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ポケットの中で映画を温めて https://blog.goo.ne.jp/yasutu_1949

今までに観た映画などを振り返ったり、最近の映画の感想や、本その他も綴っていきます。

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2015/07/04

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  • 『哀れなるものたち』を観て

    『哀れなるものたち』(ヨルゴス・ランティモス監督、2023年)を観てきた。不幸な若い女性ベラは自ら命を絶つが、風変わりな天才外科医ゴッドウィン・バクスターによって自らの胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生する。「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられた彼女は、放蕩者の弁護士ダンカンに誘われて大陸横断の旅に出る。大人の体を持ちながら新生児の目線で世界を見つめるベラは時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく・・・(映画.comより)奇想天外なお話。だって、河に投身自殺した女性ベラを「フランケンシュタイン」と同じようにゴッド(ゴッドウィン)は蘇生させたんだから。その方法は、死んでいるベラの脳と生きていた自分の胎児の脳を入れ替えるやり方。ゴッドの実験研究は、弟子マックスに記録させてベ...『哀れなるものたち』を観て

  • 『ゴジラ-1.0』を観て

    やっと、『ゴジラ-1.0』(山崎貴監督、2023年)を観てきた。戦後の日本。戦争によってすべてを失い、文字通り「無(ゼロ)」になったこの国に、追い打ちをかけるように突如ゴジラが出現し、その圧倒的な力で日本を「負(マイナス)」へと叩き落とす。戦争から生きて帰ってきたが、両親を失い孤独の身になった青年・敷島は、焼け野原となった東京で、赤ん坊を抱えた若い女性・典子と運命的な出会いを果たす。彼ら戦争を生き延びた名もなき人々が、ゴジラに対して生きて抗う術を探っていく・・・(映画.comより)評判がいいから今でも上映しているこの作品、遅ればせながら観てきた。前提として、“ゴジラ”だから当然ワクワク感の期待があった。しかし、正直言って評判ほどの素晴しさは感じられなかった。なぜだろう。まず、出演者の演技過多、感情表現過多...『ゴジラ-1.0』を観て

  • 『落下の解剖学』を観て

    『落下の解剖学』(ジュスティーヌ・トリエ監督、2023年)を観てきた。人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。はじめは事故と思われたが、次第にベストセラー作家である妻サンドラに殺人容疑が向けられる。現場に居合わせたのは、視覚障がいのある11歳の息子だけ。証人や検事により、夫婦の秘密や嘘が暴露され、登場人物の数だけ<真実>が現れるが──。(公式サイトより)死亡した男性の不審死は、事故か、自殺か、他殺か、その真相を求めての法廷劇。そこで暴かれるのは、仲睦まじそうにみえた夫婦仲の間柄。考えてみれば、多少似たような夫婦間は世間では有りそうなことである。それが裁判にかかるとプライベートな事実を容赦なく剥き出しにされる。この作品を観て思うのは、物証のない裁判はいかに陪審員を説得させるかに係ってくるかということ。ここで...『落下の解剖学』を観て

  • 『瞳をとじて』を観て

    『瞳をとじて』(ビクトル・エリセ監督、2023年)を観てきた。映画「別れのまなざし」の撮影中に主演俳優フリオ・アレナスが失踪した。当時、警察は近くの崖に靴が揃えられていたことから投身自殺だと断定するも、結局遺体は上がってこなかった。それから22年、元映画監督でありフリオの親友でもあったミゲルはかつての人気俳優失踪事件の謎を追うTV番組から証言者として出演依頼を受ける。取材協力するミゲルだったが次第にフリオと過ごした青春時代を、そして自らの半生を追想していく。そして番組終了後、一通の思わぬ情報が寄せられた。「海辺の施設でフリオによく似た男を知っている」・・・(公式サイトより)ミゲルとフリオは若い頃、海軍の兵役仲間であり、当時ミゲルが治安紊乱罪で逮捕されると、無関係だったフリオも同居していたために連行された。...『瞳をとじて』を観て

  • 『夜明けのすべて』を観て

    『夜明けのすべて』(三宅唱監督、2024年)を観てきた。PMS(月経前症候群)のせいで月に1度イライラを抑えられなくなる藤沢さんは、会社の同僚・山添くんのある行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。転職してきたばかりなのにやる気がなさそうに見える山添くんだったが、そんな彼もまた、パニック障害を抱え生きがいも気力も失っていた。職場の人たちの理解に支えられながら過ごす中で、藤沢さんと山添くんの間には、恋人でも友達でもない同志のような特別な感情が芽生えはじめる。やがて2人は、自分の症状は改善されなくても相手を助けることはできるのではないかと考えるようになり・・・(映画.comより)PMSのためにイライラし怒りを爆発させる藤沢さんは前の職場でも居づらくなり、今では顕微鏡や天体望遠鏡を製造販売している家内工業的な会...『夜明けのすべて』を観て

  • 『カラオケ行こ!』を観て

    『カラオケ行こ!』(山下敦弘監督、2024年)を観てきた。中学校で合唱部の部長を務める岡聡実は、ある日突然、見知らぬヤクザの成田狂児からカラオケに誘われる。戸惑う聡実に、狂児は歌のレッスンをしてほしいと依頼。組長が主催するカラオケ大会で最下位になった者に待ち受ける恐怖の罰ゲームを免れるため、どうしても歌がうまくならなければならないのだという。狂児の勝負曲は、XJAPANの「紅」。嫌々ながらも歌唱指導を引き受ける羽目になった聡実は、カラオケを通じて少しずつ狂児と親しくなっていくが・・・(映画.comより)中3の合唱部の男の子とヤクザの組み合わせ。それも、歌がうまくなりたいためにヤクザの方が、男の子に下手に出て先生として丁寧に扱う。一般的に言えば、現実的にマァあり得ない交流の仕方なので、突飛過ぎてくだらないと...『カラオケ行こ!』を観て

  • 『ビヨンド・ユートピア 脱北』を観て

    『ビヨンド・ユートピア脱北』(マドレーヌ・ギャヴィン監督、2023年)を観てきた。韓国で脱北者を支援するキム・ソンウン牧師の携帯電話には、日々何件もの連絡が入る。これまでに1000人以上の脱北者を手助けしてきた彼が直面する緊急のミッションは、北朝鮮から中国へ渡り、山間部で路頭に迷うロ一家の脱北だ。幼い子ども2人と80代の老婆を含めた5人もの人たちを一度に脱北させることはとてつもない危険と困難を伴う。キム牧師の指揮の下、各地に身を潜める50人ものブローカーが連携し、中国、ベトナム、ラオス、タイを経由して亡命先の韓国を目指す決死の脱出作戦が行われる・・・(公式サイトより)凄い作品を、時間を忘れ一気に観させられたと言うのが率直な感想である。ドキュメンタリーとして映し出される緊迫した同時間的な流れ。観ている方も必...『ビヨンド・ユートピア脱北』を観て

  • 『コット、はじまりの夏』を観て

    『コット、はじまりの夏』(コルム・バレード監督、2022年)を観てきた。1981年、アイルランドの田舎町。大家族の中でひとり静かに暮らす9歳の少女コットは、赤ちゃんが生まれるまでの夏休みを遠い親戚夫婦のキンセラ家のもとで過ごすことに。寡黙なコットを優しく迎え入れるアイリンに髪を梳かしてもらったり、口下手で不器用ながら妻アイリンを気遣うショーンと子牛の世話を手伝ったり、2人の温かな愛情をたっぷりと受け、一つひとつの生活を丁寧に過ごしていくうち、はじめは戸惑っていたコットの心境にも変化が訪れる。緑豊かな農場での暮らしに、今まで経験したことのなかった生きる喜びに包まれ、自分の居場所を見出すコット。いつしか本当の家族のようにかけがえのない時間を3人で重ねていく・・・(公式サイトより)大家族とは言わないまでも、姉弟...『コット、はじまりの夏』を観て

  • アキ・カウリスマキ・6~『マッチ工場の少女』

    『マッチ工場の少女』(アキ・カウリスマキ監督、1990年)を再度観た。ヘルシンキの場末。イリスは、母と義父の三人で暮らす冴えない年頃の女性。マッチ工場に勤めているが、親は彼女の収入をあてにして働かず、家事までさせる始末。たまに化粧をしディスコに行ってみたりもするが、誰からも声をかけて貰えない。給料日、イリスはショーウィンドーで見かけた派手なドレスを衝動買いする。親に咎められ返品を命じられるが、かまわずドレスを着てディスコに行くと、アールネという男に声をかけられる。一流企業に勤める彼の豪華なアパートで一夜を共にする二人。アールネに惚れ、さらなるデートを取り付けようとするイリス。自宅へ招き両親にまで会わせるが、あの夜のことは遊びだったとアールネは告げる。後日、妊娠していたことを知ったイリスは、一緒に子供を育て...アキ・カウリスマキ・6~『マッチ工場の少女』

  • アキ・カウリスマキ監督作品

    1.『希望のかなた』を観て2.アキ・カウリスマキの『枯れ葉』を観て3.アキ・カウリスマキ・1~『コントラクト・キラー』4.アキ・カウリスマキ・2~『白い花びら』5.アキ・カウリスマキ・3~『ハムレット・ゴーズ・ビジネス』6.アキ・カウリスマキ・4~『真夜中の虹』7.アキ・カウリスマキ・5~『パラダイスの夕暮れ』アキ・カウリスマキ監督作品

  • アキ・カウリスマキの『枯れ葉』を観て

    『希望のかなた』(2017年)を最後に映画監督の引退宣言したアキ・カウリスマキだったので、次の作品はもうないと思っていたら、『枯れ葉』(アキ・カウリスマキ監督、2023年)が今、上映中と知り慌てて観てきた。北欧の街ヘルシンキ。アンサは理不尽な理由で仕事を失い、ホラッパは酒に溺れながらも、どうにか工事現場で働いている。ある夜、カラオケバーで出会った2人は、互いの名前も知らぬまま惹かれ合う。だが、不運な偶然と現実の過酷さが、彼らをささやかな幸福から遠ざける。果たして2人は、無事に再会を果たし、想いを通い合わせることができるのか・・・(MOVIEWALKERPRESSより)アンサはひとり住むアパートで、働いているスーパーマーケットからこっそり持ち帰った消費期限切れの惣菜で食事をする生活を送っている。片や、金属工...アキ・カウリスマキの『枯れ葉』を観て

  • 『PERFECT DAYS』を観て

    『PERFECTDAYS』(ヴィム・ヴェンダース監督、2023年)を観てきた。東京スカイツリーが近い古びたアパートで独り暮らしをする、中年の寡黙な清掃作業員・平山は、一見、判で押したような日々を送っている。毎朝薄暗いうちに起き、台所で顔を洗い、ワゴン車を運転して仕事場へ向かう。行き先は渋谷区内にある公衆トイレ。それらを次々と回り、隅々まで手際よく磨き上げてゆく。一緒に働く若い清掃員・タカシはどうせすぐ汚れるのだからと作業は適当にこなし、通っているガールズ・バーのアヤと深い仲になりたいが金がないとぼやいてばかりいる。平山は意に介さず、ただ一心に自分の持ち場を磨き上げる。作業をつづけていても、誰からも見て見ぬふりをされるような仕事。しかし平山はそれも気にせず、仕事をつづける・・・(Wikipediaより一部抜...『PERFECTDAYS』を観て

  • 『フィリピンパブ嬢の社会学』を観て

    来年2月から封切られる『フィリピンパブ嬢の社会学』(白羽弥仁監督、2023年)が、ご当地作品のために先行封切りされている。舞台が隣町ということもあって、興味津々の思いも絡んで観てきた。2010年代の愛知県。大学院で国際関係学を専攻する翔太は、在日フィリピン人を理解しようとの思いからフィリピンパブでのフィールドワークを思い立つ。研究計画を読んだ指導教員から好反応を得て、名古屋市の繁華街・栄にあるフィリピンパブへと足を踏み入れるが、そこは「ゆとり世代」の翔太の想像をはるかに超える「事情」を抱えたパブ嬢たちが待つ場所だった・・・(パンフレットより)翔太は修士論文の研究論文のために、見慣れないフィリピンパブへ足を踏み入れる。そこで接客してくれたのがミカ。翔太は研究のためにミカに質問責めをするが上手にはずらかされ、...『フィリピンパブ嬢の社会学』を観て

  • 『法廷遊戯』を観て

    1週間前になるが、『法廷遊戯』(深川栄洋監督、2023年)を観てきた。弁護士を目指してロースクールに通うセイギこと久我清義(きよよし)と、同じ学校で法律を学ぶ幼なじみの織本美鈴、2人の同級生でロースクールの学生たちが行う「無辜(むこ)ゲーム」と呼ばれる模擬裁判を司る天才・結城馨は、共に勉強漬けの毎日を送っていた。無事に司法試験に合格し、弁護士となった清義のもとに、ある時、馨から無辜ゲームをやろうという誘いがくる。しかし、呼び出された場所へ行くとそこには血の付いたナイフをもった美鈴と、すでに息絶えた馨の姿があった。この事件をきっかけに、3人をめぐる過去と真実が浮かびあがっていき、事態は二転三転していく・・・(映画.comより)結城馨はすでに司法試験に合格しているのに敢えてロースクールに残り、なぜ模擬裁判「無...『法廷遊戯』を観て

  • 清水宏・8~『蜂の巣の子供たち』

    最近、DVDを鑑賞して感想を書こうとしても下書きのままになってしまう。そんな中、先月、隣県で名作映画鑑賞会として上映された作品『蜂の巣の子供たち』(清水宏監督、1948年)を観てきた。復員兵の島村は、下関の駅で晋公たち戦災孤児に出会った。子供たちは叔父貴と呼ばれる男の手下となって盗みなどをしていたが、働くことの大切さを説く島村と一緒に旅するようになった。一行は、知人を訪ねて島に渡るという夏木弓子を船着き場で見送った。その時、義坊が彼女と一緒に船に乗っていってしまった。島村と子供たちは塩田で働いた後、広島で弓子と義坊に再会。島村は、自分がいた“みかへりの塔”で子供たちに勉強させてやりたいと弓子に語った。弓子は東京へ行くと言い、義坊も涙ながらに彼女と別れた・・・(「映畫読本清水宏」より一部抜粋)その後、島村と...清水宏・8~『蜂の巣の子供たち』

  • 『シチリア・サマー』を観て

    初めてオンライン試写会に当選したので、早速観てみた。題名は、『シチリア・サマー』(ジュゼッペ・フィオレッロ監督、2022年)。1982年、初夏の日差しが降りそそぐイタリア・シチリア島。バイク同士でぶつかり、気絶して息もできなくなった17歳のジャンニに駆け寄ったのは、16歳のニーノ。育ちも性格もまるで異なる2人は一瞬で惹かれあい、友情は瞬く間に激しい恋へと変化していく。2人で打ち上げた花火、飛び込んだ冷たい泉、秘密の約束。だが、そんなかけがえのない時間は、ある日突然終わることに──。(公式サイトより)観た後で感じたのは、甘い同性愛の感じを受ける公式サイトのストーリーの違和感。実際の内容は、ニーノの家族絡みの話であり、片やジャンニの家庭の内情。そこの辺りが十分に描かれている上での、ゲイであるジャンニに対する周...『シチリア・サマー』を観て

  • CLOSE/クロース

    『CLOSE/クロース』(ルーカス・ドン監督、2022年)を観てきた。花き農家の息子のレオと幼馴染のレミ。昼は花畑や田園を走り回り、夜は寄り添って寝そべる。24時間365日ともに時間を過ごしてきた二人は親友以上で兄弟のような関係だった。13歳になる二人は同じ中学校に入学する。入学初日、ぴったりとくっついて座る二人をみたクラスメイトは「付き合ってるの?」と質問を投げかける。「親友だから当然だ」とむきになるレオ。その後もいじられるレオは、徐々にレミから距離を置くようになる。ある朝、レミを避けるように一人で登校するレオ。毎日一緒に登下校をしていたにも関わらず、自分を置いて先に登校したことに傷つくレミ。二人はその場で大喧嘩に。その後、レミを気にかけるレオだったが、仲直りすることができず時間だけが過ぎていったある日...CLOSE/クロース

  • 『子供たちは見ている』を観て

    『子供たちは見ている』(ヴィットリオ・デ・シーカ監督、1943年)を、県図書館からDVDを借りてきて観た。中流家庭のアンドレアとニーナは、息子プリコと共にローマ郊外のアパートに住んでいた。家庭は一見幸福そうにみえたが、実はニーナにはロベルトという愛人がいた。その日もニーナは、プリコと散歩がてら公園に行き、プリコが人形芝居などに夢中になっている間を利用してロベルトと密会した。ニーナはそこで、ジェノヴァ行き列車で駆落ちしようとロベルトに迫られ、夜、アンドレアの留守を見計って家を出た。プリコを残されて困ったアンドレアは、取りあえず洋裁店を経営しているニーナの姉の許にプリコをあずけ、翌日、田舎に住む自分の母のところへ連れて行った。母は娘パオリーナにプリコの世話をいいつけたが、ある晩パオリーナが恋人と密会している時...『子供たちは見ている』を観て

  • 『悪魔の発明』を観て

    DVDで『悪魔の発明』(カレル・ゼマン監督、1958年)を観た。科学者のトマ・ロック教授とその助手アールは、新型爆弾の開発をしていた。しかし、完成まであとわずかなところで、彼らは何者かによって拉致されてしまう。事件の黒幕は大富豪のダルティガス伯爵。彼はロックの開発した爆弾を使って世界征服の野望を燃やす。ロックに爆弾の完成を急がせるダルティガス。一方、監禁されていたアールは世界中にSOSを発信するのだが・・・(DVDパッケージより)ロック教授の助手アールの冒険談として、物語は進む。場所は、大西洋航路にあるダルティガス伯爵の根拠地である死火山バックカップ島。ここにロック教授とアールが拉致されてくる。相手は伯爵のほかに、海底都市の設計者の科学者セルコと船長スペードたち。伯爵たちは、所有する潜水艦によって南大西洋...『悪魔の発明』を観て

  • 『青いカフタンの仕立て屋』を観て

    『青いカフタンの仕立て屋』(マリヤム・トゥザニ監督、2022年)を観てきた。モロッコの海沿いの旧市街、サレ。失われゆく当国の伝統を守る路地裏の小さな仕立て屋夫婦。父から受け継いだ仕立て屋で、極上のカフタンを制作する職人のハリム。昔ながらの手仕事にこだわる夫を支えるのは、接客担当の妻ミナだ。25年間連れ添った2人に子どもはいなかった。積み上がる注文をさばくために、2人はユーセフと名乗る若い男を助手に雇う。余命わずかなミナは、芸術家肌の夫を1人残すことが気がかりだったが、筋がよく、ハリムの美意識に共鳴するユーセフの登場に嫉妬心を抱いてしまう。湧き出る感情をなだめるように、ミナは夫に甘えるようになった。ミナ、ハリム、そしてユーセフ。3人の苦悩が語られるとき、真実の愛が芽生え、運命の糸で結ばれる・・・(公式サイト...『青いカフタンの仕立て屋』を観て

  • 『怪物』を観て

    『怪物』(是枝裕和監督、2023年)を観て来た。大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起きる。それはよくある子ども同士のケンカのように見えたが、当人たちの主張は食い違い、それが次第に社会やメディアをも巻き込んだ大事へと発展していく。そしてある嵐の朝、子どもたちがこつ然と姿を消してしまう・・・(映画.comより)上のあらすじは、本編を観たイメージと随分かけ離れていると思うが、自分であらすじを書き始めるのも面倒なのでそのまま載せた。要は、シングルマザーの麦野早織には小学5年2組の息子・湊がいて、二人は仲睦まじい親子である。その湊の言動で早織は、担任教師の保利から息子がいじめ、体罰を受けているとの疑念...『怪物』を観て

  • 『トリとロキタ』を観て

    『トリとロキタ』(ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟、2022年)を観てきた。ベナン出身のトリとカメルーン出身のロキタ。ふたりはアフリカからベルギーへたどり着く途中で出会い、強い友情の絆で結ばれていた。ロキタは、すでにビザが発行されているトリの姉と偽り、ビザを取得しようとしていた。トリとロキタはイタリア料理店の客に向けてカラオケを歌って小銭を稼いでいる。しかし、それは表向きで、実はシェフのベティムが仕切るドラッグの運び屋をしている。今日もベティムに指示され、ドラックを客のもとへと運ぶ。警察に目をつけられたり、常に危険と隣り合わせだ。ときに理不尽な要求もされる。それでも受け入れるしかない。人としての尊厳を踏みにじられる日々だが、トリとロキタは支え合いながら生活していた。ある日、ベルギーへの密航を斡旋...『トリとロキタ』を観て

  • 「大江健三郎」 氏の逝去の報に接し

    「大江健三郎」氏が亡くなったという。3月3日、老衰だとのことである。まだ88歳だったというのに。そう言えば、もう何年も近況の情報が聞けなかった。今現在、どのように過ごしてみえるのかと気にはなっていた。このブログ記事は書かないでおこうと思った。しかし、後々、大江はいついなくなってしまったのだろうと振り返ってみた場合のためにメモしておきたい。私が大江健三郎の作品に衝撃を受けたのは、家にあったそれこそ初期の全集の中の『奇妙な仕事』、『死者の奢り』を読んだのがきっかけだった。なぜ、学生がこのような作品を書けるのか、そのテーマの捉え方にとてもではないが想像を絶するものを感じた。私は大江よりそれこそ『遅れてきた青年』だったとしても、同じ20歳前後の人間として共感以上のものを感じた。それ以後、『われらの狂気を生き延びる...「大江健三郎」氏の逝去の報に接し

  • 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観て

    『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート監督、2022年)を観てきた。物語は、疲れ果てた主人公エヴリンの日常から始まる。経営するコインランドリーに監査が入り、国税局からイチャモンをつけられ、税金の申告をやり直さなければならなくなったのだ。故郷の中国からエヴリンの住むアメリカへやって来た父親は、相変わらず頑固で介護も大変。娘のジョイは元々反抗的な上に、恋人のベッキーの存在を理解しない母親に不満を抱いている。夫のウェイモンドは優しいが、優柔不断で頼りにならない。そんな中、国税庁で役人に絞られていると、突然夫が豹変。別の宇宙のウェイモンドだと名乗る彼はエヴリンに、「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と宣告!まさかと驚くエヴリンだが、悪の...『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観て

  • 『別れる決心』を観て

    『別れる決心』(パク・チャヌク監督、2022年)を観てきた。男が山頂から転落死した事件を追う刑事ヘジュンと、被害者の妻ソレは捜査中に出会った。取り調べが進む中で、お互いの視線は交差し、それぞれの胸に言葉にならない感情が湧き上がってくる。いつしかヘジュンはソレに惹かれ、彼女もまたヘジュンに特別な想いを抱き始める。やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに思えた。しかし、それは相手への想いと疑惑が渦巻く“愛の迷路”のはじまりだった・・・(公式サイトより)生真面目な性格である、釜山の警察署刑事・ヘジュン。妻はイポ市に住んでいて、週末に帰るという生活をヘジュンはしている。そんなある日、男が山頂から転落死する事件が発生する。ヘジュンは、その男の妻ソレをマークし秘かに監視する。だがその過程で、意識せずともソレの魅...『別れる決心』を観て

  • 『ケイコ 目を澄ませて』を観て

    『ケイコ目を澄ませて』(三宅唱監督、2022年)を観てきた。生まれつきの聴覚障害で両耳とも聞こえないケイコは、再開発が進む下町の小さなボクシングジムで鍛錬を重ね、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。嘘がつけず愛想笑いも苦手な彼女には悩みが尽きず、言葉にできない思いが心の中に溜まっていく。ジムの会長宛てに休会を願う手紙を綴るも、出すことができない。そんなある日、ケイコはジムが閉鎖されることを知る・・・(映画.comより)昨年12月からの上映で、もう二か月以上経つというのにまだやっていたので観てきた。聴覚障害のある女性がプロボクサーとして努力するということ。そこには健常者にはわからない並々ならないハンディや苦労が絡むはず。それをこの映画は、ケイコを主人公に捉え、その日常風景も写しながら、人生にたいする戸惑い...『ケイコ目を澄ませて』を観て

  • 『コンパートメントNo.6』を観て

    『コンパートメントNo.6』(ユホ・クオスマネン監督、2021年)を観てきた。時代は1990年代。モスクワに留学中のフィンランド人・ラウラは、下宿先である同性の大学教授・イリーナと恋愛関係にあった。二人は北極圏の街ムルマンスクのペトログリフ(岩面彫刻)を見に行く予定だったが、突然イリーナが断り、ひとりラウラは寝台列車に乗る。ラウラが指定席である二等客席の扉を開けると、そこには男が酔っ払いながら酒を飲んでいた。ロシア人の炭鉱労働者であるそのリョーハは、無作法な態度でラウラに絡んできた。最初は無視していたラウラだが、とうとうたまらず食堂車に逃げ込むのだった・・・個室列車でこんな無礼千万な男が同席になれば、誰だって、楽しいはずの旅が台無しになる。ましてやラウラは女性で、恋人イリーナが一緒でないために淋しい孤独な...『コンパートメントNo.6』を観て

  • 『逆転のトライアングル』を観て

    『逆転のトライアングル』(リューベン・オストルンド監督、2022年)を観てきた。モデルでインフルエンサーとしても注目を集めているヤヤと、目が出ない男性モデルのカール。美男美女カップルの2人は、招待を受けて豪華客船クルーズの旅に出る。船内ではリッチでクセモノだらけな乗客がバケーションを満喫し、高額チップのためならどんな望みでもかなえる客室乗務員が笑顔を振りまいている。しかしある夜、船が海賊に襲われ難破し、一部の者は無人島に流れ着く。食べ物も水も何もない極限状態のなか、これらの間に生き残りをかけた生存競争が生まれ・・・(映画.comより一部修正)カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した前作の『ザ・スクエア思いやりの聖域』(2017年)の印象を思い出すと、“チョットしんどかったな”という思いがあるので、今回のこの...『逆転のトライアングル』を観て

  • 『イニシェリン島の精霊』を観て

    『イニシェリン島の精霊』(マーティン・マクドナー監督、2022年)を観てきた。本土が内戦に揺れる1923年、アイルランドの孤島、イニシェリン島。島民全員が顔見知りのこの平和な小さい島で、気のいい男パードリックは長年友情を育んできたはずだった友人コルムに突然の絶縁を告げられる。急な出来事に動揺を隠せないパードリックだったが、理由はわからない。賢明な妹シボーンや風変わりな隣人ドミニクの力も借りて事態を好転させようとするが、ついにコルムから「これ以上自分に関わると自分の指を切り落とす」と恐ろしい宣言をされる・・・(オフィシャルサイトより)『スリー・ビルボード』の監督作品ということで、観なければと思い行ってきた。結果は、作品にどっぷり浸かることが出来、その内容の濃厚さに痺れた。日常的にコルムをパブに誘うパードリッ...『イニシェリン島の精霊』を観て

  • 『アナザーラウンド』を観て

    『アナザーラウンド』(トマス・ヴィンターベア監督、2020年)を観た。冴えない高校教師のマーティンと3人の同僚は、ノルウェー人の哲学者が提唱した「血中アルコール濃度を一定に保つと仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる」という理論を証明するため、実験をすることに。朝から酒を飲み続け、常に酔った状態を保つと授業も楽しくなり、生き生きとするマーティンたち。生徒たちとの関係も良好になり、人生は良い方向に向かっていくと思われた。しかし、実験が進むにつれて次第に制御がきかなくなり・・・(映画.comより)高校で歴史を教えているマーテイン、他に体育のトミーと音楽のピーター。そして、心理学のニコライ。どちらかと言うとうだつの上がらない4人の教師だが、仲がいい。その4人が血中アルコール濃度0.05%が理想という仮説の検証をし...『アナザーラウンド』を観て

  • 『スティーブ・ジョブズ』を観て

    『スティーブ・ジョブズ』(ダニー・ボイル監督、2015年)をDVDで観た。1984年、アップル新製品の発表会本番40分前。今日の主役のパソコンMacintoshが「ハロー」と挨拶するはずが、黙ったまま。「直せ」とスティーブ・ジョブズは冷徹に言い放つ。15分前、音声デモと格闘するアンディを脅し、突然胸ポケット付きの白いワイシャツを用意しろとジョアンナに命じ、共同創業者で親友のウォズニアックから頼まれたAppleⅡチームへの謝辞をはねつけるジョブズ。そして2分前、自ら連れてきた新CEOのスカリーと舞台袖で交わした会話とは・・・(DVDパッケージ裏のあらすじから)1976年、スティーブ・ジョブズは友人のスティーブ・ウォズニアックが自作したマイクロコンピュータ「AppleI」を販売するために起業することを決意し、...『スティーブ・ジョブズ』を観て

  • 『バルド、偽りの記録と一握りの真実』を観て

    『バルド、偽りの記録と一握りの真実』(アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督、2022年)を観てきた。ロサンゼルスを拠点に活躍する著名なジャーナリストでドキュメンタリー映画製作者のシルベリオ・ガマは、権威ある国際的な賞の受賞が決まり、母国メキシコへ帰ることになる。しかし、何でもないはずの帰郷の旅の過程で、シルベリオは、自らの内面や家族との関係、自らが犯した愚かな過去の問題とも向き合うことになり、そのなかで彼は自らの生きる意味をあらためて見いだしていく・・・(映画.comより)この作品は来月になればNetflixで配信されるが、イニャリトゥの最新作となれば観ておきたい気があって劇場へ行ってきた。結論から言うと、正直相当しんどかった。映像の面白さ、例えば幻想的な場面とかシュールな感じも漂わせたりするかと思えば、一...『バルド、偽りの記録と一握りの真実』を観て

  • 『ノベンバー』を観て

    『ノベンバー』(ライナー・サルネ監督、2017年)を観てきた。エストニアのとある寒村。貧しい村人たちの最大の悩みは、寒くて暗い冬をどう乗り切るかだ。村人たちは“使い魔クラット”を使役し、隣人から物を盗み合いながら、必死になって生きている。クラットは牛を鎖でつないで空中に持ち上げ、主人の農場に届ける。クラットは農具や廃品から作られたもので、操るためには「魂」が必要となる。「魂」を買うために森の交差点で口笛を吹いて悪魔を呼び出しては、取引をするのだ。悪魔は契約のために3滴の血を要求するのだが、村人たちはそれすら勿体無いと、カシスの実を血の代わりに使い悪魔をも騙す。時は「死者の日」を迎える11月1日。死者が蘇り、家に戻ってご馳走を食べ、貴重品が保管されているかを確認する。死んでもなお、欲深い村人たち。若くて美し...『ノベンバー』を観て

  • 『百万本のバラ』

    以前から加藤登紀子の歌で馴染みの『百万本のバラ』を、最近、他の歌い手で聴いていたりする。歌っているのはYOYOMI(パク・ユンア)【YouTubeより】ロシアのアーラ・プガチョワの持ち歌であるこの歌の内容は、グルジア(現ジョージア)の画家ニコ・ピロスマニがフランス人の女優マルガリータに恋をし、彼女の泊まるホテルの前の広場を花で埋め尽くしたという逸話をもとにしている。【YouTubeより】百万本のバラ/アーラ・プガチョワ原曲である「マーラが与えた人生」は、バルト三国のラトビアの作曲家ライモンド・パウルスがソ連統治時代の1981年に作曲した。アイヤ・ククレが歌唱する歌詞は、大国に翻弄されるラトビアの苦難を暗示する内容で、現在のウクライナ・ロシアの関係に通じる。【YouTubeより】マーラが与えた人生/アイヤ・...『百万本のバラ』

  • 『ふたりの女』を観て

    『ふたりの女』(ヴィットリオ・デ・シーカ監督、1960年)を観た。第二次大戦中、空襲が増すローマ。女手ひとつで食料品店をやり繰りするチェジラは、ひ弱な13歳の娘ロゼッタのために生まれ故郷に疎開しようと決意する。留守中の店の管理は、先立たれた夫の友人ジョヴァンニに託す。ジョヴァンニはチェジラに好意を抱いていて、チェジラは抗いながらもジョヴァンニに身体を許すことになる。生まれ故郷の村では、まだ食料困難までにはなっておらず、大勢の人が疎開して来ていた。その中の一人、青年ミケーレは何かとこの母娘に気を配ってくれ、ロゼッタはいつしか彼を慕うようになった。だが彼女は、ミケーレが母を愛していることに感づいていた。戦況はムッソリーニ政権が崩壊し、村を支配していたドイツ兵は逃走のための道案内としてミケーレを拉致して行った。...『ふたりの女』を観て

  • 『はちどり』を観て

    『はちどり』(キム・ボラ監督、2018年)を観た。1994年、ソウル。家族と集合団地で暮らす14歳のウニは、学校に馴染めず、別の学校に通う親友と遊んだり、男子学生や後輩女子とデートをしたりして過ごしていた。両親は小さな店を必死に切り盛りし、子供達の心の動きと向き合う余裕がない。ウニは、自分に無関心な大人に囲まれ、孤独な思いを抱えていた。ある日、通っていた漢文塾に女性教師のヨンジがやってくる。ウニは、自分の話に耳を傾けてくれるヨンジに次第に心を開いていく。ヨンジは、ウニにとって初めて自分の人生を気にかけてくれる大人だった。ある朝、ソンス大橋崩落の知らせが入る。それは、いつも姉が乗るバスが橋を通過する時間帯だった。ほどなくして、ウニのもとにヨンジから一通の手紙と小包が届く・・・(公式サイトより)ウニの家族の描...『はちどり』を観て

  • 『まぼろしの市街戦』を観て

    『まぼろしの市街戦』(フィリップ・ド・ブロカ監督、1967年)を観た。1918年10月。第一次世界大戦末期の北フランスの小さな町でのこと。イギリス軍に追撃されたドイツ軍は、その田舎町から撤退する際に、イギリス軍を全滅させるため村のある場所に大型の時限爆弾を仕掛けていった。イギリス軍司令官は、町に潜入し爆弾の時限装置の解除する役目を、たまたまフランス語が出来るというだけの理由で、通信兵である伝書バト係のスコットランド人、プランピック二等兵に命令する。町に侵入したプランピックは、残留していたドイツ兵と鉢合わせになってしまい、たまたま開門していた精神病院に逃げ込む。そこでは、老若男女の患者たちが戦争をよそに、楽しげにトランプ遊びをしていた。彼らに名前を聞かれたプランピックは、適当に“ハートのキング”と自称したこ...『まぼろしの市街戦』を観て

  • 『キャット・ピープル』(1942年)を観て

    『キャット・ピープル』(ジャック・ターナー監督、1942年)を観た。ニューヨークのセントラル・パーク動物園。セルビア出身でイラストレーターのイレーナが黒ヒョウをスケッチしながらクズを出したところ、通りがかった船舶設計師のオリバーが拾う。イレーナは、快活なオリバーに心を許し、家まで送ってくれた彼にお茶を振る舞う。その後、二人はお互い恋愛感情を抱き、やがて結婚にたどり着いたが、イレーナには秘かな悩みがあった。彼女の生まれたセルビアの小さな村は、昔から呪われた魔女の村として、嫉妬や欲望を持つ者はヒョウに変身すると言われていた。イレーナの父は森で不審な死に方をし、それが元で母親は猫女と罵られていた。そのためにイレーナはいじめのトラウマを持っていた。オリバーとイレーナは、結婚してからも寝室は別々のままであった。イレ...『キャット・ピープル』(1942年)を観て

  • 『黒い牡牛』を観て

    『黒い牡牛』(アービング・ラッパー監督、1956年)を観た。メキシコの田舎の貧しい農家に育ったレオナルド少年。母の葬式を終えた晩、落雷で倒れた大木の下敷きで死んだ母牛のそばに、生まれたばかりの黒い子牛をみつけて家に連れ戻る。父親から育てることを許可を得て、闘牛用の猛牛の子にも拘らず“ヒタノ(ジプシー)”と名付けられた子牛は少年によくなついた。だが「ヒタノは雇主である牧場主の所有だから烙印を押さねばならぬ」と父親から聞かされたレオナルドは、学校の先生の助けを借り牧場主に手紙を送る。それを読んだ牧場主は、子牛をレオナルドに譲ると約束した。2歳を迎えたヒタノは、逞しく育ち、闘牛用のテストにも勇猛ぶりを見せた。たまたま、レオナルドが学校を卒業した日、牧場主は自動車レースによる不慮の事故死をする。やがて牧場主の財産...『黒い牡牛』を観て

  • ジャン=リュック・ゴダール監督の逝去の報に接し

    ジャン=リュック・ゴダール監督が9月13日死去したと報道された。91歳だった。十代の頃、それこそ夢中になった監督である。フランソワ・トリュフォーと共にヌーベルバーグを代表するゴダールを知って、初めて観た作品は何だったかと記憶を遡る。『気狂いピエロ』(1965年)を封切りで観た時には、もうゴダールの作品を2番館、3番館で観ていたので何が最初なのかはよくわからない。それらの作品は、『女は女である』(1961年)、『女と男のいる舗道』(1962年)、『軽蔑』(1963年)、1963年公開の『小さな兵隊』。そして、『恋人のいる時間』(1964年)、『アルファヴィル』(1965年)。もっとも『勝手にしやがれ』(1960年)は案外、後の方で観たと記憶している。大半の内容をもう忘れてしまっているけれど、中でも『女と男の...ジャン=リュック・ゴダール監督の逝去の報に接し

  • アキ・カウリスマキ・5~『パラダイスの夕暮れ』

    『パラダイスの夕暮れ』(アキ・カウリスマキ監督、1986年)を観た。ゴミ収集人で独身のニカンデルは、毎日同じ仕事の繰り返しでも真面目に働いている。ある日年上の同僚から、独立してこの仕事を起ち上げようと誘われる。その日、うっかり腕に怪我をしたままスーパーに行ったニカンデルは、それを見たレジ係のイロナに手当てをしてもらう。独立に気乗りしたニカンデルは、英語リスニング教室まで通い出したが、勤務中同僚は、突然に心臓発作で亡くなってしまう。ショックを受けたニカンデルは、飲食店で大量に酒を飲んで暴れ、その挙げ句、留置場の厄介になる。留置場を出たニカンデルは、職場に掛け合って、同室だった失業中の男メラルティンを採用してもらい、二人はコンビとしてゴミ収集をし出す。スーパーのゴミ収集時、裏口にいたイロナを見たニカンデルは、...アキ・カウリスマキ・5~『パラダイスの夕暮れ』

  • 『回転』を観て

    『回転』(ジャック・クレイトン監督、1961年)を観た。ミス・ギデンスは、ロンドンの裕福な男性から甥と姪のための家庭教師として採用される。郊外の古い屋敷に到着したギデンスを、幼いフローラと世話人のグロース夫人が迎えた。少し経って、寄宿学校を退学させられた兄のマイルスが屋敷に戻ってくる。兄妹はギデンスになつき平穏な日々が続いていたが、ある日、庭から屋敷の塔を見上げたギデンスは、いるはずのない男が彼女を見下ろしているのに気づき、そこに行くとマイルスだけがいた。数日後、夕方に突然フローラがいなくなり、ギデンスが池の端まで探しに行くと、池の草むらの向こうに黒衣の女が立っていた。やがてギデンスは、屋敷で何かと不気味な人影を目撃するようになり、また、兄妹の行動にも割り切れぬものがあると気づかされる。そのためギデンスは...『回転』を観て

  • 『映画はアリスから始まった』を観て

    『映画はアリスから始まった』(パメラ・B・グリーン監督、2018年)を観てきた。ハリウッドの映画製作システムの原型を作った世界初の女性映画監督アリス・ギイの生涯に迫るドキュメンタリー。世界初の劇映画「キャベツ畑の妖精」など監督・脚本家・プロデューサーとして1000以上もの作品を手がけ、クローズアップ、特殊効果、カラー映画、音の同期といった現在の標準的な映画製作技法を数多く生み出したアリス・ギイ。リュミエール兄弟やジョルジュ・メリエスと並ぶ映画黎明期のパイオニアでありながら、これまで映画史から忘れ去られてきた。ベン・キングズレー、ジュリー・デルピー、アニエス・バルダ、マーティン・スコセッシといった映画人や、生前のアリス自身へのインタビューや、彼女の親族へのインタビュー、未編集映像などを通し、その功績と人生を...『映画はアリスから始まった』を観て

  • 『天国にちがいない』を観て

    『天国にちがいない』(エリア・スレイマン監督、2019年)を観た。スレイマン監督は新作映画の企画を売り込むため、故郷であるイスラエルのナザレからパリ、ニューヨークへと旅に出る。パリではおしゃれな人々やルーブル美術館、ビクトール広場、ノートルダム聖堂などの美しい街並みに見ほれ、ニューヨークでは映画学校やアラブ・フォーラムに登壇者として招かれる。友人である俳優ガエル・ガルシア・ベルナルの紹介で映画会社のプロデューサーと知り合うが、新作映画の企画は断られてしまう。行く先々で故郷とは全く違う世界を目の当たりにするスレイマン監督・・・(映画.comより)まず登場人物の主役は、スレイマン監督本人であるということ。その本人である人物が、ナザレの自宅、パリ、ニューヨークの町並みの中で、景色を見、そこの人々を見、多少の関わ...『天国にちがいない』を観て

  • アキ・カウリスマキ・4~『真夜中の虹』

    『真夜中の虹』(アキ・カウリスマキ監督、1988年)を観た。フィンランドの北の地の鉱山で働いてきたカスリネンと父だったが、閉山となり仕事がなくなってしまった。父はカスリネンにキャデラックを譲り自殺してしまう。カスリネンは有り金を全部下ろし、仕事を求めて南の地に向かってキャデラックを走らせる。途中、ハンバーガーを買うための財布を見た地元の二人組がカスリネンを殴り、その有り金すべてを奪って逃げてしまう。仕方なくカスリネンは日雇い仕事を始め、その日の食べ物と教会宿泊所に寝る場所を求める。そんなある日、駐車違反を取り締まり中の女性イルメリと出会う。二人は食事に行き、その日はイルメリの家に泊まる。イルメリは夫と離婚して息子リキと暮らしていて、家のローン返済のためにいくつもの仕事を掛け持ちしていた。カスリネンは仕事を...アキ・カウリスマキ・4~『真夜中の虹』

  • 『恋人たちの場所』を観て

    『恋人たちの場所』(ヴィットリオ・デ・シーカ監督、1968年)を観た。アメリカから、ある豪華な別荘に洒落た身なりの女性ジュリアがやって来る。そして彼女は、空港で会ったイタリア人のバレリオのことを思い返す。バレリオは主婦であるジュリアに一目で夢中になり、住所と電話番号のメモを渡していた。別荘の部屋でテレビを付けたジュリアは、オートレース・エンジニアの彼が出ているのを見て、教えて貰った番号に電話する。ジュリアは、別荘にやって来たバレリオを相手に、理由も告げずに2日間だけの恋愛を許す。そして二人は親密になり、いつしか逢瀬を重ねて行き・・・男性がマルチェロ・マストロヤンニで、女性がフェイ・ダナウェイ。この二人がのっぴきならぬ思いで愛を交わす。ただ観客からすると、状況説明が不足していてどうもその愛がシックリ来ない。...『恋人たちの場所』を観て

  • アキ・カウリスマキ・3~『ハムレット・ゴーズ・ビジネス』

    『ハムレット・ゴーズ・ビジネス』(アキ・カウリスマキ監督、1987年)を観た。大企業の社長の座を自分のものにするため弟クラウスは、社長の飲み物に毒薬を垂らす。社長は亡くなり、その妻と愛人関係のクラウスは重役のポロニウスと結託する。ポロニウスは、会社株の51%を所有することになった社長の息子ハムレットを骨抜きにしようと娘オフェリアを近づかせる。案の定、ハムレットはオフェリアに夢中になり、だがオフェリアは“結婚するまでは”と身体を触らせない。ハムレットの母と再婚したクラウスは社長となり、この会社を利用して多額の保険金を搾取しようと企む。一方、ノホホンとした感じのハムレットは、会社のことはよくわからない振りをして、実はこの計画を盗聴していた。そんなある夜、ハムレットの前に父の亡霊が現われ、毒殺されたから自分の仇...アキ・カウリスマキ・3~『ハムレット・ゴーズ・ビジネス』

  • 『君を想い、バスに乗る』を観て

    『君を想い、バスに乗る』(ギリーズ・マッキノン監督、2021年)を観て来た。最愛の妻を亡くしたばかりのトム・ハーパーはローカルバスのフリーパスを利用してイギリス縦断の壮大な旅に出ることを決意する。行く先々で様々な人と出会い、トラブルに巻き込まれながらも、妻と交わしたある“約束”を胸に時間・年齢・運命に抗い旅を続けるトム・・・(オフィシャルサイトより)オフィシャルサイトほか映画紹介サイトでは、なぜトムが決心しこのような旅をするのか、その目的を先に知らしてしまっている。作品では、その最終目的をラスト近くまで明かしていないのに無神経なことをするなぁと思い、その部分はカット。妻を亡くした90歳のトム・ハーパーは50年暮らしたスコットランド最北端の村ジョン・オ・グローツから、イギリス最南端の岬ランズ・エンドを目指し...『君を想い、バスに乗る』を観て

  • 『ベイビー・ブローカー』を観て

    今日封切られた是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』(2022年)を観て来た。古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョンと、〈赤ちゃんポスト〉がある施設で働く児童養護施設出身のドンス。ある土砂降りの雨の晩、彼らは若い女ソヨンが〈赤ちゃんポスト〉に預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく白状する。「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、彼らを検挙するためずっと尾行していた刑事スジンと後輩のイ刑事は、是が非でも現行犯で逮捕しようと、静かに後を追ってい...『ベイビー・ブローカー』を観て

  • アキ・カウリスマキ・2~『白い花びら』

    『白い花びら』(アキ・カウリスマキ監督、1998年)を観た。フィンランドの小さな村でキャベツを作る幸せな夫婦、ユハとマルヤ。ある日、村にシェメイッカと名乗る男が車で通りかかる。車が故障したという男は畑にいたユハに助けを求め、ユハは快く車の修理を引き受ける。しかしシェメイッカは隙を見てはマルヤを誘惑、マルヤも彼を強く意識するようになる。再びシェメイッカが2人を訪れ、マルヤはシェメイッカと駆け落ちするが、2人が結ばれたあとシェメイッカの態度は豹変し・・・(映画.comより)ユハとマルヤの夫婦は、田舎に住んでいてもキャベツを作り売っては、手を取り合って子供のように幸せに暮らしている。そんな中、偶然にも通りすがりの男、シェメイッカのオープンカーが故障してしまう。親切なユハは車の修理を請け負って、その日はシェメイッ...アキ・カウリスマキ・2~『白い花びら』

  • アキ・カウリスマキ・1~『コントラクト・キラー』

    『コントラクト・キラー』(アキ・カウリスマキ監督、1990年)を観た。ロンドンで暮らす孤独なフランス人アンリは、長年務めた職場をあっさり解雇されてしまう。絶望して自殺を図るもことごとく失敗した彼は、ギャングのアジトを訪れて自分自身の殺害を依頼する。死を待つアンリだったが、パブで花売りのマーガレットに出会って恋に落ち、生きる希望を取り戻す。しかし、殺し屋はすでに差し向けられていて・・・(Wikipediaより)人付き合いもしない内向的な孤独な男、アンリ。これをジャン=ピエール・レオが演じる。ジャン=ピエール・レオと言えば、フランソワ・トリュフォー監督の『大人は判ってくれない』(1959年)から始まって、ジャン=リュック・ゴダール監督の作品などで馴染みの俳優。その彼が無口ながら味わい深い演技をする。もっともア...アキ・カウリスマキ・1~『コントラクト・キラー』

  • ロベール・ブレッソン・9~『湖のランスロ』

    『湖のランスロ』(ロベール・ブレッソン監督、1974年)を観た。時は中世。城に帰還したものの、聖杯探しに失敗し多くの戦死者を出したアルテュス王の円卓の騎士たち。その中のひとり、ランスロは王妃グニエーヴルとの道ならぬ恋に苦悩していた。神に不倫をやめると誓うランスロだったが、グニエーヴルにその気はない。仲間のゴーヴァンはランスロを心配するものの、権力を手に入れようと企むモルドレッドは罪深きランスロを貶め、自分の仲間を増やそうと暗躍する。団結していたはずの騎士の間に亀裂が入り始め、思わぬ事態が引き起こされるのだった・・・(テアトルシネマグループより)アーサー(アルテュス)王伝説に由来する円卓の騎士ランスロと王妃グニエーヴルの不義の恋。この恋に終止符と打つと神に誓ったランスロだったが、グニエーヴルの方は絶対諦めない。そ...ロベール・ブレッソン・9~『湖のランスロ』

  • ロベール・ブレッソン・8~『たぶん悪魔が』

    『たぶん悪魔が』(ロベール・ブレッソン監督、1977年)を観てきた。裕福な家柄に生まれた美貌の青年シャルルは、自殺願望にとり憑かれている。政治集会や教会の討論会に参加しても、違和感を抱くだけで何も変わらない。環境破壊を危惧する生態学者の友人ミシェルや、シャルルに寄り添う2人の女性アルベルトとエドヴィージュと一緒に過ごしても、死への誘惑を断ち切ることはできない。やがて冤罪で警察に連行されたシャルルは、さらなる虚無にさいなまれていく・・・(映画.comより)DVDには成っているが、ブレッソンのこの作品と『湖のランスロ』が日本初公開ということでミニ・シアターに行ってきた。作品の舞台はパリ。銃弾を2発受けて死んだ青年の6ヶ月前に遡り、その後の日常や行動を追っていく。で、その感想はと言うと、97分の作品がとても長く感じら...ロベール・ブレッソン・8~『たぶん悪魔が』

  • 『エール!』を観て

    『エール!』(エリック・ラルティゴ監督、2014年)を観た。フランスの田舎町で酪農を営むベリエ家。16歳の高校生ポーラの家族は、両親のルドルフとジジ、そして弟が聾唖者である。家畜を育ててチーズの販売で生計を立てる家族にとっては、ポーラは健常者との通訳、仲立ちとして必要だった。ポーラは、気に入る男生徒ガブリエルがコーラス部を希望したため、自分もオーディションを受け入部する。ポーラの歌声に才能を感じる音楽教師トマソンは、ある日、パリにある音楽学校のオーディションを彼女に勧める。ポーラは家族のことも考え内緒で、3ヶ月後のオーディションに向け歌の練習をトマソンの自宅で始めた。その頃、近く行われる村長選に父ルドルフが立候補すると言いだして家族は大忙しとなる。そんな中、ポーラは両親に歌のことを打ち明ける。ポーラの歌声を聴く...『エール!』を観て

  • 『希望のかなた』を観て

    『希望のかなた』(アキ・カウリスマキ監督、2017年)を観た。フィンランドの首都ヘルシンキ。トルコからやってきた貨物船に身を隠していたカーリドは、この街に降り立ち難民申請をする。彼はシリアの故郷アレッポで家族を失い、たったひとり生き残った妹ミリアムと生き別れになっていた。彼女を探し出してフィンランドに呼び、慎ましいながら幸福な暮らしを送らせることがカーリドの願いだった。一方、この街に住むヴィクストロムは酒浸りの妻に嫌気がさして家出し、全てを売り払った金をギャンブルにつぎ込んで運良く大金を手にした。彼はその金で一軒のレストランを買い、新しい人生の糧としようとする。そのレストランの三人の従業員たちは無愛想でやる気のない連中だったが、ヴィクストロムにはそれなりにいい職場を築けるように思えた。その頃カーリドは、申請空し...『希望のかなた』を観て

  • 『恋愛専科』を観て

    『恋愛専科』(デルマー・デイヴィス監督、1962年)を観た。名門女子大で「恋愛専科」という本を生徒に貸したが問題となり、自ら職を辞して、愛を知るためにローマにやってきた女教師のプルーデンス。船で知り合った金持ちの紳士ロベルトに紹介された下宿先で建築を学んでいるアメリカ人留学生ドンと出会い、恋に落ちる。プルーデンスはドンと一緒に夏のバカンスを楽しむが、二人の前にドンのかつての恋人で画家のリーダが現れ、プルーデンスにかつての関係を見せつける。ドンの心に未練があることを知ったプルーデンスはローマを離れ、帰国することを決意する・・・(ハピネットの内容説明より)ローマの名所旧跡から始まってイタリア北部マジョーレ湖を巡る、まさしくトロイ・ドナヒューとスザンヌ・プレシェットによる観光映画。と言っても単なる観光ものという感じで...『恋愛専科』を観て

  • 『尼僧ヨアンナ』を再度観て

    『尼僧ヨアンナ』(イエジー・カヴァレロヴィチ監督、1961年)を観た。17世紀中頃のポーランド辺境の寒村。スーリン神父は悪魔祓いのために、宿屋の下男の案内で尼僧院に行く。これまでに4人の神父が悪魔払いに来たが全員失敗している。そのため、スーリン神父が5人目として派遣されてきた。スーリン神父に会った尼僧長ヨアンナは、自分に8つの悪魔が取り憑かれている、と言う。だから助けてほしいと願うヨアンナだったが、笑い声を上げて後ろ姿から振り返る時は別人となっていた。悪魔となって喋るヨアンナは壁伝いに歩き回り、部屋から出ていく時、壁に手形を残していく。村人たちが見守る中、尼僧たちが広間に集まる。そこでは、4人の神父たちによって悪魔祓いの儀式が始まるところで、スーリン神父は壇上でその様子を見ていた。聖水をかけられ、悲鳴を上げなが...『尼僧ヨアンナ』を再度観て

  • イエジー・カヴァレロヴィチ監督の『夜行列車』を観て

    『夜行列車』(イエジー・カヴァレロヴィチ監督、1959年)を観た。サングラスをかけた中年男イェジーは、ワルシャワ駅から北上しバルト海沿岸の避暑地へ向かう夜行列車に乗ろうとする。生憎、指定券を忘れた彼だが、独りになりたいために女性車掌と交渉し、15,16号室の指定席を確保する。しかしこのコンパートメントに行くと、若い女性が占有していて決して席を空けようとはしなかった。結果、イェジーは見知らぬ女マルタと個室を共にすることになり、夜行列車はいろいろな人々の思惑を乗せて走り出した・・・同室になったイェジーとマルタは仕方なく会話を交わすが、話は噛み合わず、ギクシャクした感情のまま列車に身を委ねる。なぜイェジーは独りになりたかったか。マルタはなぜ孤独そうなのか。列車の狭い通路で新聞を読む客の記事には妻殺しで逃亡中の事件が載...イエジー・カヴァレロヴィチ監督の『夜行列車』を観て

  • イエジー・カヴァレロヴィチ監督の『影』を観て

    『影』(イエジー・カヴァレロヴィチ監督、1956年)を観た。ドライブする男女の目の前で、並行する列車から男が飛び降りた。驚いた二人がその場に行ってみると、男の顔は潰れ、身許の手がかりになるものはなかった。この男を検死した医師クニシンはこれがキッカケで、戦時中に起こった地下抵抗組織に関するある事件を語った。当時、地下抵抗組織に属していたクニシンは、ワルシャワ郊外の修理店を連絡所として活動を続けていた。ある日、武器調達資金を得るために、クニシンの班はドイツ軍と関係があるポーランド人の店を襲った。しかし、金を手にしようとした丁度その時、突如、別の一隊がやってきて、お互いに敵と誤認した同士で激しい銃撃戦となった。そして、クニシンを除いて二グループの全員が死傷してしまった。偶然にしては筋立が上手すぎ、クニシンはそれ以後、...イエジー・カヴァレロヴィチ監督の『影』を観て

  • 『英雄の証明』を観て

    上映中の『英雄の証明』(アスガー・ファルハディ監督、2021年)を観てきた。イランの古都シラーズ。ラヒムは借金の罪で投獄され、服役している。そんなある時、婚約者が偶然17枚の金貨を拾う。借金を返済すればその日にでも出所できるラヒムにとって、それはまさに神からの贈り物のように思えた。しかし、罪悪感にさいなまれたラヒムは、金貨を落とし主に返すことを決意する。そのささやかな善行がメディアに報じられると大きな反響を呼び、ラヒムは「正直者の囚人」という美談とともに祭り上げられていく。ところが、SNSを介して広まったある噂をきっかけに、状況は一変。罪のない吃音症の幼い息子をも巻き込んだ、大きな事件へと発展していく・・・(映画.comより)冒頭、刑務所から2日間の休暇を貰ったラヒムは、遺跡修復作業に従事している義兄ホセインを...『英雄の証明』を観て

  • 『夜』を観て

    『夜』(ミケランジェロ・アントニオーニ監督、1961年)を観た。ある日の午後、作家のジョヴァンニと妻リディアは、病床の友人トマーゾを見舞った。トマーゾの病気は回復の見込みがない。トマーゾはジョヴァンニの親友であるが、リディアにとっても親しい間柄だった。以前トマーゾはリディアを愛したが、彼女はすでにジョヴァンニを愛し結婚していた。彼女は作家夫人として何不自由のない毎日を送っていたが、その生活に得体の知れぬ不安が徐々に広がっていった。結婚前二人を結びつけたはずの愛を見失ったと感じたとき、彼女の心にポッカリと一つの空洞があいた・・・(映画.comより)末期症状のトマーゾを見舞った二人は、ジョヴァンニのサイン会場に行く。同行したリディアは夫と分かれ、ひとりミラノの街を歩き、これと言った目的もないのにタクシーで郊外のうら...『夜』を観て

  • 『CODA』を観て

    『コーダあいのうた』(シアン・ヘダー監督、2021年)がアカデミー賞の作品賞を受賞したためか、手頃な時間帯の上映になったので観てきた。幼い頃から家族の耳となったルビーは家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、合唱クラブに入部したルビーの歌の才能に気づいた顧問の先生は、都会の名門音楽大学の受験を強く勧めるが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられずにいた。家業の方が大事だと反対する両親に、ルビーは自分の夢よりも家族の助けを続けることを決意するが・・・(映画.comより)マサチューセッツ州の港町に住む女子高生のルビー。貧しい漁師のロッシ家は、ルビー以外の父フランクと母ジャッキー、それに兄レオが聴覚障害。ルビーは新学期を迎え、一目で好きになったマイルズが入ろうとするコーラス部へ自分も入部する。その後、...『CODA』を観て

  • 『ベルファスト』を観て

    本年度のアカデミー賞絡みで評判の『ベルファスト』(ケネス・ブラナー監督、2021年)を観てきた。北アイルランドの首都ベルファストで生まれ育った9歳のバディは、家族や友だちに囲まれ、充実した毎日を過ごしていた。そして、映画や音楽を楽しみ、たくさんの笑顔と愛にあふれた日常は、彼にとって完ぺきな世界だった。しかし、1969年8月15日を境に穏やかな日々は、突然の暴動により悪夢へと変わってしまう。プロテスタントの暴徒が、街のカトリック住民への攻撃を始めた。住民同士が顔なじみで、まるでひとつの家族のようだったベルファストは、この日を境に分断されていく。暴力と隣り合わせの日々のなか、バディの両親は故郷を離れるべきかどうか悩む・・・(映画.comより修正)主人公バディは母と兄のウィルと一緒に暮らしていて、父親はイギリスに出稼...『ベルファスト』を観て

  • 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』を観て

    話題の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(ジェーン・カンピオン監督、2021年)をNetflixじゃなく、劇場に行って観てきた。舞台は1925年のモンタナ州。フィルとジョージのバーバンク兄弟は、牧場の経営で成功を収めていた。兄弟はある牛追いの道中、宿屋のオーナーで未亡人のローズ・ゴードンと出会う。心優しいジョージはローズとすぐに心を通わせるようになり、結婚することになる。ローズは兄弟の牧場に移住し、ローズの息子ピーターに医学と外科学を学ばせるために、ジョージの金で大学へ通わせることになる。しかし、亡き師ブロンコ・ヘンリーに強く影響されているフィルは、ローズが金目当てでジョージと結婚したと勘繰って嫌悪感を抱き、ローズはそのフィルの粗暴な振る舞いと嘲弄するような態度に不安を募らせる。ある日、ジョージは両親と知事を招いて晩...『パワー・オブ・ザ・ドッグ』を観て

  • 『避暑地の出来事』を観て

    ずっと観たいと思っていた念願の『避暑地の出来事』(デルマー・デイヴィス監督、1959年)をやっと観た。アメリカ東海岸メイン州の避暑地の島。かつては名門だったハンター家のリゾート・ホテルに、20年ほど前、救命監視員として雇われていたケン・ジョーゲンソンが妻と娘を連れて休暇にやって来た。今はビジネスに成功しているケンに対して、ハンター家のバートは落ちぶれた状態にある。ケンの娘モリーとバートの息子ジョニーはすぐに親しくなり、次第に愛し合うようになる。片や、昔恋仲だった関係のケンとバートの妻シルヴィアは、再会して恋の炎が再燃していく。ある日、ジョニーとモリーは小型ヨットで沖に出かける。しかし、やがて激しい風雨にさらされヨットは転覆し、二人は小島で一夜を明かす。翌日、救出されたモリーを母ヘレンは激しく怒り、ジョニーと今後...『避暑地の出来事』を観て

  • イングマール・ベルイマン・4~『不良少女モニカ』

    『不良少女モニカ』(イングマール・ベルイマン監督、1953年)を観た。スウェーデンの港町。陶磁器店の配達係をしているハリーは、カフェで、煙草の火を借りるモニカと知り合う。八百屋で働くモニカが「今夜映画に連れてって」と、ハリーに誘う。要領も悪く大人しいハリーは、モニカとの出会いに幸せを感じる。映画を観たあと二人は湾の見える丘に行き、恋は急速に進んでいく。その後、ハリーの家を訪れたモニカだったが、ハリーの父が帰ってきて二人の抱擁は中断される。狭いアパートで家族と暮らすモニカは、酔っぱらいの父親と喧嘩をし家出を決意する。その足でハリーの家へ行くけれど、家にモニカを泊まらせるわけにもいかないハリーは、二人して父親の所持している船の船室に向かう。一夜を過ごしたハリーは、翌朝、寝過ごしてしまってそこから職場へ向かったが、雇...イングマール・ベルイマン・4~『不良少女モニカ』

  • 『僕の村は戦場だった』を再度観て

    プーチンの命令でロシア軍がウクライナに侵攻している。だから、敢えて『僕の村は戦場だった』(アンドレイ・タルコフスキー監督、1962年)を観てみた。川岸でずぶ濡れになっていた12歳の少年イワンが部屋へ連れて来られ、ガリツェフ上級中尉から質問を受ける。イワンは説明を拒み、司令部のグリャズノフ中佐へ電話することを要求する。ガリツェフがグリャズノフに電話すると、中佐はイワンが書き記したものをすぐに司令部へ届けるよう命じる。翌日、司令部からホーリン大尉が迎えに来て、イワンは司令部へと戻って行った。イワンの今回の情報は極めて重要なものだったが、グリャズノフ中佐はこれ以上イワンに危険な任務を続けさせることは出来ないと判断し、彼に幼年学校へ入ることを命じる。だが、イワンはそれを拒み、幼年学校へ送られるぐらいならパルチザンになろ...『僕の村は戦場だった』を再度観て

  • 『ヘンリー八世の私生活』を観て

    『ヘンリー八世の私生活』(アレクサンダー・コルダ監督、1933年)をDVDで観た。イングランド国王ヘンリー8世は、二番目の王妃アン・ブリンを不義密通の罪で処刑台に送る手筈を整えた。ヘンリーは、この王妃が亡くなれば自分は独身として、すぐにでも侍女のジェーン・シーモアとの結婚ができると計算していた。1536年。晴れて、王妃となったジェーン・シーモアだったが、翌年、彼女は王子を産んでまもなく産褥死する。政治戦略もあり、側近クロムウェルはヘンリー8世にドイツ・クリーヴス公爵の娘アン・オブ・クレーヴズを娶るよう勧める。アンの肖像画で気に入り、結婚を決めたヘンリー8世だったが、実際のアンを見たヘンリーはひどく失望し、すぐに離婚する。元々、ヘンリー8世は二番目の王妃アン・ブリンの従妹で侍女であったキャサリン・ハワードが気に入...『ヘンリー八世の私生活』を観て

  • 『ドライブ・マイ・カー』を観て

    新型コロナのため、去年夏の封切り時点でためらってパスした『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督、2021年)が、余りにもここのところ新聞記事になるので気になり、丁度いま上映している劇場があったので久し振りに映画館に行って観てきた。舞台俳優・演出家の家福悠介は、脚本家の妻・音と満ち足りた日々を送っていた。しかし、妻がある秘密を残したまま突然この世を去ってしまう。2年後、演劇祭で演出を任されることになった家福は愛車のサーブで広島へと向かう。そこで出会ったのは、寡黙な専属ドライバーみさきだった。喪失感を抱えたまま生きる家福は、みさきと過ごすうちに、それまで目を背けていたあることに気づかされていく・・・(MOVIEWALKERPRESSより)まず、あらすじを丁寧に書きたい思いがあるが、やはり現在の作品のためにそれはやめ...『ドライブ・マイ・カー』を観て

  • 『危険な関係』(1959年)を観て

    『危険な関係』(ロジェ・ヴァディム監督、1959年)を観た。外交官バルモンとその妻ジュリエットが自宅でパーティーを開き、そこには大勢の知人たちが訪れた。この夫婦はみんなの間では、女性との恋愛を楽しむバルモンと、一方は貞淑な妻ジュリエットで通っていた。だが実は、二人はそれぞれ複数の愛人を作って、その情事の報告をし合うことを楽しんでいた。バルモンはパーティーで、17歳の従姉の子セシルが妻の愛人だったアメリカ人のコートと婚約したことを知る。そこで妻ジュリエットはバルモンに、コートを出し抜いてセシルを口説き落とすよう勧める。一方、セシルは貧学生のダンスニを好いていて、彼との結婚に憧れていた。しかしダンスニは、学業や兵役の後にしか結婚を考えていなかった。バルモンは、セシルがクリスマスを過ごすために友達と来ていたスキーリゾ...『危険な関係』(1959年)を観て

  • 『パサジェルカ』を観て

    若い頃から一度は観たいと思っていた『パサジェルカ』(アンジェイ・ムンク監督、1963年)をやっと観た。海洋を航海中の、一隻の豪華客船。乗客の一人であるドイツ人女性リザは、長らく夫と共にアメリカ合衆国で暮らしており、十数年ぶりに故国に帰省する途中である。やがて、船は英国の港に寄港する。舷側から乗り込んでくる船客たちを眺めていたリザは、一人の女性に目を留める。様子のおかしくなったリザに、事情を知らない夫ワルターが大丈夫かと問いかける。リザは戦争中、アウシュヴィッツ強制収容所の看守の一人だった。先ほど見かけた女性を、リザはかつて自分が何かと手助けした女因マルタではないかと疑っていた。戦争中にマルタとの間に生じたできごとをワルターに黙っていたリザは、夫にその想い出を語り始める。<アウシュヴィッツ強制収容所>リザは194...『パサジェルカ』を観て

  • 『スリー・ビルボード』を観て

    今回、『ノマドランド』(クロエ・ジャオ監督、2020年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したフランシス・マクドーマンドが、前回にも同賞を受賞している『スリー・ビルボード』(マーティン・マクドナー監督、2017年)を前々から観たいと思っていて、この機会に観てみた。ミズーリ州の田舎町エビング。7か月前に何者かに娘を殺されたミルドレッドは、一向に進展しない捜査に腹を立て、大通りに面した3枚の広告看板に、警察署長のウィロビーを批判するメッセージを掲げる。人情味あふれるウィロビーを敬愛する町の人々はミルドレッドを敵視するようになり、捜査を進展させようとしたはずが、孤立無援になっていく・・・(MOVIEWALKERPRESS)ティーンエイジャーの娘アンジェラがレイプされた上に焼殺された母親のミルドレッド。犯人の手掛かりを掴め...『スリー・ビルボード』を観て

  • 『ミナリ』を観て

    『ミナリ』(リー・アイザック・チョン監督、2020年)を観てきた。1980年代、農業で成功することを夢みる韓国系移民のジェイコブは、アメリカのアーカンソー州の高原に家族と共に引っ越してきた。荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを見た妻のモニカは、いつまでも少年心の夫の冒険に危険な匂いを感じるが、しっかり者の長女アンと好奇心旺盛な弟のデビッドは新しい土地に希望を見つけていく。まもなく毒舌で破天荒な祖母も加わり、デビッドと一風変わった絆を結ぶ。だが、水が干上がり、作物は売れず、追い詰められた一家に思いもしない事態が立ち上がる・・・(公式サイトより)ジェイコブは、森の空き地にあるトレーラーハウスを拠点として、その空き地を韓国野菜の畑にしようと夢見る。片や、妻のモニカは、幼い息子のデビッドが心臓を患っていることもあっ...『ミナリ』を観て

  • 『ノマドランド』を観て

    『ノマドランド』(クロエ・ジャオ監督、2020年)を観てきた。リーマンショックのあおりを受けて、長年住み慣れたネバダ州の住処を失った60代のファーン。彼女はキャンピングカーにすべての思い出を詰め込んで、車上生活者=現代のノマド(遊牧民)として過酷な季節労働の現場を渡り歩くことを決意する。行く先々で出会うノマドたちと心の交流を深め、一日一日を懸命に乗り越えながら、誇りを持って生きる彼女の自由な旅は続いていく。(MOVIEWALKERPRESSより)工場閉鎖の後、もう誰もいなくなったその地からファーンはキャンピングカーでの生活を選び、去る。その胸のうちには、亡くした夫への想いの傷も秘めている。といっても、ギリギリのやりくりのため、行く先々で仕事を探さなければならない。それはアマゾンでの仕分けだったり、国立公園のキャ...『ノマドランド』を観て

  • グラウベル・ローシャ・3~『バラベント』

    『バラベント』(グラウベル・ローシャ監督、1962年)を観た。ブラジルのバイーヤ沿岸で暮らす黒人漁師たち。その祖先はアフリカから奴隷として連れて来られ、子孫たちは今も黒人密教を崇拝、悲劇的かつ運命論的な神秘主義に囚われ、神の国を待つ人々特有の従順さで貧困、文盲、搾取などを受け入れている。イエマンジャーは海の女神でイレースの母、漁師たちを守り、時には罰を下す海の支配者。“バラベント”とは大地と海が一変し、愛や生活や社会が変貌する激しい瞬間のこと。と、タイトルの後に字幕が出る。村の男は都会に出ても仕事はなく、できることは魚を捕ることだけである。その地引き網漁は網元の親方に支配されていて、村人は食べていけるのがやっとの状態である。警察に追われ破壊活動分子と思われているフィルミノが都会から村にやって来る。以前、村人から...グラウベル・ローシャ・3~『バラベント』

  • グラウベル・ローシャ・2~『アントニオ・ダス・モルテス』

    昔観たことのある『アントニオ・ダス・モルテス』(グラウベル・ローシャ監督、1969年)を観た。ブラジル東北部、アラゴアス州の荒涼とした村。カンガセイロのコイラナ大尉や若い聖女と共に大勢の信者たちは激しく踊り歩く。カンガセイロを憂慮する警察署長のマトスは殺し屋“アントニオ・ダス・モルテス”を呼び寄せる。町の地主(コロネル)は盲目でありながら、権力を振るって影響力を与えている。そのコロネルは、コイラナ大尉が虐げられた民衆を解放しようとしていることに対し、ダス・モルテスに助けを求めなかった。だがダス・モルテスは、マトスの要請によりコイラナ大尉と決闘し、相手に深手を負わせる。荒野で聖女と対峙したダス・モルテスは、聖女から、荒野の民だった祖父母、両親、兄弟を己から殺されたと聞く。それを聞いたダス・モルテスは、許してほしい...グラウベル・ローシャ・2~『アントニオ・ダス・モルテス』

  • グラウベル・ローシャ・1~『黒い神と白い悪魔』

    『黒い神と白い悪魔』(グラウベル・ローシャ監督、1964年)を再度観た。民衆が虐げられていた大地主制度下のブラジル。貧しい牛飼いのマヌエルは、妻のローザと老母の三人で細々と暮らしている。ある日、彼が地主の所へ牛運びの金をもらいに行った折、ひどい仕打ちを受けて地主を殺してしまう。追手により老母を殺されたマヌエルはローザを連れて山へ逃れ、山中で大勢の信者を従える聖セバスチャンの教えに共感する。やがてセバスチャンは、信者と共に地主や政府軍と戦うようになる。それに対し地主たちは殺し屋のアントニオ・ダス・モルテスを雇い討伐に向かわせる。そんなある日、折から現れたダス・モルテスは信者たちを皆殺しにし、片や、赤ん坊を信仰の犠牲にされたローザは聖セバスチャンを刺し殺す。ダス・モルテスから見逃されたマヌエルとローザは、コリスコ大...グラウベル・ローシャ・1~『黒い神と白い悪魔』

  • 『突撃』を観て

    『突撃』(スタンリー・キューブリック監督、1957年)を観た。1916年、独仏戦争。戦線は膠着状態となり、前線では強固な要塞と塹壕が造られていた。その頃、パリから師団司令部に来たブルラード大将は、ミロウ将軍に「前線を完全突破するため、明後日までに“アリ塚”を奪え」と司令部が決定したと伝える。ミロウ将軍から命令を伝達された歩兵連隊長のダックス大佐は、「無謀な攻撃は兵士を犠牲にするだけ」と抗弁するが、作戦は実行に移される。しかし、ドイツ軍の応戦が激しくて隊は前進できなくなる。それを知ったミロウ将軍は我慢ならず、味方陣地に砲撃を加えるよう命令する。だが砲兵指揮官は署名文書がなければと抵抗し、結果、隊は敗退し元の壕に退却する羽目になる。ミロウ将軍は作戦が失敗したことに怒り、翌日、軍法会議を召集することに決定した・・・3...『突撃』を観て

  • 『燃ゆる女の肖像』を観て

    昨年暮れの『燃ゆる女の肖像』(セリーヌ・シアマ監督、2019年)の評価が高いとあって、県下で現在も上映している所があったので高速道路を使って行ってきた。画家のマリアンヌはブルターニュの貴婦人から、娘のエロイーズの見合いのための肖像画を頼まれる。だが、エロイーズ自身は結婚を拒んでいた。身分を隠して近づき、孤島の屋敷で密かに肖像画を完成させたマリアンヌは、真実を知ったエロイーズから絵の出来栄えを否定される。描き直すと決めたマリアンヌに、意外にもモデルになると申し出るエロイーズ。キャンパスをはさんで見つめ合い、美しい島を共に散策し、音楽や文学について語り合ううちに、恋に落ちる二人。約束の5日後、肖像画はあと一筆で完成となるが、それは別れを意味していた・・・(公式サイトより)舞台は、18世紀のフランス・ブルターニュの孤...『燃ゆる女の肖像』を観て

  • 『スパイの妻』を観て

    今ごろになってだが、『スパイの妻<劇場版>』(黒沢清監督、2020年)を上映中の所があったので観てきた。太平洋戦争開戦を控えた1940年の神戸。福原聡子は、貿易会社を営む夫・優作と何不自由なく幸せに暮らしていた。国家総動員法下、貿易商という職業柄当局に目をつけられながらも、洋風の生活洋式で通し舶来品を楽しみ、趣味の9.5mmフィルム撮影に興じたりと時勢に頓着しない優作を、聡子の幼馴染である陸軍憲兵の泰治は快く思わなかった。ある時、優作は甥の文雄を伴って満州に出かけ予定よりも遅く帰国した優作の様子を、聡子はいぶかしみ疑いを抱き始める。実は、優作は満洲で知った国家機密についての秘めた計画を持っていた。憲兵の泰治が二人を追い詰めていく中、文雄の拘留をきっかけにすべてを知った聡子は“スパイの妻”と罵られる覚悟で、愛する...『スパイの妻』を観て

  • 『日曜はダメよ』を観て

    『日曜はダメよ』(ジュールス・ダッシン監督、1960年)を観た。ギリシャの港町に、アメリカ人のホーマーがやって来た。“ギリシャ栄枯盛衰の研究”が目的だったが、上陸してまず酒場に入ったホーマーは、言葉が通じないために町の男たちと大ゲンカ。そこへ割って入ったのが金髪でグラマーなイリアだった。陽気な彼女は英語のほか、仏、露、伊語と外国語がペラペラ。しかも習ったところは「ベットの中」とアッケラカンと答えるイリアにホーマーはびっくり仰天。「ならば僕がお堅い娘に変身させる!」と、一大決心を固めるが・・・(DVDパッケージより)ホーマーはよその国に来て、やめとけばいいのに売春婦のイリアに、教養のある女性に変わってほしいと奮闘する。ホーマーの熱意にほだされたイリアも、今までの生活を閉じ込めようと努力するが、そんなに事はうまく運...『日曜はダメよ』を観て

  • 『冬の小鳥』を観て

    『冬の小鳥』(ウニー・ルコント監督、2009年)を観た。1975年のソウル。新調してもらったよそ行きの洋服を着て、9歳のジニは大好きな父に連れられ郊外にやってくる。高い鉄格子の門の中では、庭で幼い子供たちが遊んでいる。ジニは父親と離され子供たちがいる部屋に通されるが、状況が分からず思わず外に飛び出してしまう。目に入ってきたのは、門のむこうに去る父の背中。そこは、孤児が集まるカトリックの児童養護施設だった。自分は孤児ではないと主張するジニは、父に連絡を取るよう院長に頼む。出された食事にも手をつけず、反発を繰り返すジニ。ついには脱走を試みるが、門の外へ足を踏み出しても途方にくれてしまうのだった。翌日、教会へ行くために子供たちは着替えていた。頑なに周囲に馴染もうとしない反抗的なジニを疎みながらも、気にかける年上のスッ...『冬の小鳥』を観て

  • 『レディバード・レディバード』を再度観て

    一連の傑作揃いのケン・ローチ作品の中でも、特に強烈な印象を受けた『レディバード・レディバード』(1994年)を再度観てみた。生活のためバーで歌っているマギーの店にスペイン系のジョージが訪れ、彼はマギーの魅力に惹かれる。ジョージは弱者の権利を守ろうとし、そのために母国パラグアイから亡命した。そんなジョージにマギーは次第に心を開き、愛する子供たちと離ればなれになったいきさつを話し始める。マギーは、父親がそれぞれ違う四人の子供と貧しいながらも幸せに暮らしていた。だが、次の新しい夫サイモンによる暴力に耐えかねて友人の家近くに隠れ住んだが、たまたま留守の時に火事が起き、長男のショーンが重傷を追ってしまった。これがきっかけとなりマギーは養育能力なしと判決を受けて、今は子供たちと引き離されて住んでいる。マギーは、ジョージの親...『レディバード・レディバード』を再度観て

  • 『レイニング・ストーンズ』を再度観て

    随分と前に観た『レイニング・ストーンズ』(ケン・ローチ監督、1993年)を再度みてみた。失業中のボブは、娘のコリーンの聖餐式のために白いドレスを買ってやりたいと願っている。彼は仲間のトミーと羊泥棒をしたり、金になることなら何でもやるがうまくいかない。下水道掃除に行った先の教会のバリー神父から、生活さえままならないのに娘の聖餐式にそこまで見栄を張る必要はないと諭されるが、ボブは耳を貸さない。ある日ボブは、妻のアンとコリーンを連れて洋品店を訪れたが、ドレスの値段を聞いて驚く・・・(MOVIEWALKERPRESSより修正し一部抜粋)場所は、イングランド北西部のマンチェスター。ボブは、7歳の娘コリーンが初聖体拝領を受ける時のドレスを新調するために、失業中で生活もにっちもさっちもいかないのに、金を工面しようと悪戦苦闘す...『レイニング・ストーンズ』を再度観て

  • 『なんでもないや』~「君の名は。」から

    最近フッと、『君の名は。』(新海誠監督、2016年)のエンディング曲のメロディが出てきて頭から離れなかったりする。なので、その『なんでもないや』をついYouTubeでよく聴いたりもする。元のRADWIMPSは当然としても、上白石萌音の歌にも感動していいなと思う。ただそれよりも心に沁みるのは、なぜかこちらだったりする。なんでもないや/RADWIMPS【君の名は。】(cover)『なんでもないや』~「君の名は。」から

  • 『リフ・ラフ』を再度観て

    レンタルビデオ店がビデオテープの頃、ケン・ローチ作品が観たくて探したりしていた。その中のひとつの『リフ・ラフ』(ケン・ローチ監督、1991年)を今回、また観てみた。刑務所から出所したばかりのグラスゴー出身の青年スティーヴはロンドンに出て、古い病院を豪華アパートに改築する工事現場の職を見つけた。そこは全国から職を求めてやって来た労働者たちの掃き溜めだった。スティーヴは、親分風を吹かす現場監督のミックの下でそつなく仕事をこなすシェム、ラリー、モーの三人と打ち解けて仲間となる。仕事の賃金は安く、労働条件は劣悪だった。ある日、スティーヴは工事現場にバッグが落ちているのを見つけ、持ち主のスーザンに届ける。最初はスティーヴを警戒した彼女も次第に打ち解けていく。場末のパブで歌う彼女は、歌手になるのが夢だった。スティーヴはラリ...『リフ・ラフ』を再度観て

  • 『女ともだち』を再度観て

    『女ともだち』(ミケランジェロ・アントニオーニ監督、1956年)を再度観た。場所はイタリアのトリノ。クレリアは洋装店の支配人として着任するため、ローマからやって来る。宿泊するホテルに着くと、隣りの部屋で若い女が自殺未遂を起こす事件に遭遇する。警察の聴取を受けたクレリアのところに自殺未遂者ロゼッタの友達モミーナが訪れて、ロゼッタの行為の原因を知るための協力をクレリアに頼む。これが切っ掛けとなって、クレリアはモミーナの女友達ネネ、マリエッラとも知り合う・・・正直言って、しんどい作品である。5人の会話体の物語に、その相手となる男たちも絡んでくる。その物語の先は、どこへどのように落ち着くかは後半になるまでわからず、観ていても常に不安定さがつきまとう。それがアントニオーニの狙いと言ってしまえばそれまでだが観ている方は落ち...『女ともだち』を再度観て

  • 『原節子の真実』を読んで

    『原節子の真実』(石井妙子著、新潮社:2016年刊)を読んだ。14歳で女優になった。戦前、戦後の激動の時代に112本の作品に出演、日本映画界に君臨する。しかし42歳で静かに銀幕を去り、半世紀にわたり沈黙を貫いた。数々の神話に彩られた原節子とは何者だったのか。たったひとつの恋、空白の一年、小津との関係、そして引退の真相――。(新潮文庫の裏表紙より)作者である石井妙子は、本名・会田昌江が原節子として映画界に関わっていく事柄に、その出生以前の親のことまで遡って追っていく。その内容は、膨大な資料を読み漁り、他の者では真似ができない原節子に寄り添った緻密な内容となっている。原節子は1920年に2男5女の末っ子として横浜で生まれる。父親は生糸問屋を営み裕福だったが、世界恐慌以降生活は困窮していく。家計を助けたいという思いか...『原節子の真実』を読んで

  • 『さすらい』を再度観て

    『さすらい』(ミケランジェロ・アントニオーニ監督、1957年)の内容の記憶があやふやなので、この際もう一度観てみた。場所は北イタリア、ポー河沿いのフェッラーラ地方で、そこの寒村ゴリアーノ。製糖工場に勤めるアルドは、イルマと同棲して七年になり、二人の間には娘のロジーナがいる。ある日、役場に行ったイルマは、別居している夫がシドニーで亡くなったと知らされる。アルドはこれを機に結婚しようとするが、イルマは拒否する。そしてイルマはアルドに、もう一緒には暮らせないと言う。理由は、好きな若い男がいるからと言う。アルドは動転し、こんなに愛しているのにどうしてなのか、と問い詰める。イルマは、アルドを愛しているがもうダメなのだ、と意志が固い。逆上したアルドは村人が大勢いる路上で、イルマの顔を何度も平手打ちする。そしてその後アルドは...『さすらい』を再度観て

  • 『情事』を再度観て

    なぜかミケランジェロ・アントニオーニ監督の作品が気になり、随分と前に観た『情事』(1960年)のDVDをネットで取り寄せた。ローマに住む外交官の娘アンナには、恋人として建築家のサンドロがいる。だが二人の愛は、もはや冷えかかっている。夏の終わり、二人はアンナの親友クラウディアも交え、上流階級の友人たちとシチリア島沖のエオリエ諸島へヨット・クルージングに出かけた。アンナやクラウディアたちは海で泳ぎ、その後、岩肌で覆われた小島に上陸する。アンナは元々サンドロの言う愛に不安感を持っていて、島でそのことを問い質し、その直後になぜか忽然と行方不明となる。サンドロとクラウディアは他の者たちと島中を必死に探したが、アンナの姿はどこにもない。溺死したとしても死体は見つからず、警察の捜査も打ち切られてしまう。しかし、クラウディアと...『情事』を再度観て

  • 『ヴェラの祈り』を観て

    『ヴェラの祈り』(アンドレイ・ズビャギンツェフ監督、2007年)を観た。アレックスと妻ヴェラとの間には会話が少ない。アレックスはひと夏を過ごすために、ヴェラ、息子キール、娘エヴァを連れて田舎の亡き父の一軒家へ行く。着いて一段落した家族は林にクルミを獲りに行く。夕食後、ヴェラがアレックスに告げる。「赤ちゃんができた。あなたの子じゃない」アレックスは動揺し、どう対処していいのかわからない。アレックスは兄マルクに、「話がしたい、そっちへ行く」と電話し兄の所へ向かうが、途中で引き返す。翌日、アレックスの友人ヴィクトルらが食事にやってくる。そこへ兄マルクから、「今、駅にいる」と電話が入る。迎えに行くアレックスに、息子のキールも一緒についてくる。車中、キールは言う。「ニーナおばさんとサーカスに行って帰ってきた時、家にロベル...『ヴェラの祈り』を観て

  • キム・ギドク監督、死去の報

    キム・ギドク監督が昨日11日、新型コロナウイルス感染症によりラトビアで亡くなったという。思えば、『サマリア』(2004年)が上映された時に新聞記事で知り観に行った。そして、その斬新な作風に魅了され、それ以後、旧作を含め1本の未公開作品を除いて、今年公開の『人間の時間』(2018年)までの22本の監督作品はすべて観た。中には首を傾げたくなるような作品もあったが、大半は強烈なインパクトを与える作品群だった。まだ59歳だというのに、今後、もう新作が作成されることがないと考えると残念で仕方ない。これもひとつの運命かと思うと諦めるしかない。それにしても、もったいない話である。合掌キム・ギドク監督、死去の報

  • 『エレナの惑い』を観て

    『エレナの惑い』(アンドレイ・ズビャギンツェフ監督、2011年)を観た。モスクワ、冬。初老の資産家と再婚した元看護士のエレナは、生活感のない高級マンションで、一見裕福で何不自由のない生活を送っている。しかしその生活で夫が求めるのは、家政婦のように家事をし、求められるままにセックスをする従順な女の姿だ。そんな生活の中で、彼女は夫の顔色をうかがいながらも、唯一の自己主張のように、前の結婚でもうけた働く気のない息子家族の生活費を工面している。しかしそんな日常は、夫の急病により一変する。「明日、遺言を作成する」――。死期を悟った夫のその言葉と共に、彼女の「罪」の境界線がゆらいでいく。そして、彼女がとった行動とは・・・(公式サイトより)ゆったりと流れる日常生活。端から見ると初老夫婦の何気ない生活のなかにも、じっくりとみて...『エレナの惑い』を観て

  • 清水宏・8~『花形選手』

    『花形選手』(清水宏監督、1937年)を観た。関と谷は大学陸上部のランナーで好敵手。中でも関は校庭で昼寝していても、ひとたび起てば力を発揮する花形選手である。学生たちは演習のための行軍に出発した。いつしか村童たちも従っている。突撃で一番乗りの谷が、子供たちを煽って「勝った方がいい」と囃し立てて関を怒らせる。落伍した木村と付き添った森を捜しに戻った関は、男女の子供を連れた若い門付け女に出会う。関は女の子に柿を与えた。夜、木賃宿や民家に分宿した学生隊。女の子が柿が原因で病気になった。女は薬代に窮して一夜、体を売らねばならぬ。関は行商人たちに絡まれるが、森と木村に任せて女の後を追う。そこへ出て来た学生隊一同。隊長の難詰。谷の友情の鉄拳制裁。翌朝、彼らは帰路についた。昨夜の行商人たちは追われていると思って、一散に逃げて...清水宏・8~『花形選手』

  • 清水宏・7~『風の中の子供』

    『風の中の子供』(清水宏監督、1937年)を観た。小学校5年生の善太と1年生の三平兄弟は、夏休みを迎えて大はしゃぎだった。ところが2年生の金太郎が、三平の父親が会社をクビになり警察に連れて行かれるとよからぬことをいい出した。不安な三平は、兄の善太や母親にことの真相を問うがはっきりしない。父は会社を辞め、私文書偽造の嫌疑をかけられてどこかに連れていかれてしまった。三平の不安はつのった。やがて三平はおじさんの家にあずけられ、ホームシックにかかって、いたずらばかりをしておばさんを困らせた。柿の木に登ったり、タライに乗って流されたり、母や兄の住む町へ行くという曲芸団の一行にもぐりこんだりする三平にほとほと手をやいたおばさんは、三平を母のもとへ追い返した。親子三人でなんとか生きて行こうと奮闘する母の気持ちなど知らない三平...清水宏・7~『風の中の子供』

  • 『異端の鳥』を観て

    久しぶりに映画館に行ってきた。観た映画は、チェコ・ウクライナの『異端の鳥』(ヴァーツラフ・マルホウル監督、2019年)。東欧のどこか。ホロコーストを逃れて疎開した少年は、預かり先である一人暮らしの老婆が病死した上に火事で家が消失したことで、身寄りをなくし一人で旅に出ることになってしまう。行く先々で彼を異物とみなす周囲の人間たちの酷い仕打ちに遭いながらも、彼はなんとか生き延びようと必死でもがき続ける―。(公式サイトより)この作品は九つのエピソードで綴られる。その内容と言えば、この少年が行く先々で異端とみなされ、一般の村人たちに排除される残虐性に満ち溢れている。その象徴として、いろいろな鳥がそのエピソードに関して出てくる。幼い少年の、出生がユダヤ人である烙印された少年の、偶然に行きゆく先々の運命。そこには生きるため...『異端の鳥』を観て

  • 『ピアニストを撃て』を観て

    『ピアニストを撃て』(フランソワ・トリュフォー監督、1960年)を観た。パリの酒場でシャルリがピアノを弾いている。そこへ、強盗仲間に追われた兄のシコが逃げてくる。4人兄弟のシャルリは末っ子のフィドと二人で地道に暮らしていて、一方、二人の兄リシャールとシコは悪の道にはまっている。だから二人は、運送車を襲ってかすめ取った札束を独り占めしようとして、仲間のエルネストとモモから追われている。店が終わったシャルリは偶然に、ウエイトレスのレナを家まで送っていくことになった。レナはシャルリに秘かに思いを寄せていて、シャルリも、途中で手を握ろうとしたが臆病なためにできない。レナの部屋には、シャルリが輝かしかった頃の演奏会のポスターが貼ってあった。シャルリは、本名をエドゥアール・サローヤンといい、元々、一流のピアニストだった。彼...『ピアニストを撃て』を観て

  • 『島の女』を再度観て

    『島の女』(ジーン・ネグレスコ監督、1957年)を観てみた。ギリシャのイドラ島に近いエーゲ海上。漁師リフの船で海綿とりをする若い女、フェドラはある日、海底で“いるかに乗った少年”を形どるブロンズの彫像を見つけた。島の医師ホーキンスは彫像が古書に記されてある宝物だと教え、彼女に引き揚げ権利を金持ちに売り渡すよう進めた。フェドラは自分が経済的に独立し、弟ニコを将来大学に入れたいと思っていた矢先なので心を動かされた。フェドラは金持ちの外国人を探しにアテネへ行き、アメリカの考古学者コルダー博士に面会を申込み、カフェで待ち合わせた。が、そのカフェに来ていた古美術蒐集家のパーマリーが博士を出し抜いて、彫像の取り引きを申し出た。パーマリーはフェドラとイドラ島へ行き、リフを仲間に、彫像の引き揚げにかかった。一方、コルダー博士も...『島の女』を再度観て

  • 『九月になれば』を観て

    『九月になれば』(ロバート・マリガン監督、1961年)を観た。ニューヨークの若き実業家ロバート・タルボット。彼は毎年9月、ローマの恋人リーザとイタリア避暑地の海沿いの別荘で1ヵ月ほどヴァカンスを楽しむ。だが今年は7月に突然イタリアにやってきたタルボットは、早速「別荘で会おう」とリーザに電話する。そのリーザ、タルボットがいつまでもプロポーズしないため諦めてイギリス人のスペンサーと結婚しようとしていたところ。驚いた彼女はとりあえず、急いで別荘に向かうことにした。こちらは、別荘を管理している執事のクラベル。主人の留守中は別荘をうまく利用しようと、その間はリゾートホテルとして営業している。そこへ主人のタルボットがやってきて、クラベルは大慌て。タルボットは、自分の別荘に若い娘たちがはしゃぎながら部屋に入っていくのを見て、...『九月になれば』を観て

  • 忘れ得ぬ作品・12~『橋』

    いつの頃か、多分二十歳頃かそれ以前、テレビで観て強烈な印象を受けたまま記憶から離れない作品がある。それをもう一度、確認してみたいとDVDを購入した。題名は『橋』(ベルンハルト・ヴィッキ監督、1959年)、西ドイツ作品である。第二次世界大戦末期のドイツのある村。戦況が悪化していたナチス・ドイツは、人員を確保するために今まで徴兵条件に入れていなかった子供も召集する。学校に通うハンス、ヴァルター、ジギ、カール、ユルゲン、アルバート、クラウスの7人の少年たちは、兵士に憧れを抱きながら徴兵されるのを心待ちに、いつも通りの授業を受けていた。ハンスが音読しているとき、窓から校舎の外を見たヴァルターは、地区長の父親が自分に内緒で母親を疎開させようとするのを見、追いかける。しかし、母親の乗った列車は発車し、母親とは離ればなれにな...忘れ得ぬ作品・12~『橋』

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