エミール・ガボリオ ライブラリ さん プロフィール

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エミール・ガボリオ ライブラリさん: エミール・ガボリオ ライブラリ
ハンドル名エミール・ガボリオ ライブラリ さん
ブログタイトルエミール・ガボリオ ライブラリ
ブログURLhttp://blog.goo.ne.jp/puereternus2
サイト紹介文19世紀フランスの探偵小説作家ガボリオの未邦訳作品を翻訳しています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供336回 / 365日(平均6.4回/週) - 参加 2016/02/12 18:34

エミール・ガボリオ ライブラリ さんのブログ記事

  • 第一部  第七章 20
  • 声と身振りでラウルはルイに賛同の意を示した。「それは悪くない」ルイが話し終えたときラウルは言った。「なかなか良い考えだ」「ということで、すべて了解したか?」「ああ、すべて。だけど、手紙はくれるんだろうね?」「もちろん。同様に、もしパリで何かあったら……」「電報を送るよ」「それと、わしのライバルから目を離すな、あの出納係から」「プロスペルか! そっちの方に危険はないよ。可哀想なやつ! 彼は今じゃ俺の親 [続きを読む]
  • 第一部  第七章 19
  • ルイとラウルは一分以上も黙っていた。夜更けに、このような場所で、このようなやり取りをした後、二人の男たちの間に訪れた沈黙は恐ろしい意味を持つものだったので、彼らは二人ともぞっと身体を震わせた。ある忌むべき考えが同時に二人の頭に浮かび、一言も発さず、身振り一つせずとも、彼らは互いに理解し合った。重苦しい沈黙を最初に破ったのはルイだった。「それでは、姿を消すことと引き換えに十五万フランやる、という提案 [続きを読む]
  • 第一部  第七章 18
  • 「そんなことが出来るもんなら……」「よし。あんたは兄の財産はほんのささやかなものだ、と言ったな。ところがどうだ! ガストンは少なく見積もっても六万リーブルの年利を手にしている。否定したって無駄だよ。この土地はどれくらいの価値がある?十万エキュだ。フォヴェル氏のもとにいくら預けてある?四十万フランだ。合計七十万フラン。彼の財産はそれだけか? いや、違う。オロロンのとある収入役が彼のために国債を買い上げ [続きを読む]
  • 第一部  第七章 17
  •  ついに夜が来て、ルイはラウルと落ち合った。ラウルは、前の晩彼らが話し合いを持った畑の中で草の上に寝そべって煙草を吸っていた。「やあ、それで」ラウルは立ち上がりながら尋ねた。「決心はついたのかい?」「ああ、成功間違いなしの案を二つ考えたよ」「それじゃ聞こう」ルイは出来るだけはっきり手短に説明する方法を思案するかのように、ちょっと間を取った。「第一の案は」と彼は話し始めた。「お前の承諾が必要だ。この [続きを読む]
  • 第一部  第七章 16
  • 明るい夜ではあったが、ルイは怒りに顔を顰めるラウルの表情が見えなかった。「俺に興味があるのは持参金だけさ」と彼は答えた。「それなら、何を心配することがある? お前にはその持参金の半分をやると言ってるだろ。お前は妻を持たずして金を手に入れる。恩恵には預るが、責任はなしだ」「俺は五十過ぎの親爺とは違うんでね」ラウルは自惚れを滲ませて言い返した。「もうそれぐらいでいいだろ」ルイは遮った。「酷い暮らしをし [続きを読む]
  • 第一部  第七章 15
  • 「一体誰だ?」「あんたのおかげで出来ちまった敵さ、叔父貴殿、侮れない敵はマドレーヌだよ」クラムランは軽蔑の身振りをした。「ああ、彼女か……」と彼は言った。「あんた、彼女を馬鹿にしてるだろ?」ラウルは深い確信を持って遮った。「それが間違いなんだよ。彼女は叔母に献身的に尽くしている。が、諦めたわけじゃないんだ。彼女はあんたと結婚すると約束し、プロスペルに別れを告げ、プロスペルは苦しみで死にかけている。 [続きを読む]
  • 第一部  第七章 14
  • ロンドンまで行って、将来の当てもないお前を連れて来てやったのは誰だと思ってるんだ? このわしだ。何一つ持たないお前に、名前と家族を与えてやったのは誰だ? やはりわしだ。お前に現在を保証してやっている上に、未来の面倒も見てやろうとして今も骨を折っているのは誰だ? わしだ。全部このわしだぞ」ラウルはじっと聞くには聞いていたが、冷笑するようなわざとらしい深刻さを装っていた。「素晴らしい!」彼は遮った。「見 [続きを読む]
  • 第一部  第七章 13
  • 「一体どうしたと言うんだ?」苛立ちを抑えることが出来ず、彼はすぐに尋ねた。「何が起きたんだ?」「何も」「何だと! あっちでは何も危ないことは起きてないのか?」「全然。ついでに言うと、あんたの度外れの強欲がなけりゃ、万事申し分なしだよ」ルイは、怒りの咆哮とも言うべき大声を出した。「そんなら、何故こんなところに来た! 誰が持ち場を離れていいと言った? 俺たちの身が危うくなるんだぞ」「それは」とラウルは世 [続きを読む]
  • 第一部  第七章 12
  • ガストンは返事を更に一週間ほど待って、もう一度手紙を書くであろう。ラフルカードは大変驚き、すぐ折り返し返事をするであろう。とすれば、長く見積もってもルイに残された時間はあと二週間ほどになる。ということは、危険は目の前に差し迫っている、と彼は考えた。この馬鹿がパリに行って、フォヴェルの前でクラムランの名前を出せば、一巻の終わりだ。階下ではガストンがじれったそうにしていた。「早くしろよ!」と彼はルイを [続きを読む]
  • 第一部  第七章 11
  • ルイにはそれが何のことかすぐ分かった。それこそ彼の頭の中に耐えずあった問題ではないか! しかし、彼は非常に驚いた様子をして見せた。「手紙を? どこに? 誰宛てに? 何の用で?」と彼は尋ねた。「ボーケールに、ラフールカード宛てに、ヴァランティーヌの結婚した相手の名前を聞くためだよ」「それじゃいまだに彼女のことを考えているのか?」「ああ、ずっと」「彼女に会うという考えを捨てられないんだね?」「その思いは変 [続きを読む]
  • 第一部  第七章 10
  • 「でも、どうやって彼女を見つける?」「ああ、それは簡単なことさ。あの地方の者なら誰でも彼女の夫の名前を教えてくれるだろう。名前が分かりさえすれば後は……。ということで、早速明日ボーケールに手紙を書くよ」ルイは返事をしなかった。何よりも、兄の計画に異論を挟まないよう自分を戒めた。反対意見を唱えれば、それは殆ど常に相手に決心を固めさせることになる。説得の言葉の一つ一つが釘を打ちこむ金槌の役割を果たすの [続きを読む]
  • 第一部  第七章 9
  • 私は本当のところ、国債による年二万四千リーブルの利子を得ている。それだけじゃない。ブラジルの私の土地が売れるらしい。運が良かったんだ。既に私の代理人が四十万フランを私のために確保してくれたよ」ルイは喜びに震えていた。ついに、どの程度まで危険が迫っているかが分かるときが来ようとしている。「代理人って?」と彼はいかにも興味なさそうな様子を装って尋ねた。「そりゃ、リオで以前付き合いのあった男さ。その金は [続きを読む]
  • 第一部  第七章 8
  • ガストンは金持ちで、幸福で、尊敬され、大胆さの代価を得ている。それに引き替え自分は……。自らが撒いた種とは言え、今ほど自分の状況の悲惨さを強く感じたことはなかった。二十年の年月を経て、ガストンを憎悪する原因となっていた恥ずべき卑劣な感情が再び彼の胸に甦ってきた。そうこうしているうちに、視察は終わった。「私が手に入れたものをどう思う?」ガストンは楽しそうに尋ねた。「そうだね、兄さん、兄さんはこの世で [続きを読む]
  • 第一部  第七章 7
  • 「それがお前の言う真面目な問題かい?」「もちろん。兄さんに兄さんの相続分を返さなければ。半分を相続する権利が兄さんにはある……」「私には」ガストンは遮って言った。「謹んでこの話はこれで御仕舞にしてくれるようお前に頼む権利がある。お前が持っているものはお前のものだ。時効が成立しているよ」「いや、私にはそういうことは出来ない」「何、父上の相続をすることがかい? お前にはそれが出来るし、そうすべきだ。父 [続きを読む]
  • 第一部  第七章 6
  • 「実を言うとまだなんだ」「それなのに何も言わなかったのか! ああしかし、私もまだなんだよ。再会の初日だというのに、お前を餓死させてしまうところだった。そうだ、キャップのワイン(ボルドーのCap Royalのことか)があるんだ!」彼は大きな身振りで呼び鈴の紐を引いた。一瞬のうちに家中が活気づいた。三十分後には二人の兄弟は豪華なテーブルの前に座っていた。二人の会話は果てしなく続いた。ガストンは自分の出発後に起き [続きを読む]
  • 第一部  第七章 5
  • 「絶対そうだって」「外で会っても私のことが分かったと思うか?」「完璧に分かったさ。兄さんは兄さんのままだもの」ルイの言っていることは本当だった。ガストンは老けたというより疲弊しているという印象だった。頭は白髪交じりで、ブラジルの太陽に曝された皮膚は煉瓦色になっていたが、年を重ねた中にも逞しさがあり、円熟期の男性的な美しさを存分に残していた。「でもどうやって私を見つけたんだ?」ガストンは尋ねた。「何 [続きを読む]
  • 第一部  第七章 4
  • ガストンにとって人生は絶えざる嵐のようなものだったが、その彼が最早自分を抑えることが出来なくなっていた。冒険者であり、恐るべきウォース船長の補佐を務めたこともあり、ヴィラ・リカ鉱山に金を探した彼が、泣き、かつ同時に笑っていた。「お前のことはすぐに分かったよ」と彼は弟に向かって言った。「そうとも、すぐ分かった。だって、お前の顔の表情はちっとも変っていないもの。お前の目つきはそのままだし、笑い顔は昔と [続きを読む]
  • 第一部  第七章 3
  • 彼がようやく友人から返事を受け取ったのはそれから一年後であった。しかもその内容は、彼の父は死に、弟のルイは出奔し、ヴァランティーヌは結婚し、ガストン自身は殺人罪で複数年の禁固刑を宣告された、と告げるものであった。この知らせは彼を打ちのめした。これで彼は、帰る故郷もなく、裁判により名誉を失い、この世でただ一人ぼっちになったのだ。ヴァランティーヌが結婚したとなっては、彼は人生の目的をもはや見出すことが [続きを読む]
  • 第一部  第七章 2
  • つまり、彼の周囲で話されていることから判断すると、彼はどうやら自分が望んでやまない大金持ちへの道を歩んでいるとは言えないようであった。トム・ジョーンズ号はバルパライソへの航路を帆走していたかもしれないが、確実に言えることは、そこに至る一番遠回りをしているということだった。これは、ウォース船長がギニア湾岸に寄港しようとしていたことを物語っている。彼の友人の一人である黒人の王族がバダリ地方で自分を待っ [続きを読む]
  • 第一部  第七章 1
  • ガストン・ド・クラムランはヴァランティーヌと別れ、大変な危険や難儀に遭遇したが、なんとか逃げおおすことができた。彼の逃亡を助けてくれたムヌール親爺の豊富な経験と献身がなければ、彼は大型船舶に乗り込むことは出来なかったろう。ヴァランティーヌに彼の母の形見である宝石を預けた後、彼には九百二十フランしかなく、これだけでは二人の男を殺した逃亡犯が大型船舶の船賃を払うには不十分だった。しかし、元船員であった [続きを読む]
  • 第一部  第六章 11
  • 「てことは、俺たちは助かった、てことさ、多分。さ、行こう。俺たちが居ないのに気付かれると困る。冷静になるんだ、いいな! 普段どおりの態度で陽気にやるんだ。さっきお前の態度でばれそうになったぞ」「あの二人の女たちは勘づいてるぜ」「だから、どうだと言うんだ?」「ここに居るのはまずいんじゃないか」「ロンドンの方が良いってか? 俺を信じろ! 上手く切り抜けられるさ。俺はこれから策を練る」彼らは他の客たちの中 [続きを読む]
  • 第一部  第六章 10
  • ルイは、しかし今回は眉一つ動かさなかった。彼には見当をつける時間があった。どのような打撃であれ、払いのけるための心の準備をしていた。「ガストン!」なるほど、という調子で彼は言った。「これで分かりました。その人は私の父の妹の息子に違いありません。父の妹はハバナに住んでいる男と結婚したのです。その息子はフランスに帰ってから母親の旧姓を遠慮なく使うことにしたのでしょう。父親の名前より響きが良いので。父親 [続きを読む]
  • 第一部  第六章 9
  • 「侯爵、あなたに一つお聞きしたいのですが」彼は尋ねた。「あなたは同じ名前のご親戚の方がおられますか?」「私の知る限りでは存じませんな」「と申しますのも、一週間前、私はクラムラン侯爵と名乗る方とお近づきになりましてね」鉄面皮で武装され何事にも驚きなど見せないクラムランであったが、このときは一瞬狼狽し顔が青ざめた。「ああ、そ、それは」彼は懸命の努力を振り絞り、もごもごと呟いた。「クラムラン、侯爵と言わ [続きを読む]
  • 第一部  第六章 8
  • フォヴェル夫人は自分が実に上手く隠してきた、と信じていたので、信じられないという身振りをした。「だって、叔母様! この私はちゃんと見抜いたじゃありませんか、叔母様がなにか秘密をお持ちだってことを!」「あなたはね!」「そうですとも。尤も私はてっきり……ああ、ごめんなさい。邪推をしていましたわ……」彼女は困ったように言葉を切った。そして言葉を続けるには大いに努力が必要だった。「私、叔母様が誰か叔父様以 [続きを読む]
  • 第一部  第六章 7
  • 「あなたの思っていることを包み隠さず私に話して。ああ、不幸が私に力を与えてくれたわ。もう何を恐れることがあるかしら? 何でも聞けるわよ……」マドレーヌは躊躇した。愛する人にショックを与えるのではないかという恐れと真実を知らせたいという気持ちの板挟みになっていた。「私は確かめたいと思っていますの」とうとう彼女は言葉を続けた。「クラムラン侯爵とラウルが予め打ち合わせ、手筈どおりの役割をそれぞれ演じてい [続きを読む]