというので、10時半過ぎに新幹線で仙台駅に着けばちょうどいい、と思っていたら甘かった。行ってみると、小さなお店の前にはすでに開店待ちの列。平日だというのに…。店員のお姉さんは、周囲のマンションや駐車場の邪魔にならないよう、慣れた様子でにこやかに列を捌い...シーラカンスモナカ@仙台銘菓

  • 2023円覚寺「洪鐘弁天大祭」

    〇円覚寺洪鐘弁天大祭(2023年10月29日、9:30~12:00)鎌倉で約60年ぶりの開催となった洪鐘(おおがね)祭りを見てきた。「庚子の年に行われる」と書いてある資料も多いが、前回は1965年(乙巳)、その前は1901年(辛丑)だから厳密ではない。今回も2020年(庚子)に予定されていたようだが、新型コロナの影響もあり、2023年(癸卯)の今年、58年ぶりの開催となった。まあ、細かいことはいいのである。東京は朝から雨が降ったり止んだりで、家を出る意欲を失いかけたのだが、絶対、次を見る機会はまわってこないと思って出かけた。9時過ぎに北鎌倉駅に着くと、まあまあの人出。円覚寺の反対側のバス通りに出ると「左右に分かれてお進みください~」と誘導される。貰ったリーフレットには、行列は9:30に建長寺を出発すると書...2023円覚寺「洪鐘弁天大祭」

  • 土御門家の物語/陰陽師とは何者か(国立歴史民俗博物館)

    〇国立歴史民俗博物館企画展示『陰陽師とは何者か-うらない、まじない、こよみをつくる-』(2023年10月3日~12月10日)間違いなく面白い展示だったが、情報量が多すぎて、ちょっと私の頭が追いついていないので、これから展示図録(これがまた文字が多い)をしっかり読もうと思っている。本展示は、あまり知られていない陰陽道の歴史とそこから生み出されてきた文化をさまざまな角度からとりあげて考える。陰陽師の役割は、時代とともに多様に展開していった。本展第2部は、その中でも特に「暦の製作と配布」に着目する。まず前半、古代日本において、中国から伝わった占いの術をもとにして陰陽道が誕生する。律令制度の下で陰陽師は陰陽寮に属する官人であったが、中国や朝鮮のように天文台としては発展せず、むしろ呪禁師の業務と統合され、占いと呪術...土御門家の物語/陰陽師とは何者か(国立歴史民俗博物館)

  • 聖地の見どころ巡回/京都・南山城の仏像(東京国立博物館)

    〇東京国立博物館・本館特別5室浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念・特別展『京都・南山城の仏像』(2023年9月16日~11月12日)この夏、奈良博で開催されていた『聖地南山城』の一部巡回展というところだろうか。奈良博では、仏画や考古資料もあわせて143件が30を超える寺社(たぶん。いま関連MAPで数えた)から集結していたが、東京は11の寺社から18件の出陳のみで、ちょっと寂しい。とはいえ、見逃すのも惜しいと思って出かけた。会場は、これまでにも聖林寺の十一面観音や櫟野寺の大観音をお迎えした特別5室。会場に入るとすぐ、シャープな造形の小ぶりな観音像が目に入る。海住山寺の十一面観音菩薩立像だ。海住山寺には1、2回しか行ったことがないが、この観音像に記憶があるのは、ふだん奈良博に寄託されているためだと思う。横から見る...聖地の見どころ巡回/京都・南山城の仏像(東京国立博物館)

  • 熱血少年マンガと見せかけて/中華ドラマ『虎鶴妖師録』

    〇『虎鶴妖師録』全36集(愛奇藝、2023年)試しに見てみたら面白くて、けっこうハマってしまった。原作は中国の少年マンガだという。調べたら2013年に始まり現在も連載中(雑誌ではなくネットで)というから長い。はじめ物語がどこに着地するのかよく分からなかったり、やたら登場人物が多いのも、そういう事情を知っていると納得できる。「熱血少年マンガ」というのが売り文句だが、実は登場人物がどんどん死んでいく冷血無比の展開で、かなりつらい。しかしどの登場人物も大事に扱われていて、それぞれ見せ場があるのは好ましかった。500年前、海の彼方の大陸に「妖」(異類のものたち)が現れ、人々に災いを為していた。伝説によれば、正義の士である祁無極が巔峰谷に住む妖帝を斬り殺したが、妖帝の血が死の海・冥海を生み出した。以来、伏龍国は海岸...熱血少年マンガと見せかけて/中華ドラマ『虎鶴妖師録』

  • 2023年10月見仏旅行:東大寺「良弁僧正1250年御遠忌」

    東近江・北近江で週末を過ごしたあとは東京に戻る予定だったが、勤務先から、急遽、月・火は大阪に出張を命じられた。月曜の用務は夕方からだが、13時からオンライン会議の予定がある。それでも関西に居残れば、半日は自由行動ができると思ったので、日曜は奈良に宿泊した。目的は、東大寺で開山良弁僧正1250年遠忌を記念して行われている秘仏・国宝特別開扉である。■法華堂(三月堂)秘仏国宝・法華堂執金剛神立像特別開扉(2023年10月14日~10月16日)平日の朝に東大寺境内を歩くのは久しぶりで、さすがに人が少なくて気持ちよかった。法華堂の礼堂(外陣)に入ると、右手の隅に案内の方がいて「こちらへどうぞ」と、いつもは通れない須弥壇の裏側に通してくれる。むかし12月16日の開扉日に拝観に来たときと同様である。お厨子が高い位置にあ...2023年10月見仏旅行:東大寺「良弁僧正1250年御遠忌」

  • 2023年10月見仏旅行:高月「観音の里ふるさとまつり」

    滋賀県長浜市北部の高月地域で行われる「観音の里ふるさとまつり」に行ってきた。以前の記録を探ったら、2010年に参加していた。当時は8月の開催だったのだな。前回は(若かったので)巡回バスを利用したが、今回は周遊バスツアーで楽をすることにした。Bコースは「長浜450年祭特別コース~戦火を乗り越えた仏さま~」で、私と友人は最後列の座席に着席した。定刻の9:30に出発。ガイドは、お年を召されたおじいちゃんだったが、写真撮影の可否確認とか、拝観ツアーの勘どころをよく分かっていて、安心できた。■浄光寺(高月町落川)素木のお厨子、錦の垂れ幕に半ば隠れるようにして、小さな十一面観音さまがいらっしゃる。お顔は人肌のような胡粉の彩色で、眉・目・髭を描き、唇も赤く塗ってある。なんとも親しみやすいお姿。■高月観音堂(大円寺)(高...2023年10月見仏旅行:高月「観音の里ふるさとまつり」

  • 2023年10月見仏旅行:石馬寺、瓦屋禅寺

    10月15日(日)は、滋賀県・長浜市の「観音の里ふるさとまつり」の周遊バスツアーに参加してきた。その前日は、彦根あるいは近江八幡で遊ぶか、久しぶりに竹生島に渡ってみようかなど、いろいろ考えていたのだが、滋賀県エリアで石馬寺と瓦屋禅寺、2つのお寺のご開帳があることを知って、見仏に全振りすることに決めた。■石馬寺(東近江市五個荘)仏法興隆を祈る道場を求めていた聖徳太子の馬が、この地で石になったという伝説を持つ石馬寺。聖徳太子1400年御遠忌を記念して、今年の春と秋、それぞれ2週間ほど、本尊(十一面千手観世音菩薩)と脇侍2体(毘沙門天、地蔵菩薩)のご開帳が行われている。私は、確か石馬寺には一度行ったことがあると記憶しているのだが、このブログでは記事が見つからなかった。もしかすると、もう20年以上前の話かもしれな...2023年10月見仏旅行:石馬寺、瓦屋禅寺

  • 滋賀県・長浜で旅の夕食呑み

    この週末は滋賀県・長浜とその周辺のご開帳寺院をまわる見仏旅行に来ている。土曜の夜は長浜で友人と落ち合って、「美味多彩蔵家」というお店で夕食にした。旅行でいらしているならぜひ、と勧めてもらった「たびびとさん」セット。滋賀の名物をちょっとずつ味わうことができる。日本酒は、滋賀県の地酒もあり、ほかの県の銘柄もあって多彩だった。3銘柄を少しずつ楽しめる「利き酒セット」を2回、計6種類楽しむ。竹にパンダ柄のぐい呑みが可愛かった。いろいろ食べて、最後は手巻き寿司で〆め。ネットで見つけて、飛び込みで入ったお店だったけど、とてもよかった。またいつか、来られるといいな。滋賀県・長浜で旅の夕食呑み

  • 多彩な個性/足柄の仏像(神奈川県立歴博)

    〇神奈川県立歴史博物館特別展『足柄の仏像』(2023年10月7日~11月26日)足柄地域(神奈川県西部、西湘)に伝わる、国指定重要文化財の彫刻3件4躯、県指定重要文化財の彫刻13件28躯を含む約80件の仏像・神像・肖像彫刻・仮面を一堂に公開する特別展。なかなか拝観に行けない仏像・神像を実見できる貴重な機会なので、さっそく見てきた。同館が、神奈川県の彫刻を地域別に紹介する展示としては、2020年の「相模川流域のみほとけ」に続くものだという。前回も「相模川流域」と言われてピンと来なかったように、実は今回も「足柄地域」がよく分からなくて、会場の半分くらい進んだところで地図を見つけて、小田原市・南足柄市・中井町・大井町・松田町・山北町・開成町・箱根町・真鶴町・湯河原町の2市8町にわたる地域であることを確認した。「...多彩な個性/足柄の仏像(神奈川県立歴博)

  • アイスショー"Carnival on Ice 2023"

    ○CarnivalonIce(カーニバル・オン・アイス)2023(2023年10月7日、18:30~、さいたまスーパーアリーナ)今年の三連休は遠出の予定がなかったので、直前に流れてきた広告を見て、衝動的にチケットを取ってしまった。COIは何度か見に来たことがあると思って記録を探ったら、2010年、2011年、2015年に観戦していた。8年ぶりか~さいたまアリーナへのアクセスもすっかり忘れていた。出演者は、宇野昌磨、島田高志郎、友野一希、坂本花織、宮原知子、吉田陽菜、りくりゅう(三浦璃来&木原龍一)、吉田唄菜&森田真沙也、イリア・マリニン、ジェイソン・ブラウン、ケヴィン・エイモズ、モリス・クヴィテラシヴィリ、イザボー・レヴィト、マライア・ベル、ルナ・ヘンドリックス、キミー・レポンド、パパシゼ(パパダキス&シ...アイスショー"CarnivalonIce2023"

  • 作家と版元/へびをかぶったお姫さま(丸善ギャラリー)

    〇丸善・丸の内本店4階ギャラリー第35回慶應義塾図書館貴重書展示会『へびをかぶったお姫さま-奈良絵本・絵巻の中の異類・異形』(2023年10月4日~10月10日)毎年この時期のお楽しみになっている慶応大学図書館の貴重書展示会。この数年は、漢籍とか国学とか、わりと堅いテーマが続いたように思うが、今年は目に楽しい奈良絵本・絵巻が取り上げられていた。奈良絵本・絵巻とは、室町時代後期から江戸時代中期にかけて制作された、豪華な手作り・手彩色の絵本や絵巻のこと。擬人化された動物や鳥、虫、さらには鬼や天狗など異形のものたちも登場する。本展示では、これらのおもしろい絵を数多く公開するとともに、これらの作品が、いつ、誰によって、どのように制作されたかを明らかにする。図録に付属する「慶應義塾図書館所蔵奈良絵本・絵巻リスト」に...作家と版元/へびをかぶったお姫さま(丸善ギャラリー)

  • 奇妙な連続殺人/中華ドラマ『塵封十三載』

    〇『塵封十三載』全24集(愛奇藝、2023年)「当たり年」の感のある今年のドラマの中でも、比較的高い評価を得ていると聞いていたので、見てみた。若い女性を狙った猟奇連続殺人を題材にした犯罪ミステリードラマである。2010年のある日、南都市の家具展示場で、奇妙なポーズをつけられた若い女性の全裸遺体が発見される。現場にはHBの鉛筆が残されていた。捜査に当たった刑事の陸行知は、13年前の1997年、警察に就職した最初の日に出会った事件を思い出す。老街のうらぶれた写真館で、やはり奇妙なポーズの女性の遺体が発見され、そこにもHB鉛筆が残されていた。ここからドラマは、1997年と2010年の2つの時間軸で動き始める。1997年の若き陸行知は、ベテラン刑事の老衛(衛峥嵘)ともに捜査に当たるが、すぐに第二の事件が起きる。第...奇妙な連続殺人/中華ドラマ『塵封十三載』

  • 我が名は武則天/鋼鉄紅女(シーラン・ジェイ・ジャオ)

    〇シーラン・ジェイ・ジャオ;中原尚哉訳『鋼鉄紅女』(ハヤカワ文庫)早川書房2023.5人類の遠い未来の物語。華夏の人々は長城の中で暮らしていた。長城の外に広がる荒野からは、しばしば渾沌の群れが攻め寄せてきた。迎え撃つ人類解放軍の主力は霊蛹機。7、8階建てのビルほどもある巨大な戦闘機械である。パイロットは座席にしこまれた鍼を通じて気を送り込み、機体を操縦する。ただしひとりで操縦することはできない。陽座に座る男性パイロットとともに、陰座に座る妾女パイロットが必要である。しかし妾女パイロットは、男性パイロットに気を吸い上げられて、一度の出撃で命を落とすことが常だった。辺境の村娘・武則天の姉も、九尾狐のパイロット・楊広の妾女パイロットとなって死んでしまった。主人公の「あたし」=武則天は、姉の仇をとるため、妾女パイ...我が名は武則天/鋼鉄紅女(シーラン・ジェイ・ジャオ)

  • 2023夏から秋へ

    長かった猛暑の夏がようやく終わろうとしている。これは9月の終わりに食べた、いつもの深川伊勢屋の氷いちごソフト。これは10月の初めのキバナコスモス。通勤路の横断歩道の脇に咲いている。もう6年目の通勤路なのだが、以前からあったかしら?最近、誰かが種を蒔いたのかもしれない。2023夏から秋へ

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