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- 2008/07/04 01:01風が鳴く
- おうちが広くなったベッドが広くなった車も中が広くなったアナタとあたしの距離も広がったいつだって手の届く場所にいたいのに。... [続きを読む]
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- 2008/05/11 18:18自覚外
- 最初から完璧な「母親」になれる人なんかいないわよ。「母親としての自覚」なんて赤ちゃんと一緒に育ってくるから。どんな子供嫌いの人だって、自分の子供はかわいいものよ。産んでしまえばなんとかなるものよ。「みんな経験してきたことなんだから、大丈夫」。誰もが口を揃えてそう言った。あたしは自分には無理だと思ったから堕ろそうと思ってたのに。みんながあまりにも同じ事を言うから。そんなものかも知れないって思って。信... [続きを読む]
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- 2008/04/25 17:50遅咲きの春
- 懐かしい人の顔を見つけた。それはインターネットのウェブサイト。シモヤカズトシ。もう10年も昔に、わたしのお客さんだった人。きっともう、40に手が届いているはずの人。博多の、普通の家に生まれた二男坊。進学校に通っていたのに二男には大学は必要ないと、行かせてもらえなかったという。周りはみんな国公立や有名私立大学に進学が決まっていた。自分だけ就職することはプライドが許さなくて、外国に渡った。そこで就職した会... [続きを読む]
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- 2008/03/16 23:4614610分の一夜
- あと何回の夜に こうやってあなたの腕に抱かれて 眠れるだろう?温かい 日なたの匂いいっぱいのあなたの胸に 抱かれて 眠れるだろう?365日かける40年でたったの14610日たったの14610日なのに例えばあなたやあたしが 入院したら14610日はあっという間に減ってしまう例えばもしも明日 あたしが命を落としたら14610日は残りゼロになってしまう今夜もちょっぴり 言い争いをしたけど明日の夜もちゃんとこの腕に抱かれて眠れますように... [続きを読む]
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- 2007/11/20 00:27見えない鉄壁
- 初めてその人と出会った時、美知は何かこれまでに感じたことのない強さで引っ張られた。引っ張られた、という表現が何よりもぴったりだった。それが、恋と呼んでいいものなのか、尊敬の念のようなものなのか、それすらもわからない。入ったばかりの職場で、まだほとんどの人の名前も覚えていなかった。そこへ外回りから帰ってきた「彼」がやってきた。自分の感情が何なのかもわからないまま、けれども次の日から、美知は毎日視線の... [続きを読む]
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- 2007/10/19 10:21ごっこあそび
- あのね、小さい頃にやったみたいにさ、ごっこ遊びができたらって思うことあるよね。家族もお友だちも自分の姿も、ぜぇんぶ都合のいいことにしちゃってさ。でも遊びだから。ごっこだから。ホンモノじゃないから。何があっても、どんな自分になってても、「おしまい!」でみんな消せるの。例えば 誰かが 死んで ても、ちゃんと生き返れるの。大人になったらやっちゃいけないって誰かが決めた?……インターネットネットはきっと大人... [続きを読む]
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- 2007/09/05 12:41遠い記憶
- あの夜 ただただ歩き続けた 月のない海辺打ち寄せる暗い波に 目印のように光っていた火花青い火花 ウミホタル はじけた波の合間でここまでおいでって ここからがあなたの行きたい場所だよって教えてくれた 誘ってた 早くおいでって呼んでいた知らなかったんだ 彼女がいるって聞いていた一緒に住んでるって聞いていたでも 結婚してるなんて 聞いてなかった子供もいたんだってでき婚 0歳の子供 じゃあ私といたあの瞬間... [続きを読む]
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- 2006/10/25 21:58ぬれぎぬ
- 毎週土曜日は、朝から隣町の公園にあるテニスコートへ会社の連中とテニスをしに行くのが、長年の柴山のならわしだった。キャンプ場や野球場まである大きなその公園には、テニスコートのすぐ脇にイチョウ並木があって、吹き抜ける風の心地いい散歩道になっている。秋になれば雌木が実をつけ、熟しては次々と道に落ちてくる。これがいい酒の肴になるので、時期になると妻は必ず「お土産をよろしくね」と柴山にせがむのだった。ギンナ... [続きを読む]
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- 2006/06/07 15:05物言う株主
- 翌朝、僕の消極的な制止を振り切って、妻は9時きっかりに会社に電話をかけた。「柴田の家内です。いつも柴田がお世話になっております」声は穏やかに聞こえるが、その奥に秘めたマグマのようなものがふつふつと音を立てているのが聞こえるようだ。電話は、やがて社長に取り次がれたようだった。「先日の主人の件ですが」そう切り出す妻に、返事をしているらしい社長の低いバスが、受話器を通してかすかに聞こえてくる。と、一瞬に... [続きを読む]
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- 2006/04/23 15:44想いはきっと
- 「おばあちゃんが、倒れた」母から電話が入ったのは、里佳が仕事に行こうと身支度をしている時のことだった。里佳が、全くの気まぐれに単身で沖縄へ渡ったのは昨年の秋のことだ。親戚も友人もいない知らない土地。生まれ育った東京に飽きてしまったから、という単純な理由に、父も母ももちろん反対したが、それを押し切る形で飛び出した。おばあちゃんは父の生まれ故郷、名古屋で一人暮らしをしていた。憧れの沖縄に移り住んだはい... [続きを読む]
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- 2006/04/13 17:24てきすたいる・スケッチ0413
- まだ赤ん坊の妹は泣き声すらあげずに、ぼんやりと薄目を開けたまま眠っている。枯れ木のように腕の細い彼女の唯一生きている証は、膨らんだ腹部がわずかに上下し続けていることだけだった。ざらっとした風が一瞬吹き過ぎて、開け放したテントの入り口から細長い葉が舞いこんできた。少年はひざを固く抱いていた腕をほどいて手を伸ばし、その葉を指先で摘み上げた。それはキャンプ地のあちこちに細々と生えている雑草の切れ端だった [続きを読む]
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- 2006/03/16 19:35卒業式前夜
- ホワイトデーに遠藤くんから、他の女の子と少しでも違うものがもらえたら、卒業式の日に告白をしよう。それは茉未のバレンタインデーの日の決心だった。3年間、ついに一度も一緒のクラスになることができなかった彼。サッカー部のエースで、他校との試合ともなればあちらこちらの観客席から黄色い声援が飛ぶ。茉未は高校に入学してすぐ、中学時代からの親友である蒼子に誘われて、サッカー部のマネージャーになった。ショートカッ... [続きを読む]
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- 2006/02/07 16:40仕事仲間
- 私と美紀は合わなかったのかもしれない。こず枝は美紀のことを思い出すたびにそう感じる。こず枝のバイト先である全国チェーンのドラッグストアに美紀が入ってきたとき、彼女の第一印象はあまり良くなかった。美人で悪い子ではなさそうだったが、自分のことばかり話したがるのが気になった。それでも同じ化粧品売り場の担当になって仕事を教えてみると飲み込みは悪くなく、仕事後に一緒にご飯を食べに行くなど仲良くなれたようにこ... [続きを読む]
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- 2006/01/14 19:01てきすたいる・スケッチ0114
- 植え替えて間もない水草たちの間を、魚たちがゆらゆらと泳いでいる。流木に巻きついたウィロモスは水槽の中の水流に身を任せて、コケのような短くて濃い緑の葉をひらひらと振って見せている。時おり流木の陰から覗き見をするように姿を見せる小エビは、すっと上を通りがかる魚の影におののいて、一瞬にして身を潜めてしまう。人工的に作り出された二酸化炭素の泡が水流に乗って60cmの水槽の中にいきわたり、これから育とうとする水... [続きを読む]
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- 2005/12/21 19:57一周年
- 最初に告白をしたのは恵一のほうだった。わかばの友人で隣のクラスにいる三奈の親しい仲間の一人に恵一がいて、何度かみんなで遊びにでかけているうちに仲良くなった。高校一年の二学期、終業式の終わった後に行ったボーリング場で、ジュースを買いに外れたわかばを追いかけてきた恵一が、彼女に告白をした。2人にとって、お互いが初めての彼氏と彼女。気になっていた恵一から告白されたわかばは有頂天だった。クリスマスには一緒... [続きを読む]
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- 2005/12/18 08:40てきすたいる・スケッチ1217
- さらさらとまっすぐに、休むことなく粉雪たちが落ちて来る。窓から道路向こうの家を眺めているだけなのに、遮るように降り続く粉雪のせいで青い外かべさえもが白っぽく霞んで見えた。日がな一日大きな窓の外の移り変わっていく雪を見つめていると、ふいに自分の上にもそれが静かに積もり始めているような錯覚におちいる。粒は細かくても、町全体が大型冷凍庫のような大気でしっかりと作られているから、地上に降りてもきちんと残る... [続きを読む]
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- 2005/12/10 17:42クリスマス・プレゼント
- 12月に入ってから、美紅はバイト先を体調を壊したという嘘をついて長期の休みをもらった。バイトに行こうと家を出れば、右も左もクリスマスムードであふれかえっている。それに、どうしても耐えられなかった。一年前の今ごろ、美紅には敬二という優しい彼氏がいた。付き合って6年、次の正月には彼が美紅の両親に正式に挨拶をするということにもなっていた。そ... [続きを読む]
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- 2005/10/15 00:30その穴の向こう
- 一、十、百、千、万、十万、百万……。旅行も飲み会の誘いも断った。洋服もほとんど買っていない。化粧品は最低限だけ。だって、もうすぐきれいになったら必要なものが大きく変わってしまうもの。乃々花は貯金通帳を眺めながら、ひとりにやりと笑った。団子っ鼻はすっきりとした鼻筋に。ぽってりとした唇は薄く美しい形に。厚い奥二重... [続きを読む]
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- 2005/09/15 11:13親心は時として
- 30歳近くになっても消極的で、彼女の話ひとつ聞こえないような息子の岳が、パソコンを買ってやってから少し積極的になったように見えて、律子はなんとなく嬉しい気持ちになっていた。家にいるときは部屋にこもりがちなのは昔からだったから気にはならない。仕事にもきちんと行っているし、と思っていたら、近頃はたまに寄り道をしてくるらしく帰宅の遅い日もあ... [続きを読む]
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- 2005/08/26 20:21秋を迎えるまでに
- 結婚しても子供が生まれても、おじいさんおばあさんになっても、ずっと手をつないで町を歩いていたい。それが祥恵の理想だった。けれども間もなく祥恵の夫になろうとしている紘一は、町はおろか、二人きりの部屋の中でもめったに祥恵に触れようとはしなかった。自ら触れようとしたがらないだけではない。祥恵が冗談を言いながら手を伸ばすだけでもわずかに顔... [続きを読む]
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- 2005/08/14 23:06夜明けを、待つ
- その日病院の部屋で窓の外を見つめていた母は、いつになく穏やかな顔をしていた。 隆平が見舞いに訪れたのを認めると、あどけなくすら見える笑顔で彼を迎えた。 「いつも遠い所まで来てくれて、ありがとう」 その言葉を聞いた時、隆平は自分の耳を疑った。 母が、あの母が、自分にそんなことを言うなんて。 もしかしたら今度こそ普通の親子になれるかも知れない... [続きを読む]
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- 2005/08/10 17:22家庭の事情
- 11人兄弟の末娘で今は東京に暮らす美乃梨が、結婚したい相手がいると彼氏を北海道の実家に連れて来た。兄弟姉妹のうち未婚なのは彼女だけだったので、ついに子供たちが全員が巣立つ時が来たと思うと、親である秀夫や友子も感慨深いものがあった。やって来た彼氏はこざっぱりとした身なりの、真面目そうな青年だった。このまま順調に進んでいくものと思っていた友子たちだったが、話が具体的になる... [続きを読む]
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- 2005/07/27 17:55産まない理由〜佳奈子の場合
- 佳奈子の5つ年下の友人、玄太はいわゆる「できちゃった結婚」だ。玄太の娘の詩音は今年3歳になる。玄太の親バカぶりは共通の知人の間でも有名なほどだ。彼が娘の話をするときは、もともと細い目を糸よりも細くして、顔中の筋肉が完全に緩みきってしまう。親バカ、とからかいながらも、佳奈子たちはそんな玄太をほほえましく思っていた。ただしその笑顔も、奥さんの... [続きを読む]
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- 2005/07/23 01:09笑顔の瞬間
- ひまわり畑を見に行こう。康史からのメールで、泉美たちの久しぶりの旅行先が決まった。遠距離恋愛の二人のデートは、現地集合現地解散がお決まりのパターンだ。下り立った空港のゲートの向こうには、ひと月ぶりに会う康史の日焼けした笑顔が待っていた。例年より少し花が遅れているというひまわり畑は、それでもたくさんの観光客でにぎわっていた。冬はスキー場にな... [続きを読む]
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- 2005/07/18 01:21草いきれの夏
- その広場は中学生の美紀の腰の高さまであるような雑草が生い茂って、むせ返るような熱気だった。「中学生キャンプ」という名の9泊10日のイベントは、その原っぱにテントを張って自炊生活をするというものだった。最初に母が申し込んだら、と言ったとき、美紀はそれほど気が進まなかった。普通のキャンプ企画と違い、「中学生キャンプ」には宿泊場所と自炊という条件以外に、スケジュー... [続きを読む]
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