適当館 剛 さん プロフィール

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適当館 剛さん: 斐界群史
ハンドル名適当館 剛 さん
ブログタイトル斐界群史
ブログURLhttp://hikaigunshi.blog.fc2.com/
サイト紹介文斐界という世界の出来事を、バラバラと短かい小説で書いていきます。
自由文こんにちは。斐界(ヒカイ)という世界の出来事を、書いていきます。バラバラと短かい小説をあげていきます。私はテキトーな性格なので、テキトーに書いていきます。一応一話完結なので、どこから読んでも一応大丈夫です。では、良ろしければ読んで下さいませ。

※コメントは承認制です。
※過激な表現やR18表現があるかもしれませんので、苦手な方はお避け下さい。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供60回 / 365日(平均1.2回/週) - 参加 2015/05/09 12:25

適当館 剛 さんのブログ記事

  • 113 黄翼の災いから這い出ずる奴輩
  •  眞暦(しんれき)1798年9月。 武界国(ぶかいのくに)作来城(さくらいじょう)。夜襲。「見ろ、矢数が少ない!押し切れぇっ。」 講空院辰清(こうくういんたつきよ)は、父の絶叫を兜の錣(しころ)越しに聞くと、「確かに。勝てるぞ!」 自身もまた大声で喚いた。 いまだ火山灰が厚く夜空を覆い、今宵は月も星もほとんど見えぬ。城方が土塁の上に焚く篝火で、戦場が少し伺える程度だ。 講空院軍は夜陰に乗じて、作来城の [続きを読む]
  • 112 月夜、船上の宴
  •  賑やかな船が、ゆっくりと夜の海を滑り行く。(大胆だ。) 春口中棟(はるくちなかむね)は、屋形船の舷に手をかけて、冬の月に照らされた海峡を見るともなく見る。 背後の船室からは、宴の笑い声が漏れ聞こえる。深更に至り、随分と酒は進んでいるようで、宴席は盛り上がり熱気を感じる程だ。一方、甲板に出ている春口中棟は十二月の寒風に身をさらしている。 彼は、震えている。 だがそれは、冬の海風に寒がっているだけで [続きを読む]
  • 111 青き海と冠の紋
  •  眞暦(しんれき)1797年。 極観国(きわみのくに)冠岬(かんむりみさき)の浦は、七月の陽射しに照らされ、眼に痛いほど浜が白い。煌めく海原の遥か向こうに、青観(あおみ)半島が横たわっている。「よおし、甲介(こうすけ)の網はもういいな。次は光郎(みつろう)の舟を上げろ!」 干道源(かんどうげん)は、真っ白な歯も露わに叫んでいる。「そうだ、そうだ。わはは、大漁だな!」 漁師たちと一緒に道源は、甲介とやら [続きを読む]
  • 110 晴れし盆地の行く末、茫漠たり
  • 「少し風が緩みましたな。」 銀篠長亮(ぎんじょうながすけ)は外を眺めながら、言う。 濡れ縁の向こうは虻川(あぶかわ)屋敷の内庭だが、簡素で見るべきものは特に無い。長亮の心を奪っているのは、その先に横たわる世覧(よみ)の山々である。 堅世国(かたよのくに)の西南に走る世覧山脈は2000m級の山々が連なり、四月の今も白雪を頂き、山肌の鮮やかな青と相まって、壮大だった。空は晴れ、正午過ぎの春光に照らされてい [続きを読む]
  • 109 弱い神様の夏
  • 「泰太(やすた)があ、死んだぞお!」 足佐田(あしさだ)の村に突如そんな声が響いた。 それを聞いた於空(おそら)は草刈り鎌を放り出し、その錆びた刃が夏の日差しに鈍(にぶ)くきらめく。傍らの畔をぼんやり歩いていた狐に向かって飛び、泡食って鎌を避けた狐は、「ケッ」と威嚇して毛を逆立てた。 しかし、於空はそんな狐を無視し、声の方へ走っていく。羚羊(かもしか)のように美しい脚は白く、夏日に眩しい。 7月。 [続きを読む]
  • 108 見えざる鳥
  •  ようやく緑の色が濃くなった中庭を、高木笹連(たかぎささつら)は物憂げに眺めている。「噴火からそろそろ三年、今年の青もみじは随分きれいじゃの。昨年はもっとくすんでおったわ。」 兄の朋連(ともつら)が、笹連の横顔に声をかける。「ええ。ただ、せっかく斗藍(とあい)様にご覧頂くなら、晴れて欲しかったですが。」 笹連は正面に向き直り、兄の眼を覗き込んだ。 似てない、と言われる。 高木家は「高木風(たかぎふ [続きを読む]
  • 大陸/陸島の短編を少しだけ掲載
  • すでに「小説家になろう」で掲載していますが、大陸と陸島の短編についてこちらでも少しづつ掲載します。現在は中編である『美獣を止めよ』をメインに執筆していますが、短編の方もたまには書き進めていきたいと思いました。ですのでこのブログでは『美獣を止めよ』はしばし休憩し、大陸と陸島の短編を載せてまいります。取り急ぎのお知らせでした。 [続きを読む]
  • 第四章 ― 猛き金鴻の城 第六話
  •  鳴泪山(めいるいさん)を登りながら、圃勒春(ほろくしゅん)は叫ぶ。「一昨日ぶっ殺した奴等なんでしょ、あいつらは。」 黄塵に傷ついた金銅の甲冑でにぶく夏の昼光を跳ね返し、兜の前立てに付けた金色(こんじき)の鴻(こう)は大きく翼を広げて威勢がいい。 傍らで息を切らせている側近、國世殷(こくせいいん)が圃勒春の問いに答える。「そ、そうです。捕らえた斥候が緑の襟巻きをしてましたから。はあ。」「まったく國 [続きを読む]
  • 第四章 ― 猛き金鴻の城 第五話
  • 「昨夜は、兄妹水要らずでの御会談、ようございましたなあ。して、『青光麗弟(せいこうれいてい)』殿はお兄様の意向を承服しましたかねえ?」 8月19日の早朝。 美獣(びじゅう)は、奥の房室に謀士嚇凛(かくりん)の訪問を受けていた。 嚇凛婆は、短躯を丸椅子にちょこんと座らせ、さながら猿の子、可愛らしくも見える。しかし、皺だらけの顔の中に埋もれた眼は異様に光り、美獣の茶色い瞳を正面から捉えて離さない。 その [続きを読む]
  • 第四章 ― 猛き金鴻の城 第四話
  •  月。 昨夜は雨空に隠れていたが、今宵は大きく欠けた姿を雲間に現した。(兄上 ―。) 美萊峩(びらいが)は夜空を見上げる。その涼やかな瞳に映るのは、尖った月か、それとも眼前にそびえる白亜の巨館か。 青い紗の長袍(ちょうほう)を夏の夜気にはためかせて、美萊峩は巨館の大階段をのぼる。月夜を背に篝火で照らされた大宇は、この囿治果の主であり、因(いん)州公子である美獣(びじゅう)が起居する邸宅である。幅広 [続きを読む]
  • 第四章 ― 猛き金鴻の城 第参話
  •  8月17日夕刻。 雨の下、囿治果(ゆうちか)の城内はすでに暗い。 しかし高い槐(えんじゅ)を大門の前に植えた白い家は、何か賑やかである。「本当にありがとうございました。ほれ、左肩はこの通り。」 邸内は明るい声で満ちている。 珊瑚や花崗岩で仕上げられた、白と薄桃色の上房(じょうぼう)には、やたら左手をぐるぐる回す若い男と、長身の少年、若い女性が二人が立っている。「ちょっと、止しなさい。塞がったように [続きを読む]
  • 第四章 ― 猛き金鴻の城 第壱話
  • 第四章 猛き金鴻の城第四章 ― 猛き金鴻の城 第壱話 眞暦(しんれき)1806年8月17日。 因(いん)州の軍事都市、囿治果(ゆうちか)は雨だった。(久々の雨か。) 院子(なかにわ)に敷き詰められた磚(せん)が雨粒に打たれ妖しく黒ずんでいるのを見て、吼了欽はため息をつく。無人の庭は無機質で、夏とは思えぬほど寒々しかった。 物憂さと、胸の締めつけとを、同時に感じた。背後の寝室の扉を開ければ、旅立ちの仕度が整 [続きを読む]
  • 第四章 ― 猛き金鴻の城 第弐話
  •  8月17日。 因(いん)州南部は小雨であった。 広大な因州平野、中部の啻万麓(ていばんろく)や囿治果(ゆうちか)が大雨でも、この辺りが晴れていることだってある。「おお、いるわねえ。間抜けそうなツラしてやがるわ。」 圃勒春(ほろくしゅん)は、パッチリした二重眼をしばたたかせ、大きな紅い口を開けてニッ、と純白の歯を剥き出した。  因州南部の重要拠点たる、國朶鎮(こくだちん)の城市から北に15kmほど離れた [続きを読む]
  • 第参章 ― 胎動の風景 第八話
  •  8月16日。 因(いん)州龍眼(りゅうがん)の圃韓(ほかん)は、州都・啻万麓(ていばんろく)の自邸で晩夏の夕空を眺めている。 日は、城市の西に聳える啻山(ていざん)の峰に、かかりつつあった。「龍眼か。」 待ち人の遅れに些か気を焦らせながら、老いた喉の縦じわを震わせて、独り言つ。 六十七年の人生がこの役職に、因州第一大臣、通称「龍眼」に、すべての成果を集約させている。 老高官の独り言は多分に自嘲気味 [続きを読む]
  • 第参章 ― 胎動の風景 第七話
  • (ウキウキしてるわね。) 昱左(いくさ)は傍らを歩く主君、斐醺(ひくん)を横目で見る。 8月16日夕方。 二人は吼了欽の宿舎を訪れ、衛士に案内されていた。愛嬌のある丸顔に微笑みを浮かべているものの、昱左の眼は冷たく光り、長い髪が規則的に揺れていた。手に持つ大きな銅製の薬箱も、歩みにつれて左右に振れている。 脇を歩く斐醺は、常と同じように背筋を伸ばし、純白の軍靴をカッカッと鳴らして闊歩している。雪のよ [続きを読む]
  • 第参章 ― 胎動の風景 第六話
  •  軍事都市、囿治果(ゆうちか)。 月無き夜がこの城市を見下ろし、特徴である白い建物群も今は闇に沈んで、判然とせぬ。 街の中央を占める巨大な建造物は、囿治果の政庁であり、かつ城主の美獣(びじゅう)が起居する居館である。4m超の高い磚壁(せんへき)がぐるり周囲をめぐっているが、そもそも囿治果の街自体が長大な城壁に囲まれている。つまり、二重の防壁で守られていることになる。 この美獣邸大門も日中であればその [続きを読む]
  • 第参章 ― 胎動の風景 第伍話
  •  啻山(ていざん)は南中の夏日を浴び、緑に包まれた鮮やかな山容を誇るように、聳え立っていた。そしてその東麓に広がる大城市、啻万麓(ていばんろく)は、照りつける真昼の太陽の下、加速度的に気温を上昇させていた。 眞暦(しんれき)1806年8月15日。 因州州都の啻万麓は夏の陽気に晒されている。因(いん)州は大姚(とう)帝国三十一州の中でも東北端に位置し、全体に冷涼な気候であるが、夏季はやはり暑い。 紅白の磚 [続きを読む]
  • 第参章 ― 胎動の風景 第四話
  •  8月の朝。 軍事都市、囿治果(ゆうちか)は賑わっている。 白く塗られた兵舎が画一的にズラリと並び、その狭間を走る大路、小路を、兵装に身を包んだ多くの男女が往来していた。 兵員相手の露天商も多く、武具商、食い物屋、本屋なんぞが路傍に立って、声を張っている。夏の朝日を浴びて、皆汗を垂れ流している。「さあさ、そこの隊長さん。槍兵さん。饅頭どうだい。」「オヤジ、こないだ買ったやつは肉が殆ど入ってなかった [続きを読む]
  • 第参章 ― 胎動の風景 第参話
  • 「父上。かように公子の隆盛は明白。」 紅白に塗られた磚(せん)で仕上げられた上房(じょうぼう)は、夏の朝に熱をはらむ。東の天窓から射す日がすでに暑い。 圃韓(ほかん)の座前に拱手(きょうしゅ)する二人も緊張感ある表情を崩さず、これも房内に暑気がこもる一因のようだった。 怒ったような声で報告を続ける痩せた男は、圃韓の嫡男、圃戒仕(ほかいし)である。「たかが三千足らずの流賊を討つのに、一万の軍兵を集め [続きを読む]
  • 第参章 ― 胎動の風景 第弐話
  •  因(いん)州囿治果(ゆうちか)城の郊外、茫漠と広がる黄土平原。 美獣(びじゅう)、美佑聯(びゆうれん)の閲兵が終わり、今日の調練は解散となった。「吼了欽(こうりょうきん)。御苦労でした。」 忞番対(ぶんばんたい)と一緒に圃戒仕(ほかいし)隊四十人の無事を確認している吼了欽の右肩を、一人の武人が叩いた。「あっ。これは、困士甜(こんしてん)様。」 吼了欽が振り向けば、そこに女武者が立っていた。「お疲 [続きを読む]
  • 第参章 ― 胎動の風景 第壱話
  • 第参章 胎動の風景第参章 ― 胎動の風景 第壱話 夏の日差しが大地に照りつけ、黄土は乾ききっている。 因(いん)州囿治果(ゆうちか)の郊外に広がる、大平原。そこに銅鑼が一度叩かれ、余程大力の士が鳴らしたか、広大な荒野に響き渡った。「圃戒仕(ほかいし)隊、前進!」 吼了欽(こうりょうきん)は金色(こんじき)の兜を煌めかせて、甲高い声を張る。そして同時に、四十人の隊列が魚鱗の陣形を保持したまま、一斉に歩 [続きを読む]
  • 第弐章 ― 心酔 第伍話
  • 「吼了欽(こうりょうきん)殿。此度(こたび)のご活躍見事。おめでとうござる。」 囿治果(ゆうちか)城への帰還行軍。 吼了欽は圃戒仕(ほかいし)隊にあって隊列の監視に当たっていたが、隣を進軍する啓殉覚(けいじゅんかく)隊から一人の武官が離れ、近寄ってきた。「あ、ありがとうございまする。」 吼了欽はつい、背筋(せすじ)を正す。 その武人の声は若くて張りがあり、良く通るものだから、圃戒仕隊の多くが振り返 [続きを読む]
  • 第弐章 ― 心酔 第四話
  •  出立直前に色恋の話なぞして、いきなり背後に立った主君に軍規の緩みを叱責されるのでないかと、吼了欽(こうりょうきん)は慌てふためいた。「圃戒仕(ほかいし)様。我が隊五名、皆いつでも出発出来まするっ。」 と、忞番対(ぶんばんたい)の隣に並び、報告する。「出来まするっ。」 直立不動で忞番対も最敬礼する。 その報告を受ける圃戒仕はしかし、何も応えない。 馬上で身体を少し揺らしながら、こちらから目を逸らし [続きを読む]
  • 第弐章 ― 心酔 第参話
  •  眞暦(しんれき)1806年8月12日の早朝。 囮丘(かきゅう)の空は曇り、風が出ていた。「やった。やった。」 出発間際の慌ただしい圃戒仕(ほかいし)隊に、喜びの舞を踊る兵が一人。「うるさいぞ、忞番対(ぶんばんたい)。俺が怒られる。」「やった、描初處(びょうしょしょ)から手紙が来たのさ。」 踊る忞番対を叱る吼了欽(こうりょうきん)。しかし吼了欽は一転、「本当か。そりゃ随分、脈ありだな。」 と、祝福してみ [続きを読む]
  • 第弐章 ― 心酔 第弐話
  • 「一万ですか。こうして見ると本当に、壮観でございます。」「まったく、不足。」 兄と妹が、丘の上に立っている。 昨日まで賊が拠点にしていた山寨とは異なる場所だが、それでも囮丘(かきゅう)の中では見晴らしのいい高地で、緩やかに波打つ丘陵地帯を一望できる。 少し日は傾いたが、それでもなお8月の陽射しは強い。そんな夏空の下に一万の軍勢が展開しているが、陽炎のせいか、得体の知れぬ魑魅魍魎(ちみもうりょう)の [続きを読む]