×丸 さん プロフィール

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×丸さん: あの空へ、いつかあなたと
ハンドル名×丸 さん
ブログタイトルあの空へ、いつかあなたと
ブログURLhttp://ameblo.jp/skyscripts/
サイト紹介文百合小説をメインに公開していくブログです。 シリアスな百合小説『傷は抱えたままでいい』連載中!
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供29回 / 221日(平均0.9回/週) - 参加 2016/02/14 23:53

×丸 さんのブログ記事

  • 傷は抱えたままでいい 37
  • 前話へ リコとの公園の出来事から数日後、私は再び保健室を訪れていた。促されるままに、処置を受けた時と同じように椅子に腰かける。目の前にはこの部屋の主である彼女が座っている。相変わらず、包み込むような柔らかな笑みを浮かべて。彼女はゆっくりと指に巻かれた包帯に手をかけた。一巻き、もう一巻きとクルクル円を描いて、包帯が徐々に解かれていく。あらわになっていく指を、私はジッと見つめていた。というより、他に何 [続きを読む]
  • 近況報告
  • ややお久しぶりです。少し更新が滞ってしまっていてすみませんでした。現在今こちらで連載している『傷は抱えたままでいい』のほかに、短編の小説を細々と書いています。『傷は〜』は今の目測だとかなり長いスパンで書いていくことになりそうなので、もっと短くサクッと読めるものがあるといいと思ってのことです。今のところ「小説家になろう」の方で2作品上がっているので、こちらも読んでいただけると嬉しいです。なお、おそ [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 36
  • 前話へ 「いい人たちだったんだね」 「そうだね……話してみないと分からないこともあるね」 「私たち、みたいにね」 それを聞いたリコが照れくさそうに笑う。今まで見た中でこの表情が一番可愛らしいなと素直に思った。 辺りも本格的に暗くなってきている。 私とリコはまだ人通りの多いうちにお互い家に帰ろうということになった。 「早川さん、一人帰れる?」 「うん、リコこそ平気?」 「平気だよ。家、そんなに遠くないし」 [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 35
  • 前話へ思わず右手でリコを庇うようにして身構える。 「だ、誰……!?」 「ちょ……! ちょっと待って待って待って! 待ってって!?」 暗がりで姿は判別できないが、その声色は確かに男のものだ。 でも慌てふためいたようなシルエットと言葉は、私の抱く不安とはかけ離れたもののように思えた。 少しずつ、まるで猛獣を前にするリアクション芸人のような奇妙な足取りで私たちの方へ向かってくる。 「あのさ……君さっきコンビ [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 34
  • 前話へ弱々しく呟くような声でありながら、それでもリコは話を続けた。 「ルイは優しかった……ふさぎ込んでいた私に温かい笑顔を向けてくれた。その温もりが、私に安らぎをくれた……それがただの同情だったとしても、私にはそれがすべてだった」 「北崎さんを保健室に運んだのは、それじゃあ――――」 「ええ、私だけじゃない。他の子たちにとってもルイが安らぎの存在だったから」 包み込むような眼差しと柔らかな微笑み。男 [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 33
  • 前話へ 街灯に明かりがつく。 太陽はすでに山の向こうに落ちていて、空の紺色が少しずつ広がっていっている。 ほのかな光の中に、私とリコはいた。 「……何をされたか、聞かないのね」 「そんな……! 聞くわけないよ!?」 思わず立ち上がってリコの言葉に応える。 リコは座ったまま、顔を下に伏せていた。上から見下ろすリコの姿は、とても小さく見えた。 北崎がそうであったように、私の与り知らないところで少女たちがそう [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 32
  • 前話へ「……だから私は、あそこで見ていたの。いわゆる張り込み捜査というものなのかしらね。これまでの事件があの辺りに集中していたから、そこで見ていた。……これ以上、事件を起こさないように」 「見ていたって……ずっと!?」 「さすがに何時間も同じ場所にいるのは疲れるわね……」 フッと、リコはため息をつくように短く息を漏らして、自嘲気味に微笑んだ。 私は言葉を失っていた。 彼女がここ何日か元気がなかったのは [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 31
  • 前話へリコは少しだけ意外というような顔をして、一つため息をついた。 「…………知らなかった、といえば嘘になるわね」 ポツリと、独り言のように呟く。 「この辺りで、ある事件が何度か起こってるの」 「ある事件……?」 「一言で言えば……女性への暴力事件よ。正確な件数は分からない。でも被害を受けたという人を私は何人も知ってる」 「まさか……北崎さんも!?」 彼女の言葉にすぐにピンと来た。 確かに、男子生徒に話 [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 30
  • 前話へ「はい、どうぞ」 私とリコは近くにあった公園のベンチで腰かけることにした。 自販機で買ったジュースのペットボトルを1本リコに手渡す。 「……ありがとう。ごめん、私のために」 「いいの、助けてもらっちゃったから。こっちこそ、ありがとう」 それは正直な気持ちだった。 あのコンビニで動けずにいた私の手を引いて、一緒に逃げてくれた。 恐怖から、文字通り振り切ってくれた。 それ自体は本当に感謝したいと思うこ [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 29
  • 前話へ私たちは走った。走って走って、コンビニからずっと遠ざかってもまだ走った。 その間、リコはずっと私の手を握っていた。その手が昨日けがをした左手だと気づいたのは、交差点を3つほど駆け抜けたところで―――― 「っ! い、痛……!」 恐怖の場所から遠ざかり少し安心したからか、驚きと戸惑いで忘れかけていた指の痛みが急激に戻ってくる。 そんな私の声が耳に入り、リコはようやく立ち止った。 「――――はあ、はあ [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 28
  • 前話へ数人の大人――男だけでなく女もいた――が、コンビニの前でたむろしていた。 見た目からして私よりも年上。大学生か、もっと上か。どちらにしろ、大声を出して笑うその姿ははっきり言って品のあるものとは思えない。 毎日ではないがよく見かける光景。 直接何かをされたというわけではない。でも彼らの前を通るときはいつも、それだけで毛羽立った毛布で撫でまわされるような居心地の悪い気持ちになる。 いつか身に覚えの [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 27
  • 前話へ夕暮れと呼ぶにはまだ少し明るい時間。やがて訪れる黄昏に向かって、少しずつ日が落ちていく。学校を出て、家までの道のりをぼんやりと歩いていく。 私の家と学校とは決して近いとは言えない。 それでも自転車やバスを使う生徒にとっては徒歩で行き来できる分、いくらか恵まれている方と人によっては言うかもしれない。 私のお母さんも実家が田舎で学校も遠かったらしく、家から歩いて通える私を羨ましがる人間の一人だった [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 26
  • 前話へそれは図書カードだった。 1冊ずつ、今まで誰がどのくらいの期間その本を借りたのかを記録する紙。 私の持っていた本のうちのどれか1冊から抜け落ちてしまったのだろう。どの本かを確認するためにカードを拾って内容を見る。 何気ない自然な行動、しかし私はタイトルを見るだけだったそのカードから目を離すことができずにいた。 カードには今現在だけでなく、かつてこの高校にいた元生徒の名前も当然書かれている。 どれ [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 25
  • 前話へ次の日、部活を休んだ私は学校の図書室にいた。 保健室ほどではないにしても、ここだって普段の私なら縁のない場所の一つだ。 にも関わらず足を運んだ理由は、一言でいうなら気まぐれでしかなかった。 昨日の夜、徹夜とそのほか色々な疲れもあってすっかり深い眠りについたため、今の私の頭はいつにも増して冴えていた。 何かをしたいと思わずにいられないが、指のこともあって身体を動かすことが十分にできない、そう思っ [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 24
  • 前話へ「――――はい、終わったよ。……どうしたの?」 「……は、え……?」 不思議そうな顔をして、先生は私の方を見ていた。 ふと我に返り左手に視線を落とすと、怪我をした指にはきっちりと包帯が巻かれていた。 痛みはもうほとんど感じない。 「あんまり痛むようなら病院に行くのよ?」 「はい……ありがとうございます」 「それじゃあ、お大事に」 そう言うなり、後片付けを始めた。 「…………え?」 先生の視線は既に私 [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 23
  • 前話へ今、この胸を染める感情は一体なんなのだろう。 確かに、昨日北崎と一緒に保健室へ行ったきり放課後まで帰ってこなかったことも、それを担任が許していたことも説明がつく。 大人びた声がそのまま先生の声だったというなら、もうそれは推理ですらない。 間違いない、この人が―――― あの時、リコがキスをしていた相手。 保健室で、リコが縋るように甘えた声を伝えていた相手。 ――――ルイ、だ。 「……変な名前でしょう [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 22
  • 前話へ織部先生の手にした、処置のためのはずのハサミがキラリと光る。 冷たい光沢を放つそれを―――― ――――特にどうするともなく机に置いて。 「チサちゃん」 「はい」 「チサちゃん」 「? はい」 「……チサちゃん?」 「…………」 何をしているのだろうこの人は。 まるで私が返事をすることそのものを楽しんでいるかのように、何度も名前を呼んでいる。 奇妙な雰囲気に緊張感も薄れてくる。 私の名前をどうして知って [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 21
  • 前話へ 2人きりの保健室はとても静かだった。 いや、目の前にいるこの人は先ほどから鼻唄混じりに私の指の処置をしていて、決して無言というわけではない。 ただ私の方はというと、今に至るまで何も話せていないし、相手の顔を見ることもできないでいた。 チラリと机に視線をやる。 プリントや本が整然と並べられており、とてもスッキリしていた。見ていて気持ちのいいくらいだ。 隅には車のものだと思われるカギが置かれていて [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 20
  • 前話へあとはこのまま指の処置が終わってこの場所を後にするだけ。 部活はできないから今日も一人で帰ることになるけれど、指の怪我だけなら日常生活に支障はない。 そう。何も問題のない、日常に戻るのだ。何度も言いたくなるくらい、有希と里穂がここまで一緒に来てくれたことが本当に救いだった。 ――――そう思っていた矢先のことだった。 「うん、それじゃあ貴女たちは部活に戻っていいよ」 「…………え」 織部先生の突然 [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 19
  • 前話へ「――――うん、折れてはいないみたいだね」 私の腫れあがった左薬指に触れたり、観察したりした後、彼女はその言った。 その言葉に、有希と里穂はホッと胸をなでおろす。 「はー良かったあ……骨折してたらどうしようかと思ったよー」 「なんで有希が安心するのよ。でもホント、ただの突き指でよかったよ」 「そうは言っても突き指だって放置してたら大変よ? すぐに処置しなくちゃね」 3人の会話を、私はぼんやりと聞 [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 18
  • 前話へ 扉を開けると、そこには椅子に腰かけた一人の女性がいた。 落ち着いた風貌、長い茶色がかった黒髪は先がふんわりとカールしていて、先生というよりは少し年の離れたお姉さんのよう。 でも私たちに優しく向けられた柔らかなその表情は、一目で包容力の高さを感じさせた。 なるほど、男女ともに人気がある理由も分かる。 里穂と有希はすでに「やっほー織ちゃん」などと親しげに歩み寄っていた。 「こらこら、怪我人がいるん [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 17
  • 前話へ 率直に言って行きたくなかった。 でも必死に拒否するのはかえって不自然だし、この指の怪我に早めの処置が必要なことは私自身が文字通り骨身にしみて実感している。 モヤモヤした心と痛む指。 元はと言えば全て自分で招いたことだが、こうも立て続けに色々なことが重なると、もう何も言いたくない。 ただ、里穂と有希が一緒に来てくれることだけが救いだった。 「……でも、織ちゃんに診てもらえるんだから、よかったって [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 16
  • 前話へ 「――――リコ!」 有希の投げたバスケットボールは、まっすぐ私の方へ向かってきていた。 ただのチェストパス。普段の私ならよそ見をしてたって取れる、素直な軌道。 でも私は忘れていた。忘れていることすら忘れていた。 今日の私は、普段と違う状態だということを。 「! っ……あ」 鈍い音と痛みはほぼ同時にやってきた。 突然の衝撃と灼けるような鈍痛で、声すら出ない。 私の左中指が、飛んできたバスケットボール [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 15
  • 前話へ 体育館に響き渡るバスケットボールの弾む音が、まるで他人事のように思える。 「ねえ、今日はもう帰った方が……」 里穂が心配そうに私に聞いてくるが、それに対する返事すら、私は「んー……」としか答えることができなかった。 結局プリントは居残りでは片づけることができず、宿題となってしまった。 だが家に持ち帰ったところで頭の中のモヤモヤは消えず、全てをやり終えるのにほぼ徹夜に近い時間がかかってしまった。 [続きを読む]
  • 傷は抱えたままでいい 14
  • 前話へ「…………っ!!?」 驚き過ぎて言葉も出ない。 椅子から転げ落ちそうになるのを必死にこらえるのに精いっぱいだった。 錯覚か、あるいは幽霊かと思ってしまいそうになるくらい唐突に、リコは教室にいた。 おそらく私が頭を抱えていたその間に、教室に戻ってきていたのだろう。 それにしても目の前に現れるまで気づかないなんて、私はどれだけ考えに耽っていたのか…… だが原因はそれだけではないようだった。 リコの表情 [続きを読む]