秋生めぐむ さん プロフィール

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秋生めぐむさん: 秋生めぐむの語りゴト。
ハンドル名秋生めぐむ さん
ブログタイトル秋生めぐむの語りゴト。
ブログURLhttp://blogs.yahoo.co.jp/rrsxn466
サイト紹介文連載小説、旅先での出来事、日々のあれこれを気のおもむくままに綴っています。
自由文週3回(月・水・金)、連載小説を掲載しています。また、連載が終了した小説は小説投稿サイト「小説家になろう」(http://syosetu.com/)でも読むことができます。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供2回 / 365日(平均0.0回/週) - 参加 2015/04/07 22:56

秋生めぐむ さんのブログ記事

  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2013年(9)
  •  あのとき、何も言えなかった。  結子を止めても、どうにもならないとわかっていたし、遠距離恋愛ができるほど自分に余裕がないことも自覚していた。 結子も、新しい土地でやり直したいと思ったに違いない。最後まで、結子はあの村に馴染めなかった。 神社は、二人が最後に会い、別れた場所だ。そのときに写したのか、あとで写したのかはわからない。日陰には残雪があった。おそらく、三月のころの写真だろう。別れた [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2002年(8)
  •  その日が来ることを、何となく、予感していた。      *      *      * まだ寒さは続くものの、雪は解け始め、水となって川に流れ込む。 事件から三週間経ち、村はようやく平穏を取り戻しつつあった。その間に、隆志は推薦入試で受かっていた大学への進学を辞退した。  そして、スキージャンプも辞めていた。どちらも昂輝の死から立ち直れないのが原因だった。飛ぶことを楽しいと感じられず、飛ぶ意 [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2013年(8)
  •  そのときの写真がある。昂輝が神社に向かう道のほうを頭にして横たわる姿を写した写真が、結子から送られてきたフォトアルバムに収められていた。 夜、真っ白な雪の十字路に合わせるように両手を広げ、足を真っ直ぐ伸ばしている。まるで、十字架に磔にされたような恰好だった。この昂輝は、まるで眠っているようだ。 何故そんな写真を、結子が持っているのだろう。 隆志は瞠目し、息が止まりそうになった。手からフォトアルバ [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2002年(7)
  • 「おれ、昂輝を見たんだ」 躊躇うように、昂輝は口を開いた。「朝、学校に行こうとしてさ。  いつものところで昂輝と会うはずが、あいつ、雪に埋まっていて、寝ているみたいだった。  一瞬、何しているんだろうって、本気で思った」「兄貴の姿、見たんだ」 死体とは、結子は言わなかった。「今日、警察から戻ってきて、焼かれちゃった。もう骨だよ。信じらんない」 結子は隆志の背に手を回し、抱きしめ返した。「死ぬ [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2002年(6)
  •  数日後、高遠のおばさんと昂輝の遺体が高遠家に戻された。美沙子の希望で、二人とも密葬となり、慎ましやかに行なわれた。 夕方、隆志は結子に会いに行った。報道陣の数は少なくなっていた。彼らに見つからないようにうろうろしていると、突然後ろから袖を引っ張られた。驚いて振り向くと、結子だった。ニット帽をかぶり、鼻のあたりまですっぽり隠すようにマフラーを巻いている。 結子は声をひそめて、「神社に行こう」と言っ [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2002年(5)
  • 「高遠のおばさんも亡くなったって、どういうこと?」 湯呑を片付ける母を追い、隆志は尋ねた。母は台所に立ち、洗いながら言った。「昂輝くんが発見されたあとに、村の川下で下半身が水に浸かったまま、  俯せで倒れている高遠さんを、犬の散歩をしていた近所の人が堤防沿いから発見したんですって」「何で、そんなことに……」「さあ、わからないわ。  村では早速変な噂が飛び交っているし、 テレビ局か何か知らない [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2002年(4)
  • 「まあ、どうしたの、隆志。そんなに息せき切って」 応対していた母が驚いたように言った。隆志は「誰?」とぶっきらぼうに問い、先ほどの報道陣のやつらかと、睨みつける。「失礼でしょう。警察の方たちよ」 二人の男はぺこりと頭を下げた。「ちょうどよかった。君にも話を聞きたかったんだ」 母に促され、渋々刑事たちと対座する。刑事は、昂輝と最後に会ったり連絡をとったりした日がいつだったか、家族関係はどうだったかな [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2002年(3)
  •  その日は学校を休んだ。次の日の朝、十字路に行くと、道端に花束が置かれていた。村の誰かが置いたのだろう。隆志は目を背けるようにして、足早に通り過ぎた。 学校に行くと、昂輝の死は全校生徒に知れ渡っていた。昂輝と一番仲が良かったことを知っているクラスメイトは、隆志に対して言葉少なげに接してきた。沈痛な雰囲気の中、授業は進められた。 放課後になると、隆志は部室へ向かった。推薦で大学が決まった隆志は、ほか [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2002年(2)
  • 「大丈夫か、君」 体を押さえていた警察官が慌てて隆志を支えた。隆志は何も言えなかった。気が動転して、上手く息ができなくなる。「こう、き……?」 かろうじて発した言葉も、掠れて雪に吸い取られた。ぴくりとも反応しない昂輝。明らかに生命活動を終了している肉体。昂輝だったものが、十字路の形に合せるように両手を左右に伸ばし、足をそろえて転がっている。 隆志はその場から警察官に移動させられた。あれは本当に昂輝 [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2002年(1)
  •  あの村で起きたあの事件は、何とも小さい。あの九月以降、世界ではテロ事件が多発し続けている。それと比べるのは、両者にとって失礼な話だろう。それでも、遠い国で起きた事件より、あの村で起きた事件のほうが、何倍も衝撃が強かった。      *      *      * 二月のその日は、月曜日だった。前日の朝から大雪が降り、雪かきをしても周囲は白く埋もれていくばかりであった。こんな日は、外に行く気がしな [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2001年(12)
  •  隆志はじっと昂輝を見つめた。結子とは違い、色素の薄い瞳は子犬のように怯えている。 一体何を怯えているのだろう。 そんなに話したくないことを抱えているのだろうか。 それを無理やり暴きたいような、意地の悪い奇妙な感覚に襲われ、隆志はさらに昂輝の顔を覗き込んだ。「いてえって」 顔をしかめる昂輝に、「悪い」と言いつつ力を緩める。けれど、絶対に離さない。なおも昂輝の顔に自分の顔を寄せ、じっと見つめる。「や [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2001年(11)
  • 「譲れないものがあるから」「ジャンプよりも?」「……ああ」 その答えは、手ひどい裏切りに似ていた。オリンピックの表彰台を独占するのだという夢を二人から捨てさせたのだ。たとえオリンピックが無理だったとしても、二人でジャンプを続けていくものだとばかり思っていた。「悪いと思っている。  でもそれは、オレにとって、なくてはならないもので、ジャンプより重いんだ」「何だよ、それ」 隆志は怒りを抑え、静かに [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2001年(10)
  •  昂輝から話したいことがあると呼び出されたのは、それから一週間後のことだった。その間、朝は別々に登校した。結局本数が少ない電車の中で一緒になるのだけれど、一度も口を利かなかった。 昂輝がジャンプを辞めると言い出したときは、隆志が自分を納得させ、ケンカは一日で終わった。今回折れたのは、昂輝のほうだった。 日曜日。呼び出された先は、ジャンプ台の前だった。秋の風が吹く中、隆志が向かうと、先に昂輝が来てい [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2001年(9)
  •  昂輝がジャンプを辞めてから数日経ったある日、世界を震撼させる大事件が起きた。飛行機がビルに突っ込むという前代未聞の惨劇に、誰もが言葉を失った。9・11――アメリカで起きたテロ事件を、世界は忘れないだろう。そして、その世界がどこに向かっていくのか混迷する中、自分たちもまた、向かうべき方向がわからなくなっていた。      *      *      * 昂輝がスキージャンプを辞めてから、一か月が経 [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2001年(8)
  •  翌朝、登校しようと家を出る。いつも待ち合わせている十字路に昂輝がいた。結子は今日も休みらしく、いなかった。お互い気まずそうに声をかけ、黙って歩き続ける。 駅に着く前、隆志は口を開いた。「本当に、辞めるんだな」「……ああ」「わかった」 いつまでも自分一人が拗ねていても仕方ない。残念だけれど、昂輝が決めたことだ。今さら四の五の言ったところで、どうにもならない。「それなら、もういい。  嫌だけど、 [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2001年(7)
  • 「二人が離れちゃうのが嫌なの。 どっちも、大切だから」 隆志は衝動的に結子を抱きしめていた。「おれも二人が大切だよ。 昂輝は親友だと思っているし、結子ちゃんのことも好きだし」 抱きしめられた結子は、おかしそうに笑った。「隆志はいつまでたっても、結子ちゃんと呼ぶんだね。結子でいいのに」 付き合い始めてからも言われていたことだった。「クセなんだよ」 照れくさそうに言い返す。「でも、これからは結子って呼 [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2001年(6)
  • 「兄貴はね、隆志のことがすごく大切なの。  あんなに陽気な性格で友だちが多く見えても、一番信頼しているのは隆志だけだって。  あいつの言葉が一番重いって。  だから、今回のこともすごく悩んでいた。  何にせよ、辞めることは変わらない。  辞めるって言ったら、隆志は止めるだろうから、  決心が揺らがないように、辞めてから辞めたって言ったんだと思う」 結子の話から、昂輝なりに悩んだ末 [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2001年(5)
  •  昨日まで昂輝と歩いた帰り道を、一人で歩く。村の十字路まで来ると、結子がいた。そこを左に行けば隆志の家、真っ直ぐ行けば昂輝の家がある。周囲には田んぼが広がり、信号はない。結子は隆志に近寄り、「聞いた?」と尋ねてきた。何のことかと聞くまでもない。隆志はこくりと頷いた。「少し、話さない?」 結子に誘われるまま、右に曲がった。その先には神社がある。境内のベンチに座ると、結子がぽつりと言った。「ごめん」「 [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2001年(4)
  • 「ま、ジャンプ辞めたらさ、青春てやつを楽しんでやるよ。  ほかの連中みたいに彼女作ったり、遊んだり、バイトしたりさ。  今までジャンプ一色だったから、この際何でもやってやろうって、意外と前向きに考えてんだぜ」 おどけた調子でそう言い放つ昂輝が腹立たしくなった。怪我をしたときに、自分からジャンプを奪うなと妹に言い放った人間のセリフとはとても思えなかった。「お前、本当にそれでいいのかよ!」 自分 [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2001年(3)
  • 「何かあったのか?」 箸を止め、隆志は尋ねた。「何で?」「そんな理由、昂輝らしくないから。ていうか、おれに相談なしかよ」 呆然としていた隆志の頭には、疑問と怒りが湧き上がってきていた。 何故勝手に辞めると決めたのだ。悩みがあるなら自分に言ってくれてもいいではないか。「……悪い」 呟くように謝った昂輝は、一気にジュースを飲みほした。「お前には隠せねえよな。  何度か言おうとも思ったんだけどさ。&nb [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2000年(2)
  • 「辞めたの、オレ。前から考えていてさ。  高校卒業したら、働くつもりだから、どうせ辞めることになっただろうし。  早いか遅いかだけだろ。  だったら、今のうちにさくっと辞めちまおうと思って」 昂輝は隆志の顔を見ようとしなかった。隆志はただ呆然とし、言葉が出てこなかった。「まあ、春くらいから調子悪かったからな。ここらで頭打ちかなと」 たしかに、不調が続いていた。距離が伸びないどころか、以前 [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2001年(1)
  •  そのときの昂輝の顔。泣きそうな、赦しを与えられたような、何とも切ない顔。自分がそんな顔をさせているのだと思った。あのときの、忘れがたい昂輝の顔。      *      *      * 昂輝がジャンプを辞めると言い出したのは、九月に入ってすぐのことだった。 二人きりで話がしたいと呼び出され、昼休み、屋上に行った。いつもは結子と食べているけれど、今日は欠席だった。 屋上には先に昂輝が来ていた。紙 [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2000年(6)
  • 「ね、隆志は兄貴のことを見ていてね」 結子は、黒目がちの瞳でじっと見つめてきた。吸い込まれそうなほど、黒く、澄んでいる。隆志はどきりとした。「わたしの代わりに、兄貴を見ていて。わたしじゃ、無理だから」「今回みたいに怪我しないように、見張っておけってこと?」「まあ、そんなところかな。隆志がいないと、無茶しそうだし」「いても無茶しているぞ、あいつ」 結子は声を立てて笑った。そして、不思議な笑みを浮かべ [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2000年(5)
  • 「……つまり、やきもち?」 違うような気もしたけれど、結子は「当たり」と言ってまた雪を蹴った。「兄貴と隆志のアツい友情に嫉妬したの。それだけ!」「そこに嫉妬されても」「わかっているわよ。でも、わたしは……」 不意に結子は口を噤んだ。「仲間外れにされた気分にでもなった?」 結子の心を探ろうと、隆志は尋ねてみた。ぶすりとしたまま、「……そうかも」と呟き、結子は隆志にもたれかかった。「二人ともけろりとし [続きを読む]
  • 雪上のクロス・少年たちのすべて 2000年(4)
  • 「結子」 隆志が声をかけると、結子は隆志を見上げ、すぐに下を向いた。隆志は隣に腰掛けた。「男子って、ずるい」 結子が呟く。「ずるいって、どういう意味?」「さっきみたいに結託するじゃない」 それが余計に面白くなかったらしい。「まあ、同じ志を持つ者として、昂輝に味方するよ。  おれも家族には心配されるけどさ、好きなものはやめられないし」「そうだけど」 結子は悔しそうに唇を噛みしめた。「心配だけど、 [続きを読む]