星鼠 さん プロフィール

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星鼠さん: 星砂糖
ハンドル名星鼠 さん
ブログタイトル星砂糖
ブログURLhttp://sirukyway.blog.fc2.com/
サイト紹介文BL小説ブログです。長編。新連載はショタから始まり高校生ぐらいまで。甘かったりイタかったり。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供193回 / 365日(平均3.7回/週) - 参加 2015/05/18 11:11

星鼠 さんのブログ記事

  • 緑陰の底 4
  • 新しい楽しみがやって来た。ビニールプールだ。ある朝蓮治が邸を訪れると膨らませたそれが玄関前にあった。 「宿題を片づけたお祝いだ」 前日、蓮治はワークとドリルを終わらせていた。 飛び撥ねる蓮治の横で、幸彦は延ばしてきたホースで水を溜め始めた。 「暫くおけば 日向水になる」 「ひなた?」 「適当にぬるくなるって事だよ。さ それまで図工をやろう。 何を作るか決めて来たかい」 持って来た紙袋から空き箱と色画用紙を [続きを読む]
  • 緑陰の底 3
  • 「そう。君の家」 木々の葉で隠されてはいたが、その間から蓮治の家の玄関が見えた。 「冬にはもう少し見通せる。僕は 小さい蓮を知っている」 蓮治は窓枠に納まった我が家の風景を眺める。 貧相な木の額縁が似合う画だとはいえ、自分がその中にいる事が想像できない。だが確かにそこは蓮治がいつも通る玄関だった。 「最初は たまたまだった。何度か見かけるうちに気になり出す。 繰り返し見ていると もう他人の気がしない。 [続きを読む]
  • 緑陰の底 2
  • 「そう。君の家」 木々の葉で隠されてはいたが、その間から蓮治の家の玄関が見えた。 「冬にはもう少し見通せる。僕は 小さい蓮を知っている」 蓮治は窓枠に納まった我が家の風景を眺める。 貧相な木の額縁が似合う画だとはいえ、自分がその中にいる事が想像できない。だが確かにそこは蓮治がいつも通る玄関だった。 「最初は たまたまだった。何度か見かけるうちに気になり出す。 繰り返し見ていると もう他人の気がしない。 [続きを読む]
  • 緑陰の底 1
  • 隣家が三人暮らしという事はなんとなく知っていた。 苗字が「一条」である事も漢字が読めるようになって表札で知った。だがそれ以上の情報は蓮治の親からも伝わっては来なかった。 共働きの両親は忙しく、また近所づきあいにも熱心でなく、 更には隣家との落差が大き過ぎて挨拶をする気にもなれなかったのだろう。 一条家は広大な敷地を誇る洋館なのである。 高い門と庭の樹木で建物の全貌は分からなかったが、 庶民には敷地の広さ [続きを読む]
  • 白い影 最終話
  • 義武は立ち上がって渉を待った。 右肘を深く畳んで後ろに引き、力を溜める。 一歩の距離を残して立ち止まった渉に、義武はその一歩を踏み込んだ。 同時に、右腕を突き出す。渉の腹部にそれは鋭く突き刺さった。 渉は目を見開いて身体を二つに折った。その口から声が洩れるのを聞き、義武は手刀を作って頸部に水平に打ちつけた。 受け止めた渉の身体は全くの死に体で、重く圧し掛かる。 義武は落とさないよう、静かに床に横たえた。 [続きを読む]
  • 白い影 12
  • 渉の苦悩を義武は堪能した。 彼が折れるであろう事は分かっていた。そして実際そうなった。 約束の日、義武は花を持って訪れた。どういうつもりか、自分でもよく分かっていない。 渉は複雑な面持ちでそれを受け取ると、そのまま置いた。 椅子も飲み物も勧めず寝室に向かう。ベッドには既に彼が横たわっている。 反対側の壁に椅子が一脚用意されていた。 言われるまでもなく義武はそこに座る。それを見て渉は上着を脱いだ。上着だけ [続きを読む]
  • 白い影 11
  • 「服を脱いだら 浴室に入って」 渉は言った。 「シャワーなら浴びて来たぜ」 「中も流さなくちゃ」ああそう。頷いて一歩進んでから、その意味を解した。 怖気が込み上げてきたが、呑み込んだ。 浴室に入り、渉に言われるまま前傾姿勢を取る。 義武の身体に指一本触れないという渉の宣言は、ある意味残酷だった。 両手で「広げる」事まで自分でやらなければならないのだ。 洗浄用のノズルはまだいい。問題はスコープだった。 管の [続きを読む]
  • 白い影 10
  • 渉は尚も眼差しで訴え続けたが、義武の思考は回らなかった。 「ホール」 その視線に応えたくて義武は搾り出した。「って 何」 渉は意を決して唇を結び、ドールに手を伸ばした。 両手で両脚を広げ股間に右手を挿し入れる。ドールの腰が僅かに浮いた。 義武は咄嗟にドールの顔を見た。だがそこに苦悶の表情はない。あるわけがないと思いつき、渉に視線を戻す。その手はドールの股間から何かを引き出していた。 筒状と称するには歪 [続きを読む]
  • 白い影 9
  • そしてその日は来た。 義武はなんとなく改まった気分で渉の部屋を訪れた。 渉は彼を直接寝室に迎え入れた。 室内には前にはなかったハンガーパイプが置かれていて、 何枚もの服が下げられていた。 今は裸で寝かせてあるけれど、服を着せる事は勿論可能だし、 普段は椅子に座らせておくつもりだと渉は言った。 義武は服のブランドタグを見て口を窄めた。だが今はそれよりも先に、検分しなければならないものがある。ベッドの横に立 [続きを読む]
  • 白い影 8
  • 義武が浴室から出た時、DVDは梱包された上で紙袋に納められ、上に封筒が乗っていた。 手に取ると柔らかく温かな厚みを感じた。札束独特の、どこか有機的な質感。なんとなく額のあたりまでそれを上げた。 無事終わった事に安堵しつつ、どこか惜しいような寂しいような。 「まあ なんだ」 義武は言った。「それなりに面白かったよ」 渉は紙袋を見る。 「ちげえよ。それじゃない」 義武は言う。「モデル体験が だ」 「そう」 渉 [続きを読む]
  • 白い影 7
  • 義武が浴室から出た時、DVDは梱包された上で紙袋に納められ、上に封筒が乗っていた。 手に取ると柔らかく温かな厚みを感じた。札束独特の、どこか有機的な質感。なんとなく額のあたりまでそれを上げた。 無事終わった事に安堵しつつ、どこか惜しいような寂しいような。 「まあ なんだ」 義武は言った。「それなりに面白かったよ」 渉は紙袋を見る。 「ちげえよ。それじゃない」 義武は言う。「モデル体験が だ」 「そう」 渉 [続きを読む]
  • 白い影 6
  • 玄関の手前で立ち止まる。 義武は数秒遅れて後を追った。 「連絡を待っている。だがそんなに長くは待てない」 義武が靴を履くのを待って、渉はそう言った。その毅然とした態度は、 義武の嫌悪感を、それが表層に浮かび上がる前に握り潰していた。 義武は頷き、「じゃ」と言う。またと続けそうになって口を引き結ぶ。それでいながら、自分が再びこの扉を開ける姿を消せないでいた。エレベーターの下降に身を委ね、渉の部屋が天上に [続きを読む]
  • 白い影 5
  • 「じゃ ……じゃ 死んで……」 「死んではいない」 渉は言った。 義武は眩暈を覚える。 渉が犯罪者か精神異常者か。だがどちらも実感が伴わない。 「死体じゃない」 渉は言う。 「でも 息 してないんだろ。心臓も」 「動いていない。だが 最初から生きていないのだから死んでいる という表現は的確ではない」 言葉を咀嚼し唾液と共に飲み下した。それはつまり。「にん……ぎょう?」 渉は手を伸ばして横たわる肢体に触れた [続きを読む]
  • 白い影 4
  • だがそれきり黙り込んでしまった。 義武は渉を見る。見下ろしている。 渉は義武より全体に小柄だった。腕も細いが、肩も細い。 髪も首も、とにかく身体を構成するもの全てが細い。 神経も細いだろう。人づきあいも世渡りも苦手に違いない。かといって『芸術』とやらで食べているようでもない。 親がきっと裕福で、このマンションも多分親の持ち物だ。 金払いのよさからいって何の苦労もない身分だ。それでいながら彼を包むオーラは [続きを読む]
  • 白い影 3
  • なんだろう。なぜか抵抗を覚える。 穴の開くほど見つめられスケッチされたのだから、 今更同じじゃないかと思うのだが、消えかけた羞恥心が騒ぎ出す。 何をどう、どこをどう、どれくらいの長さ、どれくらいの距離で撮られるか。 「え もしかして 嫌?」カメラを手に渉は義武を見る。 無表情であるにも関わらず、玩具を取り上げられた子どもを思わせる。 義武は「いや 一概に駄目っつうんじゃなくて……」と口走っていた。 「フ [続きを読む]
  • 白い影 2
  • 画家でも美大生でもないという事なのか。まだ無名であるという事なのか。それともやっているのは画ではなく彫刻とか、そういう事か。いずれにしても自分には関係ない。金になればいいのだ。 座るなり立つなりしているだけで稼げるなら、そんな楽な事はない。 次回も同じ条件だと言っていた。モデル代として3万、あとは時給で計算。 受け取った番号に一週間後の同じ曜日、同じ時刻を返した。 5日ほどは空けたいと青年が言ったから [続きを読む]
  • 白い影 1
  • 一言で言えば「金が欲しかった」だ。 街中で声を掛けられてほいほいとついて行ったのは、だからだ。その青年は義武に「顔をスケッチさせて欲しい」と言った。 取り柄と言えなくもない容姿であるが、 整っているというだけで際立つ個性もなく、それを売り物で渡っていけるほどの代物ではない、と自惚れる事無く自覚している。その顔を「スケッチさせるだけで3万円」と言う。 掛かった時間は別枠で時給計算する。 破格の条件は胡散 [続きを読む]
  • 消失点 最終話
  • 翌日は実力テストなのだが、冬弥は料理の仕込みに専念していた。 材料を買い込み、そのひとつひとつを丁寧に下処理していく。 集中が途切れると首筋などが痛むが、 颯太の顔を思い浮かべればすぐに消えていった。だが浮かれてばかりはいられない。冬弥は口元を引き締めた。 颯太を招いたのは全てを打ち明けるためだった。 弟・羽月を含んだ家族の事。羽月に対する愛憎。 二分された感情を颯太と荒川隆吾に振り当てていたという事。 [続きを読む]
  • 消失点 79
  • そして新学期を迎えた。 始業式の朝、颯太は母親に起こされる事なく階下に降りた。きりりと身じまいを済ませた息子を母は驚いた顔で見る。どうしたの?と問う。 「新年だもの。今年は気を引き締めていこうと思う」 咄嗟に颯太はそう答えたが、緊張は冬弥ゆえであった。 年明けに猛と会って想いを貫く覚悟を決め、 隆吾とも会ってけじめをつけた。しかし冬弥との関係は実際には進展していない。どころか終業式以前より後退している [続きを読む]
  • 消失点 78
  • ソファをベッドに直した。 初めてそれをベッドとして使う。 冬弥は独り暮らしを始める時に、ソファベッドを選んだ自分を思い出す。 何を期待していたのだろう。 自分がこのソファで眠り、他の誰かが寝室のベッドを使う事。だが今日これを使うのは弟の羽月である。 「手伝う」 羽月が手を出した。 断ろうとしたが、その言葉が口から出る前に冬弥は身体を起こしていた。 広げるつもりだったシーツをソファに残し、 「じゃ 俺は掛布 [続きを読む]
  • 消失点 77
  • 「にいさんは いろいろ誤解している。きっと そうだ。 俺たちはそれを解かなくてはいけない。そのために 俺は来たんだ」 「話してみろ」 冬弥はテーブルの向かいに戻り、椅子に座った。 羽月も座り直す。 「にいさんは 父さんが俺を選んだと思ってる」 「離婚の時? ああ 実際そうなのだろう」 「父さんが俺を連れて行ってのは 消去法で俺が残ったからだ。 母さんがにいさんを欲しがる事は分かっていた」 「だが手の掛かる [続きを読む]
  • 消失点 76
  • 扉を開けると羽月が立っていた。インターホンで声と顔を確認した筈なのに、冬弥はまだ信じられなかった。 「どうして ……父さんは」 「父さんはもうアメリカに飛んだよ」 兄の身体の脇から室内を覗き、入れてくれないのかという顔をする。 冬弥は半歩退がりながら身体を斜めに捩って弟を通した。LDKを見回し、羽月は奥のドアを指差して兄を見た。 冬弥は「寝室だ」と首を振り、ダイニングテーブルの椅子を引く。 羽月は肩を竦め [続きを読む]
  • 消失点 75
  • 「僕も だから」 颯太は言う。「僕もそれは同じ。……だから」 隆吾から寄せられる想いを、自己肯定にすり替えて自分を保って来たけれど、その行為自体が間違っているのであって、愛情の動機は関係ない。 他者の気持ちに寄り掛かかって来た事が問題なのだ。 自分一人の足で立たない限り人を愛する資格など得られない。 隆吾との関係を終わらせなければ、次の一歩は踏み出せないのだ。 「ああ」 隆吾は何度も同じ返事を繰り返し [続きを読む]
  • 消失点 74
  • ここだと隆吾は片手を挙げた。 半月足らずの空白なのに颯太は隆吾との間に距離を感じた。それは隆吾にとっても同じで、ただ隆吾の方はいいようのない切なさで、だった。 一度は手に入れたと思った存在が、今は遠くに霞む。 颯太の身体が近づくにつれ、隔たりは強くなる。 「お母さん 元気だった?」 他に思いつく挨拶もなく、颯太はそう訊いた。 実際にそうでなくても隆吾には「うん」と答えるしか、ない。 父は詳細を母親に伝え [続きを読む]
  • 消失点 73
  • 涙が一筋頬を伝った。だがそれきりだった。 颯太は一度目線を外し、改めて猛を見る。「うん」どうせ僕なんか。猛が嫌う言葉だ。颯太は健気に笑って見せる。 猛は頷き返して言った。 「諦めるにはまだ早い。 俺には 瀬田が隆吾に一目惚れなんて信じられない。 瀬田が隆吾を好きになる理由が思いつかない。奴は何か勘違いしている。きっと何かある。その何かをお前が解き明かすんだ」 猛の真剣さは颯太を退かせた。 「もう口も聞い [続きを読む]