星鼠 さん プロフィール

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星鼠さん: 星砂糖
ハンドル名星鼠 さん
ブログタイトル星砂糖
ブログURLhttp://sirukyway.blog.fc2.com/
サイト紹介文BL小説ブログです。長編9本完結。新連載はキャラ重視。絡まり合う人間関係を描けたらと思います。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供225回 / 365日(平均4.3回/週) - 参加 2015/05/18 11:11

星鼠 さんのブログ記事

  • 消失点 65
  • 冬弥は力の抜けた猛の指から腕を抜き取り、そこに残る猛の感触を払うように手を振った。 「どうして ここで彼の名を出すのか分からない」 「お前が先だろう。お前が隆吾の事を言い出すから。……隆吾と颯太は似ているだろう」 言いながら冬弥の目を覗き込む。だが冬弥は反応を示さない。 「隆吾に執着しておきながら それがなぜ颯太じゃ駄目なんだ。 颯太がお前の事を好きだと分かって どうして拒む」 「拒んでいるわけではない [続きを読む]
  • 消失点 64
  • 「……違う」 「別に構わない。お前にどう思われようと俺は気にしない」 「違う」 猛は繰り返す。思考が整理できない。言葉に出来ない。だがその一言だけはどうしても伝えなくてはならない。そこに全てが集約されているからだ。「違う 瀬田」 「何が違う。俺の欲求が理解できないんだろう。 批判したいんだろう。お前に分かって欲しいなんて思わない」 「相手が男とか ……そういうんじゃない」 冬弥の攻撃的な態度に挑発されな [続きを読む]
  • 消失点 63
  • 給仕に付き添われるようにして羽月はフロアに戻った。 猛は冬弥の傍らに残った。 「こんなところで何をしている」 「俺の台詞だ」 ベストの袖ぐりから親指を入れて持ち上げ、それが給仕の制服である事を見せつけて猛は言い返す。 「……ああ そうか」まるで魂が抜けたようだった。 猛は冬弥の腕を掴むと脇のドアを押した。従業員の控室になっている。 洗面所に向かう客の目を避け、するりと入り込んで扉を閉める。 「弟か?」 冬 [続きを読む]
  • 消失点 62
  • 羽月は席を立つと兄の後を追った。フロアの端で追いついた。両手で兄の腕を掴む。 冬弥は反射的にその手を振り払った。 「まだ」 羽月は言った。「俺が嫌い?」 冬弥の目が僅かに見開かれたが、彼は歩き出す事で動揺を隠した。 洗面所に繋がる通路を大股に進んだ。羽月はその後ろを小走りに追う。 「ねえ?」 「何を言っている」 「否定するんだ? まだ を? 嫌い を?」 冬弥は立ち止まり、弟を振り返った。 羽月は兄を見つ [続きを読む]
  • 消失点 61
  • 瀬田の父親の方が話し掛けて来た。 「アルバイトかね?」 「はい」 猛は顔を強張らせる。何か失策をやらかしたのだろうか。 相手はそれを察し、笑って猛の緊張をほぐした。「大学生?」 「いいえ。高校生です。不慣れで。至りませんでしたでしょうか」 「そうじゃない。三年という事はないな? 二年生かい」 皿を手に猛は腰を伸ばした。「はい」その動きに合わせ男性も目線を上げるが、 不思議と見上げているという印象を与えな [続きを読む]
  • 消失点 60
  • 三人のテーブルは冷え切っていた。 母親が幾つか話題を出し、どれも盛り上がらないまま終わった。それはいつもの事なのだが、その日の母には落胆はあまり覗えなかった。 諸々の努力が空振りに終わる事を、ただ確かめているだけのように思えた。どこか大儀であるその様子は、 中期の終わりになろうとする妊婦のゆえなのか。 冬弥の素っ気ない答弁に向ける笑顔が能面のようなのも、 話題を繰り出す時の声にいつもの熱意が感じられな [続きを読む]
  • 消失点 59
  • 颯太に置き去りにされ、男にまで取り残されてしまった。こんな風に呆けるためにホテルに来たのではない。 猛は腹を立てたが、第一の目的である金は、テーブルの上に揃っている。それを掴んで部屋を出ればいいだけの話である。 「仕事」を免れた自由な夜が扉の外に待っている。しかし猛はシーツの上に再び寝転がった。 男に触れられた場所はまだ熱を宿している。 放置されるや、いたるところで疼き出す。 猛は男の軌跡を自分の指で [続きを読む]
  • 消失点 58
  • 「待てよ」 猛は慌てて割り込んだ。「本気にするなよ。 赤ん坊と高校生が似るわけないだろ? 間違えるわけないだろ」 「赤ん坊とはね。でも 家族はその子が生きていたらと思うんだ。その子が普通に育って高校生になっていたら こんな感じと思うんだ。 僕がそれだ。それなんだ。その りょうという子どもの成長した姿なんだ」そうかも知れない。いや、そうだろう。猛は思う。 一卵性とはいえ、成長すればそれぞれに個性も出て来 [続きを読む]
  • 消失点 57
  • 颯太は落ち着かなかった。 時間が経過するにつれ、すれ違った男性の事が気になって来た。 隆吾と全く無関係とも思えないのだ。 背が高い事から隆吾の親ではないと決めつけたけれど、 声の響きは似ていた。 颯太に詫びた時の表情も、単なるひと間違いのそれとどこか違った。ずっと深刻な、たとえば自分自身を責めるような。 仮に「りょう」ではなく「りゅう」だっとして、 実の息子を見誤ったのならばそれも道理だと言えなくもない [続きを読む]
  • 消失点 56
  • 一度ベッドに潜ってしまうと、なかなか出る事が出来ない。 冬の夕方、ベッドに他人の体温があるとなれば尚更である。それでも颯太は隆吾の腕を外して身体を起こした。 「まだ いいじゃないか」 「駄目だよ」 夕食は自宅でという母との約束だった。 朝からの雪に交通機関にも影響が出始めているかも知れない。 「泊まっていけたらな」 隆吾が呟く。 無理と分かっているので声に力はない。 颯太はベッドから降り、急いで身支度を [続きを読む]
  • 消失点 55
  • 秋は深まり、冬は確実に近づいていた。 12月の声を聞くと、人は誰も落ち着かなくなる。 大人たちは迫る年の瀬に。若者は最大のイベントに。 「あの仕事を紹介したのは私だから」と男は言った。 何を言い出すのかと猛が黙っていると「イヴに会えない事に文句は言えない」と続けた。いつものホテルの一室で、いつもの手順で猛を抱いた後だった。クリスマスだろうとどこでだろうと変わりはない。猛はそう言った。 男の目に浮かんだ [続きを読む]
  • 消失点 54
  • 冬弥は泡だて器をボールに投げ込んだ。まだ途中の生クリームに水を注ぎ、流してしまった。 先を作る気になれない。あの一件以来料理に対する熱意を失ってしまっていた。 颯太が毎日来ていたわけではない。週に一度がせいぜいだ。だがその一日が、毎日に張りを持たせていた。 颯太の喜ぶ顔を思い浮かべるだけで、どんな手順も面倒にならない。 創意も次々と湧いて出る。材料を見繕う目の輝きも違う。かつて貼っていた弟の写真の効果 [続きを読む]
  • 消失点 53
  • 傷心の颯太を励まそうと、猛はバイトの都合をつけ時間を作った。だが颯太はそれを断った。 「僕はいいよ。それより最近優香ちゃんと会ってないんじゃないの」 言われてみればそうである。前に母親らを訪問したのは夏休みだったか。 「隆吾くんと 約束 あるし」 猛がその気になったのを見越してか、ぼそりと颯太は言った。 既に母親たちの事に気がいっていた猛は、 自分が隆吾との約束に誘われない事に疑問を持たなかった。 逆に [続きを読む]
  • 消失点 52
  • 颯太と冬弥の間の不自然な緊張を、猛が気づかぬわけがなかった。 同じ教室にいて目を合わそうとしない。言葉を交わそうとしない。 4月の頃に戻ったかのようにすれ違いながら、だが決定的に異なるのは、意図して近づかないようにしている事だった。 猛は言問いたげに颯太を見るものの、目を逸らす颯太に切り出す事はしない。 一線を越える何かがあったという疑惑は完全には消せなかったが、 直感は違うと告げていた。 颯太が告白し [続きを読む]
  • 消失点 51
  • 射精まで無我夢中だった。 文字通り夢の中だった。 現つに戻り、隆吾は手の中の颯太を再認識する。 指をずらして先端を拭うと、濡れた感触が伝わった。そこに至るまでの行為が脳裏に瞬時に浮かんだ。 颯太をベッドに押し倒し、その時その場で欲求のままに衣類を乱した。 下半身を露出させた後に背後から挿入し、颯太の股間を弄った。 隆吾の性急な愛撫でも颯太は勃起し、 挿入時にあった筈の痛みにもそれは萎えなかった。 隆吾に握 [続きを読む]
  • 消失点 50
  • 颯太の重い口が開いた。「……嫌だと 言ったら?」 冬弥は一瞬虚を突かれる。駄目、ではなく「嫌」だったからだ。 「駄目」なら分かる。だが「嫌」というのは颯太の感情だった。 冬弥は一秒で立ち直る。 「君が教えてくれないのなら 当人を捉まえるしかないだろう。 校門の前で それとも駅で 待ち伏せる」その場面を想像するかのように颯太は一点を見据えている。やるせなく目を閉じ、首を振った。 「嫌だ」 「君が嫌でも」 「 [続きを読む]
  • 消失点 49
  • 隆吾の土産だという菓子を玩び、一口齧ったところで携帯が鳴った。 表示された名前は母のそれで、流れ出る声も当然彼女のものだった。 硬質だった響きが、生ぬるく崩れて届く。 「いずれ分かる事だから」 「何?」 苛立ちは隠さない。もう彼女の関心は要らない。 最愛の母は他の男の手に陥ちて汚れた売女となった。 「冬弥に 新しい家族が出来るの」 耳から電話機を離した。視界に入る程に遠く離し、顰めた目で見る。 拒絶しても [続きを読む]
  • 消失点 48
  • 隆吾が思い詰めた声で「ありがとう」と言った。 颯太は「お礼を言うのは僕たちの方だけど」と笑う。 「そうじゃなく」 「うん。分かってる」 颯太は真っ直ぐに隆吾を見る。だが隆吾は目を逸らしてしまう。 「俺 自分の卑劣さが悔しい。メールでも謝ろうとして謝れない。 何もなかったみたいな あんな書き方しか出来なかった」 「分かってる。隆吾くんが何も感じていなかったなんて思わない」 隆吾は失笑する。自嘲にも見える。 [続きを読む]
  • 消失点 47
  • 「分かった」 猛は言った。 「……何が」 颯太は声と肩を落として言った。 「お前の気持ちを全否定するつもりはない。お前の目には奴が魅力的に映るんだろう。それは仕方ない。でも そこで留まれ。深入りはするな」 「どういう意味」 「憧れのままで終われと言っているんだ。 瀬田に告白するとか 考えるな。どう転んでも傷つくだけだ」 「どう転んでも?」 颯太の目に彼らしからぬ光が宿る。険しく猛を見返した。 「それは 万 [続きを読む]
  • 消失点 46
  • その週末から猛は本格的にフレンチレストランに入った。 最初はテーブルセッティングと皿を下げるだけだったが、ひとり欠勤した事もあって皿の三枚運びも実践となった。 体力的には牛丼屋やカフェよりも楽であるのだが、疲労度は段違いだ。 日曜のランチタイムが終わる頃にはふらふらになっていた。 夕方の準備を手伝って夜のシフトの賄いに参加する。そして男の待つホテルへと向かった。 店での首尾報告と、勿論「仕事」も兼ねて [続きを読む]
  • 消失点 45
  • 菜々美は「怒らない?」と訊いたが、猛はそれを肯定も否定もしていなかった。だから怒ってもよかった。抗議してもよかった。しかし沸点を越えた怒りは感情を蒸発させ、気体となって猛を取り囲む。 猛はそれを呼吸するしかなかった。とはいえ、受け容れる事は出来ない。 同性と性的に関わるという現実を我が身に経験しておきながら、 颯太には認められなかった。 彼が「普通」である事が大事なのだ。 颯太自身が疎んでさえいる穏や [続きを読む]
  • 消失点 44
  • 中間テストが始まり、終わる。 最終日、猛は颯太を誘った。今日だけは空けてあるからと。だが颯太は困ったように押し黙る。 「他に?」 猛が問うと、颯太は頷いた。 隆吾ならばその場で猛も誘う筈だ。だが颯太は何も言わない。 誰と、と訊きかけて猛は「瀬田か」と言った。颯太は頷く。そして気不味げに目を逸らすのを見て、猛は苛立った。そんな権利もないと分かっていて、干渉せずにいられない。やきもちか? 独占欲か? 違う [続きを読む]
  • 消失点 43
  • 込み上げてくる哀しさを颯太は笑いに置き換える。まるで駄々っ子のようだと自分を嗤う。その色の飴じゃ嫌だ。その横にある飴が欲しい。ミルクの味の飴じゃなく刺激的な発泡の飴が。だが冬弥はもう颯太の掌に彼の飴を置いてしまった。 颯太に与えられるのはそれだけなのだ。それで満足しなければ全てを失うのだ。 分かっていて尚、抗う。 「隆吾くんは 瀬田くんの事 好きじゃない」 「そうだね」 冬弥はこともなげに言った。「そ [続きを読む]
  • 消失点 42
  • 「好き?」 訊き返す。だが問う相手は颯太ではなかった。 冬弥はその言葉を自分の中に入れているように見えた。 「うん 面白いね」 冬弥は言う。「そういう事になるのか」その様があまりに愉しそうで、颯太は眩暈を感じる。 違う。そうではない。あの時隆吾を求めた冬弥はそうではなかった。 恋愛を愉しんだり青春を謳歌するような、そんな甘さはなかった。 隆吾を貪り尽くすほどの激しさを湛えていた。 颯太の視線に気づき、冬 [続きを読む]
  • 消失点 41
  • 前夜も、その日も、何度携帯を開いたか分からない。メール画面を出しては白紙のまま閉じる。 授業中も上の空で、何を食べていても味はしない。 自分が普通に生活出来ている事自体不思議で、実感はなかった。 常に感じているのは颯太の肌である。より正確に言うならば、隆吾を包んだ肉壁である。もう一度と思うと同時に、もう二度とと思う。あんな風に颯太を泣かせるつもりはなかった。 彼が気づくまで、気づいて自ら望むまで待つつ [続きを読む]