narikawayuichi さん プロフィール

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narikawayuichiさん: 認知症と美しい老後
ハンドル名narikawayuichi さん
ブログタイトル認知症と美しい老後
ブログURLhttp://narikawayuichi.jp
サイト紹介文緑協和病院院長の成川有一です。ブログ内で認知症のご相談をお受けしています。お気軽にご相談ください。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供393回 / 365日(平均7.5回/週) - 参加 2015/06/06 10:42

narikawayuichi さんのブログ記事

  • 霜月の夕暮れ(98)
  • 電話の向こうで俊治の微かに笑う声が聞こえる様だった。「まあ、2年間もお母さんの介護生活でお前も随分と大変な思いをしたのだから、それぐらいのご褒美があっても良いだろう」相変わらず俊治の声は優しかった。「所で今は何処にいるんだい?」「はい、昨日から九州の指宿に泊まっています。ここの『砂むし湯』が良いと聞いていましたから」「そうか、それは良かった。しかし指宿にまで行ったのなら、知覧の方に足を向けてみたら [続きを読む]
  • 知覧特攻平和会館
  • 電話の向こうで俊治の微かに笑う声が聞こえる様だった。「まあ、2年間もお母さんの介護生活でお前も随分と大変な思いをしたのだから、それぐらいのご褒美があっても良いだろう」相変わらず俊治の声は優しかった。「所で今は何処にいるんだい?」「はい、昨日から九州の指宿に泊まっています。ここの『砂むし湯』が良いと聞いていましたから」「そうか、それは良かった。しかし指宿にまで行ったのなら、知覧の方に足を向けてみたら [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(97)
  • 翌3月27日(金)も天候には恵まれた。伸枝は広島から九州の指宿(いぶすき)に向かった。広島から新幹線で鹿児島中央駅まで2時間20分、そこから指宿まで指宿枕崎線で1時間半、指宿の宿に着いたのは3時半だった。鹿児島の指宿に泊まるのは初めての体験である。宿は指宿白水館に予約してあった。旅行雑誌で目にした、名物の「砂むし温泉」を味わいたかった。湯の町、指宿にて心行くまで温泉三昧に浸りたかった。これから先の人生で、ここ [続きを読む]
  • 指宿「砂むし湯」
  • 翌3月27日(金)も天候には恵まれた。伸枝は広島から九州の指宿(いぶすき)に向かった。広島から新幹線で鹿児島中央駅まで2時間20分、そこから指宿まで指宿枕崎線で1時間半、指宿の宿に着いたのは3時半だった。鹿児島の指宿に泊まるのは初めての体験である。宿は指宿白水館に予約してあった。旅行雑誌で目にした、名物の「砂むし温泉」を味わいたかった。湯の町、指宿にて心行くまで温泉三昧に浸りたかった。これから先の人生で、ここ [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(96)
  • 3月26日の木曜も晴れだった。10時に岩惣をチェックアウトした。原爆ドームの近くに今夜のホテルは決めてある。3連泊の岩惣で伸枝の心のバランスは極めて良好となって来た。広島のデパートに立ち寄り、洋服と下着を少し買い求める。これまでの服や下着は静子の家に送ってしまう。ちょっとした土産物も忘れず、手紙も共に添えた。ダイワロイネットホテル広島に着いたのは2時半だった。部屋に荷物を置いて、すぐ原爆ドームに向かう。 [続きを読む]
  • 原爆ドーム
  • 3月26日の木曜も晴れだった。10時に岩惣をチェックアウトした。原爆ドームの近くに今夜のホテルは決めてある。3連泊の岩惣で伸枝の心のバランスは極めて良好となって来た。広島のデパートに立ち寄り、洋服と下着を少し買い求める。これまでの服や下着は静子の家に送ってしまう。ちょっとした土産物も忘れず、手紙も共に添えた。ダイワロイネットホテル広島に着いたのは2時半だった。部屋に荷物を置いて、すぐ原爆ドームに向かう。 [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(95)
  • 次の日、旅館での朝食を済ませ10時過ぎには外に出た。商店街で靴を一足買い求め、弥山まで歩いて行く事にした。片道90分間の道のりである。天候も良く、ちょっとしたハイキングには快適な日和であった。気温は13〜14°C程度であったが歩き始めて30分もしない間に全身に薄っすらと汗をかき始めて来た。自分の50才という年齢が意識されだした。「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし」そんな徳川家康の遺訓が思い出された。 [続きを読む]
  • 弥山からの展望
  • 次の日、旅館での朝食を済ませ10時過ぎには外に出た。商店街で靴を一足買い求め、弥山まで歩いて行く事にした。片道90分間の道のりである。天候も良く、ちょっとしたハイキングには快適な日和であった。気温は13〜14°C程度であったが歩き始めて30分もしない間に全身に薄っすらと汗をかき始めて来た。自分の50才という年齢が意識されだした。「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし」そんな徳川家康の遺訓が思い出された。 [続きを読む]
  • 青田さんへの回答
  • 私はこれまで2年間、認知症でお困りのご家族のご質問になるべく真摯に答えて来ました。その為に割かれる時間は膨大なものがあります。それでも医師として少しでも役に立ちたいとの思いを強くして、無料奉仕をしてまいりました。しかし、中にはかなり不躾な質問もあります。また本当にお困りの御様子が手に取って分かる様な、ご質問も多々あります。その様なご質問の時には、私は寝食を忘れ回答するようにしています。質問の内容、 [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(94)
  • ともかく日本人の好きな花の一番は「桜」が断トツで、次いで「バラ」と「チューリップ」が交互に2位を競い合っている。日本人は何故こんなにも「桜」が好きなのであろうか?満開の華やかさが良いからか、それとも散り際に儚さやもの悲しさを感じられるのか?あるいは日本人が持っているDNAがそう感じさせるからだろうか?いずれにしても桜は、咲いても散っても良いもんだ。そんな為か「桜」の詩歌は多い。【桜花今そ盛りと人は云へ [続きを読む]
  • 厳島大鳥居
  • ともかく日本人の好きな花の一番は「桜」が断トツで、次いで「バラ」と「チューリップ」が交互に2位を競い合っている。日本人は何故こんなにも「桜」が好きなのであろうか?満開の華やかさが良いからか、それとも散り際に儚さやもの悲しさを感じられるのか?あるいは日本人が持っているDNAがそう感じさせるからだろうか?いずれにしても桜は、咲いても散っても良いもんだ。そんな為か「桜」の詩歌は多い。【桜花今そ盛りと人は云へ [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(93)
  • 翌朝は6時に目が覚めた。よく晴れた気持ちの良い朝である。久しぶりに熟睡した満足感があった。7時半に朝食だ。赤だしの味噌汁が絶品である。それより、先ず箸からが違う。通常の角張った割り箸と違い、丸みのある上品な箸に湿り気を付けている。手にした箸の心地良い事、こんな所にまで神経を配らせてあるのだ。江戸末期創業の老舗旅館とは、ここまでこだわるものかと改めて感じ入った。朝食を終え10時には散策に出た。厳島神社が [続きを読む]
  • 厳島神社
  • 翌朝は6時に目が覚めた。よく晴れた気持ちの良い朝である。久しぶりに熟睡した満足感があった。7時半に朝食だ。赤だしの味噌汁が絶品である。それより、先ず箸からが違う。通常の角張った割り箸と違い、丸みのある上品な箸に湿り気を付けている。手にした箸の心地良い事、こんな所にまで神経を配らせてあるのだ。江戸末期創業の老舗旅館とは、ここまでこだわるものかと改めて感じ入った。朝食を終え10時には散策に出た。厳島神社が [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(92)
  • 朝10時に田端の実家を出て、宮島岩惣に着いたのは午後5時半だった。宮島港に着いて神社境内をぶらぶらしたり、紅葉谷公園で鹿に餌をやったりで1時間以上は道草を食った分だけ岩惣に着くのが遅くなった。元々が特別に急ぎのある旅行でもない。俊治と結婚して1年後に来た時のような「ときめき」の旅ではなかったが、4半世紀を経て「鎮魂」の旅を求めて来たのかもしれない。伸枝はボストンバックの中に2冊の詩集を入れていた。一冊は [続きを読む]
  • 宮島岩惣
  • 朝10時に田端の実家を出て、宮島岩惣に着いたのは午後5時半だった。宮島港に着いて神社境内をぶらぶらしたり、紅葉谷公園で鹿に餌をやったりで1時間以上は道草を食った分だけ岩惣に着くのが遅くなった。元々が特別に急ぎのある旅行でもない。俊治と結婚して1年後に来た時のような「ときめき」の旅ではなかったが、4半世紀を経て「鎮魂」の旅を求めて来たのかもしれない。伸枝はボストンバックの中に2冊の詩集を入れていた。一冊は [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(91)
  • 妹の静子から旅行の許しをもらっただけで、自分を取り巻く空気が少し楽になって来た。何処に行く当てがある訳でもないが、ともかく田端の実家から何日間は離れたかった。3月19日が手術予定日だったので、その経過だけは見届けたかった。2年前に右大腿頸部骨折を起こし、今回は左大腿頸部だ。手術経過と要領はほとんど弁(わきま)えているつもりであった。それ程の大手術でもない。予想通り、全ては順調だった。21日の土曜日に姉妹二 [続きを読む]
  • 宮島の桜
  • 妹の静子から旅行の許しをもらっただけで、自分を取り巻く空気が少し楽になって来た。何処に行く当てがある訳でもないが、ともかく田端の実家から何日間は離れたかった。3月19日が手術予定日だったので、その経過だけは見届けたかった。2年前に右大腿頸部骨折を起こし、今回は左大腿頸部だ。手術経過と要領はほとんど弁(わきま)えているつもりであった。それ程の大手術でもない。予想通り、全ては順調だった。21日の土曜日に姉妹二 [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(90)
  • 入院手続きを済ませ、伸枝は考えるともなく考えた。「何時までこんな生活が続くのだろうか!」無限のアリ地獄で、もがき苦しんでいるかの様な錯覚に襲われた。この2年以上、認知症状が見られて以来どれだけ入退院を繰り返している事だろうか。その度に認知機能が悪化し、伸枝の懸命な努力で何とか持ち直し、そしてまた入院で悪化する。自分の記者としての仕事も断念し、ひたすら母とのみ向き合って来た。それで何か報われるものが [続きを読む]
  • 一人旅
  • 入院手続きを済ませ、伸枝は考えるともなく考えた。「何時までこんな生活が続くのだろうか!」無限のアリ地獄で、もがき苦しんでいるかの様な錯覚に襲われた。この2年以上、認知症状が見られて以来どれだけ入退院を繰り返している事だろうか。その度に認知機能が悪化し、伸枝の懸命な努力で何とか持ち直し、そしてまた入院で悪化する。自分の記者としての仕事も断念し、ひたすら母とのみ向き合って来た。それで何か報われるものが [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(89)
  • すぐに吉子の目に懐かしい我が家が見えて来た。伸枝は車を玄関前で停め、母の手荷物を家の中へと運び入れ、その後は母を見守る様にして玄関の框(かまち)に座らせた。そして急ぎ車を車庫に入れ母のそばに戻った。わずか5分間ぐらいの時間であったが…「お母さん、寒くはなかった」と伸枝が声をかけたが、母は平気そうな顔をしていた。「じゃあ、お母さんゆっくり立ち上がってリビングに行きましょう」そう言って、伸枝は習慣になっ [続きを読む]
  • 青田さんへの回答
  • ビタミンB12と葉酸は赤血球もしくはヘモグロビンを作る重要な材料です。基本的には認知症治療法との意味づけはないと思います。ビタミンB1不足は認知機能を低下させる「ウェルニッケ脳症」として古くから多数の論文があります。「確かにある研究において、アルツハイマー型認知症の患者の脳では、ビタミンB12の量が健康な人の4分の1から6分の1と少ないという結果が報告がされました。この事から、ビタミンB12は脳の機能を正常に維 [続きを読む]
  • 失望の果て
  • ビタミンB12と葉酸は赤血球もしくはヘモグロビンを作る重要な材料です。基本的には認知症治療法との意味づけはないと思います。ビタミンB1不足は認知機能を低下させる「ウェルニッケ脳症」として古くから多数の論文があります。「確かにある研究において、アルツハイマー型認知症の患者の脳では、ビタミンB12の量が健康な人の4分の1から6分の1と少ないという結果が報告がされました。この事から、ビタミンB12は脳の機能を正常に維 [続きを読む]
  • 一成さんへの回答
  • ともかく77才のお母さまの認知機能が大幅に改善したと云うのは誠に喜ばしい限りです。プラズマロ―ゲンサプリメントの服用が、どの様に作用したのか私には不明です。長谷川スケール22〜23点 が28点にまで向上したと云うのは驚きよりは、感動的です。その要因の多くは一成さんのお母さまへの思いが一番でしょう。現実に、認知症患者さんを診て行く上でご家族の献身的な努力が最大の治療法である事は日々の診察でも、私が最も多く経 [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(88)
  • 2015年3月16日の月曜は曇り空で、外はまだ寒かった。前日の日曜日には母を迎える為に、伸枝は一日中家の掃除をしていた。吉子にとっては3ヶ月ぶりの我が家なのだ。エアコンと加湿器のフィルター掃除にも念を入れた。それ程大きな家でもないが、丹念に掃除を始めると切りがない。午前中に3時間、午後に3時間をかけて母の寝室とリビングの掃除、台所、風呂場そしてトイレの掃除だけは何とか済ませた。玄関前も掃き清めた。その後はス [続きを読む]