星鼠 さん プロフィール

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星鼠さん: 星砂糖
ハンドル名星鼠 さん
ブログタイトル星砂糖
ブログURLhttp://sirukyway.blog.fc2.com/
サイト紹介文BL小説ブログです。長編9本完結。新連載はキャラ重視。絡まり合う人間関係を描けたらと思います。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供222回 / 365日(平均4.3回/週) - 参加 2015/05/18 11:11

星鼠 さんのブログ記事

  • 消失点 13
  • 隆吾は颯太の前に片膝をついた。 両手で颯太の肩を掴み、目線を合わせようとする。 覗き込んでくる眼光の鋭さに、颯太は負ける。 目を伏せ「どうして」と訊いた。 「どうして?」 隆吾は怪訝に問い返す。 彼にしてみれば、ごく普通の、何でもない切り返しだっただろう。だがその声に颯太は非難を感じて萎縮してしまう。 隆吾は「何が どうして なんだ」と柔らかく訊き直した。 「どうして 似てなきゃ いけないの。どうして  [続きを読む]
  • 消失点 12
  • 一礼して職員室から出ると、教室に戻って帰り支度を始める。 生徒たちは部活に行くか、帰宅するかで冬弥が最後のようだった。 鞄を持ち戸口に向かう途中、竹原颯太の机に目を遣った。 殆ど会話した事もない相手に、なぜいきなりあんな事を尋ねたのだろう? 街で見かけた少年と颯太が似ているからといって、自分に何の関わりがあるのか。 「……気になったんだから仕方ない」 颯太に言い訳をするように、その机の横で呟いた。その日 [続きを読む]
  • 消失点 11
  • 気づいたら、そこにいた。どうしてそこにいるのか、分からない。 高校と駅の間にある繁華街を一本中に入った、車も入らない路地。 古いビルに昔ながらの店が並んで、これまた古びた自販機が音を立てている。 颯太はぼうっとその自販機を眺める。並ぶ缶を順に見る。 「おいっ」 路地の、もう一方の入り口になる角で誰かが叫んだ。 颯太はびくっと身を震わせるが、自分に関わりのある声とは思えない。ふるふる小さく首を振り、自販機 [続きを読む]
  • 消失点 10
  • 颯太が前日の非を謝ると、猛は笑っただけで理由は訊かなかった。 「いきなりでびっくりしたんだろ。荒木隆吾ってんだ」 「りゅう ご くん」 「今度お前とも話したいってさ。連絡先 要る?」 「あ うん」 彼にも直接謝りたいと思っていた。 颯太は携帯を取り出し操作し始める。だが。 突然その手を止めた。 「颯太?」 「……要らない」 「颯太」 猛ではない。猛が問題なのではない。颯太は悟った。 自分が嫌なのだ。自分の中の [続きを読む]
  • 消失点 9
  • 店に入ってテーブルを挟んで座ったが、どちらも話す糸口を見つけられないでいた。 猛が音を立ててストローを吸う。 「結局 俺たちは似ているのか いないのか」 隆吾が言った。 猛は渋い顔をして横を向く。 似ていると思ったのだが、 颯太本人の断固たる否定にあって自信を失った。 彼の目鼻立ちの輪郭を太いペンで掻き直したような、そしてその端をきっちりと止め直したような、そんな感じなのであるが、だがたとえば有名なキャ [続きを読む]
  • 消失点 8
  • 中間テストが始まり、終わる。 猛は最小限の努力で最大限の結果を出す事を知っていた。 颯太はこつこつと積み重ね、教科全体で帳尻を合わせる。そして瀬田冬弥は主席だった。 別の学校の職員室で、荒川隆吾は担任から順位表を受け取っていた。 「どうした」と教師は言う。「編入試験はまぐれか」 隆吾は黙って数字を見ていた。 悪かったという事は答案用紙の返却で分かっている。テスト時間中に既に分かっていた。否、その前から予 [続きを読む]
  • 消失点 7
  • これでもか、と母親は料理を用意した。 猛の好物ばかりだった。栄養も考えてある。 端から片づけていく彼を、母と妹が優しく見守る。 「お兄ちゃんもこっち来ればいいのに」 空いた皿を重ねて妹の優香が言った。 暫く会わないうちに綺麗になっていた。今年15歳か。 猛にまで「客を紹介する」と詰め寄って来る取り立ての事を考えると、つくづく避難させておいてよかったと思う。 「心配なの」 母親が窺うように猛をじっと見つめ [続きを読む]
  • 消失点 6
  • 母親の誘いを断りきれず訪問する事になったのだが参考書を見る、という言い訳めいた目的で時間を潰していた。 背後で声がした。小競り合いのようだ。 関わらぬのが一番と、振り返らなかった。だが災いは向こうからやって来る。 足音が近づいたと思った瞬間に、背中に衝撃を覚えた。よろめいて棚に手をつく。 痛みを感じたのは背中の、腰に近いあたり。 高校生ではなく中学生だったかと斜めに覗き見る。 冬弥の腰に抱きつくようにし [続きを読む]
  • 消失点 5
  • 連休を迎える頃には新しいクラスも落ち着き、 二学年の生活にも慣れて来た。だが颯太はいまだに冬弥が視界に入る度どきどきしていた。 振り向かないでと念じつつ見つめる。 見慣れる程に端正に見えてくる。 単に手足が長いからなのだろうが、所作のひとつひとつが優雅に映る。 興味の対象以外五感に反映させないのだろう。 淡々とテキストを開き、本を読み、 何か分からないが時々思い出したようにメモを取る。その全部が彼だけの [続きを読む]
  • 消失点 4
  • 帰宅して、メールの着信に気づいた。 母親からだった。 始業式はどうだった? 新しい担任は男?女?などといった質問が並び、夕食の誘いが添えられていた。 春休み中一度も顔を出していない。 訪問すれば新しい父親は彼を我が子のように歓待するだろう。だが冬弥はその鷹揚さが気に入らない。 大人ぶりを見せつける事で冬弥の競争心を封じ、 息子扱いする事で冬弥を子どもの領域に留めおこうとする、そういった作意が彼の態度から [続きを読む]
  • 消失点 3
  • 課題のワークに集中しようとしても、 颯太の目と、昨夜の事がフラッシュバックする。 想定より酷い事にはならなかった。 疼きは残ったが、男はそれを最小限に抑えたように思える。まどろっこしい程長く時間を掛けて、彼をほぐした。 何度か冷たいものを塗られ、何度も指を出し入れされた。そこまで丁寧に扱われるとは思っていなかった。だが却ってそれが不快な時間を長引かせた。いっそ「もの」であるかのように犯して放り出してく [続きを読む]
  • 消失点 2
  • 掲示板でクラスを確かめて教室に入る。 入ったところで颯太は立ち止まってしまった。 教室の中に瀬田冬弥の姿を見つけたからだ。 立ち竦む颯太にも、その視線の先に立つ冬弥にも、 教室内の生徒たちは全く注意を払っていなかった。それぞれの知己たちとのお喋りに夢中なのだ。 新しいクラスに知った顔を確認した安堵と、さりげない主張。 休み明けの興奮が熱気となっている。その中で冬弥の周囲の空気だけが冷め、 肌の白さと相俟 [続きを読む]
  • 消失点 1
  • 街中ですれ違い、ふと振り返る。 相手も同じように振り返っていた。 見知らぬ少年だった。 互いに流す目で相手をもう一度確認し、そしてまた歩き始める。 「仕方ねえよな」エレベーターのボタンを押しながら、椎名猛は呟いた。エレベーターが上昇を始めても、まだ吹っ切れないように繰り返す。 指定の階に降り立って、部屋の番号を確かめた。ドアをノックすると内側から開かれた。ネット上で交わした名前を告げる。男は一歩下がっ [続きを読む]
  • カッコーの森 最終話
  • 明け方まで、夢か現つか分からない時間を過ごした。 達した後も翠は悠斗の髪や肌への愛撫をやめなかった。 性衝動というよりも、ただ触れていたいばかりのようだった。 悠斗はうっとりとそれらを感じながら、だが知らぬ間に次の行為に引き込まれていた。そのうちに境界もなくなり、ただ漫然と戯れる。さすがに限界を迎えたか、翠は気絶したように眠り悠斗も微睡んだ。 目覚ましの代わりに翠の腹が鳴った。ごそごそと翠は起き出し、 [続きを読む]
  • カッコーの森 136
  • 正治との事や蒼から受けた仕打ちは言えない。 悠斗がそれらをどう捉えようと、世間的には虐待に過ぎない。 翠が自分に負い目を感じたならば、その愛情への信頼も揺らぐ。しかし本坂との事は出会いに嘘を交えれば告白できる。そして告白すべきなのだ。関係を続けたのは自分の意思なのだから。だが顔を上げる事が出来ない。 翠は悠斗の肩を揺すり続けた。最初激しかったそれは柔らかな波となる。 揺られながら悠斗は翠に全部を委ねれ [続きを読む]
  • カッコーの森 135
  • 新年。年賀状で利理の婚約を知った後か。 彼女が悠斗を忘れたという確信を得て、動き始めたのか。 悠斗は馨の気持ちを思い、隠された優しさに知らず微笑した。その笑みを勘違いして翠は少し怒った声で、 「そうだよ 俺はハメられたんだ」と言った。 「ちが……」 悠斗は勘違いを正そうとしたが、翠は話し続けた。 「お前 どう思った? あいつは全部知っていて 黙っていたんだ。 自分の目論見を優先させて 俺らが悩んでいるの [続きを読む]
  • カッコーの森 134
  • その手は悠斗の脚の間を割り、付属物の裏を撫でて後ろに回った。 指先が後孔を擽る。 「翠……」 「嫌か」 悠斗は首を振る。しかし脚を閉じて翠の腕を封じていた。 「嫌なのか」 「翠 こそ」 翠を見る。「翠こそ 平気なの。 何をしようとしているか 分かってるの」 「勿論?」 可笑しそうに目を輝かせ、少年のように答えた。 「……俺 翠にこんな事させちゃいけないと ずっと思っていた。 翠はこんな世界に来る人じゃないと [続きを読む]
  • カッコーの森 133
  • 教えられたホテルの部屋のドアを開けたものの、 悠斗はどうしていいか分からなかった。 迎えた翠にしどもどと産院に行った事を話し出した。 翠は黙って悠斗を抱き締める。 悠斗は声を呑み、翠の背中に手を回した。 最初はそっと。それから思い切り。 翠のまとう空気を胸いっぱいに吸い込んだだけで気が遠くなりそうだった。 夢か現実かも分からなくなる。 翠が悠斗の身体を押し戻そうとするのを首を振って拒む。 「お前が 知りた [続きを読む]
  • カッコーの森 132
  • 「……え? ……え?」 馨は肘を脇につけ、両掌を悠斗に向けた。 「殴っては駄目よ。私は大事な身体なんだから」 「ちょ ……ちょっと待てよ」 「待つのはいいけど 黙っても結局 悠は急かすわ」そうだ。先を聞かずにはいられない。だが気力は持ちそうになかった。それは肉体に及び、動悸も息切れも酷かった。それでも聞かずに帰って明かす夜を考えれば、 最後まで馨に喋らせるしかないのだ。 悠斗は何度か肩で息をし、それから [続きを読む]
  • カッコーの森 131
  • 身がもたないと思った。 前日も殆ど寝ていないのだ。ここに来るだけでも相当消耗している。その上立て続けに衝撃的な話を聞かされ、 表情を隠す事も取り繕う事も限界になっていた。それでもなんとか言葉を捻り出す。 「……翠は 兄弟だ。同い年で友だちみたいだけど 兄貴だ」 「嘘ね」 馨は愛しさを含んだ侮蔑で一蹴する。「他人だわ。 翠のブラコンっぷりに 私 中学校の同級生を辿って あなた達の同中の生徒から聞き出して貰 [続きを読む]
  • カッコーの森 130
  • つわりの馨を一度だけ見舞った。 思ったより元気そうで、 悠斗が持参した果物を早速食べていた。 「順調よ」と馨は言う。「年末には安定期に入るから」またおせちを作りましょうと言うが、朔子がそれを止めた。 朔子は幸せそうだった。クリーム色の毛布やタオルケットを悠斗に見せた。 翠が名前を考えるのが楽しいと言う。 自分の中の闇を自覚した悠斗には、それまで以上に翠が眩しく、より以上に疾しさも増し、 傍にいるだけで震 [続きを読む]
  • カッコーの森 129
  • ずっと翠の事を考えていた。 翠への一番の裏切り行為をしながら、翠の事を考えていた。 馨の肌の翠の痕跡に吸いついた後を悠斗はよく覚えていなかった。ひたすら翠を追い続けた。 馨に深く挿入した時ですら、翠の存在をそこに探していた。 放心の後、我に返って己れの行為に慄然とした。 馨は満ち足りた顔でシーツに埋もれていた。うっすらと目を開け、凍りついたままの悠斗の顔を見て、それでも共感を示す事無く再び目を閉じた。 [続きを読む]
  • カッコーの森 128
  • 「私 今日 排卵日なの」 漢字変換に手間取る。 変換しても分かったのは言葉の意味だけだった。 馨は皿をテーブルの中央に押し遣り、ソファから滑り落ちるように床に膝を着いた。 悠斗の足に手を伸ばして触れる。 「早く 子どもが欲しい というのは知ってるわね」 答えようとして声が出せない事に気づいた。 触れられた事で馨の意図が伝わったのか、全身が硬直していた。 「検査したの」 病院? 悠斗の視線に馨は頷いた。 「私 [続きを読む]
  • カッコーの森 127
  • 結局その話題はそこで切れ、 悠斗は鬱屈した気分のまま自分の部屋に戻った。 正月休みが終わり日常に還っても、 心の隅に翠たちの子どもの事が浮かぶ。 自分はその子を愛せるだろうか。 血の繋がりはない。ないが戸籍上の叔父になるのだ。この先何度も会う事になるし、抱き上げる機会もあるだろう。 心から可愛いと思えるだろうか。 悠斗には分からなかった。 朔子が予言したとおり、きれいな子どもが生まれるだろう。 両親と朔子 [続きを読む]
  • カッコーの森 126
  • 女たちの間に居場所はないような気がしたが、 悠斗にとっても使い慣れたキッチンである。ペティナイフでラディッシュに切り込みを入れているうちに、その場の空気に溶け込んでいった。 朔子と馨の会話に笑いながら、悠斗の気持ちは浮遊し始める。 翠とあんなに長く話したのは何年振りか分からない程だ。 大学受験と同時に心が離れ、その後ずっと距離を置いていた。 中高生の頃の他愛もない会話に比べ、内容は重かった。 語る翠の口 [続きを読む]