千月志保 さん プロフィール

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千月志保さん: ヴィリジアン
ハンドル名千月志保 さん
ブログタイトルヴィリジアン
ブログURLhttp://virigiantext.blog.shinobi.jp/
サイト紹介文突如王国に出現したヴァンパイアを追う王騎士たちを描くオリジナルファンタジー小説を連載しています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供54回 / 365日(平均1.0回/週) - 参加 2015/04/27 08:11

千月志保 さんのブログ記事

  • 第13章 魔術研究所(8) 実験
  • 「グレン?」 どうしていいか分からずとまどっていると、握ったままのグレンの手が震えだした。力が入りすぎて来る震えだ。何もできずにただ様子をうかがっていると、グレンが手を上から押さえつけてきた。「なっ」 エストルは何か言おうとしたが、首筋に痛みを感じて発しようとしていた言葉を忘れた。 グレンが首筋にかぶりつき、夢中になって血をすすっている。 突然後ろから頭を首筋にふわりと押しつけられ、グレンははっと [続きを読む]
  • 第13章 魔術研究所(7) 魔力の抽出
  • 「優しい光だな」「ああ。グレンの魔力だ」 グレンの魔力の近くにいるだけで心地よい。温かい空気が漂い、自然に表情が和らぐ。 グレンは穏やかな表情で少しずつ魔力を注ぎ込んでいった。ヴィリジアンになるべく負担をかけたくない。ゆっくりと魔力を吸収してもらいたい。 しばらくすると、すうっと光が消えた。「大丈夫か、グレン」「うん」 笑顔で返すが、その笑顔に力がない。予想どおり相当の魔力が必要だったらしく、疲れ [続きを読む]
  • 第13章 魔術研究所(6) ヴィリジアンとの対話
  •  グレンはヴィリジアンと長年使ってきた自分の剣を持って、階段を下りた。日光が入らない地下は薄暗い。廊下をしばらく歩くと、エストルとウィンターが待っていた。グレンが来ると、エストルは何も言わずに研究所の扉を開いた。「エストル様」 ローブを身にまとった男が三人を迎える。「ここの所長のヴィクターだ」 エストルは手短にウィンターに紹介した。 ヴィクターはソフィアの部下、リンとルイの父親でもある。「どうぞ。 [続きを読む]
  • 第13章 魔術研究所(5) 難しい仕事
  • グレンが言うと、ウィンターは意地の悪い笑みを浮かべた。「お前は強すぎる。私では相手にならないだろう」「だったら、僕が鍛えてあげるってことで。それでいいでしょ」「悪くないな。では、先にエストルと一戦交えてから、グレンと鍛錬することにしよう」 あまりにも食い下がってくるグレンに苦笑いしながらウィンターは了承した。「あまり本気になってヴィリジアンに使う魔力がないとか言うなよ」「ああ、そっか。そうだった」 [続きを読む]
  • 第13章 魔術研究所(4) 意志の疎通
  • 「私が考えているのは、その変換した魔力を逆に抽出して結晶化できないかということだ」 エストルの説明を聞いて初めてウィンターは納得する。「なるほど。確かに手法としてはありだな」 ウィンターも魔術師の一族に生まれ、基礎は叩き込まれている。魔力を結晶化するという技術は昔から伝わる技術で、魔術師が自分で使うことはないが、魔力のない者が護身用に携帯したり、簡単な魔法武器を作るために使われてきた。また、応用と [続きを読む]
  • 第13章 魔術研究所(3) 秘策
  • グレンはウィンターを見た。ウィンターの強さもテルウィングをヴァンパイアから解放したいという強い思いが育んだものに違いない。だからこそウィンターは分かるのだ。ソードを説得することがいかに困難なことかが。「そうだね。ソードも自分の道を信じて歩いているんだ。だったら……」 受け入れなくてはならない。ソードの信念もまた、揺るぎないものであることを。何がソードをそうさせたのかは分からないが。「つ [続きを読む]
  • 第13章 魔術研究所(2) 揺るぎない信念
  • 「それにしても、ヴァンパイアだったんだな。強いわけだ」 三人は苦笑いした。皮肉なことだ。ヴァンパイアに吸血されることによってヴァンパイアを倒す力を得るなんて。「ウィンター、気がついているんじゃないかと思って、ずっとどきどきしていて」「考えもしなかった」 そうだったんだ。怯えすぎていただけか。「ごめんね。自分でもなかなかヴァンパイアになった事実を受け入れることができなくて。一生誰かの血を吸って生きて [続きを読む]
  • 第13章 魔術研究所(1) 打ち明けること
  • エストルは優雅な動作でカップを口に運んだ。「おいしく入っているぞ、グレン」「ほんと? ありがとう」「嬉しそうだな」 グレンの明るい表情を見てウィンターは言った。「だって、エストルに褒められたんだよ」 エストルは苦笑した。だが、グレンも自分と同じように思ってくれていることは素直に嬉しいと思った。「まあ僕のお茶は入れ方がうまいんじゃなくて、旅先で分けてもらったお茶だからおいしいんだけど」 技術ではとて [続きを読む]
  • 第12章 王のいない城(9) 和やかな時間
  • 「一度手合わせしてみたいと思った。テルウィングの剣技を見てみたい」「ずるいよ、エストル。僕だってまだウィンターに相手してもらったことないのに」 すると、ウィンターが笑い出した。「全く。一国の宰相とは思えない発現だな」「エストル強いんだよ。宰相にならなかったら、王騎士になっていたと思う」「冗談はよせ。お前がいる限りは王騎士になどなれん」 ウィンターは楽しそうに笑っている。「ところで、ウィンターって剣 [続きを読む]
  • 第12章 王のいない城(8) 立役者たち
  • 「もう何ともないのか?」「うん。過ぎてしまえば何ともなくなるんだ。体力を消耗するから疲れは残るけど」「そうか」 エストルはグレンの手を引いてベッドの前まで連れてくると、そのまま横たわらせた。「あまり無理はしないでくれ」 そう言うと、エストルは先ほど書類を片づけたのと同じようにてきぱきとグレンが使ったタオルを洗って絞り、床についた血をふきだした。何をやっても無駄な動きがなくて、眺めていると小気味がい [続きを読む]
  • 第12章 王のいない城(7) 長年のつき合い
  • 「だから、お願いだから、帰ってくれない?」「嫌だ」「へ?」 エストルではありえないような子どものような言い方で返されてグレンは耳を疑う。驚いていると、エストルはグレンの手を握った。すると、ぴきいんと金属音がして体が急に重くなった。「う……っ」 今まで抑えていた苦痛が急に解放されてグレンの体を襲った。「エストル……君……」 だが、次の言葉はうめき声になった。「もう [続きを読む]
  • 第12章 王のいない城(6) 拒絶反応
  • 「ううん、何でもない」 これは先ほどと同じ拒絶反応の前触れだ。自室に辿り着くまで持つようにグレンは苦痛を封じながら答えた。「そうか」 そう言ってエストルは会議室を出た。入れ替わるように、シャロンがやってくる。「グレン将軍、これお返しします」 見ると、グレンがスアで貸した剣だった。「ありがとうございました」「少しは役に立ったかな」「はい。途中、魔物を何体か斬らせていただきました」 いたずらっぽい表情 [続きを読む]
  • 第12章 王のいない城(5) 会議終了
  • 「私は新たな拠点はパイヤンなのではないかとにらんでいる。パイヤンを拠点にする理由は十二分にある」 パイヤンはテルウィングとの行き来が最もしやすい場所。セレストの命とあれば、結界を自由に張ることもできる。他にも町の中がどのような状況になっているか分からない以上、敵に有利に働く要素を多分に含んでいる可能性が高い。「では、パイヤンに参ります」 ソフィアが毅然と言い放つと、エストルも真剣な表情でうなずいた [続きを読む]
  • 第12章 王のいない城(4) 新たな拠点
  • 「エストル様を、僕の手で葬らせるために」 言葉にするだけで疲れがどっとあふれた。「エストル様は僕にとって頼もしい上官だけど、それ以上に士官学校で共に学び、喜びや悲しみを分かち合ってきた大切な友人なんだ。僕だけを二階に招き入れたのはエストル様を僕を操って始末させ、大切な友人を手にかけた僕の反応を楽しむためだ」 茫然自失としただろうか、狂っただろうか、泣きわめいただろうか。いずれにしても考えたくなかっ [続きを読む]
  • 第12章 王のいない城(3) ヴィリジアンの意思
  • 「こざかしい」 これでは相手が疲れるまで埒が明かないと感じたソードは、シャロンの素速い動きを魔力で封じようとした。広範囲に魔法を展開され、避けることはできなかった。シャロンはヴィリジアンで跳ね返そうと試みる。両手で柄を握り、何秒間かは耐えたが、圧倒的なソードの魔力にはそれが限界だった。衝撃で後方に押しやられたかと思うと、体が宙に浮き、がくんと四方から体にものすごい重力がのしかかる。シャロンは何とか [続きを読む]
  • 第12章 王のいない城(2) ソードの正体
  • 「だが、失敗した」「でも、僕がヴィリジアンやヴァンパイアのことを知っていることを突き止めた」「そこで、グレンの部下から何か引き出せないかとクレッチを捕らえてその記憶をのぞいた。そのときは判断がつかなかったが、やはり〈追跡者〉は最初からお前の部下を狙っていたんだと思う。クレッチもがんばってくれたが、私とのラインが引き出された。次は私の番だと思い、覚悟は決めたが、相手の出方が読めず、結局あのような形で [続きを読む]
  • 第12章 王のいない城(1) ヴィリジアンをめぐって
  • 「他の王騎士にもグレンの実力を見てもらった。異論はなかった。実力的にも人格的にもグレンほど王騎士にふさわしい者はいなかった。私はすぐにグレンに引き継ぎをし、クレッチとデュランを直属の部下にするよう勧め、滞りなく王騎士の職を辞した」 クレサックは一息つくと、また切り出した。「その後、隠れやすそうな森を見つけて外部からの侵入者を欺けるような結界を張り、隠れ家を建ててシャロンの指導をした。充分な実力がつ [続きを読む]
  • 第11章 真相(12) 王騎士になった日
  • 「すごく面白いというか……実は最近クレサック将軍の任務についていってばかりで、その……」「上級兵士の通常業務はよく分かりません、か?」「いや。うん。そんなこともないんだけど」 困惑した様子のグレンを見ていておかしくなったのか、エストルは笑い出した。「で、どうだ、クレサック将軍の補佐は?」 すると、グレンの緑色の瞳がぱっと明るくなった。「今まで経験したことのないことばかりで。 [続きを読む]
  • 第11章 真相(11) 呼び出し
  • 「よくやった、グレン」 クレサックに肩を叩かれて、グレンも笑顔になる。「さて。魔獣も倒したし、帰るとするか」 体が疲れて重かったので、二人ともゆっくり歩き出した。「しっかし、あんなに機敏な動きをする魔獣だとは思っていなかった。すごいスピードだったなあ」 クレサックは軽く伸びをした。 その後も次々と魔獣、ヴァンパイア、ゾンビの討伐など事あるごとにクレサックの任務に連れて行かれた。「そのうち俺たち追い [続きを読む]
  • 第11章 真相(10) 初任務
  • ドアの前に立ってここで良かっただろうかと少し不安になる。グレンは一度深呼吸して名乗った。「グレンです」「入れ」 中からクレサックの声がしてほっと胸を撫で下ろす。「失礼します」 グレンが部屋に入ると、クレサックが顔を上げた。「そこに座ってくれ」 席を勧められてグレンは座った。「実は」 余計な話は一切せず、クレサックは急に切り出した。「明日から魔獣討伐に行くのだが、一緒に来てくれないか?」 一瞬どうい [続きを読む]
  • 第11章 真相(9) クレサックの提案
  • 「同期?」 若いとは思っていたが、エストルと同期とは。やはりあの青年、ただ者ではない。「よく手合わせしてもらった。一度も勝てなかったがな」 グレンの話をするエストルはいつもとは違って柔らかい表情をしていた。その理由がクレサックには何となく分かった。グレンにはそういう力があるのだ。「エストル様、先日、王騎士の職を辞して、シャロンの指導をしたいと申したこと、覚えておいでですよね」「もちろんだ」「王騎士 [続きを読む]
  • 第11章 真相(8) グレンという者
  • 「何ともないですか?」 あっという間に治癒は完了していた。この若者の剣裁きにも魔力にも驚いたが、治癒魔法の能力は格別だった。王騎士の中でもこれほどの治癒魔法の使い手はいない。「良い魔力を持っているな」「ありがとうございます」 クレサックが率直な印象を述べると、グレンは嬉しそうに礼を言った。屈託のない笑顔だった。「お前、しばらく立てないだろう」「衝撃がとても大きかったので。少し休んで立てるようになっ [続きを読む]
  • 第11章 真相(7) 試される実力
  • クレサックは他の兵士たちが一ヶ所に固まって充分なスペースが確保できたことを確認すると、結界を張った。「来い」 クレサックに言われてグレンは仕掛ける。助走をつけてクレサックに飛びかかる。「いいぞ」 クレサックは手応えのある一撃を賞賛しながらはねのけたが、容赦なくすぐに次の一撃が来る。スピードもなかなかのものだ。クレサックも素速く対応して次々と襲いかかるグレンの刃を退けていく。渾身の力で大きく最後の一 [続きを読む]
  • 第11章 真相(6) 運命の出会い
  • ヴァンパイア討伐から戻ったクレサックは待機中だった。その日の午後、次の任務を命じられる予定だった。少し体を動かそうと訓練場に向かっている途中、デュランと会った。「将軍、久しぶりに相手していただけませんか?」「ちょうどいい。私も一汗かこうと思っていたところだ」 クレサックはデュランと雑談を交わしながら訓練場を目指した。 訓練場に着くと、多くの上級兵士たちがクレサックを待っていた。「よろしくお願いしま [続きを読む]
  • 第11章 真相(5) 解放のために
  • 「ウィンターはまずヴァンパイアの出現情報をたどりながらムーンホルンの状況を調べ始めた。そこで、陛下が王騎士たちにヴァンパイア討伐をさせていることを知る」「王騎士たちがヴァンパイア討伐をしている様子を何度か観察しているうちに、クレサックに協力をしてもらえないかと考えるようになった。クレサックであれば、私の話を理解してもらえるような気がした」「ウィンターは私に接触してきた。陛下のヴァンパイア討伐の命に [続きを読む]