lemar さん プロフィール

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lemarさん: 信義 the faith as fan fiction
ハンドル名lemar さん
ブログタイトル信義 the faith as fan fiction
ブログURLhttp://ameblo.jp/lemar/
サイト紹介文信義の二次小説です。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供183回 / 365日(平均3.5回/週) - 参加 2016/02/02 19:11

lemar さんのブログ記事

  • 霾27
  • 「ここは俺が。だからお前は逃げろ。母さんを大事にてくれ。」 「何をわけのわからないことをっ。」 寂しく死んでいった母親の様子を思い出しカッとなった大二郎は新たに現れた男の背に倭刀を振り上げたがその背中は何故か胸を苦しくさせた。 倭寇が振り上げた倭刀を今度はタルの背中に向けて振り下ろそうとしていた。躊躇いがちにしかし、その切先はタルを狙っている。ヨンは、わけがわからないまま、またタ [続きを読む]
  • 霾26
  • その瞳は普段は黒く見えたが、時々、角度によって不思議な色、榛の実に似た色に見える虹彩を持っていた。特に今のように月の光を受けるとその瞳は榛色に悲しそうに揺れた。倭国の南の方にはそんな瞳の人が多くいる村があるそうだ。 跳びあがったヨンは、倭寇目がけて落ちながら振り上げた打刀に殺気を込めた。その男が、次に跳びあがる瞬間の「間」を計りながら。 ― きっとあの男は俺が降りる瞬間を狙ってくるはずだ。 [続きを読む]
  • 霾25
  • 正眼に構えたヨンの打刀には螺旋を書くように、雷功の生み出した光が纏わりついてヨンの顔に青い陰影をつけていた。 対峙する若い男に、いつでも斬りかかりそうなその切先はしかし、凍り付いたように動けずに長を押さえつけたその男を窺う。 若い倭寇に捕らえられた長の首から血が一本の筋になってゆっくりと流れ落ちるその間。それは、随分と長い時間に感じられたが月はずっとその位置を動いていなかった。 ― 師 [続きを読む]
  • 霾24
  • 部隊長イムファンがタルと共に洞窟を抜けると、既に船着き場の方角から地響きのような怒声が遠く聞こえてきていた。いくつかの見知った気も微かに感じられる。 ― あれは…チフとメヒか「始まった。急ぐぞ。」 そう言って、タルと共に船着き場に向かって走りだすと、多くの気が向かう方向とは違う、「センさん」がいるはずの崖に向かう方角で青い閃光が見えた。 ― ヨン!? 立ち止まって心を澄ますと、その方 [続きを読む]
  • 霾23
  • 今腕に抱える老いた漁師。そして、眼前の三人の漁師と青い光を放つコグリョの鬼。 大二郎はたった一人で五人と対峙しながらも恐ろしいという気が全くしなかった。己の力に対する自負もあったが、そのためだけではない。 本当に恐ろしいのと思ったのは、たった一人残った肉親だった母が死んだ時であり兄と慕っていた利助の死んだ時だった。 取り残される恐ろしさに比べれば自分の死など瑣末な事に思えた。 ― [続きを読む]
  • 月夜梅影18
  • 新妃として李宰相の御息女の推戴が決まった日、帰宅した父ハン大監が教えてくれた。 「実は此度の新妃候補にお前の名も挙がっておったのだ。この国に奉職する限り、本来なら喜ぶべきことだが儂にはできなんだ。家門の誉れとなるかもしれぬがあれ程愛でられておる王妃の次妃となれば、お前の女としての幸福は諦めねばならぬだろう。それが不憫でお断りした。お前にそんな生き方をさせられぬゆえ。李殿は儂などより忠心の深いお [続きを読む]
  • 月夜梅影17
  • 「その梅の香り、それは、其方の香りか?」 顔を伏せながら肯定するジョンヒに恵妃は、更に鋭い語調を向けた。 「其方、武閣氏か。其方は、王のお側にもお仕えするのか?」 余りに強い詰問にジョンヒが、答えあぐねていると気付いたチェ尚宮が恵妃とジョンヒの間に割り込むように立って答えた。 「この者は見習いの武閣氏で王妃のお傍に仕えております。」 「昨夜、王のお召し物からその香りがしていた。 [続きを読む]
  • 月夜梅影16
  • 眼前の年老いた背中は、余りにも弱々しく龍袍を纏っていなければ自ら跪いて助け起こしただろう。 ― あの時も、この背中はこんな風に  妻の目に移ったのだろうか。 王は、そう思ったが、直ぐにそれは違う気がした。 ― きっと、我が妻の目には  もっと異なって見えていたはずだ。 まだ肌寒かった頃、この男が、重臣たちを引き連れ大挙して坤成殿を訪れたという話を聞いた時、余りの腹立ちに、我を失いそう [続きを読む]
  • 月夜梅影15
  • 「殿下、李宰相がお待ちでございます。」 アン内官が声を潜めた。 今上がまだ大君と呼ばれた頃より仕えたアン内官はこの後、きっとその竜顔が曇るだろうと思うと声を潜めずにはおられなかった。 果たして、アン内官の予想通り眉を顰めかけた今上は、慣れ親しんだ内官の心配げな面持ちに気付くと安心させるように頷いて見せた。 用件はわかっていた。 チェ尚宮によると王妃の身辺の変化は新妃の入宮の暫く [続きを読む]
  • 月夜梅影14
  • 今思い返せば、その始まりは些細な事だった。 「痛いっ」 ある日、お召し替えをされていた王妃が小さく叫ばれた。 王妃様のお召し物に折れた針先が残っていたようだった。白い首筋には、その針先と同じく小さな赤い血の玉が出来ていた。 王妃は、憤慨する古参の女官たちを諫めておっしゃった。 「これはここだけでお終いにしなさい。事を荒立てれば、咎めを受ける者が出る。」 その出来事が忘れ去ら [続きを読む]
  • 月夜梅影13
  • 桜の香雪が降りしきる中王と王妃が散策を楽しまれていたのはつい昨日の事のようだったが、花の散ってしまった桜は、緑の葉が生い茂りもうそれとはわからぬただの樹になってしまった。 恵妃の入宮は、春が濃くなってきた頃になって漸く決まった。 元皇帝の聖旨がなかなか下されなかったからだがそれでも元の冊封に拘ったのは、重臣達だった。 新妃の入宮には、一点の曇りも許されない。もし何かあれば、新妃がお産み [続きを読む]
  • 月夜梅影12
  • 「トクマン、今上は?」 「すみません、また康安殿に。」 「お前、あれ程言っておいたのに、お止めしなかったのか。」 「俺のいう事なんて、お聞きくださいませんよ…。」 「それでも言うのが俺たちのお役目なんだ。」 夜半、兵舎に戻って来たトクマンはチュンソクの振り上げた手に肩をすくめて逃げようとした。 「チュンソクもういい、俺が行く。」 ヨンは見ていた書付から顔を上げると立ち上 [続きを読む]
  • 月夜梅影11
  • 軋んだ音を立てて戸が開くと差した日の光の作る影が懐かしい人に見えた。 典医寺のウンスの部屋は迂達赤の兵舎に移る前に使っていたその時のままにしてあった。 王が、『あの者が戻ると言うなら医仙は戻って来る。』そう言って誰にも使わせなかったのだ。 ヨンは、王によって護られたこの部屋に時折、訪れてはこうして戸を開けて風を通していたが埃は主不在のまま過ぎた時の分積もっていく。 ― このようなこ [続きを読む]
  • 月夜梅影10
  • 飛び立ってしまった鳥の羽音が空気に吸い込まれるように消えると触れられそうなほど張り詰めた静寂が訪れた。 しかし、跪いたまま頭を下げて、そのまま固まってしまったような重臣たちの内李斉賢が顔を上げ、その静寂は終わった。 その李斉賢は再び口を開こうとしたが、その時、白く華奢な王妃の手が上がり李斉賢を制された。 「其方らの忠心、よくわかりました。」 それでも李斉賢は、尚も何か言おうとしたよ [続きを読む]
  • 月夜梅影9
  • 「臣、李斉賢、王妃にご挨拶申し上げます。」 「…よくいらっしゃいました。今日はまた如何されましたか。」 ジョンヒは、いつもの王妃であることがかえって辛かった。コッソリとチェ尚宮を見たがチェ尚宮は、目を伏すようにしておりその表情が伺えなかった。 「先般の朝議で、かねてより奏上の内命婦選定についての宣旨がございました。これもひとえに王妃様がお口添え下さいましたお蔭と臣一同、心より感謝致して [続きを読む]
  • 月夜梅影8
  • もう随分と春めいた日だった。 坤成殿の開け放した窓からは、丁度交代の刻限となった迂達赤が引き継ぎをする声が聞こえた。迂達赤の濃紺に麒麟の兵装はジョンヒの胸にいつも切ない痛みを与える。 王妃の傍で控えるようになって、ジョンヒは、時折王と共に坤成殿に訪れるヨンと何度かすれ違ったがヨンが、ジョンヒをそれとわかっている風には感じられなかった。目が合うと互いに会釈をするが、迂達赤隊長のそれは、王妃付 [続きを読む]
  • VIERUNDVIERZIG44
  • 自分の視線を避けるように背を向けたウンスに抱く思いはこれまでには感じたこともないほどの渇望だった。 人は、自分と相違点の多い遺伝子を持つ異性のフェロモンに対してより強く欲望を感じるらしい。 恋が欲望の詩的表現だとして、そうならば、人は生まれ落ちた瞬間、もう既に誰に恋するか決まっていることになる。 本来の恋が、会った瞬間にもう始まっているなら、永く時間を掛けて育む恋など、甚だ疑わしい。&n [続きを読む]
  • DREIUNDVIERZIG43
  • 早朝、東京の警察でチェ・ヨン達を出迎えたのは、濃紺のスーツを着た、警官というより官僚のような男だった。 その男は、丁寧な発音の英語で簡単に挨拶をすますと二人をエレベーターまで導いた。 しかし、その男はエレベーターに乗ってもいつまでも本題に入らず東京での宿や飛行機の乗り心地などといったたわいのない話をだらだらと続けた。 何度かチェ・ヨンが当該の被疑者に関する捜査状況について質問しても&nbs [続きを読む]
  • ZWEIUNDVIERZIG42
  • 青い空は薄く雲を引いていたが穏やかな春の海は、太陽の欠片を散りばめてうねりながら船を運んでいった。 イ医師は、正体のわからない焦燥感に追い詰められるような気分で船に乗っていた。そして、どうしてもそちらに向かいがちな視線を抗うように、もう随分と離れてしまった港に向けていた。 担当のレジデントを「勉強になるから。」と連れてきたのは自分の気持ちが前のめりな事がわかったからだ。 ― あの男はい [続きを読む]
  • 一花
  • その花を見つけたのは偶然だった。終わってしまった季節を惜しむように上を向いて歩いていて転びそうになって手をついた。 アスファルトを歩き慣れた足はここではよく転びそうになる。 ― この子に手をつかなくて   本当に良かった。 けなげに咲いた小さな花が笑うように風に揺れた。 この木の下では皆、上を向いて歩いている。遅れて咲いたその花はきっと、殆どの人の目に触れずにそっと散っ [続きを読む]
  • 空華4
  • 『ただいま。』 あの人が還って来た気配で振り返ったがそこにあの人はいなかった。 庭から吹き込んだ桜の花びらの舞い込んだ座敷には私以外誰もいない。 空耳だった。 桜東風が薄桃の花びらを数枚、座敷に散らせていた。その落ちる音だったのだろうか。 あの迂達赤が来なくなってもう随分と経つ。出会ったのは桜の頃が初めてだった事を思い出した。確かその時、肩に桜の花びらをつけていた。 『また [続きを読む]
  • 空華3
  • 「康殿、遅くなりましたが、この度のトルベの事、私の不徳の致すところ…。」 咸鏡道の保勝軍を率いる護軍は、俯くヨンを引き起こす為に偉丈夫なその体を折るようにした。 「崔殿、何も言わずともよろしい。先般、今上よりも倅に対するお褒めの言葉と私のような愚父にまで過分なお言葉を頂いた。それ故、もうそのように…。」 トルベの父は、自分よりはるかに年若い迂達赤隊長の苦し気な表情から視線を外すと丁度、 [続きを読む]
  • 空華2
  • その刀捌きを初めて目にしたのは妓楼で起こった禁軍とのいざこざの時だった。 剣を抜くこともなくその場を収めた新隊長は最後まで息一つ乱さなかった。眉唾かと思っていた噂だったが、その噂にたがわぬ腕の持ち主であった。 トルベは、トクマンを引き摺るようにして、妓楼を離れながらとうとう姿を見せる事の無かったその主同様、尾鰭の付いた噂を持つ「鬼」と名付けられた剣の切先の描いた刀線を想像し、密かに鳥 [続きを読む]
  • 空華1
  • 桜ノ樹ノ下ニハ屍体ガ埋マッテイル 雪のように降りしきる桜の花びらの中にいると「母上」のその話があながち嘘ではないように感じる。 満開の桜がその豪華な天蓋を維持するには一体どれ程の力が必要なのだろうか。 今いる場所の足元でもこの見事な飛花の為に、誰かがその身を捧げているのだろうか。 桜の花びらが雪のように降りしきる季節、母さんが逝った。花が風に吹かれて散っていくような最期だった。父上 [続きを読む]
  • EINUNDVIERZIG41
  • 「ウンジョン、ウンジョン、起きて。」 夕方また一人で出て行った王譓は日が変わって、漸く、帰ってきたようだった。ウンジョンは王譓に揺り動かされて膜を剥ぐように深い眠りの中から目を覚ました。 王譓は慌てた様子でコートも脱がずにウンジョンを覗きこんでいる。 「…ケイン?」 「ごめん、また行かなきゃ。」 ウンジョンは、頷くとこれまで何度もしてきたように、手早く着替えると、殆ど荷解きのさ [続きを読む]