やまの龍 さん プロフィール

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やまの龍さん: 頼朝好き・北条数寄FanSite「あづまがたり」
ハンドル名やまの龍 さん
ブログタイトル頼朝好き・北条数寄FanSite「あづまがたり」
ブログURLhttp://yoritomo-fan.com/
サイト紹介文源頼朝&政子、北条氏、鎌倉幕府が大好き。歴史小説&考察&書評ブログ。大河ドラマについても。
自由文真田の先祖、海野幸氏は木曽義仲の息子で頼朝の娘大姫の許嫁者である志水冠者義高の家来。後に鎌倉幕府の御家人になる彼は、武田や小笠原、望月と並んで弓馬四天王と呼ばれました。そんなカッコイイ彼を応援したくて起ち上げました。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供64回 / 365日(平均1.2回/週) - 参加 2016/03/21 19:48

やまの龍 さんのブログ記事

  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 48
  •  カエルが鳴いている。山から顔を出した月は今は橙の顔で田方の田んぼを見下ろしていた。「わぁ!」 唐突にあがった叫び声に頼朝は振り返る。床で眠りこけていた佐々木盛綱が、勢い良く起き上がって慌てふためていた。「わ、わ、わ! 俺、何で寝てるんだ? あれ、それともこれは夢かな? じゃあ……」 そうしてまた横になって眠ろうとする。 頼朝が黙って顎をしゃくると、庭に出ていた一人の青年が、ずかずかと部屋に上 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 47
  •  その夜、伊豆・三島は、賑やかな祭りの火に彩られていた。 山の端に顔を出した月も、その大きな顔を赤く染めている。遠くの大通りを人々が松明を持って明るく楽しげにつらつらと歩いていくのがよく見えた。 その賑やかな通りから少し入った堤の館を数人の連れが訪れていた。 ほとほとと静かに鳴らされる音に門を警護していた男達が顔を出す。その頬は僅かに上気し、微かに酒の匂いが漂っていた。祭りに参加出来ない代わ [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 46
  •  夕刻、金太は一人の男を台所で捕らえた。「お指図通り、ひっ捕らえましたよ。どうしますか? 殺しますか?」 縄で縛られていた男は顔を青ざめ、ぶるりと大きく震え上がる。「あーあ。だから新婚の男は嫌いなんですよ。祭りの日くらい羽目を外して外で遊んでくりゃあいいのに」 藤九郎が口をひん曲げて愚痴をこぼした。 その男は少し前に北条の館の下女と結婚した為に、毎夜北条館へと通っていた山木館の下男だった。「 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 45
  • 第十章「まろい世界」 「今日は三島社の祭礼だったな。皆揃って出かけてくるがいい」 その朝、山木兼隆は上機嫌で家人達に笑顔を見せた。それからそっとアキへと囁く。「今宵も可愛がってくれる。男たちは外回りを残す程度にするからな。今日はいくら悲鳴を上げても構わない」 狐の目が細く細くアキをひたと見つめる。そこには昨晩見せた激しい憎悪の影はなく、それよりも獲物を見つけて心躍らせている犬のよう [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 44
  •  夜明け、アキは意識を取り戻す。 蔀戸から白い陽が漏れ入ってきていた。アキはいつの間にか縄を外され、床に転がされていた。 冷たく凍え、ぎしぎしと痛みを訴えるあちらこちらを撫で擦り、アキは着物を合わせて庭へと出た。 手入れされてはいるが、どことなく余所余所しい庭。ここからは北伊豆の田方の平野が一望出来た。広がる金色の田んぼ。でもここからはあまりに遠い。稲が風に揺れる音は届かない。北条の館もここ [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 43
  •  そしてその夜、アキは山木兼隆がその父によって流罪とされた理由を知った。 彼は異常な性癖の持ち主だったのだ。「私が京を追い出されたのは父の後妻と関係を持ったからでね。他人の物を取るのが楽しいのだ。右兵衛権佐殿の妻を寝取る。都においてはなかなか難しいこと。愉快だ」 言いながらアキをきつく縄で縛り上げていく。「別に心のある者を縄で縛って抵抗させず、思い通りに扱う。力のある者だけに許された特権だな [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 42
  •  婚姻の日は朝から雨だった。 明日の夜明けが決起と聞いていた。 昼過ぎより女達がアキの用意を調えていく。この日の為に呼ばれたらしい女達が手早くアキに化粧を施していき、美しい織りの着物を羽織らせていく。彼女たちがあらかたの準備を終えて部屋を下がった時、その後ろに控えて片付けなどの手伝いをしていた数人の少女がアキの前に出て手をついた。「姫様、私たちはお味方でございます」「ユウより聞きました。ここ [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 41
  • 「さあ、どうぞ」 手渡された絵を正面に返して見たアキは「あ」と小さく叫んだ。 向きを変えた途端、山が天駆ける龍へと変化したのだ。木々が、抱える湖が、麓の村々が、伸びやかに翔ぶ龍の姿を見事に描いていた。 そしてその龍はまた、向きを僅か変えるとゆったりと横たわる女のようにも見えた。「藤原殿は京のお方なのでしょう? どうして伊豆へいらしたのですか?」 これだけの特技を持っていれば、都での出世も難し [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 40
  • 「龍の姫、邦通殿がそなたに京の秘戯を指南してくれるそうだ。よく聞いておけ」 兼隆と共に藤原邦通が現れたのは夕方のことだった。「では、兼隆殿。姫はお預かりしますぞ。今晩を楽しみに」「おや、私にはその秘戯とやらは教えてくれぬのか」「ええ。何分秘戯でございますれば、知らぬ方が楽しみも大きいというもの」 邦通の言葉に、兼隆は狐のような目を線にすると、高笑いして去って行った。 「さて、姫君。どこま [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 39
  •  その夜、アキは山木兼隆に抱かれた。 狐のような細い目が更に一本の線に細められ、蛇のような細く長い舌がアキの身体を這いずっていく。アキは何も感じないように心を閉ざして真っ白な心でいた。だが、兼隆はしつこく執拗に責める男だった。「初々しいな。佐殿は淡白な男か。その年でまだ喜びを知らぬとはもったいないこと」 アキは心の中で出掛けに時政が口にした言葉をひたすら胸に繰り返していた。『アキ、何があって [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 38
  • 第九章「雅の蛙」  アキはひたすら心を無にして、その場で顔を下げた。「北条時政が一の姫、蛙姫と申します。不束者ですが何卒宜しくお頼み申し上げます」「龍の娘か」 アキの正面に座り、ねぶるようにアキの身体をじろじろと見ていく男。狐のような細い油断のならぬ目。尖った顎。疑われてはいけないとアキは顔を下に向けた。「龍の姫は身体が強いと聞いた」「お陰様で病にかかったことはございません」「この [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 37
  •  時政は山木の館に乗り込んで行き、先ほど自分が言った言葉そのまま、兼隆にへつらって見せたのだ。悪人面の兼隆の薄汚い笑みも呑み込み、我が身の保身をはかった。さすが身汚い男だ。裏切りなど造作も無いこと。金太はそれをずっと時政の後ろから見ていた。 女が嫁ぎ先を変えるのは珍しいことではない。父の意向によっていつでも嫁ぎ先から戻され、別の家へと送られた。婚姻歴が女の質を落とすことはなく、かえって身分の [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 36
  •  八月、北条館に佐々木の兄弟が突然来訪する。「北条と比企が佐殿を担ぎ、挙兵を企んでいると噂になっています!」 それは今、相模国で平氏の権威を背景に勢力を伸ばしている大庭景親が同じ相模の渋谷重国に相談したことで露見した。渋谷重国は、佐々木兄弟が身を寄せ、恩を受けていた豪族だった。「比企殿は既に亡くなられている。曖昧で間違った情報が伝わっているようだ。だが、北条殿が佐殿を婿として迎えたことは既に [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 35
  •  五月、以仁王の挙兵計画が漏れる。戦の準備が整わぬままに彼らは挙兵し、狩られることとなった。園城寺に立てこもり、延暦寺と足並みを揃えて蜂起しようとするが、平家の諜略により決起の機を逃し、寺を追われることとなる。五月末、宇治川での激戦の末、頼政も以仁王も討ち死にした。 乱の鎮圧と共に、平家方は諸国の源氏を討伐する方向へと向かう。その筆頭は伊豆の源頼朝、甲斐の武田源氏、木曽の源義仲。そして寺から [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 34
  • 第八章「蛇の洞道」  アキが北条を去ってより二年。金太は変わらず、時政の下で陰の仕事をしていた。けっして楽しい仕事ではない。だが、おかげで大切な情報には事欠かなかった。 治承二年の冬、平清盛の娘・徳子が高倉帝の皇子を出産する。生まれたばかりの皇子は清盛の圧力ですぐに立太子され東宮となった。その側近には平家一門の者、また親・平氏派の面々が連なる。当然、院は面白くない。 その翌年、清盛 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 33
  • 「五郎のことを頼むわね」 アキはそう言って、泣きじゃくる五郎を妹の腕に委ねた。 三月も留守にしてやっと北条に戻ったと思ったら、今度は走湯権現に行くこととなったのだ。アキのことを母代わりに育った五郎が寂しがるのは当然のことだった。アキは膝をついて小さな五郎の顔を覗き込む。「五郎、姉さんは権現様で、ややこを生むことになったの」「権現様?」「そうよ、権現様がお守りくださるから」「ややこが生まれたら [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 32
  •  翌日の日中、頼朝とアキは北条へと戻った。田んぼは一面、土に覆われ固くなっている。でも、もう直に田起こしが始まる。留守にしていた間に季節が巡っていたことを思う。 そして館に戻ったアキは、時政の上機嫌の理由を知った。時政は新しい後妻を京より連れ帰っていた。牧の姫だという新しい義母は、アキと同じ年だった。また、奇しくも名も秋姫と言った。 数年前に母が亡くなり、後妻を館に迎える心づもりはしていたつ [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 31
  • 「子がいるのだな」 頼朝の問いに、アキは小さく頷き、そっと頼朝の顔を盗み見た。頼朝には具合が悪いとしか言っていなかった。勘違いだったらいけないと思ったし、それに子を一度亡くしているのだ。色々思うことがある筈だった。「いや、めでたい!」 佐々木の長兄の顔は既に真っ赤に染め上がっていた。「佐殿、おめでとうございます!」 祝いの言葉に、だが頼朝の顔は強張ったままだった。藤九郎がいつもの片頬のみを上 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 30
  • 第七章「仄かに」  京から戻ってきた時政は、そのままの足で頼朝の元を訪れた。時政の後ろには宗時が控えていた。 暮れかけた夕方の突然の訪問に、アキは慌てて着物を胸元にかき寄せ起き上がる。山の冷気にあてられて風邪を引き込んだか、ここしばらく微熱と悪心が続いていた。「佐殿、長らく留守にしていて、手が届かず申し訳ないことをした」 時政の言葉に、頼朝は固い表情で首を軽く横に動かす。「アキ、北 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 29
  •  奥の部屋で、頼朝は薄い透かしの入った青鈍色の直垂を脱いでいく。それを拾い集め、丁寧に畳みながらアキは久しぶりに凪いだ穏やかな心持ちでいた。「アキの笑顔を久しぶりに見た気がする」「だって、あの人達なんだか可笑しくて」 着物の折り目を合わせて丁寧に畳んでいく。美しく肌触りの良い直垂。焚き染められた香も雅で、この一月、こうして頼朝の体温の残る着物に触れる度に、仮初めであっても妻であるかのような幸 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 28
  •  アキは一つ小さく背を震わせた。今日は戻らないのではなかっただろうか。慌てて手をついて頭を下げる。「お帰りなさいませ」 急いで立ち、頼朝の手足を拭いに土間へ下りようとする。だが頼朝はそれを制すとアキの手を取った。「アキ、無事だったか」 冷たい手。でも、その芯の骨には温く熱い熱がこもっている。黒い瞳が真っ直ぐにアキを貫き、アキはいたたまれなくて目を逸らし、急いで手を引き込めた。小さく頷く。 頼 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 27
  •  目覚めると屋敷の畳の上で寝かされていた。枕元に撫子の花飾しが置かれている。「目覚められたか」 聞き覚えのない男の声に、ハッと急いで身を起こす。アキの顔を覗き込んでいる男。掛けられていた着物を胸元に手繰り寄せて後退る。「ああ、いや、俺は別に何も! どうぞ誤解なきよう!」 男が慌てて手を大きく横に振る。「三郎! だから失礼だと忠告しただろう。早くこちらに下がれ!」 別の男の声に首を巡らせれば、部 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 26
  • 「追え! 捕まえろ!」 男たちの声が追いかけてくる。アキは転げ落ちるようにして山を下った。だが、ほんの幾らもいかないうちに髪を後ろから引っ張られ、引きずり倒される。「捕まえたぞ。俺が一番だ!」 歓声を上げる声。身体にのしかかってくる重み。黒い手が着物の襟にかかる。「この女、やっちまっていいですよね?」 振り返る男の向こうに、文を手にした男が薄笑いを浮かべて歩いてくる。「そうだな。だが、この女 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 25
  •  その時、アキは下りかけた山をまた屋敷に向かって登っていた。花飾しを落としたことに気付いたのだ。だが屋敷の手前で、複数の異様な気配に気づき、茂みの中へと身を隠す。 藤九郎は頼朝の供をして出掛けた。金太はどうしたのだろう。でも金太であっても、これだけの多数の男相手では、ただ嬲り殺されるだけ。もしや既に屋敷の中で……。 アキはガタガタと身を震わせながら、気づかれないようにと息を潜めていた。――山 [続きを読む]