しろ☆うさ さん プロフィール

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しろ☆うささん: おはなし ひとしずく
ハンドル名しろ☆うさ さん
ブログタイトルおはなし ひとしずく
ブログURLhttp://bluenovel4.blog.fc2.com/
サイト紹介文オリジナルの小説を作っています。親子関係、夫婦関係、若者介護などを取り扱っています。
自由文一話読み切り、シリーズ系、色々作っています。
どの作品も登場人物は同じですが、時代順には書いていません。
取り扱っている内容が濃い?ですが、一度、覗いてみて下さいね(^O^)/
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供14回 / 365日(平均0.3回/週) - 参加 2015/03/16 15:57

しろ☆うさ さんのブログ記事

  • vol.106 根なし草 8
  • 喪服を着て、彼の運転する車に乗り込む。後ろの席には子供達が座っている。長女の沙耶は小学3年生に、海斗は1年生になっていた。梅雨の時期だが、その日もよく晴れていた。車は母の住む町にある斎場へと向かっていた。弟夫婦も子供達を連れてやって来る事になっていた。現地で落ち合うのだ。車の中で、子供達ははしゃいでいた。久し振りにいとこ達に会えるのが嬉しいようだった。彼らはまだ8歳と6歳と若く、祖母が死んだ事がピ [続きを読む]
  • vol.105 根なし草 7
  • それから暫くして、葬儀社の人がやって来た。彼らは母に手を合わせ、テキパキと亡骸を車に運んだ。塔子と弟と弟の奥さんは、世話になった医師や看護師達に、最後の別れを告げた。医師は神妙な表情を浮かべ、看護師の中の何人かは目に涙を浮かべていた。お礼を述べて車に乗り込むと、彼らは車が遠ざかるまで見送っていた。もう、ここに来る事はないのだ。おそらく、永久に。山の中にひっそりと佇んでいた大きな病院が、木々の緑に囲 [続きを読む]
  • vol.104 根なし草 6
  • 梅雨の中休みなのか、痛いほどに陽射しが照りつける暑い日だった。車を停め、塔子と弟はロビーへと駆け込んだ。まだ早朝という事もあり、院内はがらんとしていて、人影はどこにも見当たらない。広いエントランスを通り抜け、長く薄暗い廊下を早足で歩く。途中、簡易式の開閉ドアのロックを外し、通り過ぎればまた鍵を掛ける。何度かそれを繰り返した後、やっと目的のエレベーターに辿り着く。重厚なドアが閉まり、エレベーターは二 [続きを読む]
  • vol.103 根なし草 5
  • その電話が来たのは、まだ夜も明けない早朝の事だった。その時に限って、塔子は深い眠りについていた。皮肉なもので、この数日間、眠れない日々が続いていたのだ。気を緩めてはいけないと自らに言い聞かせてでもいるように、気を休めるのが何故だか恐ろしかったのだ。病院からは何度も電話が入った。母が長くはないのだ。眠れない日々が続く中で、それは一瞬の気の緩みだった。塔子は完全に眠りに落ちていたのだ。不思議な夢を見て [続きを読む]
  • vol.102 母の入院生活 34
  • 荷物の整理を済ませると、塔子は近くにあった簡易の椅子を持って来て、母の枕元に座った。母は神妙な表情を浮かべたまま、黙って天井を見ていた。「疲れたでしょ。大丈夫?」塔子がそう声を掛けると、母は訝しそうにゆっくりと首を傾けた。「何?」「疲れたかって訊いたの」「聞こえない」「……うん。大丈夫みたいだね」思わず苦笑いをしながらそう言うと、母はむっつりと硬い表情を崩さないまま、じっと塔子を眺めた。目の焦点が [続きを読む]
  • vol.101 万華鏡
  • あれは何年前の事だろうか。塔子と弟は、ある日母に連れられて、突然山へとハイキングに行く事になった。最寄の駅から電車に乗れば、数駅で目当ての駅に着く。通勤時間以外は人も疎らな電車も、殊、紅葉の季節になると大勢の観光客でごった返す。山といっても舗装されたアスファルトの道が頂上まで続いている簡単なハイキングコースで、塔子達は観光客と共にその道を歩いた。登り始めは出店も多く、名物の珍菓などを売る店がずらり [続きを読む]
  • vol.100 母の入院生活 33
  • 介護タクシーはゆっくりと、だが確実に母の次の行き先へと進んでいった。見慣れた景色が段々と遠退く。母はしばらく神妙な顔をしていたが、やがて目を閉じて眠り始めた。今まで、何度介護タクシーを使って、母は移動した事だろう。面談の度に手配をし、行き帰りを車中で過ごした。そして結果は落ち続けた。でも、やっとそんな日々も今日でおさらばだ。ついに次の行き先を見つける事が出来たのだ。今までの近距離移動と違って、今回 [続きを読む]
  • vol.99 母の入院生活 32
  • 塔子は携帯に手を伸ばした。呼び出し音がしてしばらくすると、はい、というぶっきらぼうな声が聞こえた。「もしもし? 私だけど」塔子は壁にもたれたまま、やや早口で切り出した。心臓がドキドキした。「何?」電話の向こうの彼も、塔子の早口が移ったかのような喋り方だった。母の病院から電話があった事。出向かなければならない事。自分は行けそうにない事。大変申し訳ないが、代わりに行ってもらえないか、と塔子は切り出した [続きを読む]
  • vol.98 母の入院生活 31
  • それからしばらくは普通の日常が続いた。幼稚園へ通う。母の病院へ通う。相変わらず忙しく、頭も割れるように痛かったが、それでも次の行き先が決まった事で、どこか心に余裕が出来た。後は、転院の連絡を徳井から待つだけであった。それは一週間経っても、二週間が過ぎても、一向に来る気配はなかった。だが、塔子は全く気にならなかった。既に話は確定しているのだから、後はベッドが空くのをひたすら待つしかないのだ。出て行く [続きを読む]
  • vol.97 母の入院生活 30
  • それは寂しい山奥にあった。辺りを見渡しても山、山、山で、数件の民家と食料品を売っている小さなコンビニのような商店が一つあるだけで、後は何もなかった。バスはえっちらおっちらと大変そうにうなり声をあげながら急勾配の坂を登った。白い大きな建物の前で、バスはようやく止まった。着いたのだ。若い職員の二人組が降りるのに続き、塔子もその地に降り立った。ぐるりと周りを見回しても、やはり目に入るのは山だけだった。12 [続きを読む]
  • vol.96 母の入院生活 29
  • 施設や老健をことごとく落とされた塔子は、ソーシャルワーカーの上田の勧めに従い、県外の山奥にある病院へと電話をかけた。上田から渡されたパンフレットの中には、担当職員の名刺が添えられてあった。男の名前で、医療相談員という肩書がついていた。塔子は電話でその人物を呼びだしてもらったが、忙しいとの事で電話口に彼が出る事はなかった。また後でかけます、と塔子が言うと、こちらから空いた時間にかけるので名前と電話番 [続きを読む]
  • vol.95 母の入院生活 28
  • 結果は予想通りのものとなった。なんとなくそんな予感がしていたので、塔子は特に驚かなかった。やっぱりそうか、と実に冷静にその言葉を受け止めただけであった。そして、心のどこかでホッとした気持ちがあった事も否めない。老健で面談を行っていた、あの神経質そうな女の顔が浮かぶ。あそこに受かれば、これから毎日彼女と顔を合わせる事になるのだ。現場にはいなくとも、廊下やロビーなど、どこでもすれ違う可能性はある。きっ [続きを読む]
  • vol.94 母の入院生活 27
  • しばらく、平穏な日々が続いた。それは嵐の前の静けさのようなものだった。迫りくる通告を、その結果をただひたすらじっと待っている。何をしていても、いつもその事だけを無意識に考えてしまう。ママ友らと笑っていても、子供達の相手をしていても、いつも心はそれをじっと見つめていた。それでも日常生活を送る中で、ふと一瞬だけそれを忘れる事があった。真剣に味噌をといている時。お笑い番組を観ている時。返却された小学一年 [続きを読む]
  • vol.93 まだ早すぎる 2
  • 第一子の沙耶が生まれた時、彼の両親はその誕生をとても喜んでくれた。「この子の目は本当にうちの子にそっくりだ!」「塔子ちゃんは知らないと思うけれど、この表情なんて、うちの娘の子供の頃にそっくりなんだよ……」きっと彼らには何の悪気もないのであろうが、二人の口から飛び出す言葉の数々は、いかに彼と彼のお姉さんの子供の頃に似ているかという、その話に尽きた。最初は曖昧に笑ってやり過ごしていたが、幾度も幾度もそ [続きを読む]
  • vol.92 母の入院生活 26
  • 神経質そうにガリガリに痩せたその女は立ち上がり、当然のようにいきなり母に近づいた。母は女にされるがまま、身体の状態を調べられた。「これは一体、何なの?」女は母のズボンの裾を持ち上げて、声を上げた。母の両足には浅黒いシミのようなものがいくつか付いていた。「……それは、私にもわかりません」塔子の答えに、女は訝しげな表情を浮かべ、じいっと塔子の顔を見つめた。細い銀縁の眼鏡の奥から見えるその目は細く、冷た [続きを読む]
  • vol.91 母の思い出 6
  • ひいおばあちゃんがうちにやって来て、その後病院に移った記憶は曖昧だ。しかし、亡くなった時の記憶はうっすらと残っている。その時、確か塔子は小学四、五年生だった。高学年にもなると、なんとなく思い出は残っているものである。それが塔子にとって初めての体験となれば尚更だ。その時、塔子は初めて死を見、死という物を現実として知り、微かながら死を理解したのだ。肉体がただの入れ物となる。その目は永遠に開く事はない。 [続きを読む]
  • vol.90 母の入院生活 25
  • 家の車は毎朝彼が乗って行ってしまうので、塔子はいつものように自転車をこいでいた。辺鄙な場所から辺鄙な場所へ移動するので、バスも電車も通っていなかった。しかし、これまで散々落ち続けた他の老健と比べれば、そこは塔子の自宅からとても近かったのが救いだった。もし、仮に自転車の具合が悪くなったとしても、無理をしてでも歩いて行ける距離だ。近場という事から、塔子はなんとなく安心感を抱いた。まだ見ぬその施設に、親 [続きを読む]
  • vol.89 母の思い出 5
  • 塔子が小学生の頃、それは何年生であったのかはもう忘れてしまったが、母が自分の祖母を自宅に引き取った事がある。塔子からみれば、ひいおばぁちゃんだ。ひいおばぁちゃんは、娘と二人暮らしだった。娘というのは、母の母で、塔子のおばぁちゃんである。二人はずっと共に生活をしていたが、ひいおばぁちゃんの体が弱り介護が必要になってしまった事から、母が面倒を看るために自宅に連れてきたのだ。塔子はなんだかワクワクしてい [続きを読む]
  • vol.88 母の入院生活 24
  • 最後に取ったアポイントは、塔子の家から自転車で僅か15分ほどの距離にある市営の老健だった。今まで面談に行ったどの老健よりも、近い。もし受かったのなら、通うのもかなりラクであろう。塔子は最後の望みを掛けて、受話器を取った。頭が割れそうに痛かったが、そんな事を気にしている余裕はない。今までと違い、そこは面談は一度だけらしい。一回目から直接本人を連れて面談に来て欲しいと言われた。日時を決め、塔子は礼を言 [続きを読む]
  • vol.87 空想
  • 結婚して、義理の親とたまに出かける事があった。それは食事だったり、どこかの観光地だったりした。塔子は早く彼らに打ち解けようと、常に笑顔で彼らに接した。そもそも、始めから、無理をしていたのだ。付き合いを頑張っている限り、自ずとそこには無理が生じるものだ。しかし、無理の何が悪いのか、その時の塔子には全くわからなかった。むしろ、頑張って合わせようとしている自分が正義で、いつも自然体でいる姑や舅の方が悪の [続きを読む]
  • vol.86 母の入院生活 23
  • ソーシャルワーカーの上田から、今回もダメだったと連絡が入った。退院の期日は迫っている。このまま諦めてはいけない。次は市営の老健へアポを取るように、と上田はおっとりと塔子を諭した。はい……。はい……。そうですね……。わかりました……。塔子は受話器を置いた。心に虚しさが広がった。落ちた事もそうだが、それ以上に重く圧し掛かったのは、上田の何気ない一言だった。「あの人は本当に頑張っています。結婚もせず、時 [続きを読む]
  • vol.85 素晴らしい人格者 (からくり 3)
  • 義父は人当たりのよい人だった。いつもニコニコとし、義母のとんちんかんな発言や行動を笑いながら戒めるのが常であった。彼はそんな父をいたく尊敬していた。母は明るく陽気だが思慮に欠け、父はいつも正しい思想を持ち、人格的に優れた人間であると思っているようであった。実際、義父は穏やかな微笑みを浮かべ、口調も柔らかだった。興奮すると声を荒げる事もあったが、それは怒りの時に現われるのではなく、むしろ他人に身内を [続きを読む]
  • vol.84 母の入院生活 22
  • 自宅で介護をしているわけではない。母はリハビリテーション専門の病院に入院している。それでも、2、3日に一度は様子を窺いに訪れなければならない。頭痛がひどくて4日ほども行かないでいると、病室では洗濯し終わった洋服が無造作に置かれてあった。担当の看護師が電話で来所を促す。その時に用事を伝えてくれればいいのに、行ってみるとメモ用紙に用件が記され、チェストの上にテープで張り付けられている事もしばしばだった [続きを読む]
  • vol.83 嵐の夜
  • 引っ越して二ヶ月が過ぎた頃、台風がやって来た。それは直撃ではなかったものの、かなり大型の台風だった。家が高台にある事から、風の音は凄まじく、より一層恐ろしさを感じさせた。それまで、塔子達は二階の寝室で寝ていたが、まるで真横に新幹線が走っているかのように、風に煽られた家はギシギシと不気味な音をたてた。子供達は怖がり、塔子を含め家族の誰一人として眠る事は出来なかった。「こんなところで寝られるかっ」彼は [続きを読む]
  • vol.82 母の入院生活 21
  • 沙耶には放課後教室へ行ってもらうように説得し、事前に買っておいた延長保育用のチケットと共に、海斗を幼稚園へと送りこむ。そうして、塔子は一人、老健へと面談に向かった。頭痛薬を飲んで来たので、体調は心配なかった。切れた時用に、2錠ほど鞄にも詰めておいた。電車に乗り、途中一度乗り換えをして、やがて塔子は最寄駅へと到着した。ここから、徒歩3分、とパンフレットには書いてあった。簡単な地図も載っている。塔子は [続きを読む]