Aquioux さん プロフィール

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Aquiouxさん: いにしえ実録怪談
ハンドル名Aquioux さん
ブログタイトルいにしえ実録怪談
ブログURLhttp://oldkwaidan.tumblr.com/
サイト紹介文江戸時代など古い怪異譚を現代の実録怪談風に翻案します。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供181回 / 365日(平均3.5回/週) - 参加 2014/11/28 21:31

Aquioux さんのブログ記事

  • 前兆の巨大蚊柱
  •  正徳三年七月末のことである。 名古屋城南門の左右の濠の所々に煙のように立ち昇るものが出た。 周囲は一丈ほど、高さは四、五丈もある。 まるで柱を立てたようで、そのために周囲が陰るほどだった。 陽が傾いてくると、それは夕陽に照らされ異様な色に染まった。 人々が立ち止まってよく見ると、蚊が幾百億も集まって、柱のようになったものである。「ありゃあ蚊柱とでも呼びゃあええんかね」「なんともはぁ、珍しいもんだ [続きを読む]
  • 塵のような白い小虫
  •  正徳元年の夏半ば、変な小虫が大発生した。 形は塵のようで色は白い。人家に入ってきては人にたかる。 虫に触れられた肌は腫れ、ひどい場合は瘡になった。「二、三十年前にも出よったわ。湿っぽい年に涌く虫なのかもしれん」 福富という老人が言っていた。 (『塩尻拾遺』巻四十八 「辛卯仲夏小虫あり」) [続きを読む]
  • 兎の腹鼓
  •  伊豆国に新左衛門村という村がある。 大昔、河津氏が領していた土地で三千石の村だ。 その河津氏を神として祀る三社明神という社がある。 村は山の中なので、兎など特に多く生息している。 あるとき、村の老人が三社明神に参拝しての帰り道に山中を歩いていると、何やら妙な音が聞こえてきた。 挟箱を担って行くときに、鉄の取っ手が箱に当たってカチャンカチャン鳴る音に似ている。 奇妙に思った老人が音の方を窺うと、兎 [続きを読む]
  • 狸の腹鼓
  •  狸が腹鼓を打つ、というのは慈鎮和尚の歌にもあり、昔から言われていることだ。 しかし、なぜ狸は腹鼓を打つのだろう。人を化かすためだろうか。それとも自分が楽しいからだろうか。 そんな議論していると、座の中のある人が言った。「いやいや、そんな理由ではありません。実は私、箱根の最乗寺に泊まったことがあるんですがね。そこで見たんですよ。狸が腹鼓を打つのを」「ほほう、どんなものだったんですかな」「あまりにも [続きを読む]
  • 天神の火
  •  伊勢国雲津川の上流には天神山という山がある。 その山には奇妙な火があり、里の人は「天神の火」と呼んでいる。 夏から秋にかけて、日が暮れると、遠く山の茂みに火が見える。 ふざけて呼びかけると、火はその人の前にあっという間に飛んで来る。 里から山までは二里ほどの距離があるから、矢よりも速い。 唐傘ほどの大きさで、地上から一、二尺程度の低いところに浮かぶ。 中から人の呻き声のようなものが聞こえ、人の後 [続きを読む]
  • 海底にいる人のようなもの
  • 鮑を獲る海士から聞いた。ときおり、海底に人の形をしたモノを見ることがあるそうだ。それに出逢ってしまったときは、以降、十五日間は海に入らない。また、海底で耳を澄ますと、犬の鳴き声がすることもあるという。 (『塩尻』巻之一 「海中のあしかといふ獣」) [続きを読む]
  • 舟底を穿つ魚
  •  西日本を縄張りにする船頭が語ってくれた。 九州で航海していると、ときどき長さ五、六寸ほどの魚が、その鋭い嘴で舟底を穿ち貫くことがある。 魚の全身が舟を貫通することはほぼなく、たいていは自分が穿った穴に嵌まって、そのまま死んでしまう。 死後、日数の経過とともに魚の死骸は次第に萎んで細くなり、やがて穴から抜け落ちる。 するとその穴から、海水がどんどん入ってきて、そのために舟が沈没することもある。 舟 [続きを読む]
  • スランカステイン
  •  阿蘭陀人が日本に持ちこんだものにスランカステインという石がある。 蝮が吐き出した石で、透明度が高いほど上質であるという。 人の腫れ物や毒虫に刺された場所にこの石を当てると、そのままピタッと貼りついて膿や毒を吸い取る。吸い尽くすとポロリと落ちる。 毒を吸い終えたスランカステインは、茶碗などに入れておいた人の母乳にすぐさま漬ける。すると、まるで焼け石を水に入れたときのように、じゅーっと音をたてて、吸 [続きを読む]
  • 遮る倒木
  •  上総国大久保の、とある道には樹の化け物が出るという。 その道は片側は山の裾野になっている。 もう片側には田が続いており、田の側の道のほとりにはたくさんの大木が生えている。 この道を深夜に通りかかると、数えきれないほどの倒木が道を塞いでおり、人々の往還を妨げる。そんなことが毎年あるのだという。 土地の人は心得たもので、この現象に遭遇したときは、一旦元来た道を戻り、倒木が見えなくなったあたりで、しば [続きを読む]
  • 銭への執念
  •  相模国の小池というあたりに真言宗の寺があった。 そこの住職は入暁といい、亡くなった師僧の跡を継いで、その寺の住職となっていた。 師は倹約を旨とする人だったそうで、そのため寺は田園を多く所有し、また金も物も豊かで、経済的に恵まれていた。 入暁が住職になってから半年ほど経ってからのこと。 庭の隅に小さな蛇が一匹、とぐろを巻いているのを見つけた。 追い立てると逃げていくが、いつの間にか戻ってくる。また [続きを読む]
  • 遠州の天狗火
  •  遠江国の海辺には天狗火という怪火が出る。 夏の月夜の晩、海上に燈火のような火が見えるので、海辺から、その火に向かって「おいおい」と大きな声で呼びかけると、その火はたちまち波を渡って、呼びかけた人の前に飛んで来るそうだ。 この火に出逢うと、たいていの人は体調を崩し、寝込むことになる。 ゆえに土地の人は非常に恐れ、あえて近づこうとはしない。もし見かけてしまったら、即座に地面に突っ伏し、決して見ないよ [続きを読む]
  • 宙を飛ぶ菓子
  •  とある尾張家家臣が、郷里で目撃したことだという。 あるとき、来客が帰った後、眠気を催したので、後片付けもせず壁にもたれてウトウトした。 しばらくして、ふと目を開けると、眼前で奇妙なことが起きていた。 先ほどの客に対して、こりん、という干菓子を高坏に盛って出したのだが、その菓子がひらひらと空中に飛び上がったかと思うと、明かり障子の紙に開いた穴から、外に飛び出ていく。それが次から次へと、際限なく続い [続きを読む]
  • 鼬の六人搗き
  •  六人搗きという餅搗きの習俗が越後にはある。 ひとつの臼を取り囲み、歌うような掛け声に合わせて六人の搗き手が杵を振るうもので、返し手はいない。そういう搗き方である。 その六人搗きの際に発生する、杵と臼による打撃音や歌うような掛け声などといった一連の音に、とてもよく似た音が、人家のいずこかから響いてくることがあるという。 何かと思って、音のする方に行ってみると、音は止んでしまう。 鼬が集まって騒ぐ音 [続きを読む]
  • 梨好きの神
  •  信州戸隠明神の奥の院に祭られている神は大蛇であるらしい。 歯痛に悩まされている者が、今後三年間の梨断ちを条件にこの神に願掛けすると、たちどころに治るという。 願いが叶えられた者は、三年後に梨だけを折敷に乗せて川へ流し、神に感謝する。 また、戸隠に参拝して梨を献上し、神主に頼んで神に奉納してもらう方法もある。 神主は献上された梨を折敷に乗せて後ろ手に捧げ、後ずさりで奥の院まで運ぶ。そして、奥の院の [続きを読む]
  • 大井川の鬼哭
  •  知り合いの僧侶は、かつて遠江国大井川の下流域に草庵を結んでいたそうだ。その頃の話として、以下のようなことを話してくれた。 大井川では、毎年、五人から十人ほどの死体が流れてくるそうだ。皆、洪水に巻き込まれて溺死した者であるらしい。 僧侶は溺死体が流れてくるたびに引き上げ、弔っていた。 どこの誰とも知れぬから、卒塔婆はもちろん作れない。 ただ、溺死者が身に着けていた笠や杖などといったものといっしょに [続きを読む]
  • 箱根の山男
  •  相模国の箱根には山男というものが棲む。 裸体に木の葉や樹皮を巻きつけ服とし、深山の中でイワナやウグイといった川魚を獲る。 里で市が立つ日には、山から降りてきて、獲った魚を米に替える。 土地の人も慣れたもので、誰も山男を奇異に感じない。 山男は交易に必要最小限の言葉しか喋らず、用が済めば、さっさと山に帰っていく。 あるとき、山男の後をつけて行った人がいた。 絶壁の道なき場所を、まるで鳥が飛ぶような [続きを読む]
  • 蓮の葉にくるまって
  •  江戸白金に黄檗宗の中心寺院である瑞聖寺がある。 その寺に長年勤めていた奉公人の七助が、ある朝、飯炊きの後に行方が知れなくなった。 捜しても一向に見つからず、月日が経つうちに「入水でもしたのかもしれない」ということになり、皆、彼の生存を諦めた。 それから六年後、七助が失踪したのと同月同日のこと。 門前がガヤガヤと喧しい。 僧侶たちが門外に出てみると、皆、空を見上げて何やら話している。 つられて僧侶 [続きを読む]
  • 利根川の水棲人
  •  下総国利根川には水中に住む人がいたという。 流域の村である布施から大宝にかけての水際で、ときどき目撃された。 その人は、魚などを獲って食べていたが、あまりに飢えたときは、停泊中の舟に近づき、ひそかに食べ物を求め、残飯をもらっていたそうだ。 五、六十日程度は江戸の川で暮らしていたらしい。 利根川を行き来する多くの船頭がその人を見ている。 彼は化け物などではなく、あくまでも人間である、しかし、陸で生 [続きを読む]
  • 橋の上から小便
  •  江戸深川の洲崎十万坪や永代六万坪は埋立地である。 秋など、その地を流れる川には海から魚がたくさん遡ってくる。 それ目当てに釣り人もたくさん集まり、大いに賑わう。 私の知り合いにも釣りが好きなのがいて、あるとき、その釣り好きが同好の士と二人連れで、舟を漕いで彼の地に行って、日がな一日釣り糸を垂れたそうだ。 釣果は上々で、ほくほくしながら帰路に着いた。 二人が川を進んでいると、前方に橋が見えてきた。 [続きを読む]
  • 送り狐
  •  房総には狐が多い。 漁師が釣った魚を狐に取られるなど日常茶飯事である。 それはこんな具合である。 夜、漁師が釣った魚を持って帰宅のために歩いていると、必ず狐が後についてくる。 漁師たちも心得たもので、そんなときは一、二匹の魚を投げ与える。 すると、狐はその魚を咥えて、いずこかへ去っていく。 ところがしばらくすると、また同じ狐が現れて漁師の後についてくる。 これは再び魚を狙ってのことではない。 魚 [続きを読む]
  • 篝堂の恐怖
  •  相模国の浦賀には篝堂という公設の施設がある。 海に突き出た岬の上に建てられており、幕府から命じられた周辺住民が、その運営をおこなっている。 昼夜それぞれ二人ずつ詰め、昼間は風や波の様子を見て、難破船がないか確認し、夜間は夜明けまで篝火を焚いて、海を行く船の目印となるのが、その業務内容である。 篝火に使う薪もまた周辺住民の役務として、地域ごとに提供すべき量が決められている。 その篝堂であるが、毎年 [続きを読む]
  • 首ふり狐
  •  出羽国秋田でのこと。 ある侍が、鉄砲を抱えて鳥撃ちにでかけた。 その途中で、堤の上を一人の男が、何度も何度も、あっちに行ったりこっちに行ったりしているのを見かけた。 その様子はとても尋常とは思えない。 しばらく注視していたが、ふと、堤の傍にある林の中に狐がいるのに気がついた。狐は、木の枝を咥えて、首を左右に振っている。 両者を代わる代わる見ているうちに、侍は、あっ、と理解した。 狐が左を向くと人 [続きを読む]
  • 団子の夢
  •  文政二年八月中旬の話である。 下谷あたりに住む六尺が、食べた団子にあたって即死する夢を見た。 変な夢を見たなぁ、と気にしながら、その日は浅草に用事があったので出かけたその途中、ちょっとした騒ぎに遭遇した。 往来を若い男が血眼で右往左往している。「あっちかなぁ。それともこっちかなぁ…… どこへ行ったのかなぁ」 男を見ていた群衆が、何だどうした、と呼びかける。「今しがた、私の店に木綿の大型の広袖を着 [続きを読む]
  • 飛ぶ大鈴
  •  天保初年のことだという。 とある場所で同好の士が打ちろそって碁に興じていた。 夜も深まってきたのでそろそろ帰るか、と皆が席を立ち始めたとき。 ぐわん!! 突然、大きな音が響いた。 驚いて音のした方を見ると、光り物がすごい速さで空をよぎった。 碁打ち仲間の中に四谷裏町の与力がいた。 彼と一緒に来ていた別の者は、光り物が墜落するのを見た。 今、皆がいる建物の流し元あたりに落ちたらしい。 二人は現場に [続きを読む]
  • 通り悪魔(六) 異形の顔
  •  小堀公の家来に、何だかの久兵衛という人がいる。 以下は彼の体験談である。 その日はとても暑い夏の日だったという。 夕方、仕事を終えて、帰路についた彼は、暑さですっかりへたばっていた。気分もすぐれない。 やっとの思いで家に辿り着くと、玄関先で座り込んでしまった。 そんな彼に妻が声をかけてきた。 顔を上げて見ると、妻の顔は牛だった。 驚いた久兵衛は抜き打ちにしようと刀の柄に手をかけた ふと、妻の横に [続きを読む]