Aquioux さん プロフィール

  •  
Aquiouxさん: いにしえ実録怪談
ハンドル名Aquioux さん
ブログタイトルいにしえ実録怪談
ブログURLhttp://oldkwaidan.tumblr.com/
サイト紹介文江戸時代など古い怪異譚を現代の実録怪談風に翻案します。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供184回 / 365日(平均3.5回/週) - 参加 2014/11/28 21:31

Aquioux さんのブログ記事

  • 狂気で得る霊妙な通力
  •  伏見の淀屋喜兵衛という人は発狂してしまった。 彼が発狂してから、こんなことがあった。 あるとき、突然、彼はこんなことを叫びんだ。「い、いい、今! たった今! え、江戸で火事が起きているっ!!」 具体的な地名も列挙して、大声で喚く。 それからしばらくして、江戸から書状が届いた。 喜兵衛が、江戸で火事だ、と叫んだ、まさにその日その時刻、実際に江戸で火災が発生していたと記してあった。 喜兵衛に鬼神が取 [続きを読む]
  • 池面の美女たち
  •  播磨国明石藩の家中に、石巻郷右衛門頓入という実に豪胆な人がいた。 かつて首に疔ができたとき、かかった医者すべてから、これは確実に死に至る腫瘍である、という診断をくだされた。 しかし彼は、できもの如きに命を奪われるくらいなら、と、死を覚悟のうえ、自ら刀で疔を抉り取った。 傷跡はまもなく癒え、命にも差し支えがなかったという。 そんな彼が二十歳ごろ、奇妙な病気を患ったそうだ。 ある夕暮れ、部屋の前の庭 [続きを読む]
  • 心が見る鬼
  •  とある尾張藩士が主君に従い、参勤交代で江戸に向かった。 出立して最初の日の夕方。彼が旅館の厠に入ると、金隠しの板の先に身の丈一尺ほどの小さな青鬼がふいに現れた。 驚いた侍が脇差で斬りつけると、小鬼は消えた。 その夜、皆でそろって食事をしていると、彼の膳の先にあの青い小鬼が現れた。 鬼はただ膳の前に蹲っているだけで、特に危害を加えるつもりはないようである。 彼は隣の侍に耳打ちした。「俺の膳の先に何 [続きを読む]
  • 肩に凭れる
  •  その晩、広沢池のほとりには月を見に人々が集まっていた。 あいにくの曇り空で月は見えない。 ところが、不意に池の上に鶏の卵ほどの大きさの光が二つ現れた。「なんだ、あの光は」 人々はそれを訝しんでヒソヒソと囁き交わす。 一人の男が服を脱ぐと池に入り、光に向かって歩き出した。 踝から膝、股、腰と少しずつ水位は深くなる。男の歩みが止まった。 光の正体が判ったのだ。 それは、こちらを睨みつけ、爛々と輝いて [続きを読む]
  • 光る紋様
  •  河内国高安郡で光りものが出るという噂がたった頃のことである。 あるとき、そのあたりに住む五、六人が連れ立って、夜間、暑さしのぎに散歩をしていると、件の光りものが南西の山から飛んできて、田んぼの中に立っている杭に降り立った。 光りものは杭に留まって、火のように明るく輝いている。 彼らの中から、光りものの正体を見極めようと一人の少年が進み出た。 少年は杭の前まで歩み寄ると、刀を抜いてヤッと斬りつけた [続きを読む]
  • 溢れる虫
  •  越後国糸魚川周辺を旅したとき、私は糸魚川藩の城下町に住む医師・相沢玄伯と知り合い、友となった。 天明六年、奇妙な症例を診察・治療した、と玄伯は、以下のような話をしてくれた。 玄伯と同じ町に住む四十歳ほどの漁師が患者である。 始まりは、うなじのあたりに、ふと、感じた痒みだったそうだ。 痒みは次第に激しくなり、それにつれて首も腫れあがってきた。 また、全身は高熱を発し、瘧の患者に似た苦しみを呈した。 [続きを読む]
  • 蟠る虫
  •  私の伯母が六十歳の頃、右脇腹に小さな赤い腫れ物ができた。 薬をつけたがまったく効かず、そのまま腫れ物は大きくなっていった。 半年ほど過ぎた頃、腫れ物は自然に破れ、血膿が出た。 腫れ物の中には親指ほどの太さの回虫に似た白い長い虫が蟠っていた。 虫を取り除くと、傷はほどなく治った。 その間、痛みは一切なかったという。 それから一ヶ月ほど経った頃、今度は左脇腹に同様の腫れ物ができた。 これも数ヶ月後に [続きを読む]
  • 蜈蚣鯨
  •  鯨の一種に蜈蚣鯨というものがいると漁師らは言う。 その形は鯨に似ており、体色は赤い。 背には五枚の鰭があり、尾は二股に分かれている。 また、短い脚が十二本あり、それで海中を進む。 脚がたくさんある点が蜈蚣に似ているので、この名がついた。 蜈蚣鯨には猛毒があるので、漁師はとても恐れるのだという。 (『鯨史稿』巻之二 「蜈蚣鯨」) [続きを読む]
  • 執念をかわす
  •  越前国に富次郎という先祖代々裕福な人がいた。 富次郎夫婦には今年十五歳になる美しい娘がいた。 あるとき、その娘が母とともに座敷の縁に出て、庭を愛でながら歌を詠んでいると、庭の奥に樹木の陰から一匹の小蛇が出てきた。 蛇は、瞬く間にスルスルと娘の側まで這い上がってくる。「きゃあ!」 驚いた娘が座敷の奥まで逃げると、蛇もついてきた。 使用人たちも慌てて、杖などで蛇を追いやろうとするが、一向に去ろうとし [続きを読む]
  • すり替え
  •  ある武士の家来が処刑されることになった。 家来にさして罪があったわけではない。 しかし、彼を処刑しないと、その主人である武士の対面が保てない。 そんな理由からである。 家来は怒って怒鳴った。「あるじよ! 俺は手討ちになるほどの罪は犯してないぞ! それなのに斬るのか! 死後、祟って必ず取り殺してやるぞ!」 主人はせせら笑ってこう返した。「わしを取り殺す? おまえにそんなことはできぬ」 家来はますま [続きを読む]
  • 遊女屋の轆轤首
  •  遊蕩一音という俳諧師が若いときの体験談だという。 江戸の新吉原で美しい遊女を見つけたので、揚げて枕を共にした。 翌朝、吉原帰りのその足で友人たちの許に向かうと、件の遊女の美しさを吹聴し、我が目の審美眼を自慢した。 ところが、友人たちは誰も彼も、手を叩いて囃し立てる。「何がおかしい?」「ははは、先生。そいつは轆轤首として有名な遊女さ。なんか怪しいことがあったんじゃないのかい?」 一音は、友人たちが [続きを読む]
  • 宇治のこだま
  •  紀伊国名草郡雑賀荘の宇治は、和歌山城下の武家屋敷町である。 冬の夜、このあたりを通ると、バタバタという音が聞こえることがあるという。 その音は東の遠方から聞こえてきたかと思うと、あっという間に近づいてきて、そして、あっという間に遠ざかっていく。 霜がおりるような寒い夜に最もよく聞こえ、地元では「宇治のこだま」と呼ばれている。 (『紀伊続風土記』巻之四 「宇治」) [続きを読む]
  • 破多破多
  •  文久年間の頃のこと。 周防国岩国・錦見地区の塩町、砂原、蛤町、散畠、浄福寺の先、そのあたり一帯では、夜の四ツ時から翌朝未明まで、渋紙を打つような、あるいは大きな団扇で激しく扇ぐようなバタバタという音が、どこからともなく聞こえていた。 秋から冬にかけて聞こえたが、何がどこで音を立てているのか、よく判らない。 そこで山県仙ニという人が友人と共に、音の源を突き止めようと、夜の町を探し回った。 此処かと [続きを読む]
  • バタバタ
  •  安芸国広島城下の六丁目という場所では、有名な怪現象がある。 それをバタバタという。 夜になると空中で、筵を打って塵などを払うような音が、バタバタと鳴り渡るからだ。 音のする方に近づいていくと、いつのまにか音源が移動して、違う方から聞こえるようになる。 そちらに向かうと、また音源は移動して、別の方から聞こえてくる。 結局、音の出処がどこなのか、また、何が音を立てているのか、いずれも判然としないとい [続きを読む]
  • 布団に臥す人生
  •  越後国の府中の近くに別所という場所がある。 そこに奇妙な病人がいた。 彼は立った体勢、あるいは座った体勢でいると、頭から腹にかけてモヤモヤとした違和感に襲われ、そのうち気を失ってしまう。 布団に寝かせてしばらく休ませると、やがて目を覚ます。 そのときは健康な状態に戻っている。 食欲、発話、気力。いずれも健常者と変わらない。 しかし、起座をすれば、必ず人事不省に陥った。 いろいろ手を尽くしたが、そ [続きを読む]
  • 油風病
  •  私が肥後国球磨地方を旅したときの話である。 その地を治める人吉藩の家士である米良七左衛門という侍がいる。 彼に、家に来るよう呼ばれた。妻の治療をしてもらいたい、とのこと。 さっそく出向いて、彼の妻に会わせてもらった。 患者の頭はすっかり禿げ上がっていた。 所々に、わずか一、二寸ほどの長さの極めて細い髪がチョボチョボと生えているだけである。 頭皮は赤みをおび、老人のそれのように乾燥して皺が寄ってい [続きを読む]
  • 瘤からの髪の毛
  •  日向国宮崎の近くに中村という場所がある。 天明六年の春、中村の医師・福嶋道琢から京都の私に書状が届いた。 それによると、彼は去年、二人の髪瘤患者を治療したのだそうだ。 一人目の患者の髪瘤は脇腹にできたそうだ。 二年ほど経ったとき、瘤は自然に破れ、膿汁に混じって髪の毛が五、六本くらいずつ頻繁に出てきたという。それは長い間続いたが、最終的には治った、と書かれている。 もう一人の患者は額の左側にできた [続きを読む]
  • 癰からの髪の毛
  •  秋田久保田藩の藩医である稲見升有は外科医である。 彼は天明年間の初めごろ、癰の治療した。 切開すると、傷口からたくさんの髪の毛様のものが出てきた。 水でよく洗浄してみると、まさしく本物の髪の毛であったという。 (『黄華堂医話』) [続きを読む]
  • 膣からの髪の毛
  •  出羽国秋田郡の湊という町に三浦元春という医師がいる。 私がその地を旅したときに知り合い、友人となった。 その元春からこんな症例を教えてもらった。 湊の裏町に越後屋という遊女屋がある。 そこに淋病を患った遊女がいた。 病気のせいで頻尿になり、一晩に数十回も厠に行かねばならないため、非常に難儀をしていたらしい。 さらに一年ほど経つと、だんだんと腹が張って痛むようになってきた。 そこで天明六年の春、彼 [続きを読む]
  • 早打肩
  •  北国ではバイ、伊勢路では早打肩や早肩癖と呼ばれる病気がある。 理由もなく、急に気分が悪くなったかと思うと、やがて肩に激痛が走り、突然死を迎える、というものだ。 このとき、すみやかに肩に鍼を刺し、滞っている悪い血を瀉血して排除すれば即座に治る。刺すのは唇などでもよい。 鍼がないときは小刀などを使ってもかまわない。 土地の医師はよく心得ており、この病気の治療に長けている。 これは、家々が建ち並ぶ都会 [続きを読む]
  • 蘭亭の髑髏杯
  •  江戸に高野蘭亭という盲目の詩人がいた。 どのようにして入手したのかは判らないが、彼は相模国鎌倉の教恩寺の寺宝のはずの盃を所持していた。 その盃というのは、源氏の虜囚となり鎌倉に送致されてきた平重衡に対して、源頼朝が催した宴の際に使われたものなのだそうだ。 全面黒塗で内側には梅の花の蒔絵が施された盃は、普通の平皿とほぼ同じ大きさであるという。 なお、その宴の場にいたのが、北条政子の女官であった千手 [続きを読む]
  • 胡椒の薬効
  •  田光氏から聞いた話。 西国の、とある君主が家臣を従え、朝早く山に入った。山の奥で狩りをするのである。 進むに従い、秋の霧が深く立ち込めはじめた。ついには、伸ばした腕の先が見えなくなるほどになった。 誰も皆、他人が見えず、また自分がどこにいるのかすら判らない。お互い、声をかけあいながら、慎重に進んで行った。 そんな中、一人だけ姿が見える侍がいた。彼だけは霧に覆われない。 あいつは何か術でも心得てお [続きを読む]
  • 山奥の女の顔
  •  土佐国での話である。 地元の猟師が山奥に分け入り、鹿を獲ろうと鹿笛を吹いた。 すると、それに呼応するかのように、突然、山鳴りが響き、向こうに広がる茅原がガサガサ鳴り出した。 見ると茅が左右に割れ、一筋の道が近寄ってくる。風のような速さだ。 何者かが茅を掻き分けてこちらに向かって走って来るようだ。 猟師は即座に樹の陰に隠れると、銃口を向け、待ち構えた。 掻き分け道が猟師と茅原を遮る倒木まで達したか [続きを読む]
  • 七枚の皿
  •  七人の異国の僧侶がやって来て、茶を求めたので与えた。 駿河国丸子宿の誓願寺住職が、ある朝、こんな夢を見た。 その日、寺では、庭にある手水鉢へ渡す筧の普請が予定されていた。 普請が始まってどれくらい時間が経った頃だろうか。 工事現場で六角形の皿が七枚発掘された、という報せがもたらされた。 なかなか立派な皿であるらしい。 住職は現場に出向いて皿を見た。 皿は南京焼である。つまり中国の明代から清代に焼 [続きを読む]
  • 女医の死
  •  数年前の話である。 江戸牛込の、とある町の女医が、突然、病気になった。 七転八倒のその苦しみように、隣家はとても驚いたという。 悶え乱れる声は、まるで子どもが泣き叫ぶ声だったらしい。「あ、頭が割れるうぅっっ! 腹が裂けるうぅぅううぅっっ!!」 布団の中で、そう呻いたかと思うと、今度は頭の周りの空間を薙ぎ払うように腕を何度も何度も振り回して、こう叫ぶ。「ひい! 枕の周りに赤ん坊がたくさんいるううぅ [続きを読む]