narikawayuichi さん プロフィール

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narikawayuichiさん: 認知症と美しい老後
ハンドル名narikawayuichi さん
ブログタイトル認知症と美しい老後
ブログURLhttp://narikawayuichi.jp
サイト紹介文緑協和病院院長の成川有一です。ブログ内で認知症のご相談をお受けしています。お気軽にご相談ください。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供396回 / 365日(平均7.6回/週) - 参加 2015/06/06 10:42

narikawayuichi さんのブログ記事

  • 霜月の夕暮れ(83)
  • 病院に着くや、救急専用口から直ぐに吉子は医師と看護師の手に委ねられた。酸素マスクを付けたまま胸部レントゲンとCTが撮られ、血液のガス分析も行われた。胸部レントゲンでは左肺野に炎症所見が認められ、CTでは左上葉に無気肺像と胸水の貯留が確認された。当直医師に伸枝は呼ばれた。「左気管支に餅の残片が詰まっている危険性があります。気管支鏡で除去するしかないのですが、現在の呼吸状態だと気管支鏡の使用そのものが困難 [続きを読む]
  • 疾走する魂
  • 病院に着くや、救急専用口から直ぐに吉子は医師と看護師の手に委ねられた。酸素マスクを付けたまま胸部レントゲンとCTが撮られ、血液のガス分析も行われた。胸部レントゲンでは左肺野に炎症所見が認められ、CTでは左上葉に無気肺像と胸水の貯留が確認された。当直医師に伸枝は呼ばれた。「左気管支に餅の残片が詰まっている危険性があります。気管支鏡で除去するしかないのですが、現在の呼吸状態だと気管支鏡の使用そのものが困難 [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(82)
  • 伸枝が押入れの中から急ぎ掃除機を運んで来た。和幸は掃除機先端のノズルを取り替え、口腔内の奥にこびり付いている餅の残片を吸い取る努力を幾度ともなく繰り返した。わずか10分ぐらいの出来事であったが静子は、一人茫然(ぼうぜん)と立ち竦んでいた。「こんな事が起こるのだ…!」目の前の事態に、静子は限りないショックを受けていた。ともかく代用品の掃除機で喉に詰まった餅の大半は取り除けたが、所詮(しょせん)は素人の荒療 [続きを読む]
  • 雪道の果て
  • 伸枝が押入れの中から急ぎ掃除機を運んで来た。和幸は掃除機先端のノズルを取り替え、口腔内の奥にこびり付いている餅の残片を吸い取る努力を幾度ともなく繰り返した。わずか10分ぐらいの出来事であったが静子は、一人茫然(ぼうぜん)と立ち竦んでいた。「こんな事が起こるのだ…!」目の前の事態に、静子は限りないショックを受けていた。ともかく代用品の掃除機で喉に詰まった餅の大半は取り除けたが、所詮(しょせん)は素人の荒療 [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(81)
  • 話が大きく脱線しているかもしれない。そろそろ2015年の正月に話を戻すべきだろう。田端の実家で伸枝は妹夫婦と久しぶりに夕食を共にしていた。静子の子供達は誰も来なかった。子供も大きくなると親と行動を一緒にするのを厭(いと)う様になって来る。せめて正月だけは家族全員が集まって一年間のあれこれを語り合うと云う風習は、都心では形骸化しているかもしれない。2013年からスタートした日銀黒田総裁の「異次元の金融緩和」を [続きを読む]
  • 妖精のごとく
  • 話が大きく脱線しているかもしれない。そろそろ2015年の正月に話を戻すべきだろう。田端の実家で伸枝は妹夫婦と久しぶりに夕食を共にしていた。静子の子供達は誰も来なかった。子供も大きくなると親と行動を一緒にするのを厭(いと)う様になって来る。せめて正月だけは家族全員が集まって一年間のあれこれを語り合うと云う風習は、都心では形骸化しているかもしれない。2013年からスタートした日銀黒田総裁の「異次元の金融緩和」を [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(80)
  • 確かに少しばかり理屈っぽいい所はあったが、自分の学歴を誇る様な所は全く見られない。性格もさっぱりしていて冗談もかなり言う。どうして、そんな彼に一度も恋愛体験がないのか不思議で仕方がない。「山口さん、少し失礼な事を聞いても良いですか?」「はぁ何でしょうか、改まって。厳しい質問は嫌ですよ」俊治は幾らか戯(おど)け気味に答えた。そう言われて伸枝は少し腰が引けたが、「これまでに一度も女性を好きになった事はな [続きを読む]
  • 恋せよ乙女
  • 確かに少しばかり理屈っぽいい所はあったが、自分の学歴を誇る様な所は全く見られない。性格もさっぱりしていて冗談もかなり言う。どうして、そんな彼に一度も恋愛体験がないのか不思議で仕方がない。「山口さん、少し失礼な事を聞いても良いですか?」「はぁ何でしょうか、改まって。厳しい質問は嫌ですよ」俊治は幾らか戯(おど)け気味に答えた。そう言われて伸枝は少し腰が引けたが、「これまでに一度も女性を好きになった事はな [続きを読む]
  • 青田克己さんへの回答(再々)
  • 「MCIと軽度認知症の違いは何でしょうか?」との、ご質問ですが、MCIの定義は次の通りです。【5つの定義】1.記憶障害の訴えが本人または家族から認められている2.日常生活動作は正常3.全般的認知機能は正常4.年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する5.認知症ではないMCIは、通常「軽度認知障害」と解釈されており長谷川スケールでは21点以上とされております。ですから「軽度認知症」をあえて定義づけ [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(79)
  • 伸枝はにこやかに頷いて、「そりゃそうですわね、東大生だったら家庭教師のバイトなら掃いて捨てるほどありますでしょうね」「ところが必ずしもそうでも無いんですよ、それが…」彼女は不思議そうに尋ねた。「あら、それはどうしてですの?」「貴女は、こんな言葉をご存知ですか…『名選手名監督にあらず』と言われる様に学業の成績の良い人間が、優秀な家庭教師に成れるとは限らないのです。特に天才肌の人には、この傾向が強いと [続きを読む]
  • 青田克己さんへの回答(再)
  • 先ず一番目のご質問、新薬『アデュカヌマブ』の治療効果の私の見解ですが、まだ論文しか読んでいませんので実際の所は確答は出来ません。その論文によりますと、治験では、米国とスイスの研究チームが60代から80代の初期アルツハイマー病患者165人を2つのグループに分け、一方の患者群に「アデュカヌマブ」という新薬を月1回、1年間接種し、同様に他方の患者群にプラセボ(偽薬)を接種した結果、アデュカヌマブを与えた患者の脳内 [続きを読む]
  • 1994年の渋谷
  • 先ず一番目のご質問、新薬『アデュカヌマブ』の治療効果の私の見解ですが、まだ論文しか読んでいませんので実際の所は確答は出来ません。その論文によりますと、治験では、米国とスイスの研究チームが60代から80代の初期アルツハイマー病患者165人を2つのグループに分け、一方の患者群に「アデュカヌマブ」という新薬を月1回、1年間接種し、同様に他方の患者群にプラセボ(偽薬)を接種した結果、アデュカヌマブを与えた患者の脳内 [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(78)
  • 伸枝は会社の退社時間が来ると、飛ぶように渋谷へと向かった。季節は夏から秋へと変わっていたが、まだ残暑は厳しかった。伸枝は自分の服装が幾らか気になり出していた。前回俊治と会った時と同じ濃紺のリクルートスーツで、洒落っ気がまるでない。でも、こんな急な呼び出しでは服の準備も何もあったもんではない。それでも知らぬ間に湧き上がる喜びは隠せなかった。前回の取材で彼女のもつ『東大卒』と云う彼へのイメージは大きく [続きを読む]
  • 青田克己さんへの回答
  • 先ずは10数年前までは、アルツハイマー型認知症が老人性認知症の中で50〜60%ぐらいの発生頻度であると言われていましたが、昨今では15〜20%ぐらいの頻度ではないかと言われています。未だ多くの医師のなかには古い統計数字から抜け出せない方も見られますが、認知症専門医の間ではアルツハイマー型認知症(ATD)より、レビー小体型認知症(DLB)の発生頻度は40〜50%と、はるかに高いと云う認識が拡がっています。また、それ以上にATDや [続きを読む]
  • 1985年の渋谷
  • 先ずは10数年前までは、アルツハイマー型認知症が老人性認知症の中で50〜60%ぐらいの発生頻度であると言われていましたが、昨今では15〜20%ぐらいの頻度ではないかと言われています。未だ多くの医師のなかには古い統計数字から抜け出せない方も見られますが、認知症専門医の間ではアルツハイマー型認知症(ATD)より、レビー小体型認知症(DLB)の発生頻度は40〜50%と、はるかに高いと云う認識が拡がっています。また、それ以上にATDや [続きを読む]
  • 残暑の候
  • 先ずは10数年前までは、アルツハイマー型認知症が老人性認知症の中で50〜60%ぐらいの発生頻度であると言われていましたが、昨今では15〜20%ぐらいの頻度ではないかと言われています。未だ多くの医師のなかには古い統計数字から抜け出せない方も見られますが、認知症専門医の間ではアルツハイマー型認知症(ATD)より、レビー小体型認知症(DLB)の発生頻度は40〜50%と、はるかに高いと云う認識が拡がっています。また、それ以上にATDや [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(76)
  • 「それでも文一に現役で合格なさったのでしょう。ご立派じゃあないですか」俊治は少し自嘲気味に、「結果から見ればそうですが、しかし自分の志望レベルを落としたと云う僕の挫折感は消えませんでした」「理三に行って、お医者さんにでも成りたかったのですか…!」「そう云う意味でも無いんですが、ただ日本で最難関の学部に行きたいと云った、今から考えれば子供じみた自尊心だけが強かったのです。でもその時の僕には大きな挫折 [続きを読む]
  • オックスフォード大学
  • 「それでも文一に現役で合格なさったのでしょう。ご立派じゃあないですか」俊治は少し自嘲気味に、「結果から見ればそうですが、しかし自分の志望レベルを落としたと云う僕の挫折感は消えませんでした」「理三に行って、お医者さんにでも成りたかったのですか…!」「そう云う意味でも無いんですが、ただ日本で最難関の学部に行きたいと云った、今から考えれば子供じみた自尊心だけが強かったのです。でもその時の僕には大きな挫折 [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(75)
  • 「素敵なお話しですね」と、伸枝はうっとりと囁く様に言った。俊治は少し酔ったのか、幾らか赤ら顔で…「ところが、世の中はそんな単純には行かないのですよ」「何かあったのですか?」「親父も含め皆んなが東大!…東大!…って言い出すと何故か急に成績が落ち始めたのです。歯を食いしばっても一人で東大に行くんだと頑張っていた時の方が気力が充実していたのでしょうね。皆んなの期待感が逆に大きなプレッシャーとなって、その [続きを読む]
  • 東大三四郎池
  • 「素敵なお話しですね」と、伸枝はうっとりと囁く様に言った。俊治は少し酔ったのか、幾らか赤ら顔で…「ところが、世の中はそんな単純には行かないのですよ」「何かあったのですか?」「親父も含め皆んなが東大!…東大!…って言い出すと何故か急に成績が落ち始めたのです。歯を食いしばっても一人で東大に行くんだと頑張っていた時の方が気力が充実していたのでしょうね。皆んなの期待感が逆に大きなプレッシャーとなって、その [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(74)
  • 俊治は一杯目の生ビールを飲み干し、二杯目を注文した。伸枝は一杯目の1/3ぐらいしか飲んでいなかった。俊治の話はさらに続いた。「つまり僕が言いたいのは、貧乏人の小倅がたまたま運に恵まれ東大に合格しただけの事なんですよ。大体が大学になんか行ける様な身分じゃあなかったんです。事実、親父は僕が大学に行きたいって言い出した時は呆れた顔で、家の何処にそんな金があるかって言ってましたから…一人で東京に出て大学に行 [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(73)
  • 「そうですか、大学の心理学の授業では鋭敏な女の直感は下手な学問を上回るって、講義を受けた事があるんですがね」伸枝は真顔になって尋ねた。「本当ですか?」「嘘です…」と言って、俊治は悪戯(いたずら)ぽっく笑った。「ひどい、お揶揄(からか)いになったのね」伸枝は少し涙ぐむ様にして俊治を睨んだ。「すみません、冗談が過ぎました。もしお許し頂けるなら何か美味しい物でも食べて機嫌を直してくれませんか。お詫びの印にど [続きを読む]
  • 東大安田講堂
  • 「そうですか、大学の心理学の授業では鋭敏な女の直感は下手な学問を上回るって、講義を受けた事があるんですがね」伸枝は真顔になって尋ねた。「本当ですか?」「嘘です…」と言って、俊治は悪戯(いたずら)ぽっく笑った。「ひどい、お揶揄(からか)いになったのね」伸枝は少し涙ぐむ様にして俊治を睨んだ。「すみません、冗談が過ぎました。もしお許し頂けるなら何か美味しい物でも食べて機嫌を直してくれませんか。お詫びの印にど [続きを読む]
  • 霜月の夕暮れ(72)
  • 1月も下旬になったが静子は益々学校に行かなくなっていた。数日前に一度学校に行って、静子は相手の先輩と話し合ったらしいが、その彼は…「俺の子供だと言う証拠があるのか?…もう直ぐ大学受験じゃあないか、変な噂を立てて俺の将来を傷付ける様な事はしないでくれ」と言われ、泣きながら静子は学校から帰って来て伸枝にだけ、その事を打ち明けた。その2日後に静子は子供を堕ろし高校を辞めてしまった。それから2週間近く静子は [続きを読む]