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  • 限界分譲地—繰り返される野放図な商法と開発秘話 吉川祐介2024

    『限界ニュータウン』の著者による続編。前著ではあまり触れられていなかった(と記憶している)都市計画法に関する記述が第1章でちゃんとなされている。限界分譲地は、その立地よりも自治体の開発規制に左右される面が大きい。1968年に都市計画法が制定されたが、その後に限界分譲地となった土地は都市計画区域外または非線引きに区分けされたため、規制は緩く、地価は安く、許可不要で開発できる面積規模も広かった。自治体の担当部署にも開発許可申請の記録が残されていないケースがほとんどだ。(注:当時、首都圏整備法により近郊整備地帯に指定された成田市、酒々井町、佐倉市以西は線引きが行われ、市街化調整区域での開発は厳しく規制されたが、本書の主対象となる八街町、山武町、大栄町などは区域外だった。その後列島改造などでそうした地域にも開発の...限界分譲地—繰り返される野放図な商法と開発秘話吉川祐介2024

  • 大学的相模ガイド—こだわりの歩き方 塚田修一編 2022

    いわば「じゃない方」の神奈川とも言われる相模地域、具体的には相模原、海老名、厚木、座間、大和それに東京都の町田を対象として、「何か」を見出そうと試みた本。相模地域は、国道16号線の郊外空間であり、一般的には「地域の独自性が失われた均質的な郊外空間」、「何もない郊外」という評価がされがちだ。・多くが相模野台地上にあるため水利に恵まれず、長らく原野が残り、開墾される余地を残してきた。農家の女たちは畑までの坂の上り下りや、深井戸からの水くみに苦労した。・戦前から軍の施設が多く、大戦中は首都防衛の拠点が置かれ、現在も多くの米軍施設が位置している。・高度成長期からバブル期にかけて、官民の住宅開発が活発に行われて人口が急増した。現在その郊外住宅地には高齢化の波が押し寄せ、活況が失われ、再生が試みられている。・相模大野...大学的相模ガイド—こだわりの歩き方塚田修一編2022

  • 財政・金融政策の転換点—日本経済の再生プラン 飯田泰之 2023中公新書

    経済カテゴリの本は結構読んでいたつもりだが、経済学の本を読んでノートを書くのは久しぶり。経済学の復習と最近の金融政策に関する知識のアップデートのためにと思ってこの本を購入し、読み進んだ。ブキャナンの新正統派批判とかモディリアニとか、50年近く前に学習したことを懐かしく思い出した。しかし、読み進めていくうちに、この本はリフレ派と言われる著者の主張が込められていることがわかってきた。(第3章)日本の財政が破綻する可能性は低い。国債金利rよりも経済成長率(名目)gが高ければ財政は破綻しない(修正ドーマー条件)。2013以降コロナを除いて日本は〇。途上国などでは突然の金利上昇(=債券価格下落)発生が起こり得るが政府日銀の対応で。(※財務省はr≒gを前提にプライマリーバランスの黒字化=政府債務残高/GDPの引き下げ...財政・金融政策の転換点—日本経済の再生プラン飯田泰之2023中公新書

  • インドーグローバル・サウスの超大国 2023中公新書

    この本は、インドの多様な地域特性に始まり、政治情勢、モディ政権化のインド経済、主要財閥と産業、貧困と環境問題、外交、日印関係までを幅広く解説している。インドに関する日ごろの疑問1独立後、インド経済はなぜ長らく停滞し、なぜ近年急成長しているのか?独立から1996まで国民議会派がほぼ政権を握り、インディラ・ガンジー首相などが非効率な社会主義的慶経済運営を推し進めたことから、東・東南アジアとは対照的に経済は停滞した。1991年に経済自由化に着手し、貿易自由化、関税引き下げ、輸出振興策が採られて経済は上向き、2003年にはBRCsの一つに挙げられるなど高い経済成長を記録した。2010年代には調整局面を迎えたが、2014年総選挙のBJPインド人民党勝利とモディ首相就任以後高い経済成長率を示し、その後コロナ禍があった...インドーグローバル・サウスの超大国2023中公新書

  • 京都―未完の産業都市のゆくえ 有賀健 2023新潮選書

    京都大学名誉教授である経済学者が書いたかなり厳しめの京都経済論。内容は多岐にわたり、博学であるとともに経済学の分析力を縦横に使っていて気持ちがよい。こういう本は無理でもこのような論文を書いてみたいと思わせる。通説では京都は伝統産業が残る一方、オムロン、島津、村田製作所など新産業も育ち、しかも市内に本社がとどまっていて、褒められることが多い。しかし本書によると伝統産業は孤立し、新規企業は個別の努力で発展し、地理的にも離れている。京都の町衆は基本的に中小自営業者であり、その利害は近代化の中でしばしば市場の論理と対立した。京都経済は都市全体しての成長の源泉がなく、銀行も現在まで育っていない。だから銀行や商社に育てられて大きくなった企業がない。最近の京都は政令都市の中で事業所の開業率が最低で新規事業所の雇用創出が...京都―未完の産業都市のゆくえ有賀健2023新潮選書

  • コンテナから読む世界経済 松田琢磨 2023

    序章日本は大豆の94%、うち食品用(飼料用などを除く)の80%を輸入している。輸送費用を考慮しても輸入大豆の価格は国産大豆の約半分。大豆の輸送はばら積み輸送とコンテナ輸送があり、ばら積みの方が運賃は安いものの、非遺伝子組み換え大豆にこだわる日本はコンテナ輸送を多く利用している。第1章過去28年(1990~2018)で世界のGDPは3.6倍に増大し、海上輸送(重量ベース)は2.8倍に伸長、うちコンテナ比率は15.7%(80年代の3倍)に拡大した。コンテナ輸送ネットワークの広がりが生産拠点の分散、グローバルサプライチェーンの確立を促した。コンテナ輸送は今後の生産・販売の先行指標だ。第2章世界のコンテナ輸送の二大基幹航路はアジア北米とアジア欧州。アジアで生産された消費財や中間財が欧米に運ばれ、その3分の2は中国...コンテナから読む世界経済松田琢磨2023

  • 日経大予測2024これからの日本の論点 日本経済新聞社編 2023

    論点5見えてきた日銀・異次元緩和解体の姿異次元緩和には3つの主な構成要素がある。第1は金利コントロールで、長期は10年国債利回り、短期は日銀当座預金の一部金利。第2は資金供給量の拡大方針による量的緩和、第3はETFなどリスク資産の買い入れ。第1は2%物価目標の持続的な実現が見通せたら終わりを検討しそう。第2はよりハードル高いと考えられてきたが、CPI上昇は続いていおり、分からなくなってきた。第3は既に購入を大幅に減らし、既に出口政策が動き出しているとも言える。長期金利の操作という異例の政策には副作用が多い。植田総裁は24年秋ごろまでに過去に金融政策のレビューを行うとしており、その時期にはより持続性の高い枠組みに変える可能性がある。日経大予測2024これからの日本の論点日本経済新聞社編2023

  • 日本の都市百選第1集 牛垣・稲垣・小原・駒木・西山・山口 2023

    月刊誌『地理』に連載されていた地理学者による都市の魅力や特徴、歴史や課題についての記事を単行本にしたシリーズの第1集。6人の地理学者による17都市、18記事(大阪のみ2つ)が掲載されている。一つひとつの記事はそれぞれに面白いのだが、残念なことに、思い思いの各論、ケーススタディがならんでいるだけで、総論とか体系に当たるものがない。学者・研究者が集まってシリーズ本をつくるのだから、今からでもせめて分類整理くらいはしてくれることを期待したい。もう一つは、いかにも地理学者らしいとも言えるが、都市を自然現象のように観察していて、都市計画をはじめとする政策やその影響、市民によるまちづくり活動などに関する記述が、ゼロではない(例えば豊橋市、徳島市)もののかなり少ない印象を受けた。地理学者が、都市や地域を研究対象にしなが...日本の都市百選第1集牛垣・稲垣・小原・駒木・西山・山口2023

  • 敗者としての東京—巨大都市の隠れた地層を読む 吉見俊哉 2023

    古代から戦後の時代まで、東京にまつわるいろいろなことが書いてある興味をそそった、東京の地誌に関する記述の要旨をノートする。◇寺と神社幕府成立から100年の18世紀初頭に、江戸には1800もの寺院があった。寺院は宗教的な機関であると同時に庶民が学習する文化機関であり、幕府が死者を管理する機関でもあった。寺院は宗派ごとに組織化され、人々は宗旨と檀那寺を定め、出生婚姻死亡の際に檀那寺から証明書をもらわねばならなくなった。参勤交代により江戸に住む大名や家来のために全国諸大名それぞれに国元の寺院の分室が江戸に建てられ、その結果1800にもなった。城の拡張や新たな武家の開発の度に、寺院は周辺へと移動させられた。西本願寺は日本橋から築地へ、東本願寺は神田から浅草へと移され、広くなった。寺院は檀家として武家との関係が深く...敗者としての東京—巨大都市の隠れた地層を読む吉見俊哉2023

  • 「地方国立大学」の時代—2020年に何が起こるのか 木村誠 2020

    第3章や第4章に書かれている広島大学をはじめとする地方大学の新しい取り組みの紹介と今後の期待がこの本の主眼なのだろう。しかし、私は地域と大学を考えるための基礎知識を得るためにこの本を手に取ったので、第1章と第2章から気になった点をノートする。平成の30年間で18歳人口は200万人超から120万人弱まで減った。出生数は平成の間に24%減ったから18歳人口が今後減少することは確実だ。大学入学者数の母体が減少するとわかっているのに大学は増加している。大学進学率は2018年頃にはっきり横這い傾向になった。私立大学の4割が入学定員割れになっている。にもかかわらず、文科省はこの30年間大学の新設を次々と認可してきた。平成初期は公立大学の開学が目立ち、交付金も総務省の管轄だったため文科省の設立認可は甘かった。昭和後期に...「地方国立大学」の時代—2020年に何が起こるのか木村誠2020

  • 沖縄のトリセツ 昭文社 2021

    沖縄市の地質は、読谷村(南から1/3くらい)付近を境に南北で全く異なる。北部の地層は琉球列島がまだ大陸の縁辺部にあったころの4000万年以前に形成された付加体で西側ほど古い。沖縄島最高峰與那覇岳503mも北部の国頭村にある。南部は海底に泥や砂が堆積して形成された島尻層群と、琉球石灰岩が厚く堆積する琉球層群の2つの地層群で構成される。ゆいレールは2003年に開業した跨座式モノレール。2両編成の愛らしい車両が那覇空港を起点に全長17kmを40分で結ぶ。渋滞がなく定時運行可能なことから好評で成功を収めた。沖縄の歴史。14世紀には北山、中山、南山の3つの王国が成立しそれぞれが明の皇帝に朝貢していた。15世紀には南部の尚氏が三山を統一し琉球王国を誕生させ、その拠点として首里城を築いた。尚巴志は明や日本、さらにスマト...沖縄のトリセツ昭文社2021

  • 風景をつくるごはん 真田純子2023

    著者はこの本で、都市と農村が良好な関係であるために、そこに向かって社会のシステムを変えていく方法を考えるための、地理的な、時間的な、そして思索の旅をしている。著者はいろいろな文書資料を調べ、日本やイタリアの農村を訪れている。・景観法、農水省美の里プラン21・EUの共通農業政策CAP、農村振興のための国家戦略計画PSN、伝統的農産物保障TSG、・イタリアのワインと郷土料理とお祭り、アグリツーリズモ法、オッソラ地方の石積みの集落・能登丼、日之影町の棚田、那賀町の木頭ゆず酢・日本の農泊、農林水産物地理的表示保護制度GI認証、・日本の農業基本法、1960~70年代の経済計画、新全総、過疎法、中山間地域直接支払制度、・流通の大規模化効率化、全国広域市場体系著者の思いが感じられる箇所をいくつか抜き出してみる・(棚田地...風景をつくるごはん真田純子2023

  • ぶらりユーラシア—列車を乗り継ぎ大陸横断、72歳一人旅 大木茂 2021

    旅の途中に72歳になったベビーブーマーの鉄道旅日記。2019年8月20日~11月12日に、ロシア、サハリンから中国、カザフスタン、イラン、トルコ、ブルガリア、イタリアを経てポルトガルまで列車を乗り継いで旅をした。いかにもあの世代らしいクセはスキップして読んだ。主な国境越えの様子〇ロシアから中国へハバロフスク発ウラジオストク行きの夜行列車を朝6時台にウスリースㇰで降り、バスで国境の町グロデコボへ。鉄道駅で中国黒竜江省の綏芬河への17時43分発列車の切符を1400円で購入。中国人団体客をかき分け、税関を通過し列車の座席にたどり着く。1時間で着いた綏芬河駅では警察官質問と入国審査、無事入国し駅前のホテルに予約なしで投宿。〇中国からカザフスタンへウルムチ→アルマトゥイの週一運行の国際列車は旅行社頼みでチケット予約...ぶらりユーラシア—列車を乗り継ぎ大陸横断、72歳一人旅大木茂2021

  • 宮崎のトリセツ—地図で読み解く初耳秘話 2022

    宮崎県の特徴として、国づくり神話や古墳時代は華やかだがその後の歴史が日本史からほとんど消えていたこと、何もないところに県庁が置かれ宮崎市になったことの2つが挙げられると思っていた。そのあたりをこの本で調べてみた。古事記と日本書紀には、天照大御神の孫のニニギノミコトが日向の高千穂に降臨したとあることから、宮崎県は天孫降臨の地とされる。ニニギノミコトの3代子孫が神武天皇で、45歳のときに美々津港から東遷を開始し、瀬戸内海を進みやがて奈良盆地畝傍山麓で初代天皇に即位する。現存する西都原古墳群は九州でも最大規模の古墳群で、ヤマト王権とも関係するらしい。日向の国は7世紀末に成立し、薩摩と大隅はその後日向国から分離独立した。その後、日向国は表舞台から姿を消し、室町から戦国には伊東氏が勢力を拡大するが薩摩の島津氏に負け...宮崎のトリセツ—地図で読み解く初耳秘話2022

  • 「経済成長」の起源―豊かな国、停滞する国、貧しい国 マーク・コヤマ、ジャレド・ルービン

    著者の一人は日系らしき名前だけれども、期待に反してこの本は欧米的な視点で書かれている。第1部では経済成長の条件として、地理、制度、文化、人口、植民地についてそれぞれ一つの章を設定して論じている。「研究者たちは、大半のイスラム社会の特徴である政治と宗教の混在と、イスラム法への固執が中東の経済成長の可能性を大きく制限してきたと示唆する。中東にうかがえる経済の停滞と政情不安は、イスラム教が権力エリートたちによって道具化されてしなった副産物なのだ。これは必ずしもイスラム教に限ったことではなく、キリスト教などほかの宗教も同じように手段として利用されてきた。」第2部では、北西ヨーロッパ、産業革命、工業化の3つの章で欧米露の経済成長を論じた後、第10章後発国で日本、東アジア四虎、中国の経済成長と、インドやアフリカが貧し...「経済成長」の起源―豊かな国、停滞する国、貧しい国マーク・コヤマ、ジャレド・ルービン

  • 司馬遼太郎の現在地Ⅱ「宗教 旅 国家 文明」 2023

    司馬遼太郎の本でちゃんと読んだものと言えば、週刊誌に連載されていた「街道をゆく」シリーズの他は、「菜の花の沖」「空海の風景」くらいだろうか。ずいぶん昔のことで本も手元にないからよく覚えていないけれども。司馬遼太郎の本の印象というと、小説とエッセイと歴史書と旅行記が一緒になったような本で、具体的でわかりやすくて面白く、旅心を誘ってくれる。空海の風景善通寺、満濃池、西安(長安)、高野山、京都東寺菜の花の沖淡路島五色、函館、クナシリ島司馬遼太郎の現在地Ⅱ「宗教旅国家文明」2023

  • 日本列島の「でこぼこ」風景を読む 鈴木武比古 2021

    日本列島も千島列島もアリューシャン列島も南西諸島も、西太平洋の島々の列は太平洋に向かって膨らんだカーブに沿って並ぶ弧状列島だ。その先には深い海溝があり、島々には火山が多い。第1章がこのような記述から始まるから、当然弧状列島の成因の説明があることを期待させる。ところが、その説明がない。「これは地球が球体であること関係します。ピンポン玉に圧力をかけて凹ませるとそのふちが弓なりになります。」凹ませるような強大な力は「その下がプレートの沈み込み体であることがその要因と考えられています。」「なぜ沈み込むのか、実はまだよくわかっていないことも多いのです。」著者は地球物理学者ではなくて地理学者だから、期待したのが間違いだったらしい。日本列島の「でこぼこ」風景を読む鈴木武比古2021

  • 鉄道と愛国―中国・アジア3万キロを列車で旅して考えた 𠮷岡桂子 2023

    第1部「海を渡る新幹線」では中国の高速鉄道を、第2部ではアジア各国の鉄道計画、日本の新幹線売り込み、日中の競争などをわかりやすく記述している。タイのバンコクと700㎞離れたチェンマイを結ぶ新幹線計画はぴくりともしない。在来線は空いている。飛行機や長距離バスが頻繁に往来し、格安航空なら数千円だ。日本企業幹部は「採算がとれない」とあっさり言う。タイ側は運営会社を両国で出資することを期待するが、日本の民間企業がそんなリスクをとれるわけがない。新幹線輸出に前のめりな日本政府が絵を描きたかったのだろう。ジャカルタとバンドンを結ぶ高速鉄道計画は、日本の深いかかわりに反して、ジョコ大統領は中国を選んでしまった。中国はインドネシア政府に保証を求めず2019年開業を約束した。日本は財政負担なしは難しいと考え、開業時期も土地...鉄道と愛国―中国・アジア3万キロを列車で旅して考えた𠮷岡桂子2023

  • 旅行の世界史―人類はどのように旅をしてきたのか 森貴史 2023

    辞書によると、旅または旅行とは「住んでいる所を離れて、よその土地を訪ねること」だから間違いではない。しかし、この本は日本語で言えば、遠征、巡礼、探検、航海、登山、留学、団体旅行、観光旅行、ドライブ、宇宙旅行まで扱っていて、カバー範囲が広すぎるように思えた。その一方で世界史といっても対象はヨーロッパ世界にほぼ限定されている。近代ツーリズムの祖と言われるトマス・クックは、1841年に最初の団体旅行をプロデュースした。それは英国内の貸し切り列車での日帰り旅行だったが、参加者は約500人いたらしい。クックはしだいに距離や日数を伸ばしたが、スコットランドの鉄道会社が自ら旅行を企画すると、ついてヨーロッパ大陸への団体旅行を構想した。1872年にはクックは222日間の世界一周ツアーを企画し、なんと文明開化を推進していた...旅行の世界史―人類はどのように旅をしてきたのか森貴史2023

  • 地霊を訪ねる—もう一つの日本近代史 猪木武徳2023

    経済学者による鉱山の旅。筑摩書房の『ちくま』に連載した27回の旅の文書をまとめたもの。7佐渡を例にその構成を見てみる。書き出しは承久の変で敗れ佐渡に島流しになった順徳上皇をはじめ、世阿弥、日蓮など中世以前に佐渡流刑となった人物。次いで近世以降金銀山が発見され、相川が栄華を極めたことが記される。佐渡汽船で両津港に着いた著者は、名物のカキフライ定食を食し、北一輝の寺を訪れ、次に佐渡に密度高くある寺社のうち、日蓮ゆかりの妙宣寺で日蓮の宗教的情熱を考える。徳川幕府創業期には大久保長安が佐渡奉行として鉱山を管理し幕府の財政と地方産業振興に功績を残した。世阿弥が佐渡に流された証拠となる歴史書を引用したり、金銀山の研究文献『佐渡金銀山の史的研究』から採掘の歴史や精錬技術を取り出し記している。佐渡への同行者がいたのか、佐...地霊を訪ねる—もう一つの日本近代史猪木武徳2023

  • 図説世界の地域問題100 漆原+藤塚+松山+大西 編2021

    たまたま手に取った2冊の本から一般論的な批評をするのは必ずしも良いこととは思わないが、それでもしたくなった。図書館で見つけたタイトルの本では日本の地理学の先生たちが世界の100の地域問題を1テーマ見開き2ページで解説している。目次はアジア、アフリカなど地域によってグループ化され、各テーマはあくまで個別具体の説明に終始している。地球温暖化とヨーロッパアルプスのスキー場、中国のゴミ問題、子どもの貧困の地域差など。ふつう、学問というものは、スタートは好奇心に駆られた各論であっても、分類化、体系化、理論化し、それによって得た武器を用いて再び各論に入っていくものだと思う。日本の地理学は各論に始まり各論に終わっているように思われる。もう一つの本は、「地図とデータで見る現代都市の世界ハンドブック」というフランスの地理学...図説世界の地域問題100漆原+藤塚+松山+大西編2021

  • 大インダス世界への旅 船尾修2022

    昨年出版された本。しかし著者が実際にチベット、ラダック、カシミール、バーミヤン、パンジャーブ、その他聞きなれないインダス上流の地を訪ね歩いたのは2005年とか2007年とか2003年のこと。各地を訪れた時期がそれぞれいつのことなのか、本文を読んでもはっきりしない。それがこの本最大の欠点。チベットで著者はカン・リンポチェ(標高6656mの聖山)を巡礼し、鳥葬の現場を目撃した。2007年にはほとんど制約のない自由な旅行ができた。今はあらかじめ旅行代理店通して日程を組み、漢族のガイドを必ずつけなくてはならない。カシミールはインドとパキスタンが領有を争う係争地であり、うち5分の2をパキスタンが実効支配し、アサド・カシミールと呼ばれている。2005年10月、パキスタン北部地震では8万人が死亡し400万人が家屋を失っ...大インダス世界への旅船尾修2022

  • JICA×SDGs国際協力で「サステナブルな世界」へ 2023

    20の分野ごとにJICAの国際協力の活動が紹介されている。ソフトの事業と行政公務員の能力向上に関する事業についてノートする。目に見えるインフラ建設やモノの提供と比較し理解を得るのに時間がかかることがある。成果は必ずしも目に見える明確なものにはなっていないように読めるものもある。モンゴル、ウランバートル都市計画旧社会主義国であり行政側が開発に当たり住民意見を取り入れるという発想がなかった。そこで都市マスタープランは住民参加型の発想をベースにつくることとし、住環境改善事業候補エリアではタウンミーティングを開き住民意見を政策に反映されるようにした。ゲルに住む元遊牧民が都市生活のルールを学ぶワークショップを開いた。インドネシアの土地制度の改善に協力土地収用や土地の評価の法制度が不十分で未登記の土地や境界不明土地、...JICA×SDGs国際協力で「サステナブルな世界」へ2023

  • 東京の美しいドボク鑑賞術 北河+小野田+紅林+高柳 2023

    東京都内にある全部で62の土木遺産の鑑賞術。新しそうなのはビルになっちゃった宮下公園(2020)、恐竜橋こと東京ゲートブリッジ(2012)、大橋ジャンクション(2010)など。古いものでは羽村のまいまいず井戸(鎌倉時代)、江戸城石垣(江戸時代)、玉川上水(1653)など。明治から昭和にかけてのものが最も多そうだ。東京ゲートブリッジのトラスボックス複合構造という世界唯一の形は、航路のため橋桁を50m以上の高さにすることと、羽田空港に近く空域制限のため100m以上の塔は建設できないという制約のため。東京スカイツリー(2012)は用地の狭さゆえ東京タワーのような4本脚の基礎を構築できなかったため、3つの柱で支えられ、地上は五重塔の技術を応用した「心柱」を中央部に配置し、地震による揺れを抑制している。大橋ジャンク...東京の美しいドボク鑑賞術北河+小野田+紅林+高柳2023

  • ずばり東京2020 武田徹 2020

    1964東京五輪直前の東京を活写した開高健『ずばり東京』にならい、2020五輪前夜の狂騒から感染症不安へ急転回した東京を取材・記録した本。私はむしろ、今の東京をつくった1960年代の都市開発のスケッチとして、この本を読んだ。空路で羽田に着いた人たちや選手の移動を素早く確実にするために、首都高速道路は、公有地(川、道路、公園)の上の空間を選んで建設された。人呼んで「空中作戦」。その日本橋上空を覆う道路を地下に付け替える事業が、2014年の首都高速更新計画に盛り込まれた。その準備である困難な調整作業が2020年を目途に進められている。今では想像しにくい話だが、東海道新幹線計画は極めて不人気であり、国鉄内部でも島技師長直系を除けば反対派が多数だった。それが東京五輪成功のためという大義とセットで誰にも支持されるよ...ずばり東京2020武田徹2020

  • 自滅する大都市—制度を紐解き解法を示す 織山和久2021

    この著者のことは知らなかった。この本には経済学部⇒外資コンサル出身らしいところと、らしくないところの両方がある。らしいところは、数字で示していること。虎麻メインタワー325mがもたらす周囲への圧迫感を地価下落効果で示し、268億円と算定している。らしくないところは、都市再生以来の自民党政権下での都市政策にかなり批判的であること。オリンピックはコミケと同じ私的事業であり国や都が財政負担する意義はない。大会施設は負の遺産となる。風致地区として景観保全されてきた外苑地区が新国立競技場の費用捻出のため規制緩和され高層ビルが建つ。1.戦後木造戸建てが主流になった理由は?戦災と人口急増による住宅不足。鉄やセメントは産業用に配分し木材を住宅建築に。財産税と持ち家政策。都市計画の不在。2.なぜ木造住宅密集地域が広がったま...自滅する大都市—制度を紐解き解法を示す織山和久2021

  • アフリカを学ぶ人のために 松田素二〔編〕2023

    アフリカに関する情報が凝縮された本。印象に残ったことをノートする。1980~90年代、アフリカは「絶望」の大陸だった。人口は倍増したのに経済成長はゼロ%、貧困化、戦乱、エイズ。だが2000年代からアフリカは「希望」の大陸になった。しかしそれは資源と市場に惹きつけられているのであり、その点では植民地時代と変わらない。本書はアフリカの潜在力からアフリカをとらえ返す。広大なアフリカの固有言語は、ニジェールコンゴ、ナイルサハラ、アフロアジア(アラビア語など)、コイサン、オーストロネシア(マダガスカル)の5語族しかない。実質的には旧宗主国の言語でしか高等教育を受けることができず、ヨーロッパの言語で一部エリートが国を支配する構造が続いている。植民地支配の際、白人は現地の伝統的権威者等を首長にとりたて、彼らの権威を保護...アフリカを学ぶ人のために松田素二〔編〕2023

  • 農家はもっと減っていい—農業の「常識」はウソだらけ 久松達央 2022

    販売農家107万戸のうち、8割の零細農家(売上げ500万円以下)の総売り上げは全農業産出額の13%、1割強の上位層(売上げ1000万円以上が8割弱を稼いでいる。うち3000万円以上の層が産出額の53%を占める。プロ農家が経営規模を拡大し、食っていけない層が市場から退出している。これまでの日本農業は、基盤整備と機械化の進行によって必然的に起こるはずの淘汰と規模拡大が遅々として進まなかった。農業を聖域視し農業保護をつづけてきたこと、兼業化が集約を妨げたことなどが原因だ。しかし、ここに来て「農業大淘汰時代」に突入した。農家が減って日本農業が危機に瀕しているわけではない。日本の人口は減る。農家も農地も減って良い。残す農地、あきらめる地域を今すぐ検討べきだ。「先祖代々」、「棚田の原風景」など幻想に酔っている余裕はな...農家はもっと減っていい—農業の「常識」はウソだらけ久松達央2022

  • 教育は遺伝に勝てるか 安藤寿康 2023

    この本で目立つのは、5組の一卵性双生児へのインタビュー。性格、学業成績、人間関係、好きなもの、あらゆることが大変良く似ている。結果、同じ大学に進み、同じような職業に就いている。遺伝の影響の大きさを測定するには、同じ家庭で育った遺伝子の等しい一卵性と、遺伝的には一卵性の半分しか共有しないが同じ家庭で育った二卵性の類似性を比較するという方法がある。知能や学業成績は、遺伝要因が20%から多い場合は50%を超える。年齢が上がるに連れ、本来の遺伝的資質が顕在化する。パーソナリティ(性格)や精神障害は、二卵性の相関が一卵性の相関の半分以下であり、類似性が遺伝だけでほとんど説明できてしまう。「おわりに」で著者はこう記している。行動遺伝学者として言いたかったことは、遺伝が教育に負けるほど弱くないということ。ただし、「遺伝...教育は遺伝に勝てるか安藤寿康2023

  • 郊外住宅地の再生とエリア・マネジメント 編著:洋光台エリア会議、監修:小林重敬 2022

    横浜市の洋光台は昭和40年代に生まれたニュータウン。URと行政が連携しながら居住者とともにエリアマネジメントに10年取り組んできた。年月を経た郊外住宅地を活気づけ、将来にわたり持続させることを目的とするプロジェクト”ルネッサンスin洋光台”を進めるためにこれまでのエリマネはほとんど商業業務地区で行われた。既成の住宅地ではまず動機づけが課題となる。エリア会議はまず既存の高齢者支援等を行う地域ケアプラザからキーとなりそうな個人や団体を紹介してもらい、ワークショップを何回も開催し課題や思いを把握した。商店街の一角にCCラボを設置しサークルやお教室に貸し出した。行政・URのリードを軽減し、地域住民主体の体制に移行することが必要になった。2019年、スタッフが常駐する「まちまど」が発足、CCラボの運営を受託。まちま...郊外住宅地の再生とエリア・マネジメント編著:洋光台エリア会議、監修:小林重敬2022

  • 格差の起源—なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか オデット・ガロー2022

    第1部何が「成長」をもたらしたのか多少の地域差はあるものの、労働者の1日の収入は3000年前のバビロンから産業革命前の西欧まで、ごく狭い範囲で上下していた。石器時代の遺跡で発見された人骨の平均年齢は30年弱、農業革命によって目立った変化はなく、産業革命前の西欧でも30~40年だった。技術進歩によって生産力が高まると人口が増え、豊かさの水準は生存ぎりぎりの水準まで逆戻りするからだ。マルサスの均衡(=貧困の罠)だ。そのマルサスの均衡は、産業革命から100年近くたった時点で消滅し、驚異的な成長がそれに続いた。世界全体で1人当たり所得は14倍に上昇し、平均寿命は2倍以上になった。先進国と途上国の経済格差は縮まらず、生活水準の格差は過去2世紀の間大きく広がってきた。グローバル化と植民地化は国の豊かさの差を広げた。工...格差の起源—なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのかオデット・ガロー2022

  • 交通崩壊 市川嘉一 2023

    元日経新聞記者が書いたとは思えない本。地域交通に関し、大きな政府、大胆な公的補助、鉄道ネットワークの維持、EVシフトを主張・提案している。日経記者が書いたとは思えない理由は、この本には公共交通、特に地方の鉄道事業の利用者数、収支などのデータの記述がほとんどないことだ。第1章日本の地域公共交通の多くはこれまで民間事業者により運営され、生き延びてきた。だがモータリゼーションや人口減少・高齢化などを背景に利用客の減少が続き、路線廃止が広がるなど状況は厳しくなっている。地域公共交通活性化法が制定、改正されたが、バス路線共同化には公取・独禁法が立ちはだかる。一方、欧州では、例えばドイツでは都市圏の各種交通機関の共通運賃やダイヤ調整などサービス一本化を目的とした「運輸連合」という制度がある。交通事業者に対しては多額の...交通崩壊市川嘉一2023

  • 世界自然遺産見て歩き―成り立ちが分かれば「風景」が変わる 古儀君男2020

    世界の26か所の世界自然遺産の成り立ちの説明と著者自身による訪問記。著者は地質学、火山学を専門とする元高校教師であり、本書は火山や断層、滝や峡谷、石灰岩や花崗岩の特異な地形など、自然遺産の特徴ある地形や景観がどのように生成されたのかについて、詳しく説明している。中国・黄山は白亜紀の花崗岩が隆起し、割れ目に沿って氷河や風雨が浸食を繰り返したことにより奇岩怪石の多い独特の景観ができた。さらに岩の割れ目に黄山松が育ち、奇岩、青松、雲海、それに温泉を加えた「四絶」が黄山の魅力となっている。鉄道黄山駅からバス50分、乗り継ぎ15分でホテル、徒歩15分で慈光閣、ロープウェイ15分で玉屏(標高1600)、階段遊歩道を歩き、蓮花峰は閉鎖のため3時間弱で標高1840の光明頂。ヴィクトリアの滝は、広大な大地を流れる大河ザンベ...世界自然遺産見て歩き―成り立ちが分かれば「風景」が変わる古儀君男2020

  • 東京駅・駅前広場のデザイン 篠原修・内藤廣 編著 2023

    東京駅のデザインはドイツ人のバルツァーが原案をつくり、辰野金吾が後を継ぎ、完成したのは1914年だ。大名屋敷群が空き地になっていた丸の内に、皇室専用口を中央に造られ、日本橋や銀座に近い八重洲側には出入り口はなかった。駅舎の構造は鉄骨レンガ造りで、関東大震災でもほとんど被害を受けなかった。1945年空襲により屋根は落ち鉄骨も損傷したが駅舎は残り、3階建てを2階建てに修復して長く使われた。関東大震災後の帝都復興事業で駅前からの行幸道路が江戸城の石垣を抜いて皇居前まで延伸され、幅員72mに拡幅された。鉄道の大ターミナルが歴史ある首都の都心にあり、かつ四方八方に繋がっているのは世界でも少ない。1888東京市区改正設計で決定された(東京~上野間が繋がったのは1925年)。東京駅丸の内駅舎は当初の3階建てに復原され2...東京駅・駅前広場のデザイン篠原修・内藤廣編著2023

  • 「2030年の日本」のストーリー 牧原出[編著] 2023

    第5章饗庭伸退場する都市空間と国土の身体化よりノート大半の未来都市は、現代の都市の空間のあちこちから少しずつ人が退場し、空いた空間があちこちに散在するという姿をしている。空いた空間のそれぞれは小さく、バラバラのタイミングで空いていく。…都市のスポンジ化人口が増え都市が拡大していた時代は、人々の未来への欲望を読み取り空間が開発されてきた。しかし人口が減少する時代は、空間が読み取られ、呼び覚まされた欲望が空間を通して再構成されていく。ところが若い学生は経験の檻に閉じ込められて、空き地空き家にシェアハウスやカフェばかりを提案することしかできない。1960年代から70年万博までは、政府の所得倍増計画や全総計画、丹下健三の東京1960と、もっともらしくあてずっぽうな展望を描く「パノラマ」の全盛期だった。70年代は現...「2030年の日本」のストーリー牧原出[編著]2023

  • 地球の歩き方 中央アジア サマルカンドとシルクロードの国々

    中央アジア5か国を対象。各国別記述のページ数はウズベキスタン98p、カザフスタン28p、キルギス24p。トルクメニスタン8p、タジキスタン10p。中央アジアの観光と言えば、サマルカンドやブハラのあるウズベキスタンがピカ一なのだ。天山山脈の麓にあるキルギス。キルギスには多くの民族が暮らすが、キルギス人はトルコ系モンゴロイド人種の民族で日本人とよく似た顔つき。男性は白いフェルト帽をかぶり、女性は刺繍で飾った帽子に白い布地を巻きつけたかぶり物。キルギスの現地の発音はクルグスに近い。首都ビシュケクは人口92万人、ソ連時代の都市計画によって造られた碁盤の目状の道路網を持ち、5階建ての建物が整然と並ぶ。外務省の渡航情報(2019年4月によると、キルギスのうちレベル3,レベル2の地域は国境地帯にあり、首都ビシュケク市を...地球の歩き方中央アジアサマルカンドとシルクロードの国々

  • 日本の川西日本編 北中康文編 斎藤眞-小松原純子監修

    全国109の一級河川のうち西日本の51河川を対象。地質学の専門家が監修しているためか、岩石や地質年代の説明が詳しい。カラー写真が豊富なのはありがたいが、ほぼ新書本サイズなので一つ一つの写真が小さいのが残念。江の川が日本一遠回りして流れるのは、浸食に強い白亜紀の溶結凝灰岩、白亜紀以降隆起量が乏しい、北東-南西方向の断層による弱線を使った流路の発達などが原因。流域南西部は浸食に弱い花崗岩が露出し流域が瀬戸内海側に奪われつつある。約300万年前までは讃岐山地がなく、吉野川は北上し瀬戸内海に注いでいた。四万十川が窪川付近で土佐湾に迫りつつ反転西流するのはフィリピン海プレートの沈み込みによる土佐湾側の隆起が原因。筑後川中流の山田堰は国内唯一の傾斜堰床式石張堰。ここで分流する堀川用水に三連水車がある。川がつくる地形3...日本の川西日本編北中康文編斎藤眞-小松原純子監修

  • 宮本常一の旅学―観文研の旅人たち 福田晴子著・宮本千晴監修 2022

    旅する民俗学者・宮本常一の本に私は50年前頃高校の図書館で出会い、大学生時代も近所の図書館の書庫でよく読んでいた。日本中の農村漁村山村を旅してそれぞれの土地の人々の中に入り込み、人々の日常生活、田畑の作物、村の歴史や祭りや信仰その他ありとあらゆることを書き記した本がシリーズとなって書庫にならんでいた。宮本にあこがれつつも、私は旅よりも家に比重を置き、定職を持ち、ローンでマイホームを得て、妻と共に子育てしながら生きてきた。それでも50年前の気持ちを心の片隅にとどめていて、幾分自由となった今、少しだけでも宮本の旅する人生の真似事をしてみたいとひそかに願っている。さて、この本自体は、近畿日本ツーリストがスポンサーとなり宮本常一が若者たちを育てた日本観光文化研究所ゆかりの人々へのインタビューをもとに考察した「旅学...宮本常一の旅学―観文研の旅人たち福田晴子著・宮本千晴監修2022

  • 日銀の責任―低金利日本からの脱却 野口悠紀雄2023

    第3章大規模な円安介入が行われたのは2003年から。これによって重厚長大産業が息を吹き返し古い産業構造が残った。円安のおかげで企業は人減らしや合理化、新技術開発や新しいビジネスモデル探求の必要がなく、旧態依然としたビジネスを続ければよく、このようなことが続いたために企業の体力が低下し日本病から立ち直れなくなった。第4章異次元緩和の本当の目的は、国債大量購入による金利引き下げ⇒財政資金調達容易化・円安⇒大企業の利益増⇒株価引き上げだったのではないか。2016マイナス金利導入により金利低下、長期国債の利回りも低下し金融機関利ザヤ稼げない。長期金利を高くするため日銀は国債買いオペ(イールドカーブコントロール)。市場原理に反する。2022年に長期金利に上昇圧力加わり、日銀は長期金利を抑えたため急激な円安が進んだ。...日銀の責任―低金利日本からの脱却野口悠紀雄2023

  • 大学的新潟ガイド—こだわりの歩き方 新潟大学人文学部附置地域文化連携センター編 2021

    このシリーズの本は何冊も読んでいる。その中でこの新潟ガイドは歴史文化に関する話題がほとんどであり、現代の開発や経済、あるいは地理・地学や生物に関する話題が少なく、私にとっては読みどころが限定される。日本で最後に佐渡に残ったトキは2003年に絶滅した。その後中国からトキのつがいを借り受けて始まった保護増殖事業が成功し、今(2020)では島内に推定400羽が生息している。佐渡の農業者らは「朱鷺と暮らす郷づくり認定制度」を立ち上げ、農薬と化学肥料を半減し環境保全型農業を推進している。新潟県は全国3位の日本酒生産県で、吟醸酒の出荷量は全国一。新潟生まれの坂口安吾は、雪国の気質として太陽を遮られ疑い深さと諦め、夢を見ても現実には立ち向かう姿勢を持たないと言った。新潟港は中世から日本海海運の歴史があり、江戸時代は日本...大学的新潟ガイド—こだわりの歩き方新潟大学人文学部附置地域文化連携センター編2021

  • デジタル列島進化論 若林秀樹2022

    日本列島改造論のデジタル版だと書いてあるから国土都市のカテゴリにしたが、列島改造論のアナロジーでデータセンターを論じられるかどうかは、私はまだよくわからない。第3章データセンターとは、サーバーやネットワーク等のインフラ機器を設置・保管・運営することに特化した施設であり、データの収集・伝送・接続・蓄積・処理・発信のうち、データの蓄積・処理の役割を担う。ビッグデータを処理するAIやスパコンもここに置かれる。現在、データセンターの拠点は、比較的大型のクラウド型は200か所、その他500か所程。有名な千葉の印西地区のような大規模集積地区は2~3拠点。今後10年でデータ流通量が世界で30倍に増えるから、大規模集積拠点が東京以外に5~10か所必要になるだろう。経産・総務2省の有識者会合資料によると、データセンターの最...デジタル列島進化論若林秀樹2022

  • 都市計画家・伊藤滋が見た東北復興縦断2011₋2021 2023年5月

    2011年7月から2021年7月から2021年まで、北は青森県八戸から南は福島県いわきまで、東日本大震災の津波被災地を毎年1回視察旅行し、復興歩みをカメラに収めた記録。「はじめに」に著者の感想が記されている。「現地に身を置けば、復興に向けたたゆまぬ努力が続けられていることは感じられるのだが、目に見える成果として感じ取れない場面も少なくなかった。しかし、改めて10年分の写真を一覧してみると、どの場所も時代へとつなげる歩みをやめなかったことが感じられる。関係者の努力に最大限の敬意を表したい。」私の読後感想としては、第1に震災復興の貴重な記録であるということ、第2に客観的な評価は避けざるを得なかったのだろうということ。p55には陸前高田市のかさ上げ工事後の空き地の写真がある。この工事を含め10年間に36兆円の国...都市計画家・伊藤滋が見た東北復興縦断2011₋20212023年5月

  • 限界ニュータウン—荒廃する超郊外の分譲地 吉川祐介 2022

    著者は研究者でも不動産業界の人でもジャーナリストでもないらしいが、都市計画や不動産業に関する知識、行動力、調査力、取材力、どれも相当なものだ。2017年(出版の5年前)春に夫婦二人が暮らすための郊外中古物件を探し始めたのがきっかけで、千葉県北東部の物件めぐりを続ける傍らブログに限界ニュータウン探訪記を投稿、Tweeterすると予想外の反応があった。さらにYoutube動画配信、さらには本書出版につながった。本書のテーマは千葉県北東部、超郊外に数多くある限界ニュータウン。空き地が多いが分譲時には完売している。高度成長期の1970年代に投資家向けに分譲され、一部区画には80年代後バブル期に住宅が建てられたが大部分は空き地だ。千葉県北東部では、都市計画が全く機能してこなかった。酪農家やラブホ、墓地の隣でもお構い...限界ニュータウン—荒廃する超郊外の分譲地吉川祐介2022

  • アイヌのことを考えながら北海道を歩いてみたー失われたカムイ伝説とアイヌの歴史 カベルナリア吉田2022

    2021年6月半ば、著者は飛行機に乗り、新千歳空港に向かった。第1章小樽余市神威岬、第2章道南、第3章札幌、第4章胆振、第5章道東、第6章旭川稚内、第7章日髙、第8章網走と北海道ほぼ全道を公共交通で踏破。いつからいつまで旅したのか知らないが、あとがき最終ページp230のこの本のp204に2日後の自民党総裁選の討論会のことが書いてあり、これは9月29日のことだから3か月半か4か月の北海道滞在ということになる。著者は車を運転していない。主にJRで異動し、それぞれの旅先ではローカルバスに乗ったり歩いた入りしている。宿のことはあまり書かれていないが、だいたい駅の近くのホテルに荷物を置いているからそこに泊まっているのだろう。人に会うアポ取りはしていないようだ。駅で列車を降り、ホテルに荷物を預け、街中を歩く。遺跡、貝...アイヌのことを考えながら北海道を歩いてみたー失われたカムイ伝説とアイヌの歴史カベルナリア吉田2022

  • 日本型開発協力—途上国支援はなぜ必要なのか 松本勝男 2023

    第2章「日本型開発協力の特徴」では、日本の開発協力の特徴がよく表れかつ成功事例と言われる事例が紹介されている。・ラオスの民法典起草10年以上の慎重かつ息の長い協力このような長期かつ丁寧な協力を続ける国は日本だけ・インドネシア版母子手帳1980年代に来日した医師が試みが契機となり、現在インドネシア全国で年500万人の妊婦、世界では2千万冊使われる・カイゼン1980年代シンガポールに始まり、最近は活動がアフリカに拡大。設備改良、不良品削減、整理整頓、ムダ取り運動、作業の安全確保等、工場の生産工程で種々の工夫蓄積。・災害大国の知見、仙台防災枠組み緊急支援、復旧活動、被害状況調査、復興計画策定、対策事業の実施など一連の協力。・タイ東部臨海開発1980年代にレムチャバン港と工業団地を日本の協力で建設、タイ経済を牽引...日本型開発協力—途上国支援はなぜ必要なのか松本勝男2023

  • ダイヤ改正から読み解く鉄道会社の苦悩 鉄道ビジネス研究会2013

    第1章ではJR各社の2018年度と2022年度の乗客数の比較を会社ごと路線ごとに表をつくって長々と説明している。首都圏通勤路線はだいたい3割減。東海道新幹線は輸送人キロで2020年度に前年度比66%減少し、2021年度38%増大した者の頃前の2分の1以下。第2章タイトルは「駅は街のランドマークであり続けられるか」だが、内容は駅の乗降客数減少率。減ったことはわかっているよ。最も減ったのは舞浜駅。そりゃそうだろう。著者グループの個人名は明かされていない。堂々と名乗り、その名前を信頼して買いたくなる日が来ることを待ちたい。ダイヤ改正から読み解く鉄道会社の苦悩鉄道ビジネス研究会2013

  • 日本人の源流—核DNAでたどる 斎藤成也2017

    ヒトゲノム(人間の卵と精子に入っている23本の染色体)のDNA情報が2004年に解明されたことにより、遺伝子研究に革命的変化が起きた。ヒトゲノムを調べれば祖先がわかる。日本人の源流については、縄文時代までと弥生時代以降の二段階に分ける二重構造モデルがあった。著者らの研究は、日本列島の3集団、アイヌ人、オキナワ人、ヤマト人のDNAを調べ、二重構造の存在を示した。しかし、縄文時代までの人々と弥生時代以降の人々がどこから来たかはまだよくわかっていない。DNAの共有度から系統関係を推定(近隣結合法)すると、縄文人とアイヌ人が一つのグループになり、オキナワ人、ヤマト人、北方中国人の順と次第に遠くなる。縄文人は南方系でも北方系でもなかった。三貫地(福島県新地町の貝塚縄文人のゲノムデータを調べると、南米人より前に東ユー...日本人の源流—核DNAでたどる斎藤成也2017

  • サピエンス減少—縮減する未来の課題を探る 原俊彦 2023

    序2022の国連新推計によれば、2022年中に世界人口は80億人に達するものの、今世紀後半の中頃には減少に入り、世界全体が現在の日本と同じような少子高齢・人口減少社会に移行する。日本は2008年の1.28億人をピークにすでに人口減少期に入っている。人口減少は日本だけの特殊事情ではなく、世界の多くの国は遅かれ早かれ同じ道を歩む。犯人探しをしても有効な対策には結びつかない。第4章人口が急激に減少する場合には、生産年齢人口の減少を通じ社会資本蓄積や社会的生産の拡大を困難にする。社会経済システムを縮んでいく人口規模に合わせ常に縮減再編し続けなければならない。人口減少に合わせ組織をスリム化することが常に求められ、陰湿な行き残りゲームのような競争が生じる傾向が強い。人口減少では社会資本の更新は難しく,先行投資の回収は...サピエンス減少—縮減する未来の課題を探る原俊彦2023

  • 教育大国シンガポール~日本は何を学べるか 中野円佳 2023

    シンガポール政府は教育(とりわけ試験)を重視している。コロナ禍でもできるだけ休校を避け、同時にオンライン対応の準備を進め、ソフトロックダウン発動時にはスムーズに移行が進んだ。シンガポールの教育は、国家へのアイデンティティと謙信の精神を身につけさせることと経済発展の持続を達成することを目的としている。教育を媒介として能力ある人材=学歴エリートを官僚、そして政府に引き入れる。優秀な高校卒業生数百名には奨学金を出して米英に送り込み、帰国後には一定期間政府機関で働くことを義務づけている。国際調査TIMSSやPISAにおいて、シンガポールは世界トップクラスの高成績を得ている。その一方で、シンガポールの教育は、競争過熱によるストレスが親子ともに大きい。小学校終了時の試験PSLEでで進むコースが振り分けられる。教育は早...教育大国シンガポール~日本は何を学べるか中野円佳2023

  • 理系思考入門 高橋洋一 2022

    著者が過去に書いた「消費増税」と「戦後経済史」と「官僚とマスコミ」に関する3冊の本の内容を収録再編したもの。よって、第1部第2部は経済学をベースにした税財政と日本経済に関するかなりオーソドックスな論考、第3部は財務省と官邸の内幕話。タイトルの理系思考に関する記述は探してもなかなか見つからない。辛うじて見つかった理系思考と関連していそうな記述箇所をメモ。p37財政投融資の金利変動リスクを算定するにはALM=資産と負債の総合管理が必要だが、それを行うにはコンピュータのプログラムを書いてシステムをつくらねばならず、文系官僚には無理で、それができたのは数学科出身の著者だけだった。それをつくる過程で政府全体のバランスシートをつくったので、日本政府は借金も大きいが資産も大きく、破綻することはあり得ないとわかっていた。...理系思考入門高橋洋一2022

  • 歴史を読み解く城歩き 千田嘉博2022

    意外にもこの本の1章は日本を離れて世界の城の話となった。シュリーマンが発掘したミケーネの城は巨石を積んで城壁が築造され、紀元前13世紀にライオンのレリーフを掲げたゲートが成立した。徳川大坂城のように人工的に形を整えた石材が隙間なく積み上げられている。石垣の「算木積み」や「屏風折れ」、城内道が直角に折れ曲がる「桝形」と同じ構造は、世界の城に共通する普遍的な防御のしくみであり、ミケーネと同時期のティンリスは既にそれを取り入れていた。紀元前600年頃イギリスのケルト人が築いたメドウィン・カッスルは三重の堀と高い城壁、「馬出し」と同じで入口を備え、日本の戦国の城ろ比較しても遜色ない。沖縄のグスクは14世紀ごろから石垣を用い、15世紀以降は桝形と呼ぶ複雑な出入り口を持っていた。大和スタイルの城より圧倒的に早く、江戸...歴史を読み解く城歩き千田嘉博2022

  • 住宅団地 記憶と再生~ドイツと日本を歩く 多和田栄治 2021

    ドイツ語で住宅団地をSiedlungジードルングと呼ぶ。1850年代以降、ルール地方では企業が工場労働者のための団地アルバイタージードルングを建設した。ベルリンではワイマール時代に行政が主導し非営利組織が建設管理する団地が多く建設された。うち6つの団地はモダニズム住宅団地として世界遺産登録され、しかも現在も住民が居住している。日本でも有名なブルーノ・タウトが設計した小規模な団地ファルケンベルクは各戸が40㎡台と狭く規格化されているが、多様なデザイン、住棟の列の変化、色彩の魔術により住戸ごとの個別化を演出している。ブリッツの大団地は、シンボルとなる馬蹄形の住棟と多くの2~3階建ての長屋からなる。住民インタビューをしているが、長く満足して住み続ける人が多く、近所づきあいも密接のようだ。旧西ベルリンで1960年...住宅団地記憶と再生~ドイツと日本を歩く多和田栄治2021

  • 2035年の世界地図—失われる民主主義 破裂する資本主義

    「世界最高の知性」4人へのインタビューとそれに基づく対談をまとめたもの。短いインタビューなのでそれぞれの発言の背景根拠は今一よくわからないところがある。1.エマニュエル・トッド民主主義は後退あるいは破壊され続けており、まもなく寿命を迎える。民主主義のリーダーである米国は不平等でカネがあまりにも重要な国になった。中国は権威主義であるけれども平等主義的な価値観がある。グローバル化は格差を生み出し夢はなくなった。しかし米国がグローバル化から抜け出し工業国に戻ることはできない。先進国は新興国を自らの陣営に引き入れるようなことは控えなければならない。西洋は傲慢であり、新興・途上国が「私たちを好きである」と仮定するのは大間違いだ。2.マルクス・ガブリエル新型コロナに対し民主主義国はロックダウンすべきではなかった。しか...2035年の世界地図—失われる民主主義破裂する資本主義

  • 流山がすごい 大西康之2022

    流山在住の元日経記者が書いた流山を賛美する本。つくばエクスプレス開通がきっかけとなって大きく発展、人口増加率6年連続1位となったが、それだけではないことを示している。送迎保育ステーション。駅前ビルに設置され、朝子どもを預けると市内各所の保育園に連れて行ってくれ、夕方は6時まで(8時まで延長可)預ってくれる。保育士に就労奨励金や家賃補助を与えて保育士を確保し「保育の楽園」になった。流山市にだけある課①マーケティング課②流山本町・利根運河ツーリズム推進課おおたかの森駅前のSCはニコタマと同じ会社、東神開発が落札し、市長の要望を踏まえ、デパ地下、大型シネコン、大型書店、大規模な緑化のある開発を行った。2022に開業した大和ハウス工業による第2のSCは、日常生活必需品が揃うファミリー層向けの店に絞った。流れ山イン...流山がすごい大西康之2022

  • 地域学入門 山下祐介2021

    江戸時代より前に形成された古い村には暮らしていくための資源がすべてある。明治初期の村地図を見る。境界線。水源になる川。肥料・馬のエサ・薪・山菜のとれる山林。一方、江戸後期に低湿地を改良して形成された新田村は、渇水時の水源や薪炭林、畑が十分でない。それぞれの集落に固有の歴史がある。それぞれの村は、基礎となる生業の上に、様々な副業があった。城下町には、城を築く盤石な土地、水源となる川と用水、食料やエネルギー資源を運ぶ供給路がある。都市は多くの街道が入り込み、都にもつながっていた。家は生活協同集団であり、必ずしも血族集団ではない。家は婚姻によって他の家々と繋がっていた。婚姻は家格で行うので、大きい家はしばしば遠距離で結び、それ以外の家は村内や近くの村との婚姻が多かった。村(自然村)は、①自治集団、②生産協同集団...地域学入門山下祐介2021

  • ドローン空撮で見えてくる日本の地理と地形 藤田哲史 2021

    地理の本によくある自然地理や村落、歴史都市とは異なる、人下の営み、特に土木技術史と関わりの深い空撮写真が多く紹介されている。堤防、分水路、瀬替え、新田開発、畑の地割、山上の大規模住宅地、採掘場と炭鉱跡、二重ループの山岳道路、高速道路の線形。地図の色彩について、山地が緑色、低地が茶色に塗られていることにちょっと違和感。ドローン空撮で見えてくる日本の地理と地形藤田哲史2021

  • 東京・再開発ガイド 街とつながるグラウンドレベルのデザイン 大江新 2022

    第1部「東京の超高層・大規模再開発を歩く」は、約150の東京都区部における超高層ビルや大規模集合住宅、大型商業ビルを、結界、視線、通り抜けと滞留、地形との関わり、新旧対比など12の視点から批評している。建物が道路からセットバックする場合、道路沿いに列柱や樹木で何らかの結界を設けることで、道路~結界~広場~建物といった重層性が生まれ、広場の”懐”効果も高まる。ビルが増えれば遠望が消えて死角が増える。そこでピロティやガラスのロビーなどでビルの背後を見通せるようにすると閉塞感を軽減できる。ビル足元に滞留できる広場や通り抜けできるアーケードを設置すると街との親和性が高まる。公団団地が民間事業者によって分譲マンションに建て替えられるケースが多い。建て替え後も棟間に自由通路や公開空地を設け遊び場や散歩道として近隣住民...東京・再開発ガイド街とつながるグラウンドレベルのデザイン大江新2022

  • 新興国は世界を変えるか—29ヵ国の経済・民主化・軍事行動 恒川惠市 2023

    第1章発展途上国の開発可能性については、1950年代以降冷戦が激化する中で、論争が活発に行われた。・近代化論者先進国からの技術や資本を取り入れることで「離陸」できる。W。W.ロストウ「経済発展段階」説・マルクス主義者途上国は常に搾取されてきたがゆえに持続的成長できない。長期的に発展するためには社会主義革命が必要。Chapter1Thedevelopmentpotentialofdevelopingcountrieshasbeenthesubjectofvigorousdebatesincethe1950sastheColdWarintensified.Modernizationtheoristssaid:theycould"takeoff"byincorporatingtechnologyandcapit...新興国は世界を変えるか—29ヵ国の経済・民主化・軍事行動恒川惠市2023

  • 地理学で読み解く流通と消費 土屋純 2022

    タイトルから想像できるとおり著者は地理学者だ。けれども、地理や都市計画の知識はある程度あり流通業については素人である私が読むと、この本は地理の本にありがちな環境決定論に陥ることなく、スーパー、コンビニ、チェーン店等各業態の特徴や個別企業の、物流システムの発展について丁寧に解説しているところが優れているという感想を抱いた。カバー裏に「ユニクロはなぜ郊外から都心へ出店場所や規模を変化させたのか」とある。そこでユニクロに関する記述を探してみた。<第2章>ユニクロ(ファーストリテイリング)は1984年に広島市都心部に1号店を出店、当初は都心店と郊外店の双方があったが、売れ行きの良い郊外店に立地の方向性を明確にした。90代にはSPA(自社開発、自社店舗販売)の体制を確立し、大店法運用緩和をうけて大型店、中型店を全国...地理学で読み解く流通と消費土屋純2022

  • 城郭研究家の全国ぶらり城めぐり 中井均 2022

    多くの城跡は桜の名所でもあるが、そのほとんどは城だった江戸時代には桜はなく、城跡になった明治時代以降に植えられた。長年、城郭の研究に携わってきた著者が、定年退職後、奥さんとともに桜の咲く城跡を自由気ままに巡るという夢を叶えた。4月スタートとなる初年度は彦根城から北へ、翌年は3月に九州・志布志城から九州、中四国の城を巡った。登場する30の城は、彦根城、高遠城、鹿児島城や伊予松山城といった著名な城もあれば、私は全く知らなかった古代の「柵」や、小さな陣屋も含まれる。彦根城では登り石垣をみるべき。山城で敵の斜面移動を封鎖する目的で築かれた石塁を登り石垣という。彦根城、伊予松山城、淡路洲本城。但馬竹田城など。朝鮮出兵で築いた倭城において築かれ、参画した大名たちが帰国後自らの居城に導入したと言われる。柵(城柵)とは、...城郭研究家の全国ぶらり城めぐり中井均2022

  • 日本の生きもの図鑑 監修:成島悦雄・多摩六都科学館 2020

    旅行先で目にする樹木や花、鳥や昆虫の名前がわかるといいなと思っていたら、ジュンク堂で便利な図鑑を見つけ即購入。これ一冊で日本に生息する樹木、草花、虫、両生類、は虫類、鳥、ほ乳類、魚、その他、合計307種類がまるわかりという図鑑。しかも、1章:街、2章:里、3章:山、4章:水辺、5章:海辺、6章:離島(沖縄や小笠原)と場所別の構成になっている。で、この本をパラパラめくって最初の発見は、カナブンとコガネムシは同じではないといこうこと。子どもの頃夏の夜田舎の家によく飛んできた甲虫をカナブンと呼んでいたが、コガネムシの別名と思っていた。しかしこの図鑑によると、もちろんどちらもコガネムシ科ではあるが、カナブンは体長2.2~3.6cmで頭が四角い。コガネムシは体長1.7~2.4cmとやや小さく頭が丸い。日本の生きもの図鑑監修:成島悦雄・多摩六都科学館2020

  • 鉄道と郊外~駅と沿線からの郊外再生 角野幸博編著 2021

    本書のテーマは「鉄道からの郊外再生」。著者をはじめ執筆者は関西の都市計画・都市政策研究者及び都市開発実務家(阪急)だ。日本の関東圏と関西圏に共通する特徴は、複数の民間鉄道事業者が都心から郊外に路線を伸ばし、住宅地開発はもとより、観光地開発や学校誘致など多岐にわたる不動産開発を手掛けたこと。人々の生活は今も鉄道に大きく依存している。(序章)このことに異議はない。しかし、本書を読むと、鉄道や駅前の役割を強調しすぎているのではないか?と疑問に思うところもある。本書自体、第6章では「郊外は新たな局面を迎えている」として次の3点を示している。(p237)第1に、居住単位である家族の高齢化と小規模化、多様化が、今までの郊外住宅地の空間構成と住宅形式に不適合を起こしながら、新たな住宅地像を探り始めている。高齢者、単身者...鉄道と郊外~駅と沿線からの郊外再生角野幸博編著2021

  • プラハ巡覧記 前川健一 2020

    2018年秋にひと月、60代後半の旅行ライターが、チェコの首都プラハに腰を落ち着けて毎日散策した。最初は人で予約したホテルにチェックイン、と思ったら8人相部屋のドミトリーだった。ドイツ人、ウクライナ人、ポルトガル人らと毎日雑談会を楽しんだ。その後、郊外の一戸建ての宿の個室を利用した。チェコには社会主義時代のパネル工法の集合住宅が多く残る。郊外の戸建て住宅は敷地も家も大きいが二軒長屋も多い。プラハは町全体が建築博物館になっている。古い時代からの建造物がそのまま残っている。プラハには地下鉄が3路線ある。切符はバス、トラム、地下鉄共通で、最初に自分で刻印する。30分券、1日券、3日券などがある。著者はフードコートでよく食事した。安いうえに既に並んでいる料理を指させばいい。煮込み料理、揚げ物。ベトナム人が多くベト...プラハ巡覧記前川健一2020

  • ニュータウンに住み続ける~人間のいる場所3 三浦展2022

    第3章は「郊外に居場所をつくる方法」。アメリカでもまちに出かけて立ち寄りたくなる縁側のような空間や自由に過ごせる場が足りない。椅子があって、使う人が好きで使う、使い方はこだわらない緩い感じのする場所をつくる。賑わいは結果であって賑わいを目指してはダメ。座る、眺める、適度な囲いがある、日陰になる、食事ができる、夜に人がいて明るい、話ができる、巡り歩ける場。自然監視が防犯にも寄与する。第4章欧米では否定されたコルビジェ式の都市開発が、日本ではみなとみらいや豊洲で進行中。車を効率的に走らせるための街区の横に歩道がついているだけ。真っすぐで退屈、植栽だけでお店も何もない。快適な歩行空間ではない。高層ビルの低層階には商業空間ができるが、みな全国チェーンの同じ顔ぶれ。(海外のニュータウン事情)イギリスのクロウリーでは...ニュータウンに住み続ける~人間のいる場所3三浦展2022

  • 縛られる日本人 メアリー・C・ブリントン 2022

    アメリカ人の社会学者、日本学者が日本の出生率と幸福度の低さを子育て世代へのインタビュー調査とアメリカ、スウェーデンとの比較によって分析した。2013年以降、大人用紙おむつの売上げが子供用紙おむつの売上げを上回っている。日本の若い世代の多くは、結婚して子供を持ちたいと思っている。にもかかわらず子供の数が減り続けているのはなぜか。1990年末からの出生率低迷は晩婚化と非婚化が原因だった。最近は子どもを1人しか持たない夫婦が増えた。婚外子は日本では極めて少ない。国際的な研究によると、人生への満足度が高い人ほど子供を設ける確率が高く、女性の人生への満足度の低い国は出生率が低い(OECD加盟国)。AnAmericansociologistandJapanologistanalyzedJapan'slowbirthr...縛られる日本人メアリー・C・ブリントン2022

  • 船橋市都市計画マスタープラン 船橋市2022年

    いわゆる「都市マス」の実物。2022年11月に船橋市が策定したもので、まちづくりの目標や将来都市構造を描き、都市計画やまちづくりの課題等を解決するための方針を定めたもの。同年3月策定の第3次船橋市総合計画の将来都市像の実現を図るもの。その3つの役割は、①土地利用や道路・公園等の都市計画を決定・変更する際の指針となる。②個々の都市計画の相互関係を調整し、都市全体として総合的かつ一体的なまちづくりを進めるための指針となる。③身近な地域で、多様な主体が取り組むまちづくりの指針となる。以下、気づいたこと1章まちづくりの現状と課題船橋市の高齢化率は2028までは24%台で微増、その後急増し2043年には31.5%になる。現在高齢化率の高いのは内陸かつ鉄道駅のない、松が丘、大穴、八木ケ谷、高根金杉で35~40%。総武...船橋市都市計画マスタープラン船橋市2022年

  • 図説人類の進化—猿人から原人、旧人、現生人類へ 斎藤・海部・米田・隅山 2021

    久しぶりのブルーバックス。現代人のミトコンドリアDNSの変異を調査した結果、現生人類の起源はアフリカであり、その年代は約20万年前だった。この遺伝学者による1987年の発表は今では基本的に正しいとされている。ヒト同士の人種による遺伝的変異は、ゴリラ同士、チンパンジー同士と比べると何分の一の小ささだ。人種による外見上の違いに反して、ヒトはごく最近に共通祖先から分化した新参者であることを反映している。日本列島人の成立に関する通説には、大きく置換説、混血説、変形説の3説があった。現代の定説は埴原和郎の二重構造説で広い意味では混血説に属する。旧石器時代に最初に日本列島に移住したアジア人集団の子孫が縄文人を形成、その子孫がアイヌ人。北東アジアで寒冷適応した新タイプが渡来して先住の縄文人と混血して本土日本人を形成した...図説人類の進化—猿人から原人、旧人、現生人類へ斎藤・海部・米田・隅山2021

  • 何故、その地形は生まれたのか?—自然地理で読み解く日本列島80の不思議 松本穂高 2022

    かなり著名な地形名所を選んでいる。ブラタモリに登場した場所も多い。奥只見では背の高い木は尾根上かわずかにある緩斜面に限られる。それ以外の斜面では、雪崩によって植物が引きちぎられたり土まで剥ぎ取るため背の高い木は生えることができない。南大東島と北大東島は、島の真ん中がくぼんだお盆の形をしている。元々あった火山島が浸食されて水没していく過程で、島の周囲の海岸付近にできたサンゴ礁が上の伸びていってできた。サンゴ礁がつくった石灰岩層の暑さは1800mにも達する。石灰岩の主成分であるカルシウムの一部がマグネシウムに置き換わった(ドロマイトため、水持ちがよく、島の中央部には湖沼が多くある。西表島に現生の自然が残る背景には、沖縄に多い石灰岩層がほとんど分布せず、山地が険しく峡谷が深いという地形的な要因がある。山地から運...何故、その地形は生まれたのか?—自然地理で読み解く日本列島80の不思議松本穂高2022

  • そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。 今井誠、坂井豊貴[編著]2022

    タイトルがインパクトあり過ぎ、読んでみると羊頭狗肉感が半端ない。経済学部出身者としては残念。内容にふさわしいタイトルをつけるとすれば『最新の経済学にはビジネス課題解決のヒントになることもあります』だろう。第3章この章はちょっとためになる。FSP-Dモデルフリー、ソーシャル、価格差別をデータを使って考えるモデル。限界費用がほぼゼロの情報財を無料配布し、利用者の増加によるネットワーク効果で顧客満足度を上げ、有料版で利益を最大化し、その進め方をデータを使って考える。0円を払っていた人が100円を払う心理的ハードルは、100円を払っていた人が1600円を払う心理的ハードルと同等である(ある実証研究)。無料を有料にすることがいかに難しいか。無料サービスでシェアを伸ばし、広告の他にデータを匿名加工して有料で提供する。...そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。今井誠、坂井豊貴[編著]2022

  • 第三のチンパンジー【完全版】人類進化の栄光と翳り ジャレド・ダイアモンド 2022

    日本では1993年に刊行された本の解題・修正・補遺・文庫版。ヨーロッパ人は他の大陸へ領土を拡張し世界の大部分を征服した。その理由は人種民族間の生物学的違い(人種差別主義者がよく取り上げる知性の差)などではなく、地理が文化的特徴、文明の水準に影響を与えたためだ。ユーラシア大陸の中央の肥沃な三日月地帯に家畜化しやすい動物(羊、山羊、豚、牛、馬)や生産性の高い食用作物(イネ科植物)が種類豊富に存在した。ユーラシア大陸は東西に広いため食用作物や家畜がほとんど同じ緯度で横に広がった。アメリカ大陸は南北に長いため緯度の異なる地域へ食用作物や家畜が広がらなかった。アフリカ大陸もアメリカ大陸同様主軸が南北に走り、結果としてサハラ以南には農業社会の発展が非常に遅かった。今では広く知られるジャレド・ダイアモンドの原点がこの本...第三のチンパンジー【完全版】人類進化の栄光と翳りジャレド・ダイアモンド2022

  • 東京・上海の都市比較研究—持続可能な発展と公共財 福士正博ほか 2022

    第6章東京への産業集積のメカニズム東京都への産業集積(従業員数は全産業で15.6%だが、情報通信業は51%、金融保険業、学術研究及び専門技術サービス業、不動産・物品賃貸業、その他サービス業は20%以上だ。東京圏だといずれもプラス10%。上場企業数の東京圏立地は、1957年の55%から2017年の62%へと増加。老舗企業の東京圏への流入が確認され、一部製造業のみ流失があった。第8章高速鉄道と揚子江デルタ市場一体化2008年運行開始した中国の高速鉄道は2020年末時点で3万8000㎞に達し、世界一の距離となった。2004年の中長距離鉄道網計画では、4縦4横の鉄道快速旅客輸送チャネンルと1万2000㎞以上の旅客専用線建設等の内容が盛り込まれた。揚子江デルタの諸都市が高速鉄道が結ばれた。それにより上海とその他の都...東京・上海の都市比較研究—持続可能な発展と公共財福士正博ほか2022

  • 鉄道の歴史を変えた街45 鼠入昌史2022

    鉄道と関わりが深い町45を歩き、現状を観察するとともにその関わり歴史をとりまとめた本。巻末参考文献には百冊の主要参考文献が掲載されている。日本鉄道史、夕張市や広島市、渋谷区などの市史や区史、新宿駅や大宮駅の百年史、その他数多くの単行本や週刊誌月刊誌各号がならんでいる。松山の伊予鉄道が開通したのは1888年、夏目漱石が松山中学に赴任する7年前。その時点でわが国には私鉄は2つだけ、後に国有化される日本鉄道と阪堺鉄道のみだった。伊予鉄道はそれほど古い歴史を持ち、四国で初めての鉄道、初の軽便鉄道であった。官設の四国鉄道が松山にやってきたのは1927年と遅く、全都道府県庁都市の中で沖縄を除き最も遅かった。松山駅の駅名は国鉄に譲り、伊予鉄道の駅は松山市駅と改名したが、今も市の中心にあり、四国で最もお客が多いタ―ミナル...鉄道の歴史を変えた街45鼠入昌史2022

  • 地域文脈デザイン―まちの過去・現在・未来をつなぐ思考と方法 日本建築学会編 2022”

    「地域文脈」とは、私たちが生きる物的環境において、過去から現在、さらに未来への発展的なプロセスの中に見出される何らかの継承的な構造であり、”価値”である。現代(2000年以降)の都市・地域は、計画された自律性が「解体」しつつある。その解決を糸口を見出したい…というのが「はじめに」を読んで私が理解した本書の主題だ。それに対する私の印象は、文脈のある地域や都市なんて、日本の現代都市の面積のうちほんの一部ではないか。日本の都市地域の大部分は、自然発生的な集落、単なる線として建設された道路、最低限の都市計画と建築規制の下に個々の不動産事業者や土地所有者によって思い思いに建てられた建築物の雑多な集合体にしか過ぎない。地域文脈デザイン―まちの過去・現在・未来をつなぐ思考と方法日本建築学会編2022”

  • 日本の学歴—偏差値では見えない大学の姿 橘木俊詔・小林哲夫 2022

    国会議員の出身大学は1955以来常に1位東大、2位早稲田だったが、最近はかつて少なかった慶応が60~90で早稲田と肩を並べ、東大は1位を維持しているものの数はかつての200以上から120台まで減少した。慶応が急増した最大の要因は二世三世議員が増加したことで、世襲議員の25%が慶応という異様な高さ。国家公務員試験一種合格者の1位は常に東大だが、その数は1980年代の500人台から最近は300人台にまで減少。2位京大3位早稲田。全企業の社長の出身大学は、1位が日大で早慶が2位3位、明治中央法政近大同志社と続く。一部上場企業に限ると慶応、東大、早稲田、兄弟という順位は2002年以降変わらない。研究の世界を高被引用論文数でランキングすると、1位東大2位京大、ベスト9は旧帝大と東工大筑波大が占める。科研費の配分額と...日本の学歴—偏差値では見えない大学の姿橘木俊詔・小林哲夫2022

  • 台湾のトリセツ 片倉佳史 2022

    阿里山鉄道は森林鉄道として日本統治時代の1912年に開通した。阿里山鉄道で運ばれたヒノキ材は明治神宮大鳥居や靖国神社神門、東大寺大仏殿などに用いられた。現在は伐採は全面禁止されている。阿里山鉄道は観光に活路を見出したが、現在は旅客輸送はバスが主流だ。台湾の鉄道は在来線と新幹線(高速鉄路)が別機関で運営され、競合関係となっている。高速鉄路は1日平均18.4万人が利用し、山陽新幹線に近い数字となっている。車両は日本の700系を台湾仕様にした700T型で、定時運航率は99.6%をマークする。台北の特に旧城内地区には、日本時代の建築物が多く残り、多くは展示施設や資料館となっている。官庁建築は現在も使用されているところが多い。日本が国力を誇示するべく西洋の建築様式を取り入れ、かつ自力で建設した。内地では年功序列で力...台湾のトリセツ片倉佳史2022

  • テキトーだって旅に出られる 蔵前仁一 2018

    旅はできるだけ長い方がいい。長い旅だと綿密な計画はほぼ要らない。長く旅をしていた頃は、一つの街に着くと最低でも3日は滞在するようにしていた。記録としての写真であれば、遺跡や観光名所はほとんど役に立たない。なぜならそういうところは何十年たっても変わらないから。むしろ何気ない街角、例えば雑貨屋やその商品、人々の行き交う通りの人々の服装や髪形や走っている車、そういう変化しやすい街の風景を撮影しておくのが一番いい。印象に残ることは、意外に目的地以外のところに転がっていたりするものだ。観光地でないところには観光客をカモにする悪人はおらず、人々は親切に対応してくれる。自分の趣味があれば、普通の人がまずいかない所でも行くに値する場所になる。Itisbettertotravelaslongaspossible.Along...テキトーだって旅に出られる蔵前仁一2018

  • 日本の歴史的建造物—社寺・城郭・近代建築の保存と活用 光井渉 2021

    歴史的建造物の価値は江戸時代にも認知され始めていたが、それ自体を保存しようとする意識は当時はあいまいだった。本格的な保存の展開は、明治維新以降の激烈な社会変動と近代建築学の登場を待たなければならなかった。廃藩置県後1873年廃城令が発令され城郭の払い下げが推進された。当時は白の文化的価値は認識されていなかったが、必ずしも積極的に破却されたわけでもない。1930年に城郭建造物の国宝指定が始まり、名古屋城や姫路城が対象になった。戦災による焼失の後、和歌山城や広島城が再建され、外観は焼失以前と同じだが、鉄筋コンクリート造で内部は博物館施設だった。文化庁の前身である文化財保護委員会は、1966年から全都道府県を対象とした民家緊急調査を開始した。建設時期が15世紀までの建造物以降は存在せず、16世紀に遡る民家も全国...日本の歴史的建造物—社寺・城郭・近代建築の保存と活用光井渉2021

  • 「神話」の歩き方 平藤喜久子2022

    神話学、宗教学の研究者である著者が、古事記や日本書紀の舞台となった出雲、日向、対馬の地を歩く。亡くなった妻イザナミを連れ戻すため黄泉の国に行ったイザナギは、変わり果てた妻の姿に恐れおののき一目散に逃げる。イザナミが放った怪物のような女たちや軍勢から追いかけられたイザナギは黄泉比良坂を抜け、そこを大きな岩で塞いだ。黄泉比良坂は松江市の東部中海の近くにある。著者が訪れた黄泉比良坂はひんやりとした空気の漂う場所だった。アマテラスが高天原を治め、オオクニヌシが葦原の中つ国を治めていた。アマテラスは葦原の中つ国は自分の子のオシホミミが治めるべきと決め使者を送った。三度目の使者タケミカヅチが出雲の稲佐の浜に降り立った。出雲大社の西1kmほどにある海岸だ。砂浜の中に鳥居の立つ弁天島と呼ばれる岩がある。稲佐の浜は国譲り神...「神話」の歩き方平藤喜久子2022

  • もっと知りたい鹿児島県の歴史 監修:小和田哲男 2015

    幕末きっての名君と誉れ高い島津藩主島津斉彬は、なぜ開明的な思想を持ち西洋の知識、科学技術の吸収に熱心だったか。母賢章院が教育熱心だったこと、曾祖父「蘭癖」の8代藩主島津重豪に可愛がられて西洋文化に強い関心を抱いたこと。斉彬はいち早く海外情勢や西洋の知識・科学技術の吸収に努め薩摩藩の富国強兵を実現したほか、西郷隆盛や大久保利通ら明治維新の原動力となる人材を登用した。薩摩では16世紀中ごろに焼酎がつくられていたことがポルトガル人の記録や神社の棟木札の落書きからわかるが、それは米焼酎だった。熱帯アメリカ原産のサツマイモが薩摩で普及したのは1705年以降のことだ。米の生育に適さない薩摩藩はそれまで雑穀など様々な原料から焼酎をつくっていたが、18世紀中期にはサツマイモ焼酎が急速に普及した。保存の利かない高価な清酒は...もっと知りたい鹿児島県の歴史監修:小和田哲男2015

  • ブラタモリ 名古屋 岐阜 彦根 監修:NHK「ブラタモリ」制作班2018

    名古屋城、名古屋のものづくり、岐阜、彦根。4つともテレビで見ていてこの本の内容は知っているはずだが、旅行の下調べのつもりで読むといろいろな再発見がある。名古屋城から熱田神宮にかけて、象の頭~鼻状の細長い台地が伸びている。名古屋城を築いたのは家康。城のすぐ南に碁盤割りの町人の町を作り、信長の本拠地だった清須から数万人の町人を共同体ごと引越しさせた。名古屋の都心を流れる堀川は、家康が城と熱田の港を結ぶために切り拓いた運河。堀川は明治以後、陶磁器をはじめ産業興隆する名古屋の物流を支える役割も果たした。岐阜城のある金華山は、硬いチャートでできた山。信長は山頂の二つの頂の間に石垣を築いて高さをそろえ、巨大要塞に見せた。信長がはじめた代表的なプロジェクト、商人が自由に商売できる楽市楽座は岐阜の町でも行われた。信長は鵜...ブラタモリ名古屋岐阜彦根監修:NHK「ブラタモリ」制作班2018

  • 日本の自然風景ワンダーランド~地形・地質・植生の謎を解く 小泉武栄2022

    谷川岳がオオシラビソなど亜高山針葉樹林帯を欠き、典型的な偽高山帯の山だとされる。その原因はこれまで多雪強風といった気候要因にあると考えられてきた。しかし、基盤の蛇紋岩の方に原因があるようにも見える。蛇紋岩とその下の石英閃緑岩の境が低木林や草原と背の高いブナ林の境界となっている。蛇紋岩はマグネシウムやニッケルといった重金属を含むため生育できる植物は限られる。伊豆大瀬崎の砂州の先端部にできた神池は淡水の池。現在は、神池は小さいながらも噴火口で、周囲の海水の上に雨水が溜まって軽い淡水の層を作っているのだと考えられている。砂州(礫州)の上には樹齢数百年のビャクシンの巨木林があり、なぜ成立したのか十分な説明はない。八戸市の是川縄文館にある国宝合掌土偶など素晴らしい形の展示が揃っている。縄文時代前半は現在より暖かく、...日本の自然風景ワンダーランド~地形・地質・植生の謎を解く小泉武栄2022

  • ウガンダを知るための53章 吉田昌夫・白石壮一郎編著2012

    10年前に出版された本ウガンダは、1986ムセベニ政権樹立より平均6.9%の経済成長を続け、アフリカの優等生とされてきた。それでも国家予算の28%が開発援助資金。労働力人口の6割、GDPの2割が農業、産業も農産加工が中心。コーヒー、綿花、紅茶、バニラ、野菜、花き等。主要企業は外資と旧公社企業を除くと皆インド系財閥企業。海外からの送金の総額は、最大の輸出産品コーヒーの輸出額の3倍近くに匹敵。1963~66に著者吉田が留学したマケレレ大学は学生数2000人、教授陣はほとんど英国人のエリート大学だった。36年後、学生数は3万人を超し、教室は学生で溢れ、図書館は無策と放置で新しい本はなかった。教室も過密だが.学生の態度は真剣で質問がよく出る。著者は学生が上ばかり見ないように貧困住居地区の見学に連れて行った。首都カ...ウガンダを知るための53章吉田昌夫・白石壮一郎編著2012

  • 日本の国際協力 中東・アフリカ篇 阪本・岡野内・山中編著2021

    46対モザンビーク援助モザンビーク:首都:マプト、人口3220万人、1人当たりGNI490ドル日本政府は、資源開発、輸送インフラ整備、及び農業開発事業プロサバンナからなるナカラ経済回廊開発に力を入れてきた。プロサバンナは、地域小農の食糧確保・生活・栄養改善を目標とする一方、海外投資・大規模農業開発との共存を謳っていた。当初から現地小農からの反対が根強かった。にもかかわらず8年間方針が変更されず、ようやく最近中止に至った。プロサバンナとは、ブラジルでの成功をモデルに、北部3州を大規模な農業開発によって穀倉地帯にする計画だった。しかし当初から同国小農組織は、地元小農の土地が収奪され、森林伐採環境破壊が生じる恐れと、事業プロセスの不透明さを懸念表明した。3カ国政府は、プロサバンナは「農のための支援」と明言するよ...日本の国際協力中東・アフリカ篇阪本・岡野内・山中編著2021

  • アフリカを見る アフリカから見る 白戸圭一2019

    第1章サブサハラ・アフリカの人口は四半世紀で倍増し9.7億人(2015)になった。世界の中で突出する人口増加率。アフリカは資源マネー流入により経済成長している。欧米に加え中印がアフリカ投資を伸ばす中で日本は出遅れている。エチオピアは製造業を振興し、外資導入、工業団地建設により二桁経済成長を続けた。20年でGDPは10倍になった。第2章アフリカでも米の増産に力を入れている国が多いが、面積当たり収量はアジアと比べると半分程度。田んぼが均平でなく畔作りや正状植えという基礎的な栽培技術が共有されていない。部族間の差別や反目、政治抗争が集団暴力になることがしばしばある。第3章中国はアフリカで全体として肯定的に評価されている(旧宗主国の次に影響が強く、意識調査で63%が中国に肯定的)。日本人は「アフリカで中国は嫌われ...アフリカを見るアフリカから見る白戸圭一2019

  • 海外メディアは見た 不思議の国ニッポン クーリエ・ジャポン編 2022

    海外メディアは見た不思議の国ニッポンクーリエ・ジャポン編2022会社にすべてをささげるサラリーマン、世襲政治家の多さ、年功序列、孤独死、女性の地位・賃金・科学技術分野進出の低さ、若者の投票率の低さ、内向きで海外に出たがらない若者・・・この本の記事で注目される日本的特徴は、現在の日本の低成長の元凶であるように感じられるかもしれない。しかし、実はそのほとんどは日本がピークだった90年頃にも言われていたことだ。かつてハーバードに日本人がたくさんいたのは会社から送り込まれて会社に戻る留学生が多かったからだ。自ら留学を志す学生は今の方が多いのではないか。海外メディアは見た不思議の国ニッポンクーリエ・ジャポン編2022

  • 教養としての日本列島の地形と地質 橋本純 2022

    わりとマイナーな、しかし私は気づいていたし気になっていた地形の成因を、地質学的に探っている。南会津の福島・栃木県境にある標高1900mの高層湿原田代山湿原。旧火口だろうと思っていたが500万年前にあった火山の火砕流台地だそうだ。特異な地形で残ったのは溶結凝灰岩の地質だから。だが、ここだけきれいに残っている理由はわからない。茨城県北部に直線状の地形がいくつもつくられた原因は断層と海底火山の地質。北北西~南南東に2本のびる棚倉断層は1500万年前に日本列島が大陸から分離する際に動いた断層の一つで活断層ではない。断層の西は固い海底火山の地層で残り、断層は度重なり活動で浸食された。山梨県の四尾連湖はおそらく地すべり地形。しかも川が塞がれたのではなく湖を含む大きな面積が地震で動いたのではないかという。円形をした湖の...教養としての日本列島の地形と地質橋本純2022

  • 日本地形見るだけノート TOPOGRAPHY OF JAPAN 2022

    こういう類の本は好きだから読んでいるのだけれど、この本は地図の杜撰さと間違いが目につく。p49利根川、江戸川の位置が5000年前も現在も同じ。荒川の流路に渡良瀬川と記してある。p182分水界が日本海や有明海まで達している。石狩川、信濃川、江の川の流域が事実に反している。p184「青森県の八戸市から岩手県を跨いで宮城県の松島まで、三陸沖に鋸の歯のように入り組んだ海岸線が連なります」正しくは、三陸の鋸の歯のような沈降海岸は宮古市より南半分だけ。北半分は隆起海岸。日本地形見るだけノートTOPOGRAPHYOFJAPAN2022

  • 歴史作家の城めぐり〈増補改訂版〉 伊藤潤2021

    関東甲信静に限定し47城を掲載。主要な城を必ずしも網羅しているわけでもない。群馬県東我妻町にある岩櫃城は、真田一族の優秀を証明する理想の城。標高802mの荒々しい山容の岩櫃山の中腹に築かれている。広い平場が開け、山城のメリットである守りやすさを保持しつつ、多くの兵が駐屯でき、我妻街道を場内に通すことにより物資補給も容易になる。山梨県韮崎市の新府城は、武田勝頼がわずか68日在城し、家康と北条氏政に攻められ自らの手で焼いた悲劇の城。七里岩の崖上にあり利便性と要害性を併せ持つ理想的な地であったが、未完成で籠城戦には耐えられない。領国内で離反や自落、降服開城が相次ぎ、最後は城主自ら城に火をかけて逃避行、最後は天目山で織田方に捕捉され最後を遂げた。著者は歴史には詳しいが自然地理の知識はそうでもなさそう。×佐倉城は河...歴史作家の城めぐり〈増補改訂版〉伊藤潤2021

  • 現代ネパールを知るための60章    日本ネパール協会2020

    60chaptersoncontemporaryNepalJapanNepalAssociation2020現行の2015年ネパール憲法は、正式に王政を廃止し民主制を規定し、連邦制を採用、ヒンドゥー教を国教から外し世俗化の流れを決定づけた。それは、西欧の思想やインドの制度を採り入れ、国民の主権、人権・多様性の尊重、差別撤廃などを掲げている。Thecurrent2015ConstitutionofNepalformallyabolishedthemonarchy,providedforademocraticsystem,adoptedafederalsystem,removedHinduismasthestatereligionanddeterminedthetrendtowardssecularisati...現代ネパールを知るための60章  日本ネパール協会2020

  • 地形と地理でわかる日本史の謎 小和田哲男監修2022

    第7章なぜ江戸幕府・・・より1603年、徳川家康は征夷大将軍に任じられ、これが江戸幕府の始まりとされる。しかしこの頃の家康は伏見城で政務を執り、いきなり江戸が政治の中心になったわけではない。さらに2年後には将軍職を三男秀忠に譲り、家康は駿府に移った。江戸が本格的に政治の中心地になったのは家康が亡くなった1616の後。1600関ケ原の勝利の後も家康には油断できない状況が続いた。家康率いる東軍の主力として福島正則や黒田長政など豊臣恩顧の武将が活躍し、彼らの豊臣家への忠誠は変わらなかった。家康が江戸に幕府を開いたのも、大坂に豊臣家が隠然と存在していたのが大きかった。家康は豊臣家大名の取り込みのため、関ケ原の後に豊臣系大名には領地を大幅に加増し、積極的な婚姻政策で親戚関係になるなど親密度を深めた。東海道の要衝には...地形と地理でわかる日本史の謎小和田哲男監修2022

  • 鉄道会社はどう生き残るか 佐藤信之2022

    第6章これからの鉄道網JR羽田空港アクセス線大井埠頭の東京貨物ターミナルから羽田空港まで道路地下を使い新線建設。貨物ターミナルと都心の間は浜松町までの休止路線、新幹線アンダーパスで東海道線に繋ぐ。2029開業。新空港線(蒲蒲線)東急多摩川線矢口渡駅から東急蒲田地下駅、京急蒲田地下駅まで延伸し、将来は京急大鳥居まで伸ばす。京急と東急ではゲージが違うので空港線直通は難しい。都心直結線記述のあるのは泉岳寺駅と品川駅の改造だけ。相鉄東急直結線相鉄とJRの直通は2019開通。2023年3月に日吉まで開通すると、二俣川~目黒間が16分短縮、新横浜~渋谷間が11分短縮。東京都心と臨海部のアクセス有楽町線の豊洲~住吉間と南北線の白金高輪~品川間の延伸計画の事業化決定。2030年代半ば完成を目指す。鉄道会社はどう生き残るか佐藤信之2022

  • アフリカの風に吹かれて―途上国支援の泣き笑いの日々 藤沢伸子 2012

    著者はNGO、開発コンサル、JICA専門家などの立場で、主に保健医療分野の途上国支援の仕事をしている人。10年前の本。この本では南スーダン、ザンビア、ジブチ、シエラレオネでの仕事。内戦終結後の南スーダンに、休暇中「自分の将来を考え直してみよう」と、旧知の日本人女性のつてでアドラ(途上国支援NGO)の現地事務所へ。SNSで知り合った現地女性。内戦中家族でケニアに逃げナイロビで育ち教育を受けきちんとした英語を話す。ナイロビではいじめられたが、祖国ジュバでの原始的な生活にもなじめない。内戦中アチオピアやケニアなどに避難していた人たちが帰還し、アドラは彼らの受け入れのためにシェルターを建設し寝食の世話をする。そこの人たちは何度もこの土地から追い出されたり戻ったりしている。南スーダンには国連機関(UNHCR、WFP...アフリカの風に吹かれて―途上国支援の泣き笑いの日々藤沢伸子2012

  • 現代アジア経済論―「アジアの世紀を学ぶ」遠藤・伊藤・大泉・後藤 2018

    第8章都市化するアジア1960年代以降アジア諸国では都市化が進んだ。当時は農村の貧困が都市の許容限度を超える人口流入を起こし、貧困、スラム、インフォーマル経済を創出することが議論された。その抑制手段として中国の農村戸籍制度やタイの工場分散化政策があったが大した成果はなかった。都市問題を緩和したのは、各国の経済成長であった。80年代以降、外国企業を誘致し、大都市は輸出生産基地から工業地帯、さらに特定産業の集積地へと発展。タイのバンコク及び周辺は1人当たりGRP10,000ドル以上。他方東北部など3000ドル未満(2014年)の県も多く若者人口が流出。都市内では今なお28%がスラム居住という都市内の格差・貧困問題、都市インフラの脆弱性などの問題を抱える。2010年以降、アジアの多くの国では地域間格差是正方策か...現代アジア経済論―「アジアの世紀を学ぶ」遠藤・伊藤・大泉・後藤2018

  • 搾取都市ソウル―韓国最底辺の人々 イ・ヘミ2022

    韓国の若い女性記者が、ソウルの最底辺の住宅「チョッパン」とそこに住む人々、富裕層による貧困ビジネスを描いている。チョッパン(チョッ房)とは部屋をいくつかに小分けして1~2人が入れるようにした3㎡前後の小さい部屋。保証金はなく月決めの家賃制。考試院はかつては司法試験などの受験生のための1坪ほどのスペースに勉強机と簡易ベッド、さらに共同トイレとシャワーがある。名目上は住宅ではない。韓国の法律は、14㎡の面積、台所トイレシャワー施設を最低居住水準と定めている。チョッパンのオーナーは富裕で、住宅難民に非人間的な空間を与え、脱税の手段として利用し、事実上搾取に近い賃貸業をしてきた。チョッパンの坪当たり平均賃料は18万ウォンでマンションの4倍。多くのオーナーにとって脱税の手段として利用される。国民の血税による貧困層へ...搾取都市ソウル―韓国最底辺の人々イ・ヘミ2022

  • 日本は「脱・成長論」に惑わされるな―中国式経済は国民を幸福にしない― 原田泰×嶋津洋樹2022

    対談をまとめて作った軽い本。日本経済が成長しない原因。・PCR検査に機械を使わず手作業に頼っていた。世界中で使われて性能は御墨付の自動検査機は実は日本製だった。・生産性向上を邪魔する人がいなくなれば民の力でビジネスが発展する。日本政府は「成長戦略会議」みたいなものをたくさん作るが具体的に効果を発揮したものは見当たらない。これは原田氏の持論の繰り返し。反対ではないが新しい情報がない。副題は「中国式経済は国民を幸福にしない」だ。日本では誰も中国式経済を採用したいなんて思っていない。だけど中国は中国式経済で成長して国民は幸福になった。第3章では「中国式経済はうまくいかない」というが、根拠は「台湾の方が豊か」ということだけ。あっという間に日本を抜き去った中国経済の現実をまともに見ていないから、今後「うまくいかない...日本は「脱・成長論」に惑わされるな―中国式経済は国民を幸福にしない―原田泰×嶋津洋樹2022

  • 地域おこし協力隊の強化書 監修/畠田千鶴 協力/地域活性化センター 2022

    協力隊制度は、若い人や働き手の世代が実際に移住できるような仕組みづくりとして立ち上げた。財源は総務省の特別交付税。自治体が(交付税の)基礎数値照会に隊員数を書き込むと交付税が加算される。2009年度にスタートし、2021年度で在任者数はなんと6000人以上。1人に年200万円以上の給与が支払われているので、計算すると人件費だけで年間120億円以上の税金を投入している。隊員たちがどんな活動をているかというと、本書ではわりと変わり種的な事例が紹介されているのかと思う。1.地域内での新たな活動や事業を行政側の立場から支援する役割。本人たちは「大人のための人生の学校」をつくるという目標を持ち、町は応援してくれる。2.商店街の空きスペースを利用した交流スペース、子供の居場所・勉強場所。3.地元の織物協同組合を各地の...地域おこし協力隊の強化書監修/畠田千鶴協力/地域活性化センター2022

  • 内部告発のケーススタディから読み解く組織の現実—改正公益通報者保護法で何が変わるのか 奥山俊宏2022

    企業の不正に対する内部通報者への不法な仕打ちをしたオリンパスを始め、財務省、イオン、東芝、東洋ゴム、レオパレス、郵政一家、イトマンなど、組織の不正と内部通報制度の形骸化、組織外への告発と裁判の事例が次から次へと論じられる。2004年に制定された日本の公益通報者保護法は、アナウンスメントの効果は大きかったが、実は法律としての実効性はまったくないに等しかった。この間、各国は内部告発者保護法制の整備を進め、日本の後れが目立つ格好になっていた。公益通報者保護法が制定から16年の歳月を経て改正され、2022年6月に施行される。従業員301人以上の企業に体制整備を義務づけ、内部通報に関わる業務に当たる人に対しては守秘義務を課し違反者には刑事罰を科す。条文は2倍の22に増え、実質的に新しい法律とも言える内容が加わった。内部告発のケーススタディから読み解く組織の現実—改正公益通報者保護法で何が変わるのか奥山俊宏2022

  • にっぽん縦断民鉄駅物語〔西日本編〕—完全網羅!全国162鉄道途中下車の旅 櫻井寛2016

    執筆時においてJRを除く大手私鉄、地方私鉄、第3セクター鉄道、交通局などの旅客鉄道は162鉄道を数える。本書は東海地方以西の各鉄道に乗車し1つの駅で途中下車する旅物語。まだまだ私が乗車したことのない中小地方鉄道や三セク路線がたくさん残っている。愛知環状、愛知高速、東海交通、明知、樽見、三岐、養老、四日市あすなろう、信楽高原、水間、北条、若桜、水島臨海、井原、スカイレール、錦川、阿佐海岸、土佐くろしお、平成筑豊、筑豊電気、甘木、くま川、沖縄都市モノ。既に廃止された旧耶馬渓、高千穂。東日本では、秋田内陸、由利高原。涼しくなったら名古屋をベースに愛知岐阜三重の鉄道に乗りに行こう。広島のスカイレールは楽しそう。錦川鉄道、宮島弥山登山とまとめて2泊3日で。にっぽん縦断民鉄駅物語〔西日本編〕—完全網羅!全国162鉄道途中下車の旅櫻井寛2016

  • 地形で謎解き!「東海道本線」の秘密 竹内正浩2016

    国土地理院の電子地形図にカシミール3Dで陰影をつけて立体視できるようにした約7万分の1地図上に東京から神戸までの東海道本線(旧線も含む)、旧東海道と中山道、東海道新幹線が示されている。東海道本線の建設が正式に決まったのは意外に遅く明治19年=1986年のこと。当初はまともな地図もない中、お雇い外国人ボイルが中山道を提案し、陸軍の重鎮山県有朋も中山道案を提出し1983年政府は中山道幹線の建設を内定した。しかし鉄道局長井上勝は中山道地域を精力的に視察し、碓氷峠、和田峠、馬籠峠など難所が目白押しで、工事に長い年月と多大な建設費、列車運行の困難が見込まれることを数字で示した。東海道鉄道が公式に決まると3年足らずの1989年には全線が開通した。東海道本線は、御殿場線と関ケ原付近を除くと、旧線となった区間は少ない。そ...地形で謎解き!「東海道本線」の秘密竹内正浩2016

  • むらづくり入門 齋藤幸彦2022 Village Development

    本書の「むらづくり」の定義・農産漁村地域(=むら)で、そこに住む住民が主体となり、自主的、自律的に行う、地域のさまざまな環境、暮らしをよくすることを目的とし、また地域を取り巻く状況の変化に対応し、新たに行う活動・住民が主体となって行う、地域を対象とする公共のための活動Definitionof"villagedevelopment"inthisbook:・Activitiesthatarecarriedoutinruralareas(villages)bylocalresidentsontheirowninitiativeandautonomy,withtheaimofimprovingthelocalenvironmentandlifestyles,aswellasnewactivitiesinrespo...むらづくり入門齋藤幸彦2022VillageDevelopment

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