エミール・ガボリオ ライブラリ さん プロフィール

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エミール・ガボリオ ライブラリさん: エミール・ガボリオ ライブラリ
ハンドル名エミール・ガボリオ ライブラリ さん
ブログタイトルエミール・ガボリオ ライブラリ
ブログURLhttp://blog.goo.ne.jp/puereternus2
サイト紹介文19世紀フランスの探偵小説作家ガボリオの未邦訳作品を翻訳しています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供323回 / 365日(平均6.2回/週) - 参加 2016/02/12 18:34

エミール・ガボリオ ライブラリ さんのブログ記事

  • 第二部  第一章 17
  • 「ええ、昼間に何時間か」「フォヴェル氏は何をしていた?」「一人で家に残っていました。私は御婦人方のお供をしました」「間違いない!」ヴェルデュレー氏は叫んだ。彼は家探しをして見つけたに違いない。君の手紙を立証する手がかりを! ああ、プロスペル、君は困った人だ! 君の匿名の手紙は我々に毒をもたらしてしまった」ヴェルデュレー氏のこの小言で、突然マダム・ジプシーの頭に何かが閃いたようだった。「ああ分かったわ [続きを読む]
  • 第二部  第一章 16
  • 「何ですって!」彼は叫んだ。「あの罪人のクラムラン侯爵、卑劣な泥棒で人殺しのあの男がフォヴェル家に快く迎えられて、マドレーヌに言い寄っているとは! あなたは僕に何と言いましたか? 何という甘い希望を僕に吹き込んで良い気持ちにさせたことか。うまいこと言って僕を騙すためだったのですか?……」威厳ある身振りで、ヴェルデュレー氏は言い募るプロスペルを黙らせた。「やめなさい」厳しい口調で彼は言った。「いい加減 [続きを読む]
  • 第二部  第一章 15
  • 「ああ!」ヴェルデュレー氏は呟いた。「我々が差し向けた男に気づきましたね」事実、クラムランの不安は明白だった。橋を渡ろうとするかのように数歩歩きだしたが、突然何かを思いついたように回れ右をし、サン・ジャック通りの方向に駈け出した。「よし、上手く行った!」ヴェルデュレー氏は嬉しそうに叫んだ。しかし、それと同時にドアの音がしたので、彼とプロスペルは振り返った。マダム・ニーナ・ジプシー、別名パルミール・ [続きを読む]
  • 第二部  第一章 14
  • 「了解!」ファンフェルローは目を細めて答えた。「牽制してやります」「そうだ。つまりユシェット通り経由で出て行き、サンミシェル橋まで行く。そこで土手を降り、河岸の階段の一つの上に立つ。十分人目に立つようにだ。クラムランがどこに居ようと、君の姿が目に入るように。自分が見張っている間、自分自身も見張られていると気づかせるんだ。もし彼が気づかなければ、彼の注意を惹きつけるようにするんだ。君ならうまくやれる [続きを読む]
  • 第二部  第一章 13
  • 「クラムランは昨日の午後、外出していたときがあったぞ」「途中で手紙を書いてはいません。彼を尾行した男が保証してくれました」「よし、それなら!」とヴェルデュレー氏は叫んだ。「前進あるのみだ! さぁ攻撃だ。急げ、十五分で別の顔に作り替えて来い。あっちの顔だよ、分かるな。私はここであの悪党を見張っている」何の躊躇いもなく、一言も発さず、シルフ(ケルト/ゲルマン神話の空気の精)のように軽やかに、ジョゼフ・ [続きを読む]
  • 第二部  第一章 12
  • 「しかし、私は奴に見られないように出て行くことが出来ますよ、ボス」「ああ、知っている。グラン・ダルシャンジュ・ホテルとワイン商の中庭を隔てている低い塀を乗り越えていくんだろ。それから製紙業者の地下室を通ってユシェット通りを走って行く」人の好いジョゼフは、どこからともなく突然バケツ一杯の冷水を浴びせかけられた者のような、ひどく滑稽な身振りをした。「そ、それですよ」彼は口ごもりながら言った。「ボスはそ [続きを読む]
  • 第二部  第一章 11
  • 彼は言葉を止め、顔を天井に向け、まだ何か言うべきことが残っているのではないかと思案していた。が、何もなかった。「以上です!」彼は叫んだ。「今度パトリジェン判事に会いに行ったら、満足そうに両手を擦り合わせてくれるんじゃないかと思いますよ。書類番号113号の事件資料がこんなに膨らむだろうとは予想していなかったでしょうからね」長い沈黙が続いた。ジョゼフ・デュボアが推測したとおり、決定的な瞬間がやって来て [続きを読む]
  • 第二部  第一章 10
  • 「やっこさんはそう信じ込んでいるんですな。それと同時に紙の上に何か黄色い染みがあるのを私に見せました。『匂いを嗅いでみろ! ほれ、匂いがするだろ。その、え〜、何とかいう……』やつは写真家が使う薬品の名前(感光性物質であるハロゲン化銀の臭化銀のことか)を言ったんですよ」「分かった、もういいから」ヴェルデュレー氏は遮った。「それから?」「その後は大立ち回りですよ。それももの凄いやつで。彼はついに私の襟 [続きを読む]
  • 第二部 第一章 9
  • 「そんなことがあるかい!」ヴェルデュレーが叫んだ。「誰だってちょっとしたヘマはやるだろう」これらのやり取りは大っぴらになされたので、プロスペルに多くの考えるヒントを与えた。また彼は一心に耳を澄まして聞くうち、ヴェルデュレー氏の無造作な優位性と下男の心からの敬意を感じ取った。「それがちっともヘマをやらかさないんでさ」ジョゼフは答えた。「あいつらの用心深さは、ボスもちっとはご存じでしょうが、相当前から [続きを読む]
  • 第二部  第一章 8
  • 五分後には彼は寝入っていた。プロスペルは肘掛け椅子の上に身体を伸ばし、今まで以上に不思議な気持ちで、自分を救ってくれたこの男が一体何者なのかと考えた。九時になるかならないかという頃、指先で軽く三度部屋のドアをノックする音が聞こえた。その音はごく微かなものだったが、ヴェルデュレー氏の目を覚まさせるには十分で、彼はベッドの足元に飛び降りると尋ねた。「どなた?」しかし肘掛け椅子の上ではまどろむことの出来 [続きを読む]
  • 第二部  第一章 7
  • プロスペルはもう聞いていなかった。ヴェルデュレー氏が約束してくれたので、彼には自信が出てきた。真犯人たちが司法の手に引き渡される姿がもう目に浮かんでいた。そして重罪院で彼の無実が高らかに宣言されるその場面を思い浮かべ、もう既にうっとりしていた。彼の不名誉は世間に知れ渡ったが、こうなれば彼の名誉回復は華々しくなされるであろう。そして更に、彼はマドレーヌを取り戻すことが出来る。というのは、今となっては [続きを読む]
  • 第二部  第一章 6
  • 「それでは、事態はあるいは修復可能かもしれない」「えっ! そうお感じになりますか?」「私の考えでは、気性の激しい人間は自分でもそれを心得ていて、最初に頭に浮かんだ行動は取らないものです。そこに、私たちが助かる可能性がまだあります。もし、あなたからの爆弾書簡を受け取って自分を抑えられなければ、彼はまっすぐ妻のところへ走って行き『お前のダイヤモンドはどこだ?』と叫ぶでしょう。そうなったら最後、我々の計 [続きを読む]
  • 第二部  第一章 5
  • 「私を信頼してすべてを任せる、という取り決めになってはいませんでしたか?」「あなたはいらっしゃらないし、僕はこの結婚の告知に気が動転してしまったんです。あなたは遠く離れたところにいる。思いがけないことが起きると人は平気でいられないものです……」「思いがけないことは愚か者にしか起きないのだ!」有無を言わさぬ口調でヴェルデュレー氏は断言した。匿名の手紙を出すなどと! それがどれだけ私を危険に曝すか、あ [続きを読む]
  • 第二部  第一章 4
  • 「でも、あのやり取り」プロスペルは尋ねた。「あの恐ろしく正確なやり取りは……」「あれは私が勝手に作り上げたものだと思っていますね? いや、そうじゃありません。私があちらで仕事をしている間、私の部下たちは手をこまねいていたわけじゃありませんよ。クラムランとラウルはお互いを警戒しており、彼らが交わしていた手紙を非常に巧みに隠していました。これらの手紙をジョゼフ・デュボアが見つけ出し、大部分は書き写し、 [続きを読む]
  • 第二部  第一章 3
  • 我々は仲間で協力して解決に辿りついたのです。私がクラムランは犯罪に何らかの関与をしている、と睨むようになった経緯はもう話しましたね。この瞬間から、確信を得た私には容易な仕事でしたよ。具体的に何をしたか? 監視すべき人物たちに私の部下たちを配したのです。クラムランにはジョゼフ・デュボアを、フォヴェル家の女性たちにはニーナ・ジプシーを」「なるほど。ですが、僕にはニーナがそんな任務を引き受けた理由がいま [続きを読む]
  • 第二部  第一章 2
  • 「たった今、あなたが私に言われたことがです」ヴェルデュレー氏は飛び上った。自分の与えた情報の正確さを疑われることなどまずない人間としては、心外だったのだ。「あり得るかどうか、ですって!」彼は叫んだ。「それが真実そのものですよ。事実から導き出されたありのままの真実、生きて呼吸している真実です」「えっ、そんなことが我々の生きているパリの真ん中で堂々と、誰にも……」「おやおや」太った男は遮って言った。「 [続きを読む]
  • 第二部  第一章 1
  • プロスペルの庇護者である陽気な顔つきの太った男、ヴェルデュレー氏が、とても人間業とは思えないような調査能力を駆使し、集め、整理した事実とは以上のようなものだった。夜の九時に、予告していたリヨン駅ではなく、オルレアン駅に降り立った彼は、すぐさまホテル・グラン・ダルシャンジュに向かった、そこではプロスペルが待ちきれなさに居ても立ってもいられない様子で彼を待っていた。「やあ、あなたに良い報告がありますよ [続きを読む]
  • 第一部  第十章 9
  • しかし、それですべて解決というわけではなかった。フォヴェル夫人もマドレーヌもこの舞踏会に宝石を身につけずに出席するわけには行かなかった。ところが彼女たちの宝石は、ひとつ残らずラウルに巻き上げられ、質屋に持って行かれ、ラウルは質札も自分の手に握っていた。このときマドレーヌは、ラウルに直談判をすることを思いついた。盗んだ金の一部を使って、質屋に置いてある宝石を請け出してくれ、と頼みに行くというのである [続きを読む]
  • 第一部  第十章 8
  • それで彼女は、ラウルにもクラムランにも抵抗出来る勇気を自分は十分持ち合わせていると確信を持ち、事態に対処する責任を全面的に引き受けようと心に決めた。フォヴェル夫人はそのことに難色を示すであろうことを彼女は疑わなかったが、彼女は自分の影響力を最大限に用い、夫人のため及び自分自身のため、強い威厳ある態度を貫いた。そんな訳で、クラムランの願望を挫いて以来、二人の女たちは敵の方から近づいてくるのを待つこと [続きを読む]
  • 第一部  第十章 7
  • クラムランがこれほど苛立ったことは今までになかった。彼は意外な展開を演出することで上手い効果をあげようと計算していたのに、予想外のマドレーヌのしたたかさに遭い、彼の計画が挫折してしまった。いろんな経験を積んでいる彼は、今後、こんなに意を固めている若い娘を脅しつけて功を奏することは出来ないと悟った。彼女は彼の計画の奥を見抜いたわけでも、彼の行動の意味を把握したわけでもなかったのに、驚きも騙されもしな [続きを読む]
  • 第一部  第十章 6
  • 彼はゆっくりとパルトーの脇ポケットから札束をいくつか取り出し、それらを暖炉の上に積み上げた。「ラウルが」彼は声を大きくして言った。「三十五万フランを盗み出しました。ここにそれと同額の金があります。これは私の全財産の半分以上に当たりますが、この犯罪を最後のものにするためなら、私は自分の残りの財産も惜しまず差し出します」クラムランのかくも大胆かつ単純な計画の裏を見抜くにはあまりにも未熟なマドレーヌは茫 [続きを読む]
  • 第一部  第十章 5
  • 「ああ、どうしよう!」フォヴェル夫人は消え入るように呻いた。マドレーヌは身を起こした。ここまで人の言いなりになる心の弱さに唖然としていた。「叔母様はプロスペルに嫌疑を掛けさせたのね!」彼女は叫んだ。「あの人が辱められるのをただ黙って見ていたのね。彼は監獄に入れられているのよ!」「許して……」フォヴェル夫人は呟いた。「わたし怖かったの。あの子は自殺するって言ったんですもの。それに、あなたは知らないの [続きを読む]
  • 第一部  第十章 4
  • 「ええ、まぁ、正直申しまして、あなたの仄めかしとか、その、お疑いとか……」「今朝の私は」クラムランは言葉を続けた「ついカッとして我を忘れてしまいました。私の頭には白髪が混じっておりますが、怒ると二十歳のときのように激して無分別になってしまいます。私のあのような物言いは、あなたへの親近感から来ているものだとご承知おきください。今はいたく後悔しております」フォヴェル氏自身、すぐカッとなるが善良な気質で [続きを読む]
  • 第一部  第十章 3
  • その夜、マドレーヌの叔母への忠誠心は厳しい試練に曝されることになった。心優しい彼女は、自分の愛する男が恥辱の中に突き落とされるのを見たが、彼は無実だと確信していた。彼はある陰謀の犠牲者であり、それを画策した者たちが誰であるか、彼女は分かっていると思っていたが、それでも敢えて自分の愛する男を弁護しなかった。一方フォヴェル夫人は、マドレーヌが疑いを持っていることを感づいていた。自分の体調不良が一つの手 [続きを読む]
  • 第一部  第十章 2
  • しかし彼女は極度の不安に慄いていた。夫が階下の事務所に降りて行って金庫を調べてみようという気を起こすかもしれない。そんなことは滅多になかったが、ないこともなかった。まるでわざとのように、この夜フォヴェル氏はプロスペルのことばかり話題にした。彼のだらしない生活ぶりを見聞きすることから来る苛立ち、強い不安、そして彼が家に寄り付かなくなったのは何故か、等々。幸いにも、フォヴェル氏がプロスペルを手厳しくや [続きを読む]