朝霧とおる さん プロフィール

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朝霧とおるさん: とおる亭
ハンドル名朝霧とおる さん
ブログタイトルとおる亭
ブログURLhttp://torutei.dou-jin.com/
サイト紹介文BL小説/R18/2月9日〜先輩×後輩(リーマン)「この雨が通り過ぎるまでに」連載開始/完結作あり
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供429回 / 365日(平均8.2回/週) - 参加 2015/08/07 15:37

朝霧とおる さんのブログ記事

  • この雨が通り過ぎるまでに49
  • 地面からじわじわと水分が立ち上って、空気が湿っている。雲は気ままに浮遊しているけれど、白くて今にも消えてしまいそうな薄い雲ばかりだ。久々に晴れた朝を悩ましく思うのは、肌を思い切り晒すことができないから。一番上のボタンまできっちり閉めて長袖のシャツを纏う。この気候には完全に不釣り合いだった。「瀬戸、一緒に出勤しようよ。」「・・・イヤです。」「別に誰も気にしないって。」「俺が気にします。」「怒ってる? [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに48
  • 本当は不安だし、恥ずかしい。いつもより口数が多い自覚はある。しかし軽口を叩いていられたのも、坂口の指がこそばゆい感覚を生んでいる間だけだった。久々に押し入ってくる圧迫感に瀬戸が息を詰めると、坂口が宥めるように額や頬にたくさんのキスをくれる。「瀬戸、いい?」怖くはなかったけれど、幻滅される心配をしている。可愛げなんてないし、自分のことを特筆して魅力的だとは思えないから。愛撫の手がそこかしこを触れてい [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに47
  • 繰り返し駆け上っていく疼きに甘い溜息をつく。いつまでも味わっていたいのに、扱く瀬戸の手が早まって大きな波が押し寄せてくる。「あ、瀬戸・・・」硬く反り勃ったものを擦る瀬戸の手を汚したい。でも妙なプライドが邪魔をして、もう何度も絶頂を交わし続けている。こんな事で競っても仕方ないのに、どうしても瀬戸より先に達したくない。「坂口さんッ」だから瀬戸が声を上げて手の動きが緩んだ隙に、ここぞとばかりに攻め立てる [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに46
  • 無意識に手が伸びてしまうほど抱きたかったはずなのに、いざ前にするともったいなくて先に進めない。しかし無心で瀬戸の唇を貪っているだけで、身体の熱は上がっていく。「坂口、さん・・・ッ」「うん?」「苦し・・・」瀬戸の抗議に、吸い付いていた唇から口を離す。しっとりと湿った薄い唇を指でなぞると、瀬戸の瞼が恥ずかしそうに伏せられる。「瀬戸?」シャツのボタンに手をかけたのは瀬戸の方が先だった。坂口の肌を晒して、 [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに45
  • 会社のビルを一歩出て、すぐ足を止めた瀬戸を振り返る。帰ると言い出すんじゃないかと気が気ではなくて、思わず腕を掴んだ。「坂口さんッ・・・」「帰っちゃダメ。」「ッ・・・帰りませんから、離してください。」「ウソ。帰るつもりだっただろ?」坂口の言葉に気まずそうな顔で目を逸らしたのがその証拠だ。怖気づいているのが可愛くて、つい掴んだままの手を引く。驚いたように目を見開き、慌てるさまを見下ろして満足するなんて [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに44
  • 今日一日、雲は雨粒を落とすことなく持ち堪えていたが、蒸し暑さに拍車が掛かっている。瀬戸がそんな風に感じるのは、背後にそびえる威圧感によるところが大きいだろう。捗らなかった時間を挽回しようと死に物狂いでモニターに齧り付いたが、結局瀬戸は定時までに肝心の仕事を終えることができなかった。そして宣言通り、坂口が瀬戸の後ろに控えている。「坂口さん。やりづらいです・・・。」「それ終わんないと、俺も帰れない。版 [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに43
  • 坂口からのダメ押しのメールに溜息をつく。ズルズルと二日も先輩の家で世話になるのは、社会人として問題があるだろう。貸してもらったシャツは自分の趣味趣向とは全く違う。長さも瀬戸の身丈に合っているとは言い難く、借り物であるのは誰の目から見ても明らかだ。他人のことを注意深く観察している人ばかりではない。けれど一度意識し始めると、坂口のことばかり頭に浮かんで、気が散ってしまう。落ち着かないから集中できない。 [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに42
  • 順調な進捗具合に頬の筋肉を緩ませて、坂口は瀬戸にメールを送る。高揚した気分に任せて一度は電話の受話器を上げかけた。しかし私用のお誘いに使おうものなら、瀬戸から白い目で見られる気がして、かろうじて堪えたのだ。「坂口さん」「お疲れ、川辺。行こうか。」「はい。」並んで企画フロアから出る。瀬戸と同様、川辺も淡々としたタイプだが、こうやって先輩である自分を迎えにくるマメさはある。柔和な表情から近寄りがたい雰 [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに41
  • 時計の針と睨めっこをして時間を空け、瀬戸のあとを追って出社する。とっくにフロアへ着いていてもおかしくないだけの時間が経っていたはずなのに、会社よりだいぶ手前で瀬戸の姿を見つけて、坂口は首を傾げる。家から離れた場所だし、会社の近くだから瀬戸を刺激することにはならないだろうと名を呼び掛けて、坂口は咄嗟に声を呑み込む。彼が一人ではなく、誰かと立ち話をしていることに気付いたからだ。相手の顔は木の幹に隠れて [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに40
  • 流された自分が信じられない。もうすっかり恋人気分で迫って来る坂口をどうにか振り切って、彼の家から一人で出社する。シャツだけ借りたのは、隣席である川辺に連日同じ服だと思われたくなかったから。瀬戸からしてみれば、もう十分やましい事をした。指摘されて平静を保てる自信がなかったのだ。逃げるように速足なのは、坂口が本当に約束通り時間をずらして出社するとは思えなかったから。待つと言いながら手を伸ばしてきた坂口 [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに39
  • 隣りにいる瀬戸が機嫌を損ねている。布団を頭から被ったまま、彼が顔を出してくれる様子はなかった。「瀬戸、怒ってる?」「・・・。」「だって瀬戸が可愛い顔するから、つい・・・。」「坂口さん、反省してない。」「イヤじゃなかっただろ?」「そういう問題じゃないと思います・・・。」瀬戸が頬を火照らせて熱い息をこぼしたのは、ついさっきの出来事だ。気持ち良さそうに坂口の手で達した証はすっかり片付けられてしまったけれ [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに38
  • 真面目に心配していたことがバカらしく思えるくらい、食い下がってくる坂口に呆れる。そして考えても無駄だと言った彼の言葉に納得して、自分が陥落したことを悟った。頭で考えてもわからない事がある。理屈では通らない感情がある。それを証明された気分。坂口の手が遠慮なく瀬戸の肌を弄る。繰り返し心に湧いてくるのは期待だけ。自分でもそれが不思議でならなくて、坂口の指が触れた場所を頭で辿り直す。「ッ・・・」瀬戸の反応 [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに37
  • 迷ったのは一瞬。見上げてくる視線に恋慕の色を感じて取って、己の勘を信じて突き進む。恋に落ちるのも、成就するのも理屈じゃない。衝動的に掴んできた瀬戸の手に自分の手を重ね、彼の唇を奪うと、驚くほどしっくり馴染む。互いの熱に酩酊する感覚は決して幻ではないと思う。突然、向けられる好意に気付く瞬間がある。直感も馬鹿にはできない。一旦、気持ちが透けて見えると、今まで視界に入らなかった些細なサインがそこかしこか [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに36
  • 坂口の言う、好きの意味はちゃんとわかっている。だからこそ、今度は間違えたくない。しかし考えれば考えるほど頭は真っ白になっていくから困ったものだ。向けられる好意に嫌悪感は全くない。ただ身体が熱くなっていくだけだ。頬の火照りだけでは収まりきらなくなって、身体のあちこちから熱が湧いてくる。握られたままの手が、きっと瀬戸の緊張を坂口に伝えているだろう。坂口がソファから立ち上がる。彼の動作を縋るように目で追 [続きを読む]
  • 冬の終わりに2(紳助×恵一)
  • 脱がすのは好きなくせに、紳助はスーツ姿のままだ。汚してしまうのではないかと気に留めていたのは最初の内だけで、すぐに背徳感で盛り上がってしまう。抱き締めてくれる腕は強い。待ち呆けていたさっきまでとは別の意味で泣きたくなる。「す、き・・・紳、すけ・・・んッ」逞しい紳助の分身が、また恵一の中で欲望を膨らませる。たまらず紳助のシャツを掴むと、引き剥がされてソファへ縫い止められた。「んッ・・・ふぅ・・・んん [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに35
  • 「瀬戸、コーヒーでいい?」差し出されたカップを受け取って、二人でソファに体重を預ける。思いのほか近い距離に緊張していたら、さらに坂口が手を握ってきたので瀬戸の戸惑いは増していく一方だった。「こうしててもいい?」「・・・。」身体を硬直させたまま、瀬戸は声を発することはおろか、頷くことも拒むこともできなかった。自分でもどうしたいのか、わからなかったからだ。「あの人、昔の恋人とか?」「・・・。」「この手 [続きを読む]
  • 冬の終わりに1(紳助×恵一)
  • チョコレートの祭典は恵一にとって甘い日ではない。紳助が仕事先で貰ってくるチョコレートに戦々恐々とする日だ。何を渡してもくすんでしまう気がして、結局自分は何も渡せない。イベントに思い入れがあるわけではないのだが、持ち帰ってきた物の中に本命らしき品を見つけては、苦い想いで、箱の中に品よく収まったボンボンショコラを紳助の横から手を伸ばして摘まむ。三月十四日も、叶う事なら暦から消し去りたい。紳助が義理でも [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに34
  • 坂口と黒川の放った険悪な雰囲気に呑まれて、一言も発することができないまま、坂口の家に辿り着く。瀬戸の視線に気付いているはずの坂口が、一向にこちらを見てくれない。その事に不安は増して、思わず坂口の服を掴む。「坂口、さん・・・。」「ッ・・・。」険しい目付きで前方だけを凝視していた坂口が、突然我に返ったように瀬戸を振り返る。「瀬戸」「・・・。」「ゴメン。」「いえ・・・。」気まずくて不安だ。坂口がどこまで [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに33
  • 鈍感だったら良かった。そうすれば瀬戸の嘘に気付かずガッカリすることもなかったのに。責めるような目で瀬戸を見つめてしまった自覚があった。好きだからこそ流せない。「ウソつかれると、気になる。」「・・・。」反論もせず黙り込んでしまった瀬戸に余計腹が立つ。諫めようと試みたものの、衝動に任せて瀬戸の手を取る。「瀬戸を知りたいって思う俺の気持ちは迷惑?」「ッ・・・。」自分でも職場の後輩に言う台詞ではないことは [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに32
  • 坂口に好かれているかどうかなんて、本当のところはよくわからない。川辺も言っていた通り面倒見のいい人だから、瀬戸が知らないだけで、誰とでも近い距離を取る人なのかもしれない。差した傘を隠れ蓑に、時折盗み見る坂口の横顔に答えを探す。けれど経験が足りない自分には、彼の真意などわかるはずもなかった。派手に光る大きな看板の前で坂口が足を止める。瀬戸も彼に倣って傘を畳んで店内に入り、先を行く坂口の後を追って目当 [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに31
  • 坂口は優しい。だから錯覚してしまう。彼の一番親しい人間が自分であるはずはないのに、すべてを許された気になってしまう。こんな事だから黒川との距離も間違えてしまうのだ。モニターを見つめて作業を進め、昼に遭遇した衝撃から立ち直り始めると、成長のない自分を嘆くことしかできない。「瀬戸、どんな感じ?」「増量キャンペーンのシール始めたところです。」「いっぱい振っちゃってゴメンね。」「いえ・・・。川辺さん、今日 [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに30
  • 大丈夫だと言われても、到底信用できない。けれど突き放すような笑顔に坂口は黙って頷くより他なかった。「なぁ、瀬戸。」「・・・はい。」「今日、何時くらいに上がれそう?」「・・・。」放っておくことがどうしてもできなくて食い下がってみる。「駅前のドラッグストア、夜九時までやってるから、間に合いそうだったら一緒に偵察どう?」多分この調子でご飯に誘っても、瀬戸は来ない。業務時間外、仕事をダシに瀬戸を連れ出すの [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに29
  • 初めから黒川を疎んでいたわけではない。むしろ彼の印象は良かったくらいで、警戒心の欠片も抱いてはいなかったのだ。同じ研究室の卒業生だった黒川は、いつも土曜日の午後、頻繁に顔を出しては、研究室の機材で製品のサンプル作りに励んでいた。就職難だった時期、彼が選んだのはデザイナーという道ではなく営業職。事あるごとに趣味だと言っていたが、本音では悔しい気持ちはあっただろう。引っ込み思案だった瀬戸に目を留めて声 [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに28
  • 好きなのに、上手くいかない。好きだからこそ、気の利いた事が言えなくなる。しかし沈黙に緊張しているのは、どうやら自分だけらしい。瀬戸は気に留めた様子もなくメニューを見始めて、すぐに顔を上げた。「決まった?」「はい。」オススメのメニューくらい教えてあげれば良かった。決まった後に水を差すのは気が引けて、瀬戸へは頷くだけに留める。「オムライスのセットで、コーヒーお願いします。」「俺も同じので。」「・・・じ [続きを読む]
  • この雨が通り過ぎるまでに27
  • 「瀬戸」「はい。」「昼、一緒にどう?」「俺で、良ければ・・・。」君とだから行きたいんだ、という主張する必要のない台詞は呑み込む。せっかく頷いてくれたのに、警戒されてしまったらもったいない。約束は有効だった。彼の目は迷うように一瞬泳いだけれど、了承を得てしまえばこちらのものだ。「苦手な物とかある?」「いえ、特には・・・。」少し困ったように首を傾げた瀬戸だったが、結局彼がそれ以上言葉を発することはなか [続きを読む]