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  • フロリアン・ゼレール作『La Mère 母』を見ました。

    東京芸術劇場シアターイーストでフロリアン・ゼレール作『LaMère母』を見ました。現実と幻想の狭間の人間を描く、緊張感あるすばらしい舞台でした。家族のために人生をささげてきた母。しかし大切に育てた息子は自分で暮し始め、彼女もでき次第に母から離れていきます。愛情過多の母が次第に鬱陶しく感じてもいるようです。夫にも愛人がいるようです。夫の嘘が心を突っつくように感じます。母は自分が生きがいとしていた家族に去られ、いつしか精神を病み幻想を見始めます。演劇はその幻想と現実の狭間を描き、事実がどこにあるのかがわかりません。観客は追い詰められていく母の姿を見詰めることによって、家族という不思議な存在を考えざるを得ません。非常に悲しく残酷な演劇です。主演は若村麻由美。愛情過多であり、孤独を怖れる女性を見事に演じています。...フロリアン・ゼレール作『LaMère母』を見ました。

  • NTL『ディア・イングランド』を見ました。

    NTLというのは、イギリスの国立劇場ロイヤル・ナショナル・シアターが厳選した名舞台を映像化して映画館のスクリーンで上映する「ナショナル・シアター・ライブ」のことです。毎年数本が上映されます。その最新作『ディア・イングランド』を見ました。サッカーを題材にしているので、試合の場面など処理をどうするのか心配だったのですが、見事に処理され、逆に演出の手際のよさが目立つ作品に仕上がっていました。映画ファンも、演劇ファンも必見です。サッカーの実在のイングランドチームを描くドキュメンタリー的な要素ももつ作品です。長い間低迷していたイングランドチームに、ガレス・サウスゲートが代表監督に就任します。サウスゲートはかつてイングランド代表チームの選手でした。彼はワールドカップでPKを外し、戦犯のような存在となっていました。サウ...NTL『ディア・イングランド』を見ました。

  • シスカンパニー公演『カラカラ天気と五人の紳士』を見ました。

    作:別役実、演出:加藤拓也、出演:堤真一、溝端淳平、藤井隆、野間口徹、小手伸也、中谷さとみ、高田聖子という豪華絢爛の公演『カラカラ天気と五人の紳士』を見ました。笑いながら、怖い世界に突き進む作品でした。傑作です。昔、NHKの「おかあさんといっしょ」の中で、週1回「おはなしこんにちは」というコーナーがありました。その中で不思議な童話が読まれます。子供のころ私はそのコーナーが大好きでした。中学生か高校生になり、図書館に行くと『淋しいおさかな』という童話集がありました。そしてその童話集に「おはなしこんにちは」の童話が載ってのっていたのです。そしてその本の作者が別役実さんでした。そこから私は別役実さんのファンになりました。別役さんが劇作家で、不条理劇を書いていることも後から知りました。別役さんの不条理劇は難解なも...シスカンパニー公演『カラカラ天気と五人の紳士』を見ました。

  • 舞台『善き人』を見ました

    世田谷パブリックシアターで上演された舞台『善き人』を見ました。ナチに取り込まれていく過程が自分にも同じようなことがあるのではないかと思わせ、ラストシーンのすごさに圧倒される作品だった。ただし、準備不足を感じさせる舞台でもあった。ベルリンの大学で講師をしているジョン・ハルダーは、過去に書いた安楽死に関する小説を、ヒトラーが気に入ったことからナチスに取り込まれていく。彼はナチスに入党せざるをえなくなり、ユダヤ人の友人モーリスとも次第に溝が深まっていく。モーリスの国外逃亡を支援するが、彼は捕らえられて収容所に送られる。ジョンは、職権を利用してモーリスが送られたとされる収容所に向かう。そこでユダヤ人たちの悲惨な状況を目にする。そしてユダヤ人たちの奏でる美しい音楽に遭遇する。このラストシーンがすばらしい。人間が生き...舞台『善き人』を見ました

  • 映画『ブルックリンでオペラを』を見ました。

    映画『ブルックリンでオペラを』を見ました。アメリカ映画の題材探しの苦悩を感じてしまいました。アン・ハサウェイ、ピーター・ディンクレイジ、マリサ・トメイら私の様な特別な映画好きでないものでも何度か見た事のある有名俳優をそろえた映画です。登場するのは修道女にあこがれる精神科医、オペラを書けないオペラ作曲家、恋愛依存症に苦しむ船舶士、なんでも法律で解釈してしまう速記師など、一癖ありそうな人たちばかり。こんな人たちが困難を乗り越えていくというプロットの映画です。この映画、私にはコメディなのか、シリアスドラマなのかわかりません。無理やりに筋を作ってしまったというような苦しさが感じられてしまいます。現代のアメリカの問題をつまみ食いのように取り上げ、とりあえず一本の映画を作ってみましたという感じしかないのです。従来の映...映画『ブルックリンでオペラを』を見ました。

  • 夏目漱石の『草枕』を読む。5

    第五章画工は床屋に行く。この床屋の鏡が歪んでいて鏡の役に立っていない。今余が辛抱して向き合うべく余儀なくされている鏡はたしかに最前から余を侮辱している。右を向くと顔中鼻になる。左を出すと口が耳元まで裂ける。仰向くと蟇蛙を前から見たように真平に圧し潰され、少しこごむと福禄寿の祈誓児のように頭がせり出してくる。この鏡は歪んでいて、光が乱反射して事実を映してはいない。これは那古井の世界のいびつな空間を象徴している。つまり那古井の内部では真実が見えないのである。那古井の内部では人々は共同幻想に支配されているのだ。狭い村社会ではよくありそうな、噂をみんなが信じ込む社会である。みんながゆがんでいるのであるが、歪んでいるのが当たり前になっているのでその歪みにだれもが気付かない。たまたま外部の人間がそこに来ると気が付くの...夏目漱石の『草枕』を読む。5

  • 夏目漱石の『草枕』を読む。4

    第四章夜中の侵入者はおそらく衣類を持ち出したようである。写生帖を見ると明け方に作った俳句に句がつけられている。この付け句の存在は注目すべきものなのかもしれない。昼近くふたりの足音が聞こえる。部屋の前につくと、一人は引き返す。もう一人が入って来る。小女郎である。食事を持ってくる。その小女郎との会話から、この宿にいる若い女が、出戻りの娘つまり那美であることがわかる。その女の部屋が画工の泊っている部屋であることもわかる。夜中に部屋に忍び込んだのも、付け句も那美の仕業であろう。食事が終わり、しばらくたつと那美がお茶を出しにくる。画工は茶人がきらいなようだ。画工と那美の会話が進み、興味深い会話がなされる。「ここと都と、どっちがいいですか」「同じ事ですわ」「こう云う静かな所が、かえって気楽でしょう」「気楽も、気楽でな...夏目漱石の『草枕』を読む。4

  • 映画『瞳をとじて』を見ました。

    ビクトル・エリセの31年ぶりの長編映画『瞳をとじて』を見ました。静かな緊張感が胸を揺さぶる名作でした。私が学生時代、「ミツバチのささやき」が公開されて大ヒットとなりました。六本木のシネヴィヴァン六本木という映画館で私も見ました。非常に衝撃的でした。内容は刺激的なものであったのにもかかわらず、抑えた演技で、淡々と描写していく映画でした。しばらくして『エル・スール』という映画も公開されました。こちらも衝撃を受けました。ところがエリセ監督はその後あまり映画を作っていません。『マルメロの陽光』というドキュメンタリー映画は公開されましたが、それ以外の映画は作っていなかったのです。おそらく引退したんだろうなと思っていました。ところが今回、本当に久しぶりに新作が公開されたのです。驚きました。同時に期待しました。さらに同...映画『瞳をとじて』を見ました。

  • 関口宏さん、林家木久扇さん、ありがとう

    今日、関口宏さんが「サンデーモーニング」を、林家木久扇さんが笑点を卒業した。お疲れさまでした。そしてありがとうございました。関口さんは、批判精神を発揮して番組を進行していらっしゃいました。平和主義の立場から権力に対しては厳しいことも言うこともありました。とは言えあくまで普通の批判精神を発揮していただけでした。現在でも特別左寄りだとは感じません。ところが近年の右寄りのネットユーザーから目の敵にされて、かわいそうな形での引退となってしまいました。もちろん年齢的なことから、進行にたどたどしい場面なども見受けられ、卒業の時期としては適当だったのだとは思います。しかしネット記事の扱われ方はあきらかにおかしいものでした。関口さんが「サンデーモーニング」でこういう発言をしたというネット記事が出て、それに対してネットの一...関口宏さん、林家木久扇さん、ありがとう

  • 映画『ダム・マネー ウォール街を狙え!』を見ました。

    アメリカの株式投資を描いた映画『ダム・マネーウォール街を狙え!』を見ました。巨大マネーに抵抗した個人投資家たちの夢を描いた気持ちのいい映画でした。2020年の実話をもとにして作られた映画です。主人公はキースという平凡な会社員。キースはゲームストップ社というビデオゲームメーカーに投資しており、自身の投資する姿を動画配信もしています。キースの動画は多くの人に支持され、ゲームストップ社の株は徐々に上がっていきます。みんながキースの夢を支援し、それを自分の夢にしたのです。金融業界のヘッジファンドは、ゲームストップ社の株は絶対に下がると踏み、大量の空売りをします。ところがゲームストップ社の株は逆に急騰します。大富豪たちは大損してしまい、社会問題に広がります。この映画は株式市場を舞台と下大金持ち対一般庶民の構図の物語...映画『ダム・マネーウォール街を狙え!』を見ました。

  • 映画『落下の解剖学』を見ました。

    2023年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した映画『落下の解剖学』を見た。真実とは何かを考えさせる深く重い名画だった。人里離れた雪積もるフランスの山荘に一組の夫婦とその息子が住んでいる。夫はフランス人で妻はドイツ人だ。息子は目が見えず、盲導犬がサポートしている。夫婦は作家だ。その夫が不可解な転落死をする。妻が殺人容疑で逮捕される。妻は否認する。裁判となり、夫婦の冷めた関係が次々とあばかれていく。妻にとって都合の悪い証言や証拠が次々に出てくる。妻はそれに反論する。夫によって録音されていた夫婦の激しい言い争いが法廷で流される。その中では暴力を使ったかのような音もある。妻にとっては絶体絶命の展開です。最後に息子が証言する。果たして真実とは何か。判決はでる。しかし実は真実はわからないままだ。芥川龍之介の「...映画『落下の解剖学』を見ました。

  • 夏目漱石の『草枕』を読む。3

    画工は宿につく。内部の構造が迷路のような宿である。那古井という土地自体も山の中の閉ざされた場所であり、しかもこの宿も迷路のようであり、異空間に幽閉されているような感覚をおこさせる。通された部屋は普段使っている部屋だという。客がないので他の部屋は掃除をしていない。突然の客であったために普段使っている部屋に通されたのだ。食事をとって風呂に入る。そして寝る。夢を見る。長良の乙女が振袖を着て、青馬に乗って、峠を越すと、いきなり、ささだ男と、ささべ男が飛び出して両方から引っ張る。女が急にオフェリヤになって、柳の枝へ上って、河の中を流れながら、うつくしい声で歌をうたう。救ってやろうと思って、長い竿を持って、向島を追懸けて行く。女は苦しい様子もなく、笑いながら、うたいながら、行末も知らず流れを下る。余は竿をかついで、お...夏目漱石の『草枕』を読む。3

  • 夏目漱石の『草枕』を読む。2

    第二章山道の途中雨に降られた画工は茶屋に入る。誰も出てこないので、画工は火にあたり休んでいる。婆さんが出てくる。しばらくすると雨は止む。漱石の作品では意図的に雨が降る。漱石作品の中の雨は要注意である。雨が止むと遠くに山が見える。天狗巌だ。この天狗巌がこの那古井という村の象徴のような場所である。そこへ馬子の「源さん」(源兵衛)があらわれる。「那古井の嬢さま」の話題になる。嫁入りのときに裾振袖を着て、高島田に結って馬にのっていったのである。「那古井の嬢さま」とはこの小説の中心となる登場人物、那美のことであるが、まだ画工は会っていないので顔がわからない。画工はミレーのオフェリヤの面影を当てはめてみる。するとすっぽりとはまる。夏目漱石は「薤露行」でもオフェーリアのイメージを描いている。「薤露行」と「草枕」は明らか...夏目漱石の『草枕』を読む。2

  • 夏目漱石の『草枕』を読む。1

    夏目漱石の『草枕』を読む。章ごとに気付いたことを書いていく。今回は「一」。『草枕』の冒頭を引用する。山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。多くの人が知っている文である。この小説の語り手は画工である。この画工は「人の世が住みにくい」ので、引っ越したくなるがどこへ越しても結局は同じように住みにくく、住みにくさから逃れるために詩や画ができるのだという。ここで見逃してはいけないのは、結局はどこもが住みにくいということである。引っ越し(これは旅も含めていいのだろう)は、一時の気休めにしかならないのだ。ではなぜこの世は住みにくいの...夏目漱石の『草枕』を読む。1

  • 政治家はいらないのでは?

    政治家は本当に国のことを考えているのだろうか。裏金問題を見ていると、どうひいき目に見ても選挙に勝つことしか考えていない。選挙に勝つために領収書の必要のない金が必要になり、だから裏金が必要になる。選挙に勝ち続ける自民党はそうやって当選者を増やしてきたのだ。自民党は否定するだろうが、そう疑われてもしょうがないのである。彼らの理屈は「政治は金がかかる」である。しかし違う。「選挙に金がかかる」のだ。私設秘書をたくさん雇って選挙民の陳情を処理したり、後援会組織の拡大をねらったり、さまざまな選挙対策を金の力でやっている。ルール上認められているからいいと反論するのだろうが、こういうことばかりするから、本当に政治を志す若者は政治家になれず、二世議員だらけになってしまうのだ。お坊ちゃま議員は態度だけはでかいけれども、「先生...政治家はいらないのでは?

  • ショーン・ホームズ演出舞台『リア王』を見ました

    ショーン・ホームズが演出、段田安則が主演を務める『リア王』を見ました。斬新な演出で、緊張感が持続する舞台でした。幕が上がると白い背景、舞台の上には蛍光灯が点灯し、不思議な現代的な空間が現れ意表をつく幕開きとなりました。登場人物も現代的な衣装を着ています。人物の区別がつきやすく、大げさな歴史性が捨象されているために、セリフの意味がストレートに伝わってきます。人物関係もわかりやすくなっているような気がします。おそらく後半のごちゃごちゃした箇所が省略されていたので、すっきりしているのではないかと思われます。いろいろな考え方はあると思いますが、私はシェークスピア作品をそのままの形で、現代に、しかも日本で上演するのは無理があるように思います。とくに『リア王』はあまり上演されることがなく、観客も準備ができていません。...ショーン・ホームズ演出舞台『リア王』を見ました

  • KERA CROSS「骨と軽蔑」を見ました。

    KERA作品をさまざまな演出家の手で立ち上げる「KERACROSS」。そのラストをKERA自身が演出するので、KERAMAPと何が違うんだろうと疑問には感じるものの、まあそんな細かいことはどうでもよく、すごい役者が勢ぞろいして楽しみにしていた「骨と軽蔑」を見ました。やっぱりすごい舞台でした。内戦が続くある国が舞台です。会社経営をしているその町のお金持ち家族と、その関係者が登場人物です。ただしその家族の主は途中で死んでしまい、結局舞台には現れません。その家族の娘に小説家の姉がいます。その姉と妹の仲が悪い。常に喧嘩しています。お互いに相手が先に悪いことをしたからいけないんだと主張して、常に水掛け論になってしまいます。この関係が戦争が頻繁に起こる現在の国際状況と重なります。この芝居の特色は「異化」が頻繁に起きる...KERACROSS「骨と軽蔑」を見ました。

  • 東日本大震災の記憶

    13年前の今日、東日本大震災だった。高校入試の採点の日だった。突然大きく揺れ始めた。最初は冷静だった。大きな揺れも何度か経験していたので、しばらくすれば止むだろうと思って状況を見ていた。しかし揺れが収まらない。これは普通ではないと思い始めた。入試の採点をしているわけだから、まずは対応を考えなければならない。おそらくすぐに答案をすべてしまって、試験の本部にあずけ、外に出た。外はみぞれまじりの雪だった。かなり寒かったことを記憶している。異常事態であったので採点の処理などは落ち着いてからとなり、まもなく解散となった。採点日だったので生徒がいなかったのが幸いだった。生徒がいたら、全員を返すまで家に帰れなかった。多くの学校がそうだったと聞く。とは言え、そこからが大変だった。自動車で帰宅したのであるが、すでに停電して...東日本大震災の記憶

  • 夏目漱石の『明暗』夏目漱石4 焦点人物 温泉場

    4『焦点人物』「語り」についても大きな変化がある。これまでの漱石の作品は語り手が一人称であれ、三人称であれ、焦点となる人物は特定していた。例えば『吾輩は猫である』は「吾輩」が語り手となる一人称小説であり、焦点はもちろん「吾輩」にある。それに対して『三四郎』は三人称小説であり、語り手は小説内の世界の人物ではない。だから本来ならば誰に焦点をあててもいいのであるが、基本的には「三四郎」だけに焦点があてられる。つまり「三四郎」の心の中だけは描かれるが、他の登場人物の心の中は描かれないのである。大きな変化が現れたのは、後期三部作である。後期三部作の作品に於ては、語り手が交代するという方法がとられた。例えば『こころ』では、上と中の「私」と下の「私」は違っている。つまり一人称小説でありながら、語り手が交代することによっ...夏目漱石の『明暗』夏目漱石4焦点人物温泉場

  • 夏目漱石の『明暗』3「小林」

    3『小林』『明暗』の中で一番印象に残るのは「小林」である。小林の陰湿な言動にドストエフスキーを感じてしまうのである。小林自身が次のように語っている。「(ドストエフスキーのことを)先生に訊くと、ありゃ嘘だと云うんだ。あんな高尚な情操をわざと下劣な器に盛って、感傷的に読者を刺激する策略に過ぎない、つまりドストエヴスキが中った為に、多くの模倣者が続出して、無暗に安っぽくしてしまった一種の芸術的技巧にすぎないといううんだ。しかし僕はそうは思わない。先生からそんな事を聞くと腹が立つ。先生にドストエヴスキはわからない。」そして涙を落して泣きはじめるのである。小林は金で困っている津田よりも、更に生活に困っている人間である。それでいて気位は高い。言葉に迫力がある。その小林が別の場面では津田に次のように言う。「頭では解る、...夏目漱石の『明暗』3「小林」

  • 夏目漱石の『明暗』2 お金 心理戦

    夏目漱石の『明暗』について考えたころを、忘れる前に書いておきます。1,『お金』夏目漱石の小説でよくお金が重要な要素となる。津田も自身の入院費を工面するために奔走する。さらには小林への餞別でもお金のやりとりがある。お金のやりくりや、お金の出入りが筋を進める力となっているのである。ところが、不思議なことにお金のあてができる前に入院してしまう。現代の小説にはない特徴がある。夏目漱石は作家になる前も、東京帝大を卒業して、松山や熊本で教師として働いていたわけなのでそれなりの収入があったと考えられるのだが、夏目鏡子の『漱石の思ひ出』を読むと、漱石は朝日新聞に入社する前などはお金には苦しんだようである。つまり当時日本人はほとんどが貧乏だったのだ。借金が当たり前であり、借金の苦しみを抱えながら毎日を生きていたのである。夏...夏目漱石の『明暗』2お金心理戦

  • 夏目漱石の『明暗』

    夏目漱石の『明暗』を読み終わりました。3度めです。かなり長い小説ですが、完結していません。完結する前に漱石が死んでしまったのです。この小説について考えてみたいことをここに書きたいと思います。今回はあらすじを紹介します。あらすじ主人公は津田由雄。津田は、勤め先の社長吉川が紹介したお延と結婚している。しかしお延と知り合う以前に清子という女性と付き合っていた。清子は突然津田と別れ、関という男と結婚する。心変わりの理由も判然としないまま津田はお延と結婚する。津田とお延の関係はギクシャクしていて、お延は津田に対して不信感を抱いている。津田は痔を患い、入院手術が必要になる。お金が必要になり、京都の父親に仕送りを依頼するが、日ごろの不義理のせいで父親は憤慨しており、津田の申し出を拒絶する。金の工面がつかないまま津田は入...夏目漱石の『明暗』

  • 大谷翔平の活躍を期待はするが、テレビの取り上げ方は行き過ぎ

    大谷翔平選手の活躍は期待したい。しかしまだキャンプ中であり、プレシーズンマッチも始まったばかりなのに、テレビが大々的に取り上げている。これはやりすぎだ。例えば松山英樹選手がツアーで優勝した時も、そのニュースよりも大谷選手のキャンプが大きく取り上げられていた。卓球の世界選手権の女子チームの活躍よりも大谷選手が大きく取りあげられていた。あるいはJリーグの開幕なんかほとんど無視している報道番組もあった。ここまでアンバランスになるのはおかしい。テレビ局だって視聴率は大切であろう。大谷選手をとりあげたくなる気持ちもわからなくもない。しかし、スポーツというのはやはり競技の中で語られるものであり、実際の競技が優先されて報道されるべきものであろう。大谷選手の扱い方はもはや芸能ネタのようにしか見えない。他の活躍しているアス...大谷翔平の活躍を期待はするが、テレビの取り上げ方は行き過ぎ

  • 映画『エル・スール』を見ました。

    今年日本で30年以上ぶりに新作が公開された『瞳をとじて』の監督ビクトル・エリセの2作目の監督作品『エル・スール』が、『瞳をとじて』の公開に合わせて映画館で上映されました。仙台の公開が東京に3週間遅れのため、昨日ようやく見ることができました。35年以上前にシネヴィヴァン六本木で見た記憶があります。その時も衝撃だったのですが、今回見て、ほとんど忘れていたことが悔しく思えました。とは言え、いくつかのシーンが強烈に印象に残っており、記憶通りのシーンがよみがえりました。そして、今だからこそわかることに心が引きちぎられるような感覚に襲われました。この映画の背景にはスペインの内戦があります。左派と右派が戦い、結果右派のファシズム陣営が勝利します。右派のリーダーがフランコです。第二次世界大戦の同盟国側がおもに右派を支持し...映画『エル・スール』を見ました。

  • 映画『夜明けのすべて』を見ました。

    映画『夜明けのすべて』を見ました。生きづらい世の中を助け合って生きて行く意義を教える、心を軽くしてくれる映画でした。障害を持っている男女が主人公です。女性の藤沢はPMS(月経前症候群)という障害をもっていて、月経が近くなると自己をうしなってしまい、信じられない言動をしてしまいます。気付いた時にはすべてが「終わ」ってしまっています。男性の山添はパニック障害です。電車に近づくこともできず、行動範囲は広がりません。この二人がお互いの障害に気付き、寄り添いながら心を解かせていきます。考えてみれば障害のない人だって似たような経験をしていると思います。常に障害を気にして生きて行くつらさはないものの、多くの人は生涯忘れられないような失敗は何度かしていると思います。それを考えれば障害者の苦しみもある程度は理解できます。そ...映画『夜明けのすべて』を見ました。

  • 『道草』論

    『道草』は夏目漱石の自伝的小説と言われている。夏目漱石自身がモデルであり、ロンドン留学から帰国した後、東大の教師をつとめていたころのことが題材となっているのは明らかであり否定のしようがない。もちろん虚構も交えてあり、完全に事実を書いていたわけではない。とは言え、夏目漱石という人間を考える上でどうしても気になる小説である。また、夏目漱石は自分でストーリーを作るのは苦手だったようである。だから夏目漱石の作品は同じ所をグルグル回っているような印象を受ける。しかし『道草』は具体的な場面が比較的によく伝わるような気がする。伝わるからなのだろうか余計なまどろっこしい描写が少ない。その分、乾いた描写の鋭さが印象に残る。自伝的小説といいながら、『道草』の文体は客観的描写に徹していて、自分をモデルにしていると言われる健三の...『道草』論

  • 二世議員ばかりだから、物価だけが上がり給料が上がらない日本になる

    最近物価はどんどん上がっている。しかし給料はなかなか上がらない。大企業だけが給料を上げることをPRしているが、中小企業はあがらない。結局地方はおいてけぼりになる。年金生活者も年金が増えないので支出を減らすしかない。いつもの如く弱者にとっては厳しい国となっている。今回の自民党の裏金問題も、大企業が自民党のパーティ券を大量に買って、裏金を作らせて選挙に勝たせたという構図であることは明らかである。そして大企業寄りの政策を行う。だから弱者は切り捨ては当然の結果なのだ。アベノミクスの失敗もこの流れにあると言っていいだろう。旧統一教会の問題だって同じだろう。旧統一教会の望む政策をとらせるために選挙の支援を行う。その結果自民党が勝つから、多様性社会に対して逆行する政治家ばかりになる。大企業も自民党も東京さえ栄えていれば...二世議員ばかりだから、物価だけが上がり給料が上がらない日本になる

  • マルハラ

    産経新聞が「マルハラ」という新たなハラスメントを伝えた。「マルハラ」とは「SNSで中高年から送信される『承知しました。』など文末に句点がつくことに対し、若者が恐怖心を抱くことを言うのだそうです。この「マルハラ」報道を受け、俵万智さんが「句点を打つのも、おばさん構文と聞いて…この一首をそっと置いておきますね~」と前置きしてから、「優しさにひとつ気がつく×でなく〇で必ず終わる日本語」と、短歌をアップしたという話題がネットで紹介されていました。優しい切り返しでさすがです。最近はなんでもハラスメントにされてしまいます。「何でもハラスメント」のことを「ハラスメントハラスメント」つまり、「ハラハラ」という言葉さえ使っている人がいます。この「マルハラ」も「ハラハラ」の一種ということになるのでしょう。何をしてもハラスメン...マルハラ

  • 映画『哀れなるものたち』を見ました。

    SF映画『哀れなるものたち』を見ました。怪奇とシュールさが滑稽さ浪漫性を同時に生み出す不思議なバランスの映画でした。主人公は若くて美しい女性エマ。しかしエマは言動が普通ではありません。実はエマは妊娠していながら、飛び降り自殺をした女性でした。その女性に、お腹の中の胎児の脳を移植して生き返らせたのです。ですから外見と行動がアンバランスになってしまったのです。特にエマの言動のアンバランスさが目立つのが、性に関してです。肉体と脳のバランスが取れていたら、性に対する興味はそんなに早くは出てきません。しかし肉体が成熟しているがために、性快楽をすぐに発見してしまい、本能がそれを求めてしまいます。そのために奔放な性生活への旅に出てしまうのです。旅で描かれる風景は遊園地のような世界です。大人のメルヘンの世界です。昔見たイ...映画『哀れなるものたち』を見ました。

  • 芦原妃名子さん急死の後の反応について

    以前も芦原さんの死について書いた。原作者の気持ちがよくわかり、あってはならないいたましい事件であったと思う。私の好きなドラマだっただけに、残念でたまらない。しかし、その後のネットでの反応は私には腑に落ちない。芦原さんは、確かに脚本について意見が合わず困惑したことを書いていたが、結局自分の納得がいく脚本になったという旨のことをSNSで書いていたのである。だから誰かに仕返ししたかったわけではあるまい。私は、芦原さんはSNSの異常な反応に苦しめられたのではないかと感じるのである。先にも書いたが、このドラマはとてもよくできたドラマだった。ところが放送中のネットの反応はあまりよくなかった。それは原作者であり、脚本を書いた芦原さんにとって苦しいものであっただろう。さらに元の脚本家もとりようによっては芦原さんに対して嫌...芦原妃名子さん急死の後の反応について

  • 映画『リアリティ』を見ました。

    アメリカの国家機密リーク事件の尋問を再現した映画『リアリティ』を見ました。現実社会の恐怖を感じさせる映画でした。2017年買い物から帰宅したリアリティ・ウィナーは、FBIの捜査官に声をかけられます。リアリティは自分が何をしたのかがまだわかっていません。とは言えいくつかの思い当たることがあるような雰囲気です。そんなバカなと思う人もいるかもしれませんが、私たちは常に権力に見張られているという恐怖の中にいます。しかもネット社会では、ちょっとしたことが大きく糾弾させられる可能性があります。そんな権力機構の中で、生きている現代人の心理が伝わってきます。FBI捜査官は、リアリティに丁寧に質問をします。その中でリアリティは自分の容疑がなんであるかを探ろうとします。疑心暗鬼の中で慎重に質問を答えていると、ある言葉に強い反...映画『リアリティ』を見ました。

  • 山形市が今年もラーメン消費額一位に

    総務省の家計調査で、去年1年間のラーメン消費額は世帯あたり1万7,593円で山形市が日本一を連覇したとのことです。冷静に考えると喜んでいいのかどうかわからないのですし、けっこう恥ずかしい気にもなってしまうのですが、2位よりは1位のほうが気分的にはいい。過去最高額だそうです。山形のラーメンは私も好きです。バリエーションに富んでいて、辛みそラーメン、庄内地方の煮干しが効いたラーメン、冷たいラーメンなど特徴的なラーメンがあり、飽きがきません。山形県の河北町に「肉そば」という鶏肉を使った蕎麦があり、「冷たい肉そば」が大人気です。特に夏はこれが絶対に食べたくなります。その応用で「鳥中華」というラーメンがあり、それも山形ならではのラーメンだと思います。あるお店の「冷たい鳥中華」は絶品だと私は思っています。ラーメンは庶...山形市が今年もラーメン消費額一位に

  • 映画『枯れ葉』を見ました。

    映画『枯れ葉』を見ました。不思議なバランスの大人のメルヘンです。舞台は現代のフィンランドの首都ヘルシンキ。現代と言いながら古い時代のようにも感じられます。理不尽な理由で失業したアンサと、酒に溺れながらも工事現場で働くホラッパが恋に落ちます。しかし、この二人いつもたどたどしい。デートで見る映画はゾンビ映画だし、男は連絡先のメモをすぐに落としてしまう。さらに男はアル中で、女に嫌われるし、会社は首になる。こんな二人のたどたどしい中年の恋が淡々と描かれます。しかも忘れていけないのは、この映画の背後にウクライナ戦争があるということです。アンサが家でラジオをつけると必ずウクライナ戦争のニュースが流れてくるのです。この仕掛けが何を意味しているのかはわかりません。しかし表面的なメルヘン風のコメディの裏に、深い不条理を忍ば...映画『枯れ葉』を見ました。

  • 「平成」を忘れないで

    「サザエさん」の三平さんが消えてしまったことをかつてこのブログに書いていたところ、その理由を教えてくれるコメントをいただきました。どうもありがとうございました。さて「サザエさん」は「昭和」という言葉が似あう番組である。同じように、今話題になっている麻生太郎氏の発言も「昭和」を象徴するような発言であり、「令和」の時代にいまだに「昭和」が生きている。ここでふと考える。「平成」はこんなに無視されていいのだろうか。平成は1989年から2019年まで30年以上続いた元号である。確かに昭和ほど長く続いたわけではなく、高齢化の時代で昭和生まれがまだまだ多数派を占めるので、昭和が目立ってしまうのはしょうがないが、しかし平成が無視されつつあるのはかわいそうだ。一つの時代として無視できる時代ではない。昭和の古い価値観を壊し始...「平成」を忘れないで

  • 日本テレビにも責任はあるが、信憑性の乏しいネット記事の垂れ流しにも責任はある。

    ドラマ『セクシー田中さん』の原作の漫画家・芦原妃名子さんが栃木県内で死亡しているのが見つかったことに関して、様々な意見が出ている。私は、漫画は見ていないが、ドラマがすばらしくこのブログでも書かせてもらった。https://blog.goo.ne.jp/masasamm/e/b4e28bbf716f339024b77f255a7a83e0そのブログで「肩がこらないドラマでありながら、深い内容であり、日常にくじけそうになりながらも前向きにさせてくれるいいドラマだった。」と書いている。みんなくじけそうになりそうな現実を生きているのである。そして今回の件で、このドラマがいいドラマになったのは、テレビ局よりも芦原さんのおかげだということがわかった。余計に芦原さんの死が悔やまれる。このドラマに関して放送当時、かなり辛...日本テレビにも責任はあるが、信憑性の乏しいネット記事の垂れ流しにも責任はある。

  • 映画『マエストロ: その音楽と愛と』を見ました。

    アメリカを代表する世界的音楽家レナード・バーンスタインとその妻を描く映画『マエストロ:その音楽と愛と』を見ました。夫婦の愛を描く感動作でした。レナード・バーンスタインはアメリカの有名な作曲家であり、指揮者です。特にミュージカル『ウェストサイドストーリー』の作曲で、音楽に特に詳しくない私のような人も知る存在となっています。この映画を見ると、そのバーンスタインが、ユダヤ系であり、同性愛者であり、超ヘビースモーカーであり、薬物にも依存していたことがわかります。同時に芸術家として妥協がなく、家族を大切にして、特に妻に対する愛は真実であったことが見えてきます。奔放で人間的に魅力のある人物として描かれています。とは言え、この映画の主役はバーンスタインよりも妻のフェリシアに感じられます。バーンスタインの魅力にほれ込み結...映画『マエストロ:その音楽と愛と』を見ました。

  • 田原総一朗氏の進行はさすがに耐えきれない

    夜中に目が覚めてしまい、困ってしまってテレビを見始めた。チャンネルを回しているうちに『朝まで生テレビ』に出会ってしまった。最近は全く見ていなかったが、ネットで司会の田原氏への批判的意見をたくさん見てきたので、どんなもんだろうと見てしまった。とにかくひどかった。出演者の発言を自分勝手に遮る。遮るどころか相手を威嚇するような態度を取る。そして大声で持論をぶちまける。議論は全く進まない。こんなにひどいことになってしまっていたのかと唖然としてしまった。同時に怒りが込み上げてきた。田原氏の態度はパワハラそのものである。まじめに前向きに議論しようとしている出演者に対して、失礼極まりない。政治改革を話題にしているのに、田原氏の態度は政治家的よりも自分勝手で威圧的である。こんな人が司会をしている番組が政治改革を議論しても...田原総一朗氏の進行はさすがに耐えきれない

  • ドラマ『春になったら』は素晴らしい

    関西テレビの月曜日の午後10時からのドラマ『春になったら』がいい。木梨憲武演じる父親と奈緒演じる娘の二人暮らしの家族の物語である。2人が突然の告白をする。娘は3か月後に売れないお笑い芸人と結婚すると言い、父親は余命3か月だと言うのだ。余命3か月の父親という設定は若干真実味に乏しい気がするが、それでも木梨憲武が昭和の頑固おやじを丁寧に演じ、無理なく見える。なによりいいのが、丁寧に描いているということである。最近のドラマはどうしてもわかりやすくて奇想天外な筋に陥り、丁寧さに欠ける。ところがこのドラマはとても丁寧に描いている。それによって登場人物の気持ちがセリフ以上に伝わってくる。今週の第2回の伊豆の海岸のシーンはすばらしかった。泣けてくる。脚本は福田靖。はずれがなくどのドラマも面白かったが今回が最高傑作になる...ドラマ『春になったら』は素晴らしい

  • 映画『ティル』を見ました。

    かつての黒人差別のなまなましい現実を描くとともに、差別に対して戦う姿を描いた映画『ティル』を見ました。差別に対峙する強い意思の必要性を伝える佳作です。1955年にアメリカ合衆国ミシシッピ州で起きた、「エメット・ティル殺害事件」を描いています。すでに黒人差別のなくなっていたシカゴで育った少年エメットは、自分のルーツを知るためにミシシッピ州の親戚の家に行きます。エメットは母親から白人に対する態度を教えられるのですが、言葉の上での理解でしかなく、真の理解は得られていませんでした。そのために、白人に誤解を与えてしまい、虐待を受け、ついには殺されてしまいます。母親のメイミーは息子の死を悼み、怒り、差別に対して戦います。しかし白人の差別意識の壁は高く、なかなかミシシッピ州の差別解消は前進しません。結果として白人の論理...映画『ティル』を見ました。

  • 岸田首相の決断は評価するが、問題の本質を見失ってはいけない。

    岸田首相が岸田派の解散を明言した。これを書いている現在では二階派も解散すると言明したようであり、旧安倍派も解散するだろうと予測される。麻生派と茂木派は反対の立場のようだが、この流れの中で抵抗することは難しい状況である。全面戦争になるのか、一時撤退するのか興味あるところである。岸田氏のこの決断を評価したい。と言っても派閥の解散は問題の本質ではないのは明らかだ。しかも岸田氏の決断は、これまで派閥の論理で自分のやりたいことができなかったことに対する反転攻勢という利己的なものである。だから内容的には評価すべきほどのものではない。しかし政治家はピンチをチャンスに変えるという度胸がなければならない。これまで何も決断できなかった岸田氏が勝負に出たこの度胸を示したという意味で評価したいのである。ただし問題は派閥ではないの...岸田首相の決断は評価するが、問題の本質を見失ってはいけない。

  • 映画『ニューヨーク・オールド・アパートメント』を見ました。

    大都会で格差の中で生きる弱者の不条理を描く映画『ニューヨーク・オールド・アパートメント』を見ました。厳しい現実を描きながらも、したたかに生きていくおおらかさも感じられる映画でした。ニューヨークで不法移民として暮らす母と二人の息子。貧乏な生活をしながらもなんとか生きています。母はウェイトレスの仕事をしながら2人の息子を1人で育て、息子たちも配達員として家計を支えている。息子たちは自分を“透明人間”だと言います。居ても居なくとも同じような存在だと考えてしまうのです。その2人が、英会話スクールでクリスティンという美女と出会い、恋に落ちます。一方、母親は胡散臭い男性の誘いに乗ってブリトーのデリバリーを開業します。その家族が事件に巻き込まれてしまいます。ニューヨークにはさまざまな人種の移民が集まってきます。英語もし...映画『ニューヨーク・オールド・アパートメント』を見ました。

  • 泥まみれの自民党政権

    自民党の裏金問題が迷走しているように見える。結局東京地検は派閥の幹部の立件を断念したという情報が流れている。田崎史郎氏は政治には金がかかると言い、自民党の「政治刷新本部」という訳のわからない議では派閥に責任を押し付け、本質をごまかしにかかり始めている。ここでも小泉進次郎というボンボン議員は父親の真似をしたしゃべり方で無能ぶりを発揮し、議論を煙に巻こうとしている。結局はリクルート事件の時のように、ごまかされていきそうな予感がする。さて、今回の事件における最大の「目くらまし論理」は、結局は選挙で自民党を勝たせた有権者が悪いというものだ。確かに自民党を勝たせたのは有権者である。だからその責任は有権者にあるという論理は一見正しいようにも思われる。しかし、この問題を有権者の性にあるのはおかしい。そもそも近年の選挙で...泥まみれの自民党政権

  • 松本人志氏の報道について

    松本人志氏については、過去このブログで数回批判してきた。『ワイドナショー』を見て、その言動に対して憤りを感じたことがあったからであり、その後、松本人志氏が出ている番組はできるだけ見ないようにしてきた。だから今回の報道で松本氏が活動を休止することは正直言ってありがたいだけである。さまざまな意見も出てきているので私がこれ以上言うこともないとは思っている。とは言え、松本氏の今回の件の対応にはやはり不信感がある。松本氏が事実無根であるというならば、きちんと記者会見で自分の主張をすべきなのだ。なぜ逃げるような態度をとっているのかが理解できないのである。事実無根であるならば、きちんと自分の主張が言えるはずである。堂々と戦いに出てくるべきだ。そういう対応ができないというのはあまりにもおかしいし、だれもがより一層疑いをか...松本人志氏の報道について

  • 映画『PERFECT DAYS』を見ました。

    映画『PERFECTDAYS』を見ました。寡黙な男を描く、抑揚を抑えた映画でしたが、だからこそ映像がすべてを描き出す名画でした。ヴィム・ヴェンダース監督が役所広司を主役に迎え、東京を舞台に清掃作業員の男が送る日々を描いた映画であり、カンヌ映画祭で、役所さんが男優賞を受賞したので話題になった映画です。役所さんの役どころは、インテリなのになぜか安いアパートに住み、トイレ清掃の仕事をしている不思議な男です。毎日毎日が規則正しく進んでいき、まさに「PERFECTDAYS」です。おそらく彼の過去には様々なことがあったのだろうと予想されます。しかし、それはまったく語られません。におわせるだけです。他の登場人物もそれぞれがさまざまなことを抱えて生きていそうです。しかし、具体的には何も語られません。しかし映像は様々な人間...映画『PERFECTDAYS』を見ました。

  • 羽田空港の事故について

    2日の羽田空港の事故はいろいろなことを考えさせられた。1つ目。あれだけの事故でありながら、日航機の死者がゼロであったことに感動した。日本航空の意識の高さが証明されたし、乗客の冷静さもすばらしい。事故が起きた時に落ち着いて対応できるすばらしさを感じた。2つ目。誰かの大きなミスというほどの大きな要素があったようには思えない。いくつもの要素が重なった結果の事故であるようだ。つまり絶対の安全はありえないということである。人間がいくら気を付けていても、どこかでミスが起きる可能性は残されている。この事故と合わせて、能登半島地震で原発が稼働していたらどうなったであろうということが言われている。確かに大変なことになった可能性がある。どんなに注意していても事故はおきる。その事故が重大事案とならないためにどうあるべきかを念頭...羽田空港の事故について

  • 映画『ポトフ』を見ました。

    元日に映画館で『ポトフ』を見ました。感動しました。フランスの一昔前の料理人の物語です。男性料理人ドダン(解説では美食家と紹介されています。料理人というより料理プロデューサーと言うべき人なのかもしれません)は、女性料理人ウージェニーとひらめきのあるおいしい料理を作り、評判はヨーロッパ各国に広まっています。ドダンとウージェニーは長年お互いにひかれあっていました。そしてとうとうお互いの愛を確かめ合います。ふたりの関係が静かに、しかしドラマチックに展開します。しかしウージェニーに突然の悲劇が訪れます。映画はセリフがあまりなく、料理を作るシーンが長々と描かれます。料理に対する真剣なまなざしや、味見した後の表情、そして料理人同士の交わされる目線ですべてを物語ります。映画は不思議な展開をし、ラストシーンはこれまでにない...映画『ポトフ』を見ました。

  • 紅白歌合戦の視聴率

    紅白歌合戦の視聴率が低く、存続の意味を疑うネット記事が出ていた。これは毎年のように出ている。私自身、紅白歌合戦はほとんど見ていないし、今年はまったく見なかった。だからどうなろうと知ったことではないのであるが、視聴率でなんだかんだ勝手な意見を言うメディアに対しては反論したい。視聴率は民間放送は気にしないわけにはいけない目安であるし、公共放送とは言えNHKも受信料で成り立っているのだからやはり気にしないわけにはいかないだろう。しかし誰もが気付いている通り、近年の視聴率はどんどん落ちている。ヒットドラマでも15パーセントを超えるものはほとんどない。いつも大騒ぎしている朝ドラでさえ、20パーセントを超えなくなっている。この数字の意味については詳しく分析する必要があるだろうが、少なくとも昔の基準で視聴率の数字の意味...紅白歌合戦の視聴率

  • 2023年に見た映画

    年が明けてしまいましたが、2023年に見た映画を振り返ります。去年は53本の映画を劇場で見ました。①あのこと②リオポルトシュタット(ntlive)③ペルシャンレッスン④ミセスハリスパリへ行く⑤ビージーズ⑥ドリームホース⑦イニシュリン島の精霊⑧かもめ(ntlive)⑨別れる決心⑩RRR⑪BlueGiant⑫エブリシングエブリウェアオールアットワンス⑬フェイブルマンズ⑭ヒトラーのための虐殺会議⑮いつかの君にもわかること⑯コンパートメントNo.6⑰オットーという男⑱ワース命の値段⑲対峙⑳air㉑小さき麦の花㉒デヴィッドボウイムーエイジデイドリーム㉓ザ・ホエール㉔銀河鉄道の父㉕TAR㉖帰れない山㉗渇水㉘怪物㉙波紋㉚ウーマントーキング㉛アフターサン㉜パリタクシー㉝リバー、流れないでよ㉞エリッククラプトンアクロス24...2023年に見た映画

  • 2023年を振り返る

    2023年を振り返る。2023年は忖度文化が崩れ始めた年だった。これは去年から始まっていた。安倍晋三氏への銃撃から統一教会問題の不正が露呈した。東京オリンピックにおける電通をはじめとする業界と政治の癒着問題もあきらかになった。これまで「忖度」の言葉のもとに、どうせ何を言ってもかわらないと言う雰囲気が薄れ始めたのである。そして2023年になった。ジャニーズ問題、ビッグモーター社問題、日大アメフト問題、宝塚問題、ダイハツ問題などこれまで隠蔽されてきた大きな問題が次々と明るみになった。「忖度」の言葉で丸め込まれてきた問題だ。だれも言わなかった問題が、だれもが言うようになった。そして安倍派のパーティ券問題である。金がこの国を動かしてきた。そして金の力で権力を構築し、だれも批判できないような国を作ってきた。日本は緩...2023年を振り返る

  • 『セクシー田中さん』は今期一番のドラマだった

    『セクシー田中さん』は今期一番のドラマだった。なんだか一昔前のようなタイトルだったので、全く期待していなかったのだが、肩がこらないドラマでありながら、深い内容であり、日常にくじけそうになりながらも前向きにさせてくれるいいドラマだった。最初は『ハケンの品格』のように「田中さん」はスーパーウーマンなのかなと思って見ていた。しかし逆だった。「田中さん」は本当に地味で、不器用で、友達もいなく毎日いきているだけの会社員だった。しかしそんな自分を変えようとベリーダンスを習い始める。ベリーダンスにハマり、同時に自信を持ち始めることになる。「田中さん」の周りの人たちも、そんな「田中さん」の魅力にはまっていく。そして「田中さん」に刺激を受けて、それぞれが自分たちの生き方を模索し始める。見ている私も刺激を受けた。決して派手な...『セクシー田中さん』は今期一番のドラマだった

  • 映画『ファーストカウ』を見ました。

    映画『ファーストカウ』を見ました。最初は何だかわからないで進んでいって、このまま訳がわからないまま終わるのかと心配になってしまったのですが、後半から話が見え始めると、いきなり引き込まれて行きました。単純なストーリーと言えばそれまでなのですが、今と違い、本当に先が見えない世の中で生きていく開拓者の生きざまが心を揺さぶりました。2人の主たる登場人物がいます。ひとりは元料理人。もうひとりは中国からやってきた移民。2人はお互いに集団をつくるのが苦手であり、そのために行動を一緒にするようになります。そのふたりがふとしたことから金儲けの方法を見つけ出します。しかし、それはリスクも一緒でした。ふたりの運命はいかに。絵空事のようでもあり、一方ではリアルでもあり、夢を生きていた時代の厳しさとワクワク感が伝わってきます。しか...映画『ファーストカウ』を見ました。

  • 『下剋上球児』の感想

    今期のドラマが次々最終回を迎えている。今期も楽しませていただいた。日曜劇場の『下剋上球児』は肩の凝らない感動ドラマだった。試合のシーンは臨場感があり、緊迫感が伝わってきた。丁寧に描かれていた。鈴木亮平、黒木華、そして高校生を演じた若手俳優、それぞれ魅力的だった。特に高校生を演じた役者たちは、最初は誰が誰だかわからない状態だったが、見続けていくうちに役柄が頭の中にインプットされ、個性が見えてきた。そしてそれとともにおもしろさが急激に増加した。ただし、監督が教員免許をもっていなかったという設定はひどい。ありえない。現実にそんなことがあったら大スキャンダルである。当然校長の首は飛ぶし、その監督が復帰することなどありうるはずがない。せっかくのドラマがリアリティを失ってしまった。さすがにあの回以降見るのをやめかけた...『下剋上球児』の感想

  • 田崎史郎氏と裏金

    自民党が危機に陥ったので田崎史郎氏が大活躍である。田崎氏は自民党のスポークスマンであり、ジャーナリストではない。自民党の代弁をジャーナリストのふりをして語るにすぎない。田崎氏のうまさは懐が広いということである。最初の段階ではある程度相手を責めさせて、自民党の非を認め、自ら自民党の悪いところを批判するのだ。今回もこれまではそれほど目立つ発言をしていなく、だいぶおとなしくなったと感じていた。しかしいよいよ田崎氏の田崎氏らしい姿が見え始めた。きょうたまたま『ひるおび』を見ていた。自民党の裏金疑惑の報道で、朝日新聞とNHKがスクープを連発していることを取り上げ、「検察がメディアをうまく利用している」「メディアと検察の関係も考えなければならない」と言い始めたのだ。あたかも検察と朝日新聞がグルになって世論誘導をしてい...田崎史郎氏と裏金

  • 大学の授業料をどうすべきか。

    前回大学に授業料が他国と比較して高いことを述べた。ではどうすればいいか。私見を述べる。まずは大学の授業料の問題と、少子化の問題を別の問題として分ける必要がある。これを一緒くたに考えると混乱が生じる。では大学の授業料をどうすべきか。もちろん下げる必要がある。できれば今の三分の二ぐらいの授業料にしたい。もちろんそのための予算は国の予算からの支出なので、はじめから大学に行くつもりのない家庭からの反発があることは予想される。しかし知識は国の財産である。その財産を育てることに国家予算を使う事は悪いことではない。特に科学技術の発展のためには絶対に必要である。つけ刃的な減税よりも未来への投資を優先するほうが望ましいのだ。なお、この授業料の減額については様々な方法があろう。今思いつくのは、卒業したら返済の必要のない奨学金...大学の授業料をどうすべきか。

  • 大学の学費の国際比較

    先日、岸田政権の打ち出した3人以上の子どもを持つ世帯に対する大学授業料の無償化をについて批判の意見をここに書いた。ここでは大学の学費はどうすればいいかについて意見を述べたい。今回は海外比較を行う。大学の学費が日本より高い国はアメリカである。日本と同レベルと考えていいのはイギリス、オーストラリア、韓国などの国であり、イギリス以外のヨーロッパの国は明らかに日本よりも低い。アメリカが日本よりも高いならばそれでいいではないかと考える人もいるかもしれないが、実はアメリカは奨学金の制度が充実している。しかもアメリカの大卒の人材は日本よりも圧倒的に給料が高い。日本の場合は学費も高めだが、給料は安い。奨学金の制度も利子つきのものが多く、充実しているとは言えない。大学に行くことは逆に経済的には負担だけになっているのだ。だっ...大学の学費の国際比較

  • 政治資金規正法のザル

    政治と金の問題は何年か周期で起きる。その度に政治資金規正法が問題となり、改正が行われる。問題は改正案が出るたびに、これは「抜け道がある」と野党に指摘されてきたということである。単純にすべての購入者と購入金額を公表してしまえばいいだけのことなのに、自民党はいろいろと理屈をつけて透明化を阻止してきた。今回のパーティー券の問題も20万円以内の購入者は名前を公表する必要がない。これが不正の温床になってしまうことは改正の際に言われていたことなのだ。もし現行のままならば例えばある企業が10人が買ったことにして200万円を支払うことだって、名前を公表しないのだから可能になってしまう。自民党の常とう句は「政治には金がかかる」だが、そのために政党助成金ができたのだ。それ以上のお金が必要ならば、すべて名前を公表して献金するよ...政治資金規正法のザル

  • 悪夢の安倍政権

    安倍晋三氏が総理大臣時代、民主党政権を「悪夢の民主党政権」と批判していた。しかしここに至っては安倍政権こそが「悪夢」であったことが明白になってきた。以前にも書いたことがあるが、安倍政権を評価できるのは、雇用を回復したということと、中国や韓国に強気の対応を示したことである。雇用を回復するための方策として「アベノミクス」があった。しかし「アベノミクス」は中途半端に終わり、雇用を回復するまではできたが、デフレは解消せず、ただ借金を増やすだけに終ってしまった。しかもその出口が未だに見えなくなってしまっている。借金が増えただけだから、日本経済にとってはこれから何年も重い足かせとなる。中国韓国への強気の姿勢については評価できるが、一方ではロシアとの領土問題は明らかに後退してしまった。これは大失政だった。さらにはアメリ...悪夢の安倍政権

  • 大学無償化?

    岸田政権が迷走している。政府は少子化対策の一環で、3人以上の子どもを持つ世帯に対し、所得制限を設けずに大学の授業料を2025年度から無償化する方針を固めた。この政策は意味不明だ。ある意味国民を馬鹿にしているとも言える。大学の学費が大きな負担になっているのは事実である。大学はすでに無償になっている国もあるという。少なくとも日本の大学の学費は高いのはあきらかだ。そんななか3人以上子どもをもつ世帯に授業料を無償化すると打ち出した。一見よさそうな政策ではある。しかしよく考えてほしい。こんなにでたらめな政策はない。まずは不公平である。3人兄弟だから大学はただで、一人っ子だから大学に行くのに金がかかるという理屈が通るはずがない。しかも少なくともこれは今大学を目指す子どものいる家庭ではすでに遅い。いまさらそんなことを言...大学無償化?

  • 映画『熊は、いない』を見ました。

    映画『熊は、いない』を見ました。イランの国内事情などが見事に映像化されていて、刺激を受けます。しかし予備知識なしでみたので、作品の構造が見えてきません。私自身の責任なのかとは思いますが、物足りなく感じてしまいました。パナヒ監督はトルコで偽造パスポートを使って国外逃亡しようとしている若い男女を主人公にしたドキュメンタリードラマ映画を撮影しています。しかしその現場に監督はいません。監督は隣の国イランの国境近くの小さな村からリモートで指示を出します。このあたりの事情が私にはしっくりと入ってきません。監督は、滞在している村でも恋人たちのトラブルに巻き込まれてしまいます。監督自身も警察から目をつけられます。このあたりも重要な場面を見逃してしまっているのか、私の中ではうまくつながっていきません。事前に学習したり、もう...映画『熊は、いない』を見ました。

  • 山田太一さんのこと

    山田太一さんが亡くなった。山田さんは私の師である。もちろん私が勝手に思っているだけで、会ったこともない。しかし山田太一さんのドラマはどれだけ私に影響を与えたであろう。テレビのシナリオライターにあこがれて、養成所に通ったりもした。つまらない脚本を何本か書いてみたりもした。いまだにテレビドラマや、映画が好きなのも山田さんの影響である。ご冥福をお祈りする。何と言っても、『男たちの旅路』である。これを見たのはおそらく小学生の時だろう。大きな衝撃を受けた。テレビドラマという概念がいきなり広がった。こんなに人間の姿を生々しく描くことができるのかと興奮していた。その後も『高原へいらっしゃい』、『岸辺のアルバム』、『緑の夢を見ませんか?』、『沿線地図』、『獅子の時代』、『シャツの店』など、本音を言えない時代の現代の苦しみ...山田太一さんのこと

  • 大阪万博

    大阪万博が大問題になっている。あまりに巨額に膨れ上がる費用に憤りを感じる。しかし私は今から中止するのは無責任であろうと考える。やるしかない。しかし経費がふえていくだけの現状は許すわけにはいかない。上限を明確にしてそれ以上増える場合は、規模を縮小して予算内に抑えるという確約をとるべきである。大阪万博の予算がどんどん増え、中止をすべきだという意見に心情的には同意したい。しかし現実にはここで中止になった場合、それを前提で動いていたたくさんの人たちが多大な損害を被ることになる。その人たちの損害は国や大阪が負担することになるのであろうが、それこそなんでもかんでも金で解決すればいいということになるのではなかろうか。とは言えこのまま行けば、おそらくいろいろな理屈をつけてさらに予算が増えていくことは明白である。東京オリン...大阪万博

  • 映画『シアターキャンプ』を見ました。

    子供たちの演劇教育を目的としたサマーキャンプのドタバタをドキュメンタリー風に描くコメディ映画『サマーキャンプ』を見ました。内容はアメリカの最後のミュージカルシーンが印象に残る佳作でした。演劇教育を目的としたサマーキャンプが今年も開催されます。しかし主催者である校長が昏睡状態となってしまい、その息子が後を継ぎます。残念ながら息子はまったく熱心ではあいません。結局、簡単に経営状態の悪いスクールを手放す決断をします。スクールを存続させるために、みんなが協力するのですが、逆にいろいろな問題が沸き起こり、絶体絶命の状況に陥ります。しかし最後にはミュージカルの力で逆転し、すべてがいい方向に動くのです。この映画のいいところはストーリーよりも、ラストのミュージカルです。よくできた歌、そして演じる子供たちの生き生きとした表...映画『シアターキャンプ』を見ました。

  • 『ガラスの動物園』『消えなさいローラ』を見ました。

    山形市の「やまぎん県民ホール」で『ガラスの動物園』『消えなさいローラ』を見ました。すばらしい舞台でした。演出は渡辺えり。出演するのは渡辺えり、尾上松也、吉岡里穂、和田琢磨。山形市は渡辺えりの出身地なので、凱旋公演の意味合いもあり、2000人収容の客席がほぼ満席となっていました。正直言って辺えりの作品はどうもしっくりこないものが多く、あまり期待してなかったのですが、今回の芝居はすばらしい。感動しました。渡辺えりはやはりすばらしい演劇人だったということを再認識させられました。『ガラスの動物園』はテネシーウィリアムズの出世作です。アメリカの現実を描き、そこに生きる庶民の機微を描いています。「古き良きアメリカ」の乾いた現実が観客に迫ってきます。主人公のローラは足が不自由で、しかも発達障害の傾向も見られます。引きこ...『ガラスの動物園』『消えなさいローラ』を見ました。

  • オリンピックはもういらないのでは?

    石川県の馳浩知事が東京五輪の招致活動に内閣官房機密費を使ったと発言した。すぐに撤回したのだが、だれも信じてはいまい。馳氏は自分の自慢をしたかっただけであり、それが大ごとになってしまったから撤回したのだ。機密費の問題だから撤回すればそれ以上は追求の仕様がないので、逃げ切ることはできる。しかし誰もが馳氏の発言は事実だったと思っているという、現在の日本の社会を象徴するような出来事になってしまった。これでは選挙に若い人がいかないのは当然だ。東京オリンピックはコロナ禍で行われた。客席はガラガラで、それでも成立したのだ。こうなったらもうオリンピックなんて世界分散開催でも可能であろう。例えば水泳は日本で、陸上競技はアメリカで、サッカーはアフリカで、ヨーロッパではバスケットを同時期に行えばいい。現在のような経費の問題もク...オリンピックはもういらないのでは?

  • 大谷翔平の目指すもの

    大谷翔平選手の移籍先(エンゼルス残留の可能性もあるが)がやっぱり気になる。私が勝手に大谷選手の気持ちを推測してみる。大谷選手にとって大切なのは①二刀流を続ける環境を用意してもらえること②優勝できる環境であること③WBCやロスアンジェルスオリンピックに出ることが可能であることの3つではないだろうか。二刀流を続けることが大谷選手の一番の条件であることは間違いない。ただ単に打者であるだけでは、彼のモチベーションは続かない。誰も成し遂げなかったことをしたいというのが彼の根本にある。この条件だけならばエンゼルス残留が一番いい。しかし、②の優勝できる環境かといわれるとエンゼルスは厳しい。大谷選手はプレーオフにも出たことがないのだ。さすがにこれではチームの球団経営の在り方に問題があると感じられてしまう。やはり大谷選手は...大谷翔平の目指すもの

  • 映画『バーナデット ママは行方不明』を見ました。

    名優ケイト・ブランシェットの主演映画『バーナデットママは行方不明』を見ました。前半はケイト・ブランシェットを使っただけで満足した中身の乏しい映画なのかなと、思ってしまいましたが、後半になると、生き方を考えさせる映画であることに気付き見入ってしましました。シアトルに暮らすバーナデットは、かつては天才建築家としてもてはやされていました。しかし裏切もあり、人間嫌いになっています。家族(夫と娘)以外とはできるだけ接触を断ち、接触してしまうとトラブルを生みます。精神的には追い詰められ、神経の薬もたくさん飲んでボロボロになっていきます。夫のエルジーは一流IT企業に勤めています。妻のことを大切には思っているのですが、妻がそこまでひどい状態だということには気が付いていません。気付いた時には大変なことになっていました。バー...映画『バーナデットママは行方不明』を見ました。

  • 忖度構造の崩壊の今こそ、新しい政治を作るチャンスだ。

    安倍政権は力のある政権だった。安倍政権の評価についてはこれまでもここで何度か書いてきたので、今回は省略する。ただし安倍晋三氏は亡くなる前まで政界における最大の権力者だった。だれもが安倍氏に忖度した。しかし安倍氏は不幸にも殺されてしまった。その結果政界における中心的な権力者がいなくなった。この変化は大きい。自民党政権への忖度がおきなくなった。しかも安倍氏の死は旧統一教会の問題と関係づけられ、安倍氏の評価を一気に落とした。いや安倍氏の政治に対して表立って批判する人が出てきた。もう一つ重要な出来事があった。ジャニー喜多川氏の問題である。ジャニーズ問題はジャニーズ事務所の問題でもあったが、その暴走を許してしまったマスメディアへの批判も大きかった。権力の横暴を許す構造に対して世論は強く反感をしめした。それが政治にも...忖度構造の崩壊の今こそ、新しい政治を作るチャンスだ。

  • 宝塚歌劇団のパワハラ問題

    宝塚歌劇団のパワハラ問題は、近年のハラスメント問題について考えさせられる大きな問題です。宝塚歌劇団に所属する25歳の女性が亡くなった問題で、劇団側が調査結果を公表しました。劇団側は「過重労働」については認めましたが、上級生からのパワハラ行為があったということは確認できないとしました。それに対して遺族側は再検証すべきだとすぐに反論しました。検証チームは主に劇団員からの聞き取りによってパワハラは認められないとしていますが、検証チームが主に行ったのは劇大関係者への聞き取り調査です。これは遺族側からすれば納得できないのは当然です。劇団員は先輩に忖度してしまいます。パワハラがあったとは言いにくい。そもそも組織の中には「伝統」があり、それが組織内を結びつける要因になっています。劇団員にとってみればその「伝統」は「当た...宝塚歌劇団のパワハラ問題

  • 映画『ダンサーインParis』を見ました。

    映画『ダンサーインParis』を見ました。気持ちのいい映画でした。私の好みの映画でした。パリ・オペラ座バレエ団でエトワールを目指すエリーズは、恋人の裏切りを目撃して心が乱れ、公演で足首を負傷してしまいます。かなり大きな負傷で、再起ができるかわかりません。エリーズは落ち込みます。この時の心の揺れが丁寧に描かれ、よく伝わってきます。そんな折、料理のアシスタント係の仕事でブルターニュを訪れます。そこで、世間から注目を集めるダンスカンパニーと出会います。そのダンスに心が魅かれて行きます。独創的なコンテンポラリーダンスに踊る喜びを感じ、心の開放によって足の具合まで奇跡的によくなっていきます。自信を得たエリーズは、父親との関係を再生させようとします。エリー図とバレエのレッスンに送り迎えしてくれた亡くなった母親との関係...映画『ダンサーインParis』を見ました。

  • 『ガリバー旅行記』と夏目漱石

    夏目漱石の研究をしています。夏目漱石はイギリスに留学した後、東大で二つの授業をしています。ひとつはのちに『文学論』としてまとめられる授業です。こちらは理論的な文学論で難しすぎて学生にはおおむね不評だったようです。もうひとつはのちに『文学評論』としてまとめられる授業です。こちらは18世紀のイギリスの文学を語り聞かせる授業で、学生に人気があったようです。『文学評論』の中でスウィフトを取り上げ、熱く語っています。もちろんスウィフトというのは『ガリバー旅行記』の作者です。今回、『ガリバー旅行記』を初めて読みました。その感想については以前このブログに書きました。今回は漱石の捉え方について書きます。漱石が一番興味をもったのは第四話です。第四話は、馬「フウイヌム」の支配している国です。フウイヌムは人間に比べて理性的で争...『ガリバー旅行記』と夏目漱石

  • 教員不足問題の解決に5億円?

    少し前に「文科省深刻な教員不足の対策に5億円」というネット記事が出ていた。深刻な教員不足の問題をめぐり、文科省が今年度の補正予算案に教員の成り手を確保するための事業として5億円を盛り込む方針だと言うニュースだ。目くらましの予算措置で何の意味もない。教員不足解消のために必要なのは、教師の負担を減らすしかない。毎月何十時間ものサービス残業をさせられ、しかも保護者からのクレーム、生徒からのクレーム、職場の人間関係など面倒なことのオンパレードなのだ。普通の人ならばこんな職は目指すはずがない。教員不足を解消するためには、具体的には①完全に部活動の指導から解放し、地域に部活動を移行すること。(もちろん地域での指導者への報酬が生じる。)②事務職員を増やして事務仕事から解放すること。③ICTに関しては専門家を各学校にひと...教員不足問題の解決に5億円?

  • 「AIと私たち 労働と社会のゆくえ」

    11月2日の朝日新聞で「AIと私たち労働と社会のゆくえ」というタイトルで大澤真幸氏のインタヴューが掲載されていた。考えさせられた。大澤氏は次のような趣旨のことをいいます。「AIが進化しても人間にしかできない仕事が残されるだろうと言われてきた。しかし実際は『創造性が必要な仕事』、『社交性が求められるやりとり』、『マニュアル化できない例外的阿出来事』など、『人間に残される』とされてきた仕事こそ生成AIは得意としている。」これは衝撃的です。はたしてこれはどういう結果になるのか。私は教員をしていたので学校教育を例にしていいます。最近の学校教育も「GIGAスクール構想」が始まり、その結果どうなっていくのかを考えると、動画で授業が行われるような時代になりつつあるような気がします。教育産業が動画を通じて学校に参入し、学...「AIと私たち労働と社会のゆくえ」

  • 政権批判は政策批判であるべきだ

    岸田総理の支持率がどんどん落ちている。もっともなことだ。思い付きのような政策が出されて、経済はボロボロである。批判に値する。しかし批判の仕方が「増税メガネ」とか「給料」の問題とか別次元に波及していることは正しいことではない。政治家の質問にそういうものがあるのは情けない。野党が世間から見放されているのはそういう子供じみた発言が原因である。岸田首相は閣僚らの給与を引き上げる法案「特別職の職員の給与に関する法律」に対して日本維新の会の音喜多議員が批判的な質問をしていた。そういう別次元の問題を物価高対策との関連で取り上げるのは、大人の議論ではあるまい。公務員の給料は総理や閣僚、議員でも同じ土俵で考えるべきであり、それがおかしいのだとすれば、物価高対策との関連ではなく、改めて別の土俵で議論すべきことである。マスコミ...政権批判は政策批判であるべきだ

  • シネマ歌舞伎『高野聖』を見ました。

    坂東玉三郎主演の泉鏡花原作『高野聖』の舞台を映像化した映画を見ました。泉鏡花の幻想的で日本的な美を堪能できる作品でした。泉鏡花の「高野聖」は読んだことがなく、これを機に読んでみました。複雑な語りの構造であり、その複雑な語り事態が物語の舞台となる山の奥深さを表現しています。深い山に歩を進めるとそこは人間を拒絶するような残酷さがあります。しかしそこで幻想的な美しい女と出会います。その女との妖艶な物語が進んでいきます。泉鏡花の作品の面白さを改めて知ることができました。そしてそれを舞台にしたこの作品は、泉鏡花の世界を見事に再現しています。玉三郎の幻想的な美しさが、同時に幻想的な残忍さを生み出します。しかもその怪しい美しさはある種の恐怖をうみだします。ただしそれだけではありません。それが村の歴史と重なり合って、日本...シネマ歌舞伎『高野聖』を見ました。

  • ラグビーワールドカップ・フランス大会決勝はすばらしい試合だった。

    ラグビーワールドカップ・フランス大会決勝が今日の早朝行われ、テレビで観戦した。ニュージーランドと南アフリカが対戦し、南アフリカが勝利した。素晴らしい試合だった。この試合で、前半にニュージーランドのキャプテン、サム・ケーンが危険なタックルで退場処分となった。VTRで見る限り、肩が相手の顔に当るプレーで危険であることは間違いないが、偶然ぶつかってしまったようには見えた。だから退場は厳しすぎるかとも思った。しかし、ラグビーが世界でさらに盛んになるためには、命にかかわるようなプレーは根絶しなければならない。今回の大会はそういう意図がはっきりと示されていた大会だったので、退場も仕方のない判定だったのだろう。退場によって圧倒的に南アフリカの有利になると思われたが、ニュージーランドの底力はそこからだった。ラグビーの力強...ラグビーワールドカップ・フランス大会決勝はすばらしい試合だった。

  • 三菱自動車の中国からの撤退の不安

    三菱自動車は中国での車両生産と販売から撤退するというニュースが数日前に流れていた。中国では電気自動車が主流になりつつあり、日本車の販売が厳しくなってきているのが原因らしい。このニュースを見て不安になった。日本はアベノミクスで円安を誘導した。これによってインバウンドが増え、観光産業は潤った。また輸出産業にも好影響を与えた。日本の輸出産業と言えば何と言っても自動車である。自動車産業はアベノミクスによって日本の基盤産業となり、発展してきたのだ。逆に言えば、自動車産業の先行きが怪しくなったら、日本が打つ手がなくなってしまうのではないかと心配されるのだ。三菱自動車の撤退が、電気自動車への対応の遅れだと言う。日本の自動車メーカーは電気自動車への対応は遅れているのは事実だ。とくにトヨタがはっきりと遅れている。トヨタの技...三菱自動車の中国からの撤退の不安

  • 情けないセコちゃん

    岸田首相は臨時国会に減税を打ち出して臨んだ。そしてさらに住民税の非課税世帯には7万円を給付する案などが出ていていると報道された。もはやバラマキと言われて反論しようもない。一方では「安倍元総理のコバンザメ」セコちゃんこと世耕弘成参院幹事長が25日の参院代表質問で「還元という言葉がわかりにくかった」とダメ出しをして、さらに「国民の期待するリーダーとしての姿を示せてないから、支持率が低下しているのではないか」「言葉についてはいくばくかの弱さを感じざるをえない」「総理が何をしようとしているのか全く伝わらない」などと、辛らつな言葉を並べ立てた。おっしゃる通りだが、あんたが言ってどうなるという発言であり、許しがたい発言である。そもそもこの経済混乱は安倍政権の経済政策の失敗によるものである。「異次元の低金利政策」を途中...情けないセコちゃん

  • プロ野球改革

    明日はいよいよプロ野球のドラフト会議。山形県では期待の高校生武田陸玖がドラフトで指名されそうで、どこに指名されるか興味があります。さて、ドラフトとは直接関係ないのですが日本のプロ野球は改革が進んでいない気がします。私見を述べたいと思います。①セリーグは早く指名打者制を採用すべき。もはや世界の野球で指名打者制を採用していないのは、セリーグぐらいである。指名打者制は投手の負担を減らし、野手の活躍の場所を広げます。大谷翔平だって指名打者制があったからこそ二刀流ができたのです。見ている方から見ても、せっかくのチャンスの場面で投手が打者だったりすると、展開が途切れてしまいがちでおもしろくありません。もはや指名打者制を採用しない理由が見つかりません。変更しないのは単なる意地でしかないような気がします。②ピッチクロック...プロ野球改革

  • 関口宏氏が『サンデーモーニング』の司会を勇退

    関口宏氏が来年3月末で『サンデーモーニング』の司会を離れる。関口さんも80歳を超えている。進行がおぼつかない場面も時折見られたので、仕方のないところであろう。ただし、この番組に対してはネットの口コミで批判が多く、その圧力で辞めさせられたという印象もある。『サンデーモーニング』は視聴率が高かったので、ターゲットにされてしまったのであろう。ちょっとしたことまで揚げ足取りのような批判にさらされた。日本の言論事情のいびつな構造がこの番組の周辺で見受けられるようになったのだ。番組についての関口氏の言葉がネット記事になる。ちょっとした政権批判であり、特別どうのこうの言うべき発言でもない。記事の内容もなぜこれを取り上げるのかという程度のものである。しかし、その記事に対して関口氏への誹謗中傷としか思えないようなコメントが...関口宏氏が『サンデーモーニング』の司会を勇退

  • 岸田首相のばら撒き政策は末期症状の表れか

    岸田首相がここに来て所得減税を検討するように与党に指示したという。すでに予算は膨れ上がり、これもまた国債頼りの政策であろう。財政規律はもはや死語となり、金銭感覚が麻痺している状態である。すでに防衛費の大幅な増額や、少子化対策費の増額など、予算は目いっぱいを通り過ぎている。ガソリン価格の上昇に対する補助も相当の金額だ。これ以上予算を増やせば、次の世代に大きなつけを残すのは明白である。結果的には少子化対策など考えていないということだ。誰もが気付くようにこれは選挙対策である。例のごとくこのばらまき予算を手に解散する。「この予算を認めるか、認めないかを国民に問う」としらじらしい言葉を吐き出す岸田首相の姿が想像される。安倍首相以来、この国の政治は強者のための政治となってしまった。資本主義国家とはこういう国だったのか...岸田首相のばら撒き政策は末期症状の表れか

  • 歌舞伎座で十月錦秋大歌舞伎を見ました。

    歌舞伎座で十月錦秋大歌舞伎の昼の部を見ました。寺島しのぶが歌舞伎座に出演するということで話題になっている舞台です。見ごたえのあるいい舞台でした。演目は二つ。一つ目は『天竺徳兵衛韓噺』という鶴屋南北の作品。ガマガエルが暴れ出すというぶっとんだ作品です。ぶっとびすぎて面食らってしまいました。松緑の良さが見える作品でした。二つ目が、寺島しのぶが出演する『文七元結』。三遊亭円朝作の落語の人情噺を舞台化したものです。主人公、長兵衛を演じるのは中村獅童。そしてその女房役が寺島しのぶです。ふたりの演技のうまさが際立ちました。脇を固める片岡亀蔵、坂東弥十郎、片岡孝太郎などしっかりとした演技で芝居を作り上げています。寺島しのぶが歌舞伎に出ることについては、何の心配もしていませんでしたが、女形とのバランスについてもまったく問...歌舞伎座で十月錦秋大歌舞伎を見ました。

  • 王座戦を見ていました。

    王座戦をABEMATVで見ていました。特に知り合いでもないので藤井七冠を応援する必要もないのですが、やはり応援していました。やっぱり記録的な快挙は見てみたい。ほぼ永瀬王座が勝を手中にしていた将棋でしたが、失着があり、一気に逆転して藤井七冠が八冠になりました。藤井新王座おめでとうございます。しかし実はこの王座戦永瀬前王座の強さが目立ちました。第三局も第四局も同じように、信じられないようなミスで負けただけで、ほとんど勝っていました。第二局も藤井八冠の入玉という戦法によって負けたので、打ちのめされたというような将棋はなかったのです。もちろん勝負の世界ですから、勝ちは勝ち、負けは負けです。とは言え、永瀬前王座の強さが印象に残る棋戦でした。藤井八冠も安泰ではありません。永瀬九段はあきらかに強い。さらに今竜王戦を戦っ...王座戦を見ていました。

  • ガザ地区の武力衝突

    パレスチナ自治区のイスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突が起きた。世界の平和が連鎖的に崩れていく状況のように思え、恐怖を感じる。いまこそ世界が冷静に知恵を出し合う必要がある。武力衝突の発端はハマスにある。だから責められるべきはハマスだ。しかし歴史的な経緯を考えれば、イスラエルのエルサレムへの国家建設を認めたのはイギリスであり、軍事支援を続けてきたのはアメリカである。イギリスやアメリカのムスリムに対する差別的な態度は世界情勢を常に危険に陥れてきた。だから一方的にハマスを悪者にするわけにもいかないはずだ。そしてさらに懸念されるのは、ウクライナ危機からはじまり武力衝突が連鎖したということだ。これが他への波及することもないわけでもあるまい。ロシアとムスリムが対アメリカということで手を組むことだってないわけではな...ガザ地区の武力衝突

  • 映画『福田村事件』を見ました。

    森達也が監督した、関東大震災の混乱の中で発生した福田村事件を描く『福田村事件』を見ました。福田村事件とは関東大震災の後、根拠のないうわさをもとに差別を増長させ、残虐な事件がおきてしまった事件です。昔の事件ではあるのですが、今の日本の状況そのものです。正しいことを正しいという勇気の必要性を強く感じる映画でした。関東大震災のあと、混乱の中で、「朝鮮人が略奪や放火をした」「朝鮮人が集団で襲ってくる」などのデマが飛び交いました。その中で讃岐の薬を売る行商団が朝鮮人だと疑われ、福田村自警団に取り囲まれてしまう。警察に確かめている間に一部の自警団員が行商団の1人を殺してしまう。それをきっかけに多くの行商団員が殺されてしまいます。自警団員に対して行商団員は日本人かもしれないから殺してはいけないと説得する人もいます。しか...映画『福田村事件』を見ました。

  • 井ノ原氏の発言も演出だったのでは?

    さすがにNGリストにはびっくりした。そして怒りに震えた。もはやこの事務所は解体のままでいい。橋下徹氏は記者会見のスムーズな進行のためには必要だとコメントをしていた。たしかに一般の会見ならばその意見にも頷くこともできる。しかし今回の会見は膿を出し切って再出発するための会見である。事務所がどれだけ反省しているか示すための会見なのだ。スムーズに進行する必要なんかない。むしろ悪い点を記者に指摘してもらったほうが、再出発にとってはよかったはずだ。それなのに取り巻きに守られているのが当たり前のような感覚が残っているから、こんなことになる。怒りに震えながら会見を振り返ると、井ノ原副社長が「全国の子どもも見ているんだから」と言ったコメントも演出上用意していたのではないかと思われてしまう。ジャニーズ事務所が当初コメントして...井ノ原氏の発言も演出だったのでは?

  • 「セクハラをしたことのない」と堂々と言える50台の男なんているはずがない

    ジャニーズ事務所の記者会見を見ていた。いろいろ言われているが一生懸命対応を考えているという姿には好感が持てた。もちろんこれで済む問題ではないが、とにかく前にすすむしかない。この問題が複雑なのは、ジャニー喜多川氏の性犯罪の問題と、ジャニーズ事務所の圧力を利用した経営の問題がごっちゃになってしまっているということである。この犯罪はあきらかにひどい。それと共にひどいのは、あきらかにジャニーズ事務所のタレントは優遇されすぎていたということだ。能力がとぼしいタレントまでテレビに出てはしゃぎまわっているのを不愉快に思っていた人間が数多くいたのである。それによってチャンスを失っていた優秀な若者が数多くいたはずである。これまでジャニーズ事務所の悪口を言うと自分が責められるので我慢していた人間が多かったのだ。だからここぞと...「セクハラをしたことのない」と堂々と言える50台の男なんているはずがない

  • 今期のドラマ なぜか心が軽くなる『ワカコ酒』

    10月になってしまったので、あわてて今期のドラマについて書き残したことをまとめて書きます。とくにどうということのない話ではありながら、毎回楽しみにしていたのが『ワカコ酒』です。今回も特にどうということのない話でしたが、見ていてほっとして和らいだ気分になれました。気になったのは、以前はワカコは付き合ってる人がいたはずだったのですが、最近はその話題がなくなってしまいました。そしてワカコの行きつけの逢楽の青柳君が逢楽を辞めて、兄と一緒に店をだしました。そして青柳君とワカコの関係がなんとなく近づくような展開にも感じられます。「思わせ」だけではあるのですが、こんな「思わせ」がこのドラマにちょうどいい。またワカコのお母さん役が初めて登場します。島崎和歌子さんが演じていました。このキャスティングも「ワカコ」の駄洒落なの...今期のドラマなぜか心が軽くなる『ワカコ酒』

  • 『ハヤブサ消防団』は今期一番のドラマだった。

    私にとって今期一番よかったドラマは『ハヤブサ消防団』だった。地方の過疎化やカルト集団を題材として、現代人の心の中の闇をあばいていく作品であった。とはいえ、難しい展開にはならずに、事件がつぎつぎと起こる中で次第に真相が見えてくるという構成になっていた。原作がしっかりとしているからであろう。しかもその原作を丁寧に描こうとしていた。役者もバラエティに富み、みんながそれぞれ自分の役柄を演じきっていた。中村倫也と川口春奈の主役のふたりはこまかな心の動きをしっかりと演じていた。麿赤兒や村岡希美の「怪優」が存在感を示し、ドラマにアクセントをつけていた。そして何よりも生瀬勝久、橋本じゅん、満島真之介、岡部たかし、梶原善の消防団員がよかった。今はもう無くなった、田舎のめんどくさい男の集まり。その雰囲気がよく出ていた。面倒だ...『ハヤブサ消防団』は今期一番のドラマだった。

  • 秋バテ

    今年の夏は暑い日がずっと続きうんざりした。しかし意外なことに夏の間肩こりに悩まされずに済んだ。集中力は持続して勉強ははかどった。夏が終わり、残暑もきびしかった。しかし残暑もようやくおわり、一気にすずしくなった。そっから体調が狂いはじめた。だるいし肩こりもひどくなった。この体調不良のことを「秋バテ」と呼ぶのだそうだ。季節の変わり目に体が対応しきれない状態で起こる体調不良のことである。急激な冷えが自律神経を狂わせてしまうのだ。私の場合、これが結構長く続く。病気というほどのことではない。しかし何もやる気にならない。肩こりはひどくなり、一日中眠い。つまり「だるい」のだ。これはけっこう厳しい。やらなければならないことがたくさんある。なんとかしなければと焦るだけである。秋バテ

  • 映画『ほつれる』を見ました

    映画『ほつれる』を見ました。現代人の息苦しさを描く映画でした。綿子は夫の文則との関係がすでに冷め切っています。夫には秘密で、妻のいる文筆業の木村と不倫関係となります。木村にも妻がいます。逢瀬の直後に木村が交通事故にあいます。綿子はすぐに119番通報をしますが、その電話を途中で切ってしまいます。その後の面倒をさけようと直感的に判断したのです。この心理が理解できません。しかし理解できないまでもこれが現実の対応なのかもしれないと感じてしまいます。現代人は表面的な安静のほうを優先してしまうのです。その後の展開でも登場人物は表面的な安静を求めるために感情的な言動を押さえます。表面的には夫婦関係は続いていますが、すでに壊れているのはあきらかです。それでもどうすることができないのです。綿子と文則は別れる決断をした瞬間に...映画『ほつれる』を見ました

  • 『VIVANT』はおもしろかったけど・・・

    今期のドラマ『VIVANT』はおもしろかったけど、後半はがっかりした。わかりにくくなったし、セリフによる説明で終わってしまったからである。モンゴルロケで撮影された前半は映像自体が魅力的だった。展開もダイナミックでこれからどうなるのかワクワクして見ていた。後半の乃木の父親の若いころを描く場面もよかった。全体的におもしろいドラマであったことは間違いない。ただしすべてがよかったわけではない。最後の方ははセリフでの説明で終わってしまうドラマになってしまった。しかもその説明も無理があるのではないかというものがかなりあったように感じられる。謎解きをドラマの主目的としてしまって、複雑にしすぎてしまったのだ。無理やり終わらせてしまった感がのこってしまった。医師役の二階堂ふみと乃木の関係や、カギと思われたジャミーンが中途半...『VIVANT』はおもしろかったけど・・・

  • 映画『青いカフタンの仕立て屋』を見ました。

    モロッコを舞台にした映画『青いカフタンの仕立て屋』を見ました。泣けました。ドレスの仕立て屋を営む夫婦の物語です。夫は真面目な仕立て屋で、妻はその夫を誇りに思って支えています。しかし妻は病気に侵され余命わずかとなってしまいます。実は夫は同性愛者であり、若い店員に恋をします。しかし妻への愛が消えたわけではありません。妻と店員への愛で心が揺れ動きます。妻は自分の死期を悟りながらも夫を愛し続けます。この三人の関係が静かに描写されます。次第にやせ衰えていく妻の姿は見るのが苦しい。そしてその妻に献身的に尽くす夫の姿も涙を誘います。夫婦は「愛」の中で最後の数日を生きるのです。涙なくしてみることはできませんでした。店員も二人に尽くします。そして夫婦のどちらもいたわるのです。とてもいい映画でした。ただし、最近の映画はなぜほ...映画『青いカフタンの仕立て屋』を見ました。

  • 『この素晴らしき世界』

    夏ドラマがおおむね終わった。今期のドラマはかなり楽しめた。いくつかの番組の感想を述べる。最初はフジテレビ系の『この素晴らしき世界』。鈴木京香が体調を崩し降板し、若村麻由美が代役になったことで話題になったドラマである。平凡な主婦が、大女優になりすまして社会的な大きな事件に巻き込まれるというドラマ。内容がシビアなわりにはコメディ的な要素も多く、肩の凝らないドラマである。このドラマがタイムリーだったのは、ジャニーズ事務所の問題を思わせたからである。業界側の権力、そして忖度がはびこる芸能界やテレビ局の姿が描かれる。さらにある意味衝撃的だったのは芸能事務所の社長を木村佳乃が演じていることである。もはやジャニーズ事務所問題を予測してこの時期作られたのではないかと思わせるほどのシンクロであった。偶然とは思われない。これ...『この素晴らしき世界』

  • スウィフト作『ガリバー旅行記』を読みました。

    スウィフト作『ガリバー旅行記』を読みました。大雑把に内容は知っていたのですが、実際に読んだのは初めてです。物語的なおもしろさよりも人間批判の色合いの強い作品であり、おもしろい発見がたくさんありました。第一話は「リリパット」。小人の国です。第二話は「ブロブディンナグ」。巨人の国です。この2話は物語的な要素も強く、楽しく読むことができます。二つ国は相対化されることによって、人間自身も相対化されます。第三話はラピュタなどの国々です。ラピュタは宮崎駿のアニメ映画にもなっている空中に浮かぶ島です。その外にもいろいろな国を訪れ、最後は日本にも立ち寄ります。日本に行った目的は、長崎からオランダ船に乗ってヨーロッパに戻ろうとしたからです。「踏み絵」だけはしたくないというガリバーの要求がおもしろい。とは言え日本の記述はごく...スウィフト作『ガリバー旅行記』を読みました。

  • 映画『クロース』を見ました。

    カンヌ映画祭でグランプリを受賞した映画『クロース』を見ました。説明的なセリフがほとんどなく、的確な描写で心を伝える、心にしみる映画でした。主人公はレオという少年です。レオは同じ年の少年レミと大の仲良しです。傍から見るといちゃついているように見えます。そのためからかわれます。あるいは恋愛感情があったのかもしれませんが、レオはそれが恋愛だとは思っていません。そのために強く否定します。ある日、レオがレミと寝ている時、レミはレオのふとんに潜り込みます。朝、そのことに気づいたレオは激しく怒り、レミを殴ります。以前は二人で同じベッドで寝ていたのにです。これにレミはショックを受けます。レミは恋愛感情があったのです。少年たちの心の動きが丁寧に描かれて、場面が心を伝えます。せつない少年時代の心が蘇っています。レオはレミを避...映画『クロース』を見ました。

  • 夏目漱石『坑夫』の読書メモ②

    夏目漱石の『坑夫』の読書メモの2回目。〔『虞美人草』との関わり〕漱石の直前の新聞小説が『虞美人草』だった。『虞美人草』の次に二葉亭四迷の『平凡』があり、その次に『坑夫』である。どういう点で関連性が見られるのか。『虞美人草』に小野という青年が出てくる。この小野は京都大学を優秀な成績で卒業して、今は博士論文を書こうとしている。学生時代の恩師の娘・千夜子を妻に取る口約束を交わしている。恩師と千夜子は困窮しており、彼らを援助する意味でも結婚するのが義理なのだ。ところが小野には他に惹かれる藤尾という女性がいる。その板挟みの中で小野は苦しむ。『坑夫』の主人公の青年も小野と同じような立場であった。青年はい家出した。その理由は許嫁がいながら、他の女を好きになってしまったからである。この二人を説明している箇所を引用する。澄...夏目漱石『坑夫』の読書メモ②

  • 夏目漱石作『坑夫』を再読しました。①

    『坑夫』は、夏目漱石の長編小説で、明治41年の元日から東京の『朝日新聞』に91回にわたって掲載された。『虞美人草』についで、漱石が職業作家として書いた2作目の作品。〔あらすじ〕恋愛関係のもつれから着の身着のままで家を飛び出した青年が行く当てもなくさまようっていると、ポン引きの長蔵と出会う。自暴自棄になっていた青年は誘われるまま鉱山で坑夫として働くことを承諾する。鉱山町の飯場に到着する。鉱山の飯場は異様な世界だった。そこでの生活に不安を覚えながら、翌日、「初さん」に案内をされ、坑内へ降りていく。「シキ」(=坑内)は命がけである。青年は「死」を決意する。しかしここで死ぬことは虚栄心が許さない。鉱山から出て死にたい。そう考える。「シキ」の中で道に迷っていると坑夫の「安さん」と出会う。「安さん」は東京に帰った方が...夏目漱石作『坑夫』を再読しました。①

  • ジャニーズ事務所の問題

    ジャニーズ事務所の記者会見が行われた。私はジャニーズ事務所のタレントへの関心はそれほど高くはないが、ジャニーズ事務所とテレビ局の癒着構造には関心をもっていた。テレビ局はジャニーズ事務所のタレントが優遇され、逆にジャニー事務所を辞めたタレントはテレビでは冷遇され、ほとんど姿を見なくなってしまう。その構造は許されるべきことではない。実際記者会見を見たわけではないので明確にはわからないが、記者会見ではその問題も話題になったようである。どのような話がでたのかははっきりとはわからない。しかしこの会見が、現在の癒着した権力構造を大きく変化させることを期待したい。1度癒着した権力構造ができてしまうと、それは他者の排除に用いられ、不正に利用される方向に進む。そして権力維持装置として動き出し、それを解体することは困難になる...ジャニーズ事務所の問題

  • 宗教離れ

    日本人は宗教離れがすすんでいるのは誰もが認めるであろう。日本人は仏教徒が多くいるが、とは言え本気で仏教を信仰しているとは思われれない。とは言え、それは昔からそういうわけだったわけではない。私よりも古い世代の人は墓参りはかかせないし、法事に関してもきちんとやっている。さらに古い世代ではもっと信仰心が強かったことを示す歴史的もある。宗教心の低下は現代的な現象なのではないかとも考えられる。最近のテレビ番組で(何のテレビだったかは忘れてしまった)、欧米でも宗教離れが進んでいるという話題があった。キリスト教文化圏でも宗教離れが進んでいるというのである。このことから、いわゆる「先進国」で宗教離れが進んでいると考えられる。その背景はどういうことか。私は「死」を間近に感じられない状況が宗教離れを生んでいるのではないかと考...宗教離れ

  • 映画『ミツバチのささやき』を見ました。

    映画『ミツバチのささやき』を見ました。この映画は1985年、私が東京で学生をしているころ、「シネヴィヴァン六本木」という映画館で見たと記憶しています。六本木のWAVEというレコード屋さんの地下にあったはずです。当時、話題になっていた映画です。私はこの映画を見て衝撃を受けました。セリフは少なく、淡々と描かれていく映画なのですが、それぞれのシーンが印象的でした。すごい映画に出会ったと感じました。ひとつひとつのシーンが印象的なのです。「フランケンシュタイン」の映画を見ている姉妹の表情。母親が駅に手紙を出しに行くシーン。線路に耳をあて、列車が近づいてくる音を聞く姉妹。死んだふりをする姉。脱走兵?に食事を与えるアナ。脱走兵を殺す機関銃の音。父親から逃げ出すアナ。40年ぶりぐらいに見たことになりますが、様々なシーンが...映画『ミツバチのささやき』を見ました。

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