やまの龍 さん プロフィール

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やまの龍さん: 頼朝好き・北条数寄FanSite「あづまがたり」
ハンドル名やまの龍 さん
ブログタイトル頼朝好き・北条数寄FanSite「あづまがたり」
ブログURLhttp://yoritomo-fan.com/
サイト紹介文源頼朝&政子、北条氏、鎌倉幕府が大好き。歴史小説&考察&書評ブログ。大河ドラマについても。
自由文真田の先祖、海野幸氏は木曽義仲の息子で頼朝の娘大姫の許嫁者である志水冠者義高の家来。後に鎌倉幕府の御家人になる彼は、武田や小笠原、望月と並んで弓馬四天王と呼ばれました。そんなカッコイイ彼を応援したくて起ち上げました。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供60回 / 365日(平均1.2回/週) - 参加 2016/03/21 19:48

やまの龍 さんのブログ記事

  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 24
  •  頼朝が出掛けた。黄瀬川に行くのだと。夜は帰らないからと金太を護衛に早く休むよう言われた。黄瀬川には宿がある。馴染みの女がいるのかもしれない。 手にしていた小さな薄紅色の花飾しがコトリと床へと落ちる音でアキは我に返った。それから自嘲的な笑みを浮かべる。「私では、慰めにすらならないのね」 八重様の代わりでもいいと思った。光の君が藤壺の女御の面影を紫の上に求めたように、自分を求めてくれないかと密 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 23
  • 「まぁ、いい香りだと思ったら」 空気の動く気配がして、野菜を入れた籠を手にしたアキが現れる。「ずるいわ、私のいない間に」 大きな薄茶の目を軽く細め、左右対称に綺麗に口の端を上げて見せる。「あなたの分もありますよ」 頼朝も目を細め、たった今綺麗に?いたばかりの金色の小粒を摘んで立ち上がった。アキへと向かい、その口元へと粒を運ぶ。アキは躊躇せずに口を開き、頼朝の差し出す栗を食んだ。赤い唇が頼朝の [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 22
  •  約束の一月が経とうとしていた。だが、事は男たちの思ったようにはいかなかった。「は? 一度も関係を持ってない?」 藤九郎の言葉に金太は頷いた。「清いものですよ。老年の夫婦かと思うくらいに」「喧嘩をしたのでは?」「いいえ、仲睦まじく畑を育ててます。あれは完全に長年連れ添った百姓の老夫婦か、または兄妹ですね。昼は畑に出て作物の世話をし、朝な夕なは二人声を合わせて読経をする。またその読経の声が見事 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 21
  • 第六章「繋ぐ欠片」  頼朝はひどく勘の鋭い男だった。警戒心も強く、物音や人の気配に敏感だった。人の顔もすぐに覚えた。 だが一方で、ひどく間が抜けていた。何度「金太だ」と名乗りを繰り返しても一向に覚えない。覚える気がないのだとわかった。またはひどく思い込みが激しいのだろう。 だが、ある日から認識されるようになった。「えーと、何だったっけ? かんた? くんた? こんた?」 あまりにむかっ [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 20
  • 「そんなこと私には出来ません」「いいえ、貴女には出来る筈だ。いや、貴女にしか出来ない。佐殿に『陸奥話記』を暗誦したのをお忘れか」 その途端、頭がカッと熱くなった。『陸奥話記』は確かに暗誦した。この男が自分に暗誦させた。そして頼朝はアキの元を去ったのだ。全てこの男の計画だったのか。「では、また『陸奥話記』を暗誦して見せればいいのね?」 藤九郎と同じ、片頬だけを上げる嫌味な笑顔を見せてアキ [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 19
  • 「ああ。ただ一つ。いや二つだけ嘘をついておりました」 藤九郎の言葉に、アキは軽い目眩を覚えながらゆっくりと振り返る。やっぱりこの男はろくでもない。でも、どこかそれをわかった上で付いて来たのかもしれないとも思う。「一つ、貴女を一月借り受けるのは佐殿のご提案ではない。私と北条殿との間の取り決めだ」「何故そんなことを」「あの腑抜けをなんとかしていただく為ですよ」 門の内を顎でしゃくる藤九郎。 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 18
  • 「父は京です。そのような冗談を言うはずがありません」「ええ、京で大番に当たられている。存じておりますよ。この度、佐殿を北条へ招かれたのは北条殿なのですから」 藤九郎は胸元から文を取り出して見せた。確かに時政の筆跡で頼朝へと宛てられた文だった。「そこで佐殿は条件を出された。一の姫様を一月借り受けたいと」「借り受ける? 一体どういうことですか?」「佐殿の身の回りの世話をするということですよ [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 17
  • 第五章「無垢なる光」  年が明け、時政は大番の為に京へと上がった。 そして翌年、伊東氏の相続争いから事件が起きる。京より戻った工藤祐経が、伊東祐親父子の命を狙ったのだ。狩りからの帰り道を矢が襲った。だが、伊東祐親は死なず、嫡男である祐泰だけが死んだ。残される妻と幼い子ども二人。 そしてまた年が明けた秋、伊東の八重姫が北条の地に嫁いできた。小四郎の正妻としての輿入れだった。小四郎は元 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 16
  •  翌朝、初音が部屋を訪れてアキの身の回りを整えていった。宗時が一瞬部屋を空けた隙にアキは頼朝のことを初音に尋ねる。初音は軽く首を傾げ、気の毒そうな顔をして答えた。「佐殿は伊東殿にお命を狙われて、こちらに逃げていらっしゃったのです」「でも、お子が生まれたと聞いたのに……」 驚いたアキの声に、初音は静かに頷く。「昨今の都での平家のお振る舞いは大層なものと聞きます。伊東殿は、佐殿と密通した姫 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 15
  • 「先ほど、宿坊の入り口で見たのだろう?」 やっぱりあれは佐殿だったのか。アキは大きく一度、背を震わせる。アキの目の前の宗時の顔は昏く、そして静かな怒りに震えていた。「確かに父はお前と佐殿を娶せる心づもりがあった。だが佐殿は伊東へと去った。そして今や平家全盛の時。父は俺とお前とで北条を守っていくことを望んでいる」 アキは必死で首を横に振る。「それはわかってる。私は兄さんと結婚するわ。佐殿 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 14
  •  美しい調べ。流れるように淀みなく唄い上げられるその調べが人の声で、また唱えられているのが経だと気付いて、アキは薄っすらと目を開けた。線香の香りがくすぶる小さな部屋にアキは寝かされていた。「お目覚めになられましたか」 まだ年のそういっていない美しい尼僧がアキの枕元に付き添っていた。その手には経文が乗っている。「ここは……」 走湯権現だ。アキの記憶が徐々に戻る。炉の上の線香は短く、ほとん [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 13
  •  北条時政は非常に信心深い男だった。一つの明確な不文律を持っていた。 『アキに穢れを近づけるな』 収穫祭で時政が口にしたのは事実。妻がアキを身籠った時に夢でお告げを受けたのだ。 夢の中で龍は時政に言った。『その子は龍の申し子。けっして穢れに近づけないように』。もし近付ければ大いなる災いが起きるだろうと。 『穢れ』とは病や死。アキや妹達はそれら穢れから過保護なまでに遠ざけられて育った。特 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 12
  • 第四章「恩讐の地」 「金太」 呼ぶ声に、金太は呼んだ者の背へと降り立った。その首元を見ながら。小柄で締まった筋肉。軽く丸められてはいるが、見る者が見ればわかる。一分の隙もない背中だと。 その背が振り返った。時政が鋭い目で金太を見据える。「私の後ろに立つな。斬るぞ」 金太は目を伏せた。だが目を伏せても、大柄な金太は小柄な時政より頭一つ分抜き出ている。「それに言ったはずだ。この館内では [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 11
  • 「ここを出ようと思う」 唐突な頼朝の言葉にアキは目を見開いた。頼朝はアキと視線を合わせず、富士のお山に目を置いたまま続けた。「北条殿にはまた子が生まれるのだろう? 藤九郎も手伝いに来てくれるというし、この北条の館を出て蛭島通の小さな屋敷を借り受けることにしたよ」「蛭島通……あんな水はけの悪い土地に。どうして?」 古くは狩野川の中洲であり、蛭が出るような低湿地であることから蛭島と呼ばれて [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 10
  • 「アキ、こちらは藤九郎だ」 藤九郎と呼ばれたその男は、肩を竦める程度の簡単な挨拶をした。頼朝が続ける。「比企の乳母の長女と結婚したとかで、私の世話をする役を押し付けられたそうだ。気の毒に」 すると藤九郎はニヤッと片頬だけを上げる笑顔を見せた。「いやいや、長女殿と結婚することをお許しいただけたものの、我が家系は土地も小さいし役職もないしで肩身が狭くてね。だからこうやって比企の乳母殿に恩を [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 9
  •  場がしんと静まり返る。先ほどまで賑やかに鳴り響いていた笛や太鼓も今は止まっている。その中を、頼朝はスッと身体の向きを変え、歩き出した。 少し歩いてから足を止め、苛立たしげに後ろを振り返る。 「アキ、早くしろ。戻るぞ」 アキは慌てて駆け出した。小四郎が転びそうになりながら懸命に後を追ってくる。その後ろから茂光のため息が零れた。「なんと恐ろしい。あれぞまさに源氏の棟梁たるご器量ですな! [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 8
  •  その秋の祭りは盛大だった。近年にない豊作に里は賑わい、連日あちこちの村で行われる祭りにアキは引っ張りだこだった。「おお、北条殿! よくいらっしゃいました」 祭りは、時政の生まれたばかりの赤子のお披露目でもあった。「一の姫様、この村にもつい先頃生まれた子がございます。どうか龍神様のご加護をお与えください……」 自分は巫女ではないのに。そう思いつつも、時政に促され、請われるままに手を赤子 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 7
  • 第三章「黄金の声」  シャラシャラ……。 風が渡る。穂の掠れる音。アキは目を閉じてその音を楽しむ。「タネ・ハタネ・ウム・スキ・サカメ・マメ・スメラのソロハモハメソ ムシモシナシム」 謳うように唱えれば、風がザアッと舞興り、アキの髪を中空へと巻き上げる。「ここにいたか、龍の姫」 唐突に声をかけられ、アキはパッと振り返った。頼朝が見張り台を登って来ていた。 アキは返事をせずに顔を前に戻 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 6
  •  狩野川の水は南から北へと流れる。南が決壊すれば、その北はどうなる? そこには父が、兄が、そして佐殿がいるのだ。 見張り台から見えたのは川が大きく曲がる僅か手前。普通ならば決壊しにくい場所。だけれど……。 アキは丹念に見ていく。「姫様、戻りましょう。館の外に出てはいけない」 腰が悪いと言っていた初老の家人だが、アキのことを追ってきてくれたらしい。だがアキは返事もせず、振り返らずに歩き続 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 5
  •  その時ふと麝香が香った。アキは書を放り投げるとそこへと駆け込む。「佐殿、見つけた!」 戸の裏側で頼朝が腕を組んで小首を傾げていた。「ああ、見つかった」 目を細めるアキの光の君。「アキは隠れんぼの鬼が得意だな」 「佐殿に対してだけよ」とは言わずに、アキは得意気に頷く。「それに暗誦も上手だ」 妹達が自分と佐殿の間に割り込んでくる。「佐殿、御本読んで」「あ、私が先よ」「駄目駄目、佐殿は私と [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 4
  •  広がる黄金の稲穂。金色の平原の向こうに緑色の山が横たわる。山は程よい高さに連なり海風をよけてくれる。川に水を蓄え、鹿や狸、兎などの獣を育くんでくれる。サラサラと流れる川のせせらぎの音、白い鷺が薄青い空を飛んでいく。川を挟んで格子状にあぜ道が続く豊かな田園風景。風が吹けばザアッと首をなびかせる黄金の稲穂。重くなったその頭には鈴なりに実る稲の粒。 シャラシャラ……。 軽やかな音を立てる金 [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 3
  • 第二章「おたまじゃくしの夢」  彼に関する最初の記憶は四つのこと。「やーい、カエル姫。ハエ取って食え、ムシ取って食え、やーい」 容赦の無いからかいの声に、まだ幼い姫は唇を噛み締めた。「カエルって五本足の化け物なんだぞ」「ヘビに食べられちまえ」「あ、カエルだ」 悪童達は地べたをガツガツと踏みしめる。その草履の下に緑色の何かが見え、姫は顔を背けて駆け出した。 館に通じる橋を渡って木戸を [続きを読む]
  • アマカケル北条の姫 ―蛙姫― 2
  •  アキは先ほど放り投げた布へと手を伸ばした。濡れた冷たいそれをそっと夫の口元に被せる。大きく上下していた胸がつっかえたように歪に動きを止めた。俎の上で身を反らせる魚のように跳ねるはず。アキは祈りを込め、力を込める。 ねえ、飛び起きて。跳ね除けてよ。殺してくれていいから。 でも首も手も腕も何の反応も示さない。時ばかりが過ぎていく。アキは夫の手をまさぐった。もう片手は夫の口元をしっかりと覆 [続きを読む]