Aquioux さん プロフィール

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Aquiouxさん: いにしえ実録怪談
ハンドル名Aquioux さん
ブログタイトルいにしえ実録怪談
ブログURLhttp://oldkwaidan.tumblr.com/
サイト紹介文江戸時代など古い怪異譚を現代の実録怪談風に翻案します。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供183回 / 365日(平均3.5回/週) - 参加 2014/11/28 21:31

Aquioux さんのブログ記事

  • 飢えた老婆
  •  江戸での話。 とある大番衛士を務める武士の妻の体験談である。 そのとき、彼女は独りで部屋にいたという。 ふと、外を見ると、何者かが垣根を乗り越えて来る。「よっこら、せ、っと」 庭に降り立ったのは、醜い顔をして、手足がずいぶん細い、なんとも不気味な老婆だった。 驚いた夫人は訊いた。「あ、あなた誰ですか」「たいそう腹が減ったでの。食い物をもらいに来たんじゃ」「何が欲しいというのですか」「抹香でなけれ [続きを読む]
  • 桔梗染めの帷子と白い帯
  •  備前国・国清寺の寺域内にある清泰院という寺での話である。 ある夕方のこと。 住職が勤行をしていると、玄関の障子を開けて入ってくる人がいた。 誰だろう、と、そちらに顔を向けると、とある檀家の妻女である。 供の女性も連れず独りで、そのまま本堂に向かって行った。 桔梗染めの帷子に白い帯を締めているのが印象的である。 いつもなら庫裏から出入りするのに、玄関から来るのは珍しい。供もおらぬことだし、お忍びの [続きを読む]
  • 紀州屋敷の怪
  •  秋田源八郎から聞いた話である。 文化十三年七月下旬のことだそうだ。 江戸城喰違門側の紀州屋敷・内御門に詰めていた門番が、喉が渇いたので次の間で湯を飲んでいた。 すると、どこからともなく女が現れ、突然、門番の肩に食いついた。 門番は一声悲鳴を発すると、あっけなく死んでしまった。 騒ぎを聞きつけた者が二人、駆けつけてきたが、彼らもまた、女に食い殺されたという。 それからしばらくして、同じ紀州屋敷の御 [続きを読む]
  • 食われた子ら
  •  文政六年五月。江戸は下谷あたりの武家屋敷で奇怪な事件が起きた。 その家の四歳になる子と、隣家の赤子が二階で昼寝をしていたという。 この家の、つまり、四歳の子の母が階下で洗濯をしていると、赤子の泣き声が聞こえた。 母は様子を見に、階段を上がっていった。 部屋の中を見た途端、彼女はその場で崩折れてしまった。 子どもたちは二人とも腹を食い破られており、部屋の中はその血で真っ赤に染まっている。 臓腑は食 [続きを読む]
  • 攫われた子
  •  文政六年五月。江戸は赤坂の青山組屋敷。その一角に住む与力・滝与一郎の家で出産があった。 とても安産で、呼ばれた産婆が来る前に子が産まれた。 関係者一同ホッとしているところに、産婆がやって来た。 産婆は赤子を抱き上げると、いきなり走りだした。 あっ、と驚く人々を尻目に空き長屋に駆け込む。 人々も直ちに長屋に入ったが、どこへ行ったか、産婆はもう見えない。 あちこち探していると、少しして、また産婆がや [続きを読む]
  • 蝦蟇と猫
  •  寛政十年七月頃のこと。 江戸小日向は服部坂の近くの、とある屋敷での話だそうだ。 屋敷の者が、庭の隅の薄暗い湿った場所で、猫がしきりに前足を上げ下げしているのを見つけた。 猫に気づかれないようにゆっくり近づいてみると、猫は一匹の蝦蟇をしきりに引っ掻いている。 猫に虐められ、蝦蟇はかなり弱っているようだ。 しばらく様子を観察していると、別の蝦蟇が何匹か近づいて来た。 猫は、目の前の蝦蟇に気を取られて [続きを読む]
  • 蜘蛛と蜂の死闘
  •  今は亡き我が父から聞いた話。 江戸深川に本誓寺という寺がある。 この寺の父と懇意にしていた住職は、隠居後、寺の近くに草庵を結び暮らしていた。 ある夏、和尚は庵の傍にある池で涼んでいた。 ふと見ると、池の上に張り出した樹木の間に蜘蛛の巣が張られている。 しばらく眺めていると蜂がかかった。 逃げようとする蜂。仕留めようとする蜘蛛。 両者もがいていたが、やがて蜂が逃げることに成功した。 すると蜘蛛は、 [続きを読む]
  • 烏賊墨の効能
  •  夜話の席でこんな話を聞いた。 その人が舟で海辺を進んでいたときのこと。 ふいに船頭が舟を止め、乗客に声をかけた。「珍しいものが見られますよ。皆さん、ご覧なさい」 その指さすほうを見ると、大きな蛇が岸から身を乗り出し、水中を窺っている。 水中には大きな烏賊がいて、こちらは蛇を獲ってやろうという勢い。 二匹の間合いが近づいたとき、烏賊が蛇に墨を吐きかけた。 墨を浴びた蛇はブツリブツリと千切れて海中に [続きを読む]
  • 蝶恐怖症
  •  陸奥の人から聞いた話。 ある国主に仕える侍は生まれつき蝶嫌いだった。「春ってのは蝶が飛び回るだろう。それが嫌だからわざわざ外出しようとは思わないなぁ」 彼は常々そう公言し、晴れた日は家に引きこもり、雨の日は花見に外出していた。まぁ奇行といえるだろう。 だから友人たちは彼を、異常だ、と思っていた。 しかし、本当に蝶嫌いなんだとしたら、それはそれで治したほうがよい、とも思っていた。 そこで彼らは一計 [続きを読む]
  • 鼠恐怖症
  •  土屋能登守篤直の家来に樋口小学という医師がいる。 彼は大の鼠嫌いで、鼠が巣食っていそうな座敷などは未然に察知し、そういう場所には決して入ろうとはしなかったという。 あるとき、同僚たちによる食事会が催された。 小学は遅れて参加することになっており、彼不在の席で皆は噂した。「あいつの鼠嫌いは、ちょっと異様じゃないか」「俺も、あれは本当なのかどうか疑わしいと思うぞ」「ひとつ試してみないか」 使用人に鼠 [続きを読む]
  • 百合恐怖症
  •  松下隠岐守昭永から聞いた話。 享保の頃のことだという。 先手組に所属する鈴木伊兵衛英政は百合の花が大嫌いだった。 あるとき、茶会が催され、伊兵衛も参加していた。 参加者の前に並ぶ料理の膳、その中に吸い物の椀がある。 皆、箸をつけたが、伊兵衛だけは箸をつけない。 顔色は蒼ざめ、ひどく気分が悪そうだ。「伊兵衛、大丈夫か」「この吸い物、百合の根は入ってないよな」「お前の百合嫌いは承知している。食材に百 [続きを読む]
  • 天女と口づけ
  •  松平陸奥守忠宗の家臣・番味孫右衛門の体験談だそうだ。 そのとき、彼は自室で昼寝をしていたという。 すると、天女が空から降りてきて、彼の口を吸った。 ハッとして、周囲を見回したが誰もいない。人の気配すらない。 夢かぁ…… 恥ずかしい夢を見たもんだ。人には話せんぞこりゃ。 そう感じた孫右衛門は、このことを誰にも話さずにいた。 翌日、孫右衛門が職場に行くと、おかしなことに気がついた。 言葉を発するたび [続きを読む]
  • 中万字屋の幽霊
  •  新吉原の遊女屋・中万字屋での話である。 その女郎は病気と称して、客を取らず、部屋に籠もりきりだった。 遣り手婆はそれを仮病と判断し、日頃から彼女に折檻を加えていた。 ある日、女郎が小鍋で煮たものを食べようとしているところを、遣り手婆に見つかった。 怒った遣り手婆は、女郎を柱に縛りつけ、首に鍋をかけた。 そして、ひとしきり責め立てると、そのまま行ってしまった。 縛られたまま放置されたせいで女郎は死 [続きを読む]
  • 藁人形に蛇
  •  文化七年四月二十三日の朝のことである。 神田を流れる藍染川の川端で犬が一匹、不審な動きをしていた。 一つの箱を前にして、うなったり吠えたりしている。箱を妙に警戒しているのだ。 やがて犬は箱に襲いかかり、バリバリと噛み砕いた。 壊れていく箱の中から何かがチラリと覗く。 遠巻きに眺めていた野次馬から何人か飛び出し、犬を追い払った。 おずおずと近寄る人々。箱の中身が判った途端、人の輪は悲鳴とともにバッ [続きを読む]
  • どこから溺死体
  •  寛政十二年四月七日の昼のこと。 浅草は堀田原に建つ堀筑後守の屋敷で奇怪な事件があった。 どんっ!!!! 突然、屋根の上に何か大きなものが落ちる音が響いた。 驚いた人々が調べてみると、屋根の上に溺死体が落ちていた。 死んでから日数が経っているようで、かなり腐敗が進んでいる。 ブヨブヨに膨らみ、グズグズに爛れ、死体のあちこちに開いた穴から、汚く粘性の高いドロドロの液が漏れ出ている。 顔が判らないのは [続きを読む]
  • 家康と淀殿
  •  享保四年九月三日に室鳩巣から聞いた話。 鳩巣は、加賀国の山本源右衛門からこの話を聞いたそうだ。「これは私が菊地十六郎から聞いた話です」 山本は、こう切り出して、鳩巣に話を始めたという。「で、その十六郎は、久世平助という人の祖母から、この話を何度も何度も聞かされたんだそうです。十六郎自身がそう語っておりました」 久世平助の祖母という人は、元々は淀殿に仕えていたが、後に駿河の家康公のお側近くに仕えた [続きを読む]
  • 日光奉行屋敷の倒木
  • 「私が日光奉行就任中に変なことがあってなぁ…… あぁ、これは世間には公表していない話なんだが、まぁ聞いてくれ」 そう言って、天野丹後守が以下のような話をしてくれた。 享保二年八月十六日に起きた大風雨のせいで、日光奉行屋敷の大樹が庭に倒れた。それも二本もである。 いずれも太さが一抱え以上もある大きなもので、起こして立てるのは、かなりの労働力を投入しても難しそうだ。撤去するにしても予算がない。 仕方な [続きを読む]
  • 生霊を退ける達弁
  •  大和田から聞いた話。「私の先妻は長いこと患った末に死んでねぇ。医者だ薬だと、たいそう金がかかったんだ」 まだその先妻が生きているとき、妻の母が大和田に嘆き悲しみながら訴えてきた。 聞けば、京都北山の口寄せ巫女に娘の相談をして、酷いことを言われたらしい。「婿殿も巫女様の許へ行って、直接、話を聞いてくださらぬか」 大和田はしかたなく巫女の許へ出かけた。 巫女が口寄せをすると生霊が出てきて語った。「貴 [続きを読む]
  • 疱瘡の宮の小動物
  •  越後国の、とある森の中に疱瘡の宮と呼ばれる祠がある。一辺が二間程度の小さな祠だ。四方は羽目板で、あちこちに直径三、四寸程度の穴が開いている。 その穴から、鼬のような小動物が数多く出入りする。祠を栖としているようだ。 木の実が主食で、畑を荒らすことはない。そのため、近隣住民もその小動物を殺さない。だからなのか、生息数は一定で増えも減りもしない。 疱瘡が流行すると、この小動物はまったく姿を見せなくな [続きを読む]
  • 古い木枕の怪
  •  私は子どもの頃、森田という人からこんな話を聞いた。 それは、当時の最近の出来事という触れ込みだった。 江戸深川に三十三間堂がある。 その近くに、ずいぶん長いこと空き家になっている貸家があった。 あるとき、その家を借りて、医者が引っ越してきた。 ところが、ほどなく医者は病気になってしまった。 この家は長いこと空き家だったんだ。淀んだ湿気がずいぶん溜まっていたはず。そんな空気に触れたせいで調子を崩し [続きを読む]
  • 化物太鼓
  •  番町あたりでは化物太鼓と呼ばれる怪音現象がある。 私が住んでいる場所からもよく聞こえる。 周辺住民はもう慣れっこになっていて、特に奇異に感じる人はない。 霞舟老人の知り合いに、この現象に興味を抱いた人がいた。 彼は音の出所を確かめようと、ある夜、街中を踏査したそうだ。 音のする方角に歩いて行くと、そのうち、そちらからは聞こえなくなり、別な方角から聞こえてくるようになった。 あらためて音の聞こえる [続きを読む]
  • 先夫の幽霊を見た女
  •  私の友人・斎藤朴園の話である。 彼は、夫と死別して間もない女性を後妻に迎えた。 人柄のよい女性で、斎藤も喜んでいたのだが、ある日突然、勢い込んで言ってきたのだそうだ。「どうぞ、離縁してください」 斎藤が何を言っても、離縁してほしい、と言うばかりで、まったく聞く耳を持たない。 しかたなく、朴園は彼女の意思を尊重して離婚した。 その後、斎藤は別れた後妻について話を聞いた。 彼女は斎藤家で、実家から付 [続きを読む]
  • 四十八里を越えて
  •  駿河国益頭郡に繁林山源昌寺という曹洞宗の寺がある。この寺は、駿河国志太郡若王子村にある龍池山洞雲寺の末寺である。 文化二年のある夜のこと。 田中城主・本多遠江守正意の家臣・山口郡司が源昌寺を訪れ、住職に面会を求めた。源昌寺は山口家の菩提寺なのである。 さっそく身支度を整えて、住職は郡司と対面した。「山口さんは今年は勤番で江戸詰めでしたな。それを、遠路はるばるお越しいただいて、ありがたいことです」 [続きを読む]
  • 毛むくじゃらの両腕
  •  京都に怪現象が起きるといわれている家があった。 過去、安い家賃に釣られて、何人もの入居者があった。 しかし、五日か、せいぜい十日までには必ず怪現象が起き、誰も彼も這々の体で逃げ出したそうだ。 あるとき、一人の書生が引っ越してきた。 彼は強気な男で、噂を聞いてわざわざ、この家を借りたのである。 二、三か月は何ごともなく経過した。「俺の勇敢さに化物も恐れをなしたのだろう」 彼は慢心した。 ある早朝、 [続きを読む]
  • 家主変われば
  •  小川町の、とある武家屋敷の話である。 その屋敷には、寄合である蒔田権左が住んでいた。 寄合とは知行高三千石以上の旗本で非役の者をいう。 しかし、あるとき、蒔田はその屋敷を召し上げられ、二合半坂という江戸城からずいぶん離れた場所へ移らされた。 その後、小日向の旗本屋敷と相対替えをし、 蒔田は現在、小日向で暮らしている。 小川町の屋敷はというと、西丸御側衆にして御側御用取次である蜷川相模守に下げ渡さ [続きを読む]