New York さん プロフィール

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New Yorkさん: 寝る前の妄想文章化プロジェクト
ハンドル名New York さん
ブログタイトル寝る前の妄想文章化プロジェクト
ブログURLhttp://sunrise2.seesaa.net/
サイト紹介文昔から寝る前に妄想するのが趣味でした。蓄積された妄想をまとめてストーリーにします。
自由文公開中の小説あらすじ
軌遊という国の少女兵、境は軍の上層部から出張命令を出された。出張先は文明が未発達の村で、住人たちはその村の伝説に基づいた生活をしていた。初め、境は伝説を迷信と考えていたが、次第に伝説と関連する不思議な現象に巻き込まれていき…
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供37回 / 250日(平均1.0回/週) - 参加 2016/01/16 21:08

New York さんのブログ記事

  • 記憶の保管庫 三
  • 契は受け入れて一か月ほどで、境を訓練生として修練させるようになった。訓練生は通常、日替わりで来る志願兵の先輩から、学問、技術、道徳などを学ぶ。境も他の訓練生と同じように様々なことを習ったが、まともに教育を受けてこなかったせいか、入ったばかりの頃は学力、体力共に同年代の子供より劣っていた。しかし、彼女は見る見るうちにそれらを身につけ、わずか半年で一般的な訓練生の能力を上回った。わたしは感心して [続きを読む]
  • 記憶の保管庫 二
  •  翌日、市内の見回りに行くと契がいた。彼女は今日この地区の当番ではない。声をかけようとしたが、その前に彼女は狭い路地裏へ入ってしまった。あとを追ってみると、そこには契と昨日見かけた子供の姿があった。契はわたしに気が付くと振り返って笑いかけた。わたしはその時仕事はどうしたのかと聞いた気がする。彼女はそんな質問には答えずに、この子をうちで預かろうと言いだした。志願兵の検定資格は十二歳からだが、その [続きを読む]
  • 記憶の保管庫 一
  • 「境の容体はどうじゃ」「問題ありません。見舞いに来た人たちとも普通に話しています」「そうか。…報告ありがとう。仕事に戻ってくらっせ」「はい」 わたしは休憩時間を利用して手記に目を通していた。団長は今幹部会議に出席していて、部屋には自分しかいない。その会議は通常のものとは違い、内容が公にされない特別な会議だった。わたしはいつもそれを不満に思っていた。ただえさえ知らないことが多い団長の姿が、幹部た [続きを読む]
  • 木立の娘編について
  • 更新遅れてすみません。木立の娘編はまだ続きますが準備中です。今までは境の目線で話が進んできましたが、次からは補助士の烽(トブヒ)の目線で境とその周辺の人物の過去編が始まります。 [続きを読む]
  • 終章
  •  軌遊では、志願兵の一つの団が任務を一時中断していた。この日、出張先で怪我をして、急遽帰還命令を出された兵士が戻って来ることになっていた。彼女らは仲間を迎えるために仕事の手を止めていた。 岬村からの羽根車が到着すると、怪我をしていた方の兵士はすぐに病院へ連れて行かれた。処置が終わった後、彼女が属する団の団長が病院へ飛び込んできた。団長は子供相手にするように負傷兵を抱きしめた。彼女はその感触 [続きを読む]
  • 帰還 二
  •  岬村に翳の羽根車が到着した日は、予定日よりも一日遅かった。着陸するや否や、村人たちは羽根車に近寄り次々と翳に声をかけた。彼らは帰る前に食事でもして少しゆっくりしていかないかと言ったが、翳は丁寧に断った。「二週間ちょっとだったけどありがとう。来たくなったらいつでも来て良いから。あっちに行っても仕事頑張って」 印は照れ臭そうにわたしと握手した。「ちょっと居づらかっただろ、俺はここに居場所があ [続きを読む]
  • 帰還 一
  •  要と暴風の脅威を克服した村では、問題を解決したその日から本格的な復興作業に移った。木立の娘は村の歴史を伝えた後、村人たちによって森へ丁重に見送られた。復興作業は順調に進み、村の景観はたちまち元通りになっていった。自分も怪我の状態に気を配りながらできる範囲で手伝った。翳が迎えに来る予定日の前日、作業の合間を縫って村人たちが送別会を開いてくれた。彼らは大したことができなくて申し訳ないと話していた [続きを読む]
  • 解除 三
  •  わたしたちは彼らの肩を借りて村人たちと合流した。合流後手を離してもらったが、自分はもうふらふらで、何とか姿勢を保っているような状態だった。一方、木立の娘は早くも体力が戻ったのか、背筋を真っ直ぐに伸ばして立っていた。彼女は村人たちに意思を送った。『要の解放と暴風の抑止のことはもう安心して良い。…岬村に帰ろう、わたしも帰りたい』 村人たちはその言葉に返事をしなかった。印を見ると、彼女は木立の [続きを読む]
  • 解除 二
  •  光の根元を辿ると森と村の境界線に行き着いた。木立の娘はそこにいた。地面に真っ白な光が湧き出す空洞があり、その中には透明な石がいくつも転がっていた。彼女は空洞の脇で光に手を伸ばしていた。光にかざされた腕には無数の切り傷がついていた。意識が途切れかけているのか、彼女は目を閉じたまま動かなかった。「木立の娘ェ、聞こえるかァ!」  空洞から光とともに暴風が吹き出し、彼女の長い茶髪は光と風にも [続きを読む]
  • 解除 一
  •  目を開けると自分は会館の隅に寝かされていた。側には久がいた。朱色の柔らかい光に包まれて、一瞬夢の延長上にいるのではないかと思った。「境、起きたの」  爪に血の付いた右手が頬から落ちていた。  会館の中が一層騒がしくなっている。寝ている間に、会議が白熱し始めたようだ。体を起こそうとすると、久が手を添えて補助してくれた。「…わたし、どんぐれェ寝てたんじゃ」「ちょっとだけだよ。もう少し寝てて [続きを読む]
  • キとイシ 二
  •  滝から村までの道のりは知っている。わたしは八日前の書き付けを頼りに村まで戻った。森へ続く階段の下に、畑を耕している女性が見えた。急いで階段を駆け下りた。「あれ、研修の子じゃないの」 村へ来ても空の色は変わっていなかった。普段ならこの時間帯になればみな畑に出ているが、今朝は人が疎らにしかいない。「村の人たちはどこ行ったんじゃ」 わたしは息を整えながら彼女に聞いた。「ほとんどが会館に行っ [続きを読む]
  • キとイシ 一
  •  呇から方位磁針を借りてくるべきだった。わたしは目測で星の位置を調べながら、なるべく知っている道を通るように注意して進んだ。湖を出て少しのところはまだ何とかなったものの、だんだん見覚えのない場所のほうが増えてくるようになった。しかし、わたしは何故か進むべき道を迷わなかった。男の言葉を理解してから傷が疼きだしていた。何かに導かれているような気がした。 長時間歩いて水の音が聞こえてきた。幸いに [続きを読む]
  • 封印 三
  • 「え…?」 わたしは男の話を思い出した。彼の話が本当なら、木立の娘は村を救うためにこれから自分の許容量を超えた力の放出をするつもりに違いない。このままだと彼女の身が危険だ。わたしは急いで後を追った。「待ってくらっせ。汝に協力させてくろ」『やめて。他の人を傷つけたくない。そもそもわたしを守ったって何の意味もないんだから』 木立の娘はわたしに向き合った。空は少し明るくなっていた。『封印が解けて [続きを読む]
  • 封印 二
  • 「平気か、境」「呇…何でいるんじゃ」「久から話を聞いて、古い文献を頼りにここまで来たんだ。印が戻って来ないんでしょう?」  男は刀から外れようとしたが、すかさず呇が抑えつけた。「久も来てんのか?」「久には村に残ってもらったよ。僕の方が森に詳しい。それに、あいにく僕は祖母みたいに信心深くねェんだ」「…あんだけ史料が近くにあったら多少は知ってて当然でしょ、この森の秘密を。つい最近送られてきた史料に [続きを読む]
  • 封印 一
  •  男が大勢を傷つけようとしているにもかかわらず、わたしは斬りかかることを躊躇していた。命は奪わずとも訓練を活かして戦意を削げば良かったのだが、自分には相手を傷つける勇気すらなかった。一時の感情に流されるなと翳に偉そうに言っておきながら、わたしもいざとなると安易な情に流されていた。わたしは彼の肩を斬った後にのしかかってくる罪悪感に耐えられる自信がなかった。もし以前戦場へ放り込まれるようなことがあ [続きを読む]
  • 対峙 三
  •  ただ木立の娘を守ることだけのために、今までやってきたような惨いことができるかと彼は意思を送った。どういうわけか、その所業は村では木立の娘の仕業として伝えられているらしいが。彼は森に侵入してきた人間を要に襲わせてきた。入るなと言われている森に入るということは、良からぬことを考えているに決まっているからだ。森の奥地にまで侵入してくるような猛者は自分で斬り捨てた。彼は夜の間は鳥にも人にもなれる。鳥 [続きを読む]
  • 対峙 二
  •  男はこの森で幾星霜を過ごしてきたため、当然のことながら木立の娘との接触があった。何度か会ううちに警戒心を解いたのか、彼女は以前一度だけ自らの過去について語ったことがあったという。彼女が村で暮らしていた時代は、今よりも要の数が多かった。要は村に頻繁に出没し、二軒先の人が襲われかけただの、玄関の戸が壊されただの、物騒な話を毎晩のように聞いた。彼女の家でも夜になると鍵をかけ、農耕具は全て中に入れた [続きを読む]
  • 対峙 一
  •  朱色の砂浜と、くるぶしほどの浅瀬がどこまでも続いている。まるで砂漠の上に水を流したようだ。風が吹くと、陽の光がさざ波に乱反射してきらきら光る。あまりにも広大で対岸は目視できない。夜になったら空との切れ目が分からなくなりそうだった。「ここは…」「印」「湖じゃ、多分ここなんじゃ……わたしたちが探した場所は」  印はすぐに手を水に沈めた。とりあえずこれで要の発現は抑えられる。しかしわたしはこの [続きを読む]
  • 正体 三
  • 「…あ………」 今まで接近し続けていた要は突然後退りを始めた。彼女が長い杖を振りながら向かうと、要は怯えるように森の奥へと退散していった。あれだけいた要は全てその場から姿を消した。印は彼女を見て、すとんと地面に膝をついた。「木立の娘…」 なめらかな茶髪と長い杖、そして何より直接体に伝わってくる声で話す彼女はまぎれもなく木立の娘だった。わたしは木立の娘にここで再会できるとは思わなかった。彼女 [続きを読む]
  • 正体 二
  •  わたしは明かりと板を持って木立の間を駆け抜けた。湿り気のある風が火照った顔を撫でていく。印の名前を呼ぶ。声は返らない。何回叫んでも同じだった。わたしはこの感覚を前にも幾度か経験したことがあった気がした。それはどんなに働きかけても、少しの反応も得られない感覚だった。わたしは何か嫌なことを思い出しそうになって、突然息苦しさを感じた。 しかし、印はそれから意外と早く見つかった。彼女は入り口から [続きを読む]
  • 正体 一
  •  夜、わたしは何かがはじけるような音を聞いて外に出た。闇の中で歪な光が揺れている。久が小屋の裏に積まれた竹を焚き木の中に放り込んでいた。彼から寝ていないと体に障ると言われたが、一度起きたら目が冴えてしまって寝られそうになかった。わたしは焚き木を挟んだ向かい側に腰かけた。自分の腕で火影が揺れた。竹はぱちぱち音を立てながら火の中へ消えていった。舞い上がる細かい火の粉は赤く輝きながら空へ昇っていく。 [続きを読む]
  • 意識 三
  •  わたしは村の異変を確信した。このまま放っておいたら、岬村は本当に滅びるかもしれない。しかしその事実を知っている者はわたし以外にいなかった。「板は?」「わたしの懐に板が入ってたはずじゃ」「あの妙な透ける石のことか?それなら、こっちの戸棚に置いてあるけど…」「森へ行かねぇと…」 立ち上がろうとすると、久はわたしの肩を押さえた。「やめろ境」「…団長さんの言った通りだな」「え?」「境を預かる時団 [続きを読む]
  • 意識 二
  • 「木立の娘ェ、どこにいるんじゃァ」「板の色が変わったんじゃ」 彼女は既に森の前にはいなかった。滝の方も回ったが、そこにもいなかった。わたしは走っているうちに、自分が今どこにいるのか分からなくなった。途方に暮れて木々の合間の空を見上げた。昨日よりも森は暗かった。空の一点だけがぼんやり白く光っている。考えてみると、今は曇っていて月も星も出ていない。光源といえば、雲に隠れたわずかな月明かりだけだ。木 [続きを読む]
  • 意識 一
  • 部屋の掃除をしている時、外にいた印が突然小屋に駆け込んできた。たちまち雨粒が激しく屋根を叩く音が聞こえた。夕立ちが降ってきたらしい。 それはすぐに止んだが、次の日も午後から小降りの雨が降った。この季節岬村は天候が変わりやすいようだ。畑には出られないから、わたしたちは羽根車に積まれた旅の荷物を整理していた。印は機嫌を直したと見えて、今では久とも普通に話している。 わたしはある荷物を降ろす時、 [続きを読む]
  • 木立の娘 二
  • 翌日、わたしは陶器がぶつかりあう音で目を覚ました。勝手で久が皿洗いをしているらしい。「今日は随分早ェな。昨日と今日どっちが普段の起床時刻じゃ」「境、起きたのか」「今日だけだよ。朝に印が帰ってくるんだ」 わたしは皿洗いを代わって久に印を迎えてもらった。しかし、それが終わっても印が帰ってくる気配がない。「遅いな」「いつもはもっと早ェのか」「ああ」 合流して二人で時々空を見上げたが、それらしき音 [続きを読む]