narikawayuichi さん プロフィール

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narikawayuichiさん: 認知症と美しい老後
ハンドル名narikawayuichi さん
ブログタイトル認知症と美しい老後
ブログURLhttp://narikawayuichi.jp
サイト紹介文緑協和病院院長の成川有一です。ブログ内で認知症のご相談をお受けしています。お気軽にご相談ください。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供395回 / 365日(平均7.6回/週) - 参加 2015/06/06 10:42

narikawayuichi さんのブログ記事

  • 霜月の夕暮れ(68)
  • その日を境に吉子は、伸枝が一人でやっている脳トレーニングに少しづつ関心を示し出した。8日目には自分でもやり出した。しかし2分間の集中力は続かず、1分間で投げ出した。それでも3問は覚えた。それなりの疲労を感じている様だった。2週間目には何とか2分間だけは集中出来て5問が覚えられた。伸枝は母の頬に自分の手を擦り寄せ、「お母さん、すごい。まだ若いんだ…やればどんどん出来る様になるよ」と、賛美を惜しまなかった。 [続きを読む]
  • 未知との遭遇「ヒミコ」
  • その日を境に吉子は、伸枝が一人でやっている脳トレーニングに少しづつ関心を示し出した。8日目には自分でもやり出した。しかし2分間の集中力は続かず、1分間で投げ出した。それでも3問は覚えた。それなりの疲労を感じている様だった。2週間目には何とか2分間だけは集中出来て5問が覚えられた。伸枝は母の頬に自分の手を擦り寄せ、「お母さん、すごい。まだ若いんだ…やればどんどん出来る様になるよ」と、賛美を惜しまなかった。 [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(67)
  • 医師の話しは続く…「現在の日本人は基本的な生きる指針を失っているのです。人は、どの様に生きてどの様に死んで逝くのか?…そこには何の規律も無いのです。規律が無いと云うのはルールの無い社会です。野球であろうと、サッカーであろうと、ルールがあるから面白いのです。ルールもなく、監督も無いゲームなんて普通は成立しないでしょう。だから日本人は死ぬ間際になって、あれこれと思い悩むのです。何の規律もないから…。胃 [続きを読む]
  • 遠い雪道
  • 医師の話しは続く…「現在の日本人は基本的な生きる指針を失っているのです。人は、どの様に生きてどの様に死んで逝くのか?…そこには何の規律も無いのです。規律が無いと云うのはルールの無い社会です。野球であろうと、サッカーであろうと、ルールがあるから面白いのです。ルールもなく、監督も無いゲームなんて普通は成立しないでしょう。だから日本人は死ぬ間際になって、あれこれと思い悩むのです。何の規律もないから…。胃 [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(66)
  • さらに医師は説明を続けた。「この脳トレーニングを学校の宿題かの様にお母さんに、ただ一方的に押し付けては駄目ですよ。先ずは貴女が率先してやって見せるべきでしょう!…『さあ、今日はどのくらい覚えられるかな。あっ、6つしか出来なかった。残念無念!…ねえ、お母さんも少しやってみる?』と云ったぐらいのテンションが必要なのです。ともかく毎日ゲーム感覚で実行して行くのが、この脳トレーニングの重要ポイントです。実 [続きを読む]
  • 雪山に淡き願い
  • さらに医師は説明を続けた。「この脳トレーニングを学校の宿題かの様にお母さんに、ただ一方的に押し付けては駄目ですよ。先ずは貴女が率先してやって見せるべきでしょう!…『さあ、今日はどのくらい覚えられるかな。あっ、6つしか出来なかった。残念無念!…ねえ、お母さんも少しやってみる?』と云ったぐらいのテンションが必要なのです。ともかく毎日ゲーム感覚で実行して行くのが、この脳トレーニングの重要ポイントです。実 [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(65)
  • 医師のやや高圧的な説明に、伸枝は少し反発を感じた。「先生の仰っている意味は理解出来ますが、そんな努力をする気力もなくなって行くのが年を取ると云う事ではないでしょうか?…プロ野球や相撲の世界でも皆んな引退して行く時は、気力が続かないと言って引き下がって行くじゃあないですか…!」彼女のそんな反論に、医師は少し鼻白(はなじろ)んだ。「万物の霊長と言っのは、少し大袈裟な説明だったかもしれませんね。ご気分を損 [続きを読む]
  • 山の彼方の空遠く
  • 医師のやや高圧的な説明に、伸枝は少し反発を感じた。「先生の仰っている意味は理解出来ますが、そんな努力をする気力もなくなって行くのが年を取ると云う事ではないでしょうか?…プロ野球や相撲の世界でも皆んな引退して行く時は、気力が続かないと言って引き下がって行くじゃあないですか…!」彼女のそんな反論に、医師は少し鼻白(はなじろ)んだ。「万物の霊長と言っのは、少し大袈裟な説明だったかもしれませんね。ご気分を損 [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(64)
  • 「そうですか、分かりました」と言って、沢本医師は伸枝のレポートを読み始めた。10分程して彼は目を上げ、「いゃあ感心しました。あなたが今まで実践して来た事は、正に認知症の生活療法そのものです。何か認知症の勉強をなさったのですか?」と少しばかり感動した様な面持ちで、伸枝の顔を見た。「はい、2冊ぐらいは認知症に関する本は読みましたが…」と、彼女は幾らか恥ずかし気に答えた。「そうでしたか、それにしても本を読 [続きを読む]
  • 季節は巡る「紅葉」
  • 「そうですか、分かりました」と言って、沢本医師は伸枝のレポートを読み始めた。10分程して彼は目を上げ、「いゃあ感心しました。あなたが今まで実践して来た事は、正に認知症の生活療法そのものです。何か認知症の勉強をなさったのですか?」と少しばかり感動した様な面持ちで、伸枝の顔を見た。「はい、2冊ぐらいは認知症に関する本は読みましたが…」と、彼女は幾らか恥ずかし気に答えた。「そうでしたか、それにしても本を読 [続きを読む]
  • 「霜月の夕暮れ(63)
  • 何にしても伸枝は、吉子との食生活にはかなり気を配った。自分の更年期障害と仕事上の板挟みから、吉子の食生活に暗い影を落とし、食欲低下に繋がったと云う深い自責の念があったから…。献立にも色々と配慮を重ねて、和食を中心としたメニューを数多く膳に並べた。さらに毎日の食事時間にも、ゆっくりと時間をかけて母の目を見ながら積極的な話しかけも怠らなかった。季節は夏が終わり、駆け足で秋も通り過ぎようとしていた。ある [続きを読む]
  • 秋の気配
  • 何にしても伸枝は、吉子との食生活にはかなり気を配った。自分の更年期障害と仕事上の板挟みから、吉子の食生活に暗い影を落とし、食欲低下に繋がったと云う深い自責の念があったから…。献立にも色々と配慮を重ねて、和食を中心としたメニューを数多く膳に並べた。さらに毎日の食事時間にも、ゆっくりと時間をかけて母の目を見ながら積極的な話しかけも怠らなかった。季節は夏が終わり、駆け足で秋も通り過ぎようとしていた。ある [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(62)
  • こうして母を田端の実家に退院させ、また新たな介護の1ページがスタートした。しかし、毎日病院に通うよりはずっと楽だった。朝も6時過ぎに起きて、ゆっくりと食事を作れば良かった。病院の時の様に食事の介助も母にだけ専念する必要はなく、一緒に食べれば良かった。ご飯は母の分は少し軟らか目にして、色々なお喋りを楽しみながら食べた。母は赤味噌が好きだったので味噌汁は赤だしが多かった。お新香に焼き魚それに卵焼きと栄養 [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(61)
  • 1ヶ月間の入院で吉子の食欲は、殆んど改善した。歩行能力は車椅子が中心であったものの、全粥は完食だった。担当医にも退院を勧められたので後は在宅介護に切り替える事にした。要介護度はⅢになって、ホームヘルパーの支援も以前よりは多く認められる様になっていた。伸枝にしても、そろそろ限界に達していた。肉体的にも経済的にも…1ヶ月間の入院費は個室料を含め80万円だった。吉子が入院中は田端の実家も掃除が行き届かず、か [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(60)
  • そんな両親の昔話を伸枝は童話の様に、それは「シンデレラとガラスの靴」でもあるかの如く吉子に話して聞かせた。その当時、日頃から寡黙な父ではあったが、酔った日などには上機嫌で昔話に花を咲かせる事も多かった。横で母は恥ずかしそうな顔をして、「もう止めなさいよ、年頃の娘の前で…そんな古い話しは!」と、よく諌(いさ)めていたが顔付きは満更でもない感じだった。伸枝の口から繰り返し聞かされる父親との話しに、吉子は [続きを読む]
  • 再度の美香子さんへの回答
  • 大丈夫ですよ。どの様にしたら貴女の正しい睡眠のメカニズムを取り戻せるかは一緒に考えてみましょう。きっと良い方法が見つかりますよ。 【ご質問】何度も申し訳ありません。あの後、息子とも話をして夜中は寝かせてくれるようになったのですが、やはり夜中2時頃に目が覚めて、その後は1時間おきに起きてしまいます。昼間はどうしても2時間くらい寝てしまいます。生活のリズムをつけようと外出もしているの [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(59)
  • その後はレインシューズのお金を「支払う」の「受け取らない」で少し揉めたが、この日を境に二人は急速に心を通わせて行った。仕事帰りには、殆んど毎日の様に吉子は田端の輝夫の元に立ち寄った。その半年後には早くも輝夫は吉子にプロポーズをした。クリスマスの日であった。輝夫は吉子を銀座の「エスコフィエ」に誘い、二人で白ワインを一杯づつ飲んだ後にリボンで結ばれた小箱を吉子の前に差し出した。吉子はわざと、「これ、な [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(58)
  • 「おや、まあ!…昨日のえ〜と原野さんでしたね。もう傘を返しにいらっしゃったのですか」と、輝夫は少し驚いた仕草をした。「はい、だってこの傘はあなたの物でしょう。もう直ぐ梅雨入りすると云うのに傘が無ければ困るでしょう?」それを聞いた輝夫は少し戯(おど)けて、「傘が無いって言われても、この店では傘を売っているんですよ!」「あら、そうでしたわね…」と、吉子も自分の迂闊(うかつ)さに気づいて、二人同時に目を合わ [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(57)
  • 翌日から伸枝は毎日の様に病院通いを始めた。入院5日目頃から吉子は少しずつ食べる様になって来た。食べるといっても五分粥をスプーンに一口とか二口とかである。その頃から部屋を個室にしてもらい、朝食から夕食まで全ての食事介助は伸枝一人でやった。会社には介護休業を申請した。朝7時には病院に着いて、病室のカーテンを開け、母の洗顔を済ませる。食事もスプーン一口から少しずつ増え10日目頃にはスプーン5口ぐらいまでは何 [続きを読む]